(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本開示の実施例を説明する。なお、本開示の実施例は、後述する実施例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。また、後述する各実施例の説明に使用する各図の対応部分には同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。なお、実施例1〜6に係る自動分析装置は、共通のハードウェアの構成を有する。実施例7に係る自動分析装置は、分析ポートを挟んで光源に対して反対側に凹状の透過光吸収穴が設けられている点が実施例1〜6に係る自動分析装置とは異なる。また、実施例8に係る自動分析装置は、実施例1〜6に係る自動分析装置と比較して光源の位置が異なる。
【0022】
<実施例1>
[装置の基本構成]
図1は、実施例1に係る自動分析装置1の基本構成を示す図である。ここでは、自動分析装置の一態様として、血液凝固時間分析ユニット2とターンテーブル方式の生化学分析部3とを備えた複合型の自動分析装置1の例について説明する。
【0023】
本図に示すように、自動分析装置1は、その筐体上に反応ディスク13、サンプルディスク11、第1試薬ディスク15、第2試薬ディスク16、血液凝固時間分析ユニット2および光度計19を備えている。
【0024】
反応ディスク13は、時計回りおよび反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、反応容器(生化学分析用)26をその円周上に複数個配置することができる。
【0025】
サンプルディスク11は、時計回りおよび反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、標準サンプルや被検サンプル等のサンプルを収容するサンプル容器27をその円周上に複数個配置することができる。
【0026】
第1試薬ディスク15および第2試薬ディスク16のそれぞれは、時計回りおよび反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであって、試薬を収容する試薬容器をその円周上に複数個配置できる。上記試薬は、サンプルに含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する。なお、第1試薬ディスク15および第2試薬ディスク16は、保冷機構等を備えることにより、配置された試薬容器内の試薬を保冷可能に構成されることもできる。
【0027】
サンプルディスク11と反応ディスク13との間にはサンプル分注プローブ12が配置されている。サンプル分注プローブ12を回転させることによって、サンプルディスク11上のサンプル容器27、反応ディスク13上の反応容器(生化学分析用)26、および血液凝固時間分析ユニット2のサンプル分注ポジション18における反応容器(血液凝固分析用)28においてサンプルの吸引および分注動作が可能である。
【0028】
同様に、第1試薬ディスク15と反応ディスク13の間には第1試薬分注プローブ17が、第2試薬ディスク16と反応ディスク13の間には第2試薬分注プローブ14が配置されている。第1試薬分注プローブ17および第2試薬分注プローブ14のそれぞれを回転させることによって、反応ディスク13上の反応容器(生化学分析用)26と第1試薬ディスク15および第2試薬ディスク16上の試薬容器とにおいて吸引および分注動作が可能である。
【0029】
血液凝固時間分析ユニット2は、主として、血液凝固時間検出部21、血液凝固試薬分注プローブ20、反応容器マガジン25、反応容器移送機構23、反応容器廃棄口24から構成される。
【0030】
次に、自動分析装置1に係る制御系および信号処理系について簡単に説明する。コンピュータ105は、インターフェース101を介して、サンプル分注制御部201、移送機構制御部202、A/D変換器(2)203、血液凝固試薬分注制御部204、A/D変換器(1)205、試薬分注制御部(1)206および試薬分注制御部(2)207に接続されており、各制御部に対して指令となる信号を送信する。
【0031】
サンプル分注制御部201は、コンピュータ105から受けた指令に基づいて、サンプル分注プローブ12によるサンプルの分注動作を制御する。
【0032】
試薬分注制御部(1)206および試薬分注制御部(2)207は、コンピュータ105から受けた指令に基づいて、第1試薬分注プローブ17および第2試薬分注プローブ14による試薬の分注動作を制御する。
【0033】
移送機構制御部202は、コンピュータ105から受けた指令に基づいて、反応容器移送機構23による、反応容器マガジン25、サンプル分注ポジション18、血液凝固時間検出部21の分析ポート304および反応容器廃棄口24らの間における使い捨て反応容器(血液凝固分析用)28の移送動作を制御する。
【0034】
血液凝固試薬分注制御部204は、コンピュータ105から受けた指令に基づいて血液凝固試薬分注プローブ20を動作させ、分析ポート304に設置された、サンプルを収容する反応容器(血液凝固分析用)28に対して、血液凝固用の試薬の分注を行う。
【0035】
また、血液凝固試薬分注制御部204は、血液凝固試薬分注プローブ20を動作させ、反応容器(生化学分析用)26内の、サンプルと血液凝固分析用の第1試薬との混合液である前処理液を、空の反応容器(血液凝固分析用)28に対して分注する。この場合、血液凝固試薬分注制御部204は、前処理液を収容した反応容器(血液凝固分析用)28に対して、血液凝固分析用の第2試薬の分注を後に行う。なお、血液凝固分析用の試薬は、第1試薬ディスク15および第2試薬ディスク16に配置されており、第1試薬分注プローブ17および第2試薬分注プローブ14によって、必要に応じて反応ディスク13上の反応容器(生化学分析用)26に一旦分注されたのち、血液凝固分析に用いられる。
【0036】
A/D変換器(1)205は、反応容器(生化学分析用)26内の反応液を透過した透過光または反応液内において散乱した散乱光の測光値をデジタル信号に変換する。また、A/D変換器(2)203は、使い捨ての反応容器(血液凝固分析用)28内の反応液を透過した透過光または反応液内において散乱した散乱光の測光値をデジタル信号に変換する。上記デジタル信号は、コンピュータ105に取り込まれる。
【0037】
インターフェース101には、測定結果をレポート等として出力する際に印字するためのプリンタ106、記憶装置であるメモリ104や外部出力メディア102、操作指令等を入力するためのキーボードなどの入力装置107、画面表示するための表示装置103が接続されている。表示装置103は、例えば液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等で構成される。
【0038】
[生化学項目の分析手順]
自動分析装置1による生化学項目の分析は、次の手順で行われる。まず、操作者は、キーボード等の入力装置107を用いて各サンプルに対する検査項目を入力する。入力された検査項目についてサンプルを分析するために、サンプル分注プローブ12は、分析パラメータにしたがってサンプル容器27から反応容器(生化学分析用)26へ所定量のサンプルを分注する。
【0039】
サンプルが分注された反応容器(生化学分析用)26は、反応ディスク13の回転によって移送され、試薬受け入れ位置で停止される。第1試薬分注プローブ17および第2試薬分注プローブ14のピペットノズルは、該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応容器(生化学分析用)26に所定量の試薬液を分注する。サンプルと試薬の分注順序は、この例とは逆に、サンプルより試薬が先であってもよい。
【0040】
その後、図示しない攪拌機構により、サンプルと試薬との攪拌が行われ、混合される。この反応容器(生化学分析用)26が、測光位置を通過する際、光度計19は、反応容器(生化学分析用)26に収容されたサンプルと試薬との混合液である反応液の透過光または散乱光を測光する。測光された透過光または散乱光は、A/D変換器(1)205により光量に比例した数値のデータに変換され、インターフェース101を経由して、コンピュータ105に取り込まれる。
【0041】
上記変換された数値のデータを用い、検査項目毎に指定された分析法により予め測定しておいた検量線に基づき、成分濃度データが算出される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ106や表示装置103の画面に出力される。
【0042】
以上の測定動作が実行される前に、操作者は、分析に必要な種々のパラメータの設定や試薬およびサンプルの登録を、表示装置103の操作画面を介して行う。また、操作者は、測定後の分析結果を表示装置103上の操作画面により確認する。
【0043】
[血液凝固時間項目の分析手順]
また、自動分析装置1による血液凝固時間項目の分析は、主に次の手順で行われる。
まず、コンピュータ105はキーボード等の入力装置107を用いて各サンプルに対する検査項目の入力を受けつける。続いて、反応容器移送機構23は、入力された検査項目についてサンプルを分析するために、使い捨ての反応容器(血液凝固分析用)28を反応容器マガジン25からサンプル分注ポジション18へ移送する。サンプル分注プローブ12は分析パラメータにしたがってサンプル容器27から反応容器(血液凝固分析用)28へ所定量のサンプルを分注する。
【0044】
サンプルが分注された反応容器(血液凝固分析用)28は、反応容器移送機構23によって血液凝固時間検出部21の分析ポート304へ移送され、所定の温度へ昇温される。
【0045】
第1試薬分注プローブ17は、該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応ディスク13上の反応容器(生化学分析用)26に所定量の試薬液を分注する。反応ディスク13には、図示しない恒温槽が設けられているため、反応容器(生化学分析)26に分注された試薬液は37℃に温められる。
【0046】
その後、血液凝固試薬分注プローブ20は反応容器(生化学分析用)26に分注されている試薬を吸引し、血液凝固試薬分注プローブ20内で、図示しない昇温機構により所定の温度に昇温した後、反応容器(血液凝固分析用)28に吐出する。
【0047】
試薬が吐出された時点から、反応容器(血液凝固分析用)28に照射された光の透過光または散乱光の測光が開始される。測光された透過光または散乱光は、A/D変換器(2)203により光量に比例した数値のデータに変換され、インターフェース101を経由して、コンピュータ105に取り込まれる。
【0048】
コンピュータ105は、この変換された数値を用い、血液凝固反応に要した時間(以下、単に血液凝固時間ということがある)を求める。例えば、ATPP(活性化部分トロンボプラスチン時間)等の検査項目については、コンピュータ105は上述のようにして求めた血液凝固時間を分析結果として出力する。一方、Fbg(フィブリノーゲン)等の検査項目については、コンピュータ105は、求めた血液凝固時間に対して、さらに、検査項目毎に指定された分析法により、予め測定しておいた検量線に基づいて成分濃度のデータを求め分析結果として出力する。各検査項目の分析結果としての血液凝固時間や成分濃度のデータは、プリンタ106や表示装置103の画面に出力される。
【0049】
ここで、上記の測定動作が実行される前に、操作者は、分析に必要な種々のパラメータの設定や試薬、サンプルの登録を、表示装置103の操作画面を介して予め行う。コンピュータ105は、登録された種々のパラメータおよび分析手順に基づいて各検査項目を分析する。また、操作者は、測定後の分析結果を表示装置103上の操作画面により確認することができる。
【0050】
また、サンプル分注プローブ12によって吐出されるサンプルの吐出先は反応容器(生化学分析用)26であってもよい。この場合、上述したように予め反応容器(生化学分析用)26内でサンプルを前処理液と反応させたのちに、血液凝固試薬分注プローブ20によって、反応容器(血液凝固分析用)28に分注することもできる。
【0051】
反応容器(血液凝固分析用)28においては、反応容器(血液凝固分析用)28に先に収容されているサンプルに対して、吐出攪拌と呼ばれる撹拌が行われる。ここで吐出撹拌とは、試薬が吐出されたときの勢いによって、反応容器(血液凝固分析用)28内におけるサンプルと試薬との混合を行う手法である。サンプルおよび試薬の分注順序は、この例とは逆に、サンプルより試薬の方が先であってもよく、この場合はサンプルが吐出されたときの勢いによって、試薬との混合を行うことができる。
【0052】
[血液凝固時間検出部の構造]
次に、血液凝固時間検出部21について簡単に説明する。血液凝固時間検出部21は、使い捨ての反応容器(血液凝固分析用)28を設置可能な1つまたは複数の分析ポート304において、光源302と検出器303とを有し、反応容器(血液凝固分析用)28内の反応液に照射された光の散乱光または前記分析ポートの表面で反射した反射光の強度を検出することができる。
【0053】
血液凝固試薬分注プローブ20は、反応ディスク13上の反応容器(生化学分析用)26に収容された試薬の吸引動作、および、血液凝固時間検出部21に設置された反応容器(血液凝固分析用)28への分注動作を行う。
【0054】
反応容器マガジン25は、複数の使い捨ての反応容器(血液凝固分析用)28を整列して設置するために使われる。サンプル分注ポジション18は、サンプルディスク11に設置された分析対象のサンプルを、反応容器(血液凝固分析用)28に分注するために設けられている。ここで、反応容器(血液凝固分析用)28は反応容器移送機構23によって反応容器マガジン25から移送される。
【0055】
図2は、血液凝固時間検出部21の基本構成を示す図である。具体的には、
図2には、分析ポート304における反応容器(血液凝固分析用)28と光源302と検出器303との配置構成が示されている。
【0056】
図2(a)は、光源302および検出器303の配置構成を上面から見た場合の上面断面図であり、
図2(b)は、同配置構成を正面から見た場合の正面断面図である。なお、
図2(b)では、反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に収められる前の状態が描かれている。
【0057】
血液凝固時間検出部21は、上述のとおり、光源302、検出器303を含み、上面から使い捨ての反応容器(血液凝固分析用)28を設置できる分析ポート304を1つないし複数備えている。
【0058】
検出器303は、光源302から反応容器(血液凝固分析用)28内の反応液に照射された光(照射光306)の散乱光305を検出できるように、反応容器(血液凝固分析用)28の側面に配置されている。そして、光源302と反応容器(血液凝固分析用)28との間には、照射光306の照射範囲を調節する照射スリット307が設けられ、反応容器(血液凝固分析用)28と検出器303との間には、散乱光305の範囲を調節する受光スリット308が設けられる。
【0059】
[反応容器の検出方法]
図3は、血液凝固時間検出部21の光学的構成の例を示す図である。
図3(a)は、空の反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に設置されている場合の光の経路を示す。光源302から照射された光は、反応容器(血液凝固分析用)28に入射する際および反応容器(血液凝固分析用)28から出射する際に屈折し、僅かに反射するように表面処理された分析ポート304の内側の壁面に当たる。壁面に当たった光の多くは吸収されるが、一部は拡散反射して検出器303に入射する。
【0060】
図3(b)は、反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に設置されていない場合の光線を示す。本図に示すように、反応容器(血液凝固分析用)28が設置されていない場合には、上述した光の屈折が起きないため、反応容器(血液凝固分析用)28が設置された場合と比較して、光源302から照射された光が分析ポート304の壁面に当たる範囲は狭くなる。このとき、分析ポート304の壁面にて拡散反射した光の一部は検出器303に入射するが、空の反応容器(血液凝固分析用)28が設置されている場合よりも検出器303が検出する光量は小さくなる。
【0061】
したがって、分析ポート304に反応容器(血液凝固分析用)28が設置されていない状態での検出器303の出力と、空の反応容器(血液凝固分析用)28が設置されている状態での検出器303の出力を比較することにより、空の反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に設置されているかどうかを判別することができる。
【0062】
具体的には、コンピュータ105は、空の反応容器(血液凝固分析用)28が設置されている場合に測定した光量と設置されていない場合に測定した光量との差分が基準値以上の場合には反応容器(血液凝固分析用)28の設置が正常に行われたと判定する。一方、コンピュータ105は、上記差分が基準値未満の場合には反応容器(血液凝固分析用)28の設置に失敗したと判定する。ここで、上記基準値は、例えば、分析ポート304の表面処理の度合いに応じて適宜実験によって決定される値である。また、コンピュータ105は、反応容器(血液凝固分析用)28の設置後の光量が設置前の光量を下回った場合に、反応容器(血液凝固分析用)28が正しく設置できなかったと判定してもよい。
【0063】
反応容器(血液凝固分析用)28の設置が失敗する原因としては、反応容器(血液凝固分析用)28を移送する機構の位置の調整不良や、反応容器移送機構23の故障により位置決め精度が低下している場合などが考えられる。なお、上記のとおり、反応容器(血液凝固分析用)28の設置が失敗している場合は、検出器303が検出する光量が、分析ポート304に反応容器(血液凝固分析用)28が設置されていない際に検出器303が検出した光量よりも大きくならない。
【0064】
図4は、反応容器(血液凝固分析用)28の設置チェック動作の一例を示すフローチャートである。
図4を用いて、上述した構成における、光量チェック動作と、これに基づく分析ポートのマスキング動作の方法について説明する。
【0065】
まず、自動分析装置1は入力装置107が分析動作の開始を指示する入力を受けつける(S401)。次に自動分析装置1が各機構のリセット動作(S402)を行った後、前回の分析に使用した反応容器(血液凝固分析用)28の廃棄動作(S403)を行う。
【0066】
次に、コンピュータ105は、光源302を点灯させ、かつ反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に設置されていない状態で検出器303による測光を行う(S404)。ここで検出器303が受光する光は、分析ポート304の壁面にて拡散反射した光である。
【0067】
次に、反応容器移送機構23が空の反応容器(血液凝固分析用)28を分析ポート304に設置し(S405)、検出器303が測光する(S406)。ここで検出器303が受光する光は、反応容器(血液凝固分析用)28を透過し、かつ、分析ポート304の壁面にて拡散反射した光である。測光の結果、反応容器(血液凝固分析用)28の設置前後の光量の差分が基準値以上であれば(S407においてYES)、当該分析ポート304を使用して反応容器(血液凝固分析用)28に検体分注および試薬分注を行い(S410)、反応容器(血液凝固分析用)28内に分注されたサンプルと試薬との混合液である反応液に対して分析動作を実行する(S411)。コンピュータ105は、分析が終了次第、結果を報告し(S412)、次の分析があるかどうかを判断する(S413)。ここで、次の分析がある場合(S413においてYES)、処理はステップS403に戻り、反応容器廃棄動作(S403)以降のステップが繰り返される。次の分析がない場合(S413においてNO)、コンピュータ105は反応容器(血液凝固分析用)28の設置動作を終了する。
【0068】
一方、ステップS407にて光量の差分が基準値未満であった場合(S407においてNO)、上述のとおり、反応容器(血液凝固分析用)28の設置失敗が起きた可能性が考えられる。このため、コンピュータ105は、警告(例えば、アラーム音または画面表示)を発生して操作者に知らせる(S408)と共に、1つの分析ポート304に対する調整不良を想定して当該分析ポート304をマスク(S409)して使用しないように制御し、別の分析ポートを使用してステップS403以降の動作を実施する。即ち、反応容器移送機構23が、マスクされた分析ポート304以外の分析ポートに反応容器(血液凝固分析用)28を設置し、コンピュータ105はステップS403以降の動作を実施する。
【0069】
上記の動作により、分析の実行毎に反応容器(血液凝固分析用)28が正しく設置できたかどうかを判定することができるため、分析ポート304内部に検体や試薬を吐出してしまうことによる故障および緊急メンテナンス、あるいは分析失敗による再検による報告の遅延リスクを低減することができる。
【0070】
<実施例2>
上述した実施例1では、反応容器(血液凝固分析用)28の設置前後の光量差が基準値を下回った場合、または、設置後の光量が設置前の光量を下回った場合に、反応容器(血液凝固分析用)28が正しく設置できなかったとコンピュータ105が判定した。
【0071】
しかしながら、たとえ反応容器(血液凝固分析用)28が正しく分析ポート304に設置されていたとしても、例えば、反応容器(血液凝固分析用)28に傷や汚れがあって光が遮られている、または反応容器内(血液凝固分析用)28に異物が入っていて光を遮っている場合、検出器303が検出する光の強度は変化する。
【0072】
それ故、コンピュータ105は、反応容器(血液凝固分析用)28の設置前後の光量差が基準値を下回った場合、または、設置後の光量が設置前の光量を下回った場合に、反応容器(血液凝固分析用)28が使用できないと判断してもよい。ここで、反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に正しく設置されていないと判断する基準値と反応容器(血液凝固分析用)28が汚れていると判断する基準値とは同一であってもよく異なっていてもよい。これらの基準値は適宜実験によって状況を正しく反映する値が決定される。
【0073】
反応容器(血液凝固分析用)28の設置前後の光量差が、反応容器(血液凝固分析用)28が汚れていると判断する基準値を下回った場合、コンピュータ105は、警告して操作者に知らせると共に、検体分注動作、試薬分注動作、分析動作および結果報告をスキップして当該反応容器(血液凝固分析用)28を使用しないようにし、当該分析を再スケジューリングして、次の分析動作へ移行する機能を備えることができる。これにより、反応容器(血液凝固分析用)28の異常による結果の誤報告を防止でき、また、自動的に再スケジューリングすることにより分析失敗による報告の遅延を最小限に抑えることができ、検査業務の信頼性を向上することができる。
【0074】
<実施例3>
実施例1の説明では、コンピュータ105は、空の反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に設置される前と設置された後の光量の差を測定することにより、反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に正しく設置されたか否かを判定した。
【0075】
しかしながら、上述のとおり、反応容器移送機構23は、空の反応容器(血液凝固分析用)28のみならず、検体または希釈液が分注済みの反応容器(血液凝固分析用)28を分析ポート304に設置する場合もある。即ち、反応容器(血液凝固分析用)28が内部に最終的な反応液の総量よりも少ない量の液体を保持している場合である。
【0076】
その場合、コンピュータ105は、検体または希釈液等が反応容器(血液凝固分析用)28に分注済みであっても、反応容器(血液凝固分析用)28の設置前後の光量差が基準値以上であれば、反応容器(血液凝固分析用)28が正常に設置されたと判定してもよい。
【0077】
図5は、検体または希釈液等が分注された反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に設置されたか否かを検出する様子が示された図である。
図5(a)に示されているように、照射スリット307および受光スリット308を、検体や希釈液が分注された液面よりも上にかかる高さに設置すると、
図3(a)と同様に、液面より上に照射された光は分析ポート304の広い範囲の内側壁面に当たることになり、当該壁面にて拡散反射した光は検出器303に入射する。換言すると、光源302が出射する光の少なくとも一部は液体の液面よりも上部の空間に照射されている。
【0078】
一方、液面より下に照射された光は、
図5(b)に示されているように、反応容器で屈折して、狭い範囲の壁面に照射される。ここで反応容器(血液凝固分析用)28の屈折率と分注された液体の屈折率とは近い値であるため、反応容器(血液凝固分析用)28と液体の境界面で光はさほど屈折しない。それ故、検出器303の位置を適切に設定することにより、液面より下に照射された光は拡散反射してもほとんど検出器303に入射しない。
【0079】
ここで、分析ポート304の壁面の表面処理は、液面より上を通って検出器303に入射する光量が、反応容器(血液凝固分析用)28が設置されていない場合の検出器303への入射光量よりも大きくなるように制御される。このようにすると、仮に液が全く光を透過しない場合であっても、反応容器(血液凝固分析用)28の設置前後の光量差の比較によって反応容器(血液凝固分析用)28の設置が正常に行われたかどうかを判定することができる。また、実際の検体や希釈液が分注されている場合には透過率が0の液体が分注されている場合より大きな光量が検出器303に入射することになり、反応容器(血液凝固分析用)28の設置前後の光量差の比較によって反応容器(血液凝固分析用)28の設置が正常に行われたかどうかを判定することができる。
【0080】
なお、反応容器(血液凝固分析用)28に検体または希釈液が分注済みである場合、反応容器(血液凝固分析用)28が空である場合と比較して光の散乱強度が異なるため、光量差の基準値は実施例1の説明で記された基準値とは異なる基準値に設定してもよい。このようにすると、分析ポート304の壁面の表面処理を変更せずとも反応容器(血液凝固分析用)28の設置が正常に行われたかどうかを判定することができる。すなわち、ハードウェアの変更をせずともソフトウェア上で数値を変更することによって反応容器(血液凝固分析用)28の設置が正常に行われたかどうかを判定することができる。
【0081】
<実施例4>
実施例1の説明では反応容器(血液凝固分析用)28の設置前後の光量を比較することにより、反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に正しく設置されたか否かを判定した。この手法によれば、分析ポート304および光源302等の個体差や劣化に影響されることなく判定が実施可能であった。しかしながら、予め各分析ポート304に対してキャリブレーションを行うことにより、反応容器(血液凝固分析用)28の設置前の光量測定(
図4 S404)を実施しなくても、部品の個体差に影響されずに判定を行うことが可能である。
【0082】
具体的には、反応容器(血液凝固分析用)28が設置されていない場合、空の反応容器(血液凝固分析用)28が設置されている場合、および、検体または希釈液(または光を透過しない液体)が分注済みの反応容器(血液凝固分析用)28が設置されている場合の三つの場合について光量を予め測定し、記憶する。コンピュータ105は、上記三つの光量のそれぞれに所定の幅を持たせた数値範囲と、反応容器(血液凝固分析用)28の設置後に検出した光量の値と、を比較して分析ポート304の状態が上記第1の場合、第2の場合および第3の場合のいずれに当てはまるかを判定し、分析ポート304の状態が予定された状態とは異なる場合に警告を発する。ここで、上記所定の幅は、例えば、検体の種類およびその分注量を変化させた際に変化しうる光量の幅の最大値である。また、「予定された状態」とは、例えば、コンピュータ105に登録された処理手順に照らしてあるべき状態を指す。
【0083】
コンピュータ105は、例えば、空の反応容器(血液凝固分析用)28を設置する動作フローが予定されていたか、あるいは、検体または希釈液が分注済みの反応容器(血液凝固分析用)28を設置する動作フローが予定されていたかに基づいて、反応容器(血液凝固分析用)28が正しく設置できていないと判定するか、空の反応容器(血液凝固分析用)28を設置したはずが何らかの液体が入っていると判定するか、または上記三つのパターンのいずれよりも光量が低く、反応容器(血液凝固分析用)28内に異物があると判定し、当該反応容器(血液凝固分析用)28に対する分析動作をスキップする信号を出力する。
【0084】
上記方法によれば、反応容器(血液凝固分析用)28の設置前の測光をなくすことができ、オペレーション動作を簡素化できる他、部品の個体差を補正できることから判定の信頼性が向上する。
【0085】
<実施例5>
上述した変形例2の方法において、検体または検体と希釈液とを分注した反応容器(血液凝固分析用)28を設置した後に検出した光量が、正常な検体が分注された反応容器(血液凝固分析用)28が正常に設置された際に検出した光量と比べて所定の値よりも大きい場合、反応容器(血液凝固分析用)28に分注された検体が乳び検体と呼ばれる濁度の大きい検体である可能性が高い。上記の場合、コンピュータ105は、分析結果の出力にアラームをつけてオペレータに知らせてもよい。
【0086】
反応容器(血液凝固分析用)28に乳び検体が分注されていると、乳び検体は濁度が高いことから散乱光の計測にノイズ成分が増えるため、反応過程の乱れや光量変化の減衰が発生し、分析結果の信頼性が低くなる。したがって、これをオペレータに知らせることによって分析結果を精査することを促せるので、検査業務の信頼性を高めることができる。
【0087】
なお、反応容器(血液凝固分析用)28に分注された検体が乳び検体であるとみなすための光量のしきい値は、変形例3に記載のキャリブレーションと組み合わせて、正常な検体が予め分注されている場合の光量を記憶することによって決定でき、判定の精度を高めることができる。
【0088】
<実施例6>
上述した実施例1、3、4の方法において、コンピュータ105は、反応容器(血液凝固分析用)28設置後の光量と試薬分注後の光量とを比較して、反応容器(血液凝固分析用)28設置後(試薬分注前)の光量の方が小さいか同程度である場合、試薬分注が正常に行われなかったとみなして分析結果にアラームを付加し、オペレータに知らせることができる。換言すると、コンピュータ105は、反応容器(血液凝固分析用)28に試薬が吐出される前に計測した光量が反応容器(血液凝固分析用)28に試薬が吐出された後に計測した光量以下である場合、分析結果の出力と併せて操作者に警告することができる。
【0089】
この際、分析ポート304の表面は、検体または検体と希釈液とが分注された反応容器(血液凝固分析用)28が設置された状態において、光源302から照射された光の少なくとも一部を反射するように構成される。試薬分注後は照射光が全て液面の下を通るように設計すれば、試薬分注前には
図5(a)のように液面の上を通る光が分析ポート304の壁面で拡散反射して検出器303に入射するが、試薬分注後には照射光は全て
図5(b)のように屈折して狭い範囲に照射されるため、検出器303に入射する光は減少し、反応液での散乱光だけになる。
【0090】
これにより、試薬分注が正常に行われたかどうかを追加判定することで、反応容器移送機構23の動作チェックに加えて試薬分注機構の動作チェックも可能になり、信頼性を高めることができる。
【0091】
<実施例7>
図6は、実施例2に係る血液凝固時間検出部21の光学的構成の上面図である。実施例2に係る血液凝固時間検出部21は、実施例1の血液凝固時間検出部21において、さらに、分析ポート304を挟んで光源302に対して反対側に凹状の透過光吸収穴310が設けられた構成である。
【0092】
ここで、透過光吸収穴310は、
図6(b)に示されているように、分析ポート304に反応容器(血液凝固分析用)28が配置されていない場合において、光源302から照射された光のうち、分析ポート304の内壁に衝突、反射することなく通過した光311が到達する位置に配置される。なお、検出器303の位置は、実施例1と同様に、照射された光のうち、分析ポート304の内壁に衝突して反射した光312が検出器303の受光スリット308内に含まれるように構成される。
【0093】
さらに、
図6(a)に示すように、透過光吸収穴310は、分析ポート304に反応容器(血液凝固分析用)28が配置されている場合には、光源302から照射され、反応液が入った反応容器28を透過した光309の照射範囲Aよりも大きい。そして、
図6(b)に示すように、分析ポート304に反応容器(血液凝固分析用)28が配置されていない場合には、透過光吸収穴310は、光源302から照射された光の照射範囲Bよりも小さい。
【0094】
これにより、分析動作中といった、分析ポート304に反応液が入った反応容器(血液凝固分析用)28が配置されている場合(
図6(a)に示された場合)においては、反応容器(血液凝固分析用)28を透過した光309が透過光吸収穴310に入り、透過光吸収穴310の内面で反射または吸収を繰り返して光の強度が減衰することによって、反応容器(血液凝固分析用)28側に反射して戻る光が低減する。そのため、分析のために測定すべき散乱光量が不正確となるのを防ぐことができる。
【0095】
さらに、分析ポート304に反応容器(血液凝固分析用)28が配置されていない場合(
図6(b)に示された場合)には、上述した光の照射範囲Bのうち、透過光吸収穴310の範囲外に照射された光が分析ポート304の内壁に当たり、反射することにより、発生した反射光312が検出器303に入射する。
【0096】
図7は、実施例2に係る血液凝固時間検出部21の光学的構成を示す図(
図6におけるX−X’面からの断面図)である。
図7(a)に示すように、分析ポート304に反応容器(血液凝固分析用)28が配置されている場合において、反応容器(血液凝固分析用)28に入射する光の鉛直方向の屈折が小さく、血液凝固時間の分析動作中にも分析ポート304の壁面にて光が反射される。しかしながら、配置構成上、分析ポート304の壁面にて反射した光は検出器303に入射しない位置関係となるため、検出器303が検出した光量の値から求められる分析結果には影響を及ぼさない。
【0097】
また、分析ポート304の壁面にて反射した光の一部は、反応容器(血液凝固分析用)28に収容された反応液中で散乱して散乱光を生じるが、配置構成上、当該散乱光の大部分は検出器303に入射しない位置関係であり、血液凝固時間の分析動作および分析結果への影響は無視できる。
【0098】
換言すると、分析ポート304の壁面における光の反射に起因して生じる光を、検出器303はほとんど検出することがないので、血液凝固時間の分析のために検出すべき光、すなわち反応容器(血液凝固分析用)28に収容されるサンプルと試薬との混合液である反応液中の目的成分を見積もるための光を正確にかつ効率良く検出することができる。
【0099】
一方、
図7(b)に示すように、分析ポート304に反応容器(血液凝固分析用)28が配置されていない場合にも、鉛直方向において、光源302から照射された光が分析ポート304の壁面に反射しても、配置構成上、この反射した光は検出器303に入射しない。
【0100】
このことから、上述の構成のように、透過光吸収穴310を備えることにより、反応容器(血液凝固分析用)28の設置確認のために反応容器(血液凝固分析用)28を分析ポート304に配置しない状態、あるいは反応容器(血液凝固分析用)28が空の状態で測光を実行する際には、光源302から照射された光のうち、分析ポート304の壁面にて反射して生じた光を検出器303によって検出することができ、一方血液凝固時間の分析動作時には、検出器303はこれらの反射光を検出することなく、目的成分の分析に必要な散乱光量を正確に検出することができる。
【0101】
<実施例8>
実施例2の構成において、
図6(a)に示すように反応容器(血液凝固分析用)28の上面から見た照射光が、反応容器(血液凝固分析用)28内で略平行となる位置に光源302を配置し、さらに、照射スリット307の幅と透過光吸収穴310の直径または最大径とが略等しくなるように構成することができる(図示せず)。すなわち、反応容器(血液凝固分析用)28がレンズに相当すると考えた場合に、焦点の位置に光源302を配置することにより、反応容器(血液凝固分析用)28内を通る光が平行となる。
【0102】
この構成により、より確実に、反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に配置されていない場合の光の照射範囲を、透過光吸収穴310よりも大きく、反応液を収容した反応容器(血液凝固分析用)28が分析ポート304に配置されている場合の光の照射範囲を、透過光吸収穴310よりも小さくすることができる。そのため、血液凝固時間の分析動作時に検出器303が測定する光量への影響を低減しつつ、反応容器(血液凝固分析用)28の設置確認を正確に実施できる。
【0103】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。さらに、本明細書で引用した全ての刊行物、特許文献はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。