特許第6784527号(P6784527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6784527静電チャックテーブル、レーザー加工装置及び被加工物の加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784527
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】静電チャックテーブル、レーザー加工装置及び被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/10 20060101AFI20201102BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20201102BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20201102BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   B23K26/10
   B23K26/53
   H01L21/78 B
   H01L21/68 R
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-137984(P2016-137984)
(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公開番号】特開2018-8286(P2018-8286A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 栄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祝子
(72)【発明者】
【氏名】富樫 謙
(72)【発明者】
【氏名】古田 健次
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−040836(JP,A)
【文献】 特開平08−181199(JP,A)
【文献】 特開2006−205202(JP,A)
【文献】 特開2012−124527(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0217577(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
H01L 21/68
H01L 21/78 − 21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する静電チャックテーブルであって、
被加工物が透過性を有する所定波長のレーザー光線に対し透過性を備え、第1の面と該第1の面と反対側の第2の面を有する板状の基台部と、
該所定波長のレーザー光線に対し透過性を有し、該基台部の該第1の面に積層される静電吸着用の電極部と、
該所定波長のレーザー光線に対し透過性を有し、該電極部を覆い、被加工物を保持する保持面を構成する樹脂層と、を備え、
該基台部の該第2の面からレーザー光線を該静電チャックテーブル越しに該被加工物に照射し、該静電チャックテーブルを透過した該レーザー光線によって、該保持面で保持した該被加工物の内部に改質層を形成する際に用いる静電チャックテーブル。
【請求項2】
該電極部は、互いに電気的に絶縁された正極電極と負極電極とを備え、
該電極部の該正極電極の正極吸着部と該負極電極の負極吸着部との間の電極間部に該レーザー光線を透過する接着剤が充填されている請求項1記載の静電チャックテーブル。
【請求項3】
該所定波長は、500nm〜1400nmである請求項1又は2記載の静電チャックテーブル。
【請求項4】
被加工物は、MEMSデバイスが表面に形成された板状物であり、裏面側を該保持面で保持する請求項1、2又は3記載の静電チャックテーブル。
【請求項5】
被加工物を保持する静電チャックテーブルと、該静電チャックテーブルに保持された被加工物に対し透過性を有する波長のレーザー光線で被加工物の内部に改質層を形成するレーザー光線照射ユニットを備えるレーザー加工装置であって、
該静電チャックテーブルは請求項1、2、3又は4記載の静電チャックテーブルであることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の静電チャックテーブルの保持面に被加工物を保持する保持ステップと、
該第2の面から照射され、該静電チャックテーブルを透過したレーザー光線によって、該保持面で保持した該被加工物の内部に改質層を形成する改質層形成ステップと、を備える被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックテーブル、レーザー加工装置及び被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やLED(Light Emitting Diode)等の光デバイスを形成したウエーハの分割にレーザー加工装置を用い、ウエーハ内部に形成した改質層を破断基点に分割する加工方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1等に示された加工方法は、従来行われていた切削水を供給しながら切削ブレードで破砕するダイシングに比較し、カーフ幅(切り代)が非常に細くできるため、挟ストリート化がすすんだウエーハに対し非常に有用である。また、特許文献1等に示された加工方法は、被加工物への機械的衝撃が非常に少ないため、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれる微細な構造体が形成されたウエーハの分割では、MEMSを破壊することなく分割できるため非常に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レーザー光線は、ウエーハを透過することが出来ても、デバイスの回路等を構成する金属層を透過することが出来ない波長であるため、金属層の無いウエーハの裏面からレーザー光線を照射するよう、デバイス面側を保持面で保持したり、分割予定ラインにTEGパターン(テストエレメントパターン)を形成しない特殊な設計にしたり、TEGパターンを事前に除去するステップを設けたりする必要があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属層やデバイスが形成された被加工物の表面側を露出させ裏面側を保持面で保持した状態で保持面側からレーザー加工を可能とする静電チャックテーブル、レーザー加工装置及び被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の静電チャックテーブルは、被加工物を保持する静電チャックテーブルであって、被加工物が透過性を有する所定波長のレーザー光線に対し透過性を備え、第1の面と該第1の面と反対側の第2の面を有する板状の基台部と、該所定波長のレーザー光線に対し透過性を有し、該基台部の該第1の面に積層される静電吸着用の電極部と、該所定波長のレーザー光線に対し透過性を有し、該電極部を覆い、被加工物を保持する保持面を構成する樹脂層と、を備え、該基台部の該第2の面からレーザー光線を該静電チャックテーブル越しに該被加工物に照射し、該静電チャックテーブルを透過した該レーザー光線によって、該保持面で保持した該被加工物の内部に改質層を形成する際に用いることを特徴とする。
該電極部は、互いに電気的に絶縁された正極電極と負極電極とを備え、該電極部の該正極電極の正極吸着部と該負極電極の負極吸着部との間の電極間部に該レーザー光線を透過する接着剤が充填されることができる。
【0008】
該所定波長は、500nm〜1400nmとすることができる。
【0009】
被加工物は、MEMSデバイスが表面に形成された板状物であり、裏面側を該保持面で保持することができる。
【0010】
本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持する静電チャックテーブルと、該静電チャックテーブルに保持された被加工物に対し透過性を有する波長のレーザー光線で被加工物の内部に改質層を形成するレーザー光線照射ユニットを備えるレーザー加工装置であって、該静電チャックテーブルは前記静電チャックテーブルであることを特徴とする。
【0011】
本発明の被加工物の加工方法は、前記静電チャックテーブルの保持面に被加工物を保持する保持ステップと、該第2の面から照射され、該静電チャックテーブルを透過したレーザー光線によって、該保持面で保持した該被加工物の内部に改質層を形成する改質層形成ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
そこで、本願発明の静電チャックテーブルは、金属層やデバイスが形成された被加工物の表面側を露出させ裏面側を保持面で保持した状態で保持面側からレーザー加工を可能とするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された被加工物を環状フレームで支持した状態を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図4図4は、図3中のIV−IV線に沿う断面図である。
図5図5は、実施形態1に係る静電チャックテーブルの構成例を示す平面図である。
図6図6は、図5中のVI−VI線に沿う断面図である。
図7図7は、図5中のVII−VII線に沿う断面図である。
図8図8は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の保持ステップを示す断面図である。
図9図9は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の改質層形成ステップを示す断面図である。
図10図10は、実施形態2に係る静電チャックテーブルの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る静電チャックテーブル1、レーザー加工装置10及び被加工物Wの加工方法を図面に基いて説明する。図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物を示す斜視図である。図2は、図1に示された被加工物を環状フレームで支持した状態を示す斜視図である。
【0016】
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、図1に示す被加工物Wを加工する方法である。図1に示す被加工物Wは、本実施形態ではシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物Wは、図1に示すように、表面WSの交差する複数の分割予定ラインSによって区画された各領域にデバイスDが形成された板状物である。デバイスDとして、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微少電気機械システム)デバイスが各領域に形成される。
【0017】
被加工物Wは、図2に示すように、デバイスDが複数形成されている表面WSの裏側の裏面WRに粘着テープTが貼着され、粘着テープTの外縁が環状フレームFに貼着されることで、環状フレームFの開口に粘着テープTで支持される。実施形態1において、被加工物Wは、環状フレームFの開口に粘着テープTで支持された状態で、被加工物の加工方法が実行されることにより、個々のデバイスDに分割される。実施形態1において、被加工物Wは、デバイスDとしてMEMSデバイスが表面に形成されているが、デバイスDはMEMSデバイスに限定されない。また、実施形態1において、被加工物WがIC又はLSIである場合に、表面にバンプ又はチップが搭載されているものが好ましく、表面が凹凸なデバイスDが好適である。
【0018】
実施形態1に係るレーザー加工装置10の構成を、図面に基いて説明する。図3は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。図4は、図3中のIV−IV線に沿う断面図である。図5は、実施形態1に係る静電チャックテーブルの構成例を示す平面図である。図6は、図5中のVI−VI線に沿う断面図である。図7は、図5中のVII−VII線に沿う断面図である。
【0019】
レーザー加工装置10は、被加工物Wに対して透過性を有する波長のレーザー光線L(図9に示す)を被加工物Wの裏面WR側から分割予定ラインSに沿って照射し、レーザー光線Lで被加工物Wの内部に破断起点となる改質層K(図9に示す)を形成するものである。なお、改質層Kとは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。
【0020】
レーザー加工装置10は、図3に示すように、被加工物Wを保持面1a(図4に示す)で保持するチャックテーブルである円盤状の静電チャックテーブル1と、加工手段としてのレーザー光線照射ユニット20と、静電チャックテーブル1とレーザー光線照射ユニット20とをX軸方向に相対移動させるX軸移動手段30と、静電チャックテーブル1とレーザー光線照射ユニット20とをY軸方向に相対移動させるY軸移動手段40と、撮像手段50と、制御装置100とを備えている。
【0021】
レーザー光線照射ユニット20は、静電チャックテーブル1の保持面1aに保持された被加工物Wに対し裏面WR側から被加工物Wが透過性を有する所定波長のレーザー光線Lを照射するユニットである。レーザー光線照射ユニット20は、レーザー光線Lで被加工物Wの内部に改質層Kを形成するユニットである。レーザー光線照射ユニット20が照射するレーザー光線Lの所定波長は、500nm以上でかつ1400nm以下である。レーザー光線照射ユニット20は、レーザー加工装置10の装置本体11から立設した壁部12に連なった支持柱13の先端に取り付けられている。レーザー光線照射ユニット20は、レーザー光線Lを発振する図示しない発振器と、この発振器により発振されたレーザー光線Lを集光する図示しない集光器とを備えている。発振器は、被加工物Wの種類、加工形態などに応じて、発振するレーザー光線Lの周波数が適宜調整される。集光器は、発振器により発振されたレーザー光線Lの進行方向を変更する全反射ミラーやレーザー光線Lを集光する集光レンズなどを含んで構成される。
【0022】
X軸移動手段30は、静電チャックテーブル1をX軸方向に移動させることで、静電チャックテーブル1を装置本体11の幅方向と水平方向との双方と平行なX軸方向に加工送りする加工送り手段である。Y軸移動手段40は、静電チャックテーブル1を水平方向と平行でX軸方向と直交するY軸方向に移動させることで、静電チャックテーブル1を割り出し送りする割り出し送り手段である。X軸移動手段30及びY軸移動手段40は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ31,41、ボールねじ31,41を軸心回りに回転させる周知のパルスモータ32,42及び静電チャックテーブル1をX軸方向又はY軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール33,43を備える。また、レーザー加工装置10は、静電チャックテーブル1をX軸方向とY軸方向との双方と直交するZ軸方向と平行な中心軸線回りに回転される回転駆動源60を備える。回転駆動源60は、X軸移動手段30によりX軸方向に移動される移動テーブル14上に配置されている。
【0023】
撮像手段50は、静電チャックテーブル1に保持された被加工物Wを撮像するものであり、レーザー光線照射ユニット20とX軸方向に並列する位置に配設されている。実施形態1では、撮像手段50は、支持柱13の先端に取り付けられている。撮像手段50は、静電チャックテーブル1に保持された被加工物Wを撮像するCCDカメラにより構成される。
【0024】
また、レーザー加工装置10は、加工前後の被加工物Wを収容するカセット70が載置されるカセットエレベータ70Aと、カセットエレベータ70Aから被加工物Wを出し入れする搬送ユニット80と、情報を表示するとともに各種の加工内容情報を入力するためのタッチパネル90とを備える。
【0025】
カセット70は、粘着テープTを介して環状フレームFに貼着された被加工物Wを複数枚収容するものである。カセットエレベータ70Aは、Z軸方向に昇降自在に設けられている。
【0026】
搬送ユニット80は、加工前の被加工物Wをカセット70から取り出して静電チャックテーブル1に保持させるとともに、加工後の被加工物Wを静電チャックテーブル1からカセット70内まで搬送するユニットである。搬送ユニット80は、複数の関節を有する可動アーム81と、可動アーム81の先端に設けられた被加工物Wを保持する保持部82とを備える。
【0027】
保持部82は、C字形平板状に形成された保持部本体83と、保持部本体83に複数配設されかつ被加工物Wを囲繞する環状フレームFを吸着する吸着パッド84とを備える。吸着パッド84は、保持部本体83の上面に設けられ、切換弁85を介して真空吸引源86が接続されている。搬送ユニット80は、下側に位置付けた吸着パッド84で環状フレームFを吸着して、保持部82の下面に被加工物Wを保持する。カセット70内の改質層Kが形成される前の被加工物Wは、保持部82に形成された開口に越しに露出し、保持部82と接触せず保持される。被加工物Wを静電チャックテーブルに搬入する際は、保持部82を上下反転させて被加工物Wに貼着した粘着テープTを上側にし、粘着テープT側を静電チャックテーブル1の保持面1aに押し当て、静電チャックテーブル1の保持面1aで保持させる。改質層Kが形成された後の被加工物Wを静電チャックテーブルから搬出する際、搬送ユニット80は、保持部82上に被加工物Wを保持した後、保持部82を上下反転させて、カセット70内に搬送する。
【0028】
タッチパネル90は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置と、液晶表示装置に重ねられたタッチスクリーンとを備える。タッチスクリーンは、指、ペン、又はスタイラスペンの接触又は近接を検出する。タッチスクリーンは、指、ペン、又はスタイラスペンが接触又は近接したときの液晶表示装置上の位置を検出する。タッチスクリーンは、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、超音波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、又は荷重検出方式を検出方式として採用したタッチスクリーンである。
【0029】
制御装置100は、レーザー加工装置10の構成要素をそれぞれ制御して、被加工物Wに改質層Kを形成する動作をレーザー加工装置10に実施させるものである。
【0030】
なお、制御装置100は、コンピュータシステムを含む。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。
【0031】
制御装置100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザー加工装置10を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介してレーザー加工装置10の上述した構成要素に出力する。また、制御装置100は、加工動作の状態や画像などを表示するタッチパネル90や切換弁85と接続されている。
【0032】
静電チャックテーブル1は、図4に示すように、回転駆動源60に被加工物収容ケース110を介して支持されている。被加工物収容ケース110は、扁平な箱状に形成さて、回転駆動源60に取り付けられている。被加工物収容ケース110は、回転駆動源60に取り付けられた底壁部材111と、底壁部材111の外縁に取り付けられた筒状部材112と、筒状部材112の上端に取り付けられた天井部材113とを備える。筒状部材112は、図3に示すように、搬送ユニット80に保持された被加工物Wを出し入れ自在とする出入口114を設けている。天井部材113は、中央に静電チャックテーブル1を取り付けている。実施形態1において、天井部材113は、中央に設けられた孔115の内周面に静電チャックテーブル1の外縁を取り付けている。また、被加工物収容ケース110内には、環状フレームFをクランプするフレームクランプ116が設けられている。
【0033】
静電チャックテーブル1は、図5図6及び図7に示すように、レーザー光線Lに対し透過性を備える板状の基台部2と、レーザー光線Lに対し透過性を有する静電吸着用の電極部3と、レーザー光線Lに対し透過性を有する樹脂層であるPET(Polyethyleneterephthalate)フィルム4とを備える。基台部2は、ガラスにより構成され、被加工物収容ケース110の内側に対向する第1の面2aと、第1の面2aと反対側の第2の面2bとを有する円盤状に形成されている。実施形態1において、基台部2の厚みは、1mmであるが、1mmに限定されない。
【0034】
電極部3は、図4図6及び図7に示すように、レーザー光線Lに対し透過性を有するUV接着剤5により基台部2の第1の面2aに積層されている。UV接着剤5は、紫外線が照射されると硬化するものであり、絶縁性を有するものである。実施形態1において。UV接着剤5は、米国Norland Products社製のNORLAND光学接着剤であるが、これに限定されない。
【0035】
電極部3は、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)により構成される。電極部3を構成する酸化インジウムスズの屈折率は、UV接着剤5の屈折率と略等しい。屈折率が略等しいとは、レーザー光線Lにより改質層Kを所望の位置に形成することができる程度に屈折率が異なることをいう。
【0036】
電極部3は、正極電極6と、負極電極7とを備える。正極電極6と負極電極7とは、互いに電気的に絶縁されている。正極電極6は、正極吸着部61と、正極給電端子部62とを備え、負極電極7は、負極吸着部71と、負極給電端子部72とを備える。正極吸着部61と負極吸着部71は、同じ形状で同じ大きさの半円形に形成されている。正極吸着部61及び負極吸着部71の直線状の直線部分61a,71aは、互いに平行でかつ間隔をあけて配置されている。正極吸着部61及び負極吸着部71の直線状の直線部分61a,71a間は、電極間部3aである。正極吸着部61及び負極吸着部71の円弧状の円弧部分61b,71bは、基台部2の外縁の近傍に外縁に沿って配置されている。電極部3の正極電極6の正極吸着部61と負極電極7の負極吸着部71との双方は、円弧部分61b,71bが基台部2の外縁の近傍に外縁に沿って配置されて、電極部3は基台部2の第1の面2aの略全面に積層されている。電極間部3a、及び正極吸着部61及び負極吸着部71の円弧部分61b,71bと基台部2の外縁との間には、UV接着剤5が充填されている。
【0037】
正極給電端子部62は、正極吸着部61の外縁から保持面1aの中心から外側に延びて、基台部2の外縁よりも外側に突出している。負極給電端子部72は、負極吸着部71の外縁から外側に延びて、基台部2の外縁よりも外側に突出している。正極給電端子部62は、被加工物Wを保持中、常時電源8からプラスの電圧が印加され、負極給電端子部72は、被加工物Wを保持中、常時電源8からマイナスの電圧が印加される。
【0038】
PETフィルム4は、電極部3を覆い、被加工物Wを保持する保持面1aを構成する。
【0039】
静電チャックシート1は、PETフィルム4の表面である保持面1aにダイシングテープTを介して被加工物Wが重ねられ、正極給電端子部62から正極吸着部61にプラスの電圧が印加され、負極給電端子部72から負極吸着部71にマイナスの電圧が印加されることにより、吸着部61,71間に発生した力によって被加工物Wを保持面1aに吸着保持する。
【0040】
次に、レーザー加工装置10を用いた実施形態1に係る被加工物Wの加工方法を、図面に基いて説明する。図8は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の保持ステップを示す断面図である。図9は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の改質層形成ステップを示す断面図である。
【0041】
被加工物の加工方法は、オペレータが加工内容情報をレーザー加工装置10の制御装置100に登録し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、レーザー加工装置10の制御装置100により開始される。
【0042】
被加工物の加工方法は、保持ステップと、改質層形成ステップと、収容ステップとを備える。保持ステップでは、制御装置100は、切換弁85を介して真空吸引源86の吸引力を搬送ユニット80の吸着パッド84に作用させ、カセット70内の改質層Kが形成される前の被加工物Wを保持した環状フレームFを保持部82に吸着保持する。制御装置100は、搬送ユニット80の保持部82に吸着した被加工物Wをカセット70内から取り出して、被加工物収容ケース110内に挿入する。制御装置100は、図8に示すように、被加工物WをダイシングテープTを介して保持面1aに重ねて、正極給電端子部62にプラスの電圧を印加し、負極給電端子部72にマイナスの電圧を印加し、保持面1aに被加工物Wを吸着保持させ、フレームクランプ116に環状フレームFをクランプさせて、切換弁85を制御して真空吸引源86の吸引力が吸着パッド84に作用することを停止する。改質層形成ステップに進む。
【0043】
改質層形成ステップでは、制御装置100は、撮像手段50が撮像した被加工物Wの画像に基いてアライメントを実行し、図9に示すように、レーザー光線照射ユニット20からレーザー光線Lを被加工物Wの分割予定ラインSに向かって照射させながらX軸移動手段30、Y軸移動手段40及び回転駆動源60を制御し、全ての分割予定ラインSにレーザー光線Lを照射する。制御装置100は、基台部2の第2の面2bから照射され、静電チャックテーブル1を透過したレーザー光線Lによって、保持面1aで保持した被加工物Wの全ての分割予定ラインSの内部に改質層Kを形成する。このように、静電チャックテーブル1は、保持面1aで保持した被加工物Wの内部に改質層Kを形成する際に用いる。そして、収容ステップに進む。
【0044】
収容ステップでは、制御装置100は、全ての分割予定ラインSの内部に改質層Kが形成された被加工物Wを保持する環状フレームFを吸着パッド84に吸着保持し、フレームクランプ116のクランプを解除して、被加工物Wを被加工物収容ケース110内から取り出し、カセット70内に挿入した後、吸着パッド84の吸着保持を解除する。全ての分割予定ラインSの内部に改質層Kが形成された被加工物Wは、次工程において、個々のデバイスDに分割される。
【0045】
実施形態1の静電チャックテーブル1は、基台部2、電極部3、樹脂層であるPETフィルム4及びUV接着剤5の全てが被加工物Wを加工するレーザー光線Lに対し透過性を有する。これにより、静電チャックテーブル1は、金属層及びデバイスDの無い被加工物Wの裏面WR側を保持面1aで保持しつつ、静電チャックテーブル1越しにレーザー光線Lを照射できる。その結果、静電チャックテーブル1は、表面WSを保持する必要がないので、表面が凹凸なデバイスDを破損することなく保持でき、被加工物Wに特殊な設計を施したり事前にTEGパターンを除去することなく、被加工物Wを加工することができる。したがって、静電チャックテーブル1は、デバイスDを破損することなく、被加工物Wの金属層を除去することなく、金属層やデバイスDが形成された被加工物Wの表面WS側を露出させ裏面WR側を保持面1aで保持した状態で保持面1a側からレーザー加工を可能とすることができる。
【0046】
また、実施形態1の静電チャックテーブル1、レーザー加工装置10及び被加工物の加工方法によれば、電極部3の正極電極6の正極吸着部61と負極電極7の負極吸着部71との双方が半円形に形成されて、基台部2の第1の面2aの略全面に積層されている。このために、実施形態1の静電チャックテーブル1、レーザー加工装置10及び被加工物の加工方法によれば、基台部2の第1の面2aの略全面に積層された正極電極6の正極吸着部61と負極電極7の負極吸着部71との間に発生した力によって被加工物Wを吸着する。その結果、静電チャックシート1は、吸着部61,71間に発生した力によって被加工物Wを保持面1aの略全面で吸着力を発生させるので、被加工物Wの外縁部を負圧により吸引する場合に比較して、基台部2の第1の面2aの略全面で被加工物Wを吸着保持することができる。
【0047】
また、静電チャックテーブル1は、電極部3を構成する酸化インジウムスズと、電極間部3aに充填されるUV接着剤5との屈折率が略等しいので、被加工物Wの所望の位置に改質層Kを形成することができる。
【0048】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る静電チャックテーブルを図面に基いて説明する。図10は、実施形態2に係る静電チャックテーブルの要部の断面図である。図10において、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
実施形態2に係る静電チャックテーブル1−2は、図10に示すように、基台部2の第1の面2aにUV接着剤5により樹脂層であるPETフィルム4が積層され、PETフィルム4上に電極部3が形成されている。また、電極部3の電極間部3a、及び吸着部61,71の円弧部分61b,71bとPETフィルム4の外縁との間には、UV接着剤5が充填されている。
【0050】
実施形態2に係る静電チャックテーブル1−2は、実施形態1と同様に、基台部2、電極部3、樹脂層であるPETフィルム4及びUV接着剤5の全てが被加工物Wを加工するレーザー光線Lに対し透過性を有する。これにより、静電チャックテーブル1−2は、金属層及びデバイスDの無い被加工物Wの裏面WR側を保持面1aで保持しつつ、静電チャックテーブル1−2越しにレーザー光線Lを照射できる。その結果、静電チャックテーブル1−2は、デバイスDを破損することなく、被加工物Wの金属層を除去することなくレーザー加工を可能とすることができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 静電チャックテーブル
1a 保持面
2 基台部
2a 第1の面
2b 第2の面
3 電極部
4 PETフィルム(樹脂層)
10 レーザー加工装置
20 レーザー光線照射ユニット
W 被加工物
WS 表面
WR 裏面
D デバイス(MEMSデバイス)
L レーザー光線
K 改質層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10