特許第6785295号(P6785295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6785295発色組成物、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び発色性化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785295
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】発色組成物、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び発色性化合物
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20201109BHJP
   C09B 23/01 20060101ALI20201109BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20201109BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20201109BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20201109BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20201109BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20201109BHJP
   B41N 1/14 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   C09B67/20 F
   C09B23/01CSP
   C09K9/02 B
   G03F7/00 503
   G03F7/004 505
   G03F7/004 507
   G03F7/027
   G03F7/11 501
   B41N1/14
【請求項の数】12
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2018-500109(P2018-500109)
(86)(22)【出願日】2017年2月13日
(86)【国際出願番号】JP2017005199
(87)【国際公開番号】WO2017141882
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2016-30505(P2016-30505)
(32)【優先日】2016年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-21607(P2017-21607)
(32)【優先日】2017年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】野越 啓介
(72)【発明者】
【氏名】出井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】水野 明夫
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/027886(WO,A1)
【文献】 特開2017−13318(JP,A)
【文献】 特開2006−96027(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/132721(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/115598(WO,A1)
【文献】 特開昭61−248789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00−69/10
C09K 9/00−9/02
G03F 7/00−7/42
B41N 1/00−1/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を含有する発色組成物。
【化101】

式(1)中、Rは下記式(5)で表される基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、あるいはR及びRは互いに連結して環を形成してもよい。Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又は下記式(2)〜(4)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Zaは電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式(1)で表される化合物は、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)〜(4)で表される基を少なくとも1つ有する。
【化102】

式(2)〜(4)中、R10は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。Wは単結合又は酸素原子を表す。n1は1〜45の整数を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−R14を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
【化103】

式(5)中、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Eは下記式(6)で表されるピリジニウム基を表す。*は結合部位を表す。
【化104】

式(6)中、R17はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R17が複数存在する場合、複数のR17は同じでも異なってもよく、あるいは複数のR17が連結して環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。R18はアルキル基、アリール基又は式(2)〜(4)で表される基を表す。Zbは電荷を中和するための対イオンを表す。
【請求項2】
前記式(6)中、複数のR17が連結して環を形成している又はn2が0を表す請求項1に記載の発色組成物。
【請求項3】
前記式(1)のAr又はArが、下記式(7)で表される基を形成する基である請求項1又は2に記載の発色組成物。
【化105】

式(7)中、R19は炭素数1〜12のアルキル基又は前記式(2)〜(4)で表される基を表す。n3は1〜4の整数を表す。*は結合部位を表す。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物が、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)で表される基を少なくとも1つ有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の発色組成物。
【請求項5】
前記式(1)のR及びRが、式(2)で表される基である請求項1〜4のいずれか一項に記載の発色組成物。
【請求項6】
更に、バインダーポリマーを含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の発色組成物。
【請求項7】
更に、重合性化合物を含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の発色組成物。
【請求項8】
更に、重合開始剤を含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の発色組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の発色組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版。
【請求項10】
前記画像記録層の上に、保護層を有する請求項に記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
請求項又は10に記載の平版印刷版原版を画像露光した後、印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方により、前記画像記録層の未露光部分を除去する平版印刷版の作製方法。
【請求項12】
下記式(1)で表される発色性化合物。
【化106】

式(1)中、Rは下記式(5)で表される基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、あるいはR及びRは互いに連結して環を形成してもよい。Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又は下記式(2)〜(4)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Zaは電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式(1)で表される化合物は、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)〜(4)で表される基を少なくとも1つ有する。
【化107】

式(2)〜(4)中、R10は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。Wは単結合又は酸素原子を表す。n1は1〜45の整数を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−R14を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
【化108】

式(5)中、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Eは下記式(6)で表されるピリジニウム基を表す。*は結合部位を表す。
【化109】

式(6)中、R17はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R17が複数存在する場合、複数のR17は同じでも異なってもよく、あるいは複数のR17が連結して環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。R18はアルキル基、アリール基又は式(2)〜(4)で表される基を表す。Zbは電荷を中和するための対イオンを表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色組成物、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び発色性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
【0003】
現在、平版印刷版原版から平版印刷版を作製する製版工程においては、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術による画像露光が行われている。即ち、画像露光は、レーザーやレーザーダイオードを用いて、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版原版に走査露光などにより行われる。
【0004】
また、地球環境への関心の高まりから、平版印刷版原版の製版に関して、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境問題がクローズアップされて、これに伴い、現像処理の簡易化又は無処理化が指向されている。簡易な現像処理の一つとして、「機上現像」と呼ばれる方法が提案されている。機上現像は、平版印刷版原版を画像露光後、従来の現像処理は行わず、そのまま印刷機に取り付け、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
【0005】
一般に、平版印刷版を印刷機に取り付ける前工程として、平版印刷版に目的通りの画像記録がされているか、平版印刷版上の画像を検査、識別する作業(検版)が行われる。特に、多色印刷においては、見当合わせの目印となるトンボ(レジスタマーク)が描きこまれていることを判別できるかことが印刷作業において重要である。
【0006】
通常の現像処理行程を伴う平版印刷版原版は、一般に画像記録層を着色することにより現像処理によって着色画像が得られるので、印刷機に印刷版を取り付ける前に画像を確認することは容易である。
他方、通常の現像処理を行わない機上現像型又は無処理(無現像)型の平版印刷版原版では、平版印刷版原版を印刷機に取り付ける段階で平版印刷版原版上の画像を確認することが困難であり、検版を十分行うことができない。そのため、機上現像型又は無処理(無現像)型平版印刷版原版は、露光した段階で画像を確認する手段、即ち、露光領域が発色又は消色する、いわゆるプリントアウト画像が形成されることが要求されている。更に、作業性向上の観点から、発色又は消色した露光領域が時間経過後も変化せず、発色又は消色した状態を維持することも重要である。
【0007】
プリントアウト画像を形成する手段として、特許文献1及び2には、赤外線又は熱によりプリントアウト画像を形成し得る特定構造のIR染料を含有する感熱性像形成要素、感熱性平版印刷版前駆体及びそれを用いる平版印刷版の作製方法が記載されている。
また、特許文献3には、特定構造の化合物と特定構造のIR染料などを含有する平版印刷版原版及びそれを用いる平版印刷版の作製方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特表2008−544053号公報
【特許文献2】日本国特表2008−544322号公報
【特許文献3】日本国特開2013−199089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の赤外線吸収染料を含有する感熱性像形成要素は、発色性が十分ではない。また、特許文献1〜3に記載の赤外線吸収染料を含有する平版印刷版原版は、発色性に起因して視認性(検版性)が十分でない。更に、機上現像性が十分でない。加えて、平版印刷版原版が白灯に曝された場合の安定性(以下、白灯安定性ともいう)が十分でなく、機上現像性が低下することが判明した。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、発色性が優れ、かつ経時による退色が少ない発色組成物を提供することである。
本発明が解決しようとする他の課題は、発色による視認性に優れ、経時しても優れた視認性を維持することができ、良好な機上現像性を示し、白灯安定性に優れ、耐刷性及び調子再現性においても良好な平版印刷版原版、及び、上記平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法を提供することである。
本発明が解決しようとする更に他の課題は、発色性が優れ、かつ経時による退色が少ない発色性化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、下記式(1)で表される化合物を用いることにより、上記課題を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記の構成を包含する。
<1> 下記式(1)で表される化合物を含有する発色組成物。
【化110】

式(1)中、Rは下記式(5)で表される基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、あるいはR及びRは互いに連結して環を形成してもよい。Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又は下記式(2)〜(4)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Zaは電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式(1)で表される化合物は、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)〜(4)で表される基を少なくとも1つ有する。
【化111】

式(2)〜(4)中、R10は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。Wは単結合又は酸素原子を表す。n1は1〜45の整数を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−R14を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
【化112】

式(5)中、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Eは下記式(6)で表されるピリジニウム基を表す。*は結合部位を表す。
【化113】

式(6)中、R17はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R17が複数存在する場合、複数のR17は同じでも異なってもよく、あるいは複数のR17が連結して環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。R18はアルキル基、アリール基又は式(2)〜(4)で表される基を表す。Zbは電荷を中和するための対イオンを表す。
<2> 上記式(6)中、複数のR17が連結して環を形成している又はn2が0を表す<1>に記載の発色組成物。
<3> 上記式(1)のAr又はArが、下記式(7)で表される基を形成する基である<1>又は<2>に記載の発色組成物。
【化114】

式(7)中、R19は炭素数1〜12のアルキル基又は上記式(2)〜(4)で表される基を表す。n3は1〜4の整数を表す。*は結合部位を表す。
<4> 上記式(1)で表される化合物が、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)で表される基を少なくとも1つ有する<1>〜<3>のいずれか一項に記載の発色組成物。
<5> 上記式(1)のR及びRが、式(2)で表される基である<1>〜<4>のいずれか一項に記載の発色組成物。
<6> 更に、バインダーポリマーを含有する<1>〜<5>のいずれか一項に記載の発色組成物。
<7> 更に、重合性化合物を含有する<1>〜<6>のいずれか一項に記載の発色組成物。
<8> 更に、重合開始剤を含有する<1>〜<7>のいずれか一項に記載の発色組成物。
> <1>〜<>のいずれか一項に記載の発色組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版。
10> 上記画像記録層の上に、保護層を有する<>に記載の平版印刷版原版。
11> <>又は<10>に記載の平版印刷版原版を画像露光した後、印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方により、上記画像記録層の未露光部分を除去する平版印刷版の作製方法。
12> 下記式(1)で表される発色性化合物。
【化115】

式(1)中、Rは下記式(5)で表される基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、あるいはR及びRは互いに連結して環を形成してもよい。Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又は下記式(2)〜(4)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Zaは電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式(1)で表される化合物は、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)〜(4)で表される基を少なくとも1つ有する。
【化116】

式(2)〜(4)中、R10は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。Wは単結合又は酸素原子を表す。n1は1〜45の整数を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−R14を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
【化117】

式(5)中、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Eは下記式(6)で表されるピリジニウム基を表す。*は結合部位を表す。
【化118】

式(6)中、R17はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R17が複数存在する場合、複数のR17は同じでも異なってもよく、あるいは複数のR17が連結して環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。R18はアルキル基、アリール基又は式(2)〜(4)で表される基を表す。Zbは電荷を中和するための対イオンを表す。
本発明は、上記<1>〜<1>に記載の発色組成物、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び発色性化合物に関するものであるが、その他の事項についても参考のために記載する。
(1) 下記式(1)で表される化合物を含有する発色組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1)中、Rは熱又は赤外線露光によりR−O結合が開裂する基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、あるいはR及びRは互いに連結して環を形成してもよい。Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又は下記式(2)〜(4)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Zaは電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式(1)で表される化合物は、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)〜(4)で表される基を少なくとも1つ有する。
【0014】
【化2】
【0015】
式(2)〜(4)中、R10は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。Wは単結合又は酸素原子を表す。n1は1〜45の整数を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−R14を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
(2)上記式(1)のRが、下記式(5)で表される基である(1)に記載の発色組成物。
【0016】
【化3】
【0017】
式(5)中、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Eはオニウム基を表す。*は結合部位を表す。
(3)上記式(5)のEが、下記式(6)で表されるピリジニウム基である(2)に記載の発色組成物。
【0018】
【化4】
【0019】
式(6)中、R17はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R17が複数存在する場合、複数のR17は同じでも異なってもよく、あるいは複数のR17が連結して環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。R18はアルキル基、アリール基又は式(2)〜(4)で表される基を表す。Zbは電荷を中和するための対イオンを表す。
(4)上記式(1)のAr又はArが、下記式(7)で表される基を形成する基である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の発色組成物。
【0020】
【化5】
【0021】
式(7)中、R19は炭素数1〜12のアルキル基又は上記式(2)〜(4)で表される基を表す。n3は1〜4の整数を表す。*は結合部位を表す。
(5)上記式(1)で表される化合物が、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)で表される基を少なくとも1つ有する(1)〜(4)のいずれか一項に記載の発色組成物。
(6)上記式(1)のR及びRが、式(2)で表される基である(1)〜(5)のいずれか一項に記載の発色組成物。
(7)更に、バインダーポリマーを含有する(1)〜(6)のいずれか一項に記載の発色組成物。
(8)更に、重合性化合物を含有する(1)〜(7)のいずれか一項に記載の発色組成物。
(9)更に、重合開始剤を含有する(1)〜(8)のいずれか一項に記載の発色組成物。
(10)更に、酸発色剤を含有する(1)〜(9)のいずれか一項に記載の発色組成物。
(11)上記酸発色剤が、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及びスピロラクタム化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、(10)に記載の発色組成物。
(12)(1)〜(11)のいずれか一項に記載の発色組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版。
(13)上記画像記録層の上に、保護層を有する(12)に記載の平版印刷版原版。
(14)(12)又は(13)に記載の平版印刷版原版を画像露光した後、印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方により、上記画像記録層の未露光部分を除去する平版印刷版の作製方法。
(15)下記式(1)で表される発色性化合物。
【0022】
【化6】
【0023】
式(1)中、Rは熱又は赤外線露光によりR−O結合が開裂する基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、あるいはR及びRは互いに連結して環を形成してもよい。Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又は下記式(2)〜(4)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Zaは電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式(1)で表される化合物は、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)〜(4)で表される基を少なくとも1つ有する。
【0024】
【化7】
【0025】
式(2)〜(4)中、R10は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。Wは単結合又は酸素原子を表す。n1は1〜45の整数を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−R14を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、発色性が優れ、かつ経時による退色が少ない発色組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、発色による視認性に優れ、経時しても優れた視認性を維持することができ、良好な機上現像性を示し、白灯安定性に優れ、耐刷性及び調子再現性においても良好な平版印刷版原版を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、発色性が優れ、かつ経時による退色が少ない発色性化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0028】
[発色組成物]
本発明に係る発色組成物は、下記式(1)で表される化合物を含有する。
【0029】
【化8】
【0030】
式(1)中、Rは熱又は赤外線露光によりR−O結合が開裂する基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、あるいはR及びRは互いに連結して環を形成してもよい。Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又は下記式(2)〜(4)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Zaは電荷を中和するための対イオンを表す。但し、上記式(1)で表される化合物は、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に下記式(2)〜(4)で表される基を少なくとも1つ有する。
【0031】
【化9】
【0032】
式(2)〜(4)中、R10は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。Wは単結合又は酸素原子を表す。n1は1〜45の整数を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−R14を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
【0033】
<式(1)で表される化合物>
本発明に係る発色組成物に含有される式(1)で表される化合物(以下、単に、化合物Aということもある)について詳細に説明する。
【0034】
式(1)で表される化合物は、熱又は赤外線エネルギーにより分解し、高視認性の発色体を生成する特性を有する。本明細書において、発色とは、加熱又は赤外線露光前に比べて、加熱又は赤外線露光後により強く着色するか、あるいは吸収が短波長化し可視光領域に吸収を有するようになることを意味する。即ち、式(1)で表される化合物は、熱又は赤外線露光により分解し、加熱又は赤外線露光前に比べて、可視光領域における吸収が増加するか、あるいは吸収が短波長化し可視光領域に吸収を有するようになる化合物である。式(1)で表される化合物は、熱又は赤外線露光により分解して500〜600nmに極大吸収波長を有する化合物を生成する化合物であることが好ましい。
【0035】
式(1)で表される化合物の発色機構は、以下に示すように、熱又は赤外線露光により、R−O結合が開裂し、開裂した酸素原子がカルボニル基を形成し、高視認性の発色体であるメロシアニン色素を生成すると考えられる。
また、メロシアニン色素が生成するためには、Rとして、熱又は赤外線露光によりR−O結合が開裂する基を有すると共に、Rとシアニン色素構造とが酸素原子を介して結合していることも重要な要因であると考えられる。
【0036】
【化10】
【0037】
式(1)において、Rは、熱又は赤外線露光によりR−O結合が開裂する基を表す。具体的には、外部から与えられた熱エネルギー又は赤外線を吸収し、生じた励起状態から基底状態に戻る際に発生するエネルギーもしくは励起状態から進行する化学反応により、式(1)で表される化合物の分解又は異性化反応が進行し、R−O結合が開裂するような基が挙げられる。
がアリール基又は直鎖のアルキル基の場合、熱又は赤外線露光によりR−O結合の開裂は起こらない。
で表される基については、後で更に詳細に記載する。
【0038】
〜R及びRにおけるアルキル基は、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜15のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び、2−ノルボルニル基が挙げられる。
アルキル基の中で、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が特に好ましい。
【0039】
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0040】
におけるアリール基は、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、炭素数6〜20のアリール基がより好ましく、炭素数6〜12のアリール基が更に好ましい。
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、p−メチルチオフェニル基、p−フェニルチオフェニル基等が挙げられる。
アリール基の中で、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基又はナフチル基が好ましい。
【0041】
及びRは、連結して環を形成していることが好ましい。
及びRが連結して環を形成する場合、5員環又は6員環が好ましく、5員環が特に好ましい。
【0042】
及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表し、−NR−又はジアルキルメチレン基が好ましく、ジアルキルメチレン基がより好ましい。
は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、アルキル基が好ましい。
【0043】
又はRにおける式(2)〜(4)で表される基については、後で詳細に記載する。
及びRは、同じ基であることが好ましい。
【0044】
〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。上記ベンゼン環及びナフタレン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ホスホン酸基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基が好ましい。
また、式(1)で表される化合物の極大吸収波長を長波長化し、また、発色性及び平版印刷版の耐刷性を向上させる観点から、Ar及びArはそれぞれ独立に、ナフタレン環、又は、アルキル基もしくはアルコキシ基を置換基として有するベンゼン環を形成する基が好ましく、ナフタレン環、又は、アルコキシ基を置換基として有するベンゼン環を形成する基がより好ましく、ナフタレン環、又は、メトキシ基を置換基として有するベンゼン環を形成する基が特に好ましい。
【0045】
式(1)において、Ar又はArが、下記式(7)で表される基を形成する基であることが好ましい。
【0046】
【化11】
【0047】
式(7)中、R19は炭素数1〜12のアルキル基又は上記式(2)〜(4)で表される基を表す。n3は1〜4の整数を表す。*は結合部位を表す。
【0048】
Zaは、電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式(1)で表される化合物が、その構造中に対応するイオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。アニオン種を示す場合は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、ヘキサフルオロホスフェートイオンが特に好ましい。カチオン種を示す場合は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンがより好ましい。
〜R、R、Ar、Ar、Y及びYは、アニオン構造やカチオン構造を有していてもよく、R〜R、R、Ar、Ar、Y及びYの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンであるが、例えば、R〜R、R、Ar、Ar、Y及びYに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
【0049】
で表される基について、以下に詳細に説明する。
発色性の観点から、Rは、下記式(1−1)〜式(1−7)のいずれかで表される基が好ましく、下記式(1−1)〜式(1−3)のいずれかで表される基がより好ましい。
【0050】
【化12】
【0051】
式(1−1)〜(1−7)中、●は、式(1)中のO原子との結合部位を表し、R20はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、−OR24、−NR2526又は−SR27を表し、R21はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R22はアリール基、−OR24、−NR2526、−SR27、−C(=O)R28、−OC(=O)R28又はハロゲン原子を表し、R23はアリール基、アルケニル基、アルコキシ基又はオニウム基を表し、R24〜R27はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R28はアルキル基、アリール基、−OR24、−NR2526又は−SR27を表し、Zは電荷を中和するための対イオンを表す。
【0052】
20、R21及びR24〜R28がアルキル基である場合の好ましい態様は、R〜R及びRにおけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
20及びR23におけるアルケニル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が更に好ましい。
20〜R28がアリール基である場合の好ましい態様は、Rにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
【0053】
発色性の観点から、式(1−1)におけるR20は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、−OR24、−NR2526又は−SR27が好ましく、アルキル基、−OR24、−NR2526又は−SR27がより好ましく、アルキル基又は−OR24が更に好ましく、−OR24が特に好ましい。
また、式(1−1)におけるR20がアルキル基である場合、上記アルキル基は、α位にアリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールスルホニル基を有するアルキル基であってもよく、α位にアリールチオ基又はアルキルオキシカルボニル基を有するアルキル基が好ましい。
式(1−1)におけるR20が−OR24である場合、R24は、アルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、イソプロピル基又はtert−ブチル基が更に好ましく、t−ブチル基が特に好ましい。
式(1−1)におけるR20がアルケニル基である場合、上記アルケニル基は、アリール基、又はヒドロキシアリール基を有するアルケニル基であってもよい。
【0054】
発色性の観点から、式(1−2)におけるR21は、水素原子が好ましい。
また、発色性の観点から、式(1−2)におけるR22は、−C(=O)OR24、−OC(=O)OR24又はハロゲン原子が好ましく、−C(=O)OR24又は−OC(=O)OR24がより好ましい。式(1−2)におけるR22が−C(=O)OR24又は−OC(=O)OR24である場合、R24は、アルキル基が好ましい。
【0055】
発色性の観点から、式(1−3)におけるR21はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基が好ましく、また、式(1−3)における少なくとも1つのR21は、アルキル基がより好ましい。
また、R21におけるアルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数3〜10のアルキル基がより好ましい。
更に、R21におけるアルキル基は、分岐を有するアルキル基が好ましく、第二級又は第三級アルキル基がより好ましく、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又は、tert−ブチル基が更に好ましい。
また、発色性の観点から、式(1−3)におけるR23は、アリール基、アルコキシ基又はオニウム基が好ましく、p−ジメチルアミノフェニル基又はピリジニウム基がより好ましく、ピリジニウム基が更に好ましい。
23におけるオニウム基としては、ピリジニウム基、アンモニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。オニウム基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられるが、アルキル基、アリール基及びこれらを組み合わせた基が好ましい。
中でも、ピリジニウム基が好ましく、N−アルキル−3−ピリジニウム基、N−ベンジル−3−ピリジニウム基、N−(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)−3−ピリジニウム基、N−アルコキシカルボニルメチル−3−ピリジニウム基、N−アルキル−4−ピリジニウム基、N−ベンジル−4−ピリジニウム基、N−(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)−4−ピリジニウム基、N−アルコキシカルボニルメチル−4−ピリジニウム基、又は、N−アルキル−3,5−ジメチル−4−ピリジニウム基がより好ましく、N−アルキル−3−ピリジニウム基、又は、N−アルキル−4−ピリジニウム基が更に好ましく、N−メチル−3−ピリジニウム基、N−オクチル−3−ピリジニウム基、N−メチル−4−ピリジニウム基、又は、N−オクチル−4−ピリジニウム基が特に好ましく、N−オクチル−3−ピリジニウム基、又は、N−オクチル−4−ピリジニウム基が最も好ましい。
また、R23がピリジニウム基である場合、対アニオンとしては、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、p−トルエンスルホネートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましい。
【0056】
発色性の観点から、式(1−4)におけるR20は、アルキル基又はアリール基が好ましく、2つのR20のうち、一方はアルキル基、他方はアリール基がより好ましい。上記2つのR20は、連結して環を形成していてもよい。
発色性の観点から、式(1−5)におけるR20は、アルキル基又はアリール基が好ましく、アリール基がより好ましく、p−メチルフェニル基が更に好ましい。
発色性の観点から、式(1−6)におけるR20はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
発色性の観点から、式(1−7)におけるZは、電荷を中和するための対イオンであればよく、化合物全体として、上記Zaに含まれてもよい。
は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、又は、過塩素酸塩イオンが好ましく、p−トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンがより好ましい。
【0057】
発色性の観点から、更に好まくは、Rは下記式(5)で表される基である。
【0058】
【化13】
【0059】
式(5)中、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Eはオニウム基を表し、*は結合部位を表す。
【0060】
15又はR16で表されるアルキル基は、R〜R及びRにおけるアルキル基と同様であり、好ましい態様もR〜R及びRにおけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
15又はR16で表されるアリール基は、Rにおけるアリール基と同様であり、好ましい態様も、Rにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
Eで表されるオニウム基は、R23におけるオニウム基と同様であり、好ましい態様もR23におけるオニウム基の好ましい態様と同様である。
【0061】
式(5)において、Eで表されるオニウム基は、下記式(6)で表されるピリジニウム基が好ましい。
【0062】
【化14】
【0063】
式(6)中、R17はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R17が複数存在する場合、複数のR17は同じでも異なってもよく、あるいは複数のR17が連結して環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。R18はアルキル基、アリール基又は式(2)〜(4)で表される基を表す。Zは電荷を中和するための対イオンを表す。
【0064】
17又はR18で表されるアルキル基又はアリール基は、R〜R及びRにおけるアルキル基又はRにおけるアリール基と同様であり、好ましい態様もR〜R及びRにおけるアルキル基又はRにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
17で表されるアルコキシ基は、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
n2は、好ましくは、0である。
で表される電荷を中和するための対イオンは、式(1−7)におけるZと同様であり、好ましい態様も式(1−7)におけるZの好ましい態様と同様である。
【0065】
以下にRで表される基の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、TsOはトシレートアニオンを表し、●は結合部位を表す。
【0066】
【化15】
【0067】
【化16】
【0068】
【化17】
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
【化21】
【0073】
【化22】
【0074】
【化23】
【0075】
次に、式(1)で表される化合物が少なくとも1つ有する式(2)〜(4)で表される基について記載する。
【0076】
【化24】
【0077】
式(2)〜(4)中、R10は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。アルキレン基は直鎖でも分岐状でもよい。Wは単結合又は酸素原子を表す。n1は1〜45の整数を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−R14を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。アルキレン基は直鎖でも分岐状でもよい。Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
【0078】
10で表されるアルキレン基の具体例としては、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられ、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基が好ましく、n−プロピレン基が特に好ましい。
n1は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
11で表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
14で表されるアルキル基は、R11で表されるアルキル基と同様であり、好ましい態様もR11で表されるアルキル基の好ましい態様と同様である。
【0079】
式(2)で表される基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Meはメチル基、Etはエチル基を表し、*は結合部位を表す。
【0080】
【化25】
【0081】
式(3)又は(4)において、R12又はR13で表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチレン基、n−ドデシレン基等が挙げられ、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基が好ましく、エチレン基、n−プロピレン基が特に好ましい。
式(3)又は(4)で表される基が、式(1)で表される化合物のAr又はArで表される基中に存在する場合、R12又はR13は単結合が好ましい。
式(3)又は(4)で表される基が、式(1)で表される化合物のRで表される基中に存在する場合あるいはR又はRで表される基として存在する場合、R12又はR13はアルキレン基が好ましい。
式(4)において、2つ存在するMは同じでも異なってもよい。
【0082】
式(3)又は(4)において、Mで表されるオニウム基の具体例としては、アンモニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。
【0083】
アンモニウム基は、下記式(A)で表される基を含む。
【0084】
【化26】
【0085】
式(A)中、Ra〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数20以下のアリール基、アルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基を表す。アリール基、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基、ヒドロキシル基が挙げられる。Ra〜Rとしては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6のアリール基が好ましい。
【0086】
アンモニウム基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0087】
【化27】
【0088】
ヨードニウム基は、下記式(B)で表される基を含む。
【0089】
【化28】
【0090】
式(B)中、Re〜Rfはそれぞれ独立に、上記式(A)におけるRa〜Rと同義である。好ましいRe〜Rfの例としては、炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0091】
ヨードニウム基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
【化29】
【0093】
ホスホニウム基は、下記式(C)で表される基を含む。
【0094】
【化30】
【0095】
式(C)中、Rg〜Rjはそれぞれ独立に、上記式(A)におけるRa〜Rと同義である。好ましいRg〜Rjの例としては、炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0096】
ホスホニウム基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない
【0097】
【化31】
【0098】
スルホニウム基は、下記式(D)で表される基を含む。
【0099】
【化32】
【0100】
式(D)中、Rk〜Rmはそれぞれ独立に、上記式(A)におけるRa〜Rと同義である。好ましい例としては、炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。好ましいR〜Rの例としては、炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0101】
スルホニウム基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
【化33】
【0103】
上記オニウム基の中で、アンモニウム基が好ましい。
式(1)で表される化合物中に、オニウム基を含む場合には、Mは該オニウム基であってもよい。
上記オニウム基は、分子内オニウム塩として存在してもよい。
【0104】
式(3)で表される基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Etはエチル基を表し、*は結合部位を表す。
【0105】
【化34】

【0106】
式(4)で表される基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Etはエチル基を表し、*は結合部位を表す。
【0107】
【化35】
【0108】
式(2)〜(4)で表される基の中で、式(2)で表される基が好ましい。
式(2)〜(4)で表される基は、式(1)で表される化合物中に1つ以上存在すればよい。式(2)〜(4)で表される基の数の上限は、5が好ましい。式(2)〜(4)で表される基の数は、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜3である。
式(2)〜(4)で表される基は、式(1)で表される化合物中R又はRで表される基として存在してもよいし、R、Ar又はArで表される基中に存在してもよい。
特に、R及びRで表される基として存在することが好ましい。又、Ar及びArで表される基中に存在することが好ましい。
【0109】
式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Meはメチル基を表し、TsOは、トシレートアニオンを表す。
【0110】
【化36】
【0111】
【化37】
【0112】
【化38】
【0113】
【化39】
【0114】
【化40】
【0115】
【化41】
【0116】
【化42】
【0117】
【化43】
【0118】
式(1)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明に係る発色組成物において、式(1)で表される化合物の含有量は、発色組成物の全固形分中、0.1〜95質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましく、1〜40質量%が更に好ましい。全固形分とは、組成物における溶剤等の揮発性成分を除いた成分の総量である。
【0119】
式(1)で表される化合物は、公知の方法を適用することにより合成することができる。例えば、以下に示す合成スキームに従って合成することができる。
例えば、上記式(1−1)、式(1−5)又は式(1−6)で表される基を導入する方法としては、下記式(S1)〜式(S3)で表される合成スキームが好適に挙げられる。また、上記式(1−2)〜式(1−4)のいずれかで表される基を導入する方法としては、下記式(S4)で表される合成スキームが好適に挙げられる。
下記式において、DMAPは、N,N−ジメチルアミノ−4−ピリジンを表し、AcONaは、酢酸ナトリウムを表し、NEtは、トリエチルアミンを表し、catecolは、カテコールを表す。また、Rは、式(1)における各部分に対応する基を表す。
【0120】
【化44】
【0121】
【化45】
【0122】
式(1)で表される化合物は、Rとして熱又は赤外線露光によりR−O結合が開裂する基を有し、更に、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)〜(4)で表される基を少なくとも1つ有する構造を持つ。このような構造上の特徴に起因して、式(1)で表される化合物を含有する発色組成物は、発色性が優れ、かつ経時による退色が少ないという特性を有するものと考えられる。
また、式(1)で表される化合物を画像記録層に含有する平版印刷版原版は、発色による視認性に優れ、経時しても優れた視認性を維持することができ、良好な機上現像性を示し、白灯安定性に優れ、耐刷性及び調子再現性においても良好な平版印刷版原版を提供することができるものと考えられる。
更に、式(1)で表される化合物は、それ自身優れた赤外線吸収性能を有するため、赤外線吸収剤として良好に機能する。従って、本発明に係る発色組成物を平版印刷版原版の画像記録層に用いる場合、実際上、式(1)で表される化合物以外に赤外線吸収剤を使用する必要はない。このことも、本発明の優れた効果の1つである。
【0123】
<バインダーポリマー>
本発明に係る発色組成物は、バインダーポリマーを含有することが好ましい。発色組成物に用いるバインダーポリマーとしては、皮膜性を有するポリマーが好ましく、感光性発色組成物や感熱性発色組成物に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。中でも、バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を包含する。
【0124】
発色組成物が平版印刷版原版の画像記録層に適用される場合、バインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキサイド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキサイド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキサイド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキサイド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0125】
アルキレンオキサイドとしては炭素数が2〜6のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが特に好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位におけるアルキレンオキサイドの繰返し数は2〜120が好ましく、2〜70がより好ましく、2〜50が更に好ましい。
アルキレンオキサイドの繰返し数が120以下であれば、摩耗による耐刷性、インキ受容性による耐刷性の両方が低下することがなく好ましい。
【0126】
ポリ(アルキレンオキサイド)部位は、バインダーポリマーの側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂の側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることがより好ましい。
【0127】
【化46】
【0128】
式(AO)中、yは2〜120を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は一価の有機基を表す。
一価の有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
式(AO)において、yは2〜70が好ましく、2〜50がより好ましい。Rは水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。Rは水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0129】
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。ポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合などの架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、ポリマー反応により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレンなどが挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又は−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0130】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CHCR1A=CR2A3A、−(CHO)CHCR1A=CR2A3A、−(CHCHO)CHCR1A=CR2A3A、−(CHNH−CO−O−CHCR1A=CR2A3A、−(CH−O−CO−CR1A=CR2A3A及び−(CHCHO)−X(式中、RA1〜RA3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、RA1とRA2又はRA3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0131】
エステル残基の具体例としては、−CHCH=CH、−CHCHO−CHCH=CH、−CHC(CH)=CH、−CHCH=CH−C、−CHCHOCOCH=CH−C、−CHCH−NHCOO−CHCH=CH及び−CHCHO−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CHCH=CH、−CHCH−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)及び−CHCH−OCO−CH=CHが挙げられる。
【0132】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0133】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、良好な感度と良好な保存安定性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、特に好ましくは2.0〜5.5mmolである。
【0134】
以下に機上現像用バインダーポリマーの具体例1〜11を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記例示化合物中、各繰返し単位に併記される数値(主鎖繰返し単位に併記される数値)は、当該繰返し単位のモル百分率を表す。側鎖の繰返し単位に併記される数値は、当該繰返し部位の繰返し数を示す。また、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0135】
【化47】
【0136】
【化48】
【0137】
バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として質量平均分子量(Mw)が、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000〜300,000であることが更に好ましい。
【0138】
必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
【0139】
本発明に係る発色組成物を平版印刷版原版の画像記録層に適用する場合、上記バインダーポリマーは、発色組成物中で、各成分のバインダーとして機能するポリマーとして存在してもよいし、ポリマー粒子の形状で存在してもよい。粒子の形状で存在する場合には、平均一次粒子径は、好ましくは10〜1,000nmであり、より好ましくは20〜300nmであり、更に好ましくは30〜120nmである。
【0140】
本発明に係る発色組成物においては、バインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーは、発色組成物中に任意な量で含有させることができる。バインダーポリマーの含有量は、発色組成物の用途などにより適宜選択できるが、一般に、発色組成物の全固形分に対して、1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がより好ましい。
【0141】
<重合開始剤>
本発明にかかる発色組成物は、重合開始剤を含有してもよい。発色組成物に用いられる重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルやカチオン等の重合開始種を発生する化合物であり、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などから適宜選択して用いることができる。
重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤が好ましい。また、重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物が挙げられる。
【0142】
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0022〜0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等が挙げられ。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物が挙げられる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(h)有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0028に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61−166544号、特開2002−328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0028〜0030に記載の化合物が好ましい。
【0143】
重合開始剤の中でも、硬化性の観点から、より好ましいものとして、オキシムエステル及びオニウム塩が挙げられ、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩等のオニウム塩が更に好ましく挙げられる。平版印刷版原版に用いる場合は、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が特に好ましい。ヨードニウム塩及びスルホニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に、電子供与性基を置換基として有する、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0145】
スルホニウム塩の例としては、トリアリールスルホニウム塩が好ましく、特に電子求引性基を置換基として有する、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4−ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0146】
重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の含有量は、発色組成物の全固形分に対して、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%である。
【0147】
<重合性化合物>
本発明に係る発色組成物は、重合性化合物を含有してもよい。重合性化合物を含有する本発明の発色組成物は、熱の付与及び/又は赤外線露光による発色性に加えて重合硬化機能を有する硬化性発色組成物である。
また、本発明の発色組成物は、重合開始剤及び重合性化合物を含有する硬化性組成物として好適に用いることができ、赤外線硬化性かつ赤外線感光性発色組成物としてより好適に用いることができる。
発色組成物に用いられる重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物が好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物がより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体もしくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態を持つことができる。
【0148】
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と、単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することもできる。これら化合物は、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報等に記載されている。
【0149】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0150】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている、1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させて得られる1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(RM4)COOCHCH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0151】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000−250211号公報、特開2007−94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0152】
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な発色組成物の用途等を考慮して任意に設定できる。
重合性化合物の含有量は、発色組成物の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、より好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは15〜60質量%である。
【0153】
<ラジカル生成助剤>
本発明に係る発色組成物は、ラジカル生成助剤を含有してもよい。ラジカル生成助剤は、発色組成物を平版印刷版原版の画像記録層に用いた場合、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。ラジカル生成助剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物等が挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N−フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N−フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等が挙げられる。
【0154】
これらラジカル生成助剤の中でも、発色組成物は、ボレート化合物を含有することが好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物の安定性及び後述する電位差の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましく、後述する電位差の観点から、電子求引性基を有するアリール基を1つ以上有するテトラアリールボレート化合物が特に好ましい。
電子求引性基としては、ハメット則のσ値が正である基が好ましく、ハメット則のσ値が0〜1.2である基がより好ましい。ハメットのσ値(σp値及びσm値)については、Hansch,C.;Leo,A.;Taft,R.W.,Chem.Rev.,1991,91,165−195に詳しく記載されている。
電子求引性基としては、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基がより好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。
【0155】
発色組成物がボレート化合物を含有する場合、上記式(1)で表される化合物の最高被占軌道(HOMO)と上記ボレート化合物の最高被占軌道との電位差ΔG2(ΔG2=上記式(1)で表される化合物のHOMO−ボレート化合物のHOMO)が、0.500eV以上が好ましく、0.585eV以上がより好ましく、0.608〜1.000eVが特に好ましい。
上記式(1)で表される化合物のHOMOと上記ボレート化合物のHOMOとの電位差が上記範囲であると、熱又は赤外線露光時以外におけるボレート化合物の安定性に優れるとともに、熱又は赤外線露光時において、ボレート化合物のHOMOより上記式(1)で表される化合物のHOMOへ電子移動が生じることにより、上記式(1)で表される化合物の最低空軌道(LUMO)への励起を促進し、上記式(1)で表される化合物の分解を促進すると考えられる。また、上記式(1)で表される化合物から重合開始剤への電子移動も促進し、発色組成物を平版印刷版原版の画像記録層に用いた場合、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与すると考えられる。
【0156】
上記式(1)で表される化合物のHOMO及びLUMOの計算は、以下の方法により行う。
まず、計算対象となる化合物における対アニオンは無視する。
量子化学計算ソフトウェアGaussian09を用い、構造最適化はDFT(B3LYP/6−31G(d))で行う。
MO(分子軌道)エネルギー計算は、上記構造最適化で得た構造でDFT(B3LYP/6−31+G(d,p)/CPCM(solvent=methanol))で行う。
上記MOエネルギー計算で得られたMOエネルギーEpre(単位:hartree)を以下の公式により、本発明においてHOMO及びLUMOの値として用いるEaft(単位:eV)へ変換する。
Eaft=0.823168×27.2114×Epre−1.07634
なお、27.2114は単にhartreeをeVに変換するための係数であり、0.823168と−1.07634とは調節係数であり、計算対象となる化合物のHOMOとLUMOとを計算が実測の値に合うように定めた。
式(1)で表される化合物のHOMOとボレート化合物のHOMOとの差分からΔG2を求める(ΔG2=式(1)で表される化合物のHOMO−ボレート化合物のHOMO)。
【0157】
ボレート化合物として具体的には、以下に示す化合物が挙げられる。ここで、Xは一価のカチオンを表し、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。また、Buはn−ブチル基を表す。
【0158】
【化49】
【0159】
【化50】
【0160】
【化51】
【0161】
【化52】
【0162】
ラジカル生成助剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
ラジカル生成助剤の含有量は、発色組成物の全固形分に対し、0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜25質量%がより好ましく、0.1〜20質量%が更に好ましい。
【0163】
<連鎖移動剤>
本発明の発色組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、発色組成物を平版印刷版原版の画像記録層に用いた場合、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオールがより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
【0164】
連鎖移動剤として具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0165】
【化53】
【0166】
【化54】
【0167】
【化55】
【0168】
【化56】
【0169】
連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、発色組成物の全固形分に対し、0.01〜50質量%が好ましく、0.05〜40質量%がより好ましく、0.1〜30質量%が更に好ましい。
【0170】
<赤外線吸収剤>
本発明に係る発色組成物は、赤外線吸収剤を含有することができる。赤外線吸収剤を含有することにより、本発明に係る発色組成物は、赤外線感光性発色組成物としてより好適に用いることができる。
また、本発明に係る発色組成物を感熱性発色組成物として用いる場合であっても、赤外線吸収剤を含有していてもよい。
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有する化合物である。また、赤外線吸収剤は、赤外線により励起して後述する重合開始剤等に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有していてもよい。
赤外線吸収剤は、750〜1,400nmの波長域に極大吸収を有することが好ましい。赤外線吸収剤としては、染料又は顔料が好ましく用いられる。
【0171】
染料としては、市販の染料、及び、例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知の染料が利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩が挙げられる。中でも、シアニン色素が好ましく、インドレニンシアニン色素が特に好ましい。
【0172】
シアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落0017〜0019に記載の化合物、特開2002−023360号公報の段落0016〜0021、特開2002−040638号公報の段落0012〜0037に記載の化合物、好ましくは特開2002−278057号公報の段落0034〜0041、特開2008−195018公報の段落0080〜0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007−90850号公報の段落0035〜0043に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5−5005号公報の段落0008〜0009、特開2001−222101号公報の段落0022〜0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008−195018号公報の段落0072〜0076に記載の化合物が好ましい。
【0173】
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
赤外線吸収剤は、発色組成物中に任意な量で含有させることができる。赤外線吸収剤の含有量は、発色組成物の全固形分100質量部に対し、0.05〜30質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましく、0.2〜10質量%であることが更に好ましい。
【0174】
<酸発色剤>
本発明に係る発色組成物は、酸発色剤を含むことが好ましい。
【0175】
本発明で用いられる「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色する性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
【0176】
このような酸発色剤の例としては、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(”クリスタルバイオレットラクトン”と称される)、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、
【0177】
3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ピロリジノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−N−エチル−N−フェニルアミノフェニル)フタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド等のフタリド類、
【0178】
4,4−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン−(4−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(4−クロロアニリノ)ラクタム、3,7−ビス(ジエチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
【0179】
3,6−ジメトキシフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジ−n−ヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’,3’−ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、
【0180】
3−N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−エトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−モルホリノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−Nn−プロピル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−オクチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
【0181】
3−N−(2’−メトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−イソブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−テトラヒドロフルフリル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(4’−メチルフェニル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3’−メチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2−ビス〔4’−(3−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチルフルオラン)−7−イルアミノフェニル〕プロパン、3−〔4’−(4−フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−〔4’−(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ−5,7−ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
【0182】
3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−n−プロポキシカルボニルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチル−4−ジn−ヘキシルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,7−ジアザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ブトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−フェニル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチル−ナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン−3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
【0183】
その他、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチル)アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン−3−オン、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、3’−N,N−ジベンジルアミノ−6’−N,N−ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、2’−(N−メチル−N−フェニル)アミノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オンなどが挙げられる。
【0184】
上記の中でも、本発明に用いられる酸発色剤は、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれたる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
【0185】
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H−3035、BLUE203、ATP、H−1046、H−2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE−DCF、Vermilion−DCF、PINK−DCF、RED−DCF、BLMB、CVL、GREEN−DCF、TH−107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB−2、ODB−4、ODB−250、ODB−BlackXV、Blue−63、Blue−502、GN−169、GN−2、Green−118、Red−40、Red−8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成品工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、H−3035、ATP、H−1046、H−2114、GREEN−DCF、Blue−63、GN−169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
【0186】
これらの酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
【0187】
本発明に係る発色組成物は、必要に応じて、上記以外の添加剤(例えば、界面活性剤)を含有することができる。
【0188】
本発明に係る発色組成物に含有される各成分は、適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製し、塗布液を支持体等に塗布、乾燥して、発色組成物膜を形成することができる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独、又は、2種以上を混合して使用することができる。塗布液中の固形分濃度は1〜50質量%程度であることが好ましい。固形分濃度とは、溶剤を除いた全成分の濃度である。
【0189】
本発明に係る発色組成物は、感熱性発色材料、赤外線感光性発色材料等に用いることができる。感熱性発色材料は、ファクシミリ、コンピューターの端末プリンタ、自動券売機、計測用レコーダー、スーパーマーケットやコンビニのレジなどで、チケットやレシートなどの感熱記録媒体として広範囲に利用可能である。
【0190】
また、本発明に係る発色組成物は、画像形成材料に好ましく用いられる。画像形成材料としては、平版印刷版原版、プリント配線基盤、カラーフィルター、フォトマスクなどの画像露光による発色を利用する画像形成材料並びに発色及び重合硬化を利用する画像形成材料が挙げられる。
本発明に係る発色組成物を使用した画像形成材料は、加熱、又は、赤外線を放射する光源で露光されることにより発色画像を形成する。加熱手段としては、公知の加熱手段を用いることができ、例えば、ヒーター、オーブン、ホットプレート、赤外線ランプ、赤外線レーザー等が挙げられる。赤外線を放射する光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザー等が挙げられる。
【0191】
[平版印刷版原版]
次に、本発明に係る発色組成物を平版印刷版原版に適用した例を記載する。
本発明に係る平版印刷版原版は、本発明に係る発色組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する。
以下に、本発明に係る発色組成物の特徴が顕著に発現される機上現像型の平版印刷版原版を例として説明する。
【0192】
〔画像記録層〕
平版印刷版原版の画像記録層には、現像適性及び印刷適性が要求される。このため、画像記録層に用いられる発色組成物は、上記式(1)で表される化合物及び上記バインダーポリマーを含有することが好ましい。機上現像型の平版印刷版原版の場合、バインダーポリマーは上記機上現像用バインダーポリマーが好ましく用いられる。
画像記録層に用いられる発色組成物は、更に、重合性化合物を含有することが好ましい。
画像記録層に用いられる発色組成物は、更に、重合開始剤、ラジカル生成助剤及び連鎖移動剤を単独で、又は、組み合わせて含有することが好ましい。
即ち、本発明に係る平版印刷版原版の画像記録層は、上記発色組成物が含有する各成分を含有することとなる。
画像記録層に含有される式(1)で表される化合物、バインダーポリマー、重合性化合物、重合開始剤、ラジカル生成助剤及び連鎖移動剤などの各構成成分並びにその含有量については、上記本発明に係る発色組成物における記載を参照することができる。
【0193】
画像記録層は、上記構成成分の他に、更に、ポリマー粒子、低分子親水性化合物、感脂化剤、及び、その他の成分を含有してもよい。
【0194】
(ポリマー粒子)
平版印刷版原版の機上現像性を向上させるために、画像記録層は、ポリマー粒子を含有してもよい。ポリマー粒子は、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できるポリマー粒子であることが好ましい。ポリマー粒子は、疎水性熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子及びミクロゲルが好ましい。
【0195】
疎水性熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー粒子が好適に挙げられる。
疎水性熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。疎水性熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
【0196】
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性基を有するポリマー粒子は、熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0197】
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよく、重合性基が好ましい。その例としては、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好適に挙げられる。
【0198】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報及び特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものが挙げられる。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層としては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0199】
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その内部及び表面の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
【0200】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するためには、公知の方法を用いることができる。
マイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましく、0.05〜2.0μmがより好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
ポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、5〜90質量%が好ましい。
【0201】
(低分子親水性化合物)
画像記録層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。低分子親水性化合物は、分子量1,000未満の化合物が好ましく、分子量800未満の化合物がより好ましく、分子量500未満の化合物が更に好ましい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類等が挙げられる。
【0202】
低分子親水性化合物としては、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類及びベタイン類から選ばれる少なくとも1つを含有させることが好ましい。
【0203】
有機スルホン酸塩類の具体例としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007−276454号公報の段落0026〜0031及び特開2009−154525号公報の段落0020〜0047に記載の化合物等が挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0204】
有機硫酸塩類としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位の数は1〜4が好ましく、塩はナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。具体例としては、特開2007−276454号公報の段落0034〜0038に記載の化合物が挙げられる。
【0205】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナート等が挙げられる。
【0206】
低分子親水性化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持することができる。
【0207】
低分子親水性化合物の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%が更に好ましい。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
低分子親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0208】
(感脂化剤)
画像記録層は、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等の感脂化剤を含有してもよい。特に、保護層に無機層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
【0209】
ホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナート等が挙げられる。
【0210】
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008−284858号公報の段落0021〜0037、特開2009−90645号公報の段落0030〜0057に記載の化合物等が挙げられる。
【0211】
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5〜80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009−208458号公報の段落0089〜0105に記載のポリマーが挙げられる。
【0212】
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009−208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を質量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000〜150,0000が好ましく、17,000〜140,000がより好ましく、20,000〜130,000が特に好ましい。
【0213】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5、Mw6.5万)
【0214】
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.01〜30.0質量%が好ましく、0.1〜15.0質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0215】
(その他の成分)
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落0114〜0159の記載を参照することができる。
【0216】
<画像記録層の形成>
本発明に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落0142〜0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般に0.3〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
【0217】
〔下塗り層〕
本発明に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
【0218】
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
【0219】
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO、−OPO、−CONHSO−、−SONHSO−、−COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、当該極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0220】
具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005−238816号、特開2005−125749号、特開2006−239867号、特開2006−215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005−125749号及び特開2006−188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0221】
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは0.2〜5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの質量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万〜30万がより好ましい。
【0222】
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
【0223】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/mが好ましく、1〜30mg/mがより好ましい。
【0224】
<保護層>
本発明に係る平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0225】
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005−250216号公報及び特開2006−259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0226】
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2−510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
【0227】
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSiO10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0228】
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、膨潤性合成雲母は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
【0229】
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0230】
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3〜20μm、より好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1〜50nm程度、面サイズ(長径)が1〜20μm程度である。
【0231】
無機層状化合物の含有量は、保護層の全固形分に対して、0〜60質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
【0232】
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機微粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤を保護層に含有させてもよい。
【0233】
保護層は公知の方法で塗布される。保護層の塗布量(固形分)は、0.01〜10g/mが好ましく、0.02〜3g/mがより好ましく、0.02〜1g/mが特に好ましい。
【0234】
<支持体>
本発明に係る平版印刷版原版の支持体は、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は更に必要に応じて、特開2001−253181号公報及び特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートによる表面親水化処理、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行ってもよい。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであることが好ましい。
【0235】
支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6−35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
【0236】
[平版印刷版の作製方法]
本発明に係る平版印刷版の作製方法は、本発明に係る平版印刷版原版を画像露光する工程(露光工程)、及び、画像露光後の平版印刷版原版を印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方により、画像記録層の未露光部を除去する工程(機上現像工程)を含むことが好ましい。
【0237】
<露光工程>
画像露光は、デジタルデータを赤外線レーザー等により走査露光する方法により行うことが好ましい。
露光光源の波長は、750〜1,400nmが好ましく用いられる。750〜1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。露光機構は内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等のいずれでもよい。
露光工程はプレートセッターなどにより公知の方法で行うことができる。また、露光装置を備えた印刷機を用いて、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で露光を行ってもよい。
【0238】
<機上現像工程>
機上現像工程においては、画像露光後の平版印刷版原版に何らの現像処理を施すことなく、印刷機上において印刷インキ及び湿し水を供給して印刷を開始すると、印刷途上の初期の段階で平版印刷版原版の未露光部分が除去され、それに伴って親水性支持体表面が露出し非画像部が形成される。印刷インキ及び湿し水としては、公知の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が用いられる。最初に平版印刷版原版表面に供給されるのは、印刷インキでも湿し水でもよいが、湿し水が除去された画像記録層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給することが好ましい。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【0239】
本発明に係る平版印刷版の作製方法は、上記工程以外に、公知の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、各工程の前に平版印刷版原版の位置や向き等を確認する検版工程や、機上現像工程の後に、印刷画像を確認する確認工程等が挙げられる。
【0240】
本発明に係る平版印刷版原版は、画像記録層の構成成分であるバインダーポリマー等を適宜選択することにより、現像液を用いる現像処理によっても平版印刷版を作製することができる。現像液を用いる現像処理は、アルカリ剤を含むpH14以下の高pHの現像液を用いる態様(アルカリ現像ともいう)、及び、界面活性剤及び/又は水溶性高分子化合物を含有するpH2〜11程度の現像液を用いる態様(簡易現像ともいう)を含む。アルカリ現像及び簡易現像は公知の方法により実施することができる。
【0241】
[発色性化合物]
本発明に係る発色性化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0242】
【化57】
【0243】
式(1)中、Rは熱又は赤外線露光によりR−O結合が開裂する基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、あるいはR及びRは互いに連結して環を形成してもよい。Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又は下記式(2)〜(4)で表される基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Zaは電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式(1)で表される化合物は、RもしくはRとして又はR、ArもしくはAr中に式(2)〜(4)で表される基を少なくとも1つ有する。
【0244】
【化58】
【0245】
式(2)〜(4)中、R10は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。Wは単結合又は酸素原子を表す。n1は1〜45の整数を表す。R11は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−R14を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
【0246】
上記式(1)で表される化合物は、新規な化合物であり、発色性に優れている。上記式(1)で表される化合物は、上述のように発色組成物として好適に用いることができる。
【実施例】
【0247】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例7、16、39、54は参考例と読み替えるものとする。高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値とした質量平均分子量(Mw)であり、繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、「部」、「%」は、特に断りのない限り、「質量部」、「質量%」を意味する。
【0248】
本発明に係る化合物Aの合成例を以下に記載する。他の化合物Aも、原料や反応中間体を適宜変更することにより同様にして合成することができる。
【0249】
〔合成例1:化合物A−19及びA−1の合成〕
(中間体SM−3の合成)
中間体SM−3の合成スキームを以下に示す。
【0250】
【化59】
【0251】
3Lの三つ口フラスコに、5−メトキシ−2,3,3−トリメチルインドレニン(上記SM−1)(イヌイ(株)製)147.9g(0.782mol)及び3−メトキシプロピルトシレート229.1g(0.938mol)を加え、130℃で2時間攪拌した。反応液を80℃まで冷却後、イソプロパノール1147gを加え、20℃で攪拌した。更に、上記SM−2を105.8g(0.307mol)及び無水酢酸68.8g(0.674mol)を加え、反応液を5℃に冷却しながら攪拌した。トリエチルアミン170.6g(1.69mol)を、内温が10℃を越えないように滴下した後、20℃にて3時間攪拌した。別途、10Lのステンレスビーカーに蒸留水1771g、ヘキサフルオロリン酸カリウム93.1g (0.506mol)及び酢酸エチル482gを加え、攪拌しながら上記3L三つ口フラスコの反応液を滴下し、滴下終了後30分攪拌した後、攪拌を停止して静置した。得られた沈殿をろ過により回収し、蒸留水500mLで4回、イソプロパノール300mLで3回洗浄した。得られた固体を減圧乾燥して、中間体SM−3を222g(0.281mol)得た。
【0252】
(中間体SM−4の合成)
中間体SM−4の合成スキームを以下に示す。
【0253】
【化60】
【0254】
3Lの三つ口フラスコに、塩化リチウム42.4g(1.00mol)及びテトラヒドロフラン(THF)647gを加え、窒素雰囲気下で−10℃に冷却した。塩化tert−ブチルマグネシウム(2M、THF溶液)500mL(1.00mol)を、内温が−5℃を越えないように滴下した後、−10℃で30分間攪拌した。4−ピリジンカルボキシアルデヒド79.3g(0.74mol)のTHF(79.3g)溶液を、内温が−5℃を越えないように滴下した後、0℃以下にて2時間攪拌した。蒸留水72gを内温が25℃を越えないように滴下し、2M塩酸水溶液531gを加えて30分攪拌した。酢酸エチル200gを加え、反応液を分液ロートに移した後、水層を除去した。有機層を飽和食塩水200mLで洗浄後、溶媒を減圧留去した。得られた固体に酢酸エチル35gを添加し、60℃で加熱攪拌して固体を溶解後、0℃に冷却して5時間静置した。得られた結晶をろ過により回収し、トルエン100mLで2回洗浄し、減圧乾燥して中間体SM−4を37g(0.22mol)得た。
【0255】
(中間体SM−5の合成)
中間体SM−5の合成スキームを以下に示す。
【0256】
【化61】
【0257】
1Lのナス型フラスコに、SM−3を116.7g(0.147mol)、SM−4を26.8g(0.162mol)、カテコール8.12g(0.07mol)、炭酸カリウム21.4g(0.155mol)及びN,N−ジメチルホルムアミド462gを加え、25℃にて24時間攪拌した後、アセトン233mLを加えた。別途、10Lのステンレスビーカーに蒸留水5.8kgを加えて攪拌しながら、上記反応液を滴下した。得られた沈殿をろ過により回収し、蒸留水500mLで4回洗浄後、送風乾燥して中間体SM−5を122g(0.133mol)得た。
【0258】
(化合物A−19及びA−1の合成)
化合物A−19及びA−1の合成スキームを以下に示す。
【0259】
【化62】
【0260】
300mLのナス型フラスコに、SM−5を26.0g(28.3mmol)、パラトルエンスルホン酸メチル26.3g(141.3mmol)及びアセトン26.0gを加え、25℃にて24時間攪拌した。アセトン52.0gを添加し、反応液を攪拌しながら0℃に冷却し、2時間保持した。得られた結晶をろ過により回収し、ヘキサン/酢酸エチルを体積比で2/1で混合した液500mLで洗浄後、送風乾燥して化合物A−19を22.5g(20.4mmol)得た。得られた化合物A−19の構造は、NMRにて同定した。同定結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz、重ジメチルスルホキシド)δ= 1.10(s,9H)、1.23(s,6H)、1.59(s,6H)、1.88−1.98(m,4H)、2.28(s,3H)、2.65−2.86(m,4H)、3.20(s,6H)、3.28−3.38(m,4H)、3.80(s,6H)、4.11(t,4H)、4.48(s,3H)、5.81(s,1H)、5.86(d,2H)、6.96(dd,2H)、7.10(d,2H)、7.21(d,2H)、7.25(d,2H)、7.42(d,2H)、7.48(d,2H)、8.30(d,2H)、9.15(d,2H)
【0261】
次に、500mLのナス型フラスコに、化合物A−19を22.5g(20.4mmol)、アセトン67.5g、ヘキサフルオロリン酸カリウム15.0g(81.6mmol)及び蒸留水22.5gを加え、室温で攪拌しながら、蒸留水225gを滴下した。得られた沈殿をろ過により回収し、蒸留水1Lで洗浄後、減圧乾燥して化合物A−1を21.4g(19.8mmol)得た。得られた化合物A−1の構造は、NMRにて同定した。同定結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz、重ジメチルスルホキシド)δ=1.10(s,9H)、1.23(s,6H)、1.58(s,6H)、1.93(m,4H)、2.64−2.86(m,4H)、3.20(s,6H)、3.30−3.46(m,4H)、3.80(s,6H)、4.11(t,4H)、4.47(s,3H)、5.78−5.89(m,3H)、6.97(dd,2H)、7.20(d,2H)、7.25(d,2H)、7.41(d,2H)、8.30(d,2H)、9.12(d,2H)
【0262】
〔合成例2:化合物A−55及びA−7の合成〕
化合物A−55及びA−7の合成スキームを以下に示す。
【0263】
【化63】
【0264】
100mLのナス型フラスコに、上記中間体SM−5を3.0g(3.26mmol)及び3−メトキシプロピルトシレート15.0g(61.4mmol)を加え、70℃で6時間攪拌した。反応液にアセトン15mLを加え、ヘキサン/酢酸エチルを体積比で2/1で混合した液1L中へ滴下した。上澄みを除去し、得られた沈殿物をヘキサン/酢酸エチル(体積比2/1)混合液100mLで3回洗浄後、アセトン30mLに溶解した。この溶液を、ヘキサン/酢酸エチル(体積比2/1)混合液1L中へ滴下した。上澄みを除去し、得られた沈殿物をヘキサン/酢酸エチル(体積比2/1)混合液100mLで3回洗浄後、減圧乾燥して化合物A−55を3.20g(2.75mmol)得た。得られた化合物A−55の構造は、NMRにて同定した。同定結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,重ジメチルスルホキシド)δ=1.10(s,9H)、1.23(s,6H)、1.61(s,6H)、1.87−1.97(m,4H),2.20−2.33(m,5H)、2.65−2.86(m,4H)、3.14−3.23(m,9H)、3.27−3.38(m,4H)、3.41−3.50(m,2H)、3.79(s,6H)、4.11(t,4H)、4.71−4.90(m,2H)、5.83(s,1H)、5.86(d,2H)、6.96(dd,2H)、7.11(d,2H)、7.20(d,2H)、7.25(d,2H)、7.42(d,2H)、7.48(d,2H)、8.31(d,2H)、9.25(d,2H)。
【0265】
次に、200mLのナス型フラスコに、化合物A−55を3.20g(2.75mmol)、アセトン10g、ヘキサフルオロリン酸カリウム2.02g(11.0mmol)及び蒸留水3.0gを加え、室温で攪拌しながら、蒸留水45gを滴下した。得られた沈殿をろ過により回収し、蒸留水500mLで洗浄後、減圧乾燥して化合物A−7を3.05g(2.68mmol)得た。得られた化合物A−7の構造は、NMRにて同定した。同定結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,重ジメチルスルホキシド)δ=1.10(s,9H)、1.23(s,6H)、1.60(s,6H)、1.88−1.97(m,4H)、2.18−2.34(m,2H)、2.68−2.87(m,4H)、3.19(s,6H)、3.20(s,3H)、3.28−3.37(m,4H)、3.42−3.52(m,2H)、3.80(s,6H)、4.11(t,4H)、4.70−4.88(m,2H)、5.82(s,1H)、5.86(d,2H)、6.97(dd,2H)、7.18(d,2H)、7.25(d,2H)、7.43(d,2H)、8.31(d,2H)、9.21(d,2H)
【0266】
〔合成例3:化合物A−56及びA−16の合成〕
(中間体SM−6の合成)
中間体SM−6の合成スキームを以下に示す。
【0267】
【化64】
【0268】
3Lの三つ口フラスコに、塩化リチウム30.5g(0.72mol)及びTHF157.4gを加え、窒素雰囲気下で−10℃に冷却した。塩化シクロヘキシルマグネシウム(1M、THF溶液)724mL(0.72mol)を、内温が−5℃を越えないように滴下した後、−10℃で30分間攪拌した。4−ピリジンカルボキシアルデヒド57.1g(0.53mol)のTHF(33.1g)溶液を、内温が−5℃を越えないように滴下した後、0℃以下にて2時間攪拌した。蒸留水90gを内温が25℃を越えないように滴下し、2M塩酸水溶液674gを加えて30分攪拌した。酢酸エチル675gを加え、反応液を分液ロートに移した後、水層を除去した。有機層を飽和食塩水200mLで洗浄後、溶媒を減圧留去した。得られた固体にヘキサン/酢酸エチル(体積比2/1)混合液500mLを添加し、60℃で加熱攪拌して固体を溶解後、0℃に冷却して5時間静置した。得られた結晶をろ過により回収し、トルエン50mLで2回洗浄し、減圧乾燥して中間体SM−6を51g(0.27mol)得た。
【0269】
(中間体SM−7の合成)
中間体SM−7の合成スキームを以下に示す。
【0270】
【化65】
【0271】
1Lのナス型フラスコに、SM−3を60.0g(75.8mmol)、SM−6を36.3g(189.6mmol)、カテコール4.17g(37.9mmol)、炭酸カリウム10.5g(75.8mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド300gを加え、25℃にて24時間攪拌した。別途、5Lのステンレスビーカーに蒸留水3.6kgを加えて攪拌しながら、上記反応液を滴下した。得られた沈殿をろ過により回収し、蒸留水250mLで4回洗浄後、送風乾燥して中間体SM−7を63g(66.6mmol)得た。
【0272】
(化合物A−56及びA−16の合成)
化合物A−56及びA−16の合成スキームを以下に示す。
【0273】
【化66】
【0274】
300mLのナス型フラスコに、SM−7を26.0g(27.5mmol)、パラトルエンスルホン酸メチル25.6g(137.4mmol)及びアセトン26.0gを加え、25℃にて24時間攪拌した。反応液にアセトン52gを加え、ヘキサン/酢酸エチルを体積比で2/1で混合した液3L中へ滴下した。上澄みを除去し、得られた沈殿物をヘキサン/酢酸エチル(体積比2/1)混合液200mLで3回洗浄後、アセトン75mLに溶解した。この溶液を、ヘキサン/酢酸エチル(体積比2/1)混合液3L中へ滴下した。上澄みを除去し、得られた沈殿物をヘキサン/酢酸エチル(体積比2/1)混合液200mLで3回洗浄後、減圧乾燥して化合物A−56を27.1g(23.9mmol)得た。得られた化合物A−56の構造は、NMRにて同定した。同定結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,重ジメチルスルホキシド)δ=1.09−1.35(m,12H)、1.49(s,6H)、1.64−1.82(m,4H)、1.86−1.97(m,4H)、2.08−2.16(m,1H)、2.29(s,3H)、2.69−2.86(m,4H)、3.19(s,6H)、3.31−3.43(m,4H)、3.80(s,6H)、4.11(t,4H)、4.45(s,3H)、5.86(d,2H)、5.91(s,1H)、6.96(dd,2H)、7.11(d,2H)、7.21(d,2H)、7.25(d,2H)、7.39(d,2H)、7.47(d,2H)、8.34(d,2H)、9.11(d,2H)
【0275】
次に、1Lのナス型フラスコに、化合物A−56を27.1g(23.9mmol)、アセトン78g、ヘキサフルオロリン酸カリウム17.6g(95.6mmol)及び蒸留水26gを加え、室温で攪拌しながら、蒸留水260gを滴下した。得られた沈殿をろ過により回収し、蒸留水2Lで洗浄後、減圧乾燥して化合物A−16を25.4g(23.0mmol)得た。得られた化合物A−16の構造は、NMRにて同定した。同定結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz、重ジメチルスルホキシド)δ=1.08−1.38(m,12H)、1.48(s,6H)、1.65−1.83(m,4H)、1.86−1.98(m,4H)、2.09−2.17(m,1H)、2.69−2.86(m,4H)、3.20(s,6H)、3.26−3.43(m,4H)、3.80(s,6H)、4.10(t,4H)、4.45(s,3H)、5.85(d,2H)、5.91(d,1H)、6.96(dd,2H)、7.20(d,2H)、7.24(d,2H)、7.39(d,2H)、8.34(d,2H)、9.11(d,2H)
【0276】
〔合成例4:化合物A−22の合成〕
化合物A−22の合成スキームを以下に示す。
【0277】
【化67】
【0278】
200mLのナス型フラスコに、化合物A−1を3.0g(2.78mmol)、アセトン10g、ナトリウムテトラフェニルボレート3.81g(11.12mmol)及び蒸留水3.0gを加え、室温で攪拌しながら、蒸留水45gを滴下した。得られた沈殿をろ過により回収し、蒸留水500mLで洗浄後、減圧乾燥して化合物A−22を3.97g(2.78mmol)得た。得られた化合物A−22の構造は、NMRにて同定した。同定結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz、重ジメチルスルホキシド)δ=1.11(s,9H)、1.24(s,6H)、1.59(s,6H)、1.88−1.99(m,4H)、2.66−2.86(m,4H)、3.20(s,6H)、3.30−3.41(m,4H)3.80(s,6H)、4.11(t,4H)、4.44(s,3H)、5.81(s,1H)、5.86(d,2H)、6.76−6.83(m,8H)、6.89−7.01(m,18H)、7.14−7.29(m,20H)、7.43(d,2H)、8.28(d,2H)、9.09(d,2H)
【0279】
〔実施例1〜18及び比較例1〜7〕
1.赤外線感光性発色材料の作製
【0280】
<支持体の作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム板表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。アルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0281】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0282】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、アルミニウム板に15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を形成した後、水洗、乾燥して支持体Aを作製した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)は10nmであった。
陽極酸化皮膜の表層におけるポア径の測定は、超高分解能型SEM(日立S-900)を使用し、12Vという比較的低加速電圧で、導電性を付与する蒸着処理等を施すこと無しに、表面を15万倍の倍率で観察し、50個のポアを無作為抽出して平均値を求める方法で行った。標準偏差誤差は±10%以下であった。
【0283】
その後、非画像部の親水性を確保するため、支持体Aに2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間シリケート処理を施した後、水洗して支持体Bを作製した。Siの付着量は10mg/mであった。支持体Bの中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0284】
上記支持体Aの作製において、直流陽極酸化皮膜形成時の電解液を、22質量%リン酸水溶液に変更した以外は、支持体Aの作製方法と同様にして、支持体Cを作製した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)上記と同様の方法で測定したところ、25nmであった。
【0285】
その後、非画像部の親水性を確保するため、支持体Cに2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間シリケート処理を施した後、水洗して支持体Dを作製した。Siの付着量は10mg/mであった。支持体Dの中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.52μmであった。
【0286】
<赤外線感光性発色組成物膜の形成>
下記組成A又は組成Bの赤外線感光性発色組成物をそれぞれ調製し、上記アルミニウム支持体B上に乾燥塗布量が1.0g/mになるようにバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥して赤外線感光性発色組成物膜を形成して、実施例1〜18及び比較例1〜7用の赤外線感光性発色材料を各々作製した。各赤外線感光性発色材料の作製において使用した赤外線感光性発色組成物の組成及び赤外線感光性発色組成物中の化合物A又は比較用化合物を表1及び表2にまとめて記載する。
【0287】
<赤外線感光性発色組成物組成A>
・ポリメチルメタクリレート(Mw:12000) 0.69質量部
・表1記載の化合物A又は比較用化合物 0.046質量部
・テトラフェニルボレート・ナトリウム塩 0.010質量部
・2−ブタノン 11.3質量部
【0288】
<赤外線感光性発色組成物組成B>
・ポリメチルメタクリレート(Mw:12000) 0.53質量部
・重合開始剤(1)〔下記構造〕 0.16質量部
・表2記載の化合物A又は比較用化合物 0.046質量部
・テトラフェニルボレート・ナトリウム塩 0.010質量部
・2−ブタノン 11.3質量部
【0289】
【化68】
【0290】
比較用化合物の構造を以下に示す。
【0291】
【化69】
【0292】
2.赤外線感光性発色材料の発色性評価
赤外線感光性発色材料を、水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力11.7W、外面ドラム回転数250rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inch=25.4mm)の条件で露光した。露光は25℃、50%RHの環境下で行った。
露光直後、及び、露光後暗所(25℃)で2時間保存後、赤外線感光性発色材料の発色を測定した。測定は、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM2600dとオペレーションソフトCM−S100Wとを用い、SCE(正反射光除去)方式で行った。発色性は、L表色系のL値(明度)を用い、露光部のL値と未露光部のL値との差ΔLにより評価した。ΔLの値が大きい程、発色性が優れる。
評価結果を表1〜2に示す。
【0293】
【表1】
【0294】
【表2】
【0295】
表1〜2に記載の結果から、本発明に係る化合物Aを含有する赤外線感光性発色組成物膜を有する赤外線感光性発色材料は、赤外線露光後の発色性が良好であり、かつ2時間後においても退色が認められない優れた赤外線感光性発色材料であることが分かる。
【0296】
〔実施例19〜85及び比較例8〜34〕
1.平版印刷版原版Aの作製
【0297】
<下塗り層の形成>
上記支持体上に、下記組成の下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して下塗り層を形成した。
【0298】
<下塗り層塗布液(1)>
・ポリマー(P−1)〔下記構造〕 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・水 61.4g
【0299】
【化70】
【0300】
ポリマーP−1の合成法を以下に記載する。
【0301】
(モノマーM−1の合成)
3Lの3つ口フラスコに、アンカミン 1922A(ジエチレングリコールジ(アミノプロピル)エーテル、エアープロダクツ社製)200g(0.91mol)、蒸留水435g及びメタノール410gを加え、5℃まで冷却した。次に安息香酸222.5g(1.82mol)及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−OH−TEMPO)25mg(0.15mmol)を加え、メタクリル酸無水物280g(1.82mmol)を、反応液の内温が10℃以下となる様に滴下した。反応液を5℃で6時間攪拌、次いで25℃にて12時間攪拌した後、リン酸70gを加えpHを3.3に調整した。反応液を10Lのステンレスビーカーに移し、酢酸エチル3.7L、メチル−tertブチルエーテル(MTBE)1.5L及び蒸留水0.65Lを加え、激しく攪拌した後静置した。上層(有機層)を廃棄した後、酢酸エチル1.8Lを加え、激しく攪拌した後静置し、上層を廃棄した。更に、酢酸エチル1.5Lを加え、激しく攪拌した後静置し、上層を廃棄した。次いで、MTBE1.6Lを加え、激しく攪拌した後静置し、上層を廃棄した。得られた水溶液に4−OH−TEMPO62.5mg(0.36mmol)を加えてモノマーM−1の水溶液(固形分換算20.1質量%)を1.2kg得た。
【0302】
(モノマーM−2の精製)
ライトエステル P−1M(2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、共栄社化学(株)製)420g、ジエチレングリコールジブチルエーテル1050g及び蒸留水1050gを分液ロートに加え、激しく攪拌した後静置した。上層を廃棄した後、ジエチレングリコールジブチルエーテル1050gを加え、激しく攪拌した後静置した。上層を廃棄してモノマーM−2の水溶液(固形分換算10.5質量%)を1.3kg得た。
【0303】
(ポリマーP−1の合成)
3Lの三口フラスコに、蒸留水を600.6g、モノマーM−1水溶液を33.1g及び下記モノマーM−3を46.1g加え、窒素雰囲気下で55℃に昇温した。次に、以下に示す滴下液(1)を2時間掛けて滴下し、30分攪拌した後、VA−046B(和光純薬工業(株)製)3.9gを加え、80℃に昇温し、1.5時間攪拌した。反応液を室温に戻した後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液175gを加え、pHを8.3に調整した。次に、4−OH−TEMPO152.2mgを加え、53℃に昇温した。メタクリル酸無水物66.0gを加えて53℃で3時間攪拌した。室温に戻した後、反応液を10Lのステンレスビーカーに移し、MTBE1800gを加え、激しく攪拌した後静置し、上層を廃棄した。同様にしてMTBE1800gによる洗浄操作を更に2回繰り返した後、得られた水層に蒸留水1700g及び4−OH−TEMPOを212mg加え、均一溶液としてポリマーP−1(固形分換算11.0%)を4.1kg得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算値とした質量平均分子量(Mw)は20万であった。
【0304】
滴下液(1)
・上記モノマーM−1水溶液 132.4g
・上記モノマーM−2水溶液 376.9g
・モノマーM−3〔下記構造〕 184.3g
・ブレンマー PME4000(日油(株)製) 15.3g
・VA−046B(和光純薬工業(株)製) 3.9g
・蒸留水 717.4g
【0305】
ブレンマー PME4000:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(オキシエチレン単位の繰り返し数:90)
VA−046B:2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート
【0306】
【化71】
【0307】
<画像記録層の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥して乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液(1)は下記感光液(1)及びミクロゲル液を塗布直前に混合し攪拌することにより調製した。なお、本発明に係る化合物A−22を使用する場合には、化合物A−22が構造中にボレート塩部位を含むため、ボレート化合物TPBを添加しなかった。
【0308】
<感光液(1)>
・バインダーポリマー(1)〔下記構造〕 0.240g
・重合開始剤(1)〔下記構造〕 0.245g
・表3記載の化合物A又は比較用化合物 0.046g
・ボレート化合物 0.010g
TPB〔下記構造〕
・重合性化合物 0.192g
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステル A−9300、新中村化学(株)製)
・低分子親水性化合物 0.062g
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
・低分子親水性化合物(1)〔下記構造〕 0.050g
・感脂化剤 0.055g
ホスホニウム化合物(1)〔下記構造〕
・感脂化剤 0.018g
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF
・感脂化剤 0.035g
アンモニウム基含有ポリマー(1)
〔下記構造、還元比粘度44ml/g〕
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・2−ブタノン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0309】
<ミクロゲル液>
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0310】
上記感光液(1)に用いたバインダーポリマー(1)、重合開始剤(1)、TPB、低分子親水性化合物(1)、ホスホニウム化合物(1)、アンモニウム基含有ポリマー(1)及びフッ素系界面活性剤(1)の構造を以下に示す。
【0311】
【化72】
【0312】
【化73】
【0313】
【化74】
【0314】
【化75】
【0315】
【化76】
【0316】
上記ミクロゲル液に用いたミクロゲル(1)の調製法を以下に示す。
<多価イソシアネート化合物(1)の調製>
イソホロンジイソシアネート17.78g(80mmol)と下記多価フェノール化合物(1)7.35g(20mmol)との酢酸エチル(25.31g)懸濁溶液に、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(ネオスタン U−600、日東化成(株)製)43mgを加えて攪拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間攪拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
【0317】
【化77】
【0318】
<ミクロゲル(1)の調製>
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間攪拌後、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン−オクチル酸塩(U−CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20gを加え、室温で30分攪拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を20質量%になるように調整し、ミクロゲル(1)の水分散液が得られた。光散乱法により平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
【0319】
(油相成分)
(成分1)酢酸エチル:12.0g
(成分2)トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアネート(18モル)を付加させ、これにメチル辺末端ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製):3.76g
(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0g
(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR−399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54g
(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA−41−C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液:4.42g
【0320】
(水相成分)
蒸留水:46.87g
【0321】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記組成の保護層塗布液をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量が0.15g/mの保護層を形成して実施例19〜43及び比較例8〜14用の平版印刷版原版Aを各々作製した。各平版印刷版原版の作製において使用した支持体、画像記録層塗布液(1)中の化合物A又は比較用化合物を表3にまとめて記載する。
【0322】
<保護層塗布液>
・無機層状化合物分散液(1)〔下記〕 1.5g
・ポリビニルアルコール(CKS50、日本合成化学工業(株)製、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液
0.55g
・ポリビニルアルコール(PVA−405、(株)クラレ製、
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液
0.03g
・界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0323】
上記保護層塗布液に用いた無機層状化合物分散液(1)の調製法を以下に示す。
<無機層状化合物分散液(1)の調製>
イオン交換水193.6gに合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0324】
2.平版印刷版原版Bの作製
上記平版印刷版原版Aの作製において、上記画像記録層塗布液(1)の代りに、下記画像記録層塗布液(2)を用いる他は上記平版印刷版原版Aの作製と同様にして、実施例44〜62及び比較例15〜20用の平版印刷版原版Bを各々作製した。画像記録層塗布液(2)は下記感光液(2)及びミクロゲル液を塗布直前に混合し攪拌することにより調製した。各平版印刷版原版の作製において使用した支持体、画像記録層塗布液(2)中の化合物A又は比較用化合物、連鎖移動剤を表4にまとめて記載する。なお、本発明に係る化合物A−22を使用する場合には、化合物A−22が構造中にボレート塩部位を含むため、ボレート化合物TPBを添加しなかった。
【0325】
<感光液(2)>
・バインダーポリマー(1)〔上記〕 0.240g
・連鎖移動剤〔下記構造〕 0.060g
(含有する場合)
・表4記載の化合物A又は比較用化合物 0.038g
・ボレート化合物 0.010g
TPB〔上記〕
・重合性化合物 0.192g
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステル A−9300、新中村化学(株)製)
・低分子親水性化合物 0.062g
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
・低分子親水性化合物(1)〔上記〕 0.050g
・感脂化剤 0.055g
ホスホニウム化合物(1)〔上記〕
・感脂化剤 0.018g
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF
・感脂化剤 0.035g
アンモニウム基含有ポリマー(1)〔上記〕
・フッ素系界面活性剤(1)〔上記〕 0.008g
・2−ブタノン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0326】
<ミクロゲル液>
・ミクロゲル(1)〔上記〕 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0327】
上記感光液(2)に用いた連鎖移動剤の構造を以下に示す。
【0328】
【化78】
【0329】
3.平版印刷版原版Cの作製
上記平版印刷版原版Aの作製において、上記画像記録層塗布液(1)の代りに、下記組成の画像記録層塗布液(3)をバー塗布し、70℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.6g/mの画像記録層を形成して、実施例63〜72及び比較例21〜27用の平版印刷版原版Cを各々作製した。平版印刷版原版Cは保護層を有さない平版印刷版原版である。各平版印刷版原版の作製において使用した支持体、画像記録層塗布液(3)中の化合物A又は比較用化合物を表5にまとめて記載する。なお、本発明に係る化合物A−22を使用する場合には、化合物A−22が構造中にボレート塩部位を含むため、ボレート化合物TPBを添加しなかった。
【0330】
<画像記録層塗布液(3)>
・表5記載の化合物A又は比較用化合物 0.046g
・重合開始剤(1)〔上記〕 0.245g
・ボレート化合物 0.010g
TPB〔上記〕
・ポリマー微粒子水分散液(1)(22質量%)〔下記〕 10.0g
・重合性化合物 1.50g
SR−399(サートマー社製)
・メルカプト−3−トリアゾール 0.2g
・Byk 336(Byk Chemie社製) 0.4g
・Klucel M(Hercules社製) 4.8g
・ELVACITE 4026(Ineos Acrylics社製)
2.5g
・n−プロパノール 55.0g
・2−ブタノン 17.0g
【0331】
上記画像記録層塗布液(3)に用いた商品名で記載の化合物は下記の通りである。
・SR−399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・Byk 336:変性ジメチルポリシロキサン共重合体(25質量%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液)
・Klucel M:ヒドロキシプロピルセルロース(2質量%水溶液)
・ELVACITE 4026:高分岐ポリメチルメタクリレート(10質量%2−ブタノン溶液)
【0332】
上記画像記録層塗布液(3)に用いたポリマー微粒子水分散液(1)の調製法を以下に示す。
<ポリマー微粒子水分散液(1)の調製>
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、エチレングリコールの平均繰返し単位数:50)10g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に、予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)80g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN=10/10/80のポリマー微粒子水分散液(1)を調製した。ポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径150nmに極大値を有していた。
【0333】
粒径分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒径を総計で5000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0334】
4.平版印刷版原版Dの作製
上記平版印刷版原版Aの作製において、上記画像記録層塗布液(1)の代りに、塗布後の組成が下記となる画像記録層塗布水溶液(4)をバー塗布し、50℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.93g/mの画像記録層を形成して、実施例73〜77及び比較例28〜29用の平版印刷版原版Dを各々作製した。平版印刷版原版Dは保護層を有さない平版印刷版原版である。各平版印刷版原版の作製において使用した支持体、画像記録層塗布液(4)中の化合物A又は比較用化合物を表6にまとめて記載する。なお、本発明に係る化合物A−22を使用する場合には、化合物A−22が構造中にボレート塩部位を含むため、ボレート化合物TPBを添加しなかった。
【0335】
<画像記録層塗布液(4)>
・表6記載の化合物A又は比較用化合物 0.038g/m
・ボレート化合物 0.01g/m
TPB〔上記〕
・ポリマー微粒子水分散液(2) 0.693g/m
・Glascol E15 0.09g/m
(Allied Colloids Manufacturing 社製)
・ERKOL WX48/20 (ERKOL社製) 0.09g/m
・Zonyl FSO100 (DuPont社製)0.0075g/m
【0336】
上記画像記録層塗布水溶液(4)用いた商品名で記載の化合物及びポリマー微粒子水分散液(2)は下記の通りである。
・Glascol E15:ポリアクリル酸
・ERKOL WX48/20:ポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル共重合体
・Zonyl FSO100:界面活性剤
・ポリマー微粒子水分散液(2):アニオン性湿潤剤で安定化されたスチレン/アクリロニトリル共重合体(モル比50/50、平均粒子径61nm、固形分約20%)
【0337】
5.平版印刷版原版Eの作製
上記平版印刷版原版Aの作製において、上記画像記録層塗布液(1)の代りに、下記画像記録層塗布液(5)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥して乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成して、実施例78〜85及び比較例30〜34用の平版印刷版原版Eを各々作製した。平版印刷版原版Eは保護層を有さない平版印刷版原版である。
画像記録層塗布液(5)は下記感光液(5)及びミクロゲル液を塗布直前に混合し攪拌することにより調製した。各平版印刷版原版の作製において使用した支持体、画像記録層塗布液(5)中の化合物A又は比較用化合物を表7にまとめて記載する。なお、本発明に係る化合物A−22を使用する場合には、化合物A−22が構造中にボレート塩部位を含むため、ボレート化合物TPBの添加量を0.039gとした。
【0338】
<感光液(5)>
・バインダーポリマー(1)〔上記〕 0.240g
・表4記載の化合物A又は比較用化合物 0.038g
・ボレート化合物 0.057g
TPB〔上記〕
・重合性化合物 0.192g
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステル A−9300、新中村化学(株)製)
・低分子親水性化合物 0.062g
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
・低分子親水性化合物(1)〔上記〕 0.050g
・フッ素系界面活性剤(1)〔上記〕 0.008g
・酸発色剤 [下記構造] 0.029g
・2−ブタノン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0339】
<ミクロゲル液>
・ミクロゲル(1)〔上記〕 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0340】
上記感光液(5)に用いた酸発色剤の構造を以下に示す。
【0341】
【化79】
【0342】
CL−1: S−205(福井山田化学工業(株)製)
CL−2: GN−169 (山本化成(株)製)
CL−3: Black−XV (山本化成(株)製)
CL−4: Red−40 (山本化成(株)製)
【0343】
6.平版印刷版原版の評価
上記各平版印刷版原版について、発色性、機上現像性、白灯安全性、耐刷性及び調子再現性を以下のようにして評価した。評価結果を表3〜7に示す。
【0344】
(1)発色性
平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにより、出力11.7W、外面ドラム回転数250rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inch=25.4mm)の条件で露光した。露光は25℃、50%RHの環境下で行った。
露光直後、及び、露光後暗所(25℃)で2時間保存後、平版印刷版原版の発色を測定した。測定は、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM2600dとオペレーションソフトCM−S100Wとを用い、SCE(正反射光除去)方式で行った。発色性は、L表色系のL値(明度)を用い、露光部のL値と未露光部のL値との差ΔLにより評価した。ΔLの値が大きい程、発色性が優れる。
【0345】
(2)機上現像性
平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにより、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
露光された平版印刷版原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(DICグラフィックス(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給し、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート紙(76.5kg)(三菱製紙(株)製)に100枚印刷を行った。
印刷機上で画像記録層の未露光部の機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を計測し、機上現像性として評価した。枚数が少ない程、機上現像性が良好である。
【0346】
(3)白灯安定性
室温(25℃)、湿度50%の環境下、三菱電機(株)製OSRAM FLR40SW蛍光灯を光源に用い、東京光電(株)製ポケット照度計ANA−F9型にて1000lxの照度の位置に平版印刷版原版をセットし、2時間白色光を照射した。その後、上記機上現像性の評価と同様にして、画像露光及び機上現像を行い印刷用紙の枚数を計測し、白灯安定性として評価した。枚数が少ない程、白灯安定性が良好である。
【0347】
(4)耐刷性
上記機上現像性の評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数の増加に伴い徐々に画像記録層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で測定した値が印刷100枚目の測定値よりも5%低下するまでの印刷枚数を計測した。印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きい程、耐刷性が良好である。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000 × 100
【0348】
(5)調子再現性
50%網点画像の網面積をグレタグ濃度計で測定し、この網面積実測値と原稿網点%(=50%)との差から50%網点のドットゲイン量(%)を求め、この数値を用いて調子再現性を評価した。この数値が0に近いほど、調子再現性に優れる。この数値が5%以下であると実用上許容レベルであり、6%以上は実用性が低い。
【0349】
【表3】
【0350】
【表4】
【0351】
【表5】
【0352】
【表6】
【0353】
【表7】
【0354】
表3〜7に記載の結果から、本発明に係る化合物Aを含有する画像記録層を有する平版印刷版原版は、比較用化合物を含有する比較例の平版印刷版原版に比べて、発色性が極めて優れていることが明らかである。更に、本発明に係る化合物Aを含有する画像記録層を有する平版印刷版原版は、機上現像性、白灯安全性、耐刷性及び調子再現性のいずれも良好であるのに対して、比較例の平版印刷版原版は、機上現像性、白灯安全性、耐刷性及び調子再現性のいずれかにおいて劣っていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0355】
本発明によれば、発色性が優れ、かつ経時による退色が少ない発色組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、発色による視認性に優れ、経時しても優れた視認性を維持することができ、良好な機上現像性を示し、白灯安定性に優れ、耐刷性及び調子再現性においても良好な平版印刷版原版を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、発色性が優れ、かつ経時による退色が少ない発色性化合物を提供することができる。
【0356】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2016年2月19日出願の日本特許出願(特願2016−30505)及び2017年2月8日出願の日本特許出願(特願2017−21607)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。