(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記最大の実効入射光量を持つ照射手段が照射する前記計測点、若しくは前記最大の実効検出効率を持つ検出手段が検出する前記計測点の少なくとも一方は、前記被検体の無毛部に配設された、請求項2に記載の脳機能計測装置。
前記最大の実効入射光量を持つ照射手段が照射する前記計測点、若しくは前記最大の実効検出効率を持つ検出手段が検出する前記計測点の少なくとも一方は、前記被検体の無毛部に配設される、請求項8に記載の脳機能計測方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る脳機能計測システムの構成を示す図である。
図1に示されるように、脳機能計測システムは、制御部3と光源部5、データ計測部7、及び記憶部9を含む脳機能計測装置1と、光減衰器11〜14と、被検体に装着され光照射プローブS1,S2及び光検出プローブD1,D2を含むホルダ20とを備える。
【0013】
ここで、制御部3は光源部5、データ計測部7、記憶部9、及び光減衰器11〜14に接続され、光照射プローブS1,S2はそれぞれ光減衰器11,12を介して光源部5に接続される。また、光検出プローブD1,D2はそれぞれ光減衰器13,14を介してデータ計測部7に接続される。また、データ計測部7は記憶部9にも接続される。
【0014】
一方で、例えば、
図1に示されたホルダ20上における光照射プローブS1,S2は、
図2の白丸で示された光照射プローブSの位置に配置され、
図1に示されたホルダ20上における光検出プローブD1,D2は、
図2の黒丸で示された光検出プローブDの位置に配置される。なお、
図2においてグレーの部分は毛髪を示し、
図5及び
図8でも同様である。
【0015】
ここで、
図2に示された光照射プローブS及び光検出プローブDは、例えば
図3に示された模式図で示されるように交互に配置される。
【0016】
[連結チャンネル群内の雑音平準化]
図4は、本発明の実施の形態に係る第一の脳機能計測方法を
図1に示された制御部3による制御により実現する方法を示すフローチャートである。以下において、
図3を参照しつつ、
図4に示された第一の脳機能計測方法を詳しく説明する。なお、
図4に示された第一の脳機能計測方法は、
図1に示された制御部3による制御により実現する場合に限られないことは言うまでもない。
【0017】
ステップS1において、制御部3は、隣接する第一の光検出プローブD1と第二の光照射プローブS2との間のチャンネルCH2につき第一の光検出プローブD1で計測される光量が、第一の光検出プローブD1に隣接する第一の光照射プローブS1と第一の光検出プローブD1との間のチャンネルCH1につき第一の光検出プローブD1で観測された光量の値(観測値)になるよう、第二の光照射プローブS2に接続された光減衰器12を制御することにより、第二の光検出プローブD2で検出される光量を調節する。
【0018】
次に、ステップS2において、制御部3は、第二の光照射プローブS2と第二の光照射プローブS2に隣接する第二の光検出プローブD2との間のチャンネルCH3につき第二の光検出プローブD2で計測される光量が上記観測値になるよう、光減衰器14を制御することにより、第二の光検出プローブD2で検出される光量を調節する。
【0019】
次に、ステップS3において、制御部3は、複数の光照射プローブの中から最大の実効入射光量を持つ光照射プローブを選択すると共に、複数の光検出プローブの中から最大の実効検出効率を持つ光検出プローブを選択する。
【0020】
次に、ステップS4において、制御部3は、ステップS3で選択された光照射プローブと光検出プローブを結ぶ最短経路に位置する各々のチャンネルについて、上記選択された光照射プローブから上記選択された光検出プローブにむかう順序でステップS1及びステップS2を実行したのち、前記最短経路の各々のチャンネルについて、上記選択された光検出プローブから上記選択された光照射プローブにむかう順序でステップS2及びステップS1を実行する。
【0021】
次に、ステップS5において、制御部3は、上記最短経路に位置する各々のチャンネルと、当該チャンネルに隣接するチャンネルとの間において、ステップS1及びステップS2を実行する。以下において、
図4に示された第一の脳機能計測方法の具体例を詳しく説明する。
【0022】
チャンネルkに関し各波長λにおける観測光量Jは、以下の式(1)で示される。
【0024】
ここで、r
i,0,λは光照射プローブと頭皮の間における光透過率の時間平均値、r
j,0,λは光検出プローブと頭皮の間における光透過率の時間平均値、Rは組織透過率の時間平均値を意味する。
【0025】
また、多チャンネルを構成するn本の光照射プローブとm本の光検出器プローブには、それぞれ、いずれか一つの
図1に示された光減衰器11〜14が接続されているところ、ai(但し、iは1以上n以下で、aiは0以上1以下)は光照射プローブに接続された光減衰器の透過率、aj(jは(n+1)以上(n+m)以下で、ajは0以上1以下)は光検出プローブに接続された光減衰器の透過率を示す。このとき、チャンネルkでのfNIRS信号に含まれた雑音の大きさhは、以下の式(2)で表される。
【0027】
ここで、n
j,λ(t)は光検出器プローブjの計測で生じる検出器雑音を表すが、同じ規格の検出器を用いる場合にはプローブ間での較差はほぼ無視できる。このため、式(2)を参照すると、チャンネル間でfNIRS信号に含まれた雑音の大きさhを平準化することは、各チャンネルにおける観測光量J
k,λを平準化することを意味することが分かる。
【0028】
ところで、式(1)の両辺の対数をとると、次式(3)となる。
【0030】
ただし、式(3)の係数C
1と係数C
2は次式(4)の関係を満たす。
【0032】
なお、以下においては、式(3)の第一項におけるI
i,λla
ir
i,0,λlを実効入射光量、第二項におけるr
j,0,λla
jを実効検出効率と呼ぶ。
【0033】
ここで、N個の計測チャンネルとこれを構成するプローブの関係をプローブ配置行列と呼ぶ行列Gで表現する。行列GはN×(n+m)の行列であり、その要素gは光照射プローブiと光検出器プローブjがチャンネルkを構成するとき、次式(5)で定義される。
【0035】
どのような規模やパターンのチャンネル若しくはプローブの配置であっても、これに対応して行列Gは必ず一つだけ定まり、また行列Gの擬似逆行列G
+もこれに対応して必ず一つ定まる。このようなプローブ配置行列を用いると、任意のチャンネルに関する式(3)の関係は次式(6)のような行列演算にまとめることができる。
【0037】
ここで、s
λは観測光量の対数logJ
k,λ(但し、kは1以上N以下)を要素とする列ベクトルであり、実測によって決められる。一方、ρ
λは推定したい実効入射光量に関する項log(I
i,λa
ir
i,0,λC
1)(但し、iは1以上n以下)及び、実効検出効率に関する項log(r
j,0,λla
jC
2)(但し、jは(n+1)以上(n+m)以下)を要素とする以下の式(7)で示される列ベクトルである。
【0039】
ここで、式(7)の左から擬似逆行列G
+を掛けることによって、ρ
λの特殊解が以下の式(8)のように求まる。
【0041】
ここで、式(7)と式(8)を比較すると、以下の式(9)及び式(10)の関係が得られる。
【0044】
このようにして各チャンネルの観測光量J
k,λが得られ、チャンネルの配置を指定する行列Gが分かっているときには、各光照射プローブの実効入射光量と各光検出プローブの実効検出効率は、それぞれe
bi,λ/C
1、e
bj,λ/C
2と求めることができる。
【0045】
ところで、観測光量を平準化する上で、観測光量のみならず実効入射光量と実効検出効率を知る必要があるが、その理由は以下の通りである。観測光量は実効入射光量と実効検出効率の積である。ここで、実効入射光量が著しく異なるチャンネルがあったとしても、それに応じた実効検出効率を持てば、見かけ上等しい観測光量を示すことが起こり得る。一方、このときの実効入射光量が一つでも安全な基準光量を超えてしまっていれば、この多チャンネル計測は安全に行われているとは言えなくなる。従って、安全な基準光量以下の光量しか生体組織に照射されていないことを確認するために実効入射光量をモニタリングすることが必要である。
【0046】
いま、
図3のような多チャンネルプローブ配置において、式(8)に基づいて最大の実効入射光量を持つ光照射プローブi
maxと最大の実効検出効率を持つ光検出プローブj
maxを選び出すことができる。ここでは、光照射プローブi
maxと光検出プローブj
maxを結ぶ最短の経路がν個の光照射プローブとν個の光検出プローブによって構成されているものとして、その経路上にある(2ν−1)個のチャンネルにおける観測光量の平準化について説明する。
【0047】
なお、本経路内の光照射プローブを示す符号としてS1,S2,…,Sνを、光検出プローブを表す符号としてD1,D2,…,Dνを、各チャンネルを表す符号としてCH1,CH2,…,CHκ(但し、κ=2ν−1)を用いる。従って、
図3においては、S1が上記の光照射プローブi
maxを表し、Dνが上記の光検出プローブj
maxを表している。
【0048】
以下では、説明を平易にするため、チャンネルCH1〜CH3のみを考える。このとき、式(6)の内容を次式(11)のように書き下すことができる。
【0050】
なお、式(11)におけるS
CH1からS
CH3は逐次、計測値を算出することができる。ここで、S
CH2とS
CH3をS
CH1の観測値/S
CH1に揃えることを考える。まず、チャンネルCH1とチャンネルCH2の観測光量をモニタしながら、S
CH2が上記観測値/S
CH1となるように光照射プローブS2に接続された光減衰器12を制御する。これにより、次式(12)で示される状態を実現することができる。
【0052】
次に、チャンネルCH2とチャンネルCH3における観測光量をモニタしながら、S
CH3が上記観測値/S
CH1となるように光検出プローブD2に接続された光減衰器14を制御する。このような制御により、次式(13)で示される状態を実現することができる。
【0054】
ここで、式(13)が成り立つための必要十分条件は、次式(14)で示される。
【0056】
従って、上記一連の操作によってチャンネルCH1〜CH3で観測光量がe
(ρS1+ρD1)に平準化されると同時に、全ての光照射プローブの実効入射光量と全ての検出プローブの実効検出効率がそれぞれe
ρS1、e
ρD1に平準化されていることが分かる。本操作は、透過率a
i,a
jを指定した値に制御することなく雑音平準化を達成するための中核的な手段であり、以下ではこれを隣接チャンネル平準化操作と呼ぶ。
図3においては、この隣接チャンネル平準化操作をチャンネルCH4(図示していない)からチャンネルCHνに敷衍することにより、全てのチャンネルCH1〜CHνで平準化することができる。
【0057】
このように、隣接チャンネル間における平準化の操作では、基点となるチャンネルの観測光量、またそのチャンネルを構成する光照射プローブ若しくは光検出プローブでの実効入射光量若しくは実効検出効率に合わせて隣接したチャンネルやプローブの平準化が行える。また、隣接チャンネル平準化操作は、光照射プローブ又は光検出プローブを介して連結されるチャンネルに対して敷衍してゆくことが可能である。このように連結されて構成される多チャンネルを、以下では連結チャンネル群と呼ぶ。
【0058】
ところで、上記の操作では、一連の光検出プローブの実効検出効率はe
ρD1に平準化される。しかし、チャンネルCHνを構成する光検出プローブDνの実効検出効率は全ての光検出プローブ中で最大であるため、e
ρDνがe
ρD1より大きいことは自明である。そこで、観測光量を最大化し、実現しうる最大のS/N比に雑音を平準化するためには、各光検出プローブの実効検出効率をe
ρDνに平準化する必要がある。以下、この操作について説明する。
【0059】
本目的を達成するためには、上記隣接チャンネル平準化操作をチャンネルCH(κ-1)まで行った時点で一旦終わらせる。この時点での状態について、煩雑を避けるためにチャンネルCH(κ-2)からチャンネルCHκ間についてのみ記述すると次式(15)となる。
【0061】
ここで、チャンネルCH(κ-1)とチャンネルCHκの観測光量をモニタしながら、S
CH(κ-1)が観測値/S
CHκとなるように光検出プローブD(ν-1)に接続された光減衰器を制御する。これにより、次式(16)で示される状態が実現される。
【0063】
式(16)からは、このとき次式(17)も成立していることがわかる。
【0065】
従って、チャンネルCH(κ-2)からチャンネルCHκで観測光量がe
(ρS1+ρDν)に平準化されると同時に、全ての光照射プローブの実効入射光量と全ての光検出プローブの実効検出効率がそれぞれe
ρS1、e
ρDνに平準化されていることが分かる。本操作をチャンネルCH(ν-3)からチャンネルCH1に遡行してゆけば、チャンネルCHκからチャンネルCH1までの全チャンネルを観測光量e
(ρS1+ρDν)に平準化できる。
【0066】
以上のような手順により、任意の連結チャンネル群内の最大の実効入射光量を持つ光照射プローブi
maxと最大の実効検出効率を持つ光検出プローブj
max間の観測光量を平準化することができ、さらに群内の全チャンネルについて隣接チャンネル平準化操作によって、観測光量の平準化を図ることができる。以上を踏まえて連結チャンネル群内を平準化する手順を整理すると、以下のようになる。
【0067】
第一に、プローブを被検体の頭部に装着した後に、照射側と検出側の全ての光減衰器の透過率を例えば約50%に設定し、全ての光源出力を生体(被検体)に対して安全な光照射の最大光量I
safeになるように設定する。
【0068】
第二に、波長λを選び、式(9)及び式(10)により各プローブのe
bi,λとe
bj,λを推定し、e
bi,λが最大値となる光照射プローブi
maxとe
bj,λが最大値となる光検出プローブj
maxを選び出す。
【0069】
第三に、光照射プローブi
maxと光検出プローブj
maxを結ぶ最短の経路上にあるチャンネルで隣接チャンネル平準化操作を行い、観測光量をe
(bimax,λ+bjmax,λ)に揃える。
【0070】
第四に、第三の手順で平準化されたチャンネルに隣接するチャンネルとの間でも同様に隣接チャンネル平準化操作を行う。
【0071】
第五に、第二から第四の手順を全ての使用波長について行う。そして、第六に、第五までの手順により決められた設定を保持した状態でfNIRS計測を行う。さらに、第七として、本計測終了と同時に第一の手順に戻るか、若しくは全ての光源出力を遮断する。
【0072】
[雑音分散の最小化]
雑音分散をなるべく低い水準に合わせて平準化するためには、計測される連結群の少なくとも一つのチャンネルを、
図5に示されるように、前額部などの無毛頭部に配置するための光照射プローブSa及び光検出プローブDaと、光照射プローブS及び光検出プローブDを配設することが望ましい。その理由は以下の通りである。
【0073】
無毛部のチャンネルにおける実効入射光量と実効検出効率は有毛部と比べて著しく大きく時間的にも恒常的であるため、当該チャンネルの雑音分散は著しく小さい。従って、無毛部を含んでプローブ装着を行った上でそのチャンネルを基点として上記平準化を行えば、安全な光照射強度の範囲内で最も良好な水準の信号対雑音比に全チャンネルを平準化することができる。
【0074】
次に、異なる日時にfNIRS計測を行って得られたデータや異なる対象者について得られたデータを統計的に比較したい場合に有用な雑音分散標準化手法について説明する。
【0075】
本手法は、独立した二つの連結チャンネル群(非連結二群)の雑音分散を平準化することに帰結するが、上記の連結チャンネル群内の平準化手順では実現することはできない。そこで以下では、時間的にのみ非連結な二群間の雑音平準化と、時間的かつ空間的に非連結な二群間の雑音平準化の方法について説明する。
【0076】
[時間的にのみ非連結なチャンネル群間の雑音平準化]
時間的にのみ非連結な二群とは、例えば同一の対象者や、同一の部位に対して異なる日時にfNIRS計測を行う場合をいう。以下においては、このときの二群の雑音平準化の方法を、
図1に示された制御部3による制御により実現する場合を例として、
図6を参照しつつ詳しく説明する。なお、
図6に示された脳機能計測方法は、
図1に示された制御部3による制御により実現する場合に限られないことは言うまでもない。
【0077】
図6に示された脳機能計測方法では、前提として、
図5に示されるように、被検体の頭部へホルダ20を装着することにより、前額部などの無毛頭部の形態上位置を同定しやすい部位にチャンネルを配置するための光照射プローブSa及び光検出プローブDaと、光照射プローブS及び光検出プローブDを配設する。
【0078】
そして、最初にステップS6では、制御部3は、
図4に示されたステップS1及びステップS2を実行した後に、ステップS1で得られた観測値を基準値(基準観測光量)として記憶部9に保存する。
【0079】
次に、ステップS7では、制御部3は、前額部などの無毛頭部における基準となる計測において、少なくとも一つの光検出プローブに接続された光減衰器の機能をオフすることにより、当該光検出プローブへ入射する光の透過率を百パーセントとし、少なくとも一つの光検出プローブが計測するチャンネルにつき観測された最大光量値(最大観測光量)を記憶部9に保存する。
【0080】
次に、ステップS8では、制御部3は、平準化を行いたい独立したチャンネル群のうち前額部などの無毛頭部における少なくとも一つの光検出プローブに接続された光減衰器の機能をオフにした状態で、当該光検出プローブへ入射する光の透過率を百パーセントとした上で、平準化対象とする当該チャンネルにつき観測される光量が上記最大光量値に一致するように、本チャンネルにつき計測するための光照射プローブに接続された光減衰器を調整することにより、本光照射プローブから照射される光量を調節する。
【0081】
次に、ステップS9では、制御部3は、ステップS8を実行した後に、平準化対象とするチャンネルにつき観測される光量の値が上記基準値に一致するように、本チャンネルにつき計測するための光検出プローブに接続された光減衰器を調整することにより、本光検出プローブで検出される光量を調節する。なお、この段階で、本チャンネルの実効入射光量と実効検出効率はそれぞれ、平準化基準となるチャンネル群における実効入射光量及び実効検出効率の値と一致することになる。
【0082】
次に、ステップS10では、制御部3は、平準化対象とした上記チャンネルを、
図4に示された第一の光検出プローブと第一の光照射プローブとの間のチャンネルに相当するものとして、
図4に示されたステップS1からステップS5を実行する。なお、本ステップにより、当該チャンネル群の雑音分散は平準化基準をなすチャンネル群の雑音分散と一致することになる。
【0083】
以下においては、
図6に示された脳機能計測方法が、非連結二群の平準化を実現することを説明する。いま、
図6に示されたステップS6及びステップS7で得られる基準観測光量と最大観測光量をそれぞれJ
(1)、J
(2)とし、log J
(1)をS
(1)、log J
(2)をS
(2)とする。このとき、次の式(18)及び式(19)が成立する。
【0086】
ここで、式(19)のρj
0は光検出プローブに接続された光減衰器の機能をオフにして光透過率を百パーセントとしたときの、最大観測光量の計測時における実効検出効率の対数である。いま、基準となる連結群とは独立した別の連結群の無毛部に装着されたチャンネルをCHとし、これを構成する光照射プローブをs、光検出プローブをdとすると、次式(20)が成立する。
【0088】
ここで、ステップS7に従って、チャンネルCHを計測するための光検出プローブdに接続された光減衰器の機能をオフにすると、段落[0073]で説明した無毛頭部での観測の恒常性から式(20)のρdはρj
0に一致するため、次式(21)が成立する。
【0090】
さらに、ステップS8で説明したように、S
CHがS
(2)となるように光照射プローブに接続された光減衰器を調整することにより、式(19)と式(21)の比較からρsをρi
maxとすることができることが分かる。このとき、次式(22)が成立する。
【0092】
さらに、ステップS9で説明したように、S
CHがS
(1)となるように光検出プローブに接続された光減衰器を調整することにより、式(18)と式(22)との比較からρj
0をρj
maxとすることができることが分かる。このとき、次式(23)が成立する。
【0094】
そして、本チャンネルを基点として
図4に示された方法により平準化を行うことにより、一つの連結群内のチャンネルを、基準となる連結群の雑音分散に平準化することができる。
【0095】
[時間的かつ空間的に非連結なチャンネル群間の雑音平準化]
運動関連領野などが位置する頭頂部の計測を行う場合には、上記のように前額部等に基点となるチャンネルを配置すると、計測したい位置から離れているため、しばしば非効率となる。一方、空間的に共通基点を持たない場合には、時間的のみならず空間的にも当該二群は非連結になる。
【0096】
このようなことから、以下では、時間的かつ空間的に非連結の二群の雑音平準化を行う方法を、
図1に示された制御部3による制御により実現する場合を例として、
図7を参照しつつ詳しく説明する。
【0097】
なお、
図7に示された脳機能計測方法は、
図1に示された制御部3による制御により実現する場合に限られないことは言うまでもない。
【0098】
図7に示された脳機能計測方法は、前提として、
図8に示されるように、連結群内の特定の隣接した二つの基準チャンネルを構成する3つのプローブ、すなわち基準照射プローブSS1,SS2及び基準検出プローブSDに対してのみ指定値制御可能な光減衰器を接続し、
これらの光減衰器の透過率が指定値になるよう、制御部3が各々の光減衰器を調整する。
【0099】
なお、
図9は、
図8に示された光照射プローブ及び光検出プローブの配置を二次元平面に記した模式図であるが、それぞれ
図9に示された光照射プローブS1が基準照射プローブSS1に対応し、光照射プローブS2が基準照射プローブSS2に対応する。また、
図9に示された光検出プローブD1が基準検出プローブSDに対応する。また、
図9に示されたチャンネルCH1,CH2が、上記二つの基準チャンネルに対応する。
【0100】
最初に、ステップS16において、制御部3は、基準チャンネルSCH1,SCH2を含む連結多チャンネル計測につき、
図4に示された方法を適用して雑音平準化を実行し、これにより得られた実効検出効率と実効入射光量の値を記憶部9に保存する。
【0101】
次に、別の日時や別の位置で連結多チャンネル計測を行った際、ステップS17において、制御部3は、基準検出プローブSDに接続された光減衰器を制御することにより、基準検出プローブSDにおける検出効率をステップS16で保存された実効検出効率とし、基準照射プローブSS1,SS2に接続された光減衰器を制御することにより、基準照射プローブSS1,SS2における照射光量をステップS16で保存された実効入射光量とする。
【0102】
次に、ステップS18において、制御部3は、ステップS17の後に、基準チャンネルSCH1,SCH2を基点として再度
図4に示されたステップS1からステップS5、すなわち隣接チャンネル平準化操作を実行し、連結チャンネル群内の全てのチャンネルについて雑音平準化を行う。
【0103】
以下において、
図9を参照しつつ、上記ステップS17における制御方法を具体的に説明する。
図9に示されたチャンネルCH1,CH2、すなわち光照射プローブS1,S2及び光検出プローブD1に関して次式(24)が成立する。
【0105】
ここで、式(24)にプローブ配置行列の一般化逆行列を演算することにより、次式(25)が得られる。
【0107】
ところで、平準化を終えている基準となる連結群の各チャンネルでは、式(23)が成立している。また、上記のような指定値制御が可能な素子を用いている場合には、ρxを実現している当該プローブxに接続された光減衰器の透過率a
xを具体的に式(7)により得ることができる。これらのことから、ρ
S1をρ
imaxとし、かつρ
D1をρ
jmaxとするためには、透過率a
S1をe
(ρimax-ρS1)倍にし、透過率a
D1をe
(ρjmax-ρD1)倍に変更すればよいことが分かる。
【0108】
また、式(24)及び
図9では、上記の基準検出プローブ及び基準照射プローブとして、一つの光検出プローブD1とこれを挟む二つの光照射プローブS1,S2が用いられているが、これらの替わりに、一つの光照射プローブとこれを挟む二つの光検出プローブを用いた場合にも、同じ方法により当該連結群の平準化が可能である。
【0109】
以上のような本発明の実施の形態に係る脳機能計測装置及び本装置を含む脳機能計測システムや脳機能計測方法によれば、当該装置の較正作業を不要にし、若しくは最小限に留めることができる。すなわち、光減衰器の透過率を指定値に調整せずに、連結チャンネル群内の全てのチャンネルの雑音を平準化することができる。
【0110】
より具体的には、
図4及び
図6に示された方法によれば、当該光減衰器の較正は全く不要となる。一方、
図7に示された方法においては、3つのプローブで指定値制御が可能な光減衰器を用いる必要があるが、この場合にもいかにチャンネル数が大規模化しても、指定値制御が可能な光減衰器は上記3つのプローブに接続される3個だけで足りることになる。従って、脳機能計測装置や本装置を含むシステムの調整メンテナンスを大幅に簡略化することができ、小型化も可能になる。
【0111】
また、他面においては、本発明の実施の形態に係る脳機能計測装置及び本装置を含む脳機能計測システムや脳機能計測方法によれば、複数の独立した連結群の間の雑音分散を平準化することができる。その方法には、
図6に示されたように、時間的に雑音分散が不変と想定できる基点を群間で共通に設定する方法と、
図7に示されたように、一つの群内の隣接した二つのチャンネルを構成するプローブにのみ指定値制御が可能な光減衰器を用いる方法がある。
【0112】
これら双方の方法は、一人の被験者におけるデータの経時的変化の統計的比較を可能にするものである。加えて、後者の方法は、複数の被験者や複数の頭部部位での計測に対しての統計的比較も可能にするものである。
【0113】
さらに、他面においては、本発明の実施の形態に係る脳機能計測装置及び本装置を含む脳機能計測システムや脳機能計測方法によれば、無毛部に置かれたチャンネルを平準化の基点とすることにより、連結化が可能なあらゆる部位や日時の計測における雑音分散を無毛部の水準に合わせて平準化することができる。これにより、安全な光照射強度の範囲を遵守した上で達成しうる最大限の信号対雑音比を定常的に実現することができる。