特許第6784947号(P6784947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6784947
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】美肌用飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/195 20160101AFI20201109BHJP
【FI】
   A23L33/195
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-516771(P2020-516771)
(86)(22)【出願日】2019年10月30日
(86)【国際出願番号】JP2019042594
【審査請求日】2020年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2019-89767(P2019-89767)
(32)【優先日】2019年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】今井 康行
(72)【発明者】
【氏名】平橋 智裕
【審査官】 田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103656627(CN,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2019−0005369(KR,A)
【文献】 中国特許出願公開第108419838(CN,A)
【文献】 特表2017−533254(JP,A)
【文献】 特開2001−061452(JP,A)
【文献】 特開2000−253853(JP,A)
【文献】 特開2016−214094(JP,A)
【文献】 加藤敏光,スピルリナの体調調節機能,New Food Industry,2003年,Vol.45, No.5,p.17-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/40−5/49
A23L 31/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィコシアニンを有効成分とし、肌の保湿性向上用飲食品である、美肌用飲食品。
【請求項2】
フィコシアニンを有効成分とし、肌の弾力性向上用飲食品である、美肌用飲食品。
【請求項3】
フィコシアニンを有効成分とし、肌のシワ改善用飲食品である、美肌用飲食品。
【請求項4】
フィコシアニンを有効成分とし、肌のはり改善用飲食品又は肌のつや改善用飲食品である、美肌用飲食品。
【請求項5】
フィコシアニンが藍藻類由来のフィコシアニンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の美肌用飲食品。
【請求項6】
藍藻類がスピルリナ属の藍藻類である、請求項5に記載の美肌用飲食品。
【請求項7】
フィコシアニンが、C−フィコシアニンを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の美肌用飲食品。
【請求項8】
フィコシアニンが、C−フィコシアニンとアロフィコシアニンとを含有する、請求項7に記載の美肌用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美肌用飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
藍藻類、特にスピルリナ属の藍藻類には、青色を呈するフィコシアニンが含まれていることが知られており、従来からフィコシアニンの生物活性について多くの研究がされている。
例えば、フィコシアニンに膵リパーゼ等のリパーゼの活性を阻害する作用があるとして、フィコシアニンを有効成分とするリパーゼ活性阻害剤が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
また、フィコシアニンが大豆蛋白質よりも高い血清脂質改善作用を有するとして、フィコシアニンを有効成分とする血清脂質低下剤が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−359638号公報
【特許文献2】特開2003−137805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フィコシアニンを経口摂取した場合に、フィコシアニンが美肌効果を示すことはこれまでに知られていない。
【0005】
本発明は、美肌効果のある飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、フィコシアニンを経口摂取した場合に、フィコシアニンが、美肌効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]フィコシアニンを有効成分として含有する美肌用飲食品。
【0008】
[2]フィコシアニンが藍藻類由来のフィコシアニンである、前記[1]に記載の美肌用飲食品。
【0009】
[3]藍藻類がスピルリナ属の藍藻類である、前記[2]に記載の美肌用飲食品。
【0010】
[4]フィコシアニンが、C−フィコシアニンを含有する、前記[1]から[3]のいずれか一項に記載の美肌用飲食品。
【0011】
[5]フィコシアニンが、C−フィコシアニンとアロフィコシアニンとを含有する、前記[4]に記載の美肌用飲食品。
【0012】
[6]美肌用飲食品が肌の保湿性向上用飲食品である、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載の美肌用飲食品。
【0013】
[7]美肌用飲食品が肌の弾力性向上用飲食品である、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載の美肌用飲食品。
【0014】
[8]美肌用飲食品が肌のシワ改善用飲食品である、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載の美肌用飲食品。
【0015】
[9]美肌用飲食品が肌のシミ改善用飲食品である、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載の美肌用飲食品。
【0016】
[10]美肌用飲食品が肌のはり改善用飲食品又は肌のつや改善用飲食品である、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載の美肌用飲食品。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、美肌効果のある飲食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、フィコシアニンの水分蒸散量の抑制に対する効果を示す図である。
図2図2は、VAS法で使用する肌の状態を評価するための評価シートの一例を示す図である。
図3図3は、フィコシアニンの肌のはりに対する効果を示す図である。
図4図4は、フィコシアニンの肌のつやに対する効果を示す図である。
図5図5は、フィコシアニンの肌のしっとり感に対する効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の美肌用飲食品について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
【0020】
(美肌用飲食品)
本発明の美肌用飲食品は、フィコシアニンを有効成分とする。
フィコシアニンは、色素タンパク質であり、発色団としてフィコシアノビリンを有する。フィコシアニンは、フィコシアノビリンとタンパクが結合した構造を有する。
本発明の係るフィコシアニンとしては、例えば、藍藻類由来のフィコシアニン、紅藻類由来のフィコシアニン、クリプト藻由来のフィコシアニン等の藻類由来のフィコシアニン等が挙げられ、中でも、大量に採取できることから藍藻類由来のフィコシアニンが好ましい。
藍藻類としては、例えば、スピルリナ(Spirulina)属、アルスロスピラ(Arthrospira)属、アファニゾメノン(Aphanizomenon)属、フィッシェレラ(Fisherella)属、アナベナ(Anabaena)属、ネンジュモ(Nostoc)属、シネコキスチス(Synechocystis)属、シネココッカス(Synechococcus)属、トリポスリクス(Tolypothrix)属、スイゼンジノリ(Aphanothece)属、マスティゴクラディス(Mastigoclaus)属、プルロカプサ(Pleurocapsa)属等の藍藻類が挙げられる。中でも、工業的規模で生産され、その安全性が確認されているスピルリナ属およびアルスロスピラ属の藍藻類が好ましく、スピルリナ属の藍藻類がより好ましい。
また、フィコシアニン調製の原料として、生の藍藻類を使用することもできるし、乾燥処理した藍藻類を使用してもよい。藍藻類の乾燥品は、生の藍藻類を常法に従い乾燥品としてもよく、市販の乾燥品を使用することもできる。
【0021】
本発明の係るフィコシアニンとしては、例えば、C−フィコシアニン、R−フィコシアニン、アロフィコシアニンが挙げられるが、品質、安全性、あるいは入手容易性等の観点から、フィコシアニンとして、C−フィコシアニンを含有することが好ましい。したがって、本発明の好ましい実施態様としては、C−フィコシアニンを主成分として含有する美肌用飲食品が挙げられる。
さらに好ましい実施態様としては、C−フィコシアニンとアロフィコシアニンとを含有する美肌用飲食品が挙げられる。例えば、スピルリナ属の藍藻類から抽出することにより得られるC−フィコシアニンとアロフィコシアニンからなるフィコシアニンの混合物を美肌用飲食品に含有させることができる。
【0022】
フィコシアニンは、例えば、藍藻類を水やリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の緩衝液中に懸濁し、藍藻類中のフィコシアニンを抽出することにより得ることができる。
フィコシアニンを抽出する方法としては、特に制限は無く、一般に知られている方法を用いることができる。
抽出方法の好ましい実施態様としては、例えば、特開2006−230272号公報に記載の抽出方法を挙げることができる。具体的には、下記抽出方法(i)で記載する抽出方法が挙げられる。係る抽出方法(i)により、高純度であざやかな色調のフィコシアニンを得ることができる。
【0023】
<抽出方法(i)>
抽出方法(i)は、
藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る第一工程と、
該抽出液中でカルシウム塩とリン酸塩とを反応させてリン酸カルシウムを生成させると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得る第二工程と、
該抽出液から藍藻類の残渣及び吸着物を除去する第三工程と、を有する。
【0024】
さらに上記抽出方法(i)が下記抽出方法(ii)であると、より好ましい。
<抽出方法(ii)>
抽出方法(ii)は、
藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る第一工程と、
該抽出液中でカルシウム塩とリン酸塩とを反応させてリン酸カルシウムを生成させると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得る第二工程と、
該抽出液から藍藻類の残渣及び吸着物を除去する第三工程と、
第三工程より前に、抽出液にキレート剤を含有させる工程と、を有する。
【0025】
上記抽出方法(i)又は(ii)を用いることにより、品質のよいフィコシアニンを藍藻類から抽出することができる。
特にスピルリナ属の藍藻類に対して、上記抽出方法(i)又は(ii)を用いることにより、C−フィコシアニンとアロフィコシアニンとの混合比が良好な品質のよいフィコシアニンを抽出することができる。
尚、上記抽出方法において、抽出条件を適宜選択することにより、C−フィコシアニンとアロフィコシアニンとの混合比を所望の範囲とするよう調整するとよい。
【0026】
本発明の美肌用飲食品に含有されるフィコシアニンの種類は、すべてC−フィコシアニンであってもよい。
あるいは、アロフィコシアニンを含有し、C−フィコシアニンとアロフィコシアニンとの混合物を飲食品に含有させてもよい。
C−フィコシアニンとアロフィコシアニンとの混合比は、例えば、質量比で3〜9.5:0.5〜7が好ましく、6〜9.5:0.5〜4がより好ましく、7〜8:2〜3がさらに好ましい。
【0027】
本発明に係るフィコシアニンは、下記実施例で示すように、美肌効果を示す。特に、肌の保湿性や弾力性を向上させることができる。
フィコシアニンにより、肌の保湿機能や弾力機能などを高めることができ、肌を美しくする効果(美肌効果)を奏する。
ここで、肌を美しくする具体例としては、例えば、水分蒸散量(TEWL)の増加を抑制したり、角質水分量を増加したり、皮膚粘弾性を増加したりすることなどが挙げられる。また、シワを改善したり、肌のキメをよくしたり、シミを改善したりするなども挙げられる。さらに、肌の乾燥感を防ぐ、肌のはりやつやを向上させる、あるいは肌のしっとり感を向上させるといったことも挙げられる。
このように、本発明に係るフィコシアニンは、肌の保湿機能や弾力機能を高めたり、皮膚の粘弾性を向上させることで、肌を美しくすることができる。したがって、本発明のフィコシアニンを含有する飲食品は、経口摂取によって美肌効果を満足させる飲食品として有効に使用することができる。
また、本発明のフィコシアニンを含有する飲食品は、肌の保湿機能や弾力機能が不調である場合にこれを改善して通常の状態に戻す効果のみならず、肌の保湿機能や弾力機能を通常の状態からさらに優れた状態にする効果をも有する。すなわち、本発明の美肌用飲食品は、肌の保湿機能や弾力機能修復用飲食品としてのみならず、肌の保湿機能や弾力機能亢進用飲食品としても用いることができる。またさらに、本発明の美肌用飲食品は、肌の保湿機能や弾力機能低下を予防する効果も奏し得る。つまり、肌の保湿機能や弾力機能が低下はしていないものの、低下する可能性がある場合に予め摂取しておくことで肌の保湿機能や弾力機能の低下を抑制することができる。
【0028】
本発明の美肌用飲食品は、一般飲食品のほか、美肌、又は肌の保湿や弾力の予防や改善を目的とし、必要に応じてその旨を表示した各種飲食品に適用することができる。
例えば、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品等に使用することができる。これらの食品の一部は機能表示が許可された食品であるため、一般の食品と区別することができる。
本発明の美肌用飲食品は、美肌を目的にした飲食品(特に肌の保湿機能や弾力機能向上を目的にした飲食品)として、係る飲食品の製品に、「美肌を維持する」、「肌の潤いを保つ」、「肌の水分を保持する」、「肌のバリア性向上」、「肌の弾力性を維持する」、「肌の乾燥防止」、「シワを防止する」、「シミを防止する」、「シワを改善する」、「シミを改善する」、「肌のはり低下を防止する」、「肌のつや低下を防止する」、「肌のはりを改善する」、「肌のつやを改善する」等の表示が付されていてもよい。
【0029】
本発明の美肌用飲食品の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固形状、液状、ゲル状等であり得る。また例えば、錠剤(チュアブル錠等を含む)、カプセル、ドリンク、ゼリー、顆粒等であり得る。
【0030】
本発明の美肌用飲食品の形態が、例えば、錠剤(タブレットともいう)である場合、フィコシアニンを、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、保存剤、酸化防止剤、等張化剤、緩衝剤、コーティング剤、矯味剤、溶解補助剤、基剤、分散剤、安定化剤、着色剤等の添加剤と適宜組み合わせて、常法に従って調製することができる。
賦形剤としては、でんぷん及びその誘導体(デキストリン、カルボキシメチルスターチ等)、セルロース及びその誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、糖類(乳糖、白糖、ブドウ糖、トレハロース等)等、クエン酸または同塩類、リンゴ酸または同塩類、エチレンジアミン四酢酸または同塩類が挙げられる。
結合剤としては、でんぷん及びその誘導体(アルファー化デンプン、デキストリン等)、セルロース及びその誘導体(エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、糖類(ブドウ糖、白糖等)、エタノール等が挙げられる。
【0031】
崩壊剤としては、でんぷん及びその誘導体(カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ等)、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム等)、トラガント、ゼラチン、寒天等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、酸化チタン、リン酸水素カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ショ糖脂肪酸エステル、食用油脂等が挙げられる。
保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、リン酸塩類(リン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等)、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸グリセリン、糖類等が挙げられる。
酸化防止剤としては、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等)、エリソルビン酸、L−アスコルビン酸、システイン、チオグリセロール、ブチルヒドロキシアニゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスコルビン酸パルミテート、dl−α−トコフェロール等が挙げられる。
等張化剤としては、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、デキストリン、グリセリン、ブドウ糖等が挙げられる。
【0032】
緩衝剤としては、炭酸ナトリウム、塩酸、ホウ酸、リン酸塩(リン酸水素ナトリウム等)等が挙げられる。
コーティング剤としては、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)、セラック、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン類(ポリ−2−ビニルピリジン、ポリ−2−ビニル−5−エチルピリジン等)、ポリビニルアセチルジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコールフタレート、メタアクリレート・メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。
矯味剤としては、糖類(ブドウ糖、白糖、乳糖等)、サッカリンナトリウム、糖アルコール類等が挙げられる。
溶解補助剤としては、エチレンジアミン、ニコチン酸アミド、サッカリンナトリウム、クエン酸、クエン酸塩類、安息香酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン、ポリプレングリコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
基剤としては、脂肪類(豚脂等)、植物油(オリーブ油、ゴマ油等)、動物油、ラノリン酸、ワセリン、パラフィン、樹脂、ベントナイト、グリセリン、グリコール油、等が挙げられる。
分散剤として、アラビアゴム、トラガント、セルロース誘導体(メチルセルロース等)、アルギン酸ナトリウム、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
安定化剤としては、亜硫酸塩類(亜硫酸水素ナトリウム等)、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。
【0033】
本発明の美肌用飲食品は、飲料、食品、飲食品添加物等の製品の成分として使用することができる。
例えば、飲料としては、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。
食品としては、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。
このような各飲食品は、常法によって調製することができる。
種々の形態の飲食品を調製するには、本発明に係るフィコシアニンを任意の食品材料、もしくは他の有効成分、又は食品に許容される添加物(例えば溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、酸味料、甘味料、苦味料、香味剤、pH調整剤、界面活性剤、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、固着剤、分散剤、流動性改善剤、発泡剤、湿潤剤、香科、調味料、風味調整剤、等)等と適宜組み合わせて、常法に従って調製することができる。
上記他の有効成分(生物活性成分)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明に係るフィコシアニンと共通する保湿性を目的とする保湿性成分であっても、肌の美白を目的とする美白性成分などであっても構わない。例えば、アミノ酸、糖、グリセリン等の保湿性成分や、ビタミンA、B、C(アスコルビン酸)、D、E等のビタミン類、コラーゲン、コラーゲンペプチド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、セラミド、プラセンタ、アスタキサンチン等の美白性成分などを本発明の美肌用飲食品に含有させることができる。
【0034】
本発明の美肌用飲食品におけるフィコシアニンの含有量は、食品の種類や成分や形態により異なり、適宜選択されるとよいが、例えば、飲料におけるフィコシアニンの含有量は、その全質量中、該フィコシアニンの固形分換算で、0.01質量%以上であると好ましく、0.06質量%以上であるとより好ましい。また、飲料におけるフィコシアニンの含有量は、その全質量中、該フィコシアニンの固形分換算で、10質量%以下であると好ましく、3質量%以下であるとより好ましい。
また例えば、食品におけるフィコシアニンの含有量は、その全質量中、該フィコシアニンの固形分換算で、0.008質量%以上であると好ましく、0.06質量%以上であるとより好ましい。また、食品におけるフィコシアニンの含有量は、その全質量中、該フィコシアニンの固形分換算で、99質量%以下であると好ましく、70質量%以下であるとより好ましい。
また特に、美肌用飲食品の形態が錠剤である場合は、例えば、錠剤におけるフィコシアニンの含有量は、その全質量中、該フィコシアニンの固形分換算で、2.5質量%以上であると好ましく、20質量%以上であるとより好ましい。また、錠剤におけるフィコシアニンの含有量は、その全質量中、該フィコシアニンの固形分換算で、98質量%以下であると好ましく、70質量%以下であるとより好ましい。
尚、本発明において、フィコシアニンの含有量とは、飲食品中にC−フィコシアニン、R−フィコシアニン、及びアロフィコシアニンから選ばれる2種類以上のフィコシアニンが含有されている場合、これらフィコシアニンの合計量とする。
【0035】
本発明の美肌用飲食品に含有されているフィコシアニンが、C−フィコシアニンとアロフィコシアニンとの混合物である場合、美肌用飲食品におけるC−フィコシアニンとアロフィコシアニンとの含有比としては、特に制限はないが、例えば、質量比で3〜9.5:0.5〜7が好ましく、6〜9.5:0.5〜4がより好ましく、7〜8:2〜3がさらに好ましい。
【0036】
本発明において、フィコシアニンの摂取量は、特に限定されず、飲食品の種類や成分等により適宜選択されるが、例えば、成人1人に対して1日当たり、25mg以上が好ましく、300mg以上がより好ましく、また、1,333mg以下が好ましく、667mg以下がより好ましい。
尚、本発明において、フィコシアニンの摂取量とは、飲食品中にC−フィコシアニン、R−フィコシアニン、及びアロフィコシアニンから選ばれる2種類以上のフィコシアニンが含有されている場合、これらフィコシアニンの合計量とする。
本発明の美肌用飲食品が、C−フィコシアニンとアロフィコシアニンとを含有する場合には、例えば、C−フィコシアニンの摂取量は、成人1人に対して1日当たり、19mg以上が好ましく、225mg以上がより好ましく、また、1,000mg以下が好ましく、500mg以下がより好ましい。また、アロフィコシアニンの摂取量は、成人1人に対して1日当たり、6mg以上が好ましく、75mg以上がより好ましく、また、333mg以下が好ましく、167mg以下がより好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1:フィコシアニン配合錠剤の製造)
<フィコシアニンの抽出>
1%塩化カルシウム(無水)溶液1300Lに屋外培養槽で生産したスピルリナ乾燥藻体(噴霧乾燥品)65kgを加え、15分間の攪拌により均一懸濁液とした後、20℃15時間、静置条件下で藍藻類中のフィコシアニンを溶液中に抽出し抽出液を得た。
この抽出液にリン酸二水素ナトリウム32kgを添加し、0.5時間攪拌した後、20℃、静置下で2.5時間反応させ、リン酸カルシウムを生成させると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させて吸着物を得た。この後抽出液を遠心分離機に導き、重力加速度が10,000Gで、15分間の遠心分離を行い、藍藻類の残渣及び吸着物を抽出液から除去した。得られたフィコシアニンの抽出液は、分画分子量10,000の分離膜を使用した限外濾過により低分子成分及び塩類を除去した後、トレハロース、クエン酸三ナトリウムを加えて混合し、噴霧乾燥を行い、フィコシアニン色素乾燥物15kgを得た。これを、フィコシアニン1とする。尚、フィコシアニン1の色素粉末100質量%中、フィコシアニン含量は約30質量%(C−フィコシアニン約22質量%、アロフィコシアニン約8質量%であった。
【0039】
<フィコシアニン分析法>
フィコシアニンの定量は、Journal of AOAC International Vol.91、No.3、2008、p524〜529に従って、100mMリン酸緩衝液(pH6.0)に試料を溶解し、620nm及び650nmの吸光度を測定した。更に以下の計算式に従ってC−フィコシアニン(CPC)及びアロフィコシアニン(APC)量を算出した。
CPC(mg/mL)=0.162×OD620−0.098×OD650
APC(mg/mL)=0.180×OD650−0.042×OD620
【0040】
<試験食の製造>
上記フィコシアニン1を用いて、下記表1に従い、被験食(フィコシアニン配合錠剤)を調製した。また、表1に従い、対照食(フィコシアニン非配合錠剤(プラセボ))を調製した。なお、対照食については、フィコシアニン成分をセルロースに置き換え、色を被験食に合わせるために合成着色料(青色2号)を添加し、調製した。
【0041】
【表1】
これら被験食と対照食を用いて、フィコシアニンの美肌作用の評価を行った。
【0042】
(実施例2:フィコシアニン摂取の効果)
<被験者及び摂取方法>
20歳以上65歳未満の健常女性93名を2グループ(被験食摂取群47名、及び対照食摂取群46名)に分け、プラセボを対照としたランダム化二重盲検並行群間比較試験にて、8週間錠剤(一日一回5粒)を継続して経口摂取させた。
被験者のグループ割付けは以下の方法にて実施した。即ち、SAS(登録商標)9.4(SAS Institute Japan株式会社製)を用いて、発生させた乱数を各被験者に割り当て、乱数の若い順に2群に振り分ける。割付因子(年齢、スクリーニング検査時の水分蒸散量、スクリーニング検査時の角質水分量)において群間差がなくなるまで振り分け作業を行った。そのようにして振り分けた、被験食摂取群の被験者の平均年齢は、45.0歳であった。対照食摂取群の被験者の平均年齢は、45.4歳であった。
【0043】
<水分蒸散量(TEWL)、及び角質水分量の測定>
摂取開始時検査日、摂取開始4週間後検査日、及び摂取開始8週間後検査日に、経皮水分蒸散量測定計(Tewameter TM300、Courage Khazaka electronic GmbH社製)を用いて水分蒸散量、角層水分測定計(Corneometer CM825、Courage Khazaka electronic GmbH社製)を用いて角質水分量を測定した。
測定部位は、左目尻横1cmとした。
測定室の温度は21±1℃、湿度は50±10%とし、15分間以上環境に馴化させた後、測定を実施した。
水分蒸散量は、10回目以上測定し、連続する5回の測定データの標準偏差が0.2g/h/m未満になった時点の5回の測定データの平均値を測定値として採択した。
角質水分量は、5回測定し中央値を測定値として採択した。
【0044】
<水分蒸散量(TEWL)、及び角質水分量の結果>
水分蒸散量(TEWL)の測定結果を下記表2及び図1に示す。表2及び図1は、摂取開始時検査日における水分蒸散量から、摂取経過後の検査日における水分蒸散量の変化量を示す。表2及び図1中の*はp<0.05を示す。
尚、表2及び図1は、摂取開始時検査日の水分蒸散量が、人の水分蒸散量の目安として一般的に知られている10g/m/hr以上20g/m/hr未満であった被験者に対して測定した結果を示す。
【0045】
【表2】
対照食摂取群の摂取開始8週間後と被験食摂取群における摂取開始8週間後との比較において、有意な差が認められた。
表2及び図1で示されるように、被験食摂取群、つまりフィコシアニンを摂取した群は、対照食摂取群(プラセボ摂取群)に比べ、水分蒸散量を抑制する効果が認められた。
この水分蒸散量の抑制効果は、摂取開始4週間後から摂取開始8週間後にかけて特に顕著に表れる。そこで、水分蒸散量の抑制効果をより発揮させるためには、フィコシアニンを含有する錠剤を4週間以上、継続して服用することがより好ましい。
また、被験食を摂取し続けることで、摂取開始4週間後から摂取開始8週間後にかけて肌の保湿性が顕著に向上されることは、角質水分量の結果においても水分蒸散量の結果と同様なことがいえる。
下記表3に、被験者における摂取開始4週間後の角質水分量から摂取開始8週間後の角質水分量の変化量の結果を示す。
【0046】
【表3】
対照食摂取群の摂取開始8週間後と被験食摂取群における摂取開始8週間後との比較において、表3で示されるように、被験食摂取群、つまりフィコシアニンを摂取した群は、対照食摂取群(プラセボ摂取群)に比べ、角質水分量を増加する効果が認められた。
【0047】
(実施例3:フィコシアニン摂取の効果)
<被験者及び摂取方法>
被験者及び摂取方法は、実施例2と同様である。
【0048】
<肌のシワの評価>
<<レプリカ法による評価>>
摂取開始時検査日、摂取開始4週間後検査日、及び摂取開始8週間後検査日に、レプリカ法によるシワの評価を実施した。評価部位は、左目尻とした。
被験者の評価部位に樹脂を当ててレプリカを作製し、機器分析によりシワを三次元解析した。
【0049】
<<マイクロスコープ撮影画像による評価>>
摂取開始時検査日、摂取開始4週間後検査日、及び摂取開始8週間後検査日に、コードレスデジタルマイクロスコープDG−3X(スカラ株式会社)により被験者のシワ画像を撮影した。その撮影した画像を、下記基準をもとに皮膚科医に判定してもらうことで、シワの評価を行った。評価部位は、左目尻とした。
シワの判定は、日本香粧品学会の新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン(Vol.30、No.4、pp316−332(2006))に従い、下記8段階の基準でおこなった。
[シワの判定基準]
0 シワはない
1 不透明な浅いシワがわずかに認められる
2 明瞭な浅いシワがわずかに認められる
3 明瞭な浅いシワが認められる
4 明瞭な浅いシワの中に、やや深いシワがわずかに認められる
5 やや深いシワが認められる
6 明瞭な深いシワが認められる
7 著しく深いシワが認められる
【0050】
<肌のシワの結果>
<<レプリカ法による結果>>
レプリカ法による肌のシワの結果を下記表4に示す。
【0051】
【表4】
対照食摂取群の摂取開始8週間後と被験食摂取群における摂取開始8週間後との比較において、有意な差が認められた。
表4で示されるように、被験食摂取群、つまりフィコシアニンを摂取した群は、対照食摂取群(プラセボ摂取群)に比べ、シワを改善する効果が認められた。
【0052】
<<マイクロスコープ撮影画像による結果>>
マイクロスコープ撮影画像による肌のシワの結果では、すでに摂取開始4週間後検査日において、シワの改善効果が確認できた。
マイクロスコープ撮影画像による摂取開始4週間後検査日におけるシワの判定結果を、下記表5に示す。
【0053】
【表5】
対照食摂取群の摂取開始4週間後と被験食摂取群における摂取開始4週間後との比較において、有意な差が認められた。
表5で示されるように、被験食摂取群、つまりフィコシアニンを摂取した群は、対照食摂取群(プラセボ摂取群)に比べ、シワを改善する効果が認められた。
【0054】
(実施例4:フィコシアニン摂取の効果)
<被験者及び摂取方法>
被験者及び摂取方法は、実施例2と同様である。
【0055】
<肌のシミの評価>
<<マイクロスコープ撮影画像による評価>>
摂取開始時検査日、摂取開始4週間後検査日、及び摂取開始8週間後検査日に、コードレスデジタルマイクロスコープDG−3X(スカラ株式会社)により被験者のシミ画像を撮影した。その撮影した画像を、下記基準をもとに皮膚科医に判定してもらうことで、シミの評価を行った。評価部位は、左目尻とした。
シミの判定は、下記5段階の基準でおこなった。
[シミの判定基準]
0 なし
1 軽微
2 軽度
3 中程度
4 高度
【0056】
<肌のシミの結果>
<<マイクロスコープ撮影画像による結果>>
マイクロスコープ撮影画像によるシミの判定結果を、下記表6に示す。
尚、表6は、被験者のうちシミの自覚症状のある被験者を対象としたため、45歳以上の被験者に対して測定した結果を示す。
【0057】
【表6】
表6で示されるように、被験食摂取群、つまりフィコシアニンを摂取した群は、対照食摂取群(プラセボ摂取群)に比べ、摂取4週間後、及び摂取8週間後において、シミを改善する効果が認められた。
【0058】
(実施例5:フィコシアニン摂取の効果)
<被験者及び摂取方法>
被験者及び摂取方法は、実施例2と同様である。
【0059】
<肌の状態(はり、つや、しっとり感)の評価>
<<VAS(Visual Analogue Scale)による評価>>
摂取開始時検査日、摂取開始4週間後検査日、及び摂取開始8週間後検査日に、VAS法を用いて、被験者が「肌のはり」、「肌のつや」、「肌のしっとり感」の各項目について評価した。
具体的には、「肌のはり」、「肌のつや」、「肌のしっとり感」の各項目について、被験者が、図2で示すような両端に最良と最悪を記した黒線上に、肌の状態がどの程度の感覚かを記入してもらい、左側から被験者が記入した箇所までの長さをmm単位で、測定者が測定し、100−「測定値」を計測値として評価した。
【0060】
<肌の状態(はり、つや、しっとり感)の結果>
<<VASによる結果>>
VASによる「肌のはり」、「肌のつや」、「肌のしっとり感」についての被験者の評価結果を下記表7及び図3図5に示す。表7及び図3図5は、摂取開始時検査日におけるVASの計測値から、摂取経過後の検査日におけるVAS計測値の変化量を示す。表7及び図3図5中の**はp<0.01を、*はp<0.05を、†はp<0.1を示す。
【0061】
【表7】
対照食摂取群の摂取開始4週間後と被験食摂取群における摂取開始4週間後との比較において、及び対照食摂取群の摂取開始8週間後と被験食摂取群における摂取開始8週間後との比較において、有意な差が認められた。
表7で示されるように、被験食摂取群、つまりフィコシアニンを摂取した群は、対照食摂取群(プラセボ摂取群)に比べ、肌の状態(はり、つや、しっとり感)を改善させる効果が認められた。
【0062】
実施例で示すように、本発明のフィコシアニンを有効成分として含有する飲食品は、肌の保湿機能や弾力機能を高め、肌を美しくする効果(美肌効果)を奏するものであることが確認できた。
したがって、本発明のフィコシアニンを含有する飲食品は、経口摂取によって美肌効果を満足させる飲食品として有効に使用することができる。

【要約】
美肌効果のある飲食品、例えば、肌の水分蒸散量(TEWL)の増加を抑制したり、角質水分量を増加したり、肌のシワやシミ等を改善したりする飲食品を提供する。
本発明に係る飲食品は、フィコシアニンを有効成分として含有する美肌用飲食品である。
図1
図2
図3
図4
図5