(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化合物(a1)と前記化合物(a2)の混合物に前記ポリイソシアネート(c)を反応させてイソシアネート基を有する反応中間体を製造し、次いで該反応中間体に前記化合物(b)を反応させる、請求項7に記載の製造方法。
前記化合物(a1)が前記化合物(a2)の活性水素含有基の1つを活性水素含有基以外の基に変換して得られた化合物であり、前記化合物(a1)と化合物(a2)の混合物が前記変換において得られた、生成した化合物(a1)と未変換の化合物(a2)との混合物である、請求項8に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
本明細書において、光硬化性組成物、コーティング液およびハードコート層形成用組成物を総称して、「硬化性組成物」と記すこともある。ただし、それらが溶媒を含む場合は溶媒以外の成分の組成物をいう。
本明細書における下記の用語の意味は以下の通りである。
「ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖」とは、2つ以上のオキシペルフルオロアルキレン単位が連結した分子鎖を意味する。
「オキシペルフルオロアルキレン単位」とは、ペルフルオロアルキレン基の片末端に酸素原子を有する単位を意味し、その化学式は、酸素原子をペルフルオロアルキレン基の右側に記載して表すものとする。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素−炭素原子間においてエーテル結合(−O−)を形成する酸素原子を意味する。
「フルオロアルキレン基」とは、アルキレン基の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換された基を意味し、「ペルフルオロアルキレン基」とは、アルキレン基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基を意味する。
「ペルフルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基を意味する。
「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称である。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
「対象物」とは、防汚性を付与されるものを意味する。対象物としては、たとえば、ハードコート層、撥液層、離型層、成形品等が挙げられる。
【0014】
〔含フッ素化合物〕
本発明の含フッ素化合物(以下、「含フッ素化合物(X)」とも記す。)は、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および1つの活性水素含有基を有する化合物(a1)と、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および2つの活性水素含有基を有する化合物(a2)と、重合性炭素−炭素二重結合および活性水素含有基を有する化合物(b)と、ポリイソシアネート(c)との反応生成物であり、化合物(a1)に由来する部分と化合物(a2)に由来する部分との合計(100質量%)に対する化合物(a1)に由来する部分の割合は60〜99.9質量%である。
【0015】
含フッ素化合物(X)は反応生成物であり、かつ化合物(a2)およびポリイソシアネート(c)が多官能性化合物であることから、含フッ素化合物(X)は、通常、単一化合物ではなく、上記各反応性化合物に由来する部分の数が異なる化合物の混合物である。
化合物(a1)、化合物(a2)、化合物(b)およびポリイソシアネート(c)を反応させて含フッ素化合物(X)を得る場合、ポリイソシアネート(c)と、これに反応する化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(b)との組み合わせによって、以下の含フッ素化合物(X1)〜(X4)が生成すると考えられる。
(X1)ポリイソシアネート(c)に化合物(a1)および化合物(b)が反応した含フッ素化合物。
(X2)ポリイソシアネート(c)に化合物(a1)のみが反応した含フッ素化合物。
(X3)ポリイソシアネート(c)に化合物(b)のみが反応した含フッ素化合物。
(X4)2つ以上のポリイソシアネート(c)の間を化合物(a2)が連結し、さらに各ポリイソシアネート(c)の、架橋に寄与しないイソシアナート基に化合物(a1)および化合物(b)のいずれか一方または両方が反応した架橋タイプの含フッ素化合物。
【0016】
含フッ素化合物(X1)としては、(ポリイソシアネート(c)のイソシアナート基の数−1)種類の含フッ素化合物(X1)が存在する。たとえば、ポリイソシアネート(c)が3つのイソシアナート基を有する場合には、ポリイソシアネート(c)に2つの化合物(a1)および1つの化合物(b)が反応した含フッ素化合物と、ポリイソシアネート(c)に1つの化合物(a1)および2つの化合物(b)が反応した含フッ素化合物の2種類が存在する。
また、含フッ素化合物(X4)としては、全体の化合物(a2)およびポリイソシアネート(c)の数、および各ポリイソシアネート(c)に反応する化合物(a1)および化合物(b)の組み合わせに応じて、無数の種類が存在する。
【0017】
たとえば、活性水素含有基がヒドロキシ基であり、ポリイソシアネート(c)がトリイソシアネートである場合、下式に示すように、片末端がトリフルオロメチル基である化合物(a1)と、化合物(a2)と、化合物(b)と、ポリイソシアネート(c)とが反応すると、各化合物がウレタン結合によって結合された含フッ素化合物(X1)〜(X4)の混合物が製造され得る。
【0019】
ただし、Ra1は、化合物(a1)から末端のトリフルオロメチル基およびヒドロキシ基を除いた残基であり、Ra2は、化合物(a2)から両末端のヒドロキシ基を除いた残基であり、Rbは、化合物(b)から末端の重合性炭素−炭素二重結合およびヒドロキシ基を除いた残基であり、Rcは、ポリイソシアネート(c)からイソシアナート基を除いた残基である。また、含フッ素化合物(X4)は、多くの種類のうちの一例である。
【0020】
(ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖)
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖は、2つ以上のオキシペルフルオロアルキレン単位が連結した分子鎖であり、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の一端は炭素原子、他端は酸素原子である。本明細書ではその化学式を炭素末端側を左側に、酸素末端側を右側に記載して表す。
化合物(a1)および化合物(a2)はポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有する。それぞれの化合物におけるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖は同一でも異なっていてもよい。通常は、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有する原料化合物から化合物(a1)および化合物(a2)が製造されることより、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が同一の化合物(a1)と化合物(a2)とを使用して、含フッ素化合物(X)が製造される。また、化合物(a2)の活性水素含有基の1つを活性水素含有基以外の基に変換して得られた化合物(a1)を用いる場合もまたポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が同一の化合物(a1)と化合物(a2)とが使用される。
【0021】
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖は、対象物に防汚性を付与する。
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖としては、対象物に防汚性を充分に付与する点から、下式で表される鎖が好ましい。
化合物(a1)のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖:(C
m1F
2m1O)
n1
化合物(a2)のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖:(C
m2F
2m2O)
n2
ただし、m1、m2は、1〜6の整数であり、n1、n2は、2〜200の整数であり、(C
m1F
2m1O)
n1は、m1の異なる2種以上のC
m1F
2m1Oからなるものであってもよく、(C
m2F
2m2O)
n2は、m2の異なる2種以上のC
m2F
2m2Oからなるものであってもよい。
(C
m1F
2m1O)
n1、(C
m2F
2m2O)
n2は同じ意味を表すことより、以下、(C
m1F
2m1O)
n1を代表にしてポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を説明する。
【0022】
m1は、対象物に防汚性を充分に付与する点からは、1〜3の整数が好ましく、1または2が特に好ましい。
m1が2以上の場合、C
m1F
2m1は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。対象物に防汚性を充分に付与する点からは、直鎖状が好ましい。
【0023】
n1は、対象物に防汚性を充分に付与する点から、3以上の整数が好ましく、4以上の整数がより好ましく、5以上の整数が特に好ましい。化合物(a1)や化合物(a2)の数平均分子量が大きすぎると、含フッ素化合物(X)の単位分子量当たりに存在する重合性炭素−炭素二重結合の数が減少し、対象物の防汚性の擦れ耐性が低下する点、また、硬化性組成物における含フッ素化合物(X)と他の成分との相溶性に優れる点から、n1は、100以下の整数が好ましく、80以下の整数がより好ましく、60以下の整数が特に好ましい。
【0024】
(C
m1F
2m1O)
n1において、m1の異なる2種以上のC
m1F
2m1Oが存在する場合、各C
m1F
2m1Oの結合順序は限定されない。たとえば、CF
2OとCF
2CF
2Oが存在する場合、CF
2OとCF
2CF
2Oがランダムまたは交互に配置されてもよく、複数のCF
2Oからなるブロックと複数のCF
2CF
2Oからなるブロックが連結してもよい。
【0025】
(C
m1F
2m1O)
n1は、対象物に防汚性を充分に付与する点からは、{(CF
2O)
n11(CF
2CF
2O)
n12}(ただし、n11は、1以上の整数であり、n12は、1以上の整数であり、n11+n12は、2〜200の整数であり、n11個のCF
2Oおよびn12個のCF
2CF
2Oの結合順序は限定されない。)が好ましい。
{(CF
2O)
n11(CF
2CF
2O)
n12}は運動性に優れ、そのため、対象物の潤滑性が優れる。特に(CF
2O)
n11は、炭素数が1で酸素原子を有する基であるため、運動性により優れる。
【0026】
{(CF
2O)
n11(CF
2CF
2O)
n12}は、化合物(a1)や化合物(a2)の製造のしやすさ等の点から、{(CF
2O)
n11(CF
2CF
2O)
n12}の後述するD
11の−CH
2−に結合する側の末端はCF
2Oであることが好ましい。−CH
2−に結合する側の末端がCF
2Oである{(CF
2O)
n11(CF
2CF
2O)
n12}を、以下、CF
2O{(CF
2O)
n11−1(CF
2CF
2O)
n12}と表す。なお、CF
2O{(CF
2O)
n11−1(CF
2CF
2O)
n12}においても、前記のように、(n11−1)個の(CF
2O)およびn12個の(CF
2CF
2O)の結合順序は限定されない。
【0027】
n11は、対象物に防汚性を充分に付与する点から、2以上の整数が好ましく、3以上の整数が特に好ましい。化合物(a1)の数平均分子量が大きすぎると、含フッ素化合物(X)の単位分子量当たりに存在する重合性炭素−炭素二重結合の数が減少し、対象物の防汚性の擦れ耐性が低下する点、また、硬化性組成物における含フッ素化合物(X)と他の成分との相溶性に優れる点から、n11は、50以下の整数が好ましく、40以下の整数がより好ましく、30以下の整数が特に好ましい。
【0028】
n12は、対象物に防汚性を充分に付与する点から、2以上の整数が特に好ましい。化合物(a1)や化合物(a2)の数平均分子量が大きすぎると、含フッ素化合物(X)の単位分子量当たりに存在する重合性炭素−炭素二重結合の数が減少し、対象物の防汚性の擦れ耐性が低下する点、また、硬化性組成物における含フッ素化合物(X)と他の成分との相溶性に優れる点から、n12は、50以下の整数が好ましく、40以下の整数がより好ましく、30以下の整数が特に好ましい。
【0029】
n11とn12との比率は、対象物に潤滑性を充分に付与する点からは、n12がn11の1〜3倍であることが好ましい。
【0030】
化合物(a1)や化合物(a2)は、(C
m1F
2m1O)
n1におけるn1の数が異なる複数種の化合物の混合物として製造され得る。この場合、混合物としてのn1の平均値は、2〜100が好ましく、4〜80が特に好ましい。また、化合物(a1)や化合物(a2)は、{(CF
2O)
n11(CF
2CF
2O)
n12}におけるn11およびn12の数が異なる複数種の化合物の混合物として製造され得る。この場合、混合物としてのn11の平均値は、1〜50が好ましく、n12の平均値は1〜50が好ましい。
【0031】
(活性水素含有基)
化合物(a1)および化合物(a2)における活性水素含有基は、ポリイソシアネート(c)のイソシアナート基と反応し、化合物(a1)および化合物(a2)の構造を含フッ素化合物(X)の構造の一部として組み入れるためのものである。
活性水素含有基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられる。原料の入手容易性の点から、ヒドロキシ基が特に好ましい。
【0032】
(化合物(a1))
化合物(a1)は、前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および1つの活性水素含有基を有する化合物である。化合物(a1)は、対象物(ハードコート層等)に防汚性を充分に付与する点から、1つのペルフルオロアルキル基を有することが好ましい。
【0033】
化合物(a1)としては、対象物に防汚性を充分に付与する点から、下式(1)で表される化合物(1)が好ましい。
D
1−(C
m1F
2m1O)
n1−E
1 ・・・(1)
ただし、
D
1は、D
11−R
f1−O−CH
2−またはD
12−O−であり、
D
11は、CF
3−またはCF
3−O−であり、
R
f1は、炭素数1〜20のフルオロアルキレン基、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜20のフルオロアルキレン基、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜20のアルキレン基であり、
D
12は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基であり、
m1は、1〜6の整数であり、
n1は、2〜200の整数であり、(C
m1F
2m1O)
n1は、m1の異なる2種以上のC
m1F
2m1Oからなるものであってもよく、
E
1は、1つのヒドロキシ基を有する1価の有機基である。
【0034】
D
11はCF
3−またはCF
3−O−であるため、化合物(1)の一方の末端がCF
3−となる。そのため、化合物(1)は、対象物に防汚性を充分に付与できる。
【0035】
R
f1における水素原子の数は、対象物に潤滑性を充分に付与する点からは、1以上が好ましい。R
f1における水素原子の数は、(R
f1の炭素数)×2以下であり、対象物に防汚性を充分に付与する点から、(R
f1の炭素数)以下が好ましい。対象物に防汚性を充分に付与する点からは、R
f1が水素原子を含まないことが好ましい。
【0036】
R
f1が水素原子を有することによって、上述の(C
m1F
2m1O)
n1の運動性がより向上し、対象物に潤滑性を充分に付与でき、硬化性組成物における含フッ素化合物(X)と他の成分との相溶性が優れる。一方、R
f1が水素原子を有しない場合、対象物に潤滑性を充分に付与できず、硬化性組成物における含フッ素化合物(X)と他の成分との相溶性が不充分であり、硬化性組成物の貯蔵安定性が不充分である。
【0037】
R
f1としては、化合物(1)の製造のしやすさの点から、下式(g1−1)で表される基、下式(g1−2)で表される基または下式(g1−3)で表される基が好ましい。なお、R
FはD
11に結合する基である。
−R
F−O−CHFCF
2− ・・・(g1−1)
−R
F−CHFCF
2− ・・・(g1−2)
−R
F−C
zH
2z− ・・・(g1−3)
ただし、R
Fは、単結合、炭素数1〜15のペルフルオロアルキレン基、または炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜15のペルフルオロアルキレン基であり、zは、1〜4の整数である。
【0038】
R
Fは、対象物に防汚性を充分に付与する点から、炭素数1〜9のペルフルオロアルキレン基、または炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜13のペルフルオロアルキレン基が好ましい。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
zは、1〜3の整数が好ましい。zが3以上の場合、C
zH
2zは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状が好ましい。
【0039】
R
f1としては、化合物(1)の製造のしやすさの点から、式(g1−1)で表される基が好ましく、D
11−R
f1−O−CH
2−基としては、下記の式(g2)で表される基が好ましい。
R
F2−O−CHFCF
2−O−CH
2− ・・・(g2)
ただし、R
F2は、末端がCF
3である、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基である。
式(g2)で表される基は、HO−CH
2−を有するポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖含有化合物に、R
F2−O−CF=CF
2で表されるペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)を付加させることにより形成できる。
式(g2)で表される基の具体例としては、以下の基が挙げられる。
CF
3O−CHFCF
2−O−CH
2−、
CF
3CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−、
CF
3CF
2CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−、
CF
3CF
2CF
2CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−、
CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−。
【0040】
D
12のペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
D
12としては、対象物に防汚性を充分に付与する点から、炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基が好ましく、CF
3−またはCF
3CF
2−が特に好ましい。
【0041】
E
1としては、−R
1−OH(ただし、R
1は、フッ素原子を有していてもよい2価の有機基である。)が挙げられる。
R
1としては、炭素数10以下のアルキレン基、−OH側末端がメチレン基である炭素数10以下のフルオロアルキレン基が好ましい。
E
1としては、−CF
2CH
2−OH、−CF
2CF
2CH
2−OH、−CF
2CF
2CF
2CH
2−OHが好ましい。
【0042】
化合物(1)の具体例としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2CF
2O)
n1−CF
2CF
2CH
2−OH ・・・(11)
CF
3−CF
2CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
n11−1(CF
2CF
2O)
n12}−CF
2CH
2−OH ・・・(12)
CF
3−O−{(CF
2O)
n11(CF
2CF
2O)
n12}−CF
2CH
2−OH ・・・(13)
CF
3−O−[(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)n
13−CF
2CF
2O]−CF
2CF
2CF
2CH
2−OH ・・・(14)
CF
3−O−(CF
2CF
2O)
n1−CF
2CH
2−OH ・・・(15)
ただし、n13×2+1は、3〜200の整数である。
【0043】
<化合物(a1)の数平均分子量>
化合物(a1)の数平均分子量は、1,000〜6,000が好ましく、1,000〜5,000がより好ましく、1,200〜4,000が特に好ましい。化合物(a1)の数平均分子量が該範囲内であれば、対象物に防汚性を充分に付与できるとともに、化合物(a1)が硬化性組成物における他の成分との相溶性に優れる。
化合物(a1)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によってポリメチルメタクリレートの流出時間と比較すること、あるいは核磁気共鳴装置(NMR)によって内部標準物質と化合物(a1)の末端官能基の積分比を比較することにより求められる。
後述する化合物(a1)および化合物(a2)の製造方法において、化合物(a1)、化合物(a2)、化合物(e1)をそれぞれ分離することが困難な場合には、化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(e1)の混合物の数平均分子量を求める。
【0044】
(化合物(a2))
化合物(a2)は、前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および2つの活性水素含有基を有する化合物である。
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖は、対象物(ハードコート層等)に防汚性を付与する。
化合物(a2)は、化合物(a1)および化合物(a2)の製造のしやすさの点から、化合物(a1)のポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖と同じポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有することが好ましい。
【0045】
化合物(a2)としては、対象物に防汚性を充分に付与する点から、下式(2)で表される化合物(2)が好ましい。
E
21−(C
m2F
2m2O)
n2−E
22 ・・・(2)
ただし、
E
21およびE
22は、それぞれ独立に1つのヒドロキシ基を有する1価の有機基であり、
m2は、1〜6の整数であり、
n2は、2〜200の整数であり、(C
m2F
2m2O)
n2は、m2の異なる2種以上のC
m2F
2m2Oからなるものであってもよい。
【0046】
E
21としては、HO−R
21−(ただし、R
21は、2価の有機基である。)が挙げられる。
R
21としては、炭素数10以下のアルキレン基が好ましい。
E
21としては、HO−CH
2−が好ましい。
【0047】
E
22としては、−R
22−OH(ただし、R
22は、フッ素原子を有していてもよい2価の有機基である。)が挙げられる。
R
22としては、炭素数10以下のアルキレン基、−OH側末端がメチレン基である炭素数10以下のフルオロアルキレン基が好ましい。
E
22としては、−CF
2CH
2−OH、−CF
2CF
2CH
2−OH、−CF
2CF
2CF
2CH
2−OHが好ましい。
【0048】
化合物(2)の具体例としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
HO−CH
2−CF
2CF
2O(CF
2CF
2CF
2O)
n2−1−CF
2CF
2CH
2−OH ・・・(21)
HO−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
n21−1(CF
2CF
2O)
n22}−CF
2CH
2−OH ・・・(23)
HO−CH
2−CF
2CF
2CF
2O[(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)
n23−CF
2CF
2O]−CF
2CF
2CF
2CH
2−OH ・・・(24)
HO−CH
2−CF
2O(CF
2CF
2O)
n2−1−CF
2CH
2OH ・・・(25)
ただし、n23×2+2は、4〜200の整数である。
【0049】
<化合物(a2)数平均分子量>
化合物(a2)の数平均分子量は、1,000〜6,000が好ましく、1,000〜5,000がより好ましく、1,200〜4,000が特に好ましい。化合物(a2)の数平均分子量が該範囲内であれば、対象物に防汚性を充分に付与できるとともに、化合物(a2)が硬化性組成物における他の成分との相溶性に優れる。
化合物(a2)の数平均分子量は、化合物(a1)と同様の方法で求められる。
【0050】
(化合物(a1)および化合物(a2)の製造方法)
化合物(a1)および化合物(a2)は、それぞれを別々に製造してもよく、1つの出発物質から同時に製造してもよい。また、化合物(a2)から化合物(a1)を製造してもよい。
化合物(a1)および化合物(a2)を製造する方法としては、活性水素含有基がヒドロキシ基である場合、たとえば、下記の方法(1)または方法(2)が挙げられる。
(1)ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および2つのカルボキシ基を有する化合物にフッ素ガスを接触させて、カルボキシ基の一部をフッ素化した後、残りのカルボキシ基を還元する方法(特開2011−116947号公報参照)。ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および2つのカルボキシ基を有する化合物としては市販の化合物を使用できる。
(2)ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および2つのヒドロキシ基を有する化合物と、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)とを反応させ、ヒドロキシ基の一部にペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)を付加させる方法。ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および2つのヒドロキシ基を有する化合物としては、市販の化合物を使用できる。市販の化合物としては、たとえば、「FLUOROLINK D」(商品名)、「Fomblin Z−Dol」(商品名)等が挙げられる。
また、上記方法(2)における2つのヒドロキシ基を有する化合物として化合物(a2)を用いることができる。その場合、原料である化合物(a2)の一部を未反応物として残存させることより、化合物(a1)と化合物(a2)の混合物を得ることができる。また、化合物(a2)の化合物(a1)への変換割合を変えることにより、混合物における両化合物の含有割合を調整することができる。
【0051】
<方法(1)>
方法(1)の具体的な一例を以下に説明する。
化合物(53−1)をフッ素ガスと接触させて、化合物(43−1)、未反応の化合物(53−1)および化合物(33−1)からなる混合物(x)を得る。
CF
3−O−{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2C(=O)OH ・・・(43−1)
HO−C(=O)−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2C(=O)−OH ・・・(53−1)
CF
3−O−{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
3 ・・・(33−1)
ただし、pは1以上の整数であり、qは0以上の整数であり、p+q+1は3〜200の整数であり、pのCF
2Oおよびq個のCF
2CF
2Oの結合順序は限定されない。
【0052】
混合物(x)を還元剤(水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等)で処理して、化合物(13−1)、化合物(23−1)および未反応の化合物(33−1)からなる混合物を得る。
CF
3−O−{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−OH ・・・(13−1)
HO−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−OH ・・・(23−1)
CF
3−O−{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
3 ・・・(33−1)
【0053】
<方法(2)>
方法(2)の具体的な一例を以下に説明する。
化合物(23−1)とペルフルオロ(n−プロピルビニルエーテル)(CF
3CF
2CF
2−O−CF=CF
2)とを反応させて、化合物(12−1)、未反応の化合物(23−1)および化合物(32−1)からなる混合物を得る。
CF
3−CF
2CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−OH ・・・(12−1)
HO−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−OH ・・・(23−1)
CF
3−CF
2CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−O−CF
2CHF−O−CF
2CF
2−CF
3 ・・・(32−1)
【0054】
<副生物>
方法(1)および方法(2)においては、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および2つのペルフルオロアルキル基を有し、活性水素含有基を有しない化合物(e1)が副生され得る。
【0055】
化合物(e1)は、方法(1)または方法(2)で得た化合物(a1)および化合物(a2)を含む混合物に混入してもよく、化合物(a1)および化合物(a2)を含む混合物を用いて製造した含フッ素化合物(X)に混入してもよく、含フッ素化合物(X)を用いて調製した硬化性組成物に混入してもよく、ハードコート層形成用組成物から形成したハードコート層に混入してもよい。ただし、化合物(e1)は、他の成分との相溶性が低いため、硬化性組成物に化合物(e1)が残存した場合、硬化性組成物が白濁する。方法(1)または方法(2)で得た混合物が化合物(e1)を含む場合には、化合物(e1)を精製により除去してもよい。
【0056】
化合物(e1)の具体例としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
CF
3CF
2−O−(CF
2CF
2CF
2O)
n3−CF
2CF
3 ・・・(31)
CF
3−CF
2CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
n31−1(CF
2CF
2O)
n32}−CF
2CH
2−O−CF
2CHF−O−CF
2CF
2−CF
3 ・・・(32)
CF
3−O−{(CF
2O)
n31(CF
2CF
2O)
n32}−CF
3 ・・・(33)
CF
3−O−(CF
2CF
2O)
n3−CF
3 ・・・(35)
ただし、n3は、2〜200の整数であり、n31は、1以上の整数であり、n32は、0以上の整数であり、n31+n32は、2〜200の整数であり、n31個のCF
2Oおよびn32個のCF
2CF
2Oの結合順序は限定されない。
【0057】
(化合物(b))
化合物(b)は、重合性炭素−炭素二重結合および活性水素含有基を有する化合物である。
【0058】
重合性炭素−炭素二重結合は、光照射により、硬化性組成物に含まれる後述の光重合性化合物と反応し、対象物(ハードコート層等)に耐摩耗性を付与する。
重合性炭素−炭素二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基、マレイミド基等が挙げられる。対象物に耐摩耗性を充分に付与する点から、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
重合性炭素−炭素二重結合の数は、化合物(b)の1分子あたり、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1が特に好ましい。
活性水素含有基の数は、化合物(b)の1分子あたり、1が好ましい。活性水素含有基としてはヒドロキシ基が好ましい。
【0059】
化合物(b)としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。化合物(b)としては、ヒドロキシアルキル基の炭素数が2〜10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、末端にヒドロキシ基を有する直鎖状のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートが特に好ましい。
【0060】
化合物(b)の具体例としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
HOCH
2CH
2OC(=O)C(R)=CH
2、
H
2NCH
2CH
2OC(=O)C(R)=CH
2、
HO(CH
2CH
2O)
i−C(=O)C(R)C=CH
2、
CH
3CH(OH)CH
2OC(=O)C(R)C=CH
2、
CH
3CH
2CH(OH)CH
2OC(=O)C(R)C=CH
2、
C
6H
5OCH
2CH(OH)CH
2OC(=O)C(R)C=CH
2、
HOCH
2CH=CH
2、
HO(CH
2)
kCH=CH
2、
(CH
3)
3SiCH(OH)CH=CH
2、
HOC
6H
4CH=CHC
6H
5。
ただし、Rは、水素原子またはメチル基であり、iは、2〜10の整数であり、kは、2〜20の整数である。
【0061】
(ポリイソシアネート(c))
ポリイソシアネート(c)は、2つ以上のイソシアナート基を有する化合物である。
イソシアナート基は、化合物(a1)の活性水素含有基、化合物(a2)の活性水素含有基および化合物(b)の活性水素含有基と反応し、ポリイソシアネート(c)の構造を含フッ素化合物(X)の構造の一部として組み入れるためのものである。
イソシアナート基の数は、2〜4が好ましく、3が特に好ましい。
【0062】
ポリイソシアネート(c)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート、および、ジイソシアネートの変性体等のトリイソシアネートまたはテトライソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、無黄変ジイソシアネート(すなわち、芳香核に直接結合したイソシアネート基を有しないジイソシアネート)が好ましく、アルキレンジイソシアネートや脂環式ジイソシアネートが好ましい。
ジイソシアネートの変性体としては、イソシアヌレート変性体、ビュレット変性体、3価または4価のアルコールで変性した多価アルコール変性体などが挙げられる。3価または4価のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0063】
トリイソシアネートの具体例としては、下記のものが挙げられる。
下式(6−1)で表されるイソシアヌレート変性アルキレンジイソシアネート(アルキレンジイソシアネートの環状3量体)、
下式(6−2)で表されるイソシアヌレート変性トリレンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートの環状3量体)、
下式(6−3)で表されるイソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート(イソホロンジイソシアネートの環状3量体)、
下式(6−4)で表されるビュレット変性アルキレンジイソシアネート、
下式(6−5)で表されるグリセロール変性アルキレンジイソシアネート。
ただし、s、tおよびuは、それぞれ独立に2〜10の整数である。
【0065】
(含フッ素化合物(X)の製造方法)
含フッ素化合物(X)は、ウレタン化触媒の存在下、ポリイソシアネート(c)に、活性水素含有基を有する化合物(化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(b))を同時に、またはポリイソシアネート(c)に、化合物(a1)および化合物(a2)と、化合物(b)とを順次反応させることによって製造される。
【0066】
活性水素含有基を有する化合物の合計当量と、ポリイソシアネート(c)との当量比は、理論上は1:1であるが、含フッ素化合物(X)に未反応のイソシアナート基を残存させないため、通常は活性水素含有基を有する化合物を1.01〜1.5倍当量過剰に用いることが好ましい。
【0067】
上記反応により生成する反応生成物としては、通常、含フッ素化合物(X)以外に副生成物も生成する。また、未反応の活性水素含有基を有する化合物が残存することもある。たとえば、未反応の化合物(a1)および化合物(a2)が残存すると、最終的に得られる硬化性組成物にも化合物(a1)および化合物(a2)が残存する。化合物(a1)および化合物(a2)は、他の成分との相溶性が低いため、硬化性組成物に化合物(a1)および化合物(a2)が残存した場合、硬化性組成物が白濁する。
よって、活性水素含有基を有する化合物を過剰に用いる際には、まず、化合物(a1)および化合物(a2)と、過剰当量のポリイソシアネート(c)とを反応させ、化合物(a1)および化合物(a2)の活性水素基をすべてイソシアネート基と反応させた後、残存ずるイソシアネート基に対して等当量以上の化合物(b)を反応させることが好ましい。
【0068】
化合物(a1)および化合物(a2)の合計と、化合物(b)との質量比は、対象物(ハードコート層等)に要求される特性(防汚性、耐摩耗性等)に応じて、適宜設定すればよい。対象物に付与される防汚性と耐摩耗性とのバランスの点から、化合物(a1)と化合物(a2)と化合物(b)の合計(100質量%)に対して化合物(b)の割合が10〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることが特に好ましい。
【0069】
含フッ素化合物(X)における化合物(a1)に由来する部分と前記化合物(a2)に由来する部分との合計(100質量%)のうち、化合物(a1)に由来する部分の割合は60〜99.9質量%である。したがって、また、化合物(a2)に由来する部分の割合は0.1〜40質量%である。化合物(a1)に由来する部分の割合が前記範囲の下限値以上であれば、対象物に防汚性を付与できる。また、含フッ素化合物(X)と他の成分との相溶性にも優れる。化合物(a1)に由来する部分の割合が前記範囲の上限値以下であれば、対象物に防汚性の擦れ耐性を付与できる。
したがって、含フッ素化合物(X)の製造においては、化合物(a1)に由来する部分と前記化合物(a2)に由来する部分の割合を上記割合とすべく、化合物(a1)と化合物(a2)との合計(100質量%)のうち化合物(a1)の割合は、60〜99.9質量%であることが好ましく、70〜99質量%がより好ましく、80〜95質量%が特に好ましい。
【0070】
化合物(a1)と化合物(a2)との合計(100質量%)のうち化合物(a2)の割合は、0.1〜40質量%であり、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。化合物(a2)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、対象物に防汚性の擦れ耐性を付与できる。化合物(a2)の割合が前記範囲の上限値以下であれば、対象物に防汚性を付与できる。また、含フッ素化合物(X)と他の成分との相溶性にも優れる。
【0071】
ウレタン化触媒としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、2−エチルヘキサン酸錫、トリエチルアミン、1,4−ジアビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
含フッ素化合物(X)を製造する際には、製造に必要な添加剤(以下、「製造用添加剤」とも記す。)を用いてもよい。製造用添加剤としては、重合禁止剤等が挙げられる。
【0072】
活性水素含有基を有する化合物とポリイソシアネート(c)との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。
有機溶媒は、フッ素系有機溶媒であっても、非フッ素系溶媒であってもよく、両溶媒を併用してもよい。各原料および含フッ素化合物(X)が溶解しやすい点で、フッ素系有機溶媒としては、フルオロアルカン、クロロフルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルキルエーテルが好ましく、クロロフルオロアルカンおよびフルオロアルキルエーテルが好ましく、非フッ素系溶媒としては、グリコールエーテル系有機溶媒およびケトン系有機溶媒が好ましい。
【0073】
(含フッ素化合物(X)の数平均分子量)
含フッ素化合物(X)の数平均分子量は、1,200〜8,000が好ましく、1,200〜7,000がより好ましく、1,200〜5,000が特に好ましい。数平均分子量が該範囲内であれば、対象物(ハードコート層等)に防汚性および防汚性の擦れ耐性を充分に付与できるとともに、硬化性組成物において含フッ素化合物と他の成分との相溶性に優れる。
含フッ素化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって求めたポリメチルメタクリレート換算の数平均分子量である。
【0074】
(作用機序)
以上説明した本発明の含フッ素化合物(X)にあっては、化合物(a1)に由来する部分と化合物(a2)に由来する部分との合計のうち化合物(a1)に由来する部分の割合が60質量%以上であるため、化合物(a1)に由来する部分の構造(特に末端のCF
3−)によって、対象物(ハードコート層等)の表面の表面エネルギーが低下する。その結果、防汚性を対象物に付与できる。
また、化合物(a1)に由来する部分と化合物(a2)に由来する部分との合計のうち化合物(a2)に由来する部分の割合が0.1質量%以上であるため、化合物(a2)に由来する部分の構造が含フッ素化合物に充分に導入される。そのため、含フッ素化合物(X)が高分子量化し、該含フッ素化合物(X)を含む硬化性組成物から形成される硬化膜(ハードコート層等)に含フッ素化合物(X)が強固に固定される。その結果、対象物に防汚性の擦れ耐性を付与できる。
また、化合物(a1)と化合物(a2)との合計のうち化合物(a2)の割合が40質量%以下であるため、含フッ素化合物(X)の分子量が大きくなりすぎない。その結果、含フッ素化合物(X)と他の成分との相溶性にも優れる。
【0075】
〔光硬化性組成物〕
本発明の光硬化性組成物は、含フッ素化合物(X)と、光重合性化合物(ただし、含フッ素化合物(X)を除く。)と、光重合開始剤とを含む。本発明の光硬化性組成物は、必要に応じて光硬化性組成物用添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0076】
(光重合性化合物)
光重合性化合物は、後述する光重合開始剤の存在下、光を照射することによって重合反応を開始するモノマーである。
光重合性化合物としては、多官能性モノマー、単官能性モノマーが挙げられる。対象物(ハードコート層等)に耐摩耗性を付与する点から、多官能性モノマーを必須成分として含むものが好ましい。
光重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
多官能性モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイル基の数は、多官能性モノマーの1分子あたり、3が好ましく、3〜30が特に好ましい。
多官能性モノマーとしては、対象物に充分な耐摩耗性を付与する点から、(メタ)アクリロイル基の3つ以上を有し、(メタ)アクリロイル基1つあたりの分子量が120以下であるモノマー、またはウレタン結合および(メタ)アクリロイル基の3つ以上を有するモノマーが好ましい。
【0078】
多官能性モノマーとしては、ポリオール(トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、それらの多量体等)のポリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリオールとポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物、ヒドロキシ基を有する単官能性モノマーとポリイソシアネートとの反応生成物等が挙げられる。
【0079】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤、たとえば、アリールケトン系光重合開始剤(アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシルオキシムエステル類等)、含硫黄系光重合開始剤(スルフィド類、チオキサントン類等)、アシルホスフィンオキシド類(アシルジアリールホスフィンオキシド等)、その他の光重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤は、アミン類等の光増感剤と併用してもよい。
【0080】
(光硬化性組成物用添加剤)
光硬化性組成物用添加剤としては、コロイダルシリカ、光増感剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱硬化安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、染料、分散剤、帯電防止剤、界面活性剤(防曇剤、レベリング剤等)、金属酸化物粒子、各種樹脂(エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等)等が挙げられる。
【0081】
(光硬化性組成物の組成)
含フッ素化合物(溶媒)の含有量は、光硬化性組成物(ただし、溶媒を除く。)(100質量%)のうち、0.01〜5質量%が好ましく、0.02〜4質量%がより好ましく、0.05〜3質量%が特に好ましい。含フッ素化合物(X)の含有量が前記範囲内であれば、光硬化性組成物の貯蔵安定性、対象物(ハードコート層等)の外観、耐摩耗性、防汚性および防汚性の擦れ耐性に優れる。
【0082】
光重合性化合物の含有量は、光硬化性組成物(ただし、溶媒を除く。)(100質量%)のうち、20〜98.99質量%が好ましく、50〜98.99質量%がより好ましく、60〜98.99質量%がさらに好ましく、80〜98.99質量%が特に好ましい。光重合性化合物の含有量が前記範囲内であれば、光硬化性組成物の貯蔵安定性、対象物の外観、耐摩耗性、防汚性および防汚性の擦れ耐性に優れる。
【0083】
光重合開始剤の含有量は、光硬化性組成物(ただし、溶媒を除く。)(100質量%)のうち、1〜15質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。光重合開始剤の含有量が前記範囲内であれば、光重合性化合物との相溶性に優れる。また、光硬化性組成物の硬化性に優れ、形成される硬化膜は硬度に優れる。
【0084】
光硬化性組成物用添加剤を含ませる場合、光硬化性組成物用添加剤の含有量は、光硬化性組成物(ただし、溶媒を除く。)(100質量%)のうち、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
【0085】
本発明の光硬化性組成物は、含フッ素化合物(X)の製造の際に生じた副生成物(化合物(e1)等)、未反応の原料(化合物(a1)、化合物(a2)、化合物(b)、ポリイソシアネート(c)等)、含フッ素化合物(X)の製造の際に用いた製造用添加剤(重合禁止剤等)等の不純物を含んでいてもよい。
不純物のうち、化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(e1)は、他の成分との相溶性が低いため、硬化性組成物に化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(e1)が残存した場合、硬化性組成物が白濁する。よって、化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(e1)の合計の含有量は、含フッ素化合物(X)(100質量%)に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
不純物のうち、ポリイソシアネート(c)は、他の成分との反応性が高いため、硬化性組成物にポリイソシアネート(c)が残存した場合、硬化性組成物の貯蔵安定性が低下する。よって、ポリイソシアネート(c)の含有量は、含フッ素化合物(X)(100質量%)に対して4質量%以下が好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
不純物の同定および定量は、
1H−NMRおよび
19F−NMRあるいはガスクロマトグラフィによって行う。
【0086】
〔コーティング液〕
本発明のコーティング液は、本発明の光硬化性組成物と、溶媒とを含む。
本発明のコーティング液は、本発明の光硬化性組成物を基材に塗布しやすくするために調製される。
【0087】
(溶媒)
溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、塗布方法に適した沸点を有する有機溶媒が好ましい。
有機溶媒は、フッ素系有機溶媒であっても、非フッ素系有機溶媒であってもよく、両溶媒を併用してもよい。
【0088】
フッ素系有機溶媒としては、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フルオロアルキルアミン、フルオロアルコール等が挙げられる。
フッ素系有機溶媒としては、含フッ素化合物(X)が溶解しやすい点から、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルコール、フルオロアルキルエーテルが好ましく、フルオロアルコールまたはフルオロアルキルエーテルが特に好ましい。
【0089】
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子および炭素原子のみからなる化合物、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物が好ましく、炭化水素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、グリコールエーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒等が挙げられる。
非フッ素系有機溶媒としては、含フッ素化合物(X)が溶解しやすい点から、グリコールエーテル系有機溶媒およびケトン系有機溶媒が特に好ましい。
【0090】
溶媒としては、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フルオロアルコール、水素原子および炭素原子のみからなる化合物、ならびに、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒が好ましく、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物およびフルオロアルキルエーテルおよびフルオロアルコールから選ばれるフッ素系有機溶媒が特に好ましい。
【0091】
溶媒としては、含フッ素化合物(X)の溶解性を高める点から、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フルオロアルコール、ならびに、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒を、合計で溶媒全体の90質量%以上含むものが好ましい。
溶媒の含有量は、コーティング液(100質量%)のうち、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が特に好ましい。
【0092】
〔ハードコート層形成用組成物〕
本発明のハードコート層形成用組成物は、本発明の光硬化性組成物または本発明のコーティング液からなる。
本発明の光硬化性組成物およびコーティング液は、これらから形成された塗膜の硬化に際して加熱が不要であるため、ガラス等に比較して耐熱性の低い樹脂からなる基材に、ハードコート層を形成する際に好適に用いられる。
【0093】
(作用機序)
以上説明した本発明の光硬化性組成物、コーティング液およびハードコート層形成用組成物にあっては、含フッ素化合物(X)を含むため、防汚性および防汚性の擦れ耐性に優れる対象物(ハードコート層等)を形成できる。
【0094】
〔物品〕
本発明の物品は、基材と、本発明のハードコート層形成用組成物から形成したハードコート層とを有する。
【0095】
(ハードコート層)
ハードコート層は、基材の少なくとも1つの表面に直接形成されていてもよく、基材の少なくとも1つの表面に後述するプライマ層を介して形成されたものであってもよい。
ハードコート層の厚さは、耐摩耗性および防汚性の点から、0.5〜20μmが好ましく、1〜15μmが特に好ましい。
【0096】
(基材)
基材は、耐摩耗性および防汚性が必要とされる種々の物品(光学レンズ、ディスプレイ、光記録媒体等)の本体部分、または該物品の表面を構成する部材である。
基材の表面の材料としては、金属、樹脂、ガラス、セラミック、石、これらの複合材料等が挙げられる。光学レンズ、ディスプレイ、光記録媒体における基材の表面の材料としては、ガラスまたは透明樹脂基材が好ましい。
【0097】
(プライマ層)
本発明の物品は、基材とハードコート層との密着性を向上させる点から、基材とハードコート層との間にプライマ層をさらに有していてもよい。
プライマ層としては、公知のものが挙げられる。プライマ層は、たとえば、溶媒を含むプライマ層形成用組成物を基材の表面に塗布し、溶媒を蒸発除去することによって形成される。
【0098】
(物品の用途)
本発明の物品は、タッチパネルを構成する部材として好適である。タッチパネルとは、指等による接触によってその接触位置情報を入力する装置と表示装置とを組み合わせた入力/表示装置(タッチパネル装置)の、入力装置である。タッチパネルは、基材と、入力検出手段等とから構成される。入力検出手段は、たとえば、透明導電膜、電極、配線、IC等から構成される。物品のハードコート層を有する面をタッチパネルの入力面とすることによって、防汚性および防汚性の擦れ耐性に優れるタッチパネルが得られる。
【0099】
(物品の製造方法)
物品は、たとえば、下記の工程(I)および工程(II)を経て製造される。
工程(I):必要に応じて、プライマ層形成用組成物を基材の表面に塗布してプライマ層を形成する工程。
工程(II):ハードコート層形成用組成物を基材またはプライマ層の表面に塗布して塗膜を得て、ハードコート層形成用組成物が溶媒を含む場合は溶媒を除去し、光硬化させてハードコート層を形成する工程。
【0100】
(作用機序)
以上説明した本発明の物品にあっては、ハードコート層形成用組成物から形成したハードコート層を有するため、防汚性および防汚性の擦れ耐性に優れる。
【実施例】
【0101】
以下に、本発明に関わる実施例と比較例を記載する。ただし、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
例2、3、6、8、9は実施例であり、例1、4、5、7、10、11は比較例である。
【0102】
〔略号〕
AC−2000:C
6F
13H(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AC−2000)、
AE−3000:CF
3CH
2OCF
2CF
2H(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AE−3000)、
AK−225:CF
3CF
2CHCl
2とCClF
2CF
2CHClFとの混合物(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AK−225)、
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート、
L:リットル、
Mn:数平均分子量。
【0103】
〔測定・評価〕
(化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(e1)のMn)
化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(e1)の数平均分子量は、核磁気共鳴装置(NMR)によって内部標準物質と化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(e1)の末端官能基の積分比をそれぞれ比較することにより求めた。
【0104】
(含フッ素化合物のMn)
分子量測定用の標準試料として市販されている重合度の異なる数種の単分散ポリメチルメタクリレートのGPCを、GPC測定装置(東ソー社製、HLC−8220GPC)にて、溶離液にAK−225:ヘキサフルオロイソプロパノール=99:1(体積比)の混合溶媒を用いて測定し、ポリメチルメタクリレートの分子量と保持時間(リテンションタイム)との関係をもとに検量線を作成した。
含フッ素化合物を前記混合溶媒で1.0質量%に希釈し、0.5μmのフィルタに通過させた後、含フッ素化合物についてのGPCを、GPC測定装置を用いて測定した。
検量線を用いて、含フッ素化合物のGPCスペクトルをコンピュータ解析することによって含フッ素化合物のMnを求めた。
【0105】
(相溶性)
下記の基準にしたがい、目視によって調製直後のハードコート層形成用組成物の外観を評価した。
○(良好):溶液が均一で濁りがない。
×(不良):濁りが確認できる。
【0106】
(貯蔵安定性)
ハードコート層形成用組成物を室温で3ヶ月静置した後、目視によってハードコート層形成用組成物の外観を評価した。
○(良好):溶液が均一で濁りがない。
×(不良):濁りが確認できる。
【0107】
(ハードコート層外観)
下記の基準にしたがい、目視によってハードコート層の外観を評価した。
○(良好):異物が確認できず、膜厚が均一である。
△(可) :異物は確認できないが、膜厚にムラがある。
×(不良):異物が確認され、膜厚にムラがある。
【0108】
(指紋汚れ除去性)
人工指紋液(オレイン酸とスクアレンとからなる液)を、シリコンゴム栓の平坦面に付着させた後、余分な油分を不織布(旭化成社製、ベンコット(登録商標)M−3)にて拭き取り、指紋のスタンプを準備した。該指紋スタンプを、ハードコート層を有する物品上に乗せ、荷重:9.8Nにて10秒間押しつけた。指紋が付着した箇所について、ティッシュペーパを取り付けた、往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、荷重:4.9Nにて拭き取りを行った。拭き取り一往復毎にヘーズを目視で観察し、10往復後までのヘーズを目視で観察することによって評価した。評価基準は下記の通りである。
○(良好):ヘーズを目視で確認できない。
△(可) :ヘーズを目視でわずかに確認できる。
×(不可):ヘーズを目視で明らかに確認できる。
【0109】
(油性インクはじき性)
ハードコート層の表面にフェルトペン(ゼブラ社製、マッキー極太黒色)で線を描き、油性インクの付着状態を目視で観察することによって評価した。評価基準は下記の通りである。
◎(優良):油性インクを玉状にはじく。
○(良好):油性インクを玉状にはじかず、線状にはじき、線幅がフェルトペンのペン先の幅の50%未満である。
△(可) :油性インクを玉状にはじかず、線状にはじき、線幅がフェルトペンのペン先の幅の50%以上100%未満である。
×(不良):油性インクを玉状にも線状にもはじかず、表面にきれいに線が描ける。
【0110】
(防汚性の擦れ耐性)
ハードコート層を有する物品について、往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、スチールウール(日本スチールウール社製、ボンスター(登録商標)#0000)を荷重:9.8Nにて500回往復させた後、ハードコート層の表面にフェルトペン(ゼブラ社製、マッキー極太黒色)で線を描き、油性インクの付着状態を目視で観察することによって評価した。評価基準は前記「油性インクはじき性」と同じである。
【0111】
(鉛筆硬度)
ハードコート層の表面の鉛筆硬度を、JIS K5600−5−4:1999(ISO 15184:1996)「引っかき硬度(鉛筆法)」に準じて測定した。
【0112】
〔化合物(a1)、化合物(a2)の製造〕
(化合物(13−1−1)、化合物(23−1−1)の製造)
特開2011−116947号公報の段落[0061]、[0062]に記載の方法にしたがい、化合物(53−1−1)(ソルベイ・ソレクシス社製、FLUOROLINK(登録商標) C)から、化合物(13−1−1)、化合物(23−1−1)および化合物(33−1−1)からなる混合物を得た。
HO−C(=O)−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2C(=O)−OH ・・・(53−1−1)
CF
3−O−{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−OH ・・・(13−1−1)
HO−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−OH ・・・(23−1−1)
CF
3−O−{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
3 ・・・(33−1−1)
ただし、p/q=0.6、p+q≒15である。
【0113】
混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:AC−2000およびAE−3000)に展開して目的物を分取した。分取後、表1に示す質量比となるように化合物(13−1−1)と化合物(23−1−1)と化合物(33−1−1)とを混合して混合物(p1−1)〜(p1−6)を調製した。
化合物(13−1−1)のMnは1,540であり、化合物(23−1−1)のMnは1,570であり、化合物(33−1−1)のMnは1,540であった。
【0114】
【表1】
【0115】
(化合物(12−1−1)、化合物(23−1−2)の製造)
500mLの3つ口丸底フラスコに、水酸化カリウムの1.04gを取り入れ、tert−ブタノールの83gと1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの125gを加えた。室温で撹拌して水酸化カリウムを溶解させ、これに化合物(23−1−2)(ソルベイ・ソレクシス社製、FLUOROLINK(登録商標) D10/H)の250gを加えて1時間撹拌した。室温のまま、ペルフルオロ(n−プロピルビニルエーテル)(CF
3CF
2CF
2−O−CF=CF
2)の38.2gを加え、さらに24時間撹拌した。塩酸水溶液を加えて中和し、さらに水を加えて分液処理を行った。3回の水洗後、有機相を回収し、エバポレータで濃縮することによって、化合物(12−1−1)、化合物(23−1−2)および化合物(32−1−1)からなる混合物の288.0gを得た。
CF
3−CF
2CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−OH ・・・(12−1−1)
HO−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−OH ・・・(23−1−2)
CF
3−CF
2CF
2−O−CHFCF
2−O−CH
2−CF
2O{(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
q}−CF
2CH
2−O−CF
2CHF−O−CF
2CF
2−CF
3 ・・・(32−1−1)
ただし、p/q=0.6、p+q≒15である。
【0116】
混合物をAC−2000の144gで希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:AC−2000およびAE−3000)に展開して目的物を分取した。分取後、表2に示す質量比となるように化合物(12−1−1)と化合物(23−1−2)とを混合して混合物(p2−1)〜(p2−5)を調製した。
化合物(12−1−1)のMnは1,830であり、化合物(23−1−2)のMnは1,570であった。
【0117】
【表2】
【0118】
〔化合物〕
(化合物(b))
(b−1):HOCH
2CH
2OC(=O)CH=CH
2(日本触媒社製、2−ヒドロキシエチルアクリレート)。
【0119】
(ポリイソシアネート(c))
(c−1):式(6−1)で表されるイソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(s、tおよびu=6)(旭化成ケミカルズ社製、DURANATE(登録商標) TKA−100、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体、イソシアネート基含有量:21.8質量%)。
【0120】
(光重合性化合物)
(m−1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(モノマー(m11)に該当)、
(m−2):トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(モノマー(m12)に該当)。
【0121】
(光重合開始剤)
(i−1):2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン。
【0122】
(有機溶媒)
(s−1):2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、
(s−2):プロピレングリコールモノメチルエーテル。
【0123】
〔例1〕
(含フッ素化合物の製造)
撹拌機を装着した50mLの2つ口フラスコに、トリイソシアネート(c−1)の1.0g、AK−225の6.0gを入れ、DBTDLの7.5mgおよび2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの0.3mgを加えた。窒素雰囲気中、室温で撹拌しながら1時間かけて、混合物(p1−1)の0.98gをAK−225の1.0gに溶かした溶液を滴下し、室温で12時間撹拌した。40℃に加温し、化合物(b−1)の0.76gを2分間で滴下し、12時間撹拌した。赤外吸収スペクトルによってイソシアナート基の吸収が完全に消失していることを確認できたため、得られた反応溶液をエバポレータで濃縮して目的の含フッ素化合物を得た。
【0124】
(ハードコート層形成用組成物の調製)
30mLのバイアル管に、含フッ素化合物の1mg、光重合性化合物(m−1)の94mg、光重合性化合物(m−2)の94mg、光重合開始剤(i−1)の11mg、有機溶媒(s−1)の18mg、有機溶媒(s−2)の117mgを入れ、常温および遮光にした状態で、1時間撹拌して、ハードコート層形成用組成物を得た。
【0125】
(ハードコート層の形成)
ポリエチレンテレフタレート基材の表面にハードコート層形成用組成物をバーコートにより塗布し、塗膜を形成し、50℃のホットプレートで1分間乾燥させ、基材の表面に乾燥膜を形成した。高圧水銀ランプを用いて紫外線(光量:300mJ/cm
2、波長365nmの紫外線積算エネルギー量)を照射し、基材の表面に厚さ5μmのハードコート層を形成した。
含フッ素化合物のMn、ハードコート層形成用組成物およびハードコート層の評価結果を表3に示す。
【0126】
〔例2〜6〕
混合物(p1−1)を混合物(p1−2)〜(p1−6)に変更した以外は、例1と同様にして含フッ素化合物を製造し、ハードコート層形成用組成物を調製し、ハードコート層を形成した。含フッ素化合物のMn、ハードコート層形成用組成物およびハードコート層の評価結果を表3に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
〔例7〜11〕
混合物(p1−1)を混合物(p2−1)〜(p2−5)に変更した以外は、例1と同様にして含フッ素化合物を製造し、ハードコート層形成用組成物を調製し、ハードコート層を形成した。含フッ素化合物のMn、ハードコート層形成用組成物およびハードコート層の評価結果を表4に示す。
【0129】
【表4】
【0130】
例2、3、6、8、9の含フッ素化合物は、化合物(a1)と化合物(a2)と化合物(b)とポリイソシアネート(c)とを反応させて得られたものであって、化合物(a1)と化合物(a2)との合計のうち化合物(a1)の割合が99.9〜60質量%であるため、ハードコート層の防汚性および防汚性の擦れ耐性に優れる。
例1、7の含フッ素化合物は、化合物(a1)の割合が100質量%であり、化合物(a2)の割合が0質量%であるため、防汚性の擦れ耐性がやや劣る。
例4、10の含フッ素化合物は、化合物(a1)の割合が60質量%未満であり、化合物(a2)の割合が40質量%超であるため、相溶性が悪い。また、防汚性が劣る。
例5、11の含フッ素化合物は、化合物(a1)の割合が0質量%であり、化合物(a2)の割合が100質量%であるため、含フッ素化合物の製造の際に不溶物が生成した。