(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784375
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】トランスインピーダンスアンプ
(51)【国際特許分類】
H03F 1/42 20060101AFI20201102BHJP
H03F 3/08 20060101ALI20201102BHJP
H03F 1/02 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
H03F1/42
H03F3/08
H03F1/02
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-156742(P2017-156742)
(22)【出願日】2017年8月15日
(65)【公開番号】特開2019-36839(P2019-36839A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2019年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100147038
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 英昭
(72)【発明者】
【氏名】中野 慎介
(72)【発明者】
【氏名】野坂 秀之
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】肥田 顕
【審査官】
渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−017558(JP,A)
【文献】
特開平07−094978(JP,A)
【文献】
特開平06−232651(JP,A)
【文献】
特開2012−070358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/42
H03F 1/02
H03F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号入力端子に入力される信号を増幅するN型ゲート接地増幅回路からなる第1のトランスインピーダンスアンプコア回路と、
正側電源電圧と負側電源電圧との間の、前記第1のトランスインピーダンスアンプコア回路と同じ電流経路に挿入され、前記信号入力端子に入力される信号を増幅するP型ゲート接地増幅回路からなる第2のトランスインピーダンスアンプコア回路と、
前記信号入力端子に入力される信号を増幅する反転増幅器と、
ゲート端子が前記反転増幅器の出力端子に接続された第1のトランジスタとを備え、
前記第1のトランスインピーダンスアンプコア回路は、
ソース端子が前記信号入力端子に接続され、ドレイン端子が第1のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子に接続されたN型の第2のトランジスタと、
一端が前記正側電源電圧に接続され、他端が前記第2のトランジスタのドレイン端子に接続された第1の出力抵抗とから構成され、
前記第2のトランスインピーダンスアンプコア回路は、
ソース端子が前記信号入力端子に接続され、ドレイン端子が第2のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子に接続されたP型の第3のトランジスタと、
一端が前記負側電源電圧に接続され、他端が前記第3のトランジスタのドレイン端子に接続された第2の出力抵抗とから構成され、
前記第1、第2のトランスインピーダンスアンプコア回路のそれぞれの出力端子のうちいずれか一方が信号出力端子に接続され、
前記第1のトランジスタのドレイン端子が前記信号出力端子に接続され、前記第1のトランジスタのソース端子が前記第1、第2のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子のうち前記信号出力端子と接続されていない方の端子に接続されることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項2】
請求項1記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第1のトランジスタはN型トランジスタであり、
前記第1のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子が前記信号出力端子に接続され、
前記第1のトランジスタのソース端子が前記第2のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子に接続されることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項3】
請求項1記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第1のトランジスタはP型トランジスタであり、
前記第2のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子が前記信号出力端子に接続され、
前記第1のトランジスタのソース端子が前記第1のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子に接続されることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第2、第3のトランジスタのゲート端子にそれぞれ固定のバイアス電圧が印加されることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第2、第3のトランジスタのゲート端子に前記反転増幅器によって反転増幅された信号が入力されることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムの受信器で利用されているトランスインピーダンスアンプの回路構成に関する技術であって、特に広帯域化や低電力化が可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランスインピーダンスアンプ(TIA:Transimpedance Amplifier)は、光通信の受信回路として用いられ、フォトダイオード(PD:Photodiode)によって光電変換された電流信号を電圧信号に変換しつつ、信号増幅する役割を担う。
【0003】
PDとTIAが接続される場合、TIAの入力にはPDの寄生容量などによる入力容量C
pdが付随する。このため、入力容量C
pdとTIAの入力抵抗R
INによって形成されるローパスフィルタ(入力時定数≒C
pdR
IN)がTIAの帯域を制限する。一方、低電力で高利得を得るために、電流再利用型TIA(Current Re-use TIA:CR−TIA)の構成が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
図7に非特許文献1で提案されているCR−TIAの構成例を示す。CR−TIAは、N型のゲート接地型TIA100−1と、P型のゲート接地型TIA100−2と、加算回路101と、反転増幅器102とから構成される。N型のゲート接地型TIA100−1は、N型トランジスタM
Nと、出力抵抗R
Nとから構成される。P型のゲート接地型TIA100−2は、P型トランジスタM
Pと、出力抵抗R
Pとから構成される。加算回路101は、インバーター回路103,104と、加算器105と、出力抵抗R
Dとから構成される。
図7の106はPDであり、C
pdはPD106の寄生容量、I
inはPD106から出力される電流信号を表す。このように、CR−TIAは、N型とP型の2つのゲート接地型TIA100−1,100−2を縦に接続し同一の電流で駆動するものである。
【0005】
CR−TIAでは、高利得を得るために2つのゲート接地型TIA100−1,100−2の出力を加算する必要がある。
図7に示す回路では、2つのゲート接地型TIA100−1,100−2の出力がそれぞれ加算回路101のインバーター回路103,104に接続され、インバーター回路103,104の出力が加算器105によって加算される構成となっている。
【0006】
しかしながら、インバーター回路103の入力端子は、
図8に示すようにN型トランジスタM
N2のゲート端子とP型トランジスタM
P2のゲート端子とに接続されるため、大きな寄生容量が存在する。インバーター回路104の入力端子についても同様である。そのため、2つのゲート接地型TIA100−1,100−2の各出力端子に大きな極が発生し、CR−TIA全体の帯域が制限される要因となる。以上の理由により、従来のCR−TIAでは、低電力かつ広帯域特性を有する回路の実現が困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A.H.Masnadi Shirazi,et al.,“A Low-Power DC-to-27-GHz Transimpedance Amplifier in 0.13-μm CMOS Using Inductive-Peaking and Current-Reuse Techniques”,IEEE International Midwest Symposium on Circuits and Systems (MWSCAS),pp.961-964,Aug.2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、低電力と広帯域特性を両立させることができるTIAを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のトランスインピーダンスアンプは、信号入力端子に入力される信号を増幅するN型ゲート接地増幅回路からなる第1のトランスインピーダンスアンプコア回路と、正側電源電圧と負側電源電圧との間の、前記第1のトランスインピーダンスアンプコア回路と同じ電流経路に挿入され、前記信号入力端子に入力される信号を増幅するP型ゲート接地増幅回路からなる第2のトランスインピーダンスアンプコア回路と、前記信号入力端子に入力される信号を増幅する反転増幅器と、ゲート端子が前記反転増幅器の出力端子に接続された第1のトランジスタとを備え、
前記第1のトランスインピーダンスアンプコア回路は、ソース端子が前記信号入力端子に接続され、ドレイン端子が第1のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子に接続されたN型の第2のトランジスタと、一端が前記正側電源電圧に接続され、他端が前記第2のトランジスタのドレイン端子に接続された第1の出力抵抗とから構成され、前記第2のトランスインピーダンスアンプコア回路は、ソース端子が前記信号入力端子に接続され、ドレイン端子が第2のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子に接続されたP型の第3のトランジスタと、一端が前記負側電源電圧に接続され、他端が前記第3のトランジスタのドレイン端子に接続された第2の出力抵抗とから構成され、前記第1、第2のトランスインピーダンスアンプコア回路のそれぞれの出力端子のうちいずれか一方が信号出力端子に接続され、前記第1のトランジスタのドレイン端子が前記信号出力端子に接続され、前記第1のトランジスタのソース端子が前記第1、第2のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子のうち前記信号出力端子と接続されていない方の端子に接続されることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記第1のトランジスタはN型トランジスタであり、前記第1のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子が前記信号出力端子に接続され、前記第1のトランジスタのソース端子が前記第2のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子に接続されることを特徴とするものである。
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記第1のトランジスタはP型トランジスタであり、前記第2のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子が前記信号出力端子に接続され、前記第1のトランジスタのソース端子が前記第1のトランスインピーダンスアンプコア回路の出力端子に接続されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記第2、第3のトランジスタのゲート端子にそれぞれ固定のバイアス電圧が印加されることを特徴とするものである。
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記第2、第3のトランジスタのゲート端子に前記反転増幅器によって反転増幅された信号が入力されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2つのトランスインピーダンスアンプコア回路の出力を第1のトランジスタで合成する。第1のトランジスタは2つのトランスインピーダンスアンプコア回路からの分流電流で駆動されるため、従来のトランスインピーダンスアンプよりも加算回路の消費電力を削減でき、低消費電力なトランスインピーダンスアンプを実現することができる。さらに、トランスインピーダンスアンプの広帯域化を妨げる要因の一つとして、ゲート接地増幅回路の出力端子に接続される出力抵抗および寄生容量による帯域フィルタがある。本発明では、加算回路を1個の第1のトランジスタで構成するため、従来のトランスインピーダンスアンプに比べて寄生容量を低減し易い。このため、利得が同一条件の場合には周波数帯域を改善することができる。特に、ゲート接地増幅回路の出力抵抗の値が大きい場合、従来のトランスインピーダンスアンプに比べ、より大幅な電流低減かつ寄生容量低減の効果が得られ易いため、大きな低電力化効果と帯域延伸効果を同時に得ることが可能となる。その結果、本発明により、従来技術と比較し同一利得条件において低電力で広い周波数帯域が得られるという利点がある。周波数帯域を広くできるということは、より大容量の光通信が可能になることを意味する。
【0013】
また、本発明では、第2、第3のトランジスタのゲート端子に反転増幅器によって反転増幅された信号を入力することにより、更なる高利得、広帯域化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係るTIAの構成を示す回路図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係るTIAの反転増幅器の構成の1例を示す回路図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施例に係るTIAの別の構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施例に係るTIAの構成を示す回路図である。
【
図5】
図5は、従来のTIAと本発明の第2の実施例に係るTIAにおける利得・帯域積および消費電力と出力抵抗値との関係の1例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施例に係るTIAの別の構成を示す回路図である。
【
図7】
図7は、従来の電流再利用型TIAの構成を示す回路図である。
【
図8】
図8は、従来の電流再利用型TIAのインバーター回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施例に係るTIAの構成を示す回路図である。本実施例のTIAは、入力端子がTIAの信号入力端子INに接続され、出力端子がTIAの信号出力端子OUTに接続されたN型ゲート接地増幅回路からなるトランスインピーダンスアンプコア(TIAコア)回路1
Nと、正側電源電圧V
DDと負側電源電圧(接地)との間の、TIAコア回路1
Nと同じ電流経路に挿入され、入力端子がTIAの信号入力端子INに接続されたP型ゲート接地増幅回路からなるTIAコア回路1
Pと、信号入力端子INに入力される信号を増幅する反転増幅器2と、ゲート端子が反転増幅器2の出力端子に接続され、ドレイン端子がTIAの信号出力端子OUTに接続され、ソース端子がTIAコア回路1
Pの出力端子に接続されたN型トランジスタM
N4とから構成される。
【0016】
TIAコア回路1
Nは、ゲート端子にバイアス電圧Bias1が供給され、ドレイン端子(TIAコア回路1
Nの出力端子)が信号出力端子OUTに接続され、ソース端子(TIAコア回路1
Nの入力端子)が信号入力端子INに接続されたN型トランジスタM
N3と、一端が正側電源電圧V
DDに接続され、他端がN型トランジスタM
N3のドレイン端子に接続された出力抵抗R
Nとから構成される。
【0017】
TIAコア回路1
Pは、ゲート端子にバイアス電圧Bias2が供給され、ドレイン端子(TIAコア回路1
Pの出力端子)がN型トランジスタM
N4のソース端子に接続され、ソース端子(TIAコア回路1
Pの入力端子)が信号入力端子INに接続されたP型トランジスタM
P3と、一端が負側電源電圧(接地)に接続され、他端がP型トランジスタM
P3のドレイン端子に接続された出力抵抗R
Pとから構成される。
【0018】
図2は反転増幅器2の構成の1例を示す回路図である。反転増幅器2は、ドレイン端子が反転増幅器2の出力端子に接続され、ソース端子が正側電源電圧V
DDに接続されたP型トランジスタM
P5と、ゲート端子が反転増幅器2の入力端子に接続され、ドレイン端子が反転増幅器2の出力端子に接続され、ソース端子が負側電源電圧(接地)に接続されたN型トランジスタM
N5と、一端が正側電源電圧V
DDに接続され、他端が反転増幅器2の出力端子に接続された出力抵抗R
1と、反転増幅器2の入力端子とP型トランジスタM
P5とのゲート端子間に接続されたコンデンサC
1とから構成される。なお、
図2では記載を省略したが、P型トランジスタM
P5のゲート端子に適切な直流電位を与えるために例えば高抵抗を介した固定電位に接続することで、
図2中の回路を適切に動作させることが可能である。
【0019】
なお、
図2の例では、インバーター回路を用いた反転増幅器2の例で説明したが、これに限るものではなく、反転増幅器2はN型トランジスタまたはP型トランジスタを用いたソース接地増幅回路であってもよい。
【0020】
本実施例では、
図7に示した従来例と同様に正側電源電圧V
DDと負側電源電圧(接地)との間に、N型とP型の2つのTIAコア回路1
N,1
Pを縦に直列接続し、同一の電流で駆動させるCR−TIAを用いることで、低電力かつ高利得を得ることができる。TIAコア回路1
N,1
Pでは、それぞれの回路が所望の動作点で動作するように、トランジスタM
N3,M
P3のゲート端子に供給するバイアス電圧Bias1,Bias2を適宜設定すればよい。
【0021】
CR−TIAでは、N型とP型の2つのTIAコア回路(ゲート接地増幅回路)1
N,1
Pの出力を加算する回路が必要である。本実施例では、加算回路を1つのN型トランジスタM
N4で実現している。このN型トランジスタM
N4は、ドレイン端子とソース端子が初段のTIAコア回路1
N,1
Pの出力端子に接続されており、TIAコア回路1
N,1
Pからの分流電流で駆動されるようになっている。
【0022】
本実施例では、N型トランジスタM
N3の出力(ドレイン端子)に付随する寄生容量C
Nと出力抵抗R
Nとによって形成されるローパスフィルタ(出力時定数≒C
NR
N)、およびP型トランジスタM
P3の出力に付随する寄生容量C
Pと出力抵抗R
Pとによって形成されるローパスフィルタ(出力時定数≒C
PR
P)が、TIAの広帯域化を妨げる一要因となる。
【0023】
出力抵抗R
P,R
Nの値を小さく設定することで、ローパスフィルタの時定数≒C
PR
P,C
NR
Nが小さくなり、TIAの帯域を広げることは可能である。一方で、出力抵抗R
P,R
Nの値を小さくすると、TIAの利得が小さくなる。したがって、高利得かつ広帯域なTIAを実現するためには、寄生容量C
P,C
Nを低減する、すなわち入力容量が小さな加算回路を用いることが重要と言える。
【0024】
一般的にトランジスタの各端子に付随する寄生容量は、ゲート端子の寄生容量が最も大きく、ソース端子、ドレイン端子の順に小さくなる。
図7に示した加算回路101では、インバーター回路103のゲート容量(2つのトランジスタM
N2,M
P2のゲート端子の寄生容量)がトランジスタM
Nの出力に接続され、同様にインバーター回路104のゲート容量がトランジスタM
Pの出力に接続されていた。また一般的にインバーター回路は大きな増幅率を持つため、ゲート容量の一部(ゲート−ドレイン間容量)がミラー効果により、およそ増幅率倍されるため、大きな寄生容量が付随する。
【0025】
これに対して、本実施例では、N型トランジスタM
N3の出力に付随する寄生容量C
Nの大半はN型トランジスタM
N4のドレイン端子の寄生容量であり、P型トランジスタM
P3の出力に付随する寄生容量C
Pの大半はN型トランジスタM
N4のソース端子の寄生容量である。したがって、本実施例では、
図7に示した従来例と比較して寄生容量C
P,C
Nを低減することができ、TIAの広帯域化が可能となる。
【0026】
前述したとおり、一般的にTIAの入力にはPDの寄生容量などによる入力容量C
pdが付随し、この入力容量C
pdとTIAの入力抵抗R
INによって形成されるローパスフィルタ(入力時定数≒C
pdR
IN)がTIAの帯域を制限する。本実施例では、出力時定数が入力時定数よりも大きくなるような条件、すなわち出力抵抗R
P,R
Nを大きい値に設定した場合に従来例よりも広い帯域特性を得ることができる。出力抵抗R
P,R
Nの値が大きくなると、TIAの消費電力削減効果や高利得特性も得られるため、本実施例では低電力、高利得、広帯域を両立させることが可能な構成となる。
なお、
図1中で信号入力端子INとトランジスタM
N4のゲート端子間に用いている反転増幅器2は、入力信号を反転増幅し、トランジスタM
N4のゲート端子に入力することで入力信号を非反転増幅した信号を信号出力端子OUTに伝える、すなわちTIA回路の利得をさらに高める役割を果たす。
【0027】
本実施例では、加算回路をN型トランジスタM
N4で構成した例について説明したが、
図3に示すようにP型トランジスタM
P4を用いて構成することも可能である。この場合は、TIAコア回路1
Pの出力端子(P型トランジスタM
P3のドレイン端子)をTIAの信号出力端子OUTに接続し、P型のトランジスタM
P4のゲート端子を反転増幅器2の出力端子に接続し、ドレイン端子を信号出力端子OUTに接続し、ソース端子をTIAコア回路1
Nの出力端子(N型トランジスタM
N3のドレイン端子)に接続すればよい。
【0028】
すなわち、加算回路としてトランジスタM
N4,M
P4のいずれを使用する場合でも、トランジスタM
N4,M
P4のドレイン端子をTIAの信号出力端子OUTに接続し、トランジスタM
N4,M
P4のソース端子をTIAコア回路1
N,1
Pの出力端子のうち信号出力端子OUTに接続されていない方の端子に接続すればよい。
【0029】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図4は本発明の第2の実施例に係るTIAの構成を示す回路図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。TIAコア回路1
N’,1
P’は、第1の実施例のTIAコア回路1
N,1
Pと同様の構成を有するものであるが、第1の実施例との差分はTIAコア回路1
N’を構成するN型トランジスタM
N3のゲート端子が反転増幅器2の出力端子と接続され、TIAコア回路1
P’を構成するP型トランジスタM
P3のゲート端子がコンデンサC
2を介して反転増幅器2の出力端子と接続されている点である。これにより、本実施例のTIAは、トランジスタM
N3,M
P3のゲート端子に、反転増幅した入力信号を帰還するレギュレーテッドカスコード型TIA(RGC−TIA)となっている。
図4では、
図2と同じくP型トランジスタM
P3のゲート端子の直流動作電位を与えるパスを省略して記載しているが、こちらも例えば高抵抗を介して固定電位に接続することでP型トランジスタM
P3の動作電位を適切な値に設定することができる。
【0030】
RGC−TIAは、反転増幅器2の作用によりTIAの入力インピーダンスを下げることが可能であり、第1の実施例で述べた効果に加えて、更なる高利得、広帯域化が可能となる。
【0031】
図7に示した従来のTIAと本実施例のTIAにおける利得・帯域積および消費電力と出力抵抗値との関係を回路シミュレーションを用いて導出した結果を
図5に示す。
図5における50は従来のTIAの利得・帯域積を示し、51は本実施例のTIAの利得・帯域積を示し、52は従来のTIAの消費電力を示し、53は本実施例のTIAの消費電力を示している。本シミュレーションは全て65nm世代のCMOSプロセスパラメタを用いて計算した。
【0032】
図5によると、出力抵抗R
N,R
Pを大きい値に設定した場合には本実施例の方が従来のTIAよりも広い帯域特性を得ることができ、その結果、利得・帯域積が改善していることが分かる。また、加算回路をトランジスタ一つで実現したことにより、低消費電力化の効果も重ねて得られていることが分かる。例えば出力抵抗R
P,R
Nが1.2kΩの場合で従来のTIAに対し本実施例のTIAの利得・帯域積が50%増加し、消費電力が15%低減していることが分かる。すなわち、本実施例で提案する回路構成は低電力、高利得、広帯域を両立させることが可能である。
【0033】
本実施例では、加算回路をN型トランジスタM
N4で構成した例について説明したが、
図6に示すようにP型トランジスタM
P4を用いて構成することも可能である。この場合は、TIAコア回路1
P’の出力端子(P型トランジスタM
P3のドレイン端子)をTIAの信号出力端子OUTに接続し、P型のトランジスタM
P4のゲート端子を反転増幅器2の出力端子に接続し、ドレイン端子を信号出力端子OUTに接続し、ソース端子をTIAコア回路1
N’の出力端子(N型トランジスタM
N3のドレイン端子)に接続すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、トランスインピーダンスアンプに適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1
N,1
P,1
N’,1
P’…トランスインピーダンスアンプコア回路、2…反転増幅器、M
N3,M
N4,M
N5…N型トランジスタ、M
P3,M
P4,M
P5…P型トランジスタ、R
N,R
P,R
1…抵抗、C
1,C
2…コンデンサ。