特許第6784689号(P6784689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784689
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】水性ポリウレタン分散体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20201102BHJP
   C08G 18/69 20060101ALI20201102BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20201102BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20201102BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20201102BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20201102BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20201102BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20201102BHJP
   C08G 18/63 20060101ALI20201102BHJP
   C08G 18/34 20060101ALI20201102BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20201102BHJP
   C08L 75/14 20060101ALI20201102BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20201102BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20201102BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20201102BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C08G18/00 C
   C08G18/69
   C08G18/08 019
   C08G18/73
   C08G18/12
   C08G18/65 076
   C08G18/42
   C08G18/50 003
   C08G18/63 030
   C08G18/34 080
   C08G18/72 020
   C08L75/14
   C08L23/00
   C08L33/00
   C09D175/04
   C09J175/04
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-547981(P2017-547981)
(86)(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公表番号】特表2018-513233(P2018-513233A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】EP2016055281
(87)【国際公開番号】WO2016142515
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2019年3月8日
(31)【優先権主張番号】15158809.2
(32)【優先日】2015年3月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】リガン・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ・ベルヘス
(72)【発明者】
【氏名】ソリン・ネー・サウカ
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・ベラ・サス
(72)【発明者】
【氏名】エセ・コク
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126945(JP,A)
【文献】 特開2010−241953(JP,A)
【文献】 特開2003−147041(JP,A)
【文献】 特開平05−230364(JP,A)
【文献】 特開昭61−101515(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/019598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 18/00− 18/87
C08L 23/00− 23/36
C08L 75/00− 75/16
C08L 33/00− 33/26
C08K 3/00− 13/08
C08L 93/00− 93/04
C09D 175/00−175/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリウレタン分散体の製造方法であって、
(1)下記を含む反応混合物からNCO末端ポリウレタンプレポリマーを形成すること、
(a)400〜10000g/molの数平均分子量Mを有するポリオールであって、少なくとも1種の少なくとも95%の水素添加率で水素添加されたポリブタジエンポリオールと少なくとも1種のポリエステルポリオールと10:1〜1:10の重量比で含むポリオール(ただし、ハロゲン化ポリエーテルポリオールおよびマレイン化ポリエーテルポリオールを含まない)
(b)必要に応じて、ハロゲン化ポリエーテルポリオールおよびマレイン化ポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種
(c)少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも1個の負電荷官能基を含む、少なくとも1種のアニオン性安定化剤、
(d)少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネー
(1’)工程(1)で得られた前記ポリウレタンプレポリマーに有機溶媒を添加すること、
(2)剪断力の適用下で前記ポリウレタンプレポリマー/有機溶媒混合物を連続的水性相中に分散させ、エマルションを得ること、
(3)前記ポリウレタンプレポリマーを少なくとも1種の鎖延長剤と反応させて水性ポリウレタン分散体を得ること
(3’)工程(3)の後で前記有機溶媒を除去すること、および
(4)前記水性ポリウレタン分散体を、変性ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂およびロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種混合すること
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネートとして、少なくとも1種の直鎖脂肪族ポリイソシアネートおよび少なくとも1種の分岐脂肪族ポリイソシアネートを、2:1〜1.2:1の重量比で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)工程(1)の前記反応混合物が、変性ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂の内の少なくとも1種をさらに含み、および/または(ii)変性ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂の内の少なくとも1種が、工程(2)の前記連続的な水性相中に組み込まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記変性ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂が、ハロゲン化ポリオレフィン樹脂、ハロゲン化ポリオレフィンマレイン酸樹脂、ポリオレフィンマレイン酸樹脂、スチレン/エチレン−ブチレンコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン/イソプレンコポリマー、(メタ)アクリレートエステル/(メタ)アクリル酸コポリマー、ロジン酸樹脂、およびロジンエステル樹脂からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
(1)前記有機溶媒がアセトンであり、および/または
(2)前記有機溶媒が、前記ポリウレタンプレポリマーの総重量の50重量%までの量で使用される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種のハロゲン化ポリエーテルポリオールが、400〜3000g/molの数平均分子量Mを有する、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種のアニオン性安定化剤が、スルホン化ポリグリコールおよび/または2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA)を含む、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
(1)前記ポリイソシアネートが、前記混合ポリオールのヒドロキシ基に対して、モル過剰のイソシアナト基を生ずる合計量で使用され、OH/NCO当量比が1:1.1〜1:4であり、および/または
(2)前記ポリイソシアネートが、ジイソシアネートから選択される、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程(2)が、機械的撹拌によりポリウレタンプレポリマーを連続的な水性相中で乳化することを含む、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記鎖延長剤が、少なくとも2種のNCO反応性基を含む、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法により得ることができる水性ポリウレタン分散体。
【請求項12】
請求項11に記載の水性ポリウレタン分散体を含む、接着剤またはコーティング組成物。
【請求項13】
着剤またはコーティング組成物としての、請求項11に記載の水性ポリウレタン分散体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤またはコーティングとして使用でき、界面活性剤および溶媒不含、低VOC放出性で、環境に優しく、均一で乾燥後に耐老化性接着剤を形成する水性ポリウレタン分散体に関する。また、それらの製造方法、それらを含む組成物ならびにコーティングおよび接着剤としてのそれらの使用も包含される。
【背景技術】
【0002】
水性ポリウレタン分散体は、耐薬品性、良好なフィルム形成特性、靱性、可撓性および優れた低温耐衝撃性をもたらす革新的材料である。したがって、これらのラテックスは、木材、ゴム、革またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)などの各種基材に対する接着剤またはコーティングとして使用されるべき好適な候補材料である。
【0003】
しかし、ポリウレタン、ポリアクリレートまたはシアノアクリレートなどの単に極性ポリマーのみをベースにした系を使った低エネルギー表面、すなわち、自動車用積層用途に使用されるポリオレフィンに対する接着は、フィルムと基材の相互作用および適合性の欠如に起因して、困難なまま残されている。この問題を克服するためには、一般的には、プライマーまたは添加剤の使用が必要となるが、しかし、これは通常、高価で時間のかかる手順または有機溶媒の利用を必然的に伴う。
【0004】
その他の手法としては、ポリウレタン分散体と配合するために、マレイン化および/またはハロゲン化ポリオレフィン誘導体を含むポリジエンなどの変性ポリオレフィンが使用されてきた。しかし、両方のポリマーは分子レベルで混和性が無いために、配合物は、通常、低品質で相分離を有するフィルムを生ずる。
【0005】
別のアプローチは、水系ポリウレタン−アクリレートハイブリッド分散体をベースにしている。例えば、欧州特許出願公開第2348061号明細書は、ポリウレタンをエチレン系不飽和モノマーと混合し、続けて、エチレン系不飽和モノマーを重合することにより製造されるポリウレタン−ポリアクリレートハイブリッドシステムを記載している。しかし、ハイブリッドシステムの使用は、より複雑で、アップグレードが困難である。
【0006】
したがって、当該技術分野において、既知の系の少なくとも一部の欠点を克服する改善されたポリウレタンベース接着剤系に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0007】
本明細書で記載の本発明は、いくつかの既知の問題を解決し、低表面エネルギーを有する基材を、界面活性剤を使用しない環境に優しい方法により接着するのに好適する水性ポリウレタン分散体の製造を可能とする。本発明は、一般に、界面活性剤を全く使用せずに、剪断力を適用して、ポリウレタン粒子の水中分散体を製造する方法に関する。安定な分散体を得るために、アニオン性安定剤がポリウレタン鎖中に組み込まれ、最終生成物の耐水性には影響を与えない。さらに、ポリウレタン鎖には、非極性表面との適合性を付与する非極性構成単位が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
したがって、第1の態様では、本発明は、水性ポリウレタン分散体(PUD)の製造方法に関し、該方法は、
(1)下記を含む反応混合物からNCO末端ポリウレタンプレポリマーを形成すること、
(a)400〜10000g/mol、好ましくは500g/mol〜4000g/mol、より好ましくは1000g/mol〜3000g/molの数平均分子量Mを有し、少なくとも1種の部分水素添加ポリブタジエンポリオールを含む少なくとも1種のポリオール、
(b)必要に応じて、少なくとも1種の変性ポリエーテルポリオール、好ましくはハロゲン化ポリエーテルポリオール、
(c)少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも1個の負電荷官能基、好ましくはカルボキシル基またはスルホン酸基を含む、少なくとも1種のアニオン性安定化剤、
(d)少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネートであって、好ましくは少なくとも2種の脂肪族ジおよび/またはトリイソシアネートであり、少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネートが少なくとも1種の直鎖脂肪族ポリイソシアネートおよび少なくとも1種の分岐脂肪族ポリイソシアネートを含み、NCO末端ポリウレタンプレポリマーを得るために、ポリイソシアネートが反応混合物の他の成分のヒドロキシ基に対しモル過剰のイソシアナト基を生ずる合計量で使用される、少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネート、
(2)好ましくは機械的撹拌により、剪断力の適用下でプレポリマーを連続的水性相中に分散しエマルションを得ること、
(3)プレポリマーを少なくとも1種の鎖延長剤と反応させて水性ポリウレタン分散体を得ること、および
(4)水性ポリウレタン分散体を、(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂およびロジン系樹脂からなる群から、好ましくはマレイン化ポリオレフィンから選択される非極性接着促進剤と配合すること、を含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、本明細書で記載の方法による水性ポリウレタン分散体に関する。
【0010】
さらなる本発明の態様は、本明細書で開示の水性ポリウレタン分散体を含む接着剤またはコーティング組成物ならびに接着剤およびコーティングとしての水性ポリウレタン分散体の使用に関する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「1種または複数」は、少なくとも1種を意味し、1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ超の言及種を含む。同様に、「少なくとも1種」は、1種または複数、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ超を意味する。任意の成分と関連して本明細書で使用される場合、「少なくとも1種」は、多くの化学的に異なる分子、すなわち、多くの異なる種類の言及種を意味するが、分子の合計数ではない。例えば、「少なくとも1種のポリオール」は、ポリオールの定義に該当する少なくとも1つの種類の分子が使用され、また、この定義に該当する2種以上の異なる分子の種類が存在し得ることを意味するが、前記ポリオールの1個のみの分子が存在することを意味しない。
【0012】
本明細書で分子量に言及される場合、この言及は、別義が明示されない限り、数平均分子量Mを意味する。数平均分子量Mは、末端基分析(DIN53240によるOH数)に基づいて計算できる、またはDIN55672−1:2007−08に従って、溶出液としてTHFを使って、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定できる。別義が示されない限り、全ての与えられた分子量は、末端基分析により決定されたものである。重量平均分子量Mは、Mに対し記載のように、GPCによって測定することができる。
【0013】
組成物または配合物に関連して、本明細書で与えられる全ての百分率は、別義が明示されない限り、それぞれの組成物または配合物の総重量に対する重量%を意味する。
【0014】
少なくとも1種のポリオール(a)は、非官能化ポリオールであり、すなわち、ヒドロキシル基の他に官能基を含まない。特にそれは、それをポリオール(b)と識別するためにハロゲン基を含まない。種々の実施形態では、それはまた、ビニル基を含まない。ポリオール(a)は、少なくとも1種の部分水素添加ポリブタジエンポリオールを含み、少なくとも1種のポリエステルポリオール、少なくとも1種のポリカーボネートポリオール、少なくとも1種のポリエーテルポリオール、または前述のポリオールの内の任意の2種以上の混合物をさらに含んでよい。特に好ましいのは、少なくとも1種のポリブタジエンポリオールと1種または複数のポリエステルポリオールの混合物である。ポリエステルとポリブタジエンポリオールの混合物が使用される場合には、重量比は、約10:1〜1:10、好ましくは1:2〜2:1の範囲であってよい。
【0015】
本明細書で記載の方法に有用なポリエステルポリオールには、重縮合反応でジカルボン酸をポリオールと反応させることにより得られるものが含まれる。ジカルボン酸は、脂肪族、脂環式または芳香族および/またはそれらの誘導体、例えば、無水物、エステルまたは酸塩化物であってよい。これらの具体的な例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸またはセバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、ダイマー脂肪酸およびジメチルテレフタレートである。好適なポリオールの例は、モノエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタングリコールシクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコールおよびポリブチレングリコールである。あるいは、それらは、環状エステル、好ましくはε−カプロラクトンの開環重合により得てもよい。
【0016】
種々の実施形態では、ポリエステルポリオールは、0℃を超える、好ましくは40℃を超える融解温度Tを有し、および/または400〜5000、好ましくは500〜3000g/mol、より好ましくは800〜2500g/mol、最も好ましくは1000〜2000g/molの範囲の数平均分子量Mを有する。
【0017】
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールホモまたはコポリマー、好ましくはポリプロピレングリコールホモまたはコポリマー、ポリエチレングリコールホモまたはコポリマー、ポリテトラメチレングリコールホモまたはコポリマー、またはポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールブロックコポリマーであってよい。種々の実施形態では、ポリエテルポリオールは、400〜4000、好ましくは400〜3000g/molの数平均分子量Mを有する。
【0018】
ポリブタジエンポリオールは、部分水素添加され、すなわち、何らのエチレン系不飽和基も本質的に含まない。部分水素添加ポリブタジエンポリオールの水素添加化率は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%である。ポリブタジエンポリオールは、低分子量、好ましくは約1000〜20,000、より好ましくは約1000〜5,000の重量平均分子量、Mを有し、約5モルパーセント以下の1,2−ビニル含量、1分子当たり2個以下の平均ヒドロキシル官能基を有する、好ましくは非分岐水素添加ヒドロキシル末端ポリブタジエン、すなわち、ポリブタジエンジオールである。これらの非分岐ポリブタジエンは、好ましくはアニオン重合由来であり、ヒドロキシル基は一級または二級とすることができる。好ましい実施形態では、ポリブタジエンポリオールは、少なくとも1種の他のポリオール(a)、好ましくは、上記で定義のポリエステルポリオールと混合される。
【0019】
好適なポリカーボネートは、炭素酸誘導体、例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲンとジオールとの反応により得ることができる。このようなジオールの好適な例には、エチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロ−パンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3,ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールならびにラクトン変性ジオールが挙げられる。ジオール成分は、好ましくは40〜100重量%のヘキサンジオール、好ましくは1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体を含む。より好ましくは、ジオール成分には、末端OH基に加えて、エーテルまたはエステル基を表す例も含まれる。
【0020】
ヒドロキシルポリカーボネートは、実質的に直鎖である必要がある。しかし、それらは、必要に応じて、多官能成分、特に低分子ポリオールの組み込みにより、わずかに分岐することができる。好適な例には、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール−1,2,6、ブタントリオール−1,2,4、トリメチロールプロパン、キニトール、マンニトール、およびソルビトール、メチルグリコシド、1,3,4,6−ジアンヒドロヘキサイトが挙げられる。
【0021】
好適なポリカーボネートポリオールは、限定されないが、商標名Desmophen(登録商標)C3200(Bayer)およびKuraray(登録商標)C2050(ポリ−(3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール)カーボネート;Kuraray)として得ることができるものである。
【0022】
反応混合物は、1,4−ブタンジオールなどのモノマージオールをさらに含んでよい。
【0023】
好ましい実施形態では、反応混合物は、少なくとも1種の変性ポリエーテルポリオール(b)、特にハロゲン化ポリエーテルポリオール、例えば、塩素化、臭素化および/またはフッ素化ポリエーテルポリオールをさらに含む。変性ポリエーテルポリオールはまた、マレイン化またはマレイン化とハロゲン化をされてもよい。この文脈で使用される「マレイン化」は、ポリエーテルが無水マレイン酸でグラフト化されることを意味する。これらの変性ポリエーテルポリオールは、非極性に起因する低表面エネルギーを有する表面に対する向上した接着性を提供する。変性ポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールまたはそれらのコポリマーなどの上記のポリエーテルポリオールをベースにするのが好ましい。このような変性ポリエーテルポリオールと、ポリエステルおよびポリブタジエンポリオールとの混合物が使用される場合は、重量比は、約10:1:1〜1:10:1〜1:1:10、好ましくは1:2:1〜2:1:1〜1:1:2の範囲であってよい。
【0024】
上記で定義の変性ポリエーテルポリオールが存在するのが好ましいが、いくつかの実施形態では、それは含まれない。このような実施形態では、少なくとも1種のポリブタジエンポリオールが単独で低表面エネルギーの表面との所望の適合性を提供する。
【0025】
前記反応混合物は、少なくとも1種のアニオン性安定化剤を含み、少なくとも1種のアニオン性安定化剤は、少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも1個の負電荷官能基、好ましくはカルボキシル基またはスルホン酸基を含む。
【0026】
アニオン性および非イオン性安定剤に関連して本明細書で使用される場合、用語の「安定化剤」は、分散体またはエマルション中の液滴を安定化させることができる、すなわち、凝固または凝集を防止することができる種類の分子を意味する。種々の実施形態では、安定化剤分子は親水性および疎水性部分を含み、疎水性部分は液滴と相互作用し、親水性部分は溶媒に露出される。よく使われる安定剤は、界面活性剤で、電荷を保持してよく、例えば、アニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤であってよく、あるいは、非イオン性であってよいが、本発明は、界面活性剤の使用を回避しており、その代わりに、(プレ)ポリマー形成時にポリウレタンポリマー中に組み込まれ、外部乳化剤の助けなしで、水中で自然に安定な分散体を形成し、向上した安定性を示す自己乳化性ポリウレタンを提供する安定化剤化合物を使用する。
【0027】
本明細書で使われる安定剤は、アニオン基を含む。このような電荷基の存在は、分散したポリマー液滴または粒子の安定性を高める。好適なアニオン基の例としては、酸性基、例えば、カルボン酸基またはスルホン酸基およびそれらそれぞれの塩などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の観点から、アニオン性安定剤として好適する具体的な化合物は、2,2−ビス(ヒドロキシアルキル)アルカンモノカルボン酸、特に、5〜8個の合計炭素原子数を有する2,2−ビス(ヒドロキシメチル)アルカンモノカルボン酸、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(ジメチロールプロピオン酸;DMPA)である。また、好適するのは、1000g/molまでの、好ましくは500g/molまでの範囲の分子量Mを有するスルホン化ポリジオールである。このようなスルホン化ポリジオール、例えば、約430g/molの分子量Mを有するプロポキシル化1−メチル−2−メチロール−3−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネートが、GS−7Q(Yedang G & Co.Ltd)の名称で市販されている。
【0028】
種々の実施形態では、上述のアニオン性安定剤は、安定剤、特に、非イオン性安定剤として作用し得る他の化合物と混合される。種々の実施形態では、このような非イオン性安定剤には、ポリオール、好ましくはジオール、またはモノマージオールおよびポリオール(a)に関連して上記した特定のポリエーテルポリオールを含む異なるポリオールおよび/またはジオールの混合物が含まれる。このような非イオン性安定剤は、6〜19のHLB(親水性・親油性バランス)値を有する。HLB値は、分子の親水性部分の分子量を計算し、分子の親水性部分の前記分子量を分子の合計分子量で除算し、その後得られたパーセンテージを5で除算することにより計算される。水中油型エマルション用の典型的な非イオン性安定剤は、8〜18のHLB値を有する。好ましいモノマージオールはグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどおよび(ポリエーテルポリオールとして)それらのポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリブチレングリコールならびにエチレングリコール、プロピレングリコール、およびブチレンのコポリマー、好ましくはエチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマーである。このようなポリマー安定剤の平均分子量Mは、好ましくは約4000g/molまで、好ましくは約3000g/molまで、より好ましくは約2000g/molまでの範囲である。好適な非イオン性エチレングリコール/プロピレングリコール安定剤は、例えば、プルロニック(登録商標)の商標名でBASFから市販されているもの、例えば、プルロニックPE3500である。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、少なくとも1種のアニオン性安定化剤、例えば、DMPAおよび/またはスルホン化ポリジオールは、非イオン性ポリオール安定化剤、好ましくは上記で定義のジオール安定化剤と混合される。特定の一実施形態では、混合物は、少なくとも1種の、3000g/molまでの分子量Mのエチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、および少なくとも1種のアニオン性ジオール安定化剤、好ましくはDMPAまたはスルホン化ポリジオールまたは両方を含む。
【0030】
このような混合物では、非イオン性安定化剤対アニオン性安定化剤の比は通常、約0:1〜約20:1、好ましくは約2:1〜1:3の範囲である。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語の「反応混合物」は、安定化剤(単一または複数)およびポリイソシアネート(単一または複数)を含む、ポリオールの混合物を意味する。ポリオール含有混合物に関連して本明細書で使用される場合、「ポリオール混合物」は、少なくとも1種のポリオール(a)、必要に応じて、少なくとも1種の変性ポリエーテルポリオール、少なくとも1種の安定化剤、および、必要に応じて、存在してもよい任意の追加のポリオールを含む混合物を意味する。
【0032】
ポリオール混合物は、有機溶媒または界面活性剤を全く含まず、追加の添加物を含まず、すなわち、ポリオール、好ましくは上記定義のもの、および必要に応じて、下記で定義の(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂、ロジン系樹脂またはそれらの誘導体から構成されるのが好ましい。
【0033】
種々の実施形態では、ポリオール混合物は、ポリオール混合物の重量の、約20〜99重量%、好ましくは30〜85重量%の少なくとも1種のポリオール(a)、好ましくは異なるポリオールの混合物、例えば、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオールおよびポリエーテルポリオールの混合物を含む。少なくとも1種のポリオール(a)は、上記で定義の非イオン性安定化剤ポリオールを含んでよい。
【0034】
種々の実施形態では、変性ポリエーテルポリオールは、存在する場合、ポリオール混合物の重量の15重量%まで、好ましくは4〜10重量%の量で使用される。
【0035】
種々の実施形態では、非極性ポリオール、すなわち、ポリブタジエンポリオールおよび、必要に応じて、変性ポリエーテルポリオール、例えば、ハロゲン化ポリエーテルポリオールは、ポリオール混合物の総重量の35重量%まで、好ましくは30重量%まで、より好ましくは25重量%までの量で使用される。いくつかの実施形態では、下限値は、5重量%、好ましくは少なくとも10重量%である。これらの非極性ポリオールは、ポリエステルおよびポリエーテルポリオールなどの極性ポリオール、ならびにポリオール混合物の総重量の35重量%まで、好ましくは30重量%まで、より好ましくは25重量%までの量で含まれる非極性ポリオールと配合され、残部は極性ポリオールおよび安定剤であるのが通常好ましい。
【0036】
アニオン性安定化剤は通常、ポリオール混合物の重量の、約1〜20重量%、好ましくは2〜5重量%、より好ましくは2〜4.5重量%の量で含まれる。安定化化合物混合物が用いられる場合は、上記で定義のアニオン性安定剤は、ポリオール混合物に対して、1〜15重量%の量で、および非イオン性安定剤は、1〜30重量%の量で使用してよい。種々の実施形態では、上記で定義の安定剤は、ポリオール混合物に対して、2〜5重量%、好ましくは2〜4.5重量%の量で、および非イオン性安定剤は、2〜4重量%、好ましくは2〜3重量%の量で使用してよい。
【0037】
ポリウレタンプレポリマーの形成に用いられる最終反応物は、少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネートの混合物であり、少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネートは、少なくとも1種の直鎖脂肪族ポリイソシアネートおよび少なくとも1種の分岐脂肪族ポリイソシアネートを含む。少なくとも2種のイソシアネート基を含む任意の化合物は、本発明の意図の範囲内にある。しかし、ポリイソシアネートはジイソシアネートであるのが好ましい。3個以上の官能基を有する少量のイソシアネート、特にトリイソシアネートの組み込みも意図されており、特定の状況下で有利な場合がある。このようなポリイソシアネートは、架橋剤として機能し得る。ポリイソシアネートが架橋剤として機能する場合には、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースにしたポリイソシアネートが好ましい。好適なジイソシアネートには、限定されないが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレン−4,4−ビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート(H12MDI)およびこれらの混合物が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの他に、芳香族ポリイソシアネート、特に、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエン−2,4−ジイソシアネート(TDI)、ポリマージフェニルメタンジイソシアネート(PMDI)、およびこれらの混合物も存在してよい。特に好ましい実施形態では、脂肪族ポリイソシアネートのみ、特に、脂肪族ジイソシアネートのみが存在する。特に好ましい脂肪族ジイソシアネートには、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびこれらの混合物がある。好適なポリイソシアネートは、例えば、Desmodur(登録商標)の商標名でBayer AG(DE)から市販されている。
【0038】
好ましい実施形態では、少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネートとして、少なくとも1種の直鎖脂肪族ポリイソシアネートおよび少なくとも1種の分岐脂肪族ポリイソシアネートを、2:1〜1.2:1、より好ましくは約1.5:1の重量比で含む。
【0039】
ポリイソシアネートは、反応混合物中に存在する全てのポリオールのOH基に対する全てのポリイソシアネートのモル過剰の、すなわち、ヒドロキシル基との反応を完結するのに必要な化学量論的濃度に対し過剰の濃度のイソシアナト基を生ずるように、OH/NCO当量比が好ましくは1:1.1〜1:4、より好ましくは1:1.2〜1:1.3となるような合計量で使用される。脂肪族ポリイソシアネートの他に1種または複数の芳香族ポリイソシアネートも存在する場合には、ポリイソシアネートの合計量は、反応混合物内に存在する全ての脂肪族ポリイソシアネートと全ての芳香族ポリイソシアネートの両方の量を意味する。
【0040】
好ましくは、ポリイソシアネートの量はヒドロキシル基との反応を完結するのに必要な化学量論的濃度の20%〜150%過剰である。反応混合物中のポリイソシアネートの量は通常、反応混合物の10〜30重量%の範囲である。反応混合物の残りは、上記で定義のポリオール混合物により構成される。
【0041】
ポリオール混合物を用意することは、ポリオール(a)および、必要に応じて、(b)ならびに安定剤を混合する工程、および混合物を加熱する工程を含んでよい。加熱は、用いたポリオールが室温で固体であり、ポリオール混合物を形成するために融解する必要がある場合に必要となり得る。好ましい実施形態では、ポリオールおよび少なくとも1種の安定化剤が混合され、約70〜95℃、例えば、75℃に加熱され、同時に、混合物が真空下で撹拌され、乾燥される。混合後、イソシアネートを添加するために、混合物を60℃に冷却してよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、「約」は、それが参照する数値の±10%、好ましくは±5%を意味する。したがって、「約70℃」は、70±7℃、好ましくは70±3.5℃を意味する。
【0043】
ポリオール混合物は、続けて反応混合物中のポリイソシアネートと混合され、プレポリマーを形成する。プレポリマー反応は通常、高温で、好ましくは約60℃〜約95℃、より好ましくは約60〜80℃の範囲で、約1〜約24時間の期間をかけて起こる。典型的には、反応は、添加された、好ましくはスズ系触媒、より好ましくはジメチルジネオデカノエート錫、例えば、Fomrez UL28触媒の存在下で実施される。本発明の好ましい実施態様では、したがって、反応混合物は上記で定義の触媒をさらに含む。
【0044】
反応は、ジブチルアミンを使った標準滴定により測定して、遊離イソシアネート含量が計算値に達するか、またはその値に極めて近くなるまで継続される。プレポリマー中の遊離イソシアネート含量の好ましい値は、混合物中の安定化剤(単一または複数)およびポリイソシアネートを含むポリオールの合計量の0.2〜3重量%、好ましくは1〜2重量%の範囲である。
【0045】
遊離イソシアネート含量が上記で定義の所定の値に達すると、温度を、例えば、約60℃まで下げてよい。
【0046】
種々の実施形態では、プレポリマーは、3000〜30000g/mol、好ましくは11000〜25000g/mol、より好ましくは12000〜20000g/molの平均数分子量Mを有する。
【0047】
得られたプレポリマーはその後、溶媒に溶解される。好ましいのは有機溶媒、特に完全に水と混合可能なもの、例えば、アセトンである。種々の実施形態では、このような溶媒、特に、アセトンは、プレポリマー/溶媒混合物の、70重量%まで、好ましくは60重量%まで、より好ましくは55重量%までの量で使用される。溶媒は、工程(3)後に、例えば、真空蒸留により除去されるのが好ましい。プレポリマーを溶解するために、溶液を、例えば、40〜70℃、好ましくは50〜60℃の温度に、好ましくは撹拌下で、加熱してよい。
【0048】
種々の実施形態では、プレポリマーは、好適な中和剤を使って、この段階で中和してよい。アニオン性の酸性安定化剤の場合には、アミン塩基、例えば、トリエチルアミンを使用してよい。
【0049】
このように形成されたプレポリマー溶液はその後、連続的な水性相、好ましくは水中に分散される。分散工程は、高温で、例えば、約30〜60℃、例えば、約40℃で実施してよい。分散工程は、ポリウレタンプレポリマーの、連続的な水性相、好ましくは水中に乳化して、好ましくは剪断力の作用下で、エマルションを形成することを含めてもよい。種々の実施形態では、剪断力は、機械的撹拌のみで、例えば、900rpmまで、例えば、300〜700rpm、好ましくは400〜600rpmの機械的撹拌機を使って、引き起こされる。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語の「エマルション」は、水中油型(O/W)エマルション、すなわち、水が過剰に使用され、これが連続的な媒体であるエマルションを意味する。記載方法では、安定な液滴が得られ、これは通常、ISO22412に準拠した動的光散乱(DLS)により測定して、50〜500nm、好ましくは100〜400nmのサイズを有する。
【0051】
種々の実施形態では、工程(1)の反応混合物は、(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂の内の少なくとも1種をさらに含む。あるいは、または追加して、(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂の内の少なくとも1種が、例えば、それをプレポリマー(溶液)と配合し、その配合物を連続相に分散することにより、または(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂の内の少なくとも1種を連続的な水性相中に別々に分散させることにより、または(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂の内の少なくとも1種を、その後水性相と混合して予め形成された分散体として使用することにより、工程(2)の連続的水性相中に組み込まれる。(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂は、高度に極性のセグメントと高度に非極性のセグメントを含むことができ、これは、形成接着剤と、その接着剤で接着される高度に非極性の基材との間の適合性を高める。用語の「高度に極性のセグメント」および「高度に非極性のセグメント」は、それぞれ、高度に極性および高度に非極性である樹脂の部分または領域をそれぞれ意味する。前記セグメントの長さは、特に限定されず、樹脂は高度に極性のブロックコポリマーおよび高度に非極性モノマー単位であってよいが、また、得られたポリマーが所望の適合性を有する限り、統計的ポリマーであってもよい。しかし、それぞれのポリマー/樹脂は、高度に極性のセグメントと高度に非極性セグメントを含むコポリマーであるのが好ましい。
【0052】
上述のように、(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂は、本発明の方法の工程(1)の反応混合物中に含められる、または工程(2)で、例えば、プレポリマー溶液中に溶解された、プレポリマーと一緒に加えられる、または連続的な水性相中に供給され、例えば、分散体またはエマルションの形態で、工程(2)で水と共に添加される。方法のこれらの工程の(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂は、それらが形成(プレ)ポリマーと分子レベルで混合されるのを保証し、このプレポリマーは、分散工程中に溶媒中に溶解されることにより、ポリオレフィン/ポリアクリル酸樹脂/ロジン樹脂を内部に含む粒子が得られる。
【0053】
したがって、ポリウレタンポリマー粒子は、ポリウレタンおよび(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂の配合物であってよい。本明細書では、これらの配合物はまた、ポリウレタン/(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂ポリマー分散体とも呼ばれる。
【0054】
上記呼び方は、(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂およびロジン系樹脂に対し、代用として行われるが、特定の実施形態では、2種の化合物の内の少なくとも1種またはそれぞれの化合物クラスの少なくとも1種を使用してよく、例えば、プレポリマー分散体中に配合してよい。
【0055】
ポリオレフィンは、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレンまたはそれらの任意の2種以上のコポリマーであり、必要に応じて、変性され、例えば、ハロゲン化またはポリマーがカルボキシル基を含むように変性される。ポリオレフィンはまた、樹脂で変性、例えば、マレイン酸樹脂のように変性してもよい。好ましい実施形態では、(変性)ポリオレフィンは、ハロゲン化ポリオレフィンマレイン酸コポリマー、例えば、塩素化ポリプロピレンマレイン酸樹脂、ポリオレフィンマレイン酸コポリマー、スチレン/エチレン−ブチレン、スチレン/ブタジエン、スチレン/エチレン−プロピレン、またはスチレン/イソプレンコポリマーから選択される。好適なポリオレフィンは、Toyobo Co.,Ltd.からHardlen(登録商標)NZ−1004、NZ−1015、Hardlen(登録商標)EH−801JおよびHardlen(登録商標)CY−9124/9122の商標名で市販されており、また、KRATON Performance Polymers Inc.から、Kraton(登録商標)G1643EおよびKraton(登録商標)G1640ESの商標名で市販されている。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語の「ポリアクリル酸樹脂」は、好ましくは、(メタ)アクリレートエステルおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーである(メタ)アクリレート系樹脂を意味する。(メタ)アクリレートエステルは、疎水性の(メタ)アクリレートエステル、例えば、ブチル(メタ)アクリレートまたは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートであってよい。前記ポリアクリル酸樹脂は、ポリマーの極性セグメントを与えるカルボン酸基を含むのが好ましい。種々の実施形態では、前記ポリアクリル酸樹脂は、水性分散体の形態で提供される。好適な市販の樹脂には、限定されないが、Acronal(登録商標)A225(BASF,SE)が挙げられる。
【0057】
本明細書で同義に使用される用語の「ロジン樹脂」または「ロジン系樹脂」は、ロジン由来の樹脂を意味する。ロジンは針葉樹由来の天然物である。本発明による好ましいロジンであるガムロジンは、8種の樹脂酸、すなわち、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パルストリン酸、レボピマル酸、ピマル酸、イソピマル酸およびサンダラコピマル酸の配合物である。ロジンは、水素化、好ましくはメタノール、トリエチレングリコール、グリセロールおよびペンタエリスリトールアルコールによりエステル化、二量体化、および官能化により、変性されてよい。官能化は、好ましくは、前述のものなどのロジンエステル(ポリオールを有する)の、マレイン酸またはフマル酸などの二塩基酸を使ったさらなるエステル化を意味する。本発明の観点から好ましいロジン系樹脂は、ロジン酸樹脂およびロジンエステル樹脂である。ロジン酸樹脂には、必要に応じて、(部分)水素添加または二量体化形態の前述の樹脂酸を含み、またはジカルボン酸、好ましくはマレイン酸で官能化されたロジンエステルを含む。ロジンエステル樹脂には、上記樹脂酸のポリオールとのエステル、例えば、トリメチレングリコール、グリセロールまたはペンタエリスリトールが挙げられる。これらのエステルは、界面活性剤を使って水中に分散でき、したがって、ロジンエステル樹脂分散体が得られる。好適なロジン樹脂は、例えば、Staybelite(商標)Aロジン酸(Pinova Inc.)、Staybelite(商標)Eロジンエステル(Eastman)およびPEXALYN(登録商標)T100(Pinova Inc)の商標名で入手可能であり、好適なロジン分散体は、例えば、Tacolyn(登録商標)3509E、Tacolyn(登録商標)3166、Tacolyn(登録商標)3179H、Snowtack(登録商標)765AおよびSnowtack(登録商標)779Fの商標名で入手可能である。
【0058】
工程(3)の鎖延長中、プレポリマーのイソシアネート末端基は、少なくとも2種の末端NCO反応性基、例えば、ヒドラジン、アルキレンジアミンまたはシクロアルキレンジアミンまたはシラン含有ジアミン、好ましくはエチレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、またはポリエーテルアミンなどのジアミンを含む適切な鎖延長剤と反応させられる。限定されないが、1,4−ブタンジオールおよび2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールを含むアルキルジオールなどのジオールまたは水も使用できる。前述の鎖延長剤はまた、限定されないが、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を含むシラン含有アミンなどのエンドキャップ剤と混合してもよい。含有アミンは、基材接着をさらに促進できる。鎖伸長反応は、本質的にイソシアネート基の全変換まで実施してよい、すなわち、遊離イソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、鎖延長剤が連続的に添加される。イソシアネート基の全変換まで鎖伸長反応が実施されるのが好ましい。変換は、当該技術分野において十分に確立された技術、例えば、IR分光法によりモニターできる。
【0059】
触媒の存在および/またはより高温も必要とされる場合がある。本発明による有用な好ましい鎖延長剤には、エチレンジアミン、水、イソホロンジアミン、および/またはポリエーテルジアミンが挙げられる。
【0060】
形成された水性ポリウレタン分散体は、30〜60重量%、好ましくは38〜48重量%の固形物含有率を有するのが好ましい。粘度は、ブルックフィールド粘度計、スピンドル4、20rpmにより測定して、好ましくは50〜10000mPas、好ましくは100〜1000mPasの範囲である。粘度は、増粘剤を添加することにより所望の用途形態に適合させるように調節し得る。好適な粘度調節剤および増粘剤は、当該技術分野で周知である。粒径は、動的光散乱(DLS)で測定して、好ましくは50〜500nm、より好ましくは100〜400nmの範囲である。適用乾燥温度は、20〜100℃の範囲とすることができるが、好ましくは約20〜85℃、より好ましくは50〜80℃である。
【0061】
特定の高度に非極性材料に対する十分な接着性を与えるために、水性ポリウレタン分散体は次に、少なくとも1種のロジン樹脂分散体、少なくとも1種のポリアクリル酸樹脂分散体および/または少なくとも1種の(変性)ポリオレフィン樹脂と配合される。得られた配合物は、合成した分散体と高度に非極性材料との間の適合性をさらに高める。このタイプの配合では、ポリマー分散体に関連して上述したものと同じ(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂を使ってよい。これらの樹脂は、水性分散体の形態で使用されるのが好ましい。特に好ましいものは、マレイン酸、すなわち、マレイン化ポリオレフィンである。種々の実施形態では、PU分散体は、樹脂分散体と、10:1〜1:1、好ましくは4:1〜2:1、より好ましくは約3:1の重量比で配合される。
【0062】
本発明はまた、水性ポリウレタンまたはポリウレタン/(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂分散体を含み、少なくとも1種のさらなる(水性)ロジン系樹脂分散体、少なくとも1種の(水性)ポリアクリル酸樹脂分散体および/または少なくとも1種のさらなる(変性)ポリオレフィン樹脂を配合した接着剤組成物に関する。
【0063】
分散体は、その後、接着剤またはコーティング、特に、ポリプロピレンまたはポリプロピレン/エチレンプロピレンジエンモノマー(PP/EDPM)、PVCおよびポリプロピレン発泡体、ならびにポリウレタン発泡体およびポリウレタン革、などの高度に非極性材料に対するコーティング/接着剤として使用してよく、したがって、自動車製造工程における用途に好適する。本明細書で開示のポリマーおよび組成物の自動車内積層用途のための使用は、したがって、本発明のいくつかの部分を形成する。
【0064】
このような接着剤またはコーティング組成物は、この分野でよく知られたさらなる成分を含めることができる。しかし、分散体も、分散体を含む最終的組成物も有機溶媒を含まないのが好ましい。したがって、上述のように、溶媒がPUプレポリマーの分散のために使用された場合には、前記溶媒は鎖延長後に除去され、それにより、種々の実施形態では、分散体および/または組成物は本質的に有機溶媒不含である。この文脈で使用される「実質的に不含」は、分散体および/または組成物が、与えられた成分の5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満を含むことを意味する。
【0065】
本明細書で記載の分散体を含む接着剤は、良好な接着強度を示し、同時に、溶媒不含であり、したがって、環境に優しい。
【0066】
接着剤は、限定されないが、噴霧、ペインティング、浸漬コーティング、スピンコーティング、印刷などの全ての既知の技術により基材に適用できる。
【0067】
方法に関連して本明細書で開示の全ての実施形態は、開示した分散体、組成物、および使用にも適用でき、逆もまた同じであることは理解されよう。
【0068】
次の実施例は、本発明を例示するために提供されている。これらの実施例は例示の目的のためのみに提供されているので、本発明はそれに限定されると見なされるべきではない。
【実施例】
【0069】
実施例1:
Realkyd20112ポリエステルポリオール(71.26g)、Krasol HLBH−P 2000 97%飽和ポリブタジエンポリオール(18.78g)、GS−7Q(1.99g)およびDMPA(0.67g)アニオン性安定剤、HN8200(4.1g)非イオン性安定化剤を、凝縮器および機械的撹拌機を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに加えた。混合物を85℃に加熱した。この温度で、固体成分は融解し、均一混合物が得られた。この時点で、高真空(<0.1ミリバール)を適用し、同時に、水を除去するために温度を80℃に設定した。混合物を真空下、80℃で2〜3時間撹拌を継続した。
【0070】
乾燥が終わると、真空を止め、混合物にアルゴンガスを流し、60℃に冷却し、IPDI(イソホロンジイソシアネート、5.15g)およびHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、7.62g)を混合物に加えた(3〜6℃の温度の上昇が観察された)。
【0071】
次に、触媒(ジメチルジネオデカノエート錫、5mgの新たに調製した錫触媒(Fomrez UL−28)/アセトン混合物(5ml))を加えた。触媒の添加時に、温度を急速に数度上昇させた。温度上昇を停止させたとき(約70℃)、加熱を80℃に設定し、この温度に到達すると、3時間撹拌した。
【0072】
反応混合物を60℃で一晩撹拌継続し、翌朝測定したNCO含量:1.03%NCOは、反応の完了を示した。
【0073】
その後、132gのアセトンを加えて、プレポリマーを溶解し、10分後、5gのアセトン中の0.45gのトリエチルアミン(TEA)を加えて、DMPAのカルボキシル基およびGS−7Qのスルホニル基を中和した。
【0074】
10分後、乳化工程を以下のように実施した:プレポリマー溶液の全量を温かい水(109g)と混合し、44/56のPUアセトン溶液/水の重量比率の混合物を得た。前記混合物を600rpmで20分間の機械的撹拌により乳化した。
【0075】
その後、得られたエマルションを機械的撹拌機を備えた丸底フラスコ中に入れ、IRにより残留NCOが検出されなくなるまで、エチレンジアミン(EDA、水中10%)およびAPTES((3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、等モル)を加えることにより、鎖延長を実施した。
【0076】
得られた分散体を一晩放置し、室温まで冷却した。翌日、分散体を濾過し、粒径を測定し、残留凝集物を濾過した。最終的に、このエマルションを25重量%の樹脂(Toyobo NZ−1004)と配合し、完全に均一化されるまで撹拌した。
【0077】
実施例2:
Realkyd20112ポリエステルポリオール(70.85g)、Krasol HLBH−P 2000 97%飽和ポリブタジエンポリオール(18.8g)、IXOL M125(4.8g)、Pexalyn(5.45g)、DMPA(0.5g)、GS−7Q(2.01g)アニオン性安定剤およびHN8200(4.22g)非イオン性安定化剤を、凝縮器および機械的撹拌機を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに加えた。混合物を85℃に加熱した。この温度で、固体成分は融解し、均一混合物が得られた。この時点で、高真空(<0.1ミリバール)を適用し、同時に、水を除去するために温度を80℃に設定した。混合物を真空下、80℃で数時間撹拌を継続した。
その後、真空を停止し、フラスコにアルゴンガスを流した。温度を60℃に下げた後、IPDI(イソホロンジイソシアネート、5.98g)およびHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、8.7g)を同様に加えた(3〜6℃の温度の上昇が観察された)。
次に、5mgの新たに調製した錫触媒/アセトン(5ml)を加えた。触媒の添加時に、温度を急速に数度上昇させた。温度上昇を停止させたとき(約70℃)、加熱を80℃に設定し、この温度に到達すると、3時間撹拌した。
反応混合物を60℃で一晩撹拌継続し、翌朝再度測定したNCO含量:0.7%NCOは、反応の完了を示した。その後、148gのアセトンを加えて、プレポリマーを溶解し、10分後、5gのアセトン中の0.37gのトリエチルアミン(TEA)。10分後、乳化を実施した:温かいプレポリマー溶液を128gの温かい水およびTacolyn3509E(10.74g)と混合し、600rpmで20分間撹拌するための、44/56のアセトン溶液/水の比率の混合物を得た。
その後、鎖延長を実施した:得られたエマルションを機械的撹拌機を備えた丸底フラスコ中に入れ、IRによりNCOが検出されなくなるまで、Jeffamine T−403(ポリエーテルトリアミン)(水中の10%)を加えた。
得られた分散体を一晩放置し、室温に冷却した。翌日、分散体を濾過し、粒径を測定し、残留凝集物を濾過した。
【0078】
実施例3:
Realkyd20112ポリエステルポリオール(71.25g)、Krasol HLBH−P 2000 97%飽和ポリブタジエンポリオール(20.90g)、IXOL M125ハロゲン化ポリエーテルポリオール(4.6g)、GS−7Q(2.51g)およびDMPA(0.62g)アニオン性安定剤、HN8200(5.05g)非イオン性安定化剤を、凝縮器および機械的撹拌機を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに加えた。混合物を85℃に加熱した。この温度で、固体成分は融解し、均一混合物が得られた。この時点で、高真空(<0.1ミリバール)を適用し、同時に、水を除去するために温度を80℃に設定した。混合物を真空下、80℃で2〜3時間撹拌を継続した。
【0079】
乾燥が終わると、真空を止め、混合物にアルゴンガスを流し、60℃に冷却し、Desmodur DN980(0.41g)、IPDI(イソホロンジイソシアネート、6.28g)およびHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、9.43g)を混合物に加えた(3〜6℃の温度の上昇が観察された)。
【0080】
次に、触媒(ジメチルジネオデカノエート錫、5mgの新たに調製した錫触媒(Fomrez UL−28)/アセトン混合物(5ml))を加えた。触媒の添加時に、温度を急速に数度上昇させた。温度上昇を停止させたとき(約70℃)、加熱を80℃に設定し、この温度に到達すると、3時間撹拌した。
【0081】
反応混合物を60℃で一晩撹拌継続し、翌朝測定したNCO含量:1.05%NCOは、反応の完了を示した。
【0082】
その後、154gのアセトンを加えて、プレポリマーを溶解し、10分後、5gのアセトン中の0.42gのトリエチルアミン(TEA)を加えて、DMPAのカルボキシル基およびGS−7Qのスルホニル基を中和した。
【0083】
10分後、乳化工程を以下のように実施した:プレポリマー溶液の全量を温かい水(147g)と混合し、44/56のPUアセトン溶液/水の重量比率の混合物を得た。前記混合物を600rpmで20分間の機械的撹拌により乳化した。
【0084】
その後、得られたエマルションを機械的撹拌機を備えた丸底フラスコ中に入れ、IRにより残留NCOが検出されなくなるまで、Lunacure−MXDAを加えることにより、鎖延長を実施した。
【0085】
得られた分散体を一晩放置し、室温まで冷却した。翌日、分散体を濾過し、粒径を測定し、残留凝集物を濾過した。最終的に、このエマルションを25重量%の樹脂(Toyobo NZ−1004)と配合し、完全に均一化されるまで撹拌した。
【0086】
実施例4:
Realkyd20112ポリエステルポリオール(85.7g)、Krasol HLBH−P 2000 97%飽和ポリブタジエンポリオール(22.61g)、GS−7Q(2.51g)、DMPA(0.74g)アニオン性安定剤およびHN8200(4.82g)非イオン性安定化剤を、凝縮器および機械的撹拌機を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに加えた。混合物を85℃に加熱した。この温度で、固体成分は融解し、均一混合物が得られた。この時点で、高真空(<0.1ミリバール)を適用し、同時に、水を除去するために温度を80℃に設定した。混合物を真空下、80℃で数時間撹拌を継続した。
その後、真空を停止し、フラスコにアルゴンガスを流した。温度を60℃に下げた後、Desmodur DN980(0.32g)、IPDI(イソホロンジイソシアネート、6.15g)およびHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート、9.31g)を同様に加えた(3〜6℃の温度の上昇が観察された)。
次に、5mgの新たに調製した錫触媒/アセトン(5ml)を加えた。触媒の添加時に、温度を急速に数度上昇させた。温度上昇を停止させたとき(約70℃)、加熱を80℃に設定し、この温度に到達すると、3時間撹拌した。
反応混合物を60℃で一晩撹拌継続し、翌朝再度測定したNCO含量:1.05%NCOは、反応の完了を示した。その後、140.60gのアセトンを加えて、プレポリマーを溶解し、10分後、5gのアセトン中の0.50gのトリエチルアミン(TEA)。10分後、乳化を実施した:温かいプレポリマー溶液を132gの温かい水と混合し、600rpmで20分間撹拌するための、44/56のアセトン溶液/水の比率の混合物を得た。その後、鎖延長を実施した:得られたエマルションを機械的撹拌機を備えた丸底フラスコ中に入れ、IRによりNCOが検出されなくなるまで、TSPA/EDAを加えた。得られた分散体を一晩放置し、室温に冷却した。翌日、分散体を濾過し、粒径を測定し、残留凝集物を濾過した。最終的に、このエマルションを25重量%の樹脂(Auroren S−6375)と配合し、完全に均一化されるまで撹拌した。
【0087】
実施例5〜8:
実施例1に記載の方法に従って、表1に示す配合の実施例5〜8を調製した。
【表1】
【0088】
実施例1〜8に記載の水系接着剤組成物を、ISO22412準拠動的光散乱(DLS)による粒径およびPDI(多分散指数)、100cm/分のクロスヘッド速度、180°でのインストロン(登録商標」万能材料試験機3166による剥離強度、に関し評価した。接着した材料は、ポリプロピレン/ポリウレタン発泡体(PP/PU発泡体)とした。
【0089】
基材(PU発泡体およびPP;1.5cm X 7cm)を使って、80℃の温度および180°の角度試験で、クリープ試験を実施した。異なる荷重を印加し、24時間の実験後の剥離を観察した。
【0090】
結果を表2に示す。
【表2】

本明細書の当初の開示は、少なくとも下記の態様を包含する。
[1]水性ポリウレタン分散体の製造方法であって、
(1)下記を含む反応混合物からNCO末端ポリウレタンプレポリマーを形成すること、
(a)400〜10000g/mol、好ましくは500g/mol〜4000g/mol、より好ましくは1000g/mol〜3000g/molの数平均分子量Mを有し、少なくとも1種の部分水素添加ポリブタジエンポリオールを含む少なくとも1種のポリオール、
(b)必要に応じて、少なくとも1種の変性ポリエーテルポリオール、好ましくはハロゲン化ポリエーテルポリオール、
(c)少なくとも2個のヒドロキシル基および少なくとも1個の負電荷官能基、好ましくはカルボキシル基またはスルホン酸基を含む、少なくとも1種のアニオン性安定化剤、
(d)少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネートであって、好ましくは少なくとも2種の脂肪族ジおよび/またはトリイソシアネートであり、前記少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネートが少なくとも1種の直鎖脂肪族ポリイソシアネートおよび少なくとも1種の分岐脂肪族ポリイソシアネートを含み、NCO末端ポリウレタンプレポリマーを得るために、前記ポリイソシアネートが前記反応混合物の他の成分のヒドロキシ基に対しモル過剰のイソシアナト基を生ずる合計量で使用される、少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネート、
(2)好ましくは機械的撹拌により、剪断力の適用下で前記プレポリマーを連続的水性相中に分散させ、エマルションを得ること、
(3)前記プレポリマーを少なくとも1種の鎖延長剤と反応させて水性ポリウレタン分散体を得ること、および
(4)前記水性ポリウレタン分散体を、(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂およびロジン系樹脂からなる群から、好ましくはマレイン化ポリオレフィンから選択される非極性接着促進剤と配合すること
を含む方法。
[2]前記少なくとも2種の脂肪族ポリイソシアネートとして、少なくとも1種の直鎖脂肪族ポリイソシアネートおよび少なくとも1種の分岐脂肪族ポリイソシアネートを、2:1〜1.2:1の重量比で含む、[1]に記載の方法。
[3](i)工程(1)の前記反応混合物が、(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂の内の少なくとも1種をさらに含み、および/または(ii)変性ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂の内の少なくとも1種が、工程(2)の前記連続的な水性相中に組み込まれる、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記(変性)ポリオレフィン、ポリアクリル酸樹脂またはロジン系樹脂が、ハロゲン化ポリオレフィン樹脂、ハロゲン化ポリオレフィンマレイン酸樹脂、好ましくは塩素化ポリプロピレンマレイン酸樹脂、ポリオレフィンマレイン酸樹脂、スチレン/エチレン−ブチレンコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン/イソプレンコポリマー、(メタ)アクリレートエステル/(メタ)アクリル酸コポリマー、ロジン酸樹脂、およびロジンエステル樹脂からなる群から選択される、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]有機溶媒を工程(1)で得られた前記プレポリマーに添加すること、および前記プレポリマー/溶媒混合物を連続的な水性相中に分散すること、および工程(3)の後で前記共溶媒を、好ましくは真空蒸留により除去すること、をさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6](1)前記溶媒がアセトンであり、および/または
(2)前記溶媒が、前記プレポリマーの総重量の50重量%まで、好ましくは40〜50重量%、より好ましくは44〜48重量%の量で使用される、[5]に記載の方法。
[7]前記少なくとも1種のポリオール(a)が、少なくとも1種の部分水素添加ポリブタジエンポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールを、好ましくは10:1〜1:10の重量比で含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記少なくとも1種の変性ポリエーテルポリオール、好ましくはハロゲン化ポリエーテルポリオールが、400〜3000g/mol、好ましくは約2000g/molの数平均分子量Mを有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記少なくとも1種のアニオン性安定化剤が、スルホン化ポリグリコールおよび/または2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA)を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10](1)前記ポリイソシアネートが、前記混合ポリオールのヒドロキシ基に対して、モル過剰のイソシアナト基を生ずる合計量で使用され、OH/NCO当量比が好ましくは1:1.1〜1:4であり、および/または
(2)前記ポリイソシアネートが、ジイソシアネートから、好ましくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から選択される、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]工程(2)が、前記ポリウレタンプレポリマーを機械的撹拌により連続的な水性相中、好ましくは水中に乳化することを含む、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記鎖延長剤が、少なくとも2種のNCO反応性基を含み、好ましくは水、ジオールまたはジアミンから、より好ましくはヒドラジン、アルキレンジアミン、シクロアルキレンジアミン、シラン含有ジアミン、アルキルジオール、またはポリエーテルジアミンから、最も好ましくはエチレンジアミンエチレンジアミン、水、イソホロンジアミン、またはポリエーテルジアミンからなる群より選択され、必要に応じて、本質的に前記イソシアネート基の全変換を保証する量で使用される、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13][1]〜[12]のいずれかに記載の方法により得ることができる水性ポリウレタン分散体。
[14][13]に記載の水性ポリウレタン分散体を含む、接着剤またはコーティング組成物。
[15]好ましくは自動車内積層用途における、接着剤またはコーティング組成物としての、[13]に記載の水性ポリウレタン分散体の使用。