(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メチルメタクリレート単位80〜99.99質量%、架橋性単量体単位0.01〜2質量%および共重合可能な他の単量体単位0〜19.99質量%を含んでなる重合体からなる層(a)と、アルキルアクリレート単位70〜99.8質量%、架橋性単量体単位0.2〜10質量%および共重合可能な他の単量体単位0〜29.8質量%を含んでなる重合体からなる層(b)と、メチルメタクリレート単位80〜100質量%および共重合可能な他の単量体単位0〜20質量%を含んでなる重合体からなる層(c)とを少なくとも含み、層(a)、層(b)および層(c)の合計100質量部に対して、層(a)が5〜15質量部、層(b)が40〜60質量部および層(c)が35〜50質量部であり、粒子中心から粒子外表面に向かって層(a)、層(b)、層(c)の順に配されており且つ体積基準平均粒子径が90〜150nmである多層粒子(B)、
および樹脂(A)
を含んで成り、
層(a)における共重合可能な他の単量体単位がアルキルアクリレート単位であり、且つ層(b)における共重合可能な他の単量体単位が芳香族ビニル単量体単位であり、
樹脂(A)が、メチルメタクリレート単位80〜100質量%およびメチルメタクリレート単位以外の他の単量体単位0〜20質量%を含むメタクリル樹脂(a1)であり、メタクリル樹脂(a1)におけるメチルメタクリレート単位以外の他の単量体単位がアルキルアクリレート単位である、
樹脂フィルム。
メチルメタクリレート単位80〜100質量%を有し且つゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した重量平均分子量が90,000g/mol未満である重合体(C)を、多層粒子(B)に対する質量比(C/B)20/80〜55/45で含んで成る、請求項1または2に記載の樹脂フィルム。
メチルメタクリレート80〜99.99質量%、架橋性単量体0.01〜2質量%および共重合可能な他の単量体0〜19.99質量%を含んでなる単量体を重合して層(a)を形成する工程、
アルキルアクリレート70〜99.8質量%、架橋性単量体0.2〜10質量%および共重合可能な他の単量体0〜29.8質量%を含んでなる単量体を重合して層(b)を形成する工程、並びに
メチルメタクリレート80〜100質量%および共重合可能な他の単量体0〜20質量%を含んでなる単量体を重合して層(c)を形成する工程
をこの順に経て、
層(a)、層(b)および層(c)の合計100質量部に対して、層(a)が5〜15質量部、層(b)が40〜60質量部および層(c)が35〜50質量部であり、且つ体積基準平均粒子径が90〜150nmである多層粒子(B)を製造し、
前記多層粒子(B)および樹脂(A)を少なくとも含む混合物を混練してフィルム状に成形することを含み、
層(a)を形成する工程に用いられる共重合可能な他の単量体がアルキルアクリレートであり、且つ層(b)を形成する工程に用いられる共重合可能な他の単量体が芳香族ビニル単量体であり、
樹脂(A)が、メチルメタクリレート単位80〜100質量%およびメチルメタクリレート単位以外の他の単量体単位0〜20質量%を含むメタクリル樹脂(a1)であり、メタクリル樹脂(a1)におけるメチルメタクリレート単位以外の他の単量体単位がアルキルアクリレート単位である、樹脂フィルムの製造方法。
重合体(C)からなる分散用粒子と多層粒子(B)とを混ぜ合わせ、次いでそれを樹脂(A)に配合することによって前記混合物を得ることをさらに含む、請求項5に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂フィルムは、多層粒子(B)および樹脂(A)を含んで成る。
【0014】
多層粒子(B)は、層(a)、層(b)および層(c)を少なくとも含むコアシェル構造の粒子である。
【0015】
多層粒子の層(a)は、メチルメタクリレートに由来する単位(メチルメタクリレート単位と表記することがある。)および架橋性単量体に由来する単位(架橋性単量体単位と表記することがある。)を必須で含み、メチルメタクリレートおよび架橋性単量体と共重合可能な他の単量体に由来する単位(単量体(a)単位と表記することがある。)を必要に応じて含んでなる重合体からなる。
【0016】
層(a)を構成する重合体に含まれるメチルメタクリレート単位の量は、層(a)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは80〜99.99質量%、より好ましくは85〜99質量%、さらに好ましくは90〜98質量%である。
【0017】
層(a)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;アリルメタクリレート、アリルアクリレート、メタリルメタクリレート、メタリルアクリレート、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどの架橋性カルボン酸(メタ)アリルエステル;ジビニルベンゼンなどの多官能エチレン性不飽和単量体を挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
層(a)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体単位の量は、層(a)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.03〜1.5質量%、さらに好ましくは0.05〜1.0質量%である。
【0018】
メチルメタクリレートおよび架橋性単量体と共重合可能な他の単量体(単量体(a)と表記することがある。)は、特に制限されず、例えば、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレートなどのメチルメタクリレートを除くメタクリル酸アルキルエステル;フェニルメタクリレートなどのメタクリル酸アリールエステル;ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アラルキルエステル;;フェニルアクリレートなどのアクリル酸アリールエステル;ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アラルキルエステル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレートなどのアルキルアクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド;アクリル酸、メタクリル酸;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン単量体;N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド単量体などを挙げることができる。単量体(a)は非架橋性単量体であることが好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体(a)は、単量体(a)とメチルメタクリレートとだけで共重合させたときに得られる非架橋の共重合体のガラス転移温度が、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上となるように種類および使用割合を設定することが耐熱性向上などの観点から好ましい。なお、単量体(a)とメチルメタクリレートとだけで共重合させたときに得られる非架橋の共重合体のガラス転移温度は、実測してもよいし、ポリマーハンドブックに記載のデータから推算してもよい。
層(a)を構成する重合体に含まれる単量体(a)単位の量は、層(a)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0〜19.99質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。
【0019】
層(a)の質量は、層(a)、層(b)および層(c)の合計100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下、好ましくは7質量部以上13質量部以下である。層(a)の質量がこの範囲であれば得られる樹脂フィルムの耐熱性に優れる。
【0020】
多層粒子の層(b)は、アルキルアクリレートに由来する単位(アルキルアクリレート単位と表記することがある。)および架橋性単量体に由来する単位(架橋性単量体単位と表記することがある。)を必須で含み、アルキルアクリレートおよび架橋性単量体と共重合可能な他の単量体に由来する単位(単量体(b)単位と表記することがある。)を必要に応じて含んでなる重合体からなる。
【0021】
アルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレートなどを挙げることができる。層(b)を構成する重合体に用いられるアルキルアクリレートは、アルキル基の炭素数が2〜8であるものが好ましい。
層(b)を構成する重合体に含まれるアルキルアクリレート単位の量は、層(b)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは70〜99.8質量%、より好ましくは75〜90質量%、さらに好ましくは78〜86質量%である。
【0022】
層(b)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体としては、層(a)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体として例示したものと同じものを挙げることができる。
層(b)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体単位の量は、層(b)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは1〜6質量%である。
【0023】
アルキルアクリレートおよび架橋性単量体と共重合可能な他の単量体(単量体(b)と表記することがある。)は、特に制限されず、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート;フェニルメタクリレートなどのメタクリル酸アリールエステル;ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アラルキルエステル;フェニルアクリレートなどのアクリル酸アリールエステル;ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アラルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド;アクリル酸、メタクリル酸;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン単量体;N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド単量体などを挙げることができる。単量体(b)は非架橋性単量体であることが好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。単量体(b)は、単量体(b)とアルキルアクリレートとだけで共重合させたときに、得られる非架橋の共重合体のガラス転移温度が、好ましくは0℃以下、より好ましくは−5℃以下となるように種類および使用割合を設定することが耐熱性向上の観点から好ましい。単量体(b)とアルキルアクリレートとだけで共重合させたときに得られる非架橋の共重合体のガラス転移温度は、実測してもよいし、ポリマーハンドブックに記載のデータから推算してもよい。
層(b)を構成する重合体に含まれる単量体(b)単位の量は、層(b)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0〜29.8質量%、より好ましくは0〜25質量%、さらに好ましくは0〜22質量%である。
【0024】
層(b)の質量は、層(a)、層(b)および層(c)の合計100質量部に対して、40質量部以上60質量部以下、好ましくは45質量部以上55質量部以下である。層(b)の質量がこの範囲であると、得られる樹脂フィルムは、表面硬度が高く、また割れ難い。
【0025】
多層粒子の層(c)は、メチルメタクリレートに由来する単位(メチルメタクリレート単位と表記することがある。)を必須で含み、メチルメタクリレートと共重合可能な単量体に由来する単位(単量体(c)単位と表記することがある。)を必要に応じて含んでなる重合体からなる。
【0026】
層(c)を構成する重合体に含まれるメチルメタクリレート単位の量は、層(c)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
【0027】
メチルメタクリレートと共重合可能な単量体(単量体(c)と表記することがある。)としては、層(a)を構成する重合体に含まれることがある単量体(a)として例示したものと同じものを挙げることができる。
層(c)を構成する重合体に含まれる単量体(c)単位の量は、層(c)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。
【0028】
層(c)の質量は、層(a)、層(b)および層(c)の合計100質量部に対して、35質量部以上50質量部以下、好ましくは37質量部超45質量部以下である。層(c)の質量がこの範囲であると、得られる樹脂フィルムは、表面硬度が高い。
【0029】
層(a)、層(b)および層(c)は、粒子中心から粒子外表面に向かって層(a)、層(b)、層(c)の順に配されている。なお、層(a)、層(b)および層(c)が、この順に配されていれば、層(a)の内側、層(a)と層(b)との間、および層(b)と層(c)との間の少なくとも一つに、別の層(d)が少なくとも1つ配されていてもよい。層(d)は、本発明の主旨に反しない範囲において、層(a)を構成する重合体と同じ重合体、層(b)を構成する重合体と同じ重合体、層(c)を構成する重合体と同じ重合体、またはそれらとは別の重合体のいずれかであることができる。例えば、層(a)の内側に、層(b)を構成する重合体と同じ重合体からなる層(d)を配して、層(d)−層(a)−層(b)−層(c)の順に4層配してもよいし、層(a)と層(b)との間に、層(c)を構成する重合体と同じ重合体からなる層(d)を配して、層(a)−層(d)−層(b)−層(c)の順に4層配してもよい。本発明に用いられる多層粒子は、層(a)−層(b)−層(c)の順に3層配される構造であることが好ましい。
【0030】
本発明に用いる多層粒子(B)は、体積平均粒子径が90〜150nm、好ましくは93〜140nm、より好ましくは95〜130nmである。体積平均粒子径D
vは、光散乱光法によって測定される体積基準粒子径分布に基づいて算出される算術平均値(D
v=sΣ(vd)/Σ(v))である。dは粒径区分の代表値であり、vは粒径区分ごとの体積基準パーセントである。多層粒子の粒子径がこの範囲にあると、得られる樹脂フィルムの曲げ白化耐性を高くできる。なお、多層粒子(B)は、樹脂フィルムの中で粒子の形態を維持していることが好ましい。多層粒子(B)の平均粒子径は、例えば、後述する乳化重合法によって多層粒子(B)を製造する場合、乳化剤の量を変更することによって調節することができ、これに加えて重合開始剤の量、各層を構成する重合体を得るための単量体の供給速度等を変更することによって微調節することができる。
【0031】
本発明に用いる多層粒子(B)は、その製造方法によって特に制限はないが、乳化重合法で得られるものが好ましい。本発明に用いる多層粒子(B)は、例えば、次のような乳化重合法で得ることができる。先ず、層(a)を構成する重合体を得るための単量体を乳化重合して層(a)からなるシード粒子を得、このシード粒子の存在下に層(b)を構成する重合体を得るための単量体を乳化重合してシード粒子の表面に層(b)を被覆させて2層コアシェル粒子を得、この2層コアシェル粒子の存在下に、層(c)を構成する重合体を得るための単量体を乳化重合して2層コアシェル粒子の表面に層(c)を被覆させて、層(a)−層(b)−層(c)の順に3層配された構造の多層粒子を得ることができる。なお、各層を構成する重合体を得るための単量体は、一括して反応系に供給してもよいし、徐々に反応系に供給してもよい。
【0032】
乳化重合法に用いられる乳化剤としては、例えば、アニオン乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ノニオン乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなど;ノニオン・アニオン乳化剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩;を挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ノニオン乳化剤およびノニオン・アニオン乳化剤の例示化合物におけるエチレンオキシド単位の平均繰返し単位数は、乳化剤の発泡性が極端に大きくならないようにするために、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
多層粒子(B)の平均粒子径を本発明で規定する範囲内とするために、例えば、乳化剤としてノニオン・アニオン乳化剤であるポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムを用いる場合、水100質量部あたり0.05〜0.09質量部であるのが好ましい。また乳化剤としてアニオン乳化剤であるドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムを用いる場合、水100質量部あたり0.25〜0.45質量部であるのが好ましい。乳化剤は、反応系に、水とともに加えてもよいし、各層を構成する重合体を得るための単量体とともに加えてもよい。
【0033】
乳化重合法に用いられる重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩開始剤;パースルホキシレート/有機過酸化物、過硫酸塩/亜硫酸塩などのレドックス開始剤を挙げることができる。
【0034】
乳化重合法に用いられる連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ターピノーレン、ジペンテン、t−テルピネン等のテルペン類;クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマーなどを挙げることができる。これらは1種を単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、n−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤の使用量は、各層を構成する重合体を得るための単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜1.5質量部である。
【0035】
乳化重合法によって多層粒子のラテックスが得られる。このラテックスから必要に応じて多層粒子を単離することができる。多層粒子の単離は、塩析凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法などの公知の方法によって行うことができる。これらの中でも、多層粒子に含まれる不純物を水洗により容易に除去できる点から、塩析凝固法および凍結凝固法が好ましい。なお、凝固工程前にラテックスに混入した異物を除去するため、目開き50μm以下の金網などでラテックスを濾過することが好ましい。
【0036】
樹脂フィルムを製造する際に、多層粒子(B)の凝集を抑え、樹脂(A)への均一な分散を促進するなどのために分散用粒子を、多層粒子(B)とともに、樹脂(A)に配合することが好ましい。分散用粒子としては、例えば、特許文献1や特許文献2などに記載のものを挙げることができる。
【0037】
分散用粒子は、その体積平均粒子径が、好ましくは40〜120nm、より好ましくは50〜100nmである。分散用粒子の体積平均粒子径は、多層粒子の体積平均粒子径よりも小さいことが好ましい。
【0038】
本発明に用いられる分散用粒子は、その製造法によって特に制限されないが、乳化重合法で得られるものが好ましい。
分散用粒子を製造するための乳化重合法に用いられる乳化剤、重合開始剤、および連鎖移動剤としては、多層粒子を製造するための乳化重合法に用いられるものとして例示したものと同じものを挙げることができる。
【0039】
乳化重合法によって分散用粒子のラテックスが得られる。このラテックスから必要に応じて分散用粒子を単離することができる。分散用粒子の単離の方法としては、多層粒子の単離の方法として例示したものと同じものを挙げることができる。
【0040】
多層粒子(B)と分散用粒子は、樹脂(A)に練り込む前に、混合粉末に成しておくことが好ましい。多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末は、例えば、単離された多層粒子と単離された分散用粒子とを乾式混合するによって、または多層粒子のラテックスと分散用粒子のラテックスとを混ぜ合わせ、次いで該混合ラテックスから塩析凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法などの公知の方法で取り出すことによって得ることができる。混合粉末は、分散用粒子が多層粒子(B)の表面に塗された状態になっていることが好ましい。そのような状態の混合粉末は、多層粒子のラテックスと分散用粒子のラテックスとを混ぜ合わせ、次いで該混合ラテックスから公知の方法で取り出すことによって、効率的に得ることができる。
【0041】
分散用粒子の量は、前記混合粉末の質量に対して、好ましくは20〜55質量%であり、より好ましくは25〜50質量%である。多層粒子の量は、前記混合粉末の質量に対して、好ましくは45〜80質量%であり、より好ましくは50〜75質量%である。多層粒子と分散用粒子との質量比は45:55〜80:20が好ましい。
【0042】
多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末は、樹脂(A)との溶融混練において均一に分散させ易いという観点から、多層粒子(B)および分散用粒子が複数集まって軟凝集体になっていることが好ましい。この軟凝集体の体積平均粒子径は、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。この軟凝集体は、多層粒子どうしが直接に接する状態になっていてもよいし、分散用粒子が多層粒子(B)の間に介在する状態になっていてもよい。
多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末は、嵩比重が、好ましくは0.4〜0.6g/cm
3である。嵩比重は、メスシリンダーを用いたタッピングなしの値である。混合粉末の嵩比重がこの範囲にあると、樹脂(A)への多層粒子(B)の分散性が良くなる。
【0043】
本発明において用いられることがある分散用粒子は、重合体(C)から成るものであることが好ましい。
重合体(C)は、メチルメタクリレートに由来する単位(メチルメタクリレート単位と表記することがある。)を必須で含み、メチルメタクリレートと共重合可能な単量体に由来する単位(単量体(d)単位と表記することがある。)を必要に応じて含んでなるものである。重合体(C)は非架橋重合体であることが好ましい。
分散用粒子を構成する重合体(C)に含まれるメチルメタクリレート単位の量は、重合体(C)の質量に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%である。
【0044】
メチルメタクリレートと共重合可能な単量体(単量体(d)と表記することがある。)としては、層(a)を構成する重合体に含まれることがある単量体(a)として例示したものと同じものを挙げることができる。
分散用粒子を構成する重合体(C)に含まれる単量体(d)単位の量は、重合体(C)の質量に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜18質量%、さらに好ましくは0〜15質量%である。
【0045】
重合体(C)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した重量平均分子量が、好ましくは90,000g/mol未満、より好ましくは70,000〜89,000g/molである。重量平均分子量は、標準ポリメチルメタクリレート換算の分子量である。重合体(C)の重量平均分子量は、重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを変えることで調節できる。
重合体(C)から成る分散用粒子は、多層粒子(B)とともに樹脂(A)に配合すると、重合体(C)と樹脂(A)とが相溶して、樹脂フィルム中において粒子の形態を成さないものであることが好ましい。分散用粒子として配合される重合体(C)の量は、多層粒子(B)に対して質量比(C/B)で、好ましくは20/80〜55/45である。
【0046】
本発明に用いられる樹脂(A)は、フィルム成形可能な重合体または重合体組成物であれば、特に制限されない。樹脂(A)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体などのメタクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィンゴムなどを挙げることができる。これらは、フィルム成形可能である限りにおいて、1種を単独で若しくは2種以上を混ぜ合わせて用いることができる。
【0047】
本発明に好ましく用いられる樹脂(A)は、メタクリル樹脂であり、より好ましくは、メチルメタクリレートに由来する単位(メチルメタクリレート単位と表記することがある。)をメタクリル樹脂(a1)の質量に対して80〜100質量%、好ましくは85〜100質量%含み、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した重量平均分子量が90,000g/mol以上、好ましくは90,000〜500,000g/molであるメタクリル樹脂(a1)である。重量平均分子量は、標準ポリメチルメタクリレート換算の分子量である。
【0048】
メタクリル樹脂(a1)は、メチルメタクリレート以外の単量体に由来する単位(単量体(e)単位と表記することがある。)を含んでいてもよい。
メチルメタクリレート以外の単量体(単量体(e)と表記することがある。)としては、層(a)を構成する重合体に含まれることがある単量体(a)として例示したものと同じものを挙げることができる。メタクリル樹脂(a1)に含まれることがある単量体(e)単位の量は、メタクリル樹脂(a1)の質量に対して、0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%である。
【0049】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(a1)の製造方法は特に制限されない。例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法などの公知の重合法によって製造することができる。所望の特性値(例えば、重量平均分子量など)を有するメタクリル樹脂は、重合条件を調節することによって、具体的には、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量などを調節することによって得ることができる。このような重合条件の調節は当業者において慣用された技術である。
【0050】
メタクリル樹脂(a1)の製造において、ラジカル重合法を用いる場合、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法を選択することが可能である。かかる重合方法において、生産性および耐熱分解性の観点から、懸濁重合法、塊状重合法で行うことが好ましい。塊状重合法は連続流通式で行うことが好ましい。重合反応は、重合開始剤と、所定の単量体と、必要に応じて連鎖移動剤などとを用いて行われる。
【0051】
本発明に係る樹脂フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、蛍光体などの添加剤を含有していてもよい。
【0052】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単独で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などを挙げることができる。これらの中、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤を質量比で0.2/1〜2/1で使用するのが好ましく、0.5/1〜1/1で使用するのがより好ましい。
【0053】
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRUGAFOS168)、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサー3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP−36)などを挙げることができる。
【0054】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANOX1076)などが好ましい。
【0055】
熱劣化防止剤としては、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジt−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
【0056】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物であり、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われるものである。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などを挙げることができる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、または波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値ε
maxが100dm
3・mol
-1cm
-1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
【0057】
ベンゾトリアゾール類は紫外線被照による着色などの光学特性低下を抑制する効果が高いので、本発明の樹脂フィルムを光学用途に適用する場合に用いる紫外線吸収剤として好ましい。ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、2,2‘−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェノール](ADEKA社製;LA−31)などが好ましい。
【0058】
また、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値ε
maxが1200dm
3・mol
-1cm
-1以下である紫外線吸収剤は、得られる樹脂フィルムの変色を抑制できる。このような紫外線吸収剤としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などを挙げることができる。
これら紫外線吸収剤の中、紫外線被照による樹脂劣化が抑えられるという観点からベンゾトリアゾール類が好ましく用いられる。
【0059】
また、波長380nm以下の短波長を効率的に吸収したい場合は、トリアジン類の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。このような紫外線吸収剤としては、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)や、その類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;TINUVIN477やTINUVIN460)などを挙げることができる。
【0060】
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値ε
maxは、次のようにして測定する。シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nm、光路長1cmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(M
UV)と、測定された吸光度の最大値(A
max)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値ε
maxを算出する。
ε
max=[A
max/(10×10
-3)]×M
UV
【0061】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類を挙げることができる。
【0062】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などを挙げることができる。
【0063】
離型剤としては、成形品の金型からの分離を容易にする機能を有する化合物である。離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどを挙げることができる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、高級アルコール類/グリセリン脂肪酸モノエステルの質量比が、2.5/1〜3.5/1の範囲で使用するのが好ましく、2.8/1〜3.2/1の範囲で使用するのがより好ましい。
【0064】
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子を用いることができる。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤は、平均重合度が3,000〜40,000であることが好ましく、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。具体的には、三菱レイヨン社製メタブレン−Pシリーズや、ダウケミカル社製のパラロイドシリーズを挙げることができる。本発明の樹脂フィルムに配合する高分子加工助剤の量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。配合量が0.1質量部以上であると良好な加工特性が得られ、配合量が5質量部以下であると表面平滑性が良好である。
【0065】
有機色素としては、樹脂に対しては有害とされている紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
蛍光体として、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などを挙げることができる。
【0066】
これらの添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤は、樹脂(A)を製造する際に添加してもよいし、製造された樹脂(A)に添加してもよいし、後述するフィルム製造用樹脂コンパウンドを調製する際に添加してもよい。本発明の樹脂フィルムに含有される添加剤の合計量は、フィルムの外観不良を抑制する観点から、樹脂(A)に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0067】
本発明の樹脂フィルムを製造するために、樹脂コンパウンドを用いることができる。フィルム製造用樹脂コンパウンドは、例えば、多層粒子(B)を樹脂(A)に混練することによって得ることができる。多層粒子(B)は分散用粒子と混ぜ合わせて混合粉末に成した後に、樹脂(A)と混練することが好ましい。混練は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合装置または混練装置を使用して行なうことができる。これらのうち、二軸押出機が好ましい。混合・混練時の温度は、使用する樹脂(A)の溶融温度などに応じて適宜調節することができるが、好ましくは110℃〜300℃である。
【0068】
フィルム製造用樹脂コンパウンド及び本発明の樹脂フィルムにおける樹脂(A)と多層粒子(B)との質量比{(A):(B)}は、好ましくは1:99〜99:1、より好ましくは10:90〜50:50、さらに好ましくは20:80〜40:60である。
【0069】
フィルム製造用樹脂コンパウンドは、樹脂(A)と多層粒子(B)若しくは多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末との溶融混練を2以上の段階に分けて行うことによっても得ることができる。例えば、樹脂(A)の一部と多層粒子(B)若しくは多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末とを溶融混練して、目的とする割合よりも多い量で多層粒子(B)を含有するマスターバッチを得、次いでこのマスターバッチと樹脂(A)の残部とを溶融混練して目的とする割合で多層粒子(B)を含有する樹脂コンパウンドを得ることができる。マスターバッチを経る方法によると、多層粒子(B)の取り扱い性が向上し、多層粒子(B)を樹脂(A)に均一に分散させやすい。
【0070】
フィルム製造用樹脂コンパウンドは、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1〜6g/10分、さらに好ましくは0.5〜5g/10分、最も好ましくは1.0〜3g/10分である。
【0071】
フィルム製造用樹脂コンパウンドは、1.0mm厚さのヘイズが、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.7%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
【0072】
上記のようなフィルム製造用樹脂コンパウンドは、ペレット、顆粒、粉末などの任意の形態にすることができる。
【0073】
本発明に係る樹脂フィルムは、その製法によって特に限定されない。好ましい製法として、多層粒子(B)と、重合体(C)から成る分散用粒子とを混ぜ合わせて混合粉末を得、該混合粉末を樹脂(A)に混練して、樹脂(A)と多層粒子(B)と重合体(C)とを含有するフィルム用樹脂コンパウンドを得、該フィルム用樹脂コンパウンドをフィルム状に成形することを挙げることができる。
フィルム状に成形する方法としては、例えば、溶液キャスト法、溶融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などを挙げることができる。これらのうち、押出成形法が好ましい。押出成形法によれば、透明性に優れ、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れた樹脂フィルムを得ることができる。押出機から吐出される樹脂コンパウンドの温度は、好ましくは160〜280℃、より好ましくは220〜270℃に設定する。
【0074】
押出成形法のうち、良好な表面平滑性、良好な鏡面光沢、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、フィルム製造用樹脂コンパウンドを溶融状態でTダイから押出し、次いでそれを二つ以上の鏡面ロールまたは鏡面ベルトで挟持して成形することを含む方法が好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトは、金属製であることが好ましい。一対の鏡面ロールまたは鏡面ベルトの間の線圧は、好ましくは10kg/cm以上、より好ましくは30kg/cm以上である。
【0075】
また、鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は共に130℃以下であることが好ましい。また、一対の鏡面ロール若しくは鏡面ベルトは、少なくとも一方の表面温度が60℃以上であることが好ましい。このような表面温度に設定すると、押出機から吐出される樹脂コンパウンドを自然放冷よりも速い速度で冷却することができ、表面平滑性に優れ且つヘイズの低い本発明の樹脂フィルムを製造し易い。
【0076】
本発明の樹脂フィルムは少なくとも一方向に延伸処理を施したものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、一軸延伸、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法などを挙げることができる。延伸時の温度は、均一に延伸でき、高い強度のフィルムが得られるという観点から、100〜200℃が好ましく、120℃〜160℃がより好ましい。延伸は、通常、長さ基準で100〜5000%/分で行われる。面積延伸倍率は、好ましくは1.5〜8倍である。延伸の後、熱固定を施したり、フィルムを弛緩したりすることにより、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。
【0077】
本発明の樹脂フィルムの厚さは、通常、1μm以上200μm以下、好ましくは10μm以上50μm以下、より好ましくは15μm以上40μm以下である。
【0078】
本発明の樹脂フィルムの表面に機能層を設けてもよい。機能層としては、ガスバリア層、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、防眩層、静電気防止層、防汚層、微粒子などの易滑性層、接着層等を挙げることができる。これらの層は、化学蒸着法、物理蒸着法、塗布法などの公知の方法で形成することができる。
【0079】
本発明の樹脂フィルムは、鉛筆硬度が高く、耐熱性が高い事を特徴とし、様々な分野において用いることができる。例えば、位相差フィルム、偏光子保護フィルム、液晶保護板、携帯型情報端末の表面材、携帯型情報端末の表示窓保護フィルム、導光フィルム、銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブを表面に塗布した透明導電フィルム、帯電防止フィルム、各種ディスプレイの前面板用途、IRカットフィルム、防犯フィルム、飛散防止フィルム、加飾フィルム、金属加飾フィルム、太陽電池のバックシート、フレキシブル太陽電池用フロントシート、シュリンクフィルム、インモールドラベル用フィルム、ガスバリアフィルムなどに使用することができる。中でも好適には、自動車の内装材や家電品の外装材として使用する事ができる。
【0080】
本発明の積層体は、本発明の樹脂フィルムからなる層を有してなる。本発明の積層体は、例えば、本発明の樹脂フィルムを他の材料からなる物品に圧し付けることによって、フィルム製造用樹脂コンパウンドの溶液を他の材料からなる物品に塗布することによって、フィルム製造用樹脂コンパウンドを他の材料からなる物品に被覆溶融成形することによって、フィルム製造用樹脂コンパウンドと他の樹脂材料とを共押出成形することによって、得ることができる。なお、本発明の積層体は、その一実施形態として積層フィルムを含む。
他の材料としては、特に制限はなく、木製材料、紙材料、布材料、金属材料、樹脂材料、セラミックス材料などを挙げることができる。他の樹脂材料としては、ポリカーボネート系重合体、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂などを挙げることができる。他の材料の形態は、フィルム、板、棒、球体、直方体などに限られず、種々の形態であることができる。
【0081】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0082】
(粒子径測定)
堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA―950V2を用いて測定した。
【0083】
(重量平均分子量:Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリメチルメタクリレートの分子量に換算した値を算出した。
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC−8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤: テトラヒドロフラン
溶離剤流量: 0.35ml/分
カラム温度: 40℃
【0084】
(耐熱性)
ISO−306−B50に準拠して、ビカット軟化温度(VST)を測定した。
【0085】
(曲げ白化耐性)
厚さ100μmのフィルムを、常温(23℃)で90度に折り曲げて、折り曲げ部分における白化の有無を目視で観察し、以下の指標で評価した。
○:白化無し
×:白化有り
【0086】
(表面硬度)
JIS K 5400に準拠して鉛筆硬度試験を行った。
【0087】
(共押出成形性)
メタクリル樹脂(クラレ社製パラペットEH)と実施例または比較例で得られた樹脂組成物とを共押出成形して、厚さ3mmのメタクリル樹脂からなる層と厚さ50μmの樹脂組成物からなる層とを有する板状積層体を製造した。前記積層体を目視観察して、フローマークおよび界面における白化の有無を調べ、以下の指標で評価した。
○:フローマークおよび層界面の白化のいずれも生じていない。
×:フローマークまたは層界面の白化が生じていた。
【0088】
[多層粒子(B−1)の製造]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水150質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.10質量部および炭酸ナトリウム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.01質量部を投入し、5分間攪拌した。その後、質量比93.9/6.1/0.2のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびアリルメタクリレートからなる混合物10質量部を50分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約30分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.05質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比82.2/17.8/4.0のn−ブチルアクリレート、スチレンおよびアリルメタクリレートからなる混合物50質量部を90分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.04質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.3のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物40質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。体積平均粒子径110nmの多層粒子(B−1)を含むラテックスを得た。表1に多層粒子(B−1)の特性等をまとめて示す。
【0089】
[多層粒子(B−2)の製造]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水150質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.11質量部および炭酸ナトリウム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.012質量部を投入し、5分間攪拌した。その後、質量比93.9/6.1/0.2のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびアリルメタクリレートからなる混合物12質量部を50分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約30分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.053質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比82.2/17.8/4.0のn−ブチルアクリレート、スチレンおよびアリルメタクリレートからなる混合物53質量部を90分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.038質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.3のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物38質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。体積平均粒子径100nmの多層粒子(B−2)を含むラテックスを得た。表1に多層粒子(B−2)の特性等をまとめて示す。
【0090】
[多層粒子(B−3)の製造]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水150質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.08質量部および炭酸ナトリウム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.035質量部を投入し、5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.2/0.1のメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、アリルメタクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物35質量部を50分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約30分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.045質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比82.2/17.8/2.0のn−ブチルアクリレート、スチレンおよびアリルメタクリレートからなる混合物45質量部を90分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.02質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.2のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物20質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。体積平均粒子径145nmの多層粒子(B−3)を含むラテックスを得た。表1に多層粒子(B−3)の特性等をまとめて示す。
【0091】
[多層粒子(B−4)の製造]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水150質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.03質量部および炭酸ナトリウム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.01質量部を投入し、5分間攪拌した。その後、質量比93.9/6.1/0.2のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびアリルメタクリレートからなる混合物10質量部を50分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約30分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.05質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比82.2/17.8/4.0のn−ブチルアクリレート、スチレンおよびアリルメタクリレートからなる混合物50質量部を90分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.04質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.3のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物40質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。体積平均粒子径220nmの多層粒子(B−4)を含むラテックスを得た。表1に多層粒子(B−4)の特性等をまとめて示す。
【0092】
[多層粒子(B−5)の製造]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水150質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.10質量部および炭酸ナトリウム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.05質量部を投入し、5分間攪拌した。その後、質量比82.2/17.8/4.0のn−ブチルアクリレート、スチレンおよびアリルメタクリレートからなる混合物50質量部を90分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.05質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.3のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物50質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。体積平均粒子径110nmの多層粒子(B−5)を含むラテックスを得た。表1に多層粒子(B−5)の特性等をまとめて示す。
【0093】
[多層粒子(B−6)の製造]
多層粒子(B−4)の製造方法において、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムの量を0.055質量部に変更した以外は多層粒子(B−4)の製造方法と同じ操作を行い、体積平均粒子径140nmの多層粒子(B−6)を含むラテックスを得た。表1に多層粒子(B−6)の特性等をまとめて示す。
【0094】
[分散用粒子(C−1)の製造]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水150質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.12質量部および炭酸ナトリウム0.1質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.01質量部を投入し、5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.3のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物100質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約30分間反応させた。重量平均分子量(Mw)が80,000g/molの非架橋重合体からなる体積平均粒子径90nmの分散用単層粒子(C−1)を含むラテックスを得た。表1に多層粒子(C−1)の特性等をまとめて示す。
【0095】
[メタクリル系樹脂(A−1)の製造]
メチルメタクリレート94質量%およびメチルアクリレート6質量%からなる混合物を懸濁重合法で反応させた。懸濁粒子を凝固させて、脱水し、乾燥することによって、GPCによる重量平均分子量(Mw)が160,000g/molのメタクリル系樹脂(A−1)を得た。
【0097】
<実施例1>
多層粒子(B−1)60質量部を含むラテックスと分散用粒子(C−1)40質量部を含むラテックスとを混合した。得られた混合ラテックスを−30℃で4時間かけて凍結させた。凍結物を2倍量の90℃の水に投入し、溶解させて、スラリーを得た。該スラリーを20分間90℃に維持し、次いで脱水した。得られた固形分を80℃で乾燥させて嵩比重0.52g/cm
3の樹脂粉末(b1)を得た。この樹脂粉末(b1)を、40φベント付き単軸押出機を用い250℃にて成形してペレット状の樹脂組成物(1)を得た。該樹脂組成物(1)を射出成形し、得られた成形体(1)のビカット軟化温度(VST1)を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
樹脂粉末(b1)100質量部とメタクリル樹脂(A−1)200質量部とをスーパーミキサーにて混合させた。得られた混合物を40φベント付き単軸押出機を用い240℃にて成形してペレット状の樹脂組成物(2)を得た。
樹脂組成物(2)を射出成形し、得られた成形体(2)のビカット軟化温度(VST2)を測定した。結果を表2に示す。
【0099】
樹脂組成物(2)について曲げ白化耐性、鉛筆硬度および共押出成形性の評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0100】
<実施例2>
多層粒子(B−1)を含むラテックスを多層粒子(B−2)を含むラテックスに変えた以外は実施例1と同じ方法で評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0101】
<実施例3>
多層粒子(B−1)を含むラテックスを多層粒子(B−6)を含むラテックスに変えた以外は実施例1と同じ方法で評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0102】
<比較例1>
多層粒子(B−1)を含むラテックスを多層粒子(B−3)を含むラテックスに変えた以外は実施例1と同じ方法で評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0103】
<比較例2>
多層粒子(B−1)を含むラテックスを多層粒子(B−4)を含むラテックスに変えた以外は実施例1と同じ方法で評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0104】
<比較例3>
多層粒子(B−1)を含むラテックスを多層粒子(B−5)を含むラテックスに変えた以外は実施例1と同じ方法で評価試験を行った。結果を表2に示す。