(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  上記緩衝材は、真空ラミネータ装置における加熱に対して耐熱性を有する有機高分子材料からなる厚さ0.5〜10mmの弾性体シートである請求項1記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
  以下に、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法の好適な態様について図面を参照しながら説明する。
  
図1はフィルム上に硬化性シリコーン組成物を層状に形成した積層フィルムの断面の一例である。
図2は二枚の積層フィルムの硬化性シリコーン組成物層同士を対向させた状態で、該硬化性シリコーン組成物層の間に太陽電池素子を挟み込んで積層した積層体の断面の一例である。また、
図3は、
図2で示した複合体について真空ラミネート処理する際の状態を示す断面の一例である。
図4は、真空ラミネートして得られた二枚のフィルムの間に太陽電池素子をシリコーン硬化物で封止した太陽電池モジュールの断面の一例である。
 
【0017】
  本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、主に、(i)フィルムと、硬化性シリコーン組成物層とからなる積層フィルムの作製、(ii)積層フィルムと太陽電池素子の重ね合わせ(積層体の形成)、(iii)真空ラミネータ装置を用いた硬化性シリコーン組成物の架橋と太陽電池モジュール化(真空ラミネート)、の3工程からなる。
 
【0018】
(i)積層フィルム作製工程(
図1)
  まず、
図1に示すように、光透過性フィルム及び背面保護フィルムとなる二枚のフィルム1それぞれの片面にミラブル型の硬化性シリコーン組成物を直接層状に形成して硬化性シリコーン組成物層2aを形成する。詳しくは、フィルム1として太陽電池モジュールの最外層として使用する光透過性フィルム及び背面保護フィルムを選択し、予め硬化剤等が添加された未加硫状態のミラブル型シリコーン組成物(シリコーン樹脂コンパウンド、シリコーンゴムコンパウンド)をカレンダー加工あるいは押し出し加工にて厚さ0.02〜3.0mmの層状としたものをフィルム1上に直接一体積層させる。このフィルム1の片面に硬化性シリコーン組成物層2aを設けたものを積層フィルムと称する。このとき、積層フィルムを減圧状態下に置いても剥離部分が発生しないようにフィルム1と硬化性シリコーン組成物層2aを空隙なく密着させることが特に重要である。フィルム1上に積層した硬化性シリコーン組成物層2aにはタック(粘着性)があるため、貼りつき防止としてPE製のカバーフィルム3を被せる。
 
【0019】
  ここで、フィルム1は、太陽電池モジュールの受光面側となる光透過性フィルム及び受光面とは反対面型となる背面保護フィルムであり、具体的には、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PC(ポリカーボネート)フィルム、PI(ポリイミド)フィルム、PPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルム、PES(ポリエーテルサルホン)フィルム、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、PP(ポリプロピレン)フィルム、ETFE(四フッ化エチレン−エチレン共重合体)、ECTFE(三フッ化塩化エチレン)、PFA(四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)、PVDF(フッ化ビニリデン樹脂)、PVF(フッ化ビニル樹脂)、PMMA(アクリル)フィルム、PA(ポリアミド)フィルム、TPT(PVF/接着剤/PET/接着剤/PVF)やTPE(PVF/接着剤/PET/接着剤/EVA)、あるいは(PVF/接着剤/PET)に示される積層体からなる太陽電池用裏面保護シートが挙げられる。光透過性、耐候性および汚れ防止性を考慮すると、フッ素原子を含むPFAやETFE、ECTFEフィルムがより好ましい。フッ素原子を含むフィルムはそのまま使用してもよいが、封止材となるシリコーンゴムの接着性を向上させるため、フィルムにプラズマ処理やコロナ処理、グロー放電処理等の表面処理を施し、親水化したものを用いる方がより有効である。なお、光透過性フィルムと背面保護フィルムは異なるものであっても、同じものであってもよい。
 
【0020】
  フィルム1の厚さは、10〜200μmが好ましく、30〜80μmがより好ましい。
 
【0021】
  硬化性シリコーン組成物層2aは、ミラブル型の硬化性シリコーン組成物(シリコーンゴム組成物又はシリコーン樹脂組成物)がカレンダー加工又は押出し加工により未加硫状態のままフィルム上に積層されたものであることが好ましい。この未加硫状態の硬化性シリコーン組成物は、例えば液状のシリコーンポリマーあるいはシリコーン生ゴムに煙霧質シリカを配合して流動性を下げて形状維持可能とし、更に予め硬化触媒を添加しフルコンパウンドとしたものを用い、これを樹脂フィルム上に薄膜状に加工するとよい。
 
【0022】
  シリコーン組成物層2aは、硬化後の特性として透明性(光透過性)、耐候性をはじめとして屋外使用において20年以上の長期信頼性が必要であり、そのために紫外線耐性が高く、低モジュラスで、かつ上記フィルム1との密着性が良好であることが必要である。
 
【0023】
  このシリコーン組成物層2aを構成する硬化性シリコーン組成物は、その架橋方法が湿気硬化型、UV硬化型、有機過酸化物硬化型、白金触媒を用いる付加硬化型のいずれであってもよいが、副生成物がなく、変色の少ない付加硬化型シリコーン組成物からなることが好ましい。
 
【0024】
  即ち、本発明で用いるシリコーン組成物は、
(A)下記平均組成式(I)
  R
1aSiO
(4-a)/2  (I)
(式中、R
1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表され、重合度が100以上のオルガノポリシロキサン  100質量部、
(B)比表面積が50m
2/gを超える煙霧質シリカ  10〜150質量部、
(C)硬化剤  (A)成分を硬化させる有効量
を含むミラブル型のシリコーン組成物であることが好ましい。
 
【0025】
  (A)成分において、上記平均組成式(I)中、R
1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、通常、炭素数1〜12、特に炭素数1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換した基が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基、ビニル基が好ましい。
 
【0026】
  具体的には、該オルガノポリシロキサンの主鎖がジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるもの、又はこの主鎖を構成するジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるジメチルポリシロキサン構造の一部にフェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を有するジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等を導入したもの等が好適である。
 
【0027】
  特に、オルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のアルケニル基、シクロアルケニル基等の脂肪族不飽和基を有するものが好ましく、特にビニル基であることが好ましい。この場合、全R
1中0.01〜20モル%、特に0.02〜10モル%が脂肪族不飽和基であることが好ましい。なお、この脂肪族不飽和基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、分子鎖の途中のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。また、aは1.95〜2.05、好ましくは1.98〜2.02、より好ましくは1.99〜2.01の正数である。
 
【0028】
  (A)成分のオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ジメチルヒドロキシシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基、メチルジビニルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基で封鎖されたものを好ましく挙げることができる。特に好ましいものとしては、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルビニルポリシロキサン、メチルトリフルオロプロピルビニルポリシロキサン等を挙げることができる。
 
【0029】
  このようなオルガノポリシロキサンは、例えばオルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体、4量体等)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。これらは基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、(A)成分としては、分子量(重合度)や分子構造の異なる2種又は3種以上の混合物であってもよい。
 
【0030】
  なお、上記オルガノポリシロキサンの重合度は100以上、好ましくは100〜100,000、特に好ましくは3,000〜20,000である。なお、この重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度として測定することができる。
 
【0031】
  (B)成分のBET比表面積50m
2/gを超える補強性シリカは、未加硫状態のシリコーン組成物の形状維持及び硬化後に機械的強度の優れたゴム組成物を得るために添加されるものである。このためには、BET比表面積が50m
2/gを超えることが好ましく、より好ましくは200m
2/g以上である。BET比表面積が50m
2/g以下だと、機械的強度が弱いだけでなく、未加硫状態のシリコーン組成物の形状維持が困難となるおそれがある。なお、その上限は特に制限されないが、通常500m
2/g以下である。
 
【0032】
  このような(B)成分の補強性シリカとしては、煙霧質シリカ(乾式シリカ又はヒュームドシリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)等が挙げられる。また、これらの表面をクロロシラン、アルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等で疎水化処理したものも好適に用いられる。ここで、補強性シリカは、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
 
【0033】
  (B)成分の補強性シリカとしては、市販品を用いることができ、例えば、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジルR−812、アエロジルR−972、アエロジルR−974などのアエロジルシリーズ(日本アエロジル(株)製)、Cabosil  MS−5、MS−7(キャボット社製)、レオロシールQS−102、103、MT−10(トクヤマ社製)等の表面未処理又は表面疎水化処理された(即ち、親水性又は疎水性の)ヒュームドシリカや、トクシールUS−F(トクヤマ社製)、NIPSIL−SS、NIPSIL−LP(日本シリカ(株)製)等の表面未処理又は表面疎水化処理された沈降シリカ等が挙げられる。
 
【0034】
  (B)成分の補強性シリカの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して10〜150質量部であり、好ましくは30〜120質量部であり、更に好ましくは50〜100質量部である。(B)成分の配合量が少なすぎる場合には未加硫状態のシリコーンの形状維持性が得られないだけでなく、硬化後の補強効果も得られないおそれがある。シリコーンポリマー中へのシリカの分散が困難になると同時に薄膜状への加工性が悪くなるおそれがある。
 
【0035】
  (C)成分の硬化剤としては、(A)成分を硬化させ得るものであれば特に限定されないが、広くシリコーンゴムの硬化剤として公知の(a)付加反応(ヒドロシリル化反応)型硬化剤、即ちオルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)とヒドロシリル化触媒との組み合わせ、又は(b)有機過酸化物が好ましく、公知の通り(a)と(b)両方を用いることもできる。
 
【0036】
  上記(a)付加反応(ヒドロシリル化反応)における架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(SiH基)を含有するもので、下記平均組成式(II)
  R
2bH
cSiO
(4-b-c)/2  (II)
(ここで、R
2は炭素数1〜6の非置換又は置換の1価炭化水素基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものであるが、フェニレン基及びエポキシ基を含有しない。具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基等の非置換の1価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記1価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の1価炭化水素基である。bは0.7〜2.1、cは0.01〜1.0、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくはbは0.8〜2.0、cは0.2〜1.0、かつb+cは1.0〜2.5を満足する正数で示される。)
で示される従来から公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが適用可能である。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜200個程度の室温で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)は分子鎖末端にあっても側鎖にあっても、その両方にあってもよく、一分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個)、より好ましくは4〜150個程度含有するものが使用される。
 
【0037】
  このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体等や上記各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等のアリール基で置換されたものなどが挙げられる。
 
【0038】
  このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜10質量部とすることが好ましい。
 
【0039】
  また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)のモル比が0.5〜10モル/モル、好ましくは0.8〜8モル/モル、より好ましくは2〜6モル/モルとなる量で配合することが好ましい。
 
【0040】
  また、上記(a)付加反応(ヒドロシリル化反応)の架橋反応に使用されるヒドロシリル化反応触媒は、公知のものが適用可能で、例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、このヒドロシリル化反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属質量に換算して、5〜100ppmの範囲が好ましい。1ppm未満であると付加反応が十分に進まず硬化不十分となるおそれがあり、1000ppmを超える量添加するのは不経済であるだけでなく、過剰の触媒が硬化物を着色させたり、組成物の保存安定性に悪影響を及ぼしたりするため好ましくない。
 
【0041】
  また、上記の反応触媒のほかに、硬化速度あるいはポットライフを調整する目的で、付加反応制御剤を使用してもよい。具体的にはエチニルシクロヘキサノールやテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
 
【0042】
  一方、(b)有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−t−ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
 
【0043】
  この(b)有機過酸化物の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜15質量部、特に0.2〜10質量部が好ましい。添加量が少なすぎると架橋反応が十分に進行せず、硬度低下やゴム強度不足を生じる場合があり、多すぎるとコスト的に好ましくないばかりでなく、硬化剤の分解物が多く発生して、シートの変色を増大させる場合がある。
 
【0044】
  本発明で用いるシリコーン組成物には、上記成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、下記に示すようなフィルムや太陽電池セルへの接着性を付与する接着付与剤や、難燃性付与剤等を添加することができる。
 
【0045】
  ここで、接着付与剤としては、具体的にはビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、アリルトリメトキシラン、アリルトリエトキシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシランなどの各種アルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物や下記に示すトリアリルイソシアヌレートおよびトリメトキシシランの付加反応物、SiH基とエポキシ基、アルコキシシリル基等の他の1種以上の官能性基とを有する各種シロキサン化合物などが挙げられる。なお、下記式において、Meはメチル基を示す。
 
【0049】
  また、接着付与剤の他の例として、一分子中に少なくとも1個のSiH基を有し、かつフェニレン骨格を少なくとも1個有する珪素原子数1〜100、好ましくは2〜30の有機珪素化合物が挙げられる。ここで、「フェニレン骨格」とは、2〜6価、特には2〜4価の、フェニレン構造、ナフタレン構造、アントラセン構造を包含するものも挙げられる。この化合物としては、一分子中に少なくとも1個、通常1〜20個、特には2〜10個程度のSiH基(即ち、珪素原子に結合した水素原子)を有し、少なくとも1個、通常1〜4個のフェニレン骨格を有し、更にグリシドキシ基等のエポキシ基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルコキシシリル基、エステル基(COO基)、アクリル基、メタクリル基、無水カルボキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基等の官能基を1種又は2種以上含んでもよい、珪素原子数1〜30、好ましくは2〜20、特には4〜10程度の直鎖状又は環状のオルガノシロキサンオリゴマーやオルガノアルコキシシラン等の有機珪素化合物を好適に使用することができる。
 
【0050】
  このような化合物として、具体的には、下記に示す化合物を例示することができる。
【化4】
(nは1〜4である。)
 
【0051】
【化5】
から選ばれる基であり、R
w,R
xは非置換又は置換の一価炭化水素基である。q=1〜50、h=0〜100、好ましくはq=1〜20、h=1〜50である。)で示される基、R”は
【化6】
(R
w,R
xは上記と同様であり、y=0〜100である。)
から選ばれる基であり、Y’は
【化7】
(R
w,R
x,q,hは上記と同様である。)である。z=1〜10である。〕
 
【0052】
  次に、難燃性付与成分についてであるが、これは公知のものを使用することができる。具体的には白金化合物、フュームド酸化チタン、ベンガラ(Fe
2O
3やFe
3O
4)、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール化合物やその誘導体等が挙げられる。また、結晶性シリカ、アルミナ等の充填剤を添加してシロキサン分を相対的に減らすことでも難燃性を付与することができる。
 
【0053】
  本発明のシリコーン組成物は、上述した成分の所定量を2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練りすることによって得ることができる。
 
【0054】
  このように調製されたシリコーン組成物は、好ましくは可塑度150〜1,000、より好ましくは200〜800、特に好ましくは250〜600である。可塑度が150より小さいと未硬化シートの形状維持が困難となったり、タックが強くなったりして使いづらくなる。また、1,000を超えるとまとまりが無くなり、シート化工程が困難となる。なお、可塑度はJIS  K  6249:2003に準じて測定できる。
 
【0055】
  硬化性シリコーン組成物の硬さは、シリコーンゴムの場合にはタイプAデュロメータ硬さとして5〜80が好ましく、40〜70がより好ましい。
 
【0056】
  本発明のシリコーン組成物をフィルム1上に層状に直接成形する場合、成形方法としては、特に限定されないが、押し出し成形、カレンダー成形等が用いられる。この際、シリコーン組成物の厚さは、好ましくは0.02〜3.0mm、より好ましくは0.2〜0.8mmである。0.02mmより薄い場合、後で太陽電池素子を挟む際、凹凸のあるセル表面への追随性に問題が生じる場合があり、3.0mmより厚くしても、積層フィルムの重量が大きくなるだけで厚くする効果は小さい。
 
【0057】
  本発明のシリコーン組成物は未硬化状態であるため、一般的な高分子系樹脂シートとは異なり表面にタック(粘着性)を有する。そこで、
図1に示すように、光透過性フィルム及び背面保護フィルムのフィルム1と未加硫状態のシリコーン組成物層2aとの積層フィルムを作製した後、未加硫状態のシリコーン組成物層2aの上にはPE(ポリエチレン)等からなるエンボス加工されたカバーフィルム3を配置すると、フィルム1と硬化性シリコーン組成物層2aとカバーフィルム3からなる複合体を巻き取ることができて好適である。なお、
図1において、フィルム1とシリコーン組成物層2aとからなる積層フィルムを使用する際には、このPE等のカバーフィルム3を剥がして使用する。
 
【0058】
(ii)積層体形成工程(
図2)
  2組の上記積層フィルム(フィルム1と未加硫状態のシリコーン組成物層2aの積層フィルム)からPE製カバーフィルム3を剥離し、
図2に示すように、一方の積層フィルムのシリコーン組成物層2aに接するように封止したい太陽電池素子4を配置し、他方の積層フィルムを硬化性シリコーン組成物層2aが太陽電池素子4と接するように重ねる。即ち、二枚の積層フィルムの硬化性シリコーン組成物層2a同士を対向させた状態で、該硬化性シリコーン組成物層2aの間に太陽電池素子4を挟み込んで積層して、「フィルム1(光透過性フィルム)/硬化性シリコーン組成物層2a/太陽電池素子4/硬化性シリコーン組成物層2a/フィルム1(背面保護フィルム)」からなる積層体とする。
 
【0059】
  なお、太陽電池素子4のタイプとしては特に制限はなく、例えば、結晶系太陽電池セル、アモルファス太陽電池セル、有機薄膜太陽電池セル、CIGS太陽電池セルを用いることができる。
 
【0060】
(iii)真空ラミネート工程(
図3)
  上記積層体を真空ラミネータ装置に配置する際に該積層体と真空ラミネータ装置との間に該装置から積層体への圧力及び熱の伝達を緩衝する緩衝材を挿入して配置する。詳しくは、
図3に示すように、上記工程(ii)で作製した積層体の上下両面に該積層体よりも面積の大きいシート状の緩衝材5を積層体を覆うように配置し、真空ラミネータ装置の所定位置(
図3では加熱板21上)に配置する。このとき、積層体の上下両面に緩衝材5を配置する構成が本発明の効果が最も得られる態様であるが、積層体のいずれか一方の面のみに緩衝材5を配置しても本発明の効果は得られる。
 
【0061】
  ここで、緩衝材5は、真空ラミネータ装置から上記積層体への圧力及び熱の伝達を緩衝するものであり、積層体を真空ラミネータ装置に置いた直後から加熱板21からの熱により急激に温度上昇するのを抑えるとともに、ダイアフラム(弾性膜)22で隔てた2つの隔室の圧力差を利用したダイアフラム22による積層体の押圧を均一にする効果がある。即ち、緩衝材5は加熱板21からの熱を完全に断熱するのではなく、積層体への伝熱の速さを緩やかにして(昇温速度を遅くして)積層体を所定の温度まで加熱するためのものである。また、緩衝材5はダイアフラム22による押圧力が積層体に局所的に加わるのを抑えて該積層体に均一に加わるようにするためのものでもある。
 
【0062】
  緩衝材5は、有機高分子材料からなる厚さ0.5〜10mmの弾性体シートであることが好ましく、例えばゴムシート(エラストマーシート)やスポンジシート(スポンジゴムシート)が挙げられる。加熱板21に接触して熱に対する緩衝性が求められることから、緩衝材5の材質としては真空ラミネート装置における加熱に対して耐熱性を有する有機高分子材料であることが好ましく、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマーなどが例示される。このうち、耐久性や本発明で用いるシリコーン組成物の架橋性に影響を与えないという点でシリコーンゴムが好ましく、緩衝性に優れ、大面積であっても比較的軽量なため、取扱い性に優れるという点でシリコーンスポンジが好ましい。
 
【0063】
  熱に対する緩衝性の点では、緩衝材5の熱伝導率が0.02W/(m・K)以上0.25W/(m・K)以下であることが好ましく、0.05W/(m・K)以上0.20W/(m・K)以下であることがより好ましい。熱伝導率が0.25W/(m・K)を超えると、減圧脱泡する工程において、シリコーン組成物の硬化反応が始まってしまい、加熱押圧工程において、空隙が生じるおそれがあるため好ましくない。この熱伝導率は、ゴムシートであればJIS  R  2616に基づいて測定されるものであり、スポンジシートであれば、柴山式(アセトン−ベンゼン法)ASTM  D4351、又はJIS  A  1412−2:1999に基づいて測定されるものである。
 
【0064】
  また、圧力に対する緩衝性の点では、緩衝材5の硬さとして、JIS  K:6249:2003に基づいて測定したタイプAデュロメータ硬さが30以下であることが好ましく、タイプEデュロメータ硬さとして35程度であることがより好ましい。この場合、シリコーンスポンジシートが特に好適である。
 
【0065】
  緩衝材5の厚さは、真空ラミネータ装置から上記積層体への圧力及び熱の伝達の緩衝性の点から好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは3〜7mmである。0.5mmより薄い場合、緩衝能が小さく、積層体の急激な温度上昇による封止性の悪化に至るおそれがあり、10mmを超えると緩衝能は十分であるものの真空ラミネータ装置の加熱板21からの熱が積層体のシリコーン組成物層2aに伝わりにくく、加熱硬化時間を非常に長くする必要がある。
 
【0066】
  図3のように、上記積層体を緩衝材5を介して真空ラミネータ装置に配置した後、減圧空間内で一定時間脱泡させ、次いで加熱板21で積層体を加熱しながらダイアフラム22で押圧して(必要に応じて上方からも加熱板で加熱しながら)シリコーン組成物層2aを硬化させ太陽電池素子を封止する。
 
【0067】
  詳しくは、真空ラミネータ装置としては、ダイアフラム(柔軟な膜体)22で仕切られた、隣接する2つの減圧槽を有する汎用の太陽電池モジュール作製用のラミネータ装置を採用でき、例えば一方の減圧槽内に
図3に示すように上記積層体を緩衝材5を介して配置して2つの減圧槽を減圧し、積層体内を略真空状態にすると共に加熱板21(及び不図示の積層体上側に配置されたもう1つの加熱板)から緩衝材5を介して積層体をその片面(又は上下両面)から加熱を開始し、次いで積層体が配置された減圧槽内の減圧状態を維持したまま、他方の減圧槽の減圧を開放して常圧(大気圧)とし又は加圧して2つの減圧槽間の圧力差を利用してダイアフラム22で緩衝材5を介して積層体をその板厚方向に圧縮するようにする。
 
【0068】
  なお、真空ラミネート装置において積層体を減圧空間内に配置する場合、その減圧度は特に制限されないが、−0.08〜−0.10MPaであることが好ましい。ここでの減圧度とは、積層体を入れる空間のゲージ圧力である。即ち、ダイアフラムを介して上下の空間を減圧(真空)とした後、上だけ大気圧に開放すればダイアフラムが下に張りつくようになるが、このときの下の空間と上の空間の大気圧の差がダイアフラムの押し圧となる。
 
【0069】
  また、真空ラミネータ装置における加熱・押圧条件も適宜選定されるが、70〜160℃、特に100〜150℃の加熱板21による加熱下で、3〜5分の真空減圧を行った後に、他方の減圧槽を大気圧に開放した状態でダイアフラム22により緩衝材5を介して積層体を5〜30分押圧することが好ましい。この押圧力は0.08〜0.1MPaであることが好ましく、0.09〜1.0MPaであることがより好ましい。
 
【0070】
  この押圧時にシリコーン組成物層2aのシリコーン組成物の架橋が促進され、硬化すると共にフィルム1及び太陽電池素子4と接着する。加熱温度が70℃より低い場合、硬化速度が遅く成形時間内に硬化が完全に完了しない可能性があり、160℃より高い場合、硬化速度が速くなり、押圧前の真空引き中に硬化が始まることで、押圧不良による空隙が残る可能性がある。なお、一度加熱成形により得られた積層体を100〜150℃で10分〜10時間程度ポストキュアーしてもよい。
 
【0071】
  これにより、減圧下で2枚のフィルム1それぞれの硬化性シリコーン組成物層2a同士が圧接されることから、シリコーン組成物層2a同士は、間に気泡などの空隙(ボイド)を取り込むことなく密着した状態となる。そして、この状態で加熱されてシリコーン組成物層2aを構成するシリコーン組成物が硬化してシリコーン封止層2となり、その結果、太陽電池素子4はそのシリコーン封止層2の中に封止されて太陽電池モジュール10が完成する(
図4)。
 
【実施例】
【0072】
  以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0073】
[実施例1]
  ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約6,000であるオルガノポリシロキサン100質量部、BET比表面積300m
2/gの乾式シリカ  アエロジル300(日本エアロジル(株)製)70質量部、分散剤としてヘキサメチルジシラザン16質量部、水4質量部を添加し、ニーダーにて混練りし、170℃にて2時間加熱処理してコンパウンドを調製した。
  上記コンパウンド100質量部に対し、付加架橋硬化剤としてC−25A(白金触媒)/C−25B(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)(共に、信越化学工業(株)製)をそれぞれ0.5/2.0質量部、並びに下記化学式で示される接着付与剤を0.25質量部を2本ロールで混練後添加し均一に混合し、未加硫状態の乳白色の樹脂組成物を得た。
【0074】
【化8】
【0075】
[フィルムと未加硫状態のシリコーン組成物層の積層フィルムの作製]
  厚さが50μmのETFEフィルム(商品名:アフレックス50MW500DCS(旭硝子株式会社製))の表面に、上記のようにして得た未加硫状態のシリコーン樹脂組成物を厚さ0.5mmの硬化性シリコーン組成物層となるよう積層加工した。なお、この加工は逆L型4本カレンダーロールを用いて行い、該硬化性シリコーン組成物層の表面にカバーフィルムとしてPE製エンボスフィルム(ALEFタイプ、石島化学工業(株)製;厚さ0.1mm)を積層させて、
図1に示す構成のETFEフィルム(フィルム1)/硬化性シリコーン組成物層2a/エンボスフィルム(カバーフィルム3)からなる表面がカバーフィルムで保護された積層フィルムを作製した。この積層フィルムを作製するための作業性は良好であった。
  次いで、このカバーフィルム付き積層フィルムを500mm角に切断したものを2枚用意した。
【0076】
[上記積層フィルムと太陽電池セルの重ね合わせ(積層体の形成)]
  上記のようにして得られた一方の積層フィルムからカバーフィルムを剥離し、該積層フィルムの硬化性シリコーン組成物層の上に封入物として156mm角の太陽電池用p型単結晶セルを4直サイズ(縦横2×2列)に配列した太陽電池ストリングスを載せた。次に、他方の積層フィルムからカバーフィルムを剥離した後、該積層フィルムの未加硫状態のシリコーン組成物層が太陽電池ストリングスと接するように載せ、
図2に示すような積層体を作製した。
【0077】
[真空ラミネータ装置を用いたシリコーン組成物層の架橋と太陽電池モジュール化(真空ラミネート処理)]
  上記で得られた「ETFEフィルム/硬化性シリコーン組成物層/結晶系太陽電池セル/硬化性シリコーン組成物層/ETFEフィルム」からなる積層体の上下両面に、600mm角のシリコーン製スポンジシート(商品名SPO−35R1、厚さ5mmt、タイプEデュロメータ硬さ35、熱伝導率5.0×10
-2W/(m・K)(柴山式(アセトン−ベンゼン法)  ASTM  D4351に準拠):タイガースポリマー株式会社製)を積層体を覆うように配置した状態で、
図3に示すように真空ラミネータ装置においてダイアフラム22で隔たれた2つの減圧槽の一方の加熱板21上に配置し、真空ラミネート処理として、140℃の加熱板21で加熱した状態で、2つの減圧槽共に5分間減圧した後、積層体を配置していない減圧槽側を30分間大気圧開放することでダイアフラム22で圧着することにより、積層体の硬化性シリコーン組成物層を硬化して、
図4に示すような「ETFEフィルム(フィルム1)/シリコーン封止層2/結晶系太陽電池セル(太陽電池素子4)/シリコーン封止層2/ETFEフィルム(フィルム1)」からなる太陽電池モジュールを作製した。
【0078】
[実施例2]
  太陽電池セルとして、400×400mmのアモルファス太陽電池セル(FWAVE株式会社製)を用い、それ以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。即ち、実施例1と同様にして
図1に示すETFEフィルム(フィルム1)/硬化性シリコーン組成物層2a/エンボスフィルム(カバーフィルム3)からなる表面がカバーフィルムで保護された積層フィルムを2セット作製した。この積層フィルムを作製するための作業性は良好であった。次いで、この積層フィルムを用いて「ETFEフィルム(フィルム1)/硬化性シリコーン組成物層2a/アモルファス太陽電池セル(太陽電池素子4’)/硬化性シリコーン組成物層2a/ETFEフィルム(フィルム1)」からなる積層体を形成し、この積層体の上下両面に、600mm角のシリコーン製スポンジシート(商品名SPO−35R1、厚さ5mmt、タイプEデュロメータ硬さ35、熱伝導率5.0×10
-2W/(m・K)(柴山式(アセトン−ベンゼン法)  ASTM  D4351に準拠):タイガースポリマー株式会社製)を積層体を覆うように配置した状態で、実施例1と同様に真空ラミネータ装置においてダイアフラムで隔たれた2つの減圧槽の一方の加熱板上に配置し、真空ラミネート処理として、140℃の加熱板で加熱した状態で、2つの減圧槽共に5分間減圧した後、積層体を配置していない減圧槽側を30分間大気圧開放することでダイアフラムで圧着することにより、積層体の硬化性シリコーン組成物層を硬化して、「ETFEフィルム(フィルム1)/シリコーン封止層2/アモルファス太陽電池セル(太陽電池素子4’)/シリコーン封止層2/ETFEフィルム(フィルム1)」からなる太陽電池モジュールを作製した。
【0079】
[比較例1]
  実施例1と同様にして、2本ロールを用いて乳白色の樹脂組成物(シリコーン組成物)を混練し、厚さ0.5mmとなるようシート状に加工して硬化性シリコーン組成物シート92aとし、該シリコーン組成物シート92aの両面をカバーフィルム3として2枚のPE製のエンボスフィルム(ALEFタイプ、石島化学工業(株)製;厚さ0.1mm))で挟みこんで、
図5に示すような積層シートを得た。
【0080】
[硬化性シリコーン組成物シートとETFEフィルムの貼り合わせ(積層フィルムの作製)、及び積層フィルムと太陽電池セルの重ね合わせ(積層体の形成)]
  上記エンボスフィルム(カバーフィルム3)/硬化性シリコーン組成物シート92a/エンボスフィルム(カバーフィルム3)からなる積層シートの片面のカバーフィルム3を剥離し、露出した硬化性シリコーン組成物シート92aに厚さ50μmのETFEフィルム(商品名:アフレックス50MW500DCS(旭硝子株式会社製))を貼り付けて、ETFEフィルム(フィルム1)/硬化性シリコーン組成物シート92a/エンボスフィルム(カバーフィルム3)からなる表面がカバーフィルムで保護された積層フィルムを2セット作製した。この場合、薄いETFEフィルムを単独で扱うためにその取り扱いが難しく、積層化の作業性が悪かった。
  次に、この積層フィルムからカバーフィルムを剥離し、該積層フィルムの硬化性シリコーン組成物シートの上に封入物として実施例2と同じアモルファス太陽電池セルを載せた。次に、他方の積層フィルムからカバーフィルムを剥離した後、該積層フィルムの未加硫状態のシリコーン組成物シートが太陽電池セルと接するように載せ、
図6に示すような「ETFEフィルム(フィルム1)/硬化性シリコーン組成物シート92a/アモルファス太陽電池セル(太陽電池素子4’)/硬化性シリコーン組成物シート92a/ETFEフィルム(フィルム1)」からなる積層体を作製した。このアモルファス太陽電池セルを硬化性シリコーン組成物シート92aで挟み込むようにした積層体の構成は実施例2と同様であるが、フィルム1と硬化性シリコーン組成物シート92aとの間に空隙1vが観察された。
【0081】
[真空ラミネータ装置を用いたシリコーン組成物シートの架橋と太陽電池モジュール化(真空ラミネート処理)]
  上記で得られた積層体の上下両面に、真空ラミネータ装置の加熱板等への密着防止のために600mm角、厚さ200μmのフッ素樹脂系シート95を積層体を覆うように配置した状態で、
図7に示すように真空ラミネータ装置においてダイアフラム22で隔たれた2つの減圧槽の一方の加熱板21上に配置し、真空ラミネート処理として、130℃の加熱板21で加熱した状態で、2つの減圧槽共に5分間減圧した後、積層体を配置していない減圧槽側を30分間大気圧開放することでダイアフラム22で圧着することにより、積層体の硬化性シリコーン組成物シートを硬化して、「ETFEフィルム(フィルム1)/シリコーン封止層/アモルファス太陽電池セル(太陽電池素子4’)/シリコーン封止層/ETFEフィルム(フィルム1)」からなる太陽電池モジュールを作製した。
【0082】
[比較例2]
  比較例1と同様の方法で積層体を作製した。即ち、2本ロールにより実施例1と同じ樹脂組成物(シリコーン組成物)を厚さ0.5mmとなるようシート状に加工した硬化性シリコーン組成物シート92aにETFEフィルム(商品名:アフレックス50MW500DCS(旭硝子株式会社製))を貼りつけてなる積層フィルム2セットを用いて、薄膜太陽電池セルを硬化性シリコーン組成物シートで挟み込むようにして「ETFEフィルム(フィルム1)/硬化性シリコーン組成物シート92a/薄膜太陽電池セル(太陽電池素子)/硬化性シリコーン組成物シート92a/ETFEフィルム(フィルム1)」からなる積層体を作製した。なお、積層フィルムを作製する際に、薄いETFEフィルムを単独で扱うためにその取り扱いが難しく、積層化の作業性が悪かった。
  次いで、この積層体の上下両面に、600mm角のシリコーン製スポンジシート(商品名SPO−35R1、厚さ5mmt、タイプEデュロメータ硬さ35、熱伝導率5.0×10
-2W/(m・K)(柴山式(アセトン−ベンゼン法)  ASTM  D4351に準拠):タイガースポリマー株式会社製)を積層体を覆うように配置した状態で、実施例1と同様に、真空ラミネータ装置においてダイアフラムで隔たれた2つの減圧槽の一方の加熱板上に配置し、真空ラミネート処理として、140℃の加熱板で加熱した状態で、2つの減圧槽共に5分間減圧した後、積層体を配置していない減圧槽側を30分間大気圧開放することでダイアフラムで圧着することにより、積層体の硬化性シリコーン組成物シートを硬化して、「ETFEフィルム(フィルム1)/シリコーン封止層/薄膜太陽電池セル/シリコーン封止層/ETFEフィルム(フィルム1)」からなる太陽電池モジュールを作製した。
【0083】
[比較例3]
  実施例2において、真空ラミネート装置に挿入したシリコーン製スポンジシート(緩衝材5)に代えて比較例1で使用したフッ素樹脂系シート95を用いて真空ラミネート処理を行い、それ以外は実施例2と同様にして太陽電池モジュールを作製した。即ち、実施例2と同様にして「ETFEフィルム(フィルム1)/硬化性シリコーン組成物層2a/アモルファス太陽電池セル(太陽電池素子4’)/硬化性シリコーン組成物層2a/ETFEフィルム(フィルム1)」からなる積層体を形成し、この積層体の上下両面に600mm角、厚さ200μmのフッ素樹脂系シート95を積層体を覆うように配置した状態で、比較例1と同様に、真空ラミネータ装置においてダイアフラムで隔たれた2つの減圧槽の一方の加熱板21上に配置し、真空ラミネート処理として、130℃の加熱板で加熱した状態で、2つの減圧槽共に5分間減圧した後、積層体を配置していない減圧槽側を30分間大気圧開放することでダイアフラムで圧着することにより、積層体の硬化性シリコーン組成物層を硬化して、「ETFEフィルム(フィルム1)/シリコーン封止層/アモルファス太陽電池セル(太陽電池素子4’)/シリコーン封止層/ETFEフィルム(フィルム1)」からなる太陽電池モジュールを作製した。
【0084】
[評価方法]
(1)積層フィルムの積層化作業性
  積層フィルムの積層化の作業性が容易であったか否かを評価した。具体的には、厚さの薄いフィルム1が積層フィルムの積層化に当たって問題となるか否かで評価し、問題のない場合を良好(マーク:〇)、フィルムの取り扱いが困難で問題となった場合を不良(マーク:×)とした。
(2)太陽電池モジュールの外観評価
  以上のようにして得られた太陽電池モジュールの外観評価を目視で行い、空隙(封止の不良)並びにフィルムの伸び等の成形不良の有無を確認した。このとき、フィルムとシリコーン封止層との間に空隙が認められた場合や太陽電池セルとシリコーン封止層との間に空隙が認められた場合には封止不良(マーク:×)と判定した。また、フィルムに部分的な伸びが認められた場合や、薄型の太陽電池素子に皺が認められた場合には成形不良(マーク:×)と判定した。それらの封止不良や成形不良が認められない場合には、良好(マーク:〇)と判定した。
(3)総合評価
  上記(1)、(2)のいずれかでも不良であった場合には不合格(マーク:×)、いずれも良好であった場合には合格(マーク:〇)とした。
  その結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
  以上の結果より、フィルム上にあらかじめ未加硫状態の硬化性シリコーン組成物層を積層させた積層フィルムで太陽電池セルを挟み、シリコーンスポンジシートからなる緩衝材を用いて真空ラミネートを行うことで、容易にかつ外観不良がなく封止信頼性を高めた太陽電池をモジュール化することができた。これにより、軽量でフレキシブルなシリコーン封止太陽電池モジュールを提供することができる。比較例では、シート状に加工した未加硫の硬化性シリコーン組成物シートに薄いフィルムを貼って積層させたが、未加硫の硬化性シリコーン組成物シートのタックと薄いフィルムの取扱いが困難で、両者を空隙を含むことなく完全に密着させることができず、
図6に示すようにフィルム1と硬化性シリコーン組成物シート92aとの間に空隙が残り、真空ラミネート処理後には部分的に受光面側のフィルムや背面保護側のフィルムが伸びて薄くなってしまう結果となった。また、緩衝材を使用しない場合、積層体が急激に加熱されることによって積層体に皺が入る結果となった。
【0087】
  なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。