特許第6784974号(P6784974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784974
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】構造物の設計改善方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20201109BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20201109BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20201109BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20201109BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20201109BHJP
【FI】
   B29C64/314
   B29C64/386
   B29C64/165
   B33Y10/00
   B33Y70/00
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-507279(P2018-507279)
(86)(22)【出願日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2017010699
(87)【国際公開番号】WO2017164069
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2019年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2016-57527(P2016-57527)
(32)【優先日】2016年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 正
(72)【発明者】
【氏名】菊永 和也
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−136577(JP,A)
【文献】 特開2001−215157(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/103973(WO,A1)
【文献】 特開2015−086327(JP,A)
【文献】 服部宏己,建築構造設計を対象とした構造教育に関する研究 (その4:曲げ・せん断載荷時の発光状況に及ぼす試験体高さの影響),日本建築学会大会学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集(CD−ROM),日本,2013年 7月20日,2013,ROMBUNNO.13004
【文献】 今井祐介,応力発光材料を用いた応力分布の可視化,宇宙航空研究開発機構特別資料JAXA−SP−,日本,2006年,06−017(CD−ROM),ROMBUNNO.2 12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
B33Y 10/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦弾性係数が1000nm/N以下の状態に硬化可能な樹脂基剤中に粒子径が10nm〜100μmの応力発光材料が10〜90重量%の割合で含まれた積層造形装置に供給するための積層造形用材料の硬化体よりなり、内部に応力発光部が形成された応力分析用立体造形物を用いた構造物の設計改善方法であって、
所望する構造物の三次元データを作成する三次元データ作成工程と、
前記三次元データに基づいて複数の座標点間を連続又は断続的に走査し、可塑性を有する造形用材料を走査軌跡上で硬化しつつ積層させて所定の立体造形物を構築する積層造形装置により応力分析用立体造形物を構築する分析用造形物構築工程と、
得られた応力分析用立体造形物に対し加振試験機を用いて周波数を変動させながら所定の外力を付与しつつ応力発光部を発光させて、同応力発光部の発光像の応力の変化に応じた経時的な発光の変化を目視又は記録することにより内部の動的応力の分布情報を取得する分布情報取得工程と、
得られた応力分布情報と前記構造物の設計データとを参照しつつ、同設計データの改善のための検討を行う比較検討工程と、を備え、
同比較検討工程において、前記設計データの改善が必要と判断された場合、前記応力分布情報に基づいて設計データの変更を行う分布情報フィードバック工程を有することを特徴とする構造物の設計改善方法。
【請求項2】
前記分布情報フィードバック工程において、前記設計データの改善が必要ではないと判断されるまで、前記三次元データ作成工程と、前記分析用造形物構築工程と、前記分布情報取得工程と、前記比較検討工程とを繰り返し行うことを特徴とする請求項に記載の構造物の設計改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形用材料及び応力分析用立体造形物並びに構造物の設計改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋やビル、橋梁、ドーム型球技場、コンサートホールなどの比較的大型の建造物から、机や椅子、ネジ、ボルトなど比較的小さな家具類や部品類に至るまで、実に様々な構造物が予めなされた設計に基づいて作成されている。
【0003】
例えば橋梁を例にすると、デザインや強度を勘案しつつコンピュータ等を用いて設計図面がひかれ、その設計図面に基づいて小型の立体造形物(立体モデル)を作成し、風洞試験や力学的強度について検討を行いつつ徐々に大型の立体造形物を作成して最終的に実際の橋梁の構築にあたることとなる。
【0004】
また、必要に応じてコンピュータ上で力学計算等を行い、耐久性についての検討が行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−209576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、現在行われているコンピュータによる力学計算は、主に静的応力に基づいて行われるものであり、動的応力については未だ検討の余地が残された状態にある。実際のところ、コンピュータ上でのシミュレーション結果は、構造物における動的応力の集中部位とは異なっている場合もある。
【0007】
また、立体造形物における検証も、立体造形物の表面に歪みゲージ等を貼着して計測する程度であり、表面的かつ部分的な応力の把握しかできていない。
【0008】
このような状況の中、近年では、構造物の内部応力について把握可能であり、また、静的応力は勿論のこと、動的応力についてまでも把握可能なツールが求められている。
【0009】
また、橋梁などの大型の構造物に限らず、前述の机や椅子、ネジ、ボルトなど比較的小さな構造物においても同様の課題を有している。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、内部応力について把握可能であり、また、静的応力は勿論のこと、動的応力についてまでも把握可能な立体造形物を形成することのできる積層造形用材料を提供する。
【0011】
また本発明では、応力分析用立体造形物や、構造物の設計改善方法についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る積層造形用材料では、(1)入力された三次元データに基づいて複数の座標点間を連続又は断続的に走査し、可塑性を有する造形用材料を走査軌跡上で硬化しつつ積層させて所定の立体造形物を構築する積層造形装置に供給するための積層造形用材料であって、可塑状態と硬化状態との間で変化可能な樹脂基剤中に応力発光材料が含まれてなることとした。
【0013】
また、本発明に係る積層造形用材料では、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記樹脂基剤の硬化状態において縦弾性係数が1000nm/N以下であること。
(3)前記応力発光材料は、前記樹脂基剤中に10〜90重量%の割合で含有されていること。
(4)前記応力発光材料の粒子径は10nm〜100μmであること。
【0014】
また、本発明に係る応力分析用立体造形物では、(5)立体造形物の少なくとも一部に上記(1)〜(4)いずれかの積層造形用材料の硬化体よりなる応力発光部が備えられていることとした。
【0015】
また、本発明に係る応力分析用立体造形物では、(6)前記応力発光部は、前記立体造形物の内部に形成したことにも特徴を有する。
【0016】
また、本発明に係る構造物の設計改善方法では、(7)上記(5)又は(6)の応力分析用立体造形物を用いた構造物の設計改善方法であって、所望する構造物の三次元データを作成する三次元データ作成工程と、前記三次元データに基づいて積層造形装置により応力分析用立体造形物を構築する分析用造形物構築工程と、得られた応力分析用立体造形物に対して所定の外力を付与しつつ応力発光部を発光させて、同応力発光部の発光像を目視又は記録することにより応力の分布情報を取得する分布情報取得工程と、得られた応力分布情報と前記構造物の設計データとを参照しつつ、同設計データの改善のための検討を行う比較検討工程と、を備え、同比較検討工程において、前記設計データの改善が必要と判断された場合、前記応力分布情報に基づいて設計データの変更を行う分布情報フィードバック工程を有することとした。
【0017】
また、本発明に係る構造物の設計改善方法では、(8)前記分布情報フィードバック工程において、前記設計データの改善が必要ではないと判断されるまで、前記三次元データ作成工程と、前記分析用造形物構築工程と、前記分布情報取得工程と、前記比較検討工程とを繰り返し行うことにも特徴を有する。
【0018】
また、本発明に係る構造物の設計改善方法では、(9)所望する構造物の三次元データを作成する三次元データ作成工程と、前記三次元データに基づいて積層造形装置により立体造形物を構築する造形物構築工程と、可塑状態と硬化状態との間で変化可能な樹脂基剤中に応力発光材料が含まれてなる積層造形用材料を構築された立体造形物の少なくとも一部の表面に付着させ、付着応力発光部を備えた表面応力分析用立体造形物を構築する表面分析用造形物構築工程と、得られた表面応力分析用立体造形物に対して所定の外力を付与しつつ付着応力発光部を発光させて、同付着応力発光部の発光像を目視又は記録することにより応力の分布情報を取得する分布情報取得工程と、得られた応力分布情報と前記構造物の設計データとを参照しつつ、同設計データの改善のための検討を行う比較検討工程と、を備え、同比較検討工程において、前記設計データの改善が必要と判断された場合、前記応力分布情報に基づいて設計データの変更を行う分布情報フィードバック工程を有することとした。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る積層造形用材料によれば、入力された三次元データに基づいて複数の座標点間を連続又は断続的に走査し、可塑性を有する造形用材料を走査軌跡上で硬化しつつ積層させて所定の立体造形物を構築する積層造形装置に供給するための積層造形用材料であって、可塑状態と硬化状態との間で変化可能な樹脂基剤中に応力発光材料が含まれてなることとしたため、内部応力について把握可能であり、また、静的応力は勿論のこと、動的応力についてまでも把握可能な立体造形物を形成することのできる積層造形用材料を提供することができる。
【0020】
また、前記樹脂基剤の硬化状態において縦弾性係数が1000nm/N以下であることとすれば、堅実な応力伝搬を実現することができ、応力に対する反応に優れた立体造形物を形成することができる。
【0021】
また、前記応力発光材料は、前記樹脂基剤中に10〜90重量%の割合で含有されていることとすれば、十分かつ応力に応じて均一に発光可能な立体造形物を形成することができる。
【0022】
また、前記応力発光材料の粒子径は10nm〜100μmであることとすれば、応力発光材料の添加に由来する立体造形物の脆化を抑制することができ、試験的に付与した応力に対して更に良好な反応を示す立体造形物を形成することができる。
【0023】
また、本発明に係る応力分析用立体造形物によれば、立体造形物の少なくとも一部に請求項1〜4いずれか1項に記載の積層造形用材料の硬化体よりなる応力発光部が備えられているため、静的応力は勿論のこと、動的応力についてまでも把握可能な応力分析用立体造形物を提供することができる。
【0024】
また、前記応力発光部は、前記立体造形物の内部に形成すれば、内部応力について把握可能であり、また、静的応力は勿論のこと、動的応力についてまでも把握可能な立体造形物を形成することができる。
【0025】
また、本発明に係る構造物の設計改善方法によれば、上述の応力分析用立体造形物を用いた構造物の設計改善方法であって、所望する構造物の三次元データを作成する三次元データ作成工程と、前記三次元データに基づいて積層造形装置により応力分析用立体造形物を構築する分析用造形物構築工程と、得られた応力分析用立体造形物に対して所定の外力を付与しつつ応力発光部を発光させて、同応力発光部の発光像を目視又は記録することにより応力の分布情報を取得する分布情報取得工程と、得られた応力分布情報と前記構造物の設計データとを参照しつつ、同設計データの改善のための検討を行う比較検討工程と、を備え、同比較検討工程において、前記設計データの改善が必要と判断された場合、前記応力分布情報に基づいて設計データの変更を行う分布情報フィードバック工程を有することとしたため、構造物の設計段階において、静的応力は勿論のこと動的応力についてまでも踏まえた設計を行うことができる。
【0026】
また、前記分布情報フィードバック工程において、前記設計データの改善が必要ではないと判断されるまで、前記三次元データ作成工程と、前記分析用造形物構築工程と、前記分布情報取得工程と、前記比較検討工程とを繰り返し行うこととすれば、より力学的に洗練された構造物のための設計を行うことができる。
【0027】
また、本発明に係る構造物の設計改善方法によれば、所望する構造物の三次元データを作成する三次元データ作成工程と、前記三次元データに基づいて積層造形装置により立体造形物を構築する造形物構築工程と、可塑状態と硬化状態との間で変化可能な樹脂基剤中に応力発光材料が含まれてなる積層造形用材料を構築された立体造形物の少なくとも一部の表面に付着させ、付着応力発光部を備えた表面応力分析用立体造形物を構築する表面分析用造形物構築工程と、得られた表面応力分析用立体造形物に対して所定の外力を付与しつつ付着応力発光部を発光させて、同付着応力発光部の発光像を目視又は記録することにより応力の分布情報を取得する分布情報取得工程と、得られた応力分布情報と前記構造物の設計データとを参照しつつ、同設計データの改善のための検討を行う比較検討工程と、を備え、同比較検討工程において、前記設計データの改善が必要と判断された場合、前記応力分布情報に基づいて設計データの変更を行う分布情報フィードバック工程を有することとしたため、構造物の設計段階において、静的応力は勿論のこと動的応力についてまでも踏まえた設計を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る積層造形用材料における荷重、歪み、発光量の関係を示した説明図である。
図2】本実施形態に係る積層造形用材料における応力発光材料の添加割合と発光量との関係を示した説明図である。
図3】本実施形態に係る積層造形用材料の状態を示す説明図である。
図4】応力分析用立体造形物の状態を示す説明図である。
図5】応力分析用立体造形物の状態を示す説明図である。
図6】構造物の設計改善方法の過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、入力された三次元データに基づいて複数の座標点間を連続又は断続的に走査し、可塑性を有する造形用材料を走査軌跡上で硬化しつつ積層させて所定の立体造形物を構築する積層造形装置に供給するための積層造形用材料であって、可塑状態と硬化状態との間で変化可能な樹脂基剤中に応力発光材料が含まれてなる積層造形用材料を提供するものである。
【0030】
ここで、本実施形態に係る積層造形用材料が供給される積層造形用装置は、例えば、所謂3Dプリンタと解することができる。具体的には、熱溶融積層造形方式や、インクジェット方式、粉末焼結造形方式、光造形方式等の3Dプリンタとすることができる。
【0031】
また、積層造形用装置において走査するのは、前述の熱溶融積層方式やインクジェット方式の如く造形用材料を吐出するヘッドであっても良く、粉末焼結造形方式や光造形方式の如く光照射部であっても良い。
【0032】
また、樹脂基剤は可塑状態と硬化状態との間で変化可能なものであれば良く、好ましくは後述の応力発光材料より発せられる蛍光の透過率が高く、また応力発光材料を励起させるための励起光の透過率の高い材料を採用するのが望ましい。このような材料としては、例えば光ラジカル重合、光カチオン重合、光アニオン重合等により生成する樹脂や、アクリル系樹脂、メタクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ABS系樹脂、PLA系樹脂、PC樹脂、PP樹脂等を挙げることができる。
【0033】
また、樹脂基剤は、硬化状態において縦弾性係数が1000nm/N以下であるのが望ましい。このような樹脂基剤を用いることにより、(応力分析用)立体造形物に対して外力を付与した際に効率的な応力の伝搬を実現することができ、応答性に優れた立体造形物を形成することができる。
【0034】
応力発光材料は、機械的な外力により生じる変形によって発光するものであり、既知又は未知の材料を採用することができる。既知の応力発光材料としては、例えば、スピネル構造、コランダム構造、βアルミナ構造、ケイ酸塩、欠陥制御型アルミン酸塩、ウルツ鉱型構造と閃亜鉛鉱型構造とが共存する構造を有し酸化物、硫化物、セレン化物またはテルル化物を主成分として構成されるもの等を挙げることができる。
【0035】
また、応力発光材料について、より具体的な代表例を挙げるならば、例えば、LiSrPO4:Eu2+や、LiBaPO4:Eu2+、xSrO・yAl2O3・zMO(Mは二価金属、Mg,Ca,Ba,x,y,zは整数である。即ち、Mは二価金属であれば限定されるものではないが、Mg,Ca,Baが好ましい。またx,y,zは1以上の整数を表す。)、xSrO・yAl2O3・zSiO2(x,y,zは整数である)、BaTiO3−CaTiO3:Pr(赤)、ZnS:M(Mは二価金属であれば限定されるものではないが、Mn,Ga,Cu等が望ましい)(赤〜黄色)、SrAl2O4:Eu(緑)、CaAl2Si2O8:Eu(青)、Ca2Al2SiO7:Ce(青)、Ca2MgSi2O7:Ce(青)、SrAl2O4:Ce(青)、CaYAl3O7:Eu(青)、SrAl2O4:HoCe(紫外)、一般式Sr{1-(2x+3y+3z)/2}Al2O4:xEu2+, yCr3+, zNd3+ (ただし、x,y,z は、0.25〜10mol%、好ましくは0.5〜2mol%で表される。)(近赤外)等を用いることができる。
【0036】
また、このような応力発光材料は、樹脂基剤中に10〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%の割合で含有するようにしても良い。このような割合で添加することにより、十分かつ応力に応じて均一に発光可能な立体造形物を形成することができる。
【0037】
また、樹脂基剤に添加される応力発光材料の粒子径は、10nm〜100μmとすることができる。このような粒子径とすることにより、応力発光材料の添加に由来する立体造形物の脆化を抑制することができ、試験的に付与した応力に対して更に良好な反応を示す立体造形物を形成することができる。
【0038】
また本願は、立体造形物の少なくとも一部に上述の積層造形用材料の硬化体よりなる応力発光部が備えられた応力分析用立体造形物を提供するものでもある。
【0039】
このような応力分析用立体造形物は、実際の構造物に対して付与されるであろうと予測される外力に相当する外力、すなわち、実際の構造物と応力分析用立体造形物とのスケール比に応じた外力を付与することにより、応力発光部に付与された応力に応じて発光させることができる。しかも、この応力発光部は付与された応力の変化に応じて発光を経時的に変化させることが可能であるため、静的応力は勿論のこと、動的応力についてまでも把握可能な応力分析用立体造形物を提供することができる。
【0040】
また、この応力発光部は、応力分析用立体造形物の表面のみならず、内部やその両者に設けるようにしても良い。特に、応力発光部を応力分析用立体造形物の内部に設けることにより、外力に応じた内部応力について、静的応力は勿論のこと、動的応力についてまでも把握可能となる。
【0041】
また本願は、構造物の設計改善方法を提供するものでもある。特に本実施形態に係る構造物の設計改善方法では、三次元データ作成工程と、分析用造形物構築工程と、分布情報取得工程と、比較検討工程と、分布情報フィードバック工程を有することに特徴を有している。
【0042】
三次元データ作成工程は、所望する構造物の三次元データを作成する工程であり、具体的には、所望する構造物の設計図等を紙面上やコンピュータ上にて作成する工程と解することができる。例えば、コンピュータを用いて本工程を行うにあたっては、接触式又は非接触式の三次元測定機や3Dスキャナなど、三次元的な形状が計測できる装置を介して現存する構造物のデータをコンピュータに取り込むことで三次元データを作成するようにしても良い。
【0043】
分析用造形物構築工程は、三次元データに基づいて積層造形装置により応力分析用立体造形物を構築する工程である。具体的には、前述の三次元データ作成工程にて作成した設計図等を、所謂3Dプリンタ等に対し同3Dプリンタが要求する所定の形式で供給することにより行われる。また、3Dプリンタには、本実施形態に係る積層造形用材料が少なくとも供給されており、形成される立体造形物は、その一部又は全部に応力発光部が形成された応力分析用立体造形物となる。
【0044】
分布情報取得工程は、得られた応力分析用立体造形物に対して所定の外力を付与しつつ応力発光部を発光させて、同応力発光部の発光像を目視又は記録することにより応力の分布情報を取得する工程である。
【0045】
応力分析用立体造形物に対して付与する外力は、前述の通り、実際の構造物と応力分析用立体造形物とのスケール比に応じた外力を付与するのが望ましい。また、外力は静的な応力であっても良く、動的な応力であっても良い。なお、応力を付与する応力分析用立体造形物は、積層造形装置にて形成されたものを必ずしもそのまま用いる必要はなく、適宜掘削等の加工を施したものであっても良く、別の立体造形物と組み合わせた状態で用いても良いのは勿論である。
【0046】
応力発光部は、これら応力に応じた発光分布を示す。本工程では、応力発光部から発せられる光が可視光である場合、この発光像を目視確認することにより応力が集中している部位や、応力を分散させるべき部位などを把握して応力の分布情報を取得することができる。
【0047】
また、応力発光部から発せられる光が可視光であるか否かに拘わらず、この光を捉えることが可能な記録装置、例えばフィルムカメラやデジタルカメラ、動画撮影装置などにより撮像したり、例えば本発明者らが開発した応力履歴記録システムなど光反応材料により記録する方法で応力の分布情報を取得することも可能である。
【0048】
比較検討工程は、得られた応力分布情報と前記構造物の設計データとを参照しつつ、同設計データの改善のための検討を行う工程である。ここで設計データとは、構造物の設計に係るデータを意味しており、前述の三次元データを含む更に上位の概念である。すなわち、設計データは、構造物の三次元データは勿論のこと、同構造物の強度等に関連するような周辺の地盤データ等も含む概念である。
【0049】
分布情報フィードバック工程は、比較検討工程において、前記設計データの改善が必要と判断された場合、前記応力分布情報に基づいて設計データの変更を行う工程である。すなわち、比較検討工程において設計データ上改善する必要があると認められた事項について、応力分布情報に基づき実際に設計データ上に反映させる工程である。
【0050】
また、上述の三次元データ作成工程と、分析用造形物構築工程と、分布情報取得工程と、比較検討工程と、分布情報フィードバック工程とは、同分布情報フィードバック工程において設計データの改善が必要ないとの判断に至るまで繰り返し行うようにしても良い。
【0051】
このような構成を備えることにより、更に力学的に洗練された構造物のための設計を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態に係る構造物の設計改善方法は、三次元データ作成工程と、造形物構築工程と、表面分析用造形物構築工程と、分布情報取得工程と、比較検討工程と、分布情報フィードバック工程を有することとしても良い。ここで、三次元データ作成工程と、分布情報取得工程と、比較検討工程と、分布情報フィードバック工程とは、前述した同工程と略同様であるため説明を省略する。
【0053】
造形物構築工程は、三次元データに基づいて積層造形装置により立体造形物を構築する工程であり、本工程においては応力発光部の形成を要しない点で前述の分析用造形物構築工程と相違している。
【0054】
表面分析用造形物構築工程は、可塑状態と硬化状態との間で変化可能な樹脂基剤中に応力発光材料が含まれてなる積層造形用材料を構築された立体造形物の少なくとも一部の表面に付着させ、付着応力発光部を備えた表面応力分析用立体造形物を構築する工程である。
【0055】
すなわち、積層造形装置にて形成された立体造形物の表面の一部又は全部に、本実施形態に係る積層造形用材料を塗布するなどして付着させ、付着応力発光部を形成して表面応力分析用立体造形物を構築する工程である。
【0056】
そして、このような構造物の設計改善方法によっても、立体造形物の表面的な力学特性を把握して設計にフィードバックさせることができ、より優れた構造物の構築を支援することが可能となる。
【0057】
以下、本実施形態に係る積層造形用材料、応力分析用立体造形物、構造物の設計改善方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0058】
〔1.積層造形用材料の調製〕
応力に呼応して近赤外光(Sr{1-(2x+3y+3z)/2}Al2O4:xEu2+, yCr3+, zNd3+系)、赤色光(BaTiO3−CaTiO3:Pr系)、緑色光(SrAl2O4:Eu系)、青色光(SrAl2O4:Ce系)、紫外光(SrAl2O4:HoCe系)の発光を示す5種の応力発光材料を、市販の3Dプリンタ用造形材料7種に対して終濃度50重量%で添加し、十分に攪拌を行って本実施形態に係る積層造形用材料の調製を行った。具体的には、表1に示す通りである。
【表1】
【0059】
次に、調製したサンプル番号1〜35の積層造形用材料を円柱型の型枠に収容し、各積層造形用材料を硬化させることで試験片の形成を行った。試験片は直径25mm×高さ10mmの円柱状に形成した。
【0060】
そして、各サンプル番号1〜35に対応する試験片に対し、手で押圧することでそれぞれ外力を付与したところ、いずれの試験片においても添加した応力発光材料に応じた色の蛍光が観察された。すなわち、本実施形態に係る積層造形用材料は、外力に呼応して応力発光材料に応じた色の蛍光を発することが確認された。
【0061】
〔2.至適縦弾性係数の検討〕
次に、前述の市販の3Dプリンタ用造形材料7種に対して緑色光を発光するSrAl2O4:Eu系の応力発光材料を添加したPRH-緑色(サンプル番号3)、LCR-緑色(サンプル番号8)、XYZ-緑色(サンプル番号13)、HC-緑色(サンプル番号18)、M3-緑色(サンプル番号23)、CR-CL-緑色(サンプル番号28)、MJT-緑色(サンプル番号33)を用い、至適縦弾性係数の検討を行った。
【0062】
具体的には、前述の〔1.積層造形用材料の調製〕にて形成したサンプル番号3、8、13、18、23、28の試験片(直径25mm×高さ10mm)に対し、0〜1000Nの加重を外力として付与しつつ、そのときの歪みの計測を行った。その結果を図1に示す。
【0063】
図1(a)は加重と歪みとの関係を示したグラフであり、横軸が加重、縦軸が歪みである。また、図1(b)は1000N負荷時における歪みと観測された光子数との関係を示したグラフであり、横軸が歪み、縦軸が20ミリ秒あたりの光子数である。
【0064】
図1(a)に示すように、いずれの試験片においても、加重に応じて大凡比例する歪みが観察された。また、図1(b)に示すように、1000N負荷時における発光量では、LCR-緑色(サンプル番号8)、CR-CL-緑色(サンプル番号28)、MJT-緑色(サンプル番号33)、M3-緑色(サンプル番号23)、XYZ-緑色(サンプル番号13)において、比較的歪みが小さく大きな発光量が観察された。
【0065】
一方、PRH-緑色(サンプル番号3)や、HC-緑色(サンプル番号18)は、応力分析用立体造形物を構築するための積層造形用材料として利用可能なものの、発光量に対して歪みが大きい傾向が認められた。
【0066】
これらの結果から、応力分析用立体造形物を構築するための積層造形用材料としては、外力に対する鋭敏な発光性を向上させるにあたり、縦弾性係数が1000nm/N以下、より好ましくは600nm/N以下が好ましいことが確認された。
【0067】
〔3.至適添加量の検討〕
次に、比較的少ない歪みで比較的大きな発光量が得られたMJT-緑色(サンプル番号33)をベースに、添加する応力発光材料の添加量を変化させ、その至適添加量について検討を行った。
【0068】
具体的には、マイクロジェット社製光硬化樹脂中に、緑色光の蛍光を発するSrAl2O4:Eu系応力発光材料を0重量%、30重量%、50重量%、70重量%、90重量%の割合で添加し、十分に混合することで積層造形用材料を得た。
【0069】
次いで、これらの積層造形用材料を円柱型の型枠に収容し、各積層造形用材料を硬化させることで試験片の形成を行った。試験片は直径25mm×高さ10mmの円柱状に形成した。
【0070】
そして、これらの試験片に対し0.7mW/cm2の強度で365nmの紫外線を励起光として1分間照射し、5分後に加重を1000Nに至るまで三角波状に負荷して発光を計測した。その結果を図2に示す。
【0071】
図2(a)は、加重と発光強度の経時変化を示すグラフであり、横軸が時間、左縦軸が発光強度、右縦軸が加重である。また、図2(b)は応力発光材料の混合割合と発光強度との関係を示すグラフであり、図2(a)における各サンプルの最大発光強度近傍の値をプロットしたものである。横軸は応力発光材料の添加量、左縦軸は応力発光強度(白丸)、右縦軸は発光強度(四角)を示している。
【0072】
図2(a)からも分かるように、いずれの濃度で添加したサンプルにおいても、外力に応じて良好な発光特性を示すことが確認された。また、図2(b)から分かるように、樹脂基剤への応力発光材料の添加割合Xは、0重量%<X≦90重量%、より好ましくは10重量%≦X≦90重量%の範囲内で実用的な応力分析用立体造形物が得られることが示された。
【0073】
また、図3に示すように、応力発光材料を90重量%添加したサンプルにおいては、実用上差し支えはないものの、若干の分散ムラ(黒矢じりで示す)が確認され、また図示は省略するが応力発光材料を80重量%を添加したサンプルにおいてムラは確認されなかったため、応力発光材料の配合割合Xは、更に好ましくは10重量%≦X≦80重量%程度であるものと考えられた。
【0074】
また更には、大凡60重量%程度の所に最大発光量のピークが予測されることから、応力発光材料の添加割合Xを30重量%≦X≦80重量%、更に好ましくは50重量%≦X≦80重量%とすることにより、良好な積層造形用材料が得られることが示唆された。
【0075】
〔4.応力分析用立体造形物の作成〕
次に、マイクロジェット社製の光硬化樹脂に対し、緑色光の蛍光を発するSrAl2O4:Eu系応力発光材料を70重量%の割合で添加して積層造形用材料を調製し、この積層造形用材料用いて応力分析用立体造形物を構築すると共に、その応力発光について確認を行った。
【0076】
(4−1.バネ)
まず、コンピュータを用い、3DCAD上にてバネの三次元データの作成を行った(三次元データ作成工程)。
【0077】
次いで、作成した三次元データを所定のフォーマットに変換し、XYZプリンティングジャパン株式会社製ダヴィンチ 1.0A(積層造形装置)に送信すると共に、同積層造形装置に上記積層造形用材料を供して応力分析用立体造形物としてのバネを構築した(図4(a)参照。)。なお、このバネにおいては、応力発光部が応力分析用立体造形物の全体に形成されている。
【0078】
次に、このバネに対して半径方向外方より指で押圧することにより外力を加え、デジタルカメラにて撮影を行ったところ、応力の分布に応じた発光が観察された(分布情報取得工程)。
【0079】
このように、作成したバネは、本実施形態に係る応力分析用立体造形物として機能できることが確認された。
【0080】
(4−2.橋梁)
既に構築されている橋梁(図5(a)参照)に関し、加重が付与された際の問題点を探るべく、応力分析用立体造形物の構築を行った。
【0081】
まず、橋梁建築の際に使用された設計図面をコンピュータの3DCAD上に落とし込み、縮尺を縮小して三次元データの作成を行った(三次元データ作成工程)。
【0082】
次に、作成した三次元データを所定のフォーマットに変換し、XYZプリンティングジャパン株式会社製ダヴィンチ 1.0A(積層造形装置)に送信すると共に、同積層造形装置に前述の応力発光材料を含んだ積層造形用材料と、応力発光材料を含まない積層造形用材料との2種類を供して応力分析用立体造形物としての橋梁模型を構築した(図5(b)参照。)。なお、作成した橋梁模型の応力発光部は、アーチ状の梁の内部、及び、道路内部に部分的に形成しており、それ以外の部分は応力発光材料を含まない積層造形用材料にて形成した(分析用造形物構築工程)。
【0083】
次に、この橋梁模型に対して加振試験機を用いて所定周波数の外力を付与し、アーチ状の梁の内部、及び、道路内部における動的応力の分散状態をデジタルビデオカメラにて撮影を行った。その結果、撮影された動画には、周波数の変動に伴い、内部の動的応力の集中部位が経時的に変化する様子が納められた(分布情報取得工程)。
【0084】
このように、作成した橋梁模型は、本実施形態に係る応力分析用立体造形物として機能できることが確認された。
【0085】
〔5.構造物の設計の改善〕
次に、構造物としての骨盤プレートの設計の改善を行った例について説明する。骨盤プレートは骨折箇所の内固定に使用される部材であり、加重に対して十分な強度を備える必要がある一方、軽量化も求められる。本項においては、図6(a)に示す骨盤プレートについて、力学的強度の低下を抑制しつつ、更に軽量化された骨盤プレートを開発すべく設計の改善を行った。
【0086】
まず、ミツトヨ株式会社製接触式三次元測定機を用いて骨盤プレートをスキャニングし、3DCAD上にて骨盤プレートの三次元データの作成を行った(三次元データ作成工程)。
【0087】
次に、作成した三次元データを所定のフォーマットに変換し、キーエンス株式会社製アジリスタ(インクジェット式積層造形装置)に送信すると共に、同積層造形装置に応力発光材料を含まない積層造形用材料を供して、応力分析用立体造形物としての骨盤プレート模型を構築した(図6(b)の上の模型A)(分析用造形物構築工程)。
【0088】
次に、応力発光材料を含まない骨盤プレート模型の表面略全域に対し、本実施形態に係る積層造形用材料(緑色光の蛍光を発するSrAl2O4:Eu系応力発光材料を70重量%の割合で添加したもの)を有機溶媒に溶かして塗料化したものを塗布して付着応力発光部を形成し、表面応力分析用立体造形物としての骨盤プレート模型B(図6(b)の中央の模型)を作成した。
【0089】
次に、得られた骨盤プレート模型Bに対して外力を加え、デジタルカメラにて撮影を行ったところ、図6(c)に示すように、いずれの骨盤プレート模型においても応力の分布に応じた発光が観察された(分布情報取得工程)。
【0090】
次に、得られた応力分布情報としての撮像画像と設計データとを参照しつつ、力学的強度の維持と軽量化との両立について検討を行った(比較検討工程)。
【0091】
その結果、これらの両立を実現するためには設計データの改善が必要であると判断された場合、前記応力分布情報に基づいて設計データの変更を行う分布情報フィードバック工程を行うことで、設計の改善を行うことができる。
【0092】
なお、本項では応力発光材料を含まない骨盤プレート模型Aに付着応力発光部を形成してなる骨盤プレート模型Bを用いた設計の改善例について説明したが、応力発光材料を含む骨盤プレート模型、すなわち、少なくとも一部に本実施形態に係る積層造形用材料の硬化体よりなる応力発光部が備えられた骨盤プレート模型を用いることのよっても、設計の改善を行うことができるのは勿論である。
【0093】
また、本項では骨盤プレートの設計の改善を例に説明したが、前述の(4−1.バネ)や(4−2.橋梁)にて作成したバネや橋梁模型についても、本項にて行ったプロセスに従うことで、同様に設計の改善を行うことが可能であるのは言うまでもない。
【0094】
上述してきたように、本実施形態に係る積層造形用材料によれば、入力された三次元データに基づいて複数の座標点間を連続又は断続的に走査し、可塑性を有する造形用材料を走査軌跡上で硬化しつつ積層させて所定の立体造形物を構築する積層造形装置に供給するための積層造形用材料であって、可塑状態と硬化状態との間で変化可能な樹脂基剤中に応力発光材料が含まれてなることとしたため、内部応力について把握可能であり、また、静的応力は勿論のこと、動的応力についてまでも把握可能な立体造形物を形成することのできる積層造形用材料を提供することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る応力分析用立体造形物によれば、前記立体造形物の少なくとも一部に上述の積層造形用材料の硬化体よりなる応力発光部が備えられているため、静的応力は勿論のこと、動的応力についてまでも把握可能な応力分析用立体造形物を提供することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る構造物の設計改善方法によれば、上述の応力分析用立体造形物を用いた構造物の設計改善方法であって、所望する構造物の三次元データを作成する三次元データ作成工程と、前記三次元データに基づいて積層造形装置により応力分析用立体造形物を構築する分析用造形物構築工程と、得られた応力分析用立体造形物に対して所定の外力を付与しつつ応力発光部を発光させて、同応力発光部の発光像を目視又は記録することにより応力の分布情報を取得する分布情報取得工程と、得られた応力分布情報と前記構造物の設計データとを参照しつつ、同設計データの改善のための検討を行う比較検討工程と、を備え、同比較検討工程において、前記設計データの改善が必要と判断された場合、前記応力分布情報に基づいて設計データの変更を行う分布情報フィードバック工程を有することとしたため、構造物の設計段階において、静的応力は勿論のこと動的応力についてまでも踏まえた設計を行うことができる。
【0097】
また、本実施形態に係る構造物の設計改善方法によれば、所望する構造物の三次元データを作成する三次元データ作成工程と、前記三次元データに基づいて積層造形装置により立体造形物を構築する造形物構築工程と、可塑状態と硬化状態との間で変化可能な樹脂基剤中に応力発光材料が含まれてなる積層造形用材料を構築された立体造形物の少なくとも一部の表面に付着させ、付着応力発光部を備えた表面応力分析用立体造形物を構築する表面分析用造形物構築工程と、得られた表面応力分析用立体造形物に対して所定の外力を付与しつつ付着応力発光部を発光させて、同付着応力発光部の発光像を目視又は記録することにより応力の分布情報を取得する分布情報取得工程と、得られた応力分布情報と前記構造物の設計データとを参照しつつ、同設計データの改善のための検討を行う比較検討工程と、を備え、同比較検討工程において、前記設計データの改善が必要と判断された場合、前記応力分布情報に基づいて設計データの変更を行う分布情報フィードバック工程を有することとしたため、構造物の設計段階において、静的応力は勿論のこと動的応力についてまでも踏まえた設計を行うことができる。
【0098】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6