特許第6784539号(P6784539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784539
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】真円度測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20201102BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   G01B5/20 R
   G01B5/00 L
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-169154(P2016-169154)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-36130(P2018-36130A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 樹
(72)【発明者】
【氏名】石橋 一成
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−201341(JP,A)
【文献】 特開2004−297978(JP,A)
【文献】 特開2005−037355(JP,A)
【文献】 特開昭55−037957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
G01B 21/00−21/32
G01B 11/00
B23Q 17/00
B23Q 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置される載置板を備え、回転軸線まわりに回転して前記載置板に載置された前記ワークを回転させるテーブルと、
前記載置板に載置された前記ワークに接触されるスタイラスを備え、前記スタイラスの変位を検出する検出器と、を備え、
前記テーブルが回転されているときに前記ワークの周面に前記スタイラスを接触させ、前記検出器で検出された前記スタイラスの変位から前記ワークの円形形状を測定する真円度測定機であって、
前記テーブルに設置されており、前記回転軸線に対して直交する第1の移動軸方向及び第2の移動軸方向に前記載置板をそれぞれ移動させる第1の移動機構及び第2の移動機構と、
前記テーブルの現在の回転角度を検出する角度検出部と、
前記載置板に載置された前記ワークの、前記回転軸線に直交する操作方向への操作量を指定する外部操作子と、
前記操作量及び前記回転角度から前記第1の移動軸方向への第1の移動量及び前記第2の移動軸方向への第2の移動量を算出し、算出された第1及び第2の移動量に基づいて、前記第1及び第2の移動機構を駆動させる心出し制御部と、を有することを特徴とする真円度測定機。
【請求項2】
請求項1に記載した真円度測定機において、
前記テーブルには、前記回転軸線に直交する第1の傾斜軸方向及び第2の傾斜軸方向に対する前記載置板の傾きをそれぞれ調整する第1の傾斜機構及び第2の傾斜機構がさらに設置されており、
前記操作量及び前記回転角度から前記第1の傾斜軸方向に対する第1の傾斜量及び前記第2の傾斜軸方向に対する第2の傾斜量を算出し、算出された第1及び第2の傾斜量に基づいて前記第1及び第2の傾斜機構を駆動させる水平出し制御部をさらに有することを特徴とする真円度測定機。
【請求項3】
ワークが載置される載置板を備え、回転軸線まわりに回転して前記載置板に載置された前記ワークを回転させるテーブルと、
前記載置板に載置された前記ワークに接触されるスタイラスを備え、前記スタイラスの変位を検出する検出器と、を備え、
前記テーブルが回転されているときに前記ワークの周面に前記スタイラスを接触させ、前記検出器で検出された前記スタイラスの変位から前記ワークの円形形状を測定する真円度測定機であって、
前記テーブルに設置されており、前記回転軸線に直交する第1の傾斜軸方向及び第2の傾斜軸方向に対する前記載置板の傾きをそれぞれ調整する第1の傾斜機構及び第2の傾斜機構と、
前記テーブルの現在の回転角度を検出する角度検出部と、
前記載置板に載置された前記ワークの、前記回転軸線に直交する操作方向への操作量を指定する外部操作子と、
前記操作量及び前記回転角度から前記第1の傾斜軸方向に対する第1の傾斜量及び前記第2の傾斜軸方向に対する第2の傾斜量を算出し、算出された第1及び第2の傾斜量に基づいて前記第1及び第2の傾斜機構を駆動させる水平出し制御部と、
を有することを特徴とする真円度測定機。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載した真円度測定機において、
前記第1及び第2の移動量は、これらを合成した移動量が、前記操作方向への前記操作量に対応する距離となるように、前記回転角度に応じて前記操作方向への指定された前記操作量に対応する距離を前記第1及び第2の移動軸方向に成分分配した値であることを特徴とする真円度測定機。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載した真円度測定機において、
前記第1及び第2の傾斜量は、前記スタイラスの前記回転軸線方向の位置における前記操作方向への移動量であり、
前記第1及び第2の傾斜量は、これらを合成した傾斜量が、前記スタイラスの前記回転軸線方向の位置において、前記操作方向への指定された前記操作量に対応する距離になるように、前記回転角度に応じて前記第1及び第2の傾斜軸方向に成分分配した値であることを特徴とする真円度測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真円度測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの真円度を測定する測定機として、真円度測定機が用いられている。
真円度測定機は、ベース上に、ワークを載置可能かつ垂直な回転軸線(Z軸)回りに回転可能なテーブルと、このテーブルを回転させる回転駆動機構とを備える。さらに、真円度測定機は、ベース上に立設されたコラムと、このコラムに沿って上下方向へ昇降可能な昇降スライダと、この昇降スライダに支持されて水平方向へスライド可能なスライドアームと、このスライドアームの先端に取り付けられた検出器とを備える。検出器は、ワークに接するスタイラスの変位を電気信号として出力可能である。
このような真円度測定機では、測定対象のワークをテーブルに載置した状態で回転させつつ、検出器をワークの外周面の所定高さ位置に接触させることで、接触した高さ位置におけるワークの円周形状を測定することができる。
【0003】
真円度測定機では、測定動作にあたって、ワークの回転軸線の調整操作、いわゆる心出し操作及び水平出し操作(併せて心水平出し操作)が必要とされる。
心出し操作とは、テーブルの回転軸線とワークの中心軸線との水平方向のずれを機構的に補正する操作である。
水平出し操作とは、テーブル上面の水平状態、すなわちテーブルの回転軸線とワークの中心軸線との傾きを機構的に補正する操作である。
これらの心出し操作及び水平出し操作が完了した状態では、テーブルの回転軸線とワークの中心軸線とが一致され、ワークはその中心軸線を中心にしてテーブルにより回転され、周面のどの高さ位置でも正確な真円度が測定可能となる。
【0004】
従来の真円度測定機では、前述した心出し操作及び水平出し操作を行うために、専用の調整機構が設置されたテーブル(求心テーブル)が用いられる(特許文献1参照)。
求心テーブルには、心出し操作を行うために、テーブルの回転軸線を原点として水平に延びるCX軸及びCY軸による直交座標系が設定される。そして、テーブルに載置されるワークをCX軸方向及びCY軸方向に変位させるために、CX軸調整機構及びCY軸調整機構が設置される。
CX軸調整機構及びCY軸調整機構は、例えばワークが載置される載置板を、テーブル本体に対してCX軸方向及びCY軸方向へ移動させることで、回転軸線に対するワークのCX軸方向及びCY軸方向の位置をそれぞれ調整することができる。
【0005】
また、求心テーブルには、水平出し操作を行うために、テーブルの回転軸線を原点として水平に延びるLX軸及びLY軸による直交座標系が設定される。そして、テーブルに載置されるワークをLX軸方向及びLY軸方向に傾斜させるために、LX軸調整機構及びLY軸調整機構が設置される。
LX軸調整機構及びLY軸調整機構は、例えばワークが載置される載置板のLX軸方向及びLY軸方向の一方の側を、テーブル本体に対して持ち上げる等により、載置板をLX軸方向及びLY軸方向に対して傾斜させることができ、これにより回転軸線に対するワークのLX軸方向及びLY軸方向の傾きをそれぞれ調整することができる。
これらCX軸、CY軸、LX軸及びLY軸の各軸調整機構は、マイクロメータヘッドに類似の機構を利用した手動式のもののほか、モータ駆動式のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3511494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した求心テーブルを有する真円度測定機においては、測定動作に先立ってワークの心出し操作及び水平出し操作(心水平出し操作)を行う。
心水平出し操作においては、求心テーブル部のCX軸,CY軸,LX軸,LY軸の各々について、各軸を順次、真円度測定機のX軸(スライドアームによる検出器の移動軸線)に合わせ、その状態で各軸調整機構(CX軸,CY軸,LX軸,LY軸)のつまみを手動で回転させて調整する。
この際、心出し操作については、CX軸及びCY軸のつまみの調整を交互に行う。また、水平出し操作については、LX軸及びLY軸のつまみの調整を交互に行う。従って、交差方向の2軸を行き来しつつ調整を行うことで、心出し操作及び水平出し操作が煩雑であるという問題があった。
【0008】
このような煩雑な操作を避けるために、一部の真円度測定機では、前述した心出し操作及び水平出し操作を自動化したものも開発されている。
しかし、自動心水平出し機能を、既に稼働している真円度測定機に追加するためには、各軸調整機構をモータ駆動式としたうえ、調整操作を実行する制御ソフトウェアに更新する必要があり、構造的にもコスト的にも大がかりとなり、実施の妨げとなっていた。
【0009】
本発明は、実施が容易で回転軸線の調整操作を簡素化できる真円度測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の真円度測定機は、ワークが載置される載置板を備え、回転軸線まわりに回転して前記載置板に載置された前記ワークを回転させるテーブルと、前記載置板に載置された前記ワークに接触されるスタイラスを備え、前記スタイラスの変位を検出する検出器と、を備え、前記テーブルが回転されているときに前記ワークの周面に前記スタイラスを接触させ、前記検出器で検出された前記スタイラスの変位から前記ワークの円形形状を測定する真円度測定機であって、前記テーブルに設置されており、前記回転軸線に対して直交する第1の移動軸方向及び第2の移動軸方向に前記載置板をそれぞれ移動させる第1の移動機構及び第2の移動機構と、前記テーブルの現在の回転角度を検出する角度検出部と、前記載置板に載置された前記ワークの、前記回転軸線に直交する操作方向への操作量を指定する外部操作子と、前記操作量及び前記回転角度から前記第1の移動軸方向への第1の移動量及び前記第2の移動軸方向への第2の移動量を算出し、算出された第1及び第2の移動量に基づいて、前記第1及び第2の移動機構を駆動させる心出し制御部と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明において、外部操作子としては、装置本体に外部接続されるジョイスティックやスライドボリューム付き操作装置など、少なくとも一つの変数を調整できる機器であればよく、装置本体との接続は有線でも無線でもよい。また、外部操作子は、装置本体の一部に外付けされるものであってもよい。
本発明において、操作量dX及び回転角度θから第1及び第2の移動量を算出する手順は、通常の幾何学的な算術演算を行えばよく、回転角度θに応じて操作量dXを成分分配する操作が利用できる。例えば、第1及び第2の移動軸をテーブルのCX軸及びCY軸とするなら、第1及び第2の移動量であるCX軸移動量dCX及びCY軸移動量dCYは、それぞれdCX=dX・cos(θ)、dCY=dX・sin(θ)などと計算することができる。
本発明において、角度検出部は、真円度測定機の既存の構成をそのまま利用することができる。
【0012】
本発明において、心出し操作は次のように行う。
先ず、例えば円柱状のワークをテーブルの載置板に設置し、スタイラスをワークの周面に当接させた状態で、テーブルを回転させる。テーブルの回転に伴って、スタイラスがワークの周面をトレースし、スタイラスが接触している高さ(例えばZ軸位置)でのワークの形状が測定できる。
ワークの幾何学的な中心軸線とテーブルの回転軸線とがずれていると、ワークの回転に伴って、つまり回転の角度に応じて、スタイラスの接触位置の水平方向位置(例えばX軸位置)が増減する(振れる)ことになる。
そこで、作業者は、テーブルを回転させ、ワークに接触するスタイラスのX軸位置が最大(または最小)となる位置を探り、その位置でテーブルを停止させる。このとき、ワークの最大の心ずれがX軸方向に向いており、X軸方向が心ずれを調整すべき操作方向となる。この状態でのテーブルの角度位置を回転角度θとする。そして、心出し調整動作として、ワークに接触するスタイラスのX軸位置が最大と最小との中間値となるように調整を行う。
【0013】
具体的には、スタイラスをワークに接触させた状態(X軸位置が最大または最小の状態)のまま、ジョイスティックなどの外部操作子を操作する。この操作により、テーブルの回転軸線に対する載置板の移動量に対応した操作量dXが指定される。指定された操作量dXは心出し制御部で参照される。
心出し制御部は、外部操作子に操作があり、操作量dXが指定されると、その時点でのテーブルの回転角度θを角度検出部から取得し、これらの操作量dX(操作量dXに対応した距離の移動量)及び回転角度θから第1及び第2の移動量(例えばCX軸移動量dCX及びCY軸移動量dCY)を算出する。
心出し制御部は、さらに、算出された第1の移動量(CX軸移動量dCX)に基づいて第1の移動機構であるCX軸移動機構を移動させ、第2の移動量(CY軸移動量dCY)に基づいて第2の移動機構であるCY軸移動機構を移動させる。これらの第1の移動軸及び第2の移動軸の2軸の同時移動により、載置板及びワークがテーブルの回転軸線に対して操作方向(X軸方向)へ操作量dXだけ移動する。
前述したワークの中心軸線のずれは、この状態で操作方向(X軸方向)の変位となっている。従って、この操作量dXに応じた距離の移動により、ワークの中心軸線のずれを減少させることができる。
そして、外部操作子による操作量dXに応じた距離の移動を数回繰り返し、ワークに接触するスタイラスの操作方向の位置(X軸位置)が、前述した最大と最小との中間値(中心軸線の振れ量の中間値)になったら、その位置で心出し操作が完了する。
【0014】
このように、本発明によれば、ワークにスタイラスを接触させた状態でテーブルを回転させてワークの中心軸線のずれを検出し、スタイラスで検出されるワークの現在位置を見ながら外部操作子を操作することで、ワークの中心軸線のずれを徐々に減少させ、最終的にずれをなくすことで、心出し操作を行うことができる。
従って、本発明によれば、第1及び第2の移動軸を個別に調整する操作を行う必要がなく、心出し操作を簡略化することができる。また、本発明に基づく心出し操作は、例えば中心位置がずれているワークを最大のずれを示す操作方向に徐々にずらす操作に類似であり、作業者にとって直感的に把握がしやすい。
さらに、第1及び第2の移動機構をモータ駆動式とし、制御装置に心出し制御部を組み込むとともに、外部操作子を接続すれば、本発明を容易に実施することができる。とくに、既存の自動心水平出し機能のような全自動とするための大規模なソフトウェアは必要がなく、実施を容易にすることができる。
【0015】
本発明の真円度測定機において、前記テーブルには、前記回転軸線に直交する第1の傾斜軸方向及び第2の傾斜軸方向に対する前記載置板の傾きをそれぞれ調整する第1の傾斜機構及び第2の傾斜機構がさらに設置されており、前記操作量及び前記回転角度から前記第1の傾斜軸方向に対する第1の傾斜量及び前記第2の傾斜軸方向に対する第2の傾斜量を算出し、算出された第1及び第2の傾斜量に基づいて前記第1及び第2の傾斜機構を駆動させる水平出し制御部をさらに有することが好ましい。
【0016】
本発明においては、前述した本発明の心出し操作(第1及び第2の移動軸の位置調整)ののち、ワークの異なる高さ(Z軸位置)で同様の操作を行うことで、ワークの第1及び第2の傾斜軸(例えばLX軸及びLY軸)に対する傾斜を調整することができる。
すなわち、ワークの所定高さ位置で前述した心出し操作が完了した状態でも、テーブルの回転軸線に対してワークの中心軸線の傾きがあると、ワークの異なる高さ位置では中心軸線のずれが現れる。このずれを例えばX軸方向に合わせて操作方向とした状態で、前述した心出し操作と同様な操作量dXの移動により、第1及び第2の傾斜機構(例えばLX軸傾斜機構及びLY軸傾斜機構)で載置板を傾斜させ、これによりワークの中心軸線の傾きを減少させ、その結果、テーブルの水平出し操作を行うことができる。
【0017】
具体的には、スタイラスをワークに接触させた状態(操作方向であるX軸方向の位置が最大または最小の状態)のまま、ジョイスティックなどの外部操作子を操作する。この操作により、テーブルの回転軸線に対して載置板を傾斜させるための操作量dXが指定される。指定された操作量dXは水平出し制御部で参照される。
水平出し制御部は、外部操作子に操作があり、操作量dXが指定されると、その時点でのテーブルの回転角度θを角度検出部から取得し、これらの操作量dX及び回転角度θから第1及び第2の傾斜量(LX軸傾斜量φLX及びLY軸傾斜量φLY)を算出する。
水平出し制御部は、さらに、算出されたLX軸傾斜量φLXに基づいてLX軸傾斜機構により載置板を傾斜させ、LY軸傾斜量φLYに基づいてLY軸傾斜機構により載置板を傾斜させる。これらのLX軸及びLY軸の2軸の同時傾斜により、載置板の傾きが変更され、スタイラスが接触している高さ位置におけるワークの中心軸線の位置はX軸方向へ操作量dXに対応した移動量だけ移動する。
テーブルの回転軸線に対するワークの中心軸線の傾きは、スタイラスが接触している高さ位置においてワークの中心軸線のずれとして現れ、このずれはX軸方向の変位となっている。従って、この操作量dXに応じた距離の移動により、ワークの異なる高さ位置でのワークの中心軸線のずれ、つまり中心軸線の傾きを減少させることができる。
そして、外部操作子による操作量dXに応じた距離の移動を数回繰り返し、ワークに接触するスタイラスのX軸位置(操作方向の位置)が、前述した最大と最小との中間値(中心軸線の振れ量の中間値)になったら、その位置で水平出し操作が完了する。
【0018】
このように、本発明によれば、ワークにスタイラスを接触させた状態でテーブルを回転させてワークの中心軸線のずれを検出し、スタイラスで検出されるワークの現在位置を見ながら外部操作子を操作することで、ワークの中心軸線のずれを徐々に減少させ、最終的にずれをなくすことで、水平出し操作を行うことができる。
従って、本発明によれば、第1及び第2の傾斜軸(LX軸及びLY軸)を個別に調整する操作を行う必要がなく、水平出し操作を簡略化することができる。また、本発明に基づく水平出し操作は、例えば中心位置が傾いているワークを操作方向(X軸方向)に沿って徐々に傾斜を直す操作に類似であり、作業者にとって直感的に把握がしやすい。
さらに、第1及び第2の傾斜機構(LX軸傾斜機構及びLY軸傾斜機構)をモータ駆動式とし、制御装置に水平出し制御部を組み込むとともに、外部操作子を接続すれば、本発明を容易に実施することができる。とくに、既存の自動心水平出し機能のような全自動とするための大規模なソフトウェアは必要がなく、実施を容易にすることができる。
【0019】
本発明の真円度測定機は、ワークが載置される載置板を備え、回転軸線まわりに回転して前記載置板に載置された前記ワークを回転させるテーブルと、前記載置板に載置された前記ワークに接触されるスタイラスを備え、前記スタイラスの変位を検出する検出器と、を備え、前記テーブルが回転されているときに前記ワークの周面に前記スタイラスを接触させ、前記検出器で検出された前記スタイラスの変位から前記ワークの円形形状を測定する真円度測定機であって、前記テーブルに設置されており、前記回転軸線に直交する第1の傾斜軸方向及び第2の傾斜軸方向に対する前記載置板の傾きをそれぞれ調整する第1の傾斜機構及び第2の傾斜機構と、前記テーブルの現在の回転角度を検出する角度検出部と、前記載置板に載置された前記ワークの、前記回転軸線に直交する操作方向への操作量を指定する外部操作子と、前記操作量及び前記回転角度から前記第1の傾斜軸方向に対する第1の傾斜量及び前記第2の傾斜軸方向に対する第2の傾斜量を算出し、算出された第1及び第2の傾斜量に基づいて前記第1及び第2の傾斜機構を駆動させる水平出し制御部と、を有することを特徴とする。
【0020】
このような本発明によれば、前述した本発明の水平出し機能を、前述した心出し機能とは独立して実現することができる。
【0021】
本発明の真円度測定機において、前記第1及び第2の移動量は、これらを合成した移動量が、前記操作方向への指定された前記操作量に対応する距離となるように、前記回転角度に応じて前記操作方向への前記操作量に対応する距離を前記第1及び第2の移動軸方向に成分分配した値であることが好ましい。
本発明では、心出し時の第1及び第2の移動機構の駆動を行うための操作量dXを、スタイラスの所定の高さ位置における操作方向の移動量に対応させる(例えば比例させる)ことができ、所期の調整を確実に行うことができる。
【0022】
本発明の真円度測定機において、前記第1及び第2の傾斜量は、前記スタイラスの前記回転軸線方向の位置における前記操作方向への移動量であり、前記第1及び第2の傾斜量は、これらを合成した傾斜量が、前記スタイラスの前記回転軸線方向の位置において、前記操作方向への指定された前記操作量に対応する距離になるように、前記回転角度に応じて前記第1及び第2の傾斜軸方向に成分分配した値であることが望ましい。
本発明では、水平出し時の第1及び第2の傾斜機構の駆動を行うための操作量dXを、スタイラスの所定高さ位置における操作方向の移動量に対応させる(例えば比例させる)ことができ、所期の調整を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、実施が容易で回転軸線の調整操作を簡素化できる真円度測定機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に基づく真円度測定機の一実施形態を示す斜視図。
図2】本実施形態の真円度測定機を示す平面図。
図3】本実施形態の真円度測定機の制御装置を示すブロック図。
図4】本実施形態での演算を示す模式図。
図5】本実施形態の心出し操作を示すフローチャート。
図6】本実施形態の心出し操作の結果を示す模式図。
図7】本実施形態の水平出し操作を示すフローチャート。
図8】本実施形態の水平出し操作の結果を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔真円度測定機〕
図1及び図2には、本発明に基づく真円度測定機1が示されている。
本実施形態の真円度測定機1は、装置本体としてベース10を備え、このベース10の上面にはテーブル20が設置されている。
テーブル20は、駆動機構(図示省略)によりベース10に対して回転駆動される。テーブル20の回転軸線Lは、ベース10のZ軸方向(垂直方向)とされている。テーブル20の上面には、ワークWが載置される。ワークWの中心軸線Cは、テーブル20の回転軸線Lの延長上に配置される。
【0026】
ベース10の上面には、テーブル20に隣接して検出器移動機構30が設置され、検出器移動機構30には検出器40が支持されている。
検出器移動機構30は、ベース10のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向へ移動可能な各軸移動機構(図示省略)を有し、検出器40をX軸、Y軸及びZ軸の各方向の任意位置へと移動させることができる。
検出器40は、スタイラス41及びその変位を検出する図示しない変換器を有し、スタイラス41に接触する表面の輪郭形状を信号出力可能である。
検出器40は、検出器移動機構30により移動され、テーブル20に載置されたワークWの周面の任意高さ位置にスタイラス41を接触させることができる。
【0027】
〔回転軸線の調整機構〕
テーブル20には、その回転軸線LとワークWの中心軸線とを合わせる操作(心出し操作及び水平出し操作)を行うための調整機構が設置されている。
テーブル20は、ベース10に回転可能に設置された円筒状の本体21と、本体21の上面に水平方向へ移動可能に設置された円盤状の載置板22とを有する。
【0028】
本体21の側面には、載置板22を垂直な回転軸線Lに対して直交しかつ相互に直交するCX軸方向及びCY軸方向へ移動させるCX軸移動機構26及びCY軸移動機構27と、載置板22のCX軸方向の傾き(LX軸方向)及びCY軸方向の傾き(LY軸方向)を調整するLX軸傾斜機構28及びLY軸傾斜機構29とが設置されている。
【0029】
CX軸移動機構26及びCY軸移動機構27は、モータ駆動により載置板22をCX軸方向及びCY軸方向へスライドさせる構造である。CX軸方向及びCY軸方向が本発明の第1の移動軸方向及び第2の移動軸方向に対応し、CX軸移動機構26及びCY軸移動機構27が本発明の第1の移動機構及び第2の移動機構に対応する。
LX軸傾斜機構28及びLY軸傾斜機構29は、モータ駆動より載置板22をLX軸方向及びLY軸方向に対して傾斜させる構造である。LX軸方向及びLY軸方向が本発明の第1の傾斜軸方向及び第2の傾斜軸方向に対応し、LX軸傾斜機構28及びLY軸傾斜機構29が本発明の第1の傾斜機構及び第2の傾斜機構に対応する。
【0030】
〔制御装置〕
真円度測定機1は、ワークの真円度測定を含む各部の動作制御を行う制御装置50を備えている。
本実施形態の制御装置50は、パーソナルコンピュータで構成され、内部に格納された動作用のプログラムに基づいて各部の制御を行う。
なお、本実施形態では制御装置50が装置本体であるベース10と別体とされているが、制御装置50は装置本体に組み込まれていてもよい。
【0031】
図3において、制御装置50は、キーボード51及びディスプレイ52を有し、これらを介して作業者Pは、真円度測定機1の操作及び情報読み取りが可能である。入力用にマウスあるいはタッチパッドなどのポインティングデバイスを備えていてもよい。
さらに、本発明の外部操作子として、制御装置50にはジョイスティック53が設置されている。
【0032】
制御装置50は、ワークWの真円度などの輪郭形状の測定を行うために、測定制御部54を備えている。
測定制御部54は、所定の動作手順を記述したプログラムであり、テーブル20にワークWが載置された状態で起動されることで、ワークWの周面の輪郭形状ないし真円度を検出することが可能である。
【0033】
具体的には、測定制御部54は、移動制御部55を介してテーブル20を回転させるとともに、検出器移動機構30により検出器40をワークWの周面に接触させる。そして、角度検出部56で現在のテーブル20の回転角度θ(以下角度θ)を読み取るとともに、検出器40から出力されるスタイラス41の変位Tを示す信号を接触位置検出部57で読み取り、角度θごとの変位Tを記録してゆく。その結果、全周つまり角度θ=0〜360度の変位T(θ)が測定され、そのデータ処理によりワークWの周面の輪郭形状ないし真円度を検出することができる。
【0034】
制御装置50は、測定制御部54によるワークWの測定に先立って、テーブル20の心出し操作及び水平出し操作を行うために、心出し制御部58及び水平出し制御部59を備えている。
これらの心出し制御部58及び水平出し制御部59も、所定の動作手順を記述したプログラムである。
【0035】
心出し制御部58は、作業者Pが制御装置50に心出し操作を指定した際に起動され、ジョイスティック53から入力されたX軸方向(本発明における操作方向)の操作量dX、及び角度検出部56で得られる現在の角度θから、合成した場合にX軸方向への移動量が操作量dXとなるようなCX軸移動量dCX(本発明における第1の移動量)及びCY軸移動量dCY(本発明における第2の移動量)を算出する。
本実施形態では、図4のように、角度検出部56で検出される現在のテーブル20の角度θがX軸に対するCX軸であるとすると、CX軸移動量dCXはdCX=dX・cos(θ)で算出され、CY軸移動量dCYはdCY=dX・sin(θ)で算出される。
【0036】
さらに、心出し制御部58は、算出したCX軸移動量dCX及びCY軸移動量dCYに基づいて、テーブル20のCX軸移動機構26及びCY軸移動機構27を動作させる。
これにより、テーブル20は、載置板22の水平位置が変更され、角度θに拘わらず、CX軸移動量dCX及びCY軸移動量dCYを合成した移動量dXつまり操作量dXだけX軸方向へ移動される(図6参照、詳細は後述)。
【0037】
水平出し制御部59は、作業者Pが制御装置50に水平出し操作を指定した際に起動され、ジョイスティック53から入力された操作量dX、及び角度検出部56で得られる現在の角度θから、水平出し操作のためにスタイラス41が接触している高さ位置において、合成した場合にX方向への移動量がdXとなるようなLX軸傾斜量φLX(本発明における第1の傾斜量)及びLY軸傾斜量φLY(本発明における第2の傾斜量)を算出する。
【0038】
LX軸傾斜量φLX及びLY軸傾斜量φLYは、前述したCX軸移動量dCX及びCY軸移動量dCYに比べて複雑となるが、幾何学的な算術演算により算出することができる。概略的な算出としては、CX軸移動量dCX及びCY軸移動量dCYに準じて、図4のように、LX軸移動量dLXをdLX=dX・cos(θ)とし、LY軸移動量dLYをdLY=dX・sin(θ)とする。さらに、スタイラス41が接触している高さ位置と載置板22の水平出し回動中心との、高さ(Z軸)方向の距離をdZとし、中心軸線Cと回転軸線Lとの角度をφ(操作量dXにより載置板を傾ける角度)とすると、LX軸傾斜量φLXおよびLY軸傾斜量φLYは次のように求めることができる。
φLX=tan−1(dLX/dZ)
=tan−1(dX・cos(θ)/dZ)
φLY=tan−1(dLY/dZ)
=tan−1(dX・sin(θ)/dZ)
【0039】
さらに、水平出し制御部59は、算出したLX軸傾斜量φLX及びLY軸傾斜量φLYに基づいて、テーブル20のLX軸傾斜機構28及びLY軸傾斜機構29を動作させる。
これにより、テーブル20は、水平出し操作のためにスタイラス41が接触している高さ位置において、つまりその高さの水平な平面内で、角度θに拘わらず、LX軸傾斜量φLX及びLY軸傾斜量φLYに対応するLX軸移動量dLX及びLY軸移動量dLYを合成した操作量dXだけX軸方向へ移動される。その結果、載置板22の心出し状態は変化しないが、スタイラス41が接触している高さ位置で操作量dXだけX軸方向へ移動するように、つまり中心軸線Cの上側がX−方向に移動するように載置板22が傾斜され、その結果LX軸傾斜量φLXおよびLY軸傾斜量φLYに基づいて傾斜が変化される(図8参照、詳細は後述)。
【0040】
〔心出し操作〕
本実施形態における心出し操作の具体的な手順は以下の通りである。
心出し操作にあたっては、予め円柱状のワークWをテーブル20に載置しておく。
心出し操作に用いるワークWとしては、円柱状に限らず、円錐状などでもよく、中心軸線Cに交差する断面が円形、つまり中心軸線Cまわりに円形の輪郭形状が得られる形状であればよい。
次に、作業者Pは、制御装置50に心出し操作の実行を指示する。制御装置50においては、心出し制御部58が起動される。この状態で、図5に示す手順を実行する。
【0041】
図5において、作業者Pは、検出器移動機構30により検出器40をX−方向へと移動させ(図2の左向きに移動)、検出器40のスタイラス41をワークWの周面に当接させる(図5の処理S51)。
スタイラス41がワークWの周面に当接する高さ位置(Z軸位置)は、任意の高さであってよい。ただし、なるべく載置板22に近い、ワークWの低い位置が好ましい。
【0042】
スタイラス41がワークWの周面に当接した状態で、作業者Pは制御装置50に指示し、テーブル20を回転させる。テーブル20の回転に伴って、スタイラス41がワークWの周面をトレースする。これにより、制御装置50には、接触位置検出部57から現在スタイラス41が接触している周面の変位Tが取得され、スタイラス41が接触している高さ位置(Z軸位置)でのワークWの輪郭形状が測定される。輪郭形状は、角度θ=0〜360度の変位T(θ)の形で記録される。
【0043】
ここで、ワークWの中心軸線Cとテーブル20の回転軸線Lとがずれていると、ワークWの回転に伴って、つまり回転の角度θに応じて、スタイラス41の接触位置のX軸位置(変位T)が増減する(振れる)ことになる。
従って、前述した変位T(θ)のうち、最もX+方向に振れるX軸方向変位の最大値Xtと、最もX−方向に振れるX軸方向変位の最小値Xbとが存在することになる。作業者Pは、これらの最大値Xt及び最小値Xbを記録しておく(処理S52)。
【0044】
次に、作業者Pは、ワークWに接触するスタイラス41の現在のX軸位置(接触位置検出部57から得られる変位T)をディスプレイ52に表示させ、これを見ながら手動操作でテーブル20を回転させ、現在の変位Tが最大値Xt(最大値Xtまたは最小値Xbのいずれか一方)となる角度位置でテーブル20を停止させ、そのまま保持する(処理S53)。
【0045】
図6において、一点鎖線表示のワークWは、テーブル20の載置板22の高さ位置(ワークWの下面)で、中心軸線Cがテーブル20の回転軸線Lと一致した状態を示す。これに対し、実線表示のワークWは、中心軸線Cがテーブル20の回転軸線Lからずれた状態(心ずれした状態)であり、図6の状態では、そのずれ量は最大値Xtであり、ずれ方向はX+方向である。
従って、ワークWをX−方向にずれ量である最大値Xt分だけ移動させれば、図6の一点鎖線に示す心出しされた状態とすることができる。
このために、作業者Pは、ディスプレイ52に表示されるスタイラス41の現在のX軸位置(接触位置検出部57から得られる変位T)を見ながら、ジョイスティック53によりテーブル20の載置板22(ワークW)を僅かな操作量dXずつ移動させてゆく。
【0046】
すなわち、ジョイスティック53を操作すると、スティックの傾きに応じた操作量dXが指定される(処理S54)。指定された操作量dXは心出し制御部58に入力される。
心出し制御部58は、操作量dXを検出すると、その時点でのテーブル20の角度θを角度検出部56から取得し、これらの操作量dX及び角度θからCX軸移動量dCX及びCY軸移動量dCYを算出する(処理S55)。
【0047】
心出し制御部58は、さらに、算出されたCX軸移動量dCXに基づいてCX軸移動機構26を移動させ、CY軸移動量dCYに基づいてCY軸移動機構27を移動させる。これらのCX軸及びCY軸の2軸の同時移動により、載置板22がCX軸及びCY軸方向に移動され、ワークWがテーブル20の回転軸線Lに対してX−方向へ操作量dXだけ移動する(処理S56)。
ワークWの中心軸線Cのずれは、前述のようにX軸方向の変位となっている(図6参照)。従って、この操作量dXの移動により、ワークWの中心軸線Cとテーブル20の回転軸線Lとのずれが操作量dXだけ減少される。
【0048】
このようなジョイスティック53による操作量dXの移動を数回繰り返し、ワークWに接触するスタイラス41のX軸位置(ディスプレイ52に表示される変位T)が、前述した最大値Xtと最小値Xbとの中間値(Xt+Xb)/2(中心軸線の振れ量の中間値)になったら(処理S57)、その位置で心出し操作を完了する。
図6において、心出し操作が完了した状態では、テーブル20の回転軸線Lと、実線表示されたワークWの中心軸線Cとが、テーブル20の載置板22の高さ位置(ワークWの下面)において一致している。
【0049】
〔水平出し操作〕
本実施形態における水平出し操作の具体的な手順は以下の通りである。
本実施形態の水平出し操作は、前述した心出し操作(図5参照)により、テーブル20の回転軸線LとワークWの中心軸線Cとが、テーブル20の載置板22の高さ位置(ワークWの下面)において一致した状態(図6で実線表示された状態)で行われる。
前述した心出し操作の後、作業者Pは、制御装置50に水平出し操作の実行を指示する。制御装置50においては、水平出し制御部59が起動される。この状態で、図7に示す手順を実行する。
【0050】
図7において、作業者Pは、検出器40のスタイラス41をワークWの周面に当接させる(図7の処理S71)。
スタイラス41がワークWの周面に当接する高さ位置(Z軸位置)は、心出し操作と異なる高さ位置であればよいが、載置板22から離れた、ワークWの高い位置が好ましい。
【0051】
スタイラス41がワークWの周面に当接した状態で、作業者Pは制御装置50に指示し、テーブル20を回転させる。テーブル20の回転に伴って、スタイラス41がワークWの周面をトレースする。これにより、制御装置50には、接触位置検出部57から現在スタイラス41が接触している周面の変位Tが取得され、スタイラス41が接触している高さ位置(Z軸位置)でのワークWの輪郭形状が測定される。輪郭形状は、角度θ=0〜360度の変位T(θ)の形で記録される。
【0052】
ここで、テーブル20の回転軸線LとワークWの中心軸線Cとが、テーブル20の載置板22の高さ位置(ワークWの下面)で一致していても、ワークWの中心軸線Cがテーブル20の回転軸線Lに対して傾いていると、ワークWの回転に伴って、つまり回転の角度θに応じて、スタイラス41の接触位置のX軸位置(変位T)が増減する(振れる)ことになる。
従って、前述した変位T(θ)のうち、最もX+方向に振れるX軸方向変位の最大値Xtと、最もX−方向に振れるX軸方向変位の最小値Xbとが存在することになる。作業者Pは、これらの最大値Xt及び最小値Xbを記録しておく(処理S72)。
【0053】
次に、作業者Pは、ワークWに接触するスタイラス41の現在のX軸位置(接触位置検出部57から得られる変位T)をディスプレイ52に表示させ、これを見ながら手動操作でテーブル20を回転させ、現在の変位Tが最大値Xt(最大値Xtまたは最小値Xbのいずれか一方)となる角度位置でテーブル20を停止させ、そのまま保持する(処理S73)。
【0054】
図8において、実線表示のワークWは、中心軸線Cがテーブル20の回転軸線Lに一致した状態である(心出し及び水平出しができている状態)。これに対し、一点鎖線表示のワークWは、テーブル20の載置板22の高さ位置(ワークWの下面)では、中心軸線Cがテーブル20の回転軸線Lと一致しているが、ワークWの中心軸線Cがテーブル20の回転軸線Lに対して傾いているため、ワークWの高い位置では、中心軸線Cがテーブル20の回転軸線LからX+方向に最大値Xtだけずれている。
【0055】
従って、ワークWをX−方向にずれ量である最大値Xt分だけ移動させれば、図6の一点鎖線に示す心出しされた状態とすることができる。
このために、作業者Pは、ディスプレイ52に表示されるスタイラス41の現在のX軸位置(接触位置検出部57から得られる変位T)を見ながら、ジョイスティック53によりテーブル20を僅かな操作量dXずつ移動させてゆく。
【0056】
すなわち、ジョイスティック53を操作すると、スティックの傾きに応じた操作量dXが指定される(処理S74)。指定された操作量dXは水平出し制御部59に入力される。
水平出し制御部59は、操作量dXを検出すると、その時点でのテーブル20の角度θを角度検出部56から取得し、これらの操作量dX及び角度θからLX軸傾斜量φLX及びLY軸傾斜量φLYを算出する(処理S75)。
【0057】
水平出し制御部59は、さらに、算出されたLX軸傾斜量φLXに基づいてLX軸傾斜機構28を作動させ、LY軸傾斜量φLYに基づいてLY軸傾斜機構29を作動させる。これらの2軸の同時動作により、テーブル20の載置板22はLX軸及びLY軸にそれぞれ傾けられる。そして、各々の傾斜が合成されて(図4参照)、スタイラス41が接触しているワークWの高さ位置において、ワークWの中心軸線Cが回転軸線Lに対してX−方向に操作量dXだけ移動するような傾きとされる(処理S76)。
【0058】
このようなジョイスティック53による操作量dXの移動を数回繰り返し、ワークWに接触するスタイラス41のX軸位置(ディスプレイ52に表示される変位T)が、前述した最大値Xtと最小値Xbとの中間値(Xt+Xb)/2(中心軸線の振れ量の中間値)になったら(処理S77)、その位置で水平出し操作を完了する。
図8において、前述した心出し操作に続けて水平出し操作が完了した状態では、テーブル20の回転軸線Lと実線表示されたワークWの中心軸線Cとが一致した状態とされる。
【0059】
〔本実施形態の効果〕
本実施形態では、ワークWにスタイラス41を接触させた状態で、テーブル20を回転させてワークWの中心軸線Cのずれを検出し、スタイラス41で検出されるワークWの現在位置(変位T)を見ながらジョイスティック53(外部操作子)を操作することで、テーブル20の回転軸線Lに対するワークWの中心軸線Cのずれを徐々に減少させ、最終的にずれをなくすことで、心出し操作を行うことができる。
【0060】
従って、本実施形態によれば、CX軸及びCY軸を個別に調整する操作を行う必要がなく、心出し操作を簡略化することができる。
また、本実施形態に基づく心出し操作(外部操作子であるジョイスティック53による操作方向への操作量の入力)は、例えばテーブル20の回転軸線Lに対して中心軸線CがずれているワークWをX軸方向に徐々にずらす操作に類似であり、作業者Pにとって直感的に把握がしやすい。
さらに、CX軸移動機構26及びCY軸移動機構27をモータ駆動式とし、制御装置50に心出し制御部58を組み込むとともに、外部操作子としてジョイスティック53を接続することで容易に実施することができる。
【0061】
本実施形態では、ワークWの異なる高さ位置において、前述した心出し操作と同様な手順を繰り返すことで、水平出し操作を行うことができる。
従って、本実施形態によれば、LX軸及びLY軸を個別に調整する操作を行う必要がなく、水平出し操作を簡略化することができる。
また、本実施形態に基づく水平出し操作(外部操作子であるジョイスティック53による操作方向への操作量の入力)は、例えば中心軸線Cが傾いているワークWをX軸方向に沿って徐々に傾斜を直す操作に類似であり、作業者Pにとって直感的に把握がしやすい。
さらに、LX軸傾斜機構28及びLY軸傾斜機構29をモータ駆動式とし、制御装置50に水平出し制御部59を組み込むとともに、外部操作子としてジョイスティック53を接続することで容易に実施することができる。
【0062】
〔変形例〕
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、外部操作子としてジョイスティック53を用いたが、外部操作子としては、例えばスライドボリューム付き操作装置など、少なくとも一つの変数(操作方向の操作量)を調整できる機器であればよく、装置本体との接続は有線でも無線でもよい。
また、外部操作子は、装置本体の一部に外付けされるものであってもよい。例えば、ベース10の表面に、ジョイスティック53が設置されていてもよい。
前記実施形態では、制御装置50は、ベース10と別体としたが、ベース10に組み込まれたものとしてもよい。この場合、ベース10の表面にキーボード51及びディスプレイ52が設置されていてもよい。
【0063】
前記実施形態では、心出し操作及び水平出し操作において、現在の変位Tが最大値Xtとなる角度位置でテーブル20を停止させ、そのまま保持した(処理S53,処理S73)。しかし、テーブル20を停止させる角度位置は、最大値Xtまたは最小値Xbのいずれであってもよく、最小値Xbを用いる場合には操作量dXの向きが逆となるだけで同様の取り扱いが可能である。
【0064】
前記実施形態において、操作量dX及び角度θからCX軸移動量dCX、CY軸移動量dCY、LX軸傾斜量φLX、LY軸傾斜量φLYを算出する手順は、他の演算手順であってもよく、通常の幾何学的な算術演算に基づき、角度θに応じて操作量dXを成分分配する操作が利用できる。
【0065】
前記実施形態では、第1,第2の移動軸方向をCX軸方向,CY軸方向とし、第1,第2の移動機構としてCX軸移動機構26及びCY軸移動機構27を設けた。また、第1,第2の傾斜軸方向をLX軸方向,LY軸方向とし、第1,第2の傾斜機構としてLX軸傾斜機構28及びLY軸傾斜機構29を設けた。ただし、本発明はこれらの配置に限定されるものではなく、例えば他の実施形態では異なる構成のCX軸移動機構、CY軸移動機構、LX軸傾斜機構及びLY軸傾斜機構を設けてもよく、移動軸方向及び傾斜軸方向については他の軸線方向としてもよい。
さらに、本発明は、第1,第2の移動機構及び第1,第2の傾斜機構の両方を含むものに限らず、第1,第2の移動機構を有し第1,第2の傾斜機構をもたない構成、または、第1,第2の傾斜機構を有し第1,第2の移動機構もたない構成も含む。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、実施が容易で回転軸線の調整操作が簡素な真円度測定機として利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1…真円度測定機、10…ベース、20…テーブル、21…本体、22…載置板、26…第1の移動機構であるCX軸移動機構、27…第2の移動機構であるCY軸移動機構、28…第1の傾斜機構であるLX軸傾斜機構、29…第2の傾斜機構であるLY軸傾斜機構、30…検出器移動機構、40…検出器、41…スタイラス、50…制御装置、51…キーボード、52…ディスプレイ、53…ジョイスティック、54…測定制御部、55…移動制御部、56…角度検出部、57…接触位置検出部、58…心出し制御部、59…水平出し制御部、C…中心軸線、L…回転軸線、P…作業者、T…変位、W…ワーク、Xb…最小値、Xt…最大値、dCX…CX軸移動量、dCY…CY軸移動量、dLX…LX軸移動量、dLY…LY軸移動量、φLX…LX軸傾斜量、φLY…LY軸傾斜量、dX…操作量、θ…回転角度。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8