(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記有効範囲が閾値以下の場合、前記有効範囲が小さい程、隣り合う前記視野における前記測定部の測定結果を大きい範囲で用いる請求項1に記載の観察装置。
前記制御部は、前記有効範囲が閾値以下の場合、前記閾値に対して前記有効範囲が足りない長さ分だけ、隣り合う前記視野における前記測定部の測定結果を用いて前記焦点を制御する請求項1から3のいずれか一項に記載の観察装置。
容器の収容部に収容した観察対象を、予め定められた一連の撮像位置で前記収容部よりも小さい視野を有する撮像部により撮像し、一連の部分画像を取得する場合に、一連の部分画像の取得にそれぞれ先行して、前記撮像部から前記収容部までの距離を測定する測定工程と、
前記容器の形状を表す形状情報および前記一連の撮像位置を表す撮像位置情報を記憶する記憶工程と、
前記形状情報および前記撮像位置情報に基づき、前記撮像位置における前記視野の範囲内において、撮像に先行して前記測定工程により前記距離を測定可能な範囲である有効範囲を示す有効範囲情報を算出する算出工程と、
前記算出工程により算出した前記有効範囲情報に基づいて、前記有効範囲と予め定められた閾値とを比較し、前記有効範囲が閾値以下の場合、前記有効範囲において前記測定工程により測定した測定結果と、前記有効範囲が含まれる視野と隣り合う視野における前記測定工程の測定結果とを用いて撮像の焦点を制御する制御工程と、
を備える観察方法。
容器の収容部に収容した観察対象を、予め定められた一連の撮像位置で前記収容部よりも小さい視野を有する撮像部により撮像し、一連の部分画像を取得する場合に、一連の部分画像の取得にそれぞれ先行して、前記撮像部から前記収容部までの距離を測定する測定工程と、
前記容器の形状を表す形状情報および前記一連の撮像位置を表す撮像位置情報を記憶する記憶工程と、
前記形状情報および前記撮像位置情報に基づき、前記撮像位置における前記視野の範囲内において、撮像に先行して前記距離を前記測定工程により測定可能な範囲である有効範囲を示す有効範囲情報を算出する算出工程と、
前記算出工程により算出した前記有効範囲情報に基づいて、前記有効範囲と予め定められた閾値とを比較し、前記有効範囲が閾値以下の場合、前記有効範囲において前記測定工程により測定した測定結果と、前記有効範囲が含まれる視野と隣り合う視野における前記測定工程の測定結果とを用いて撮像の焦点を制御する制御工程と、
をコンピュータに実行させる観察プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
図1は、開示の技術の実施形態に係る観察装置の概略構成を示す図である。
図2は、載置台の一例を示す図である。
【0021】
観察装置は、載置台10に載置された培養容器20に収容される観察対象を、顕微鏡装置30により観察するための装置である。載置台10および顕微鏡装置30は、制御部40により制御される。各構成について、順に説明する。
【0022】
載置台10は、培養容器20を載置可能なステージである。
図2に示すように、載置台10の中央には、矩形の開口11が形成されている。この開口11を形成する部材の上に培養容器20が設置され、顕微鏡装置30により観察するための光が通過するように構成されている。
【0023】
載置台10には、移動部12が取り付けられている。移動部12は、載置台10を互いに直交するX方向およびY方向に自由に移動可能である。X方向およびY方向は、Z方向に直交する方向であり、水平面内において互いに直交する方向である。本実施形態においては、X方向を主走査方向とし、Y方向を副走査方向とする。移動部12は、圧電素子などを有するアクチュエータから構成される。載置台10のX−Y平面における移動は、制御部40によって制御される。載置台10がX−Y平面を移動することによって、載置台10上の培養容器20が顕微鏡装置30に対して移動する。
【0024】
なお、本実施形態では、載置台10を顕微鏡装置30に対して移動することにより、顕微鏡装置30により観察対象を観察する位置を変更する例を示すが、これに限定されない。顕微鏡装置30を載置台10に対して移動してもよいし、載置台10および顕微鏡装置30の両方を移動してもよい。載置台10に載置された培養容器20および顕微鏡装置30の少なくとも一方が他方に対して相対的に移動すれば、いかなる態様を採用することもできる。なお、本開示において、たとえば、顕微鏡装置30の位置が固定されており、培養容器20だけが移動している場合でも、「顕微鏡装置30が培養容器20に対して相対的に移動している」と表現する。また、本開示では、顕微鏡装置30および培養容器20のいずれが実際に移動している場合でも、相対的な移動に伴う軌道を、「走査軌道」と表現する。
【0025】
また、培養容器20を載置台10に載置して移動するのではなく、培養容器20の少なくとも一ヶ所を把持する把持部を用い、把持部を動かして、培養容器20をX−Y平面において移動させてもよい。
【0026】
培養容器20は、平板状のプレート21に複数の収容部22が形成されてなる。培養容器20は、たとえば、シャーレ、ディッシュまたはウェルプレートなどを用いることができる。収容部22は、たとえば、平面視すると円形の凹部であり、ウェルとも呼ばれる。収容部22には、培養液に漬かった各種の細胞等の観察対象が収容される。収容部22に収容される細胞としては、iPS細胞およびES細胞といった多能性幹細胞、幹細胞から分化誘導された神経、皮膚、心筋および肝臓の細胞、並びに人体から取り出された皮膚、網膜、心筋、血球、神経および臓器の細胞などがある。
【0027】
顕微鏡装置30は、観察対象の位相差画像を撮像するものである。顕微鏡装置30は、高倍率の画像を得るために、培養容器20の各収容部22よりも小さい視野により、観察対象および培養容器20の部分画像を撮像する。上述のように、培養容器20が顕微鏡装置30に対して移動することによって、顕微鏡装置30が培養容器20を走査し、一連の部分画像が得られる。部分画像は、予め定められた複数の撮像位置のそれぞれにおいて、顕微鏡装置30が自身の視野により撮像して得られる画像である。
【0028】
顕微鏡装置30は、光源31と、スリット32と、コンデンサレンズ33と、対物レンズ34と、フォーカス調整機構35と、結像レンズ36と、撮像部37と、測定部38とを備えている。
【0029】
光源31は、白色光を射出する。スリット32は、光源31から射出された白色光を遮光する遮光板に対して白色光を透過するリング形状のスリットが設けられて形成されている。白色光がスリットを通過することによってリング状の照明光Lが形成される。コンデンサレンズ33は、リング状の照明光Lを、観察対象に集光させる。
【0030】
対物レンズ34は、培養容器20を介して、コンデンサレンズ33に対向して配置される。対物レンズ34は、培養容器20内の観察対象の像を結像させる。フォーカス調整機構35は、光軸方向(Z方向)に移動可能な位相差レンズを含む。位相差レンズが光軸方向に移動することによって、オートフォーカス制御が行われ、撮像部37によって撮像される位相差画像のコントラストが調整される。なお、位相差レンズの光軸方向の移動は、たとえば、制御部40からの信号に基づく圧電素子のようなアクチュエータの駆動により実現できる。ただし、位相差レンズの駆動は、圧電素子に限らず、位相差レンズをZ方向に移動可能なものであればよく、その他の公知な構成を用いることができる。また、位相差レンズの倍率を変更可能な構成としてもよい。具体的には、異なる倍率を有する位相差レンズまたはフォーカス調整機構35を交換可能に構成するようにしてもよい。当該交換は、自動的に行うようにしてもよいし、ユーザが手動で行うようにしてもよい。
【0031】
結像レンズ36は、フォーカス調整機構35を通過した位相差画像が入射され、これを撮像部37に結像する。
【0032】
撮像部37は、測定部38に固定的に取り付けられ、結像レンズ36によって結像された位相差画像を撮像する。撮像部37は、たとえば、CCD(Charge-Coupled Device)
イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像素子である。撮像素子としては、RGB(Red Green Blue)のカラーフィルタが設けられた撮像素子を用いてもよいし、モノクロの撮像素子を用いてもよい。
【0033】
以下では、上記の対物レンズ34、フォーカス調整機構35、結像レンズ36および撮像部37を合わせて、結像光学系Cとも呼ぶ。
【0034】
測定部38は、培養容器20および撮像部37の少なくとも一方の相対的な移動に伴う走査軌道に沿って、載置台10に設置された培養容器20のZ方向の位置を連続的に検出する。
【0035】
測定部38は、具体的には、第1の変位センサ38aおよび第2の変位センサ38bを備える。第1の変位センサ38aおよび第2の変位センサ38bは、結像光学系Cを挟んで、
図1に示すX方向に並べて設けられている。本実施形態における第1の変位センサ38aおよび第2の変位センサ38bはレーザー変位計であり、培養容器20にレーザー光を照射し、その反射光を検出することによって、培養容器20の収容部22の底面のZ方向の位置を検出し、撮像部37から収容部22の底面までの距離を測定するものである。なお、収容部22の底面とは、収容部22の底部と観察対象である細胞との境界面であり、すなわち観察対象設置面である。
【0036】
測定部38によって検出された撮像部37から収容部22の底面までの距離は、制御部40に出力される。制御部40は、入力された距離に基づいて、フォーカス調整機構35を制御し、オートフォーカス制御(焦点の制御)を行う。なお、第1の変位センサ38aおよび第2の変位センサ38bによる培養容器20の位置の検出およびオートフォーカス制御については、後で詳述する。
【0037】
次に、顕微鏡装置30を制御する制御部40の構成について説明する。
図3は、開示の技術の実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【0038】
制御部40は、上述のように顕微鏡装置30の全体を制御し、かつ各種の処理を実行する。制御部40は、顕微鏡装置制御部41、走査制御部42、表示制御部43、記憶部44、算出部45、入力部46および表示部47を有する。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、および半導体メモリ等を備えたコンピュータから構成される。制御部40は、記憶部44に本発明の観察プログラムの一実施形態がインストールされている。そして、この観察プログラムがCPUに実行されることによって、
図3に示す顕微鏡装置制御部41、走査制御部42、表示制御部43および算出部45が機能する。
【0039】
顕微鏡装置制御部41は、上述したように測定部38によって検出された撮像部37から収容部22の底面までの距離に基づいて、フォーカス調整機構35を制御する。そして、フォーカス調整機構35の駆動によって位相差レンズが光軸方向に移動し、オートフォーカス制御が行われる。
【0040】
また、顕微鏡装置制御部41は、培養容器20を走査する際に、撮像部37による撮像を制御する。基本的には、予め記憶部44に走査中の撮像のタイミングが記憶されており、顕微鏡装置制御部41は、記憶されたタイミングに基づいて撮像を行う。
【0041】
走査制御部42は、移動部12を駆動制御し、載置台10をX方向およびY方向に移動させる。
【0042】
表示制御部43は、顕微鏡装置30によって撮像された一連の部分画像を結合することによって、1枚の合成画像を生成し、合成画像を表示部47に表示させる。
【0043】
記憶部44は、各機能部を実現させる観察プログラムを記憶している。また、記憶部44は、培養容器20の容器情報に対応する培養容器20の形状情報を記憶している。培養容器20の容器情報は、たとえば、培養容器の仕様(収容部22の大きさ、数、間隔等)、培養容器の型番、およびメーカーなどである。培養容器20の形状情報は、培養容器20の収容部22の数(6個、24個、96個など)、収容部22の間隔、収容部22の径、および収容部22の厚み、培養容器20内における収容部22の位置等の情報である。形状情報は、製造するメーカー等から公表されている培養容器20の仕様の情報でもよいし、レーザー測長器などの形状測定装置により予め測定して得られた培養容器20の立体形状の情報でもよい。
【0044】
容器情報または培養容器20の立体形状の情報を含む形状情報に基づいて、顕微鏡装置30の走査軌道を示す軌道情報および一連の撮像位置(座標)を示す撮像位置情報が走査制御部42によって決定され、記憶部44に記憶される。
【0045】
算出部45は、記憶部44に記憶されている形状情報および撮像位置情報に基づき、撮像位置における撮像部37の視野の範囲内において、測定部38が撮像に先行して測定できる範囲である有効範囲を示す有効範囲情報を算出する。有効範囲は、測定部38の走査方向に沿った範囲であり、撮像部37が撮像位置から撮像したときの視野の範囲内において、測定部38が撮像部37から収容部22の底面までの距離を測定できる範囲である。測定部38は、後述するように撮像部37よりも先行して相対的に移動し、撮像部37が撮像位置に到達するまでには有効範囲の測定が可能である。有効範囲情報は、有効範囲を示す情報として、たとえば、撮像部37の移動方向における有効範囲を示す座標情報、または座標情報から算出される測定部の移動方向における有効範囲の長さである。
【0046】
入力部46は、マウスおよびキーボードなどを備えたものであり、各種の必要なデータおよびユーザによる種々の設定入力を受け付ける。本実施形態の入力部46は、たとえば、上述の培養容器20の容器情報、撮像位置に関するデータの入力を受け付ける。
【0047】
表示部47は、たとえば液晶ディスプレイなどを備え、上述したように表示制御部43によって生成された合成位相差画像を表示する。また、表示部47をタッチパネルによって構成し、入力部46と兼用するようにしてもよい。
【0048】
次に、走査制御部42による載置台10の移動制御および顕微鏡装置制御部41による顕微鏡装置30の制御について、詳細に説明する。
【0049】
図4は、培養容器内における走査軌道を実線Mで示した図である。
図5および
図6は、培養容器内の任意の位置に視野がある場合における、第1の変位センサおよび第2の変位センサと、培養容器との位置関係を示す図である。
図7は、収容部を測定部が測定する様子を説明するための図である。
【0050】
本実施形態においては、走査制御部42による制御によって載置台10をX方向およびY方向に移動させ、顕微鏡装置30を培養容器20内において2次元状に走査する。走査の課程で、顕微鏡装置30の各視野内において、培養容器20および観察対象の部分画像を撮像する。なお、本実施形態においては、培養容器20として6つの収容部22を有するウェルプレートを用いる。
【0051】
顕微鏡装置制御部41は、各視野Rで撮像するための撮像位置および撮像タイミングを記憶部44から読み出し、
図4に一点鎖線で囲んで示すように、顕微鏡装置30に視野R1〜R54で培養容器20内を撮像させる。この結果、顕微鏡装置30の視野Rは、走査開始点Sから走査終了点Eまで実線Mに沿って移動する。すなわち、視野Rは、X方向の正方向(
図4の右方向)に走査された後、Y方向(
図4の下方向)に移動し、逆のX方向の負方向(
図4の左方向)に走査される。次いで、視野Rは、再びY方向に移動し、再びX方向の正方向に走査される。このように、視野Rは、X方向についての往復移動とY方向への移動を繰り返し行うことによって、視野R1〜R54の順に、培養容器20内を2次元状に走査される。
【0052】
視野Rにおいて顕微鏡装置30が撮像するのに先行して、測定部38が撮像部37から収容部22の底面までの距離を検出する。
【0053】
本実施形態においては、
図5および
図6に示すように、第1の変位センサ38aと第2の変位センサ38bが結像光学系Cを挟んでX方向に並べて設けられている。そして、結像光学系Cの視野Rは、上述したように培養容器20内を2次元状に走査される。この際、培養容器20に対する結像光学系Cの視野Rの位置よりも視野Rの移動方向前側の位置において培養容器20のZ方向の位置が検出される。具体的には、視野Rが、
図5に示す矢印方向(
図5の右方向)に移動している場合には、第1の変位センサ38aおよび第2の変位センサ38bのうち、視野Rの移動方向前側の第1の変位センサ38aによって撮像部37から収容部22の底面までの距離が検出される。そして、視野Rが、
図5に示す位置から第1の変位センサ38aの位置まで移動した場合に、前もって検出された培養容器20のZ方向の位置情報が用いられてオートフォーカス制御が行われ、部分画像の撮像が行われる。
【0054】
一方、視野Rが、
図6の矢印方向(
図6の左方向)に移動している場合には、第1の変位センサ38aおよび第2の変位センサ38bのうち、視野Rの移動方向前側の第2の変位センサ38bによって撮像部37から収容部22の底面までの距離が検出される。そして、視野Rが、
図6に示す位置から第2の変位センサ38bの位置まで移動した場合に、前もって検出された培養容器20のZ方向の位置情報が用いられてオートフォーカス制御が行われ、位相差画像の撮像が行われる。
【0055】
このように第1の変位センサ38aを用いた培養容器20の検出と第2の変位センサ38bを用いた培養容器20の検出とを視野Rの移動方向に応じて切り替える。これによって、常に、視野Rの位相差画像の撮像に先行して、その視野Rの位置における撮像部37から収容部22の底面までの距離を取得できる。
【0056】
そして、顕微鏡装置制御部41は、上述したように先行して検出された培養容器20のZ方向の位置情報に基づいて、フォーカス調整機構35を駆動制御することによって、オートフォーカス制御を行う。具体的には、顕微鏡装置制御部41には、撮像部37から収容部22の底面までの距離と結像光学系Cの光軸方向の移動量との関係が予め設定されている。顕微鏡装置制御部41は、入力された撮像部37から収容部22の底面までの距離に基づいて、結像光学系Cの光軸方向の移動量を求め、その移動量に応じた制御信号をフォーカス調整機構35に出力する。フォーカス調整機構35は、入力された制御信号に基づいて駆動し、これにより位相差レンズが光軸方向に移動して焦点距離を合わせ、培養容器20のZ方向の位置に応じたオートフォーカス制御が行われる。
【0057】
なお、オートフォーカス制御のための撮像部37から収容部22の底面までの距離としては、たとえば、視野R内で第1の変位センサ38aまたは第2の変位センサ38bによって測定された、撮像部37から培養容器20の底面までの距離のうち、撮像部37から収容部22の底部までの距離の平均値が用いられる。
【0058】
培養容器20の一つの収容部22(
図4における左上の収容部22)に注目して、測定部38がZ方向の位置を測定する様子を説明する。
【0059】
図7は、収容部を測定部が測定する様子を説明するための図である。
図7中、上段では、収容部22を平面視したときの測定部37の走査軌道Mを示し、下段では走査軌道における測定部38の測定結果を示す。
【0060】
たとえば、視野R1の撮像に先立って測定される第1の変位センサ38aによる撮像部37から収容部22の底面までの距離の測定は、視野R1全域である図中の両矢印W1に示す範囲で行われる。しかし、両矢印W1の全体の測定値を用いたのでは、撮像部37から収容部22の底面までの距離とは関係ない測定値までも含まれる。したがって、収容部22内の観察対象に対するオートフォーカス制御のためには、撮像部37から収容部22の底面までの距離とは関係ない測定値を除いた測定結果を用いる必要がある。換言すると、測定部38が収容部22の底面までの距離を測定できる範囲(有効範囲)を用いる必要がある。有効範囲は、図中、両矢印FO1で示される。
【0061】
ここで、視野R1〜R3を比較して分かるように、視野R毎に収容部22の底部までの距離を測定できる有効範囲は異なる。視野R2は、走査方向に沿う全幅が有効範囲FO2になる。しかし、視野R1は、走査方向に沿う後半だけが有効範囲FO1となり、視野R3は、走査方向に沿う前半だけが有効範囲FO3となる。
【0062】
ここで、外乱により、有効範囲内の一部の測定値に異常値が入ることがある。外乱とは、たとえば、収容部22の底部の傷等により発生しうる。収容部22の底部の傷等があると、測定部38から照射したレーザー光が収容部22の底部に乱反射し、測定部38において正確に検出できない場合に、測定値が異常値となる。また、外乱は、たとえば、振動により発生しうる。振動の結果、測定部38から収容部22の底面までの距離が一瞬変わる。その瞬間の距離を測定部38が測定することにより、測定値が異常値となる。このように、異常値の影響が大きいと、結果として、オートフォーカス制御が適切に行えなくなってしまう。対象となっている視野Rでの有効範囲の走査方向における距離が十分な長さであれば、有効範囲内の一部の測定値に外乱による異常値が入ったとしても、異常値の影響が小さく、その有効範囲内の測定結果だけを用い測定結果を平均することで、オートフォーカス制御のための撮像部37から収容部22の底面までの距離を求めることができる。しかし、オートフォーカス制御の対象となっている視野Rでの有効範囲の走査方向における距離が十分でない場合、外乱により、有効範囲内の一部の測定値に異常値が入ると、異常値の影響が大きく、有効範囲内の測定値を平均して撮像部37から培養容器20の底面までの距離を求めたときに適切な値にならず、結果として、オートフォーカス制御が適切に行えなくなってしまう。異常値の影響が大きくなる。
【0063】
これを防止するために、本実施形態の観察装置は、何れの視野Rに対しても、十分な有効範囲で収容部22の底面までの距離を測定し、適切なオートフォーカス制御により撮像を行う。以下に、観測装置の観察方法について説明する。以下に示すアルゴリズムは、記憶部44に記憶されたプログラムを、CPUが実行することにより実現される。
【0064】
図8は、観察装置により実行される観察方法の流れを示すフローチャートである。各工程は、制御部40により実行される。
図9は、視野内の有効範囲から拡張した範囲を、オートフォーカス制御のために測定部による測定結果を用いる範囲とする例を示す図である。
【0065】
まず、制御部40は、入力部46において、ユーザによる培養容器20の容器情報の入力を受け付け、入力された培養容器20の容器情報に基づいて、記憶部44に記憶された培養容器20の形状情報を取得する(ステップS101)。形状情報から、今回使用される培養容器20の収容部22の数、収容部22の間隔、および収容部22の径等の情報が得られる。
【0066】
次に、制御部40は、ステップS101で得た培養容器20の形状情報から、撮像位置を特定する(ステップS102)。撮像位置は、培養容器20に収容された観察対象が観察できる載置台10のX−Y平面の座標位置として特定される。たとえば、制御部40は、ステップS101で形状が特定された培養容器20が載置台10に適切に載置された状態を想定して、
図4に示すような視野R1〜視野R54において撮像するための結像光学系CのXY座標を撮像位置として特定する。加えて、制御部40は、撮像位置を結ぶ軌道を、走査軌道Mとして特定する。制御部40は、培養容器20の形状情報に基づいて、先に走査軌道を決定し、走査軌道上において、撮像位置の座標を特定してもよい。走査軌道は、方向転換時以外はできるだけ直線により構成されることが好ましい。
【0067】
続けて、制御部40は、全ての視野Ri(i=1〜54)に対して、後続の処理を行うために、初期値としてiに1を代入する(ステップS103)。
【0068】
制御部40は、視野Riにおける測定部38の有効範囲を示す有効範囲情報を算出する(ステップS104)。
【0069】
制御部40は、視野Riにおける測定部38の有効範囲が予め定められた閾値以下かどうか判断する(ステップS105)。閾値は、ユーザが任意に決定できる値であり、有効範囲と比較できるように、長さを示す値である。閾値は、たとえば、測定部38が撮像部
37から収容部22の底面までの距離を測定する走査範囲として、外乱があっても所望の精度が保てる範囲の長さに設定される。本実施形態では、閾値が、撮像部37の視野Riの走査軌道に沿った幅の半分として説明する。ただし、上述のように、閾値はユーザが測定精度を考慮して、任意に決定できるものであり、視野Riの幅の半分に限定されない。
図9の視野R1の場合、制御部40は、有効範囲FO1を走査方向において視野の幅の半分以下と判断する。
図9の視野R2の場合、制御部40は、有効範囲FO2を走査方向において視野の幅の半分より大きいと判断する。
【0070】
有効範囲が視野幅の半分以下でない場合(ステップS105:NO)、制御部40は、視野Ri内の有効範囲のみを、オートフォーカス制御のために測定部38による測定結果を用いる有効範囲として、記憶部44に記憶させる(ステップS106)。本実施形態では、有効範囲の大きさがオートフォーカス制御に用いるのに十分な大きさとみなされるからである。
【0071】
有効範囲が視野幅の半分以下である場合(ステップS105:YES)、制御部40は、視野Ri内の有効範囲だけでなく、視野Ri内の有効範囲から拡張した範囲をオートフォーカス制御のために測定部38による測定結果を用いる測定範囲として、記憶部44に記憶させる(ステップS107)。有効範囲の大きさでは、オートフォーカス制御に用いるには不十分とみなされるからである。
【0072】
有効範囲の拡張方法の具体例としては、制御部40は、有効範囲に加えて、視野Riに隣り合う視野Ri+1または視野Ri−1まで拡張した範囲を、測定範囲として記憶部4
4に記憶させる。たとえば、
図9の視野R1の場合、隣り合う視野R2では、測定部38により撮像部37から収容部22の底面までの距離が十分に測定できる。そこで、制御部40は、視野R1内の有効範囲FO1から視野R2内まで拡張された有効範囲FM1を、視野R1を顕微鏡装置30により撮像する際にオートフォーカス制御に用いる有効範囲とする。したがって、
図9の下段に示すように、拡張された有効範囲FM1における測定部38の測定結果が平均され、視野R1のオートフォーカス制御に用いられる。拡張された有効範囲FM1は、
図9に示す通り、好ましくは、有効範囲FO1と、有効範囲FO1から連続する視野R2内の測定範囲とを含む。拡張された有効範囲FM1は、たとえば、閾値の長さと同等になるように設定される。この場合、閾値である視野幅の半分に対して有効範囲FO1が足りない長さ分だけ、隣り合う視野R2における有効範囲が組み込まれ、拡張された有効範囲FM1となる。あるいは、拡張された有効範囲FM1は、閾値(視野Rの半分)以上であり、視野Rの全長以下となるように設定されてもよい。
【0073】
また、たとえば、
図9の視野R3の場合、隣り合う視野R2では、測定部38により撮像部37から収容部22の底面までの距離が十分に測定できる。制御部40は、視野R3内の有効範囲FO3から視野R2内まで拡張した有効範囲FM3を、視野R3を顕微鏡装置30により撮像する際にオートフォーカス制御に用いる測定範囲とする。このように、
図9の下段に示すように、拡張された有効範囲FM1およびFM3における測定部38の測定結果が平均され、視野R1および視野R3のオートフォーカス制御に用いられる。
【0074】
続けて、制御部40は、全視野について、有効範囲の判断が完了したか判断する(ステップS108)。全視野に対する判断が終わってない場合(ステップS108:NO)、制御部40は、iを1だけ増やしてして(ステップS109)、ステップS104からの処理を繰り返す。全視野に対する判断が終わった場合(ステップS108:YES)、制御部40は、走査軌道に従って走査制御部42により載置台10を移動させつつ、顕微鏡装置30による撮像を開始することによって、培養容器20の走査を開始する(ステップS110)。
【0075】
制御部40は、撮像に先行して、測定部38により、撮像部37から収容部22の底面までの距離を測定し、記憶部44に記憶する(ステップS111)。
【0076】
制御部40は、ステップS106またはステップS107において記憶した有効範囲における測定部38の測定結果を平均して、オートフォーカス制御に用い、各視野における撮像位置において顕微鏡装置30により撮像する(ステップS112)。
【0077】
制御部40は、走査が完了したか、すなわち、全ての撮像位置において撮像が終わったかを判断する(ステップS113)。走査が完了していない場合(ステップS113:NO)、ステップS111の処理に戻り、測定部38による測定と、追従する撮像を行う。走査が完了した場合(ステップS113:YES)、制御部40は、観察処理を終了する。
【0078】
以上のように、上記実施形態の観察装置は、視野Rにおける測定部38の有効範囲、すなわち、視野Rに含まれる収容部22の走査軌道に沿う長さが、閾値(視野幅の半分)以下の場合であっても、隣り合う視野の有効範囲まで拡張した有効範囲を設定して、測定部38の測定結果を用いる。したがって、振動等の外乱があった場合でも、オートフォーカス制御の対象である視野Rの有効範囲だけの測定結果を用いてオートフォーカス制御する場合に比べて、外乱の影響を少なくできる。換言すると、観察装置は、視野R内で培養容器20の収容部までの距離を測定できる有効範囲の大きさに関わらず、適切にオートフォーカス制御を行って画像を撮像できる。
【0079】
なお、上記実施形態では、全視野について、有効範囲の判断が完了した後に顕微鏡装置30による撮像を開始するようにしたが、これに限定されず、各視野の有効範囲の判断と顕微鏡装置30による撮像を並行して行ってもよい。
【0080】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した観察処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field−Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、観察処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0081】
また、上記実施形態では、観察処理のプログラムが記憶部44に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。