【発明の効果】
【0017】
ひよこ豆のペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料を含むソースは、これを所定の温度で加熱混合調整することで本発明では、ひよこ豆その自体の豆からなる食品や、ひよこ豆粉砕物ピューレを含めた、公知のレトルト食品に比べて、レトルト殺菌後の喫食時にご飯などの他の具材に適度に絡むことができるような粘性を付与できるにもかかわらず、レトルト殺菌前の容器(パウチ等)への充填に際しては、低粘度であるので充填適正が優れるという効果が得られる。
ソース部において油脂をソース部の25質量%以下にすることで、喫食事のソース部温度により物性の影響が大きい油脂原料の影響が、ひよこ豆ペーストによる粘性付与に影響が出にくくなるという効果が得られる。
【0018】
さらに、本発明では配合したスパイスにおける香り、辛味、清涼感などの喫食時に感じるスパイス感は、小麦粉、コーンスターチ、馬鈴薯、キャッサバ等を主とした澱粉原料として使用するレトルト食品に比べ、喫食時にスパイス感を早く強く感じることができるという特性を得られる。
また、ひよこ豆のペーストをレトルト食品のソース部の5〜40質量%にすることで、適度な粘性と、ひよこ豆の風味を感じない程度にすることができるという効果も得られる。
【0019】
ひよこ豆ペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料含有レトルト食品は、殺菌前のソースを容器に密封される前に加熱混合調整することで、ソース用原料との混合原料の分散性が向上し、そしてその後密封することで実際に加熱混合した過程の調理と同様の風味をそのままの状態で容器詰め出来るという効果が得られる。
【0020】
さらに、ひよこ豆ペーストの調整において、乾燥したひよこ豆を浸漬し水を含ませることによりペースト製造を短時間にすることができることからペースト状に調整しやすくなるほか、さらに、浸漬する水温を80℃以上に加温することで、殺菌前のソース用原料にひよこ豆ペーストを添加した場合に、ひよこ豆ペースト以外の他の具材などの原料の物性や風味を損なわせる雑菌などを制御でき、さらにひよこ豆ペーストに調整する際の粉砕がより良くなり、ペーストの粒度調整が容易にできる効果が得られる。
また、殺菌前ソースの調理において揮発成分含有原料を添加することで、喫食時に求めていない風味を容器に含めないで密封することが出来る効果が得られる。
以下に本発明を更に説明する。
【0021】
(ひよこ豆の説明)
本発明における、ひよこ豆(英語名 Chickpea)とは別名ガルバンゾーともいわれる豆であり、カーブリー種でも、デーシー種であっても良く、生の豆であることもできるが乾燥させたひよこ豆であると好ましく、さらに薄膜を残したままの状態で乾燥されたひよこ豆であることが好ましい。乾燥豆の水分は、通常10重量%以下である。
また、乾燥されたひよこ豆の形状は、収穫後の鞘から取り出された豆の形状でも良く、粉砕後の粉砕物や粉体状の物であっても良いが、生の豆でない限り、以下に説明するように水に浸漬させる必要がある。
【0022】
(ひよこ豆のペースト)
本発明においては、ひよこ豆からそのペーストを製造する。このひよこ豆ペーストは、生のひよこ豆をすり潰したり、粉砕したり、あるいは乾燥状態のひよこ豆を水分に浸漬させた後すり潰したり、粉砕したりして柔らかでなめらかな状態としたものである。
【0023】
柔らかでなめらかな状態とは、目開き5mmの篩を通過、好ましくは3mmを通過する状態まで細かになっていて水分を含む、ヘラ等で容易に押し広げることができる状態をいう。そして、薄皮が除かれて、薄皮もすり潰されるか、粉砕されていると更に好ましい。
【0024】
(ひよこ豆のペーストの物性)
「ひよこ豆ペースト」の粘度は、スプーンですくい上げた時に、凸状の状態が5秒以上確認でき、ピューレの様に瞬時にスプーンの側面高さの表面で平面にはならない程度の粘度であればよい。
上記粘度を達成するには、例えば水分10%以下まで乾燥したひよこ豆の重量を「1」に対して、粉砕した後の状態が、乾燥したひよこ豆と浸漬等でひよこ豆に給水された水と粉砕時前にひよこ豆に給水されていない水の合計量(全重量)が「1.5〜2.5」の状態で、粉砕物又は粉砕物を含んだ「とろみを持った状態」になっている物が「ひよこ豆のペースト」の一例としてあげられる。
【0025】
そして、粉砕時の滑らかさやひよこ豆の粉砕物が均一に保たせるためには、粉砕前にひよこ豆に給水される水分量を、乾燥したひよこ豆に元々含まれている水分を除いて、7割以上にすることが好ましく、8割以上がより好ましい。
またひよこ豆と水との合計量(水分10%以下まで乾燥したひよこ豆の重量を「1」とした全重量)は、1.5〜3.0であれば良いが、粉砕適正から、1.8〜2.3であることがさらに好ましい。
【0026】
(ひよこ豆のペーストの製法)
ひよこ豆のペーストは、ひよこ豆のペーストがつくられればどの様な製法を利用することができる。一例として、次に説明するように、乾燥状態のひよこ豆を水に完全に浸る状態で、例えば8時間浸漬させた後、水を吸収したひよこ豆を取り出し水切りを行った後、粉砕機(例えば微粉砕機)で3mm以下まで粉砕させ、粉砕後のひよこ豆を集めてこれからひよこ豆のペーストを得ることができる。粉砕とともに、またはこれに代えて、すり潰し操作、機能を行うこともできる。
【0027】
また、乾燥したひよこ豆を浸漬させた後、ひよこ豆を水切りした後、すり潰しを行う際に、乾燥したひよこ豆の重量を「1」に対してひよこ豆ペーストの重量が1.5〜2.5になる範囲にて水を添加しながらすり潰しながら、ペースト化したひよこ豆と添加した水を回収し混合撹拌することでひよこ豆ペーストを得ることができる。
【0028】
(ひよこ豆の浸漬)
上記でひよこ豆を水に浸漬するには、6〜48時間浸漬させることで、ひよこ豆の表面だけでなく中心部に向かって適度に水分が含まれ、かくすることで熱伝導が良くなり容器充填前の調理工程での加熱混合調理での加熱混合が容易になる効果がある。
乾燥されたひよこ豆を水に浸漬させる場合は、乾燥されたひよこ豆表面を中心に水分が低いことで増殖が制御されていた雑菌などが、浸漬中に増加されることがあることから、浸漬の水温が0〜40℃で浸漬することが望ましく。0〜15℃で浸漬することで、6時間以上の浸漬であっても雑菌の菌数増加を防ぐためさらに望ましい。
さらに乾燥されたひよこ豆の浸漬中の水を80℃以上に加温することで、浸漬中に増加した雑菌などを殺菌し制御でき、さらにひよこ豆ペーストに調整する際の粉砕がより良くなり、粒度調整が容易にできる効果が得られる。
【0029】
なお、乾燥されたひよこ豆の浸漬は、連続的に1回で行ってもよく、1度浸漬を中断し水切りを行い、新たな水にて浸漬を行ってもよく、さらに、水切りを行った後の浸漬は繰り返し行ってもよい。浸漬を繰り返し行う場合に、浸漬する容器や1度浸漬するひよこ豆の量は、必要に応じて変更することができる。そして、浸漬時間は水切りを行っている時間は含まず、実際に浸漬された時間の合計をいう。
また、浸漬時の水温は、連続して浸漬している水を温度変化させることもできるが、水切りしたあと新たな浸漬水にて加温してもよい。ひよこ豆の雑菌の制御をしやすくすることから、浸漬水の加温は、実質的な浸漬時間の後半の方が好ましく、さらに80℃以上での加温時間は1時間以内が好ましい。
【0030】
(浸漬後の水切り)
水切りとは、乾燥されたひよこ豆を浸漬後、浸漬に用いた水から取り出すか、または浸漬に用いた水を排出することで、ひよこ豆の表面に積極的に水を接触させない状況することができればよく、例えば、乾燥されたひよこ豆を水に浸漬終了後、容器から取り出した後かご等に取り出して放置し水分をひよこ豆の表面から除去した状態でもよく、容器から浸漬した水を抜くだけでもよく、積極的に遠心分離による脱水や、給水布等で拭き取りなどを行ってもよい。
【0031】
(粉砕機)
生のまたは水に浸漬したひよこ豆の粉砕に使用される粉砕機は生のあるいは浸漬したひよこ豆を粉砕出来ればどの様な装置でも良い。少量を加工する場合は、コーヒー豆用のミルなどでもよく、工業用であれば、石臼の様に粉砕するマイコロイダー(特殊機化工業)マスコロイダー(増幸産業)や、粉砕物がカッター刃にあたり粉砕されるカッターミルがミルハイパワー剪断粉砕機(三庄インダストリー)、ロータリーカッターミル(奈良機械)等使用することができる。
【0032】
水に浸漬させ、これを粉砕することにより得られるひよこ豆ペーストは、豆成分等が水に流出あるいは溶解し、ペースト自身で前記した一定の粘性を示す。
このようにして粉砕して得られるひよこ豆ペーストは、適宜に濾布等で夾雑物を除去し、使用に供される。
(レトルト食品)
【0033】
レトルト食品とは、レトルト殺菌を行った食品であり、密封された容器内部の食品中央部または内容物の全てにおいて120℃で4分間以上、例えば120℃で10分間、または120℃で4分間と同等の熱以上がかかる状態に加圧加熱して殺菌された密封容器入りの食品である。
レトルト殺菌をする方法はどの様な方法であっても良い。例えば過熱水蒸気や熱水などを利用することができる。
【0034】
(ひよこ豆ペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料を含有するレトルト食品)
ひよこ豆のペーストおよびソース部において25質量%以下の油脂原料を含んだソースと必要に応じて配合される具材等がレトルト殺菌されている食品であって、レトルト殺菌された食品はレトルト容器から直接あるいは必要に応じてこれを加熱した後容器から取り出し、そのまま食したり、ご飯等にかけたり、他の具材と一緒に調理したりする食品である。具体的な調理品には、カレー、シチュー、ハヤシライス、パスタソース等が挙げられる。
【0035】
(レトルト食品ソース部)
レトルト食品ソース部とは、少なくとも、ひよこ豆ペースト、レトルト食品ソース部として25質量%以下の油脂、および殺菌前ソース用原料を配合しレトルト殺菌されたソースであって、レトルト食品における具材を除いた部分をいう。
さらに、ひよこ豆ペーストがレトルト食品ソース部の5〜40質量%であることで、適度な粘性と、ひよこ豆の風味を感じない程度にすることができ好ましく、10〜35質量%であることで、充填前に具材の沈殿抑制が図られ、ひよこ豆の風味が気にならないようになることからさらに好ましい。
【0036】
レトルト食品のソース部には、油脂を25質量%以下で含有する。使用する油脂の融点により、測定時の油脂以外のソース部の粘性に影響しやすいが、25質量%であれば、ひよこ豆ペーストによる粘性付与効果を影響しにくくなり、15質量%以下であれば、常温において固形の油脂であっても粘性への影響は少ないためさらに好ましい。このソース部に含有する油脂は、油脂原料として配合することが好ましいが、ソース内に配合することで油脂分が溶出される高油脂食材などの具材から得られる油脂であってもよい。油脂分の多くソース部に溶出される高油脂食材としては、牛や豚のバラ肉、挽肉で作られた肉団子、マグロのトロ部、マカデミアンナッツ、くるみ、油揚げ等が例示できる。
ソース部の油脂合量割合は、常法で測定することができる。
【0037】
(殺菌前ソース用原料)
レトルト食品として、レトルト容器に充填するに際しては、前記のひよこ豆ペーストを含む原料を、殺菌前ソース原料として調整する。
これには殺菌前ソース調整工程で使用する原料であって、ひよこ豆ペースト以外に、ひよこ豆由来以外の水分や、その他事前に加熱混合調理可能な原料やひよこ豆以外の澱粉原料や具材などがある。例えば、その他原料は、粉体や液体の原料であっても良い。これらには、醤油・果汁・エキス・液体油脂等の液体原料、砂糖・塩・カレー等の香辛料・色素等の粉末原料等があげられる。
【0038】
(レトルト食品の具材)
具材の量はレトルト食品として喫食可能であれば量は制限されるものではないが、ひよこ豆ペーストによるソースの粘性の効果を得られる食品であることから、実質的な、具材の量はレトルト食品ソース部に対して、質量比で3以下が好ましく、1以下であることがより好ましい。
【0039】
また、具材としては、肉、魚介類、野菜、果実等があげられ、具材は、生のものでも、加熱等の加工がなされているものであってもよく、冷凍状態のものでも良い。
また、殺菌前ソースに使用する水分は、具材等を前処理した煮汁等を使用することも出来る。
【0040】
(澱粉原料)
本発明において配合できる澱粉原料は、ひよこ豆を除く小麦粉や米粉等の澱粉を多く含む穀類の粉砕物、コーン、馬鈴薯やタピオカ等から作られた澱粉や、それらに架橋等を行い得られる加工澱粉等が挙げられる。
これら澱粉原料(ひよこ豆由来を除く)を、殺菌前ソースに対して配合する量は、ひよこ豆ペーストによる粘性向上の効果が認められる限度である。通常は、ひよこ豆ペーストの配合量に対して、それよりも少ない量とする。
【0041】
(具材の説明)
ソースに加える具材は、目開き5mmの篩を通過しない固形物であって、ニンジン、ジャガイモ、ごぼう、小豆、大豆、キャベツ、オニオン、ネギ等の野菜、牛肉、豚肉、鶏肉等のカット肉や挽肉の畜肉および畜肉の肉団子等の加工品、イカ、アサリ、サケ、たら、カニ等の魚介および魚介の蒲鉾等の加工品、等のことであり、さらにペースト状にしていなければ、レトルト食品のソース部の粘度に影響がでないことから、ひよこ豆であっても具材に使用することもできる。
【0042】
(レトルト食品ソース部の具材)
レトルト食品における具材は、殺菌前ソース用原料に含まれているものであっても、殺菌前ソースとは別に調整され、レトルト容器に殺菌前ソースとは別に充填される具材であってもよい。
【0043】
(揮発成分含有原料)
揮発成分含有原料は、80℃以上で特定の成分が気化したり分解されたり、または80℃以上に加熱混合調理を行うことで変性を生じさせて具材等を調整することを行う原料である。具体的には、元の原料のまま加熱混合を行わず混合密封したままレトルト殺菌した場合と、一度加熱混合調理した後密封しレトルト殺菌した場合で風味が変わる原料をいう。具体的には、事前に加熱混合調理を行うことで風味が変わる原料は、エチルアルコールを気化させて旨味やコクのみを残すことができる、ワイン、ウイスキー、日本酒等の各種お酒や、独特の香り風味を加熱することで低減できる植物性蛋白等の原料があげられ、具材を確認することが好ましい原料は、卵白を他の素材にまとわせて固化させて具材とする原料の卵白等があげられる。
【0044】
したがって、この揮発成分含有原料は、次に述べる撹拌しながら60℃以上100℃未満で加熱混合しひよこ豆含有ソースの殺菌前ソースを調整する工程の前または途中で加え80℃以上で揮発成分を揮発させるか、殺菌前ソースとは別に80℃以上で加熱調理し、揮発成分を揮発させて密封容器内に揮発成分を残さないようにすることが好ましい。
【0045】
(容器)
レトルト食品を充填する容器は、レトルト殺菌に用いることができる容器であればよく、具体的にレトルト殺菌時の加熱温度において容器のバリア性が保たれるものであればよい。例えば、金属缶、アルミ箔を含んだ袋、バリアフィルムを含んだ袋、樹脂製の容器とフィルムの組み合わせ等があげられる。
【0046】
(ひよこ豆含有レトルト食品の製法)
ひよこ豆含有レトルト食品は以下の工程を含んでなる方法により製造することができる。
(1) ひよこ豆ペーストを調整する。 ひよこ豆ペーストの製造は先に説明したひよこ豆ペーストの製造法により製造することができる。
【0047】
(2) 上で得られたひよこ豆ペーストおよびソース部に対して25質量%以下の油脂原料、その他の原料、例えば澱粉原料および具材の全てまたは一部と水(湯)を混合、分散し、撹拌しながら60℃以上100℃未満で加熱混合しひよこ豆およびソース部に対して25質量%以下の油脂原料含有ソースを調整する。
【0048】
さらに、混合しながら、ひよこ豆以外の小麦粉や加工でんぷんなどを用いて充填に適した粘性を付与するために、60℃以上が好ましく、65℃以上の加熱により大腸菌群の多くが減少し、75℃以上で病理性大腸菌の多くも死滅することからさらに好ましい。そして、容器に充填密封後レトルト殺菌することから、さらなる過加熱による原料の風味を壊さないために、100℃未満での加熱混合をすることが好ましく、装置も簡易で作業性もよい。
【0049】
(ひよこ豆ペースト)
加える水の量は、配合するひよこ豆ペーストの配合量以上である。なお、ペーストの10倍量、好ましくは6倍量を超える量の水分を配合すると、得られたソース中にひよこ豆自体の含有量が少なくなり過ぎて、たとえ粘性が増大するもその効果が低下するので好ましくない。
さらに、ひよこ豆ペーストの殺菌前のソースへの配合量は、具材を除いたひよこ豆含有ソース部の、5〜40質量%であることが好ましい。
【0050】
この加熱混合はソース原料用の調理のための加熱であって、具体的には殺菌と、レトルト殺菌前の容器への充填に適した、とろみ付のためにも行われるので、加熱混合の時間はこの目的のために適宜に調整される。例えば、室温から90℃になるまで加熱混合し、5分間90℃で保温したあと加熱停止し、適宜に自然冷却を行うことができる。
さらに、既に説明したように、次に説明するレトルト殺菌工程の加圧加熱とあいまって、レトルト包装を開封して喫食時の粘性向上に寄与するのでこの加熱混合工程は必須である。
【0051】
(3) 上記の加熱混合後、容器への充填に適した温度で適宜にひよこ豆およびソース部において25質量%以下の油脂原料を含有するソースを容器に充填し、必要に応じてその他の具材やソースを別に充填し密封し、レトルト殺菌(120℃4分以上のレトルト殺菌)を行う。
例えば、レトルト釜内で120℃の過熱蒸気により10分間加圧加熱するなどにより殺菌をすることができる。
なお、充填前の一時保管においては、充填可能であれば一定の温度状態になるように加熱・冷却・保温してもよい。また充填時は加熱・保温・冷却も適宜に行える。
【0052】
充填前の一時保管からレトルト殺菌前においては、ソース内の具材などの物性を微生物の影響で損なわないようにするためには、60℃以上で充填することが好ましく、さらに充填後もレトルト殺菌開始までの一定時間仮置きした場合でも60℃以上を維持してレトルト殺菌を開始するためには、70℃以上で充填することが、さらに好ましい。
また、60℃以下の温度であっても充填しレトルト殺菌することは可能だが、例えば40℃未満の室温程度にまで冷却した後に充填すればレトルト殺菌後の喫食の時期までには粘性がさらに増粘するという効果が得られるので好ましい。
【0053】
(殺菌前ソースの加熱混合調理)
ひよこ豆のペーストを含む殺菌前のソースの加熱混合は、容器に充填することができる物性にすること、レトルト殺菌を行うまでに、容器内に充填されたソースや具材の物性変化を行わせないことを目的に行うことができるが、殺菌前の粘性は、容器の密封不良を防ぎやすく、充填量を一定にしやすいことから低い方が好ましく、レトルト殺菌後のソース部の粘性は喫食時に求められる粘性であり、均一にごはんに絡む等強いほうが好ましい。ひよこ豆ペーストとソース部に対して25質量%以下の油脂原料を含むソース部においては、殺菌前のソースを60〜100℃以上に加熱混合調理することで、充填前と比較して大きく粘性を増大させるとう効果がある。その結果、レトルト充填時には低粘度であるが故に充填が適正であるが、つまり、低粘度であるが、レトルト殺菌後における喫食時にはその粘性が増大し、結果として適切な粘性が付与されたレトルト食品を得ることができるのである。
【0054】
(流動性の説明)
上記(2)の工程で得られる60℃以上100℃未満で加熱混合してなる、ひよこ豆含有ソースは、一定の流動性を示す。当該流動性とは、レトルト食品の具材を除いた殺菌前のソース100g中に、300m
2の板を30mm/minで30sec引いた時に得られる最大負荷値で得られる。この場合、負荷値が大きいと流動性が悪いということであり、とろみが強く他の食品とよく絡んだり、容器への充填時に詰まりやすくなったりする。負荷値が小さいと流動性が良いということで、とろみが弱いので他の食品に絡まないが、容器は閉塞することなく充填できるものである。
【0055】
なお、上記(2)の工程で得られる60℃以上100℃未満で加熱混合してなる、ひよこ豆含有ソースは、(2)の加熱混合前後で、ある程度の粘性増大を示すものの、その幅は小さく、実際上、レトルト容器への充填に影響を及ぼすほどではない。
しかるに、ひよこ豆に代えて小麦粉や加工デンプン等を配合してなるソースは、上記(2)の加熱混合工程後に明瞭な粘性向上が見られ、レトルト容器への充填適性が劣る。
【0056】
(ひよこ豆含有レトルト食品の製法の特徴)
通常、レトルト殺菌を行うソース製造の場合、容器充填時は容器に充填に必要な流動性を得られれば良いので、ペーストやその他の原料が混合出来れば良く、加熱混合の必要性はない。小麦粉などは調理のために60℃以上で加熱混合することにすると粘性が出てくるので充填適性を喪失するのでレトルト食品には充填性の点からは使いづらい。
【0057】
本発明のひよこ豆のペーストを含むソースは、60℃以上に加熱混合を行わないでレトルト殺菌を行った場合は、レトルト殺菌前の流動性がよく、容器への充填適正は良いが、レトルト殺菌を施しても、粘性増大の効果は少ないうえ、さらに、同量のひよこ豆ペーストを添加していても、レトルト殺菌後の粘性増大のバラツキが多く、所定の喫食時の粘性を付与することが困難である。しかるに、その理由の詳細は不明であるが、本発明のごとく60℃以上100℃未満で加熱混合調理した後レトルト殺菌した場合は、レトルト前においては流動性がよくてそれ故充填適正が良好で容易に充填が可能であるが、それにもかかわらず、レトルト殺菌を行った後のソースは、小麦粉同等以上に粘性が増大し、非常に他の食材に絡む物性を奏するという特徴を持ち合わせる。
したがって、レトルト包装を開封した喫食時には、適正な粘性の付与された食品が喫食される。これは粘性付与のほかにも、例えば食品のスパイス感の向上につながる重要な性状である。
【0058】
(容器)
ソースを充填するレトルト用の容器は、レトルト殺菌出来る容器であればどの様なものでも良い。例えば、金属缶であっても、バリア性のフィルム包材であっても良い。
【0059】
(喫食)
製造されたひよこ豆ペーストを含むレトルト食品は、レトルト殺菌後に通常の販路で所定期間保存されたのち、消費者の手元に届き、各消費者は、購入したレトルト食品を常法により、適宜に電子レンジまたは湯煎等により加熱し、喫食に供される。通常、レトルト殺菌後、48時間程度、またはそれ以上の時間を経過後に喫食されることが多い。