(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平均粒子径が0.1〜1.0μmである酸化亜鉛粒子を0.5〜5.0重量%含有するポリオレフィン樹脂を鞘成分とし、芯成分は平均粒子径が0.2〜0.8μmである二酸化チタン粒子を1.0〜5.0重量%含有するポリエステル樹脂により構成される芯鞘複合繊維であって、芯成分は、鞘成分との界面において10個以上の突起部を形成しており、かつ芯成分の外周長(L2)と該複合繊維の外周長(L1)との比が下記(1)式を満足することを特徴とする複合繊維。
2.0≦X/C (1)
ここで、X;芯成分の外周長と複合繊維の外周長との比(L2/L1)
C;複合繊維全体を1としたときの芯成分の重量複合比率
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。本発明の複合繊維は、酸化亜鉛を含有するポリオレフィン樹脂を鞘成分とし、二酸化チタン粒子を含有するポリエステル樹脂を芯成分として構成される芯鞘複合繊維であって、芯成分は、鞘成分との界面において10個以上の突起部を形成しており、かつ芯成分の外周長(L2)と該複合繊維の外周長(L1)との比が下記(1)式を満足することを特徴とする複合繊維である。
2.0≦X/C (1)
ここで、X;芯成分の外周長と複合繊維の外周長との比(L2/L1)
C;複合繊維全体を1としたときの芯成分の重量複合比率
【0014】
(ポリオレフィン樹脂)
まず、上記複合繊維におけるポリオレフィン樹脂について説明する。本発明の複合繊維は、撥水性の観点から鞘成分にポリオレフィン樹脂を用いることが重要である。本発明におけるポリオレフィン樹脂としては、一般的に繊維用に用いられているようなポリオレフィンであれば特に制限はない。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリメチルペンテンなどのホモポリマー、コポリマー或いはその変性体が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。特に、溶融複合紡糸上好ましいものとして、ポリプロピレン、ポリエチレンを主成分とするものが挙げられる。
【0015】
(酸化亜鉛粒子)
本発明の複合繊維では、持続性に優れた抗菌性、紫外線遮蔽性を得る観点から酸化亜鉛粒子を用いることが重要である。通常、親水性の熱可塑性樹脂では、親水性樹脂の吸水性能に起因して、樹脂内部に分散した酸化亜鉛粒子から亜鉛イオンを溶出し、抗菌作用を発揮させることが可能であると考えているが、本発明においては、理由は定かではないが、酸化亜鉛粒子であれば、疎水性の熱可塑性樹脂であるポリオレフィン樹脂に分散させても得られた繊維において高い抗菌性が発現することを見出している。また、酸化亜鉛粒子は特に315〜400nmの波長領域(UV−A領域)の紫外線において、優れた紫外線遮蔽性を有することが知られており、上記ポリオレフィン樹脂に酸化亜鉛粒子を含有させることで、特にUV−A領域の紫外線を十分に遮蔽する複合繊維を得ることができる。
【0016】
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂に含有させる酸化亜鉛粒子の含有量は、ポリオレフィン樹脂の重量に基づいて0.5〜5.0重量%にすることが重要である。さらに、0.8〜4.0重量%であることが好ましく、1.0〜3.0重量%がより好ましい。酸化亜鉛粒子の含有量が0.5重量%よりも少ないと繊維に十分な抗菌性及び紫外線遮蔽性を付与しにくく、特に持続的に抗菌性を発揮しにくくなる。一方、5.0重量%を超えると、抗菌性及び紫外線遮蔽性は十分であるが、酸化亜鉛粒子間の凝集が発生しやすくなりフィルターの目詰まりなどにより繊維化工程性が悪化する。本発明の複合繊維においては、酸化亜鉛の粒子径や鞘成分比率にも依るが、酸化亜鉛粒子の含有量を、ポリオレフィン樹脂の重量に基づいて0.5〜5.0重量%の範囲にすることで、十分な紫外線遮蔽性を有し、さらに後述する抗菌性が優れる(抗菌活性値が2.2以上を示す)繊維を得ることができる。
【0017】
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂に含有させる酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、0.1〜1.0μmであることが重要であり、0.2〜0.8μmであることが好ましく、0.3〜0.6μmであることがより好ましい。酸化亜鉛粒子の平均粒子径が1.0μmよりも大きいと、紡糸する際に断糸、フィルター詰りが発生しやすく、また、繊維からの酸化亜鉛粒子の脱落などが起き易くなる。一方、酸化亜鉛粒子の平均粒子径が0.1μmよりも小さいと、練り込みの際に酸化亜鉛粒子間の凝集などが生じやすく、ポリオレフィン樹脂中に均一に分散しにくくなる。
【0018】
(ポリエステル樹脂)
本発明の複合繊維は、発色性、糸強度、繊維化工程性の観点から芯成分にポリエステル樹脂を用いることが重要である。本発明におけるポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とする繊維形成能を有するポリエステルを指し、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート等を挙げることができる。また、これらポリエステルは第3成分として、ブタンジオールのようなアルコール成分又はイソフタル酸等のジカルボン酸を共重合させた共重合体でも良く、更にこれら各種ポリエステルの混合体でも良い。これらのうちポリエチレンテレフタレート系重合体及びイソフタル酸を共重合させたポリエチレンテレフタレート系共重合体が最適である。
【0019】
本発明の複合繊維におけるポリエステル樹脂は、固有粘度〔η〕が0.6〜0.7であるがことが好ましく、より好ましくは0.62〜0.68、さらに好ましくは0.63〜0.66である。固有粘度が0.7を超えた場合、繊維化時の高速紡糸性が著しく悪くなる。また、紡糸が可能であり、発色性に優れた複合繊維が得られた場合においても、筒編染色生地で染色斑や筋が発生したり織編物の風合いが劣ったりするなど、得られた織編繊維の表面品位が低下し衣料用として好ましくない。また、固有粘度が0.6未満の場合、紡糸中に断糸しやすく生産性が低下するばかりでなく、得られた繊維の強度も低くなる。更に、紡糸が可能であり、発色性に優れた複合繊維が得られた場合でも、筒編染色生地で染色斑や筋が発生したり織編物の風合いが劣ったりするなど、得られた織編繊維の表面品位が低下し衣料用として好ましくない。
【0020】
(二酸化チタン粒子)
本発明の複合繊維では、紫外線遮蔽性、繊維化工程性を得る観点から二酸化チタン粒子を用いることが重要である。二酸化チタンとしては、例えば、非晶質、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型等が挙げられる。このうち、アナターゼ型あるいはルチル型を用いてもよく、これらの混合物を用いてもよい。また、これらに非晶質が少量含まれていてもかまわない。二酸化チタン粒子は特に280〜315nmの波長領域(UV−B領域)の紫外線において、優れた紫外線遮蔽性を有することが知られており、上記ポリエステル樹脂に二酸化チタン粒子を含有させることで、特にUV−B領域の紫外線を十分に遮蔽する複合繊維を得ることができる。
【0021】
本発明に用いられるポリエステル樹脂に含有させる二酸化チタン粒子の含有量は、芯成分のポリエステル樹脂の良好な発色性を維持しつつ、紫外線遮蔽性を発現させる観点から、ポリエステル樹脂の重量に基づいて1.0〜5.0重量%にすることが重要である。さらに、1.3〜4.0重量%であることが好ましく、1.5〜3.0重量%がより好ましい。二酸化チタン粒子が1.0重量%未満では、十分な紫外線遮蔽性が得られず、また繊維化工程性が低下するため、該複合繊維を得ることができない。逆に、二酸化チタン粒子の含有量が5.0重量%を超えると、紡糸時の曳糸性が極端に悪化する、あるいは、紡糸できても延伸工程での糸切れ発生の問題が生じ、さらには延伸後の品質も満足なものを得ることができない場合がある。
【0022】
本発明に用いられるポリエステル樹脂に含有させる二酸化チタン粒子の平均粒子径は、0.2〜0.8μmであることが重要であり、0.3〜0.6μmであることが好ましい。二酸化チタン粒子の平均粒子径が0.8μmよりも大きいと、紡糸する際に断糸、フィルター詰りが発生しやすく、また、繊維から二酸化チタンの粒子の脱落などが起き易くなる。一方、二酸化チタン粒子の平均粒子径が0.2μmよりも小さいと、練り込みの際に二酸化チタン粒子間の凝集などが生じやすく、ポリエステル樹脂中に均一に分散しにくくなる。
【0023】
(複合繊維)
本発明の複合繊維の断面形状は、例えば、
図1の繊維断面写真に見られるような形態をしており、芯成分のポリエステル樹脂は鞘成分のポリオレフィン樹脂との界面において、突起部が10個以上形成されていることが重要である。好ましくは突起部を15個以上、さらに好ましくは、20個以上配列した状態にする事で、複合成分間の界面剥離に対する抵抗が十分に得られる。さらに、突起部の個数を多くする事で隣接する突起部間隔を1.5μm以下にすることによって、染色した場合のより良好な発色性が得られる。また、突起部が
図1に見られるように例えば同心円状に配列することにより、あらゆる方向から作用する外力に対して耐剥離性が得られる。なお、上記突起部の数の上限に関しては特に制限はないが、耐剥離性や発色性の観点から100個以下であることが好ましく、80個以下であることがより好ましい。
【0024】
本発明においては、
図1の複合形態において、隣接する襞状の突起部間隔が1.5μm以下であることが好ましい。該突起部の長軸はいずれも繊維断面外周に対して90°±15°の角度をなすように配置されていることが好ましい。隣接する突起部間隔が1.5μmを越える場合、染色処理した場合の発色性や均染性が不十分となる場合がある。また、突起部の長軸を延長し繊維断面外周と交わる角度が75°未満で配列している場合又は105°を超えて配列している場合は、繊維に作用する外力によって界面剥離が生じやすく、それに伴う染色物の白化に繋がるので好ましくない。以上の点から、本発明においては、隣接する突起部間隔は1.5μm以下であることが好ましく、1.2μm以下がより好ましい。なお、ここで隣接する突出部間隔とは、隣接するそれぞれの突起部先端間の平均間隔を示すものであるが、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、多数存在する突出部間隔、芯成分間隔のうち1.5μmを越える間隔の部分が繊維断面の一部に存在していてもなんら差支えない。上記の角度についても、本発明の効果が奏される範囲であれば、一部に75°未満または105°を越える角度のものが存在していても差支えない。
【0025】
本発明の複合繊維は、芯成分の外周長(L2)と該複合繊維の外周長(L1)との比が下記(1)式を満足することが重要である。
2.0≦X/C (1)
ここで、X;芯成分の外周長と複合繊維の外周長との比(L2/L1)
C;複合繊維全体を1としたときの芯成分の重量複合比率
芯成分の外周長(L2)と複合繊維の外周長(L1)との比Xは複合繊維の複合比率により変化するが、X/Cが2.0以上であることが必要であり、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上、特に好ましくは5.0以上である。例えば、ポリエステル樹脂(芯成分)とポリオレフィン樹脂(鞘成分)の重量複合比率が50:50(つまりCが0.5)である場合、芯成分の外周長(L2)と複合繊維の外周長(L1)との比Xは、1.0以上であることが必要であり、より好ましくは1.25以上、さらに好ましくは1.5以上、特に好ましくは2.5以上である。X/Cが、2.0以上のとき、驚くべきことにポリエステル樹脂(芯成分)とポリオレフィン樹脂(鞘成分)の界面剥離を防止する効果が増大し、さらに発色性が向上する。本発明における界面剥離防止効果の作用機序は、現時点では推論の域をでないが、恐らく複合成分の接着面積の増大とポリエステル樹脂(芯成分)により形成される突起部のアンカー効果との相乗効果によるものと推察される。なお、上記X/Cの値の上限に関しては特に制限はないが、耐剥離性や発色性の観点から25.0以下であることが好ましく、15.0以下であることがより好ましい。
【0026】
ポリオレフィン樹脂(鞘成分)とポリエステル樹脂(芯成分)の複合比率は、複合形態や繊維断面形状により適宜設定可能であるが10:90〜80:20(重量比率)であることが好ましく、20:80〜60:40がより好ましい。ポリオレフィン樹脂(鞘成分)の複合比率が10重量%未満の場合は、安定な芯鞘断面形成が得られないことと、鞘成分であるポリオレフィン樹脂の十分な撥水性能が得られない。また、鞘成分の比率が小さく、複合繊維に含まれる酸化亜鉛の含有量も小さくなるため、十分な抗菌性が得られない。一方、ポリオレフィン樹脂(鞘成分)の複合比率が80重量%を越える複合繊維は、撥水性能は得られるが、芯成分ポリエステルの発色性が不十分となることと、物性としても糸強度が低くなり加工工程通過性が悪化する。
【0027】
また複合繊維の断面形状は、ポリオレフィン樹脂(鞘成分)が繊維表面全体を覆う必要はないが、鮮やかな発色性、抗菌性を有するには、繊維表面の85%以上がポリオレフィン樹脂で覆われていることが好ましく、90%以上覆われていることがより好ましく、100%覆われていることが特に好ましい。
図1に示すような断面形状を有する芯鞘型複合繊維が鮮やかな発色性を示す点、糸強度等の点で好ましい。
【0028】
本発明においては、複合繊維にポリオレフィン樹脂(鞘成分)を使用することによって優れた撥水性が得られるが、スポーツ衣料や傘用途にかかる繊維を用いる場合、撥水性のみならず発色性や紫外線遮蔽性を併せ持つことが要求されている。通常、繊維に添加剤等を用いて紫外線遮蔽性を付与させると発色性が低下し、逆に発色性を優先させると紫外線遮蔽性を付与することが難しい。しかし、本発明では繊維断面においてポリオレフィン樹脂(鞘成分)とポリエステル樹脂(芯成分)との芯鞘複合繊維とし、鞘成分では撥水性、抗菌性、紫外線遮蔽性(特にUV−A領域の紫外線)を発現させ、かつ芯成分では発色性、紫外線遮蔽性(特にUV−B領域の紫外線)を発現させながら、該複合繊維の芯鞘界面構造を前述のように突起部配列体とすることにより、芯成分の発色性、紫外線遮蔽性が鞘成分によって阻害されずに、芯鞘両成分の特性が両立した繊維を得られることを見出した。
【0029】
本発明の複合繊維においては、繊維の太さは特に限定されず、任意の太さにすることができるが、撥水性、発色性に優れた繊維を得るためには複合繊維の総繊度を22〜250dtexであることが好ましい。特に56dtexから168dtexにしたものでは、スポーツ衣料用途、傘用途として低密度の織編物にしたときの撥水性、紫外線遮蔽性を最も良好にすることができる。また、長繊維のみならず短繊維でも本発明の効果が期待される。
【0030】
本発明の複合繊維は、糸強度が2.0cN/dtex以上、伸度が20〜200%であることが好ましい。より好ましくは、糸強度が2.5cN/dtex以上、伸度が20〜100%である。糸強度が2.0cN/dtex未満の場合、製編織時にガイド摩耗等による糸切れや毛羽が発生し操業性が悪化するばかりか、布帛にした際に破れやすく実用的な安定性に乏しい。なお、糸強度の上限に関しては特に制限はないが、6cN/dtex以下が好ましい。伸度が20%未満では、布帛にした際に伸縮性の点から安定性に乏しい。一方、伸度が200%を超える繊維は高次工程にて染めムラなどの異常を発生しやすく実用性に劣る。
【0031】
本発明の複合繊維の製造方法は、本発明の規定を満足する複合繊維が得られる方法であれば特に制限されるものではない。複合紡糸装置を用いノズル導入口へポリオレフィン樹脂(鞘成分)とポリエステル樹脂(芯成分)の複合流を導入するに際し、ポリエステル樹脂(芯成分)からなる突起部の数に相当する数の細孔が円周上に設けられた分流板からポリエステル樹脂(芯成分)を流し、次いで、それぞれの細孔から流れるポリエステル樹脂(芯成分)の流れ全体をポリオレフィン樹脂(鞘成分)で覆いながら、複合流をノズル導入口の中心に向けて導入しノズルより溶融吐出させることにより製造することができる。また、最終製品に求められる品質や良好な工程通過性を確保するために、最適な紡糸・延伸方法を選択することができる。より具体的には、スピンドロー方式や、紡糸原糸を採取した後に別工程で延伸を行う2−Step方式を採用することもできる。また延伸を行わず非延伸糸のまま引き取り速度が2000m/分以上の速度で捲取る方式においても、任意の糸加工工程を通過させた後に製品化することで、良好な常圧可染性品位を有する該複合繊維製品を得ることができる。
【0032】
本発明で得られる複合繊維は、各種繊維集合体(繊維構造物)として用いることができる。ここで繊維集合体とは、本発明の繊維単独よりなる織編物はもちろんのこと、本発明の繊維を一部に使用してなる織編物、例えば、天然繊維、化学繊維、合成繊維など他の繊維との交編織布、あるいは混紡糸、混繊糸として用いた織編物などであってもよい。織編物に占める本発明繊維の割合は10重量%以上が好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。
【0033】
本発明の繊維の主な用途は、単独で又は一部に使用して織編物等を作製し、良好な風合いを発現させた衣料用素材とすることができる。撥水性、紫外線遮蔽性、抗菌性、発色性を活かした衣料用途全般に適しており、特にスポーツ衣料用途や傘用途に適している。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の測定、評価項目は以下に述べる方法で測定した。
【0035】
・固有粘度〔η〕
溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン(体積比1/1)混合溶媒を用い30℃でウベローデ型粘度計(林製作所製HRK−3型)を用いて測定した。
【0036】
・繊維化工程性
100kg紡糸した際の毛羽・断糸の発生状況で評価した。
◎:毛羽、断糸の発生なく良好
○:断糸はなく、毛羽の発生が僅かに認められる
△:断糸1〜2回発生
×:断糸が3回以上発生
【0037】
・発色性
(染色及び染着濃度)
得られた複合繊維の筒編地を精練した後、170℃でプレセットし、プレセット後、カセイソ−ダでアルカリ処理した(濃度10%owf、温度80℃、時間40分)。この時、編地の減量率は約10%とした後、以下の条件で染色し、還元洗浄をした後、染着濃度を求めた。
(染色)
染料:Dianix NavyBlue SPH conc5.0%omf
助剤:Disper TL:1.0cc/L、ULTRA MT−N2:1.0cc/L
浴比:1/50
染色温度×時間:95〜100℃×40分
(還元洗浄)
水酸化ナトリウム:1.0g/L
ハイドロサルファイトナトリウム:1.0g/L
アミラジンD:1.0g/L
浴比:1/50
還元洗浄温度×時間:80℃×20分
【0038】
<染着濃度(K/S)>
染着濃度は、染色後サンプル編地の最大吸収波長における反射率Rを測定し、以下に示すKubelka−Munkの式から求めた。
分光反射率測定器:分光光度計 HITACHI
C−2000S Color Analyzer
K/S=(1−R)
2 /2R
【0039】
・洗濯10回後の撥水性
実施例または比較例で得られた繊維84dtex/24フィラメントを、丸編機を用いて筒編にした筒編サンプルに精練を行った後、洗濯を10回行い、JIS L−1092(スプレー試験)に準じ、以下の級判定を行った。
1級:表面全体に湿潤を示すもの。
2級:表面の半分に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの。
3級:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの。
4級:表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの。
5級:表面に湿潤及び水滴の付着がないもの。
級判定が3級以上は撥水性を有する。また、好ましくは4級以上である。
【0040】
・抗菌性(抗菌活性値)
実施例または比較例で得られた繊維84dtex/24フィラメントを、丸編機を用いて筒編にした筒編サンプルに精練を行った後、社団法人繊維評価技術協議会が定める制菌加工繊維製品認証基準JIS L 1902「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」に従い、試験菌として黄色ぶどう球菌を用いて抗菌活性値を測定した。
・抗菌活性値:無加工検体には綿布を用い、下記式より算出した。
抗菌活性値=(logC
t−logC
0)−(logT
t−logT
0)
logC
t=log(綿標準布18時間培養の生菌数の平均値)
logC
0=log(綿標準布接種直後の生菌数の平均値)
logT
t=log(筒編サンプル18時間培養の生菌数の平均値)
logT
0=log(筒編サンプル接種直後の生菌数の平均値)
・増殖値:logC
t−logC
0
抗菌性の基準値 抗菌活性値−増殖値≧0
【0041】
・紫外線遮蔽性
84dtex/24フィラメントの延伸糸を用い、丸編機により筒編地を作製し、次いで厚さ1mmになるよう精練・乾熱加工処理を施した。分光光度計(U−3400:日立製作所)を用いて波長280〜380nm域の紫外線透過度を測定し、測定試料なし(ブランク)との面積差を紫外線吸収率(紫外線遮蔽率)とした。紫外線遮蔽率85%以上を合格とした。
◎:90%以上、○:85%以上、△:70%以上、×:70%未満
【0042】
・耐剥離性
24フィラメントを500〜1000T/mの撚りをかけ、そのままの状態で糸条を切断し、切断面のフィラメントの剥離状態を電子顕微鏡で500倍に拡大して観察した。切断箇所を10ヶ所について、下記の基準により評価した。
◎:剥離程度が1割未満の場合
○:剥離程度が1割〜2割未満の場合
△:剥離程度が2割〜5割未満の場合
×:剥離程度が5割以上の場合
【0043】
(実施例1)
鞘成分は平均粒子径0.3μmの酸化亜鉛を2.5重量%含有したポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロ Y−2005GP」)と、平均粒子径0.3μmの二酸化チタン3.0重量%含有したポリエチレンテレフタレート(固有粘度〔η〕=0.68)を芯成分とした。
【0044】
芯成分と鞘成分の複合比率(重量比率)50:50の条件で、紡糸温度290℃、巻取り速度3000m/分で溶融複合紡糸し、
図1に示すような断面形状の複合フィラメント糸142dtex/24フィラメントで紡出した後、この未延伸糸を80℃の熱ローラー及び120℃の熱プレートに接触させ、延伸倍率1.7倍で延伸することにより、84dtex/24フィラメントの複合繊維を得た。この複合繊維の芯成分の突起部の個数は30個であり、芯成分の外周長(L2)と複合繊維の外周長(L1)との比L2/L1=5.2(X/C=10.4)であり、強度は3.4cN/dtexであった。ついで筒編物を作製し発色性、撥水性、抗菌性、紫外線遮蔽性、耐剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例2〜8)
芯成分及び鞘成分のポリマー種、酸化亜鉛及び二酸化チタンの平均粒子径と含有量、複合比率、繊維断面形状の突起部個数を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維を得た。発色性、撥水性、抗菌性、紫外線遮蔽性、耐剥離性の評価結果を表1に示す。いずれも繊維化工程性は良好であり、優れた性能を有していた。
【0046】
(比較例1〜8)
芯成分及び鞘成分のポリマー種、酸化亜鉛及び二酸化チタンの平均粒子径と含有量、複合比率、繊維断面形状の突起部個数を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維を得た。発色性、撥水性、抗菌性、紫外線遮蔽性、耐剥離性の評価結果を表1に示す。
【0047】
(比較例9)
平均粒子径0.3μmの二酸化チタン3.0重量%含有したポリエチレンテレフタレート(固有粘度〔η〕=0.68)を用いて、紡糸温度290℃、巻取り速度3000m/分で溶融紡糸し、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸142dtex/24フィラメントで紡出した後、この未延伸糸を83℃の熱ローラー及び140℃の熱プレートに接触させ、延伸倍率1.7倍で延伸することにより、84dtex/24fのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。ついで筒編物を作製し発色性、撥水性、抗菌性、紫外線遮蔽性を調査した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1より、実施例1〜9の複合繊維は、いずれも繊維化工程性は良好であり、発色性、撥水性、抗菌性、紫外線遮蔽性に優れた複合繊維であることが分かった。しかし、比較例1では、芯成分に含まれる二酸化チタンの平均粒子径が小さいため、十分な紫外線遮蔽性が得られなかった。また、粒子同士が凝集して、繊維化工程性も悪かった。比較例2では、芯成分に含まれる二酸化チタンの平均粒子径が大きすぎるため、断糸が発生し、繊維化工程性が悪かった。比較例3では、芯成分に含まれる二酸化チタンの含有量が少ないため、紫外線遮蔽性が不十分であった。比較例4では、鞘成分に含まれる酸化亜鉛の平均粒子径が小さいため、十分な抗菌性、紫外線遮蔽性が得られなかった。また、粒子同士が凝集して、繊維化工程性も悪かった。比較例5では、鞘成分に含まれる酸化亜鉛の平均粒子径が大きすぎるため、断糸が発生し、繊維化工程性が悪かった。比較例6では、鞘成分に含まれる酸化亜鉛の含有量が少ないため、抗菌性、紫外線遮蔽性が不十分であった。比較例7では、鞘成分の複合比率が低く、2.0≦X/Cを満たさないため、芯鞘界面での剥離が見られた。また、鞘成分の複合比率が低いため、撥水性、抗菌性が不十分であった。比較例8では、芯成分の突起部個数が少なく、2.0≦X/Cを満たさないため、芯鞘界面での剥離が見られた。また、芯成分の突起部個数が少ないため、発色性、紫外線遮蔽性が不十分であった。比較例9では、二酸化チタンを含有したポリエステル樹脂のみからなる繊維であるため、撥水性、抗菌性が得られなかった。