特許第6786084号(P6786084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786084
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】レーダアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/10 20060101AFI20201109BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20201109BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20201109BHJP
   H01Q 19/28 20060101ALI20201109BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H01Q13/10
   G01S7/02 216
   G01S7/03 210
   H01Q19/28
   H01Q21/08
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-9619(P2017-9619)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-121118(P2018-121118A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】314012087
【氏名又は名称】株式会社光電製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】シェ ユアンフェン
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 雅信
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悟
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 臣也
(72)【発明者】
【氏名】荒田 慎太郎
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−341030(JP,A)
【文献】 実開昭62−167410(JP,U)
【文献】 中国特許出願公開第104409859(CN,A)
【文献】 米国特許第05889498(US,A)
【文献】 特開昭62−020403(JP,A)
【文献】 米国特許第04755821(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/10
G01S 7/02
G01S 7/03
H01Q 19/28
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由空間での波長がλの電波を受信または送信の対象とするレーダアンテナであって、
直線状に配列された複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナ部と、
前記アンテナ素子の配列を挟み、前記電波を導波する2枚の導波板と、
前記アンテナ素子ごとに前記電波の進行方向に配列された複数の無給電アンテナで構成された導波器と、
を備え、
前記導波板の前記アンテナ素子の配列部分での間隔hr1が、λ/2<hr1<λであり、
間隔がhr1の平行な導波板に挟まれた空間での前記電波の波長をλとすると、前記アンテナ素子同士の間隔dが、0.8λ<d<0.8λであり、
前記導波器の配列の長さは、前記導波板の前記電波の進行方向の長さよりも長い
ことを特徴とするレーダアンテナ。
【請求項2】
請求項1記載のレーダアンテナであって、
前記導波板の前記電波の進行方向の長さは0.75λより長い
ことを特徴とするレーダアンテナ。
【請求項3】
請求項1または2記載のレーダアンテナであって、
r1≦0.7λである
ことを特徴とするレーダアンテナ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のレーダアンテナであって、
前記導波板の前記アンテナ素子の配列から遠い部分での間隔hr2が、間隔hr1よりも広い
ことを特徴とするレーダアンテナ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のレーダアンテナであって、
前記導波板の前記アンテナ素子の配列から遠い部分での間隔hr2が、波長λと同じである
ことを特徴とするレーダアンテナ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のレーダアンテナであって、
前記アンテナ素子は、導波管に設けられた前記アンテナ素子の配列の方向と垂直方向に長いスリットであり、前記アンテナ素子同士の間隔dは、前記導波管内での前記電波の波長の整数倍である
ことを特徴とするレーダアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダの受信または送信に用いるレーダアンテナに関し、特に船舶レーダ用のレーダアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶レーダに関する技術は非特許文献1などに示されている。船舶レーダでは海面反射の影響を軽減するために水平偏波が用いられており、船舶に搭載されるレーダアンテナには、複数のアンテナ素子が水平に配列されたアレイアンテナが用いられ、駆動手段によって常時水平方向に回転している。アレイアンテナに関する技術は非特許文献2などに示されている。また、非特許文献3には、自由空間での波長よりも狭い導波板で挟んだ空間では自由空間よりも電波の波長が長くなることが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】電子情報通信学会,“知識ベース 知識の森,11群(社会情報システム)−2編(電子航法・ナビゲーションシステム)2章 海洋システム 2-2 船舶の監視システム 2-2-1 船舶レーダ”,[平成28年12月19日検索]、インターネット<http://www.ieice-hbkb.org/files/11/11gun_02hen_02.pdf>.
【非特許文献2】電子情報通信学会,“知識ベース 知識の森,4群(通信工学)−2編(アンテナ・伝搬) 7章 アレーアンテナ”,[平成28年12月19日検索]、インターネット<http://www.ieice-hbkb.org/files/04/04gun_02hen_07.pdf>.
【非特許文献3】Lars Josefsson, “A Waveguide Transverse Slot for Array Applications”, IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol.41, No.7, July 1993.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶用のレーダアンテナを水平方向に回転(垂直方向の軸を中心に回転)させるための駆動手段は、レーダアンテナが風圧によって受ける抗力を考慮して設計する必要がある。したがって、駆動手段を小型化するためにはレーダアンテナの大きさを小さくする必要があり、特に高さを低くする(垂直方向の長さを短くする)必要がある。しかし、アンテナの利得はその開口部の面積に依存するので、風圧による抗力に関する設計と利得の設計との間に一般的にはトレードオフの関係がある。開口部の面積を大きくする方法以外の利得を高くする方法としては、八木宇田アンテナのように複数の無給電アンテナを配列した導波器を利用する方法がある。しかし、アレイアンテナのアンテナ素子の間隔はグレーティングローブを抑えるために電波の波長の0.8未満にする必要がある。したがって、すべてのアンテナ素子にそれぞれ導波器を備えさせた場合、隣り合う導波器の間隔が狭くなるため、導波器同士の干渉を考慮して設計する必要があり、複雑である。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、高さが低く、設計が容易なレーダアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーダアンテナは、自由空間での波長がλの電波を受信または送信の対象とする。本発明のレーダアンテナは、アレイアンテナ部、2枚の導波板、導波器を備える。アレイアンテナ部は、直線状に配列された複数のアンテナ素子を有する。2枚の導波板は、アンテナ素子の配列を挟み、電波を導波する。導波器は、アンテナ素子ごとに電波の進行方向に配列された複数の無給電アンテナで構成されている。そして、導波板のアンテナ素子の配列部分での間隔hr1が、λ/2<hr1<λである。間隔がhr1の平行な導波板に挟まれた空間での電波の波長をλとすると、アンテナ素子同士の間隔dが、0.8λ<d<0.8λである。導波器の配列の長さは、導波板の電波の進行方向の長さよりも長い。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアレーアンテナによれば、自由空間での波長よりも狭い2枚の導波板に挟まれた空間では自由空間よりも波長が長くなるので、アンテナ素子同士の間隔を広くしてもグレーティングローブを抑圧できる。導波器の配列の長さが導波板よりも長いので、自由空間とアンテナ素子との間で電波を導くことができる。また、アンテナ素子同士の間隔が広いので導波器同士を離すことができ、設計時に導波器同士の干渉を考慮する必要性が低い。したがって、高さが低く、設計が容易なレーダアンテナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のレーダアンテナを含んだレーダ装置の構成図を示す図。
図2】本発明のレーダアンテナの構成例を示す図。
図3】アンテナ素子の1つの例を示す図。
図4】1つのアンテナ素子と2枚の導波板を有するアンテナの構成を示す図。
図5】平行な導波板に挟まれたときの導波板の間隔と波長との関係を示す図。
図6】自由空間(図4の導波板が無い状態)の電界をシミュレーションした結果を示す図。
図7】間隔hがλの平行な導波板に挟まれた空間(図4の状態)の電界をシミュレーションした結果を示す図。
図8】間隔hが0.9λの平行な導波板に挟まれた空間(図4の状態)の電界をシミュレーションした結果を示す図。
図9】間隔hが0.6λの平行な導波板に挟まれた空間(図4の状態)の電界をシミュレーションした結果を示す図。
図10】導波管132に16個のアンテナ素子120,…,12016が間隔dで形成された様子を示す図。
図11図10のアンテナ素子120,…,12016が同位相の場合の電界の分布を示す図。
図12】間隔dで配列されたアンテナ素子の1つを切り出した様子を示す図。
図13図12(A)に示したアンテナ素子の電界をシミュレーションした結果を示す図。
図14図12(B)に示したアンテナ素子の電界をシミュレーションした結果を示す図。
図15図12(C)に示したアンテナ素子の電界をシミュレーションした結果を示す図。
図16図12(D)に示したアンテナ素子の電界をシミュレーションした結果を示す図。
図17図12(A)〜(D)に示したアンテナ素子を10個並べたレーダアンテナの電界のシミュレーション結果を示す図。
図18図12(A)〜(D)に示したアンテナ素子を10個並べたレーダアンテナの磁界のシミュレーション結果を示す図。
図19図12(D)に示したアンテナ素子を10個並べたレーダアンテナの交差偏波をシミュレーションした結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図1に本発明のレーダアンテナを含んだレーダ装置の構成図を示す。図2は本発明のレーダアンテナの構成例を示す図であり、図3はアンテナ素子の1つの例を示す図である。以下では、N,Mは2以上の整数、nは1以上N以下の整数、mは1以上M以下の整数とする。レーダ装置10はレーダアンテナ100と駆動手段210を備える。レーダアンテナ100は、アレイアンテナ部110、2枚の導波板141,142、導波器150,…,150を備え、自由空間での波長がλの電波を受信または送信の対象とする。図1の調整部140は、2枚の導波板141,142を有している。なお、導波板141,142は実際には不透明な金属板であるが、図2では、レーダアンテナ100の構造を示すために内部を見えるようにし、点線で示している。図4,10,12も同じである。
【0011】
アレイアンテナ部110は、直線状に配列された複数のアンテナ素子120,…,120と入出力部130を有する。入出力部130は、例えば導波管132とインターフェース部131で構成すればよい。この場合は、アンテナ素子120は、導波管132に設けられたスリットとすればよい。また、電波は、インターフェース部131を介して外部に出力または外部から入力される。また、自由空間では波長λの電波の導波管内での波長をλとすると、波長λ(または波長λの整数倍)が、スリット(アンテナ素子120)の間隔dに一致するように導波管132を設計すれば、同位相の電波を受信または送信するレーダアンテナにできる。また、後述するが、導波板に挟まれた空間では自由空間より波長が長くなる。間隔がhr1の平行な導波板に挟まれた空間での電波の波長をλとすると、アンテナ素子同士の間隔dを、0.8λ<d<0.8λとすればよい。従来であれば、グレーティングローブを抑圧するためにd<0.8λにしなければならなかったが、0.8λ<d<0.8λであれば、従来のアレイアンテナよりもアンテナ素子同士の間隔を広げながら、グレーティングローブを抑圧できる。
【0012】
船舶レーダの場合、アンテナ素子120,…,120の配列を水平方向とし、導波管132に設けられたスリット(アンテナ素子120)は垂直方向に長い形状とすることで、水平偏波の電波を受信または送信できる。そして、駆動手段210が、垂直方向の軸を中心としてレーダアンテナ100を回転させる(水平方向に回転させる)。なお、アンテナ素子120は1つのスリットで形成してもよいし、図3に示すように2つのスリット121,122で構成してもよい。2つのスリット121,122を用いれば、導波管132内での電波の反射を抑制するように設計しやすい。
【0013】
2枚の導波板141,142は、アンテナ素子120,…,120の配列を挟み、電波を導波する。導波板141,142のアンテナ素子120,…,120の配列部分での間隔hr1は、λ/2<hr1<λである。この範囲であれば、導波板に挟まれた空間での波長λを自由空間での波長λよりも長くできる。特に、hr1≦0.7λとすれば波長λを波長λよりも十分に長くできる。導波板141,142同士は平行にしてもよいし、導波板141,142のアンテナ素子120,…,120の配列から遠い部分での間隔hr2を間隔hr1よりも広くしてもよい。間隔hr2を間隔hr1よりも広くした方が、導波板141,142で挟まれた空間と自由空間との境界での変化を小さくできる。特に、導波板141,142のアンテナ素子120,…,120の配列から遠い部分での間隔hr2を波長がλ(自由空間での波長)とすれば、変化を滑らかにできる。また、導波板141,142の電波の進行方向の長さLは、0.75λより長くすればよい。さらに、導波板141,142の角度の調整によって垂直面のパターンのコントロールも可能になる。
【0014】
導波器150は、アンテナ素子120ごとに電波の進行方向に配列されたM個の無給電アンテナ151n−1,…,151n−Mで構成されている。そして、導波器150の配列の長さは、導波板141,142の電波の進行方向の長さLよりも長い。
【0015】
本発明のアレーアンテナによれば、自由空間での波長よりも狭い2枚の導波板に挟まれた空間では自由空間よりも波長が長くなるので、アンテナ素子同士の間隔を広くしてもグレーティングローブを抑圧できる。導波器の配列の長さが導波板よりも長いので、自由空間とアンテナ素子との間で電波を導くことができるので、開口面積に比べ利得を高くできる。また、アンテナ素子同士の間隔が広いので導波器同士を離すことができ、設計時に導波器同士の干渉を考慮する必要性が低い。したがって、高さが低く、設計が容易なレーダアンテナを提供できる。
【0016】
<シミュレーションによる検証>
図4に、1つのアンテナ素子と2枚の導波板を有するアンテナの構成を示す。図4のアンテナは、1つのアンテナ素子120と、アンテナ素子120を挟む平行な2枚の導波板141,142がある。図5に平行な導波板に挟まれたときの導波板の間隔と波長との関係を示す。横軸は、導波板141,142を平行にしたときの間隔hと自由空間での波長λとの比である。縦軸は、導波板141,142に挟まれた空間での波長λと自由空間での波長λとの比である。間隔hが狭くなるにしたがって波長λは長くなり、間隔h=λ/2のときにカットオフ(λが無限大)となる。間隔がλよりも狭くなると波長λが顕著に長くなることが分かる。したがって、導波板141,142のアンテナ素子120,…,120の配列部分での間隔hr1をλ/2<hr1<λにすれば、導波板に挟まれた空間での波長λを自由空間での波長λよりも長くできる。また、hr1=0.7λのときに、λ≒1.5λである。したがって、特にhr1≦0.7λとすれば、波長λを波長λよりも十分に長くできるので、アンテナ素子同士の間隔dを十分に離すことができる。
【0017】
図6は自由空間(図4の導波板が無い状態)の電界をシミュレーションした結果、図7〜9は平行な導波板に挟まれた空間(図4の状態)の電界をシミュレーションした結果を示す図である。図7は間隔hが自由空間の波長λの場合、図8は間隔hが0.9λの場合、図9は間隔hが0.6λの場合である。x、y、zの方向は、図4と同じである。つまり、図6〜9の(A)は図4のアンテナの下から上を見た図、(B)は右側の側面から見た図である。これらのシミュレーションでは、導波板141,142の電波の進行方向の長さは、図7〜9の(A)でLが示された長さである。図6の波長λと比較すると、図7の波長λは1.155λ図8の波長λは1.2λ図9の波長λは1.81λとなっている。
【0018】
図10は、導波管132に16個のアンテナ素子120,…,12016が間隔dで形成された様子を示す図であり、(A)は導波板が無い場合、(B)は導波板がある場合を示している。なお、導波板は平行であって、間隔hは0.65λ、導波板の電波の進行方向の長さLは1.5λ、間隔dは1.2λである。図11は、図10のアンテナ素子120,…,12016が同位相の場合の電界の分布を示しており、(A)は導波板が無い場合、(B)は導波板がある場合を示している。図11(A)では電界がアンテナ素子の配列に平行な分布にはなっていないこと、図11(B)では電界がアンテナ素子の配列に平行な分布になっていることが分かる。
【0019】
図12は、間隔dで配列されたアンテナ素子の1つを切り出した様子を示す図である。(A)はアンテナ素子のみの場合、(B)はアンテナ素子と2枚の導波板を有する場合、(C)はアンテナ素子と導波器を有する場合、(D)はアンテナ素子と2枚の導波板と導波器を有する場合である。導波板141,142のアンテナ素子120の部分での間隔hr1は0.7λ、導波板141,142のアンテナ素子120から遠い部分での間隔hr2はλである。導波板141,142の電波の進行方向の長さLは1.5λ、間隔dは1.2λである。導波器150は、電波の進行方向に間隔dが0.35λとなるように配列された無給電アンテナ151n−1,…,151n−Mで構成されている。ただし、アンテナ素子120と無給電アンテナ151n−1との間隔は0.25λである。
【0020】
図13〜16は、図12(A)〜(D)に示したアンテナ素子の電界をシミュレーションした結果を示す図である。図13図12(A)、図14図12(B)、図15図12(C)、図16図12(D)の結果をそれぞれ示している。図12(C),(D)のシミュレーションでは、無給電アンテナ151n−mは、電波の進行方向に垂直な面に間隔wが0.26λとなるように配置された2つのアンテナで構成されている。無給電アンテナ151n−mの長さLは0.39λ〜0.26λであり、アンテナ素子120に近いほど長くなるように配置している。また、シミュレーションではM=21である。x、y、zの方向は、図12と同じである。つまり、図13〜16の(A)は図12のアンテナの下から上を見た図、(B)は右側の側面から見た図である。図13,15と図14,16の違いから、導波板141,142を備えることでアンテナ素子120の配列に平行な分布の電界を作りやすいこととが分かる。また、図16より、導波器150によってアンテナ素子120の配列に平行な分布の電界を、よりアンテナ素子120から離れた自由空間の位置まで形成できることが分かる。つまり、電波を導くことができているので、利得を高くできる。
【0021】
図17,18は、図12(A)〜(D)に示したアンテナ素子を10個並べたレーダアンテナのシミュレーション結果を示す図である。図17はxy平面の電界(主偏波)を示す図、図18はxz平面の磁界を示す図である。図19は、図12(D)に示したアンテナ素子を10個並べたレーダアンテナの交差偏波をシミュレーションした結果を示す図である。図17,18では図12(A)の結果は一点鎖線、(B)の結果は間隔の長い点線、(C)の結果は間隔の狭い点線、(D)の結果は実線で示している。(B),(D)の結果では、角度(Angle)が60〜90度の部分に生じるグレーティングローブが抑圧されていることが分かる。また、(D)の結果では、他の結果に比べてサイドローブが低くなっていることも分かる。図19では、磁界を点線、電界を実線で示している。図19の結果から、交差偏波の電波はほとんど生じていないことが分かる。つまり、船舶レーダとして利用するためにアンテナ素子120,…,120の配列を水平方向にし、導波管132に設けられたスリット(アンテナ素子120)を垂直方向に長い形状とすることで、水平偏波の電波を受信または送信できる状態にしたときに、不要な垂直偏波が生じにくいことが分かる。
【0022】
これらのシミュレーション結果より、上述のとおり、「本発明のアレーアンテナによれば、自由空間での波長よりも狭い2枚の導波板に挟まれた空間では自由空間よりも波長が長くなるので、アンテナ素子同士の間隔を広くしてもグレーティングローブを抑圧できる。導波器の配列の長さが導波板よりも長いので、自由空間とアンテナ素子との間で電波を導くことができるので、開口面積に比べ利得を高くできる。また、アンテナ素子同士の間隔が広いので導波器同士を離すことができ、設計時に導波器同士の干渉を考慮する必要性が低い。」ことが分かる。
【符号の説明】
【0023】
10 レーダ装置 100 レーダアンテナ
110 アレイアンテナ部 120 アンテナ素子
121,122 スリット 130 入出力部
131 インターフェース部 132 導波管
140 調整部 141,142 導波板
150 導波器 151 無給電アンテナ
210 駆動手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
図19