特許第6784549号(P6784549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6784549ひよこ豆含有レトルト食品およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784549
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ひよこ豆含有レトルト食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20201102BHJP
   A23L 3/00 20060101ALI20201102BHJP
   A23L 11/00 20160101ALI20201102BHJP
【FI】
   A23L23/00
   A23L3/00 101C
   A23L11/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-177732(P2016-177732)
(22)【出願日】2016年9月12日
(65)【公開番号】特開2018-42473(P2018-42473A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】清塚 正弘
(72)【発明者】
【氏名】岩本 隆史
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−300854(JP,A)
【文献】 特開2016−136910(JP,A)
【文献】 特開2003−259845(JP,A)
【文献】 特開2002−262805(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086593(WO,A1)
【文献】 クックパッド[online],2015年11月19日,検索日2020.6.8,URL,https://cookpad.com/recipe/3525839
【文献】 クックパッド[online],2015年9月19日,検索日2020.6.8,URL,https://cookpad.com/recipe/3414569
【文献】 クックパッド[online],2015年12月26日,検索日2020.6.8,URL,https://cookpad.com/recipe/3585482
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填時よりも粘性が増大した、ひよこ豆ペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料を含有するレトルト食品(ただし、ゲル状組成物からなる食品を除く)
【請求項2】
ひよこ豆のペーストが具材を除いたレトルト食品ソース部の5〜40質量%であることを特徴とする請求項1に記載のレトルト食品。
【請求項3】
ひよこ豆のペーストの配合量が、ひよこ豆由来以外の澱粉原料の配合量より多いことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のレトルト食品。
【請求項4】
揮発成分含有原料を含む事を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレトルト食品。
【請求項5】
レトルトソースであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のレトルト食品。
【請求項6】
カレー、シチュー、ハヤシライス、またはパスタソースである請求項5に記載のレトルト食品。
【請求項7】
増粘多糖類を含まないことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のレトルト食品。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のレトルト食品の製造方法であって、以下の1)乃至3)の工程を含むことを特徴とするレトルト食品の製造方法。
1)ひよこ豆のペーストを調整する工程、
2)ひよこ豆のペーストと、要すれば殺菌前ソース用原料とを、前記ひよこ豆のペーストの配合量に相当する以上の水分に、分散させて60℃以上100℃未満にて加熱混合する殺菌前ソースを調整する工程および、
3)前記殺菌前ソースを容器に充填し密封した後レトルト殺菌を行う工程。
【請求項9】
前記1)ひよこ豆のペーストを調整する工程が、乾燥状態のひよこ豆を水に浸漬して水を含ませ、水切りをしたひよこ豆を粉砕して得られたひよこ豆のペーストを用いることを特徴とする請求項に記載のレトルト食品の製造方法。
【請求項10】
前記1)ひよこ豆のペーストを調整する工程が、乾燥状態のひよこ豆を水に浸漬して水を含ませる際に、浸漬する水の温度が80℃以上加温する工程を含むことを特徴とする請求項に記載のレトルト食品の製造方法。
【請求項11】
殺菌前ソース用原料としての揮発成分含有原料を前記2)殺菌前ソース調整工程における加熱混合前または加熱混合中に添加することを特徴とする請求項から請求項10のいずれかに記載のレトルト食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はひよこ豆ペーストを含むカレー、シチュー、ハヤシソース等のレトルト食品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前よりレトルト食品について、喫食時の粘性を向上させるべく様々な提案がなされており、例えばカレー、シチューなどのレトルトでは、小麦粉ルウをレトルトカレーの製造の初期段階で作成し、そのルウの澱粉を糊化させて粘性を付与するレトルトカレーが提案されている(特許文献1)。また、小麦粉以外の澱粉でとして馬鈴薯の粉砕物を用いて風味と粘性を付与させたレトルトカレーも提案されている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、ワイン、洋酒や日本酒の様に、加熱調理することでアルコール成分を逃がし、コクやうまみのみをソースに加えたり、植物性蛋白を用いて具材感をだしつつも特有の臭いを排除したり、卵をまとわせた具材を用いるソース中でレトルト殺菌前に加熱調理したりする場合等のほか、小麦粉や馬鈴薯やコーンスターチ等の澱粉を喫食時に十分な粘性を持たせる量を添加して加熱調理した場合は、粘性が高くなり過ぎて、レトルト容器への充填適正が悪くなるという問題があった。もちろん小麦粉や馬鈴薯やコーンスターチ等の澱粉等では、喫食するためには加熱調理せざるを得ず、生食は難しい。
【0004】
つまり、特にレトルト食品においては、レトルト容器への充填適性の問題があり、レトルト容器への充填が容易になるよう充填時には低粘度であることを要する一方で、喫食時には、むしろ高粘度の食品である方が好まれるという、一見すると相反する要求が存在する。
【0005】
そのため、従来前記するような喫食時に粘性あるレトルト食品は存在するものの、これらの食品は、充填時においても高粘度であるが故に充填時には例えば充填速度を遅くして充填するなどし、その結果として生産速度が低下せざるを得ないなどの不利益を受忍することとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−259845号公報
【特許文献2】特開2001−224346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明により、レトルト殺菌食品のレトルト容器に充填する以前に加熱混合調理を行い、不要な風味や成分を気化させることで容器に充填した後のレトルト殺菌中に、容器内に不要な風味が充填させることなく、容器充填時よりも喫食時に適正な粘性が付与され適度な絡みを有することが出来るソースおよびその製法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、容器に充填密封する以前に、不要な香りや必要な調理を行いつつも、充填するまでは粘性が高くないが、レトルト殺菌後喫食時には十分な粘性が発現するレトルト殺菌食品(以下、単にレトルト食品ともいう)を研究した結果、喫食時に適正の粘性を付与する程度の量を含有するペースト状のひよこ豆を用いて粘性を付与させることでこの課題の解決を行えることを見出し、本発明をなすに至ったのである。つまり、本発明によれば、ひよこ豆を喫食時の粘性付与となる程度の量を食品に含有させても、それを含む食品は粘度が低くレトルト容器の充填には支障なく、適正に充填が可能である一方で、レトルト殺菌(以下、単にレトルトともいう)後に開封して喫食するに際しては、粘性が充填前に比較して増大し、その結果適正な粘性が付与されたこととなるのである。
【0009】
すなわち、本発明の第1は、充填時よりも粘性が向上した、ひよこ豆ペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料を含有するレトルト食品(ただし、ゲル状組成物からなる食品を除く)に関する。また、本発明は、レトルトソースであることが好ましく、更に、カレー、シチュー、ハヤシライス、またはパスタソースであることが好ましい。また、本発明は、増粘多糖類を含まないことが好ましい。
【0010】
本発明の第2は、本発明の第1において、ひよこ豆のペーストが具材を除いたレトルト食品のソース部の5〜40重量%であることを特徴とするレトルト食品に関する。
【0011】
本発明の第3は、本発明の第1または第2において、ひよこ豆のペーストの配合量が、ひよこ豆由来以外の澱粉原料の配合量より多いことを特徴とするレトルト食品に関する。
【0012】
本発明の第4は、本発明の第1から第3のいずれかにおいて、揮発成分含有原料を含む事を特徴とするレトルト食品に関する。
【0013】
本発明の第5は、前記レトルト食品の製造方法であって、以下の1)乃至3)の工程を含むことを特徴とするレトルト食品の製造方法に関する。
1)ひよこ豆のペーストを調整する工程、
2)ひよこ豆のペーストと、要すれば殺菌前ソース用原料を、前記ひよこ豆のペーストの配合量に相当する以上の水分に、分散させて60℃以上100℃未満にて加熱混合する殺菌前ソースを調整する工程および、
3)少なくとも前記殺菌前ソースを容器に充填し密封した後レトルト殺菌を行う工程。
【0014】
本発明の第6は、本発明の第5において、乾燥状態のひよこ豆を水に浸漬して水を含ませ、水切りをしたひよこ豆を粉砕して得られたひよこ豆のペーストを用いたことを特徴とするレトルト食品の製造方法に関する。
【0015】
本発明の第7は、本発明第6において、乾燥状態のひよこ豆を水に浸漬して水を含ませる際に、浸漬する水の温度が80℃以上加温する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のレトルト食品の製造方法に関する。
【0016】
本発明の第8は、本発明の第5から第7のいずれかにおいて、揮発成分含有原料を殺菌前ソース調整工程の加熱混合前または加熱混合中に添加することを特徴とするレトルト食品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
ひよこ豆のペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料を含むソースは、これを所定の温度で加熱混合調整することで本発明では、ひよこ豆その自体の豆からなる食品や、ひよこ豆粉砕物ピューレを含めた、公知のレトルト食品に比べて、レトルト殺菌後の喫食時にご飯などの他の具材に適度に絡むことができるような粘性を付与できるにもかかわらず、レトルト殺菌前の容器(パウチ等)への充填に際しては、低粘度であるので充填適正が優れるという効果が得られる。
ソース部において油脂をソース部の25質量%以下にすることで、喫食事のソース部温度により物性の影響が大きい油脂原料の影響が、ひよこ豆ペーストによる粘性付与に影響が出にくくなるという効果が得られる。
【0018】
さらに、本発明では配合したスパイスにおける香り、辛味、清涼感などの喫食時に感じるスパイス感は、小麦粉、コーンスターチ、馬鈴薯、キャッサバ等を主とした澱粉原料として使用するレトルト食品に比べ、喫食時にスパイス感を早く強く感じることができるという特性を得られる。
また、ひよこ豆のペーストをレトルト食品のソース部の5〜40質量%にすることで、適度な粘性と、ひよこ豆の風味を感じない程度にすることができるという効果も得られる。
【0019】
ひよこ豆ペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料含有レトルト食品は、殺菌前のソースを容器に密封される前に加熱混合調整することで、ソース用原料との混合原料の分散性が向上し、そしてその後密封することで実際に加熱混合した過程の調理と同様の風味をそのままの状態で容器詰め出来るという効果が得られる。
【0020】
さらに、ひよこ豆ペーストの調整において、乾燥したひよこ豆を浸漬し水を含ませることによりペースト製造を短時間にすることができることからペースト状に調整しやすくなるほか、さらに、浸漬する水温を80℃以上に加温することで、殺菌前のソース用原料にひよこ豆ペーストを添加した場合に、ひよこ豆ペースト以外の他の具材などの原料の物性や風味を損なわせる雑菌などを制御でき、さらにひよこ豆ペーストに調整する際の粉砕がより良くなり、ペーストの粒度調整が容易にできる効果が得られる。
また、殺菌前ソースの調理において揮発成分含有原料を添加することで、喫食時に求めていない風味を容器に含めないで密封することが出来る効果が得られる。
以下に本発明を更に説明する。
【0021】
(ひよこ豆の説明)
本発明における、ひよこ豆(英語名 Chickpea)とは別名ガルバンゾーともいわれる豆であり、カーブリー種でも、デーシー種であっても良く、生の豆であることもできるが乾燥させたひよこ豆であると好ましく、さらに薄膜を残したままの状態で乾燥されたひよこ豆であることが好ましい。乾燥豆の水分は、通常10重量%以下である。
また、乾燥されたひよこ豆の形状は、収穫後の鞘から取り出された豆の形状でも良く、粉砕後の粉砕物や粉体状の物であっても良いが、生の豆でない限り、以下に説明するように水に浸漬させる必要がある。
【0022】
(ひよこ豆のペースト)
本発明においては、ひよこ豆からそのペーストを製造する。このひよこ豆ペーストは、生のひよこ豆をすり潰したり、粉砕したり、あるいは乾燥状態のひよこ豆を水分に浸漬させた後すり潰したり、粉砕したりして柔らかでなめらかな状態としたものである。
【0023】
柔らかでなめらかな状態とは、目開き5mmの篩を通過、好ましくは3mmを通過する状態まで細かになっていて水分を含む、ヘラ等で容易に押し広げることができる状態をいう。そして、薄皮が除かれて、薄皮もすり潰されるか、粉砕されていると更に好ましい。
【0024】
(ひよこ豆のペーストの物性)
「ひよこ豆ペースト」の粘度は、スプーンですくい上げた時に、凸状の状態が5秒以上確認でき、ピューレの様に瞬時にスプーンの側面高さの表面で平面にはならない程度の粘度であればよい。
上記粘度を達成するには、例えば水分10%以下まで乾燥したひよこ豆の重量を「1」に対して、粉砕した後の状態が、乾燥したひよこ豆と浸漬等でひよこ豆に給水された水と粉砕時前にひよこ豆に給水されていない水の合計量(全重量)が「1.5〜2.5」の状態で、粉砕物又は粉砕物を含んだ「とろみを持った状態」になっている物が「ひよこ豆のペースト」の一例としてあげられる。
【0025】
そして、粉砕時の滑らかさやひよこ豆の粉砕物が均一に保たせるためには、粉砕前にひよこ豆に給水される水分量を、乾燥したひよこ豆に元々含まれている水分を除いて、7割以上にすることが好ましく、8割以上がより好ましい。
またひよこ豆と水との合計量(水分10%以下まで乾燥したひよこ豆の重量を「1」とした全重量)は、1.5〜3.0であれば良いが、粉砕適正から、1.8〜2.3であることがさらに好ましい。
【0026】
(ひよこ豆のペーストの製法)
ひよこ豆のペーストは、ひよこ豆のペーストがつくられればどの様な製法を利用することができる。一例として、次に説明するように、乾燥状態のひよこ豆を水に完全に浸る状態で、例えば8時間浸漬させた後、水を吸収したひよこ豆を取り出し水切りを行った後、粉砕機(例えば微粉砕機)で3mm以下まで粉砕させ、粉砕後のひよこ豆を集めてこれからひよこ豆のペーストを得ることができる。粉砕とともに、またはこれに代えて、すり潰し操作、機能を行うこともできる。
【0027】
また、乾燥したひよこ豆を浸漬させた後、ひよこ豆を水切りした後、すり潰しを行う際に、乾燥したひよこ豆の重量を「1」に対してひよこ豆ペーストの重量が1.5〜2.5になる範囲にて水を添加しながらすり潰しながら、ペースト化したひよこ豆と添加した水を回収し混合撹拌することでひよこ豆ペーストを得ることができる。
【0028】
(ひよこ豆の浸漬)
上記でひよこ豆を水に浸漬するには、6〜48時間浸漬させることで、ひよこ豆の表面だけでなく中心部に向かって適度に水分が含まれ、かくすることで熱伝導が良くなり容器充填前の調理工程での加熱混合調理での加熱混合が容易になる効果がある。
乾燥されたひよこ豆を水に浸漬させる場合は、乾燥されたひよこ豆表面を中心に水分が低いことで増殖が制御されていた雑菌などが、浸漬中に増加されることがあることから、浸漬の水温が0〜40℃で浸漬することが望ましく。0〜15℃で浸漬することで、6時間以上の浸漬であっても雑菌の菌数増加を防ぐためさらに望ましい。
さらに乾燥されたひよこ豆の浸漬中の水を80℃以上に加温することで、浸漬中に増加した雑菌などを殺菌し制御でき、さらにひよこ豆ペーストに調整する際の粉砕がより良くなり、粒度調整が容易にできる効果が得られる。
【0029】
なお、乾燥されたひよこ豆の浸漬は、連続的に1回で行ってもよく、1度浸漬を中断し水切りを行い、新たな水にて浸漬を行ってもよく、さらに、水切りを行った後の浸漬は繰り返し行ってもよい。浸漬を繰り返し行う場合に、浸漬する容器や1度浸漬するひよこ豆の量は、必要に応じて変更することができる。そして、浸漬時間は水切りを行っている時間は含まず、実際に浸漬された時間の合計をいう。
また、浸漬時の水温は、連続して浸漬している水を温度変化させることもできるが、水切りしたあと新たな浸漬水にて加温してもよい。ひよこ豆の雑菌の制御をしやすくすることから、浸漬水の加温は、実質的な浸漬時間の後半の方が好ましく、さらに80℃以上での加温時間は1時間以内が好ましい。
【0030】
(浸漬後の水切り)
水切りとは、乾燥されたひよこ豆を浸漬後、浸漬に用いた水から取り出すか、または浸漬に用いた水を排出することで、ひよこ豆の表面に積極的に水を接触させない状況することができればよく、例えば、乾燥されたひよこ豆を水に浸漬終了後、容器から取り出した後かご等に取り出して放置し水分をひよこ豆の表面から除去した状態でもよく、容器から浸漬した水を抜くだけでもよく、積極的に遠心分離による脱水や、給水布等で拭き取りなどを行ってもよい。
【0031】
(粉砕機)
生のまたは水に浸漬したひよこ豆の粉砕に使用される粉砕機は生のあるいは浸漬したひよこ豆を粉砕出来ればどの様な装置でも良い。少量を加工する場合は、コーヒー豆用のミルなどでもよく、工業用であれば、石臼の様に粉砕するマイコロイダー(特殊機化工業)マスコロイダー(増幸産業)や、粉砕物がカッター刃にあたり粉砕されるカッターミルがミルハイパワー剪断粉砕機(三庄インダストリー)、ロータリーカッターミル(奈良機械)等使用することができる。
【0032】
水に浸漬させ、これを粉砕することにより得られるひよこ豆ペーストは、豆成分等が水に流出あるいは溶解し、ペースト自身で前記した一定の粘性を示す。
このようにして粉砕して得られるひよこ豆ペーストは、適宜に濾布等で夾雑物を除去し、使用に供される。
(レトルト食品)
【0033】
レトルト食品とは、レトルト殺菌を行った食品であり、密封された容器内部の食品中央部または内容物の全てにおいて120℃で4分間以上、例えば120℃で10分間、または120℃で4分間と同等の熱以上がかかる状態に加圧加熱して殺菌された密封容器入りの食品である。
レトルト殺菌をする方法はどの様な方法であっても良い。例えば過熱水蒸気や熱水などを利用することができる。
【0034】
(ひよこ豆ペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料を含有するレトルト食品)
ひよこ豆のペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料を含んだソースと必要に応じて配合される具材等がレトルト殺菌されている食品であって、レトルト殺菌された食品はレトルト容器から直接あるいは必要に応じてこれを加熱した後容器から取り出し、そのまま食したり、ご飯等にかけたり、他の具材と一緒に調理したりする食品である。具体的な調理品には、カレー、シチュー、ハヤシライス、パスタソース等が挙げられる。
【0035】
(レトルト食品ソース部)
レトルト食品ソース部とは、少なくとも、ひよこ豆ペースト、レトルト食品ソース部として25質量%以下の油脂、および殺菌前ソース用原料を配合しレトルト殺菌されたソースであって、レトルト食品における具材を除いた部分をいう。
さらに、ひよこ豆ペーストがレトルト食品ソース部の5〜40質量%であることで、適度な粘性と、ひよこ豆の風味を感じない程度にすることができ好ましく、10〜35質量%であることで、充填前に具材の沈殿抑制が図られ、ひよこ豆の風味が気にならないようになることからさらに好ましい。
【0036】
レトルト食品のソース部には、油脂を25質量%以下で含有する。使用する油脂の融点により、測定時の油脂以外のソース部の粘性に影響しやすいが、25質量%であれば、ひよこ豆ペーストによる粘性付与効果を影響しにくくなり、15質量%以下であれば、常温において固形の油脂であっても粘性への影響は少ないためさらに好ましい。このソース部に含有する油脂は、油脂原料として配合することが好ましいが、ソース内に配合することで油脂分が溶出される高油脂食材などの具材から得られる油脂であってもよい。油脂分の多くソース部に溶出される高油脂食材としては、牛や豚のバラ肉、挽肉で作られた肉団子、マグロのトロ部、マカデミアンナッツ、くるみ、油揚げ等が例示できる。
ソース部の油脂合量割合は、常法で測定することができる。
【0037】
(殺菌前ソース用原料)
レトルト食品として、レトルト容器に充填するに際しては、前記のひよこ豆ペーストを含む原料を、殺菌前ソース原料として調整する。
これには殺菌前ソース調整工程で使用する原料であって、ひよこ豆ペースト以外に、ひよこ豆由来以外の水分や、その他事前に加熱混合調理可能な原料やひよこ豆以外の澱粉原料や具材などがある。例えば、その他原料は、粉体や液体の原料であっても良い。これらには、醤油・果汁・エキス・液体油脂等の液体原料、砂糖・塩・カレー等の香辛料・色素等の粉末原料等があげられる。
【0038】
(レトルト食品の具材)
具材の量はレトルト食品として喫食可能であれば量は制限されるものではないが、ひよこ豆ペーストによるソースの粘性の効果を得られる食品であることから、実質的な、具材の量はレトルト食品ソース部に対して、質量比で3以下が好ましく、1以下であることがより好ましい。
【0039】
また、具材としては、肉、魚介類、野菜、果実等があげられ、具材は、生のものでも、加熱等の加工がなされているものであってもよく、冷凍状態のものでも良い。
また、殺菌前ソースに使用する水分は、具材等を前処理した煮汁等を使用することも出来る。
【0040】
(澱粉原料)
本発明において配合できる澱粉原料は、ひよこ豆を除く小麦粉や米粉等の澱粉を多く含む穀類の粉砕物、コーン、馬鈴薯やタピオカ等から作られた澱粉や、それらに架橋等を行い得られる加工澱粉等が挙げられる。
これら澱粉原料(ひよこ豆由来を除く)を、殺菌前ソースに対して配合する量は、ひよこ豆ペーストによる粘性向上の効果が認められる限度である。通常は、ひよこ豆ペーストの配合量に対して、それよりも少ない量とする。
【0041】
(具材の説明)
ソースに加える具材は、目開き5mmの篩を通過しない固形物であって、ニンジン、ジャガイモ、ごぼう、小豆、大豆、キャベツ、オニオン、ネギ等の野菜、牛肉、豚肉、鶏肉等のカット肉や挽肉の畜肉および畜肉の肉団子等の加工品、イカ、アサリ、サケ、たら、カニ等の魚介および魚介の蒲鉾等の加工品、等のことであり、さらにペースト状にしていなければ、レトルト食品のソース部の粘度に影響がでないことから、ひよこ豆であっても具材に使用することもできる。
【0042】
(レトルト食品ソース部の具材)
レトルト食品における具材は、殺菌前ソース用原料に含まれているものであっても、殺菌前ソースとは別に調整され、レトルト容器に殺菌前ソースとは別に充填される具材であってもよい。
【0043】
(揮発成分含有原料)
揮発成分含有原料は、80℃以上で特定の成分が気化したり分解されたり、または80℃以上に加熱混合調理を行うことで変性を生じさせて具材等を調整することを行う原料である。具体的には、元の原料のまま加熱混合を行わず混合密封したままレトルト殺菌した場合と、一度加熱混合調理した後密封しレトルト殺菌した場合で風味が変わる原料をいう。具体的には、事前に加熱混合調理を行うことで風味が変わる原料は、エチルアルコールを気化させて旨味やコクのみを残すことができる、ワイン、ウイスキー、日本酒等の各種お酒や、独特の香り風味を加熱することで低減できる植物性蛋白等の原料があげられ、具材を確認することが好ましい原料は、卵白を他の素材にまとわせて固化させて具材とする原料の卵白等があげられる。
【0044】
したがって、この揮発成分含有原料は、次に述べる撹拌しながら60℃以上100℃未満で加熱混合しひよこ豆含有ソースの殺菌前ソースを調整する工程の前または途中で加え80℃以上で揮発成分を揮発させるか、殺菌前ソースとは別に80℃以上で加熱調理し、揮発成分を揮発させて密封容器内に揮発成分を残さないようにすることが好ましい。
【0045】
(容器)
レトルト食品を充填する容器は、レトルト殺菌に用いることができる容器であればよく、具体的にレトルト殺菌時の加熱温度において容器のバリア性が保たれるものであればよい。例えば、金属缶、アルミ箔を含んだ袋、バリアフィルムを含んだ袋、樹脂製の容器とフィルムの組み合わせ等があげられる。
【0046】
(ひよこ豆含有レトルト食品の製法)
ひよこ豆含有レトルト食品は以下の工程を含んでなる方法により製造することができる。
(1) ひよこ豆ペーストを調整する。 ひよこ豆ペーストの製造は先に説明したひよこ豆ペーストの製造法により製造することができる。
【0047】
(2) 上で得られたひよこ豆ペーストおよびソース部に対して25質量%以下の油脂原料、その他の原料、例えば澱粉原料および具材の全てまたは一部と水(湯)を混合、分散し、撹拌しながら60℃以上100℃未満で加熱混合しひよこ豆およびソース部に対して25質量%以下の油脂原料含有ソースを調整する。
【0048】
さらに、混合しながら、ひよこ豆以外の小麦粉や加工でんぷんなどを用いて充填に適した粘性を付与するために、60℃以上が好ましく、65℃以上の加熱により大腸菌群の多くが減少し、75℃以上で病理性大腸菌の多くも死滅することからさらに好ましい。そして、容器に充填密封後レトルト殺菌することから、さらなる過加熱による原料の風味を壊さないために、100℃未満での加熱混合をすることが好ましく、装置も簡易で作業性もよい。
【0049】
(ひよこ豆ペースト)
加える水の量は、配合するひよこ豆ペーストの配合量以上である。なお、ペーストの10倍量、好ましくは6倍量を超える量の水分を配合すると、得られたソース中にひよこ豆自体の含有量が少なくなり過ぎて、たとえ粘性が増大するもその効果が低下するので好ましくない。
さらに、ひよこ豆ペーストの殺菌前のソースへの配合量は、具材を除いたひよこ豆含有ソース部の、5〜40質量%であることが好ましい。
【0050】
この加熱混合はソース原料用の調理のための加熱であって、具体的には殺菌と、レトルト殺菌前の容器への充填に適した、とろみ付のためにも行われるので、加熱混合の時間はこの目的のために適宜に調整される。例えば、室温から90℃になるまで加熱混合し、5分間90℃で保温したあと加熱停止し、適宜に自然冷却を行うことができる。
さらに、既に説明したように、次に説明するレトルト殺菌工程の加圧加熱とあいまって、レトルト包装を開封して喫食時の粘性向上に寄与するのでこの加熱混合工程は必須である。
【0051】
(3) 上記の加熱混合後、容器への充填に適した温度で適宜にひよこ豆およびソース部において25質量%以下の油脂原料を含有するソースを容器に充填し、必要に応じてその他の具材やソースを別に充填し密封し、レトルト殺菌(120℃4分以上のレトルト殺菌)を行う。
例えば、レトルト釜内で120℃の過熱蒸気により10分間加圧加熱するなどにより殺菌をすることができる。
なお、充填前の一時保管においては、充填可能であれば一定の温度状態になるように加熱・冷却・保温してもよい。また充填時は加熱・保温・冷却も適宜に行える。
【0052】
充填前の一時保管からレトルト殺菌前においては、ソース内の具材などの物性を微生物の影響で損なわないようにするためには、60℃以上で充填することが好ましく、さらに充填後もレトルト殺菌開始までの一定時間仮置きした場合でも60℃以上を維持してレトルト殺菌を開始するためには、70℃以上で充填することが、さらに好ましい。
また、60℃以下の温度であっても充填しレトルト殺菌することは可能だが、例えば40℃未満の室温程度にまで冷却した後に充填すればレトルト殺菌後の喫食の時期までには粘性がさらに増粘するという効果が得られるので好ましい。
【0053】
(殺菌前ソースの加熱混合調理)
ひよこ豆のペーストを含む殺菌前のソースの加熱混合は、容器に充填することができる物性にすること、レトルト殺菌を行うまでに、容器内に充填されたソースや具材の物性変化を行わせないことを目的に行うことができるが、殺菌前の粘性は、容器の密封不良を防ぎやすく、充填量を一定にしやすいことから低い方が好ましく、レトルト殺菌後のソース部の粘性は喫食時に求められる粘性であり、均一にごはんに絡む等強いほうが好ましい。ひよこ豆ペーストとソース部に対して25質量%以下の油脂原料を含むソース部においては、殺菌前のソースを60〜100℃以上に加熱混合調理することで、充填前と比較して大きく粘性を増大させるとう効果がある。その結果、レトルト充填時には低粘度であるが故に充填が適正であるが、つまり、低粘度であるが、レトルト殺菌後における喫食時にはその粘性が増大し、結果として適切な粘性が付与されたレトルト食品を得ることができるのである。
【0054】
(流動性の説明)
上記(2)の工程で得られる60℃以上100℃未満で加熱混合してなる、ひよこ豆含有ソースは、一定の流動性を示す。当該流動性とは、レトルト食品の具材を除いた殺菌前のソース100g中に、300m2の板を30mm/minで30sec引いた時に得られる最大負荷値で得られる。この場合、負荷値が大きいと流動性が悪いということであり、とろみが強く他の食品とよく絡んだり、容器への充填時に詰まりやすくなったりする。負荷値が小さいと流動性が良いということで、とろみが弱いので他の食品に絡まないが、容器は閉塞することなく充填できるものである。
【0055】
なお、上記(2)の工程で得られる60℃以上100℃未満で加熱混合してなる、ひよこ豆含有ソースは、(2)の加熱混合前後で、ある程度の粘性増大を示すものの、その幅は小さく、実際上、レトルト容器への充填に影響を及ぼすほどではない。
しかるに、ひよこ豆に代えて小麦粉や加工デンプン等を配合してなるソースは、上記(2)の加熱混合工程後に明瞭な粘性向上が見られ、レトルト容器への充填適性が劣る。
【0056】
(ひよこ豆含有レトルト食品の製法の特徴)
通常、レトルト殺菌を行うソース製造の場合、容器充填時は容器に充填に必要な流動性を得られれば良いので、ペーストやその他の原料が混合出来れば良く、加熱混合の必要性はない。小麦粉などは調理のために60℃以上で加熱混合することにすると粘性が出てくるので充填適性を喪失するのでレトルト食品には充填性の点からは使いづらい。
【0057】
本発明のひよこ豆のペーストを含むソースは、60℃以上に加熱混合を行わないでレトルト殺菌を行った場合は、レトルト殺菌前の流動性がよく、容器への充填適正は良いが、レトルト殺菌を施しても、粘性増大の効果は少ないうえ、さらに、同量のひよこ豆ペーストを添加していても、レトルト殺菌後の粘性増大のバラツキが多く、所定の喫食時の粘性を付与することが困難である。しかるに、その理由の詳細は不明であるが、本発明のごとく60℃以上100℃未満で加熱混合調理した後レトルト殺菌した場合は、レトルト前においては流動性がよくてそれ故充填適正が良好で容易に充填が可能であるが、それにもかかわらず、レトルト殺菌を行った後のソースは、小麦粉同等以上に粘性が増大し、非常に他の食材に絡む物性を奏するという特徴を持ち合わせる。
したがって、レトルト包装を開封した喫食時には、適正な粘性の付与された食品が喫食される。これは粘性付与のほかにも、例えば食品のスパイス感の向上につながる重要な性状である。
【0058】
(容器)
ソースを充填するレトルト用の容器は、レトルト殺菌出来る容器であればどの様なものでも良い。例えば、金属缶であっても、バリア性のフィルム包材であっても良い。
【0059】
(喫食)
製造されたひよこ豆ペーストを含むレトルト食品は、レトルト殺菌後に通常の販路で所定期間保存されたのち、消費者の手元に届き、各消費者は、購入したレトルト食品を常法により、適宜に電子レンジまたは湯煎等により加熱し、喫食に供される。通常、レトルト殺菌後、48時間程度、またはそれ以上の時間を経過後に喫食されることが多い。
【実施例】
【0060】
次に実施例により本発明を詳述する。初めに用いるひよこ豆ペーストの製造を説明する。
(ひよこ豆ペースト)
ひよこ豆(水分10%以下の薄皮付き乾燥品)500gを5℃の水ひよこ豆すべて水面下になるようにして16時間浸漬した、水切りし、その後、ひよこ豆全量を、15℃の新たな水で水面下になるように水を加えて85℃15分間加温し消火後55℃になった時点で浸漬を終了させて水切りを行い、浸漬工程を終了した。浸漬工程を終了し水切りされたひよこ豆の重量は970gであった。
その浸漬されたひよこ豆を市販の粉砕機により粉砕し、950gのひよこ豆ペーストを得た。
【0061】
(殺菌前ソース製造)
その後、得られたひよこ豆ペーストの所定割合を、塩10g、カレー粉10gおよび残余水を加えて、全体を1000gとした。
比較のために、ひよこ豆ペーストの代わりに、小麦粉や加工デンプン等を配合したソースも製造した。
配合の詳細は、下記表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
(レトルト殺菌前の加熱混合)
上記配合のソースを鍋に入れて、25℃から90℃になるまで加熱混合し、5分間90℃で保温したあと消火し、60℃まで自然冷却を行った。
60℃に冷却したソースを200g、お皿にとり粘性を確認した(この粘性を「60℃レトルト殺菌前粘性」とする)。
そして、そのサンプルを実際に食して味を確認した(この味を「レトルト殺菌前スパイス感」とする)。
【0064】
(レトルト殺菌)
冷却したソースを、市販のアルミ箔パウチに200g充填し、加圧釜内で120℃10分レトルト殺菌を行った。
レトルト殺菌したソースを48時間室内にて保管し、その後得られたサンプルを、湯せんで5分間加熱したあと、お皿に取り出して、60℃の粘性を確認した(この粘性を「レトルト殺菌後60℃粘性」とする)。
【0065】
そして、また別に20℃の水にて5分間保温したサンプルをお皿に取り出したあと、20℃の粘性を確認した(この粘性を「レトルト殺菌後20℃粘性」とする)。
また、味の確認のために、上記のレトルト殺菌後60℃粘性を確認した条件と同じ条件で、別途にお皿にとりだして、実際に食して味を確認した(この味を「レトルト殺菌後スパイス感」とする)。
【0066】
レトルト前後の、20℃および60℃における粘性の評価方法:
以下の基準で評価した。
官能評価基準
1:粘性が低い ご飯にかけても絡まない(充填適正非常に良い)
2:粘性がやや低い ご飯にかけたら若干絡む (充填適正良い)
3:粘性が適度にある ご飯にかけたら適度に絡む (充填は概ね可能)
4:粘性が高い ご飯にかけると多くがのこる (充填適正悪い)
5:粘性が非常高い ご飯にかけてもほぼ流れない (充填適正非常に悪い)
【0067】
レトルト前後のスパイス感の評価方法
水980gに対してカレー粉10g、塩10gを加えて撹拌して60℃の状態で官能した時の辛味の感じるまでの速さを「4」として、それより早く感じる場合は「5」として、徐々に遅くなるにつれ、「3」「2」「1」としてスパイス感を確認して、以下の基準で評価した。
官能評価基準
1:なかなか感じない スパイス感の抜けが強い
2:やや遅く感じる スパイス感が抜けている
3:4より若干遅く感じる スパイス感はほぼ残っている
4:スパイス感の基準
5:早く感じる スパイス感が増強されている
*官能評価のパネラー:8人で実施した結果の平均値で示す(表2)
【0068】
【表2】
【0069】
充填を考えた場合、粘性は2以下が好ましい。
一方で、喫食事の粘性は、3が最も良く、1および5は好ましくない。
【0070】
[結果]
本発明のソースは、レトルト殺菌前60℃での粘性は、2以下であるので、レトルト容器への充填適性があるといえる。
その一方で、レトルト殺菌後60℃粘性は増大していることが認めら、それ故レトルト殺菌後スパイス感が発現していることが認められる。
ひよこ豆を含まない代りに小麦粉や加工デンプンを含むソースの場合は、レトルト殺菌前の加熱混合の段階で既に粘性が増大しており、充填適性を満たさない。そして、これらを敢えて容器に充填・殺菌した場合、開封したソースからは、粘性がありすぎることもあり、スパイス感を感じない。
【0071】
従って、本発明のレトルト食品は、カレー粉、ひよこ豆ペーストを用い、さらに要すれば小麦粉、赤ワイン、なたね油脂その他原料を用いて殺菌前のソースを容器に容易に充填できるレトルトカレーを製造すれば、これを喫食するために加熱し容器から取り出した際には、赤ワインのアルコールは揮発してなくなっているにも関わらず、ひよこ豆特有の香りは抑えられ、カレー粉や赤ワイン特優の香りが感じられ、さらには喫食時にはごはんに絡まる適正な粘度を維持しつつ、ひよこ豆の特有の風味は抑えられつつ赤ワイン特有のコクが感じられ、スパイス感は早く大きく、すなわち強くでてくるという素晴らしい出来となる。