(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テーブルに対する回転砥石の回転中心の目標軌跡に従って前記テーブルと前記回転砥石との相対移動を行い、前記テーブルで保持された板状体の外周縁を前記回転砥石の外周縁で研削する研削加工を、前記板状体を取り替えて繰り返す、板状体の加工方法であって、
前記テーブルで保持された一の前記板状体の前記研削加工後の外周縁を、予め設定された複数の撮像範囲で撮像部によって撮像するステップと、
前記テーブルで保持された他の一の前記板状体の前記研削加工後の外周縁を、前記予め設定された複数の前記撮像範囲で前記撮像部によって撮像するステップと、
各前記撮像範囲における、前記一の前記板状体の前記研削加工後の外周縁と前記他の一の前記板状体の前記研削加工後の外周縁との位置関係に基づき、前記一の前記板状体の前記研削加工後の外周縁と前記他の一の前記板状体の前記研削加工後の外周縁との寸法変化量、および各前記撮像範囲の位置ずれを算出するステップとを有し、
各前記撮像範囲において、前記一の前記板状体の前記研削加工後の外周縁を、前記他の一の前記板状体の前記研削加工後の外周縁に重ねるための、回転移動量および平行移動量の少なくとも一方を算出することで、各前記撮像範囲の位置ずれを算出する、板状体の加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。以下の説明において、加工対象の板状体はガラス板であるが、本発明はこれに限定されない。加工対象の板状体は金属板やセラミックス板などでもよい。
【0012】
(ガラス板の加工装置)
図1は、一実施形態による加工装置を示す側面図である。
図1において、X軸、Y軸、およびZ軸は、テーブル10に対し固定された直交座標軸である。Z軸はテーブル10の回転軸11と同一直線上に配されており鉛直とされ、X軸およびY軸は水平とされる。X軸、Y軸およびZ軸は、テーブル10と共に、Y軸方向に直線運動し、Z軸を中心に回転運動する。また、
図1において、x軸、y軸、およびz軸は、撮像部60に対し固定された直交座標軸である。z軸は撮像部60の撮像レンズの中心線と同一直線上に配されており鉛直とされ、x軸およびy軸は水平とされる。x軸とy軸の交点が撮像部60によって撮像される画像の中心点である。テーブル10が搬送装置からガラス板2を受け取る位置にあるとき、x軸はX軸に平行とされ、y軸はY軸に平行とされる。なお、これらの座標軸は便宜的なものであって、座標軸の取り方は特に限定されない。
【0013】
加工装置は、テーブル10と、テーブル10で保持されたガラス板2の外周縁4を研削する回転砥石20と、テーブル10と回転砥石20とを相対的に移動させる駆動部30と、駆動部30を制御する制御部50とを有する。また、加工装置は、テーブル10で保持されたガラス板2の外周縁4の画像を撮像する撮像部60をさらに有する。
【0014】
テーブル10は、回転砥石20と干渉しないように、ガラス板2の外周縁4よりも内側の部分を保持する。テーブル10のガラス板2を保持する保持面には吸着穴が形成されており、吸着穴は真空ポンプと接続されている。テーブル10の保持面にガラス板2を載置した状態で、真空ポンプを作動させると、テーブル10がガラス板2を真空吸着する。
【0015】
テーブル10は、例えば、テーブル本体12と、テーブル本体12に取付けられる複数の吸着パッド14とを有する。吸着パッド14は、ガラス板2を例えば真空吸着する。吸着パッド14は、テーブル本体12に対し分離可能に取付けられる。テーブル本体12に対する吸着パッド14の取付位置は、ガラス板2の寸法および形状に応じて適宜選択される。
【0016】
テーブル10は、例えばYθテーブルであって、フレームFrに対し、X軸方向に移動不能とされ、Y軸方向に移動自在とされ、Z軸方向に平行な回転軸11を中心に回転自在とされる。尚、テーブル10は、XYテーブルであってもよく、X軸方向およびY軸方向に移動自在とされてもよい。
【0017】
回転砥石20は、テーブル10で保持されたガラス板2の外周縁4を研削する。回転砥石20は、例えば面取砥石であって、外周面に断面U字状の研削溝を有してよい。尚、回転砥石20は、汎用の砥石でもよい。回転砥石20を回転させる回転駆動部21としては、電動モータなどが用いられる。回転駆動部21はフレームFrに対し固定されている。
【0018】
駆動部30は、制御部50による制御下で、テーブル10と回転砥石20とを相対的に移動させる。駆動部30は、テーブル10と回転砥石20とを相対的に移動させるため、フレームFrに対しテーブル10を移動させる。駆動部30は、Y軸方向駆動部31と、θ方向駆動部32とを有する。
【0019】
Y軸方向駆動部31は、フレームFrに対しテーブル10をY軸方向に移動させる。Y軸方向駆動部31は、例えばフレームFrに固定される電動モータと、電動モータの回転運動をテーブル10の直線運動に変換するボールねじとを含む。
【0020】
θ方向駆動部32は、Z軸方向に平行な回転軸11を中心にテーブル10を回転させる。θ方向駆動部32は、例えばテーブル10に対し固定された回転軸11を回転自在に支持する軸受と、回転軸11を回転させる電動モータとを含む。
【0021】
Y軸方向駆動部31を作動させると、フレームFrに敷設されるY軸ガイドに沿ってθ方向駆動部32が移動し、テーブル10がY軸方向に移動する。また、θ方向駆動部32を作動させると、回転軸11を中心にテーブル10が回転する。
【0022】
尚、本実施形態の駆動部30は、テーブル10と回転砥石20とを相対的に移動させるため、フレームFrに対しテーブル10を移動させるが、フレームFrに対し回転砥石20を移動させてもよいし、フレームFrに対し両者を移動させてもよい。
【0023】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51と、メモリなどの記憶媒体52と、入力インターフェイス53と、出力インターフェイス54とを有する。制御部50は、記憶媒体52に記憶されたプログラムをCPU51に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御部50は、入力インターフェイス53で外部からの信号を受信し、出力インターフェイス54で外部に信号を送信する。
【0024】
制御部50は、テーブル10に対する回転砥石20の回転中心の目標軌跡に従ってテーブル10と回転砥石20との相対移動を行い、テーブル10で保持されたガラス板2の外周縁4を回転砥石20の外周縁で研削する研削加工を行う。本実施形態ではガラス板2の外周縁4の全体が研削されるが、ガラス板2の外周縁4の一部のみが研削されてもよい。
【0025】
回転砥石20の回転中心の目標軌跡は、ガラス板2の加工目標の外周縁(以下、「加工目標外周縁」とも呼ぶ。)の外側に、加工目標外周縁と一定の距離(OD/2)をおいて、加工目標外周縁に沿って描かれる。ここで、ODは、回転砥石20の外径(以下、「砥石径」とも呼ぶ。)を表す。
【0026】
加工目標外周縁、および砥石径ODは、予め記憶媒体52に記憶されているものを読み出して用いる。記憶媒体52に記憶されている砥石径ODと実際の砥石径ODとが一致する場合、ガラス板2の研削加工後の外周縁4は、加工目標外周縁に一致する。
【0027】
制御部50は、テーブル10で保持されたガラス板2の外周縁4を回転砥石20の外周縁で研削する研削加工を、ガラス板2を取り替えて繰り返し行う。その間、回転砥石20の外周縁が摩耗によって徐々に小さくなり、砥石径ODが徐々に小さくなるので、研削加工後の外周縁4が徐々に大きくなる。
【0028】
そこで、制御部50は、研削加工後の外周縁4の寸法変化を監視するため、テーブル10で保持されたガラス板2の研削加工後の外周縁4を、予め設定された複数の撮像範囲で撮像部60によって撮像する。
【0029】
撮像部60は、制御部50による制御下で、テーブル10で保持されたガラス板2の研削加工後の外周縁4を、予め設定された複数の撮像範囲で撮像する。撮像部60としては、例えばCCDカメラやCMOSカメラなどが用いられる。撮像された画像は制御部50に送信され、制御部50が画像を取得する。
【0030】
撮像部60は、例えばフレームFrに対し固定されている。フレームFrに対するテーブル10のY軸方向位置やθ方向位置を調整することで、画像の撮像範囲が変更可能である。研削加工後の外周縁4の複数部分を撮像した複数の画像は、研削加工後の外周縁4の寸法変化量ΔA(以下、単に「寸法変化量ΔA」とも呼ぶ。)の算出に用いられる。研削加工後の外周縁4の寸法変化量ΔAは、研削加工後の外周縁4に直交する方向に測定する。
【0031】
尚、撮像部60は、本実施形態ではフレームFrに対し固定されているが、移動自在とされてもよい。撮像部60とテーブル10とが相対的に移動可能であれば、画像の撮像範囲が変更可能である。
【0032】
撮像部60が複数用いられる場合、撮像部60とテーブル10とは相対的に移動しなくてもよい。外周縁4の複数部分を撮像できれば、寸法変化量ΔAの算出精度の向上が可能である。
【0033】
(ガラス板の加工方法)
次に、
図2などを参照して、上記構成の加工装置を用いた加工方法について説明する。加工装置の下記の動作は、制御部50によって制御される。
図2は、一実施形態によるガラス板の加工方法を示すフローチャートである。
【0034】
図2のステップS101以降の処理は、テーブル10が搬送装置からA枚目のガラス板2を受け取ると、開始される。ここで、Aは、1以上の予め定められた自然数である。回転砥石20の交換の度に、ガラス板2の累積枚数は1にリセットされる。
【0035】
尚、ガラス板2は、アライメント装置によって位置合わせされた後に、搬送装置によってテーブル10に載置される。フレームFrに対するテーブル10のガラス板2を受け取る位置は予め設定されている。
【0036】
図2のステップS101では、制御部50は、テーブル10によるA枚目のガラス板2の保持を開始する。
【0037】
続いてステップS102では、制御部50は、テーブル10に対する回転砥石20の回転中心の目標軌跡に従って駆動部30を制御して、テーブル10で保持されたガラス板2の外周縁4を回転砥石20の外周縁で研削する。研削加工後のガラス板2の外周縁4は、加工目標外周縁と一致してよい。
【0038】
続いてステップS103では、制御部50は、テーブル10で保持されたガラス板2の外周縁4の複数部分を撮像部60で撮像する。この撮像は、フレームFrに対するテーブル10のY軸方向位置やθ方向位置を、予め設定された位置に調整した上で行われる。つまり、各撮像範囲は、予め設定されている。
【0039】
続いてステップS104では、制御部50は、上記ステップS103で撮像した各画像を画像処理し、各撮像範囲における外周縁4の位置検出を行う。画像処理については、後述する。
【0040】
尚、上記ステップS103〜上記ステップS104では全ての画像の撮像が完了した後に画像処理が開始されるが、画像が撮像される度に画像処理が行われてもよく、全ての画像の撮像が完了する前に画像処理が開始されてもよい。また、上記ステップS104は、下記ステップS111の開始までに完了されればよい。
【0041】
続いてステップS105では、制御部50は、テーブル10によるガラス板2の保持を解除する。その後、搬送装置が、A枚目のガラス板2をテーブル10から取り外し、次いで、A+1枚目のガラス板2をテーブル10に載置する。
【0042】
続いてステップS106では、制御部50は、テーブル10による新しいガラス板2の保持を開始する。
【0043】
続いてステップS107では、制御部50は、テーブル10に対する回転砥石20の回転中心の目標軌跡に従って駆動部30を制御して、テーブル10で保持されたガラス板2の外周縁4を回転砥石20の外周縁で研削する。
【0044】
続いてステップS108では、制御部50は、ガラス板2の累積枚数がBであるか否かをチェックする。ここで、Bは、Aよりも大きい予め定められた自然数である。BとAの差が小さいほど、寸法変化量ΔAをチェックする頻度が増え、加工精度が向上する反面、スループットが低下する。Bは、加工精度とスループットとに基づき適宜設定されてよい。
【0045】
ガラス板2の累積枚数がB未満である場合(ステップS108、No)、制御部50は、上記ステップS105に戻り、上記ステップS105以降の処理を続行する。
【0046】
一方、ガラス板2の累積枚数がBである場合(ステップS108、Yes)、制御部50は、ステップS109に進み、テーブル10で保持されたガラス板2の外周縁4の複数部分を撮像部60で撮像する。この撮像は、フレームFrに対するテーブル10のY軸方向位置やθ方向位置を、予め設定された位置に調整した上で行われる。つまり、各撮像範囲は、予め設定されている。予め設定されている各撮像範囲は、ステップS109と上記ステップS103とで同じである。
【0047】
続いてステップS110では、制御部50は、上記ステップS109で撮像した各画像を画像処理し、各撮像範囲における外周縁4の位置検出を行う。画像処理については、後述する。
【0048】
尚、上記ステップS109〜上記ステップS110では全ての画像の撮像が完了した後に画像処理が開始されるが、画像が撮像される度に画像処理が行われてもよく、全ての画像の撮像が完了する前に画像処理が開始されてもよい。
【0049】
続いてステップS111では、制御部50は、各撮像範囲におけるA枚目のガラス板2の研削加工後の外周縁4とB枚目のガラス板2の研削加工後の外周縁4との位置関係に基づき、各撮像範囲の位置ずれを算出すると共に、寸法変化量ΔAを算出する。各撮像範囲の位置ずれ、および寸法変化量ΔAの算出方法については、後述する。
【0050】
続いてステップS112では、制御部50は、上記ステップS111で算出した寸法変化量ΔAに基づき、回転砥石20の回転中心の目標軌跡を補正する。補正後の目標軌跡は、補正前の目標軌跡から加工目標外周縁に接近する方向にシフトされる。そのシフト量は、寸法変化量ΔAとされる。寸法変化量ΔAは、砥石径ODの変化量の半値に相当する。
【0051】
その後、制御部50は、今回の処理を終了する。補正後の目標軌跡は、B+1枚目以降のガラス板2の研削に用いられる。これにより、研削加工後のガラス板2の外周縁の大きさを精度良く揃えることができる。
【0052】
上記ステップS101〜上記ステップS112の一連の処理は、回転砥石20が回転駆動部21に装着されてから取外されるまでの間、繰り返し行われてもよい。つまり、AやBは複数用意されてもよい。
【0053】
(各撮像範囲の位置ずれの算出、および砥石径変化量の算出)
上記ステップS111での、各撮像範囲の位置ずれの算出、および寸法変化量ΔAの算出について、
図3〜
図5を参照して具体的に説明する。
図3は、一実施形態によるXY座標系での、A枚目のガラス板の研削加工後の外周縁と、B枚目のガラス板の研削加工後の外周縁と、画像の撮像範囲との位置関係を示す平面図である。
図4は、
図3の撮像範囲FR1の画像を示す図である。
図5は、
図3の撮像範囲FR2の画像を示す図である。
図3〜
図5において、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれ、および寸法変化量ΔAを誇張して示す。また、
図3〜
図5において、ガラス板2の大きさに対する各撮像範囲FR1〜FR8の大きさの割合を実際の割合よりも大きく図示してある。さらに、
図3〜
図5において、4AはA枚目のガラス板2の研削加工後の外周縁4を表し、4B、4B´はB枚目のガラス板2の研削加工後の外周縁4を表す。
【0054】
上記ステップS111で、制御部50は、先ず、上記ステップS103と上記ステップS109とで、XY座標系において座標が同じ撮像範囲FR1〜FR8の画像を撮像したと仮定する。次に、制御部50は、撮像範囲FR1〜FR8毎に画像を重ねて、上記ステップS104で位置検出した外周縁4Aと上記ステップS110で位置検出した外周縁4Bとの位置関係をXY座標系で調べる。
【0055】
例えば、
図4に示す撮像範囲FR1では、実線で示す外周縁4Aの位置と、一点鎖線で示す外周縁4Bの位置とがずれている。また、
図5に示す撮像範囲FR2では、実線で示す外周縁4Aの位置と、一点鎖線で示す外周縁4Bの位置とがずれている。
【0056】
図4に示す撮像範囲FR1と
図5に示す撮像範囲FR2とでは、外周縁4Aの位置と外周縁4Bの位置とのずれ方が異なる。ここで、ずれ方が異なるとは、ずれ量が異なること、ずれ方向が異なることの少なくとも一方を含む。
【0057】
このように少なくとも2つの撮像範囲で外周縁4A、4Bの位置のずれ方が異なる場合、制御部50は、上記ステップS109で撮像した画像の正確な撮像範囲FR1´〜FR8´が仮に定めた撮像範囲FR1〜FR8からずれていると判断する。つまり、この場合、制御部50は、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれが生じていると判断する。
【0058】
尚、8つの撮像範囲FR1〜FR8の全てで外周縁4A、4Bの位置のずれ方が同じ場合、制御部50は、上記ステップS109で撮像した画像の正確な撮像範囲FR1´〜FR8´が仮に定めた撮像範囲FR1〜FR8と一致していると判断する。つまり、この場合、制御部50は、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれが生じていないと判断する。
【0059】
上記ステップS109で撮像した画像の正確な撮像範囲FR1´〜FR8´が仮に定めた撮像範囲FR1〜FR8からずれる原因としては、例えば、フレームFrの温度の変化が挙げられる。フレームFrの温度が変化すると、フレームFrの寸法や形状が変化するため、撮像部60の位置がずれることがある。
【0060】
フレームFrに対する撮像部60の位置ずれは、x軸方向の平行移動量Δx、y軸方向の平行移動量Δy、およびz軸の周りの回転移動量Δθで表すことができる。そのため、上記ステップS109で撮像した画像の正確な撮像範囲FR1´〜FR8´も、Δx、ΔyおよびΔθで表すことができる。
【0061】
例えば、
図4に示すように、XY座標系において、上記ステップS109で撮像した画像の正確な撮像範囲FR1´は、仮に定めた撮像範囲FR1に対し、x軸方向にΔx平行移動し、y軸方向にΔy平行移動し、z軸の周りにΔθ回転移動している。同様に、
図5に示すように、XY座標系において、上記ステップS109で撮像した画像の正確な撮像範囲FR2´は、仮に定めた撮像範囲FR2に対し、x軸方向にΔx平行移動し、y軸方向にΔy平行移動し、z軸の周りにΔθ回転移動している。
【0062】
このように、XY座標系において、上記ステップS109で撮像した画像の正確な各撮像範囲FR1´〜FR8´は、仮に定めた各撮像範囲FR1〜FR8に対し、x軸方向にΔx平行移動し、y軸方向にΔy平行移動し、z軸の周りにΔθ回転移動している。
【0063】
そのため、XY座標系において、正確な各撮像範囲FR1´〜FR8´における外周縁4B´は、仮に定めた各撮像範囲FR1〜FR8における外周縁4Bに対し、x軸方向にΔx平行移動し、y軸方向にΔy平行移動し、z軸の周りにΔθ回転移動している(
図4および
図5参照)。
【0064】
また、XY座標系において、正確な各撮像範囲FR1´〜FR8´における外周縁4B´は、仮に定めた各撮像範囲FR1〜FR8における外周縁4Aの外側に、当該外周縁4Aと一定の間隔をおいて平行に配されている。この間隔が、砥石径ODの変化などによって生じる寸法変化量ΔAである。
【0065】
従って、仮に定めた各撮像範囲FR1〜FR8において、外周縁4Bを、x軸方向にΔx平行移動し、y軸方向にΔy平行移動し、z軸の周りにΔθ回転移動し、その後、外周縁4Bの内側に向けてΔA移動すると、外周縁4Aと重なる。つまり、xy座標系において、外周縁4Bを、x軸方向にΔx平行移動し、y軸方向にΔy平行移動し、z軸の周りにΔθ回転移動し、その後、外周縁4Bの内側に向けてΔA移動すると、外周縁4Aと重なる(
図4および
図5参照)。ここで、外周縁4Aと重なるとは、外周縁4Aの延長線と重なることをも含む。
【0066】
そこで、制御部50は、各撮像範囲FR1〜FR8において外周縁4Bを外周縁4Aと重ねるための、Δx、Δy、Δθ、ΔAの最適解を求めることで、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれの算出と、寸法変化量ΔAの算出とを行う。最適化問題の解法としては、例えば準ニュートン法などの一般的な解法が用いられる。
【0067】
これら4つの独立変数の最適解を求めるためには、通常、4つ以上の撮像範囲を撮像部60で撮像することになる。各撮像範囲は十分に狭いため、各画像において外周縁4は直線であるとみなせる場合が多いためである。
【0068】
但し、2つの撮像範囲を撮像部60で撮像することでも、4つの独立変数の最適解を求めることができる場合がある。そのような場合としては、各画像において外周縁4が例えば折れ線である場合が挙げられる。折れ線は、例えばガラス板2の角部に形成される。従って、4つの独立変数の最適解を求めるためには、2つ以上の撮像範囲を撮像部60で撮像すればよい場合がある。
【0069】
撮像範囲の数が多いほど、最適解の算出精度が向上する反面、撮像時間が長くなる。そのため、撮像範囲の数は、最適解の算出精度と撮像時間とに基づき適宜設定されてよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の制御部50は、各撮像範囲FR1〜FR8における外周縁4Aと外周縁4Bとの位置関係に基づき、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれの算出と、寸法変化量ΔAの算出とを行う。画像を用いて寸法変化量ΔAを算出するため、従来のように研削時間の関数などで砥石径の変化量を算出する場合に比べて、目標軌跡を精度良く補正できる。また、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれが生じる場合にも、寸法変化量ΔAを精度良く算出でき、目標軌跡を精度良く補正できる。よって、加工後のガラス板2の寸法を安定化できる。
【0071】
本実施形態の制御部50は、各撮像範囲FR1〜FR8において、外周縁4Bを外周縁4Aに重ねるための、平行移動量Δx、Δyおよび回転移動量Δθの両方を算出することで、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれを算出する。平行移動量Δx、Δyおよび回転移動量Δθの両方を算出するので、フレームFrの様々な温度変化に対応でき、フレームFrの様々な寸法変化や形状変化に対応できる。
【0072】
一方で、フレームFrの温度変化に伴う寸法変化や形状変化が特定の傾向を示す場合がある。この場合、制御部50は、平行移動量Δx、Δyおよび回転移動量Δθの一方のみを算出してもよい。一方のみの算出で、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれを精度良く算出できる場合がある。
【0073】
尚、本実施形態の制御部50は、外周縁4Bを外周縁4Aに重ねるための平行移動量や回転移動量を算出するが、外周縁4Aを外周縁4Bに重ねるための平行移動量や回転移動量を算出してもよい。いずれの場合も、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれを算出できる。
【0074】
ところで、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれが生じない場合、Δx、ΔyおよびΔθはゼロであるため、制御部50はΔAのみ算出すればよい。ΔAのみを求めるためには、一の撮像範囲を撮像部60で撮像すれば足りる。
【0075】
短期的には、撮像範囲の位置ずれは生じないとみなせる場合が多い。そこで、制御部50は、一の撮像範囲における一のガラス板2の研削加工後の外周縁4と他の一のガラス板2の研削加工後の外周縁4との位置関係に基づき、寸法変化量ΔAのみを算出し、算出した寸法変化量ΔAに基づき目標軌跡を補正してもよい。
【0076】
寸法変化量ΔAのみの算出は、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれと寸法変化量ΔAの両方の算出と組合わせて行われてもよい。寸法変化量ΔAのみの算出は、撮像範囲の数が1つですむので、撮像時間が短くて済む。そのため、寸法変化量ΔAのみを算出する頻度は、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれと寸法変化量ΔAの両方を算出する頻度よりも多くてよい。
【0077】
以上、加工方法の実施形態などについて説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、A枚目のガラス板2の研削加工からB枚目のガラス板2の研削加工まで、XY座標系での目標軌跡の補正が行われないが、XY座標系での目標軌跡の補正が行われてもよい。この場合、制御部50は、XY座標系での目標軌跡の補正にも基づいて、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれの算出や寸法変化量ΔAの算出を行う。
【0079】
XY座標系での目標軌跡の補正は、XY座標系での目標軌跡の平行移動および回転移動の少なくとも一方を含んでよい。XY座標系での目標軌跡の平行移動や回転移動は、アライメント装置の摩耗や搬送装置の摩耗などによってテーブル10に載置されるガラス板2の姿勢が僅かに変化する場合に行われる。
【0080】
A枚目のガラス板の研削加工からB枚目のガラス板の研削加工までの途中で、XY座標系での目標軌跡の平行移動や回転移動が行われる場合、制御部50は、XY座標系で外周縁4Aを目標軌跡と共に平行移動や回転移動し、外周縁4Aの位置を補正する。そして、制御部50は、補正後の外周縁4Aの位置に基づいて、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれの算出や寸法変化量ΔAの算出を行う。
【0081】
また、上記実施形態では、フレームFrに対し撮像部60が固定されているが、フレームFrに対し撮像部60が移動自在とされてもよい。フレームFrにはガイドなどが敷設され、ガイドに沿って走行するスライダには撮像部60を支持するブラケットなどが取付けられる。この場合、フレームFrの温度変化だけではなく、ガイドの温度変化やブラケットの温度変化によっても、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれが生じうる。この場合にも、各撮像範囲FR1〜FR8の位置ずれと寸法変化量ΔAの算出が可能である。
【0082】
図6は、
図1の撮像部により撮像した画像の画像処理の一例を示す図である。
図6において、矢印方向は、画像の輝度の変化を調べる方向を表す。制御部50は、矢印方向に沿って、画像の輝度の変化を調べる。
【0083】
画像の輝度は、ガラス板2が存在しない部分では一様に低く、ガラス板2が存在する部分では表面形状に応じて変化する。表面形状が平坦である部分では輝度が低く、表面形状が急激に変化する部分、例えば外周縁部や欠陥部などでは輝度が高い。外周縁部には、通常、切断や研削などによって傷がつきやすく、欠陥部が生じやすい。
【0084】
画像の互いに対向する二辺の一方から他方に向けて輝度の変化を調べた場合に、輝度が急激に増加する点がガラス板2の外周縁4として検出される。ガラス板2の外周縁4は、輝度の絶対値や輝度の変化率などに基づいて検出される。輝度が急激に増加する点は、特定の方向に輝度の変化を調べることで検出される。
【0085】
図6(a)は、画像の上辺から画像の下辺に向けて縦方向(以下、「第1方向」と呼ぶ。)に輝度の変化を調べた場合に輝度が急激に増加する点P1とその近似直線ASL1を示す。
図6(a)の一部では、ガラス板2の内部だけで輝度の変化を調べている。そのため、ガラス板2の欠陥部で輝度が急激に増加している。また、輝度が急激に変化する点P1と、近似直線ASL1との誤差が大きい。
【0086】
図6(b)は、画像の左辺から画像の右辺に向けて横方向(以下、「第2方向」と呼ぶ。)に輝度の変化を調べた場合に輝度が急激に増加する点P2とその近似直線ASL2を示す。
図6(b)では、ガラス板2の内部から外部に向けて輝度の変化を調べている。そのため、ガラス板2の外周縁4よりも少し内側の位置で輝度が急激に増加している。また、ガラス板2の欠陥部で輝度が急激に増加している。その結果、輝度が急激に増加する点P2と、近似直線ASL2との誤差が大きい。
【0087】
図6(c)は、画像の右辺から画像の左辺に向けて横方向(以下、「第3方向」と呼ぶ。)に輝度の変化を調べた場合に輝度が急激に増加する点P3とその近似直線ASL3を示す。
図6(c)ではガラス板2の外部から内部に向けて輝度の変化を調べている。そのため、ガラス板2の外周縁4の位置で輝度が急激に増加している。また、輝度が急激に増加する点P3と、近似直線ASL3との誤差が小さい。
【0088】
尚、画像の下辺から画像の上辺に向けて縦方向(以下、「第4方向」と呼ぶ。)に輝度の変化を調べる場合、画像の一部では
図6(b)と同様にガラス板2の内部から外部に向けて輝度の変化を調べることになり、画像の他の一部では
図6(a)と同様にガラス板2の内部だけで輝度の変化を調べることになる。そのため、ガラス板2の外周縁4の検出精度が低い。
【0089】
図6(a)〜
図6(c)から明らかなように、
図6(c)に示すように第3方向に輝度の変化を調べることで、ガラス板2の外周縁4の検出精度を向上できる。輝度の変化を調べる方向は、予め設定されていてよい。
【0090】
ところで、テーブル10で保持されたガラス板2の撮像範囲を変更するため、テーブル10と撮像部60との相対位置を変更する場合、
図3に示すように撮像範囲FR1〜FR8ごとにxy座標系でのガラス板2の向きが変わる。そのため、撮像範囲FR1〜FR8ごとに、輝度の変化を調べる方向を、第1方向〜第3方向の中から選択する必要がある。
【0091】
そこで、制御部50は、各画像において、第1方向の輝度の変化、第2方向の輝度の変化、第3方向の輝度の変化をそれぞれ調べ、第1方向〜第3方向の中で、輝度が急激に増加する点と近似直線との誤差が最も小さい方向を調べる。例えば、近似方法が最小二乗法の場合、第1方向〜第3方向の中で、残差の二乗和が最も小さい方向を調べる。制御部50は、上記誤差が最も小さい方向を、ガラス板2の外周縁4の検出に用いる方向として選択する。