【文献】
SEN, Mustafa et al.,Cell pairing using a dielectrophoresis-based device with interdigitated array electrodes,Lab on a Chip,2013年,Vol.13,P.3650-3652
【文献】
金秀煌 他,Electroactive double-Well Arrayを用いた希少細胞の1細胞解析,2015年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,pp.783-784
【文献】
WU, CH et al.,A planar dielectrophoresis-based chip for high-throughput cell pairing,Lab on a Chip,2017年12月 7日,Vol.17,P.4008-4014
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記複数組の電極対のいずれかである第1電極対の電極と、上記複数組の電極対のいずれかであり上記第1電極対と異なる第2電極対の電極とが共用されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の対象物捕捉装置。
【背景技術】
【0002】
分子または細胞の解析において、微小ウェルの中に、特定の組み合わせで、対象となる細胞、あるいは微小な生体または非生体試料物を取り込むことは、特定の細胞間の相互作用を評価する場合、および各種試薬と対象物との反応を評価する場合等に必要となる。
【0003】
例えば、非特許文献1に記載されているように、細胞の遺伝子発現パターンを解析するためには、個別細胞由来のmRNAに、個別細胞毎に異なるDNA配列によるバーコードを付与することが有効である。そして、それを実現する手段として、マイクロビーズ1個と細胞1個とを微小ウェルに取り込むことが必要となる。
【0004】
従来は、流体中に対象物を拡散させて、確率的に期待する組み合わせで対象物を捕捉した微小ウェルを利用する方法、または、細胞およびマイクロビーズを流体路に流し、オイル中に形成され確率的に期待する組み合わせで対象物を捕捉した液滴を利用する方法等が採用されてきた。前者は非特許文献2に、後者は特許文献1および非特許文献1に、それぞれ開示されている。
【0005】
具体的に、特定の細胞間の相互作用を評価する方法として、非特許文献2には、2種類の細胞を捕捉する方法が開示されている。
【0006】
非特許文献2に開示された流体路デバイスは、
図11の(a)に示す、PDMS(ポリジメチルシロキサン)に代表されるシリコーンゴムまたは樹脂等で作成したH型トラップ溝111を、
図11の(b)に示すように複数並べた流体路デバイス110である。H型トラップ溝111は、一方の側に第1の窪み112を有しており、他方の側に第2の窪み113を有している。第2の窪み113は、第1の窪み112に比べ、窪みが若干小さい構造となっている。流体路デバイス110は、細胞を含む液体培地、およびバッファ液等の液体を、Z方向からW方向、ならびにW方向からZ方向に流す仕組みを持つ構造である。
【0007】
図12の(a)〜
図12の(c)に、2つの細胞AおよびBをトラップし、細胞間相互作用を起こすまでの手順を簡潔に示す。
図12の(a)に示すように、1つ目の細胞Aを含む液体を、流体路デバイス110内に入れ、W方向からZ方向に流す。細胞Aは、H型トラップ溝111の第2の窪み113に順次挿入(トラップ)される。このとき、第2の窪み113は小さいので、複数の細胞Aが同じH型トラップ溝111にトラップされることはない。
【0008】
次に、
図12の(b)に示すように、細胞Aを含む液体を逆方向(Z方向からW方向)に流す。細胞Aは、第2の窪み113から下流にある第1の窪み112にトラップされる。H型トラップ溝111は、千鳥状に配置されており、第2の窪み113の下流に第1の窪み112が存在しているため、流量が適切に調整されていれば、一度に複数の細胞Aを第1の窪み112に移動させることができる。
【0009】
細胞Aが、それぞれ第1の窪み112に移動できたところで、
図12の(c)に示すように、2つ目の細胞Bを含む液体をZ方向からW方向に流す。第1の窪み112のサイズを適切に調整し、細胞Aおよび細胞Bがそれぞれ1つずつ入る程度の大きさとすることで、細胞Aがトラップされている第1の窪み112に、細胞Bが1つトラップされる。その後、細胞間の相互作用を行う場合には、隣り合う異なる細胞(ここでは、細胞Aおよび細胞B)に浸透圧ショック法等の処置を施す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、
図1〜
図10を参照して説明する。なお、説明を簡潔にするために、先に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0022】
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の実施の形態1に係る対象物捕捉装置1の構成を示す、平面図およびX−Y線断面図である。対象物捕捉装置1は、半導体基板2、電極対群3、ウェル形成層11、制御回路12、および保護膜17を備えている。電極対群3は、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15を有している。また、対象物捕捉装置1には、ウェル16が形成されている。
【0023】
半導体基板2は、半導体によって構成された基板である。保護膜17は、半導体基板2に対して積層されており、半導体基板2を保護する機能を有している絶縁性の膜である。ウェル形成層11は、保護膜17に対して積層されており、例えば樹脂によって構成されている。ウェル形成層11には、保護膜17を露出させるための開口が形成されており、この開口がウェル16に相当する。
【0024】
制御回路12は、半導体基板2内に形成されている。第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15は、半導体基板2内におけるウェル16の底部に配置されており、制御回路12と接続されている。第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15のそれぞれは、2個の電極が対になった構成である。第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15は、ウェル16の内壁と略同心円状に配置されているが、これは配置の一例に過ぎない。
【0025】
保護膜17を備えた対象物捕捉装置1においては、電極対群3とウェル16の底面とが導通しないため、ウェル16に対して液体を入れた場合に、電極対群3と当該液体とが導通することを防ぐことができる。電極対群3と当該液体とが導通することを防ぐ必要がない場合、保護膜17は省略されてもよい。
【0026】
図2は、電極対群3´によって対象物を捕捉するイメージを示す図である。電極対群3´は、誘電泳動の原理によって、対象物を捕捉する。電極対群3´は、第1電極対13´、第2電極対14´、および第3電極対15´を有している。第1電極対13´、第2電極対14´、および第3電極対15´は、制御回路12´と接続されている。電極対群3´、制御回路12´、第1電極対13´、第2電極対14´、および第3電極対15´は、それぞれ、
図1に示した、電極対群3、制御回路12、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15と対応している。また、
図2中、ウェル16´は、
図1に示したウェル16と対応している。
【0027】
制御回路12´は、スイッチ131、スイッチ設定部132、スイッチ141、スイッチ設定部142、スイッチ151、およびスイッチ設定部152を有している。第1電極対13´の一方の電極13´a、第2電極対14´の一方の電極14´a、および第3電極対15´の一方の電極15´aはいずれも、接地されている。第1電極対13´の他方の電極13´b、第2電極対14´の他方の電極14´b、および第3電極対15´の他方の電極15´bは、それぞれ、スイッチ131の一端、スイッチ141の一端、およびスイッチ151の一端と接続されている。
【0028】
スイッチ131の他端は、細胞(対象物)Cを引き付けるための交流電圧を発生する電圧源161と接続される状態と、細胞Cを遠ざけるための交流電圧を発生する電圧源162と接続される状態とが切り替えられる。スイッチ131の他端が、電圧源161および電圧源162のいずれに接続されるかは、スイッチ設定部132によって設定される。スイッチ設定部132は、スイッチ131の他端と電圧源161とを接続する条件、およびスイッチ131の他端と電圧源162とを接続する条件が記憶されたメモリ133と、メモリ133に記憶されたこれらの条件を読み出し、読み出したこれらの条件に応じてスイッチ131を制御する制御部134とによって構成されている。制御部134は例えば、CPU(central processing unit)または周知のスイッチ制御回路によって構成されている。
【0029】
スイッチ141の他端は、細胞(対象物)Dを引き付けるための交流電圧を発生する電圧源171と接続される状態と、細胞Dを遠ざけるための交流電圧を発生する電圧源172と接続される状態とが切り替えられる。スイッチ141の他端が、電圧源171および電圧源172のいずれに接続されるかは、スイッチ設定部142によって設定される。スイッチ設定部142は、スイッチ141の他端と電圧源171とを接続する条件、およびスイッチ141の他端と電圧源172とを接続する条件が記憶されたメモリ143と、メモリ143に記憶されたこれらの条件を読み出し、読み出したこれらの条件に応じてスイッチ141を制御する制御部144とによって構成されている。制御部144は例えば、CPUまたは周知のスイッチ制御回路によって構成されている。
【0030】
スイッチ151の他端は、細胞(対象物)Eを引き付けるための交流電圧を発生する電圧源181と接続される状態と、細胞Eを遠ざけるための交流電圧を発生する電圧源182と接続される状態とが切り替えられる。スイッチ151の他端が、電圧源181および電圧源182のいずれに接続されるかは、スイッチ設定部152によって設定される。スイッチ設定部152は、スイッチ151の他端と電圧源181とを接続する条件、およびスイッチ151の他端と電圧源182とを接続する条件が記憶されたメモリ153と、メモリ153に記憶されたこれらの条件を読み出し、読み出したこれらの条件に応じてスイッチ151を制御する制御部154とによって構成されている。制御部154は例えば、CPUまたは周知のスイッチ制御回路によって構成されている。
【0031】
第1電極対13´は、電圧源161および電圧源162のいずれか一方から電極13´bに対して印加される交流電圧に応じて、電場を発生する。当該交流電圧の角周波数をωとした場合、当該電場によって、第1電極対13´の近傍の液体に含まれる誘電体粒子に対して、誘電泳動力が及ぼされる。この誘電泳動力は、当該液体の複素誘電率ε
m*=ε
m−jσ
m/ω、当該誘電体粒子の複素誘電率ε
p*=ε
p−jσ
p/ω、当該誘電体粒子の半径r、および発生した当該電場の強度の実効値を用いて、下記の数式で表される。
【0033】
上記の数式中のRe[(ε
p*−ε
m*)/(ε
p*+2ε
m*)]が正の場合、上記誘電体粒子に対して、発生した電界強度の強い方向へ向かう力、すなわち、正の誘電泳動力が働く。一方、上記の数式中のRe[(ε
p*−ε
m*)/(ε
p*+2ε
m*)]が負の場合、上記誘電体粒子に対して、発生した電界強度の強い方向へ向かう力に対して反発する力、すなわち、負の誘電泳動力が働く。
【0034】
第1電極対13´の近傍に発生した電場の強度が最も強くなる位置は、互いに対となっている電極13´aと電極13´bとの中間である。このため、正の誘電泳動力が発生するような角周波数ω
pの交流電圧を電極13´bに対して印加することによって、上記液体中の誘電体粒子を、電極13´aと電極13´bとの中間に引き付け、これにより当該誘電体粒子を捕捉することが可能となる。換言すれば、電圧源161が出力する交流電圧の角周波数を角周波数ω
pとすることによって、電極13´bが電圧源161と接続されている状態において、当該誘電体粒子を捕捉することが可能となる。
【0035】
一方、負の誘電泳動力が発生するような角周波数ω
nの交流電圧を電極13´bに対して印加することによって、上記液体中の誘電体粒子を、電極13´aと電極13´bとの中間から遠ざけ、これにより当該誘電体粒子を解放することが可能となる。換言すれば、電圧源162が出力する交流電圧の角周波数を角周波数ω
nとすることによって、電極13´bが電圧源162と接続されている状態において、当該誘電体粒子を解放することが可能となる。
【0036】
なお、電圧源161が出力する交流電圧の一例として、振幅2V、周波数5MHzの電圧が挙げられる。但し、電圧源161が出力する交流電圧の最適な振幅および周波数については、上記液体の複素誘電率、上記誘電体粒子の複素誘電率、および上記誘電体粒子の半径に加え、上記誘電体粒子の大きさ等に依存して変動する。
【0037】
第1電極対13´が細胞Cを捕捉するように電圧源161が出力する交流電圧を設定し、第1電極対13´が細胞Cを解放するように電圧源162が出力する交流電圧を設定する。これにより、第1電極対13´は、上記誘電体粒子として細胞Cを捕捉および解放することが可能となる(以上、誘電泳動の原理)。
【0038】
第1電極対13´と同様の原理で、第2電極対14´および第3電極対15´についても、誘電体粒子を捕捉および解放することが可能である。すなわち、第2電極対14´が細胞Dを捕捉するように電圧源171が出力する交流電圧を設定し、第2電極対14´が細胞Dを解放するように電圧源172が出力する交流電圧を設定する。これにより、第2電極対14´は、上記誘電体粒子として細胞Dを捕捉および解放することが可能となる。また、第3電極対15´が細胞Eを捕捉するように電圧源181が出力する交流電圧を設定し、第3電極対15´が細胞Eを解放するように電圧源182が出力する交流電圧を設定する。これにより、第3電極対15´は、上記誘電体粒子として細胞Eを捕捉および解放することが可能となる。
【0039】
ところで、特定の細胞(対象物)間の相互作用、または各種試薬と対象物との反応を評価するために、1つのウェル16に複数個の対象物を捕捉することが重要となる。ここでは、対象物捕捉装置1によって、特定の組み合わせで、対象物を捕捉する手順について説明する。
【0040】
第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15が、それぞれ、対象物として、細胞F、細胞G、および細胞Hを捕捉し、対象物捕捉装置1が、細胞F、細胞G、および細胞Hを、この順に捕捉するものとする。
【0041】
まず、対象物捕捉装置1に対して、細胞Fのみを含む液体を流す。このとき、制御回路12は、第1電極対13のみに対して、上述した誘電泳動の原理によって細胞Fを捕捉する最適な条件の交流電圧を与える。一方このとき、制御回路12は、第2電極対14および第3電極対15に対して、当該交流電圧を与えないか、上述した誘電泳動の原理によって細胞Fを解放する最適な条件の交流電圧を与える。これにより、第1電極対13のみが、細胞Fを捕捉する。
【0042】
次に、対象物捕捉装置1に対して、細胞Gのみを含む液体を流す。このとき、制御回路12は、第1電極対13に対して引き続き、上述した誘電泳動の原理によって細胞Fを捕捉する最適な条件の交流電圧を与える。またこのとき、制御回路12は、第2電極対14のみに対して、上述した誘電泳動の原理によって細胞Gを捕捉する最適な条件の交流電圧を与える。一方このとき、制御回路12は、第3電極対15に対して、当該交流電圧のいずれもを与えないか、上述した誘電泳動の原理によって細胞Fおよび/または細胞Gを解放する最適な条件の交流電圧を与える。なおこのとき、第1電極対13においては、細胞Fが引き続き捕捉されているので、細胞Gが第1電極対13によって捕捉されることはない。またこのとき、第3電極対15においては、細胞Fおよび細胞Gのいずれも捕捉されない。
【0043】
次に、対象物捕捉装置1に対して、細胞Hのみを含む液体を流す。このとき、制御回路12は、第1電極対13に対して引き続き、上述した誘電泳動の原理によって細胞Fを捕捉する最適な条件の交流電圧を与え、第2電極対14に対して引き続き、上述した誘電泳動の原理によって細胞Gを捕捉する最適な条件の交流電圧を与える。またこのとき、制御回路12は、第3電極対15に対して、上述した誘電泳動の原理によって細胞Hを捕捉する最適な条件の交流電圧を与える。なおこのとき、第1電極対13および第2電極対14においては、それぞれ、細胞Fおよび細胞Gが引き続き捕捉されているので、細胞Hが第1電極対13または第2電極対14によって捕捉されることはない。
【0044】
図3の(a)は、本発明の実施の形態1に係る対象物捕捉装置ユニット1Uの構成を概略的に示す平面図である。
図3の(b)は、
図3の(a)に示した複数の対象物捕捉装置1のうち2つの拡大図である。
【0045】
対象物捕捉装置ユニット1Uは、複数の対象物捕捉装置1が千鳥状に配置されたものである。複数の対象物捕捉装置1は、個別に設けられた制御回路12(
図1参照)によって、互いに独立して制御されている。このため、複数の対象物捕捉装置1のうち2つである、第1対象物捕捉装置1_1および第2対象物捕捉装置1_2に着目すると、第2対象物捕捉装置1_2は、第1対象物捕捉装置1_1が捕捉しない物体を、対象物として捕捉する構成とすることも容易である。これにより、対象物捕捉装置1毎に異なる対象物の組み合わせを実現することができる。このような構成の一例を、
図3の(b)に示している。
【0046】
すなわち、
図3の(b)において、第1対象物捕捉装置1_1は、第1電極対13と対応する第1電極対13_1、第2電極対14と対応する第2電極対14_1、および第3電極対15と対応する第3電極対15_1が、それぞれ、細胞F_1、細胞G_1、および細胞H_1を捕捉している。一方、
図3の(b)において、第2対象物捕捉装置1_2は、第1電極対13と対応する第1電極対13_2、第2電極対14と対応する第2電極対14_2、および第3電極対15と対応する第3電極対15_2が、それぞれ、細胞F_2、細胞G_2、および細胞H_2を捕捉している。
【0047】
もちろん、必要に応じて、対象物捕捉装置ユニット1Uの複数の対象物捕捉装置1は、一括して制御されてもよい。
【0048】
また、対象物捕捉装置1は、ウェル16に蓋をすることによって、別の対象物捕捉装置1と隔離された微小反応容器とすることができる。対象物捕捉装置1が捕捉した対象物が細胞である場合、当該細胞の細胞膜を破壊して内部の遺伝子を解析するために、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15のうち少なくとも1組は、当該細胞の細胞膜を破壊するために十分な高電界を発生することが可能であってもよい。換言すれば、制御回路12は、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15のうち少なくとも1組に対して、当該細胞の細胞膜を破壊するために十分な高電界を発生させるための回路を有していてもよい。また、制御回路12が当該高電界に耐えられない場合、当該細胞の細胞膜を破壊するための電界を発生する細胞破壊用電極(必要に応じて、さらに当該細胞破壊用電極の制御回路)を別途設けてもよい。
【0049】
対象物捕捉装置1によれば、誘電泳動の原理によって、複数組の電極対がそれぞれ狙いの対象物を引き付けて捕捉する。このため、対象物捕捉装置1によれば、特定の組み合わせで、複数の対象物を捕捉することを、高確率で実現することが可能となる。
【0050】
また、対象物捕捉装置ユニット1Uにて示したように、対象物捕捉装置1によれば、対象物捕捉装置1毎に対象物の組み合わせを変えることができる。また、対象物捕捉装置1によれば、ウェル16に蓋をすることによって、ウェル16を容易に密閉することが可能である。また、対象物捕捉装置1によれば、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15を備えた電極対群3によって、3個以上の対象物の組み合わせを作ることが可能である。
【0051】
従って、対象物捕捉装置1によれば、特定の組み合わせで、複数の対象物を効率良く捕捉することが可能となる。
【0052】
また、対象物捕捉装置ユニット1Uによれば、対象物捕捉装置1毎に異なる対象物の組み合わせを実現することができる。なお、対象物捕捉装置ユニット1Uにおいて、対象物捕捉装置1の代わりに、後述する対象物捕捉装置1a〜1gのいずれかを用いてもよい。
【0053】
図4は、本発明の実施の形態1に係る対象物捕捉装置1の変形例である対象物捕捉装置1aの構成を示す、平面図およびX−Y線断面図である。対象物捕捉装置1aは、対象物捕捉装置1の構成に加え、フォトダイオード18を備えている。フォトダイオード18は、電極対群3の下方に配置されており、ここでは制御回路12内に設けられている。また、対象物捕捉装置1aの平面視において、フォトダイオード18は、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15によって囲まれた位置に配置されている。ここでは、制御回路12に対してフォトダイオード18が設けられたものを、制御回路12aとしている。
【0054】
対象物捕捉装置1aは、複数の細胞の相互作用を蛍光物質の生成によって評価する実験において好適である。すなわち、ウェル16の上方からウェル16に対して、レーザーダイオード(図示しない)等によって励起光を照射し、この励起光によって当該蛍光物質を励起し、この励起によって生じた光をフォトダイオード18によって受光する。そして、フォトダイオード18によって受光した光を、複数の細胞の相互作用の評価に用いることにより、蛍光顕微鏡を使用すること無く、当該評価が可能となる。
【0055】
〔実施の形態2〕
図5は、本発明の実施の形態2に係る対象物捕捉装置1bの構成を示す、平面図およびX−Y線断面図である。対象物捕捉装置1bは、対象物捕捉装置1の構成に加え、サブウェル形成層19を備えている。サブウェル形成層19は、ウェル16内において保護膜17に対して積層されており、換言すれば、ウェル16の底面に対して積層されており、例えば樹脂によって構成されている。サブウェル形成層19には、保護膜17を露出させるための3つの開口が形成されており、これらの3つの開口がそれぞれ第1サブウェル23、第2サブウェル24、および第3サブウェル25に相当する。第1サブウェル23、第2サブウェル24、および第3サブウェル25は、それぞれ、第1電極対13の直上、第2電極対14の直上、および第3電極対15の直上に形成されている。つまり、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15毎に、その上方にサブウェルが配置されている。
【0056】
第1サブウェル23の最大幅W23は、第1電極対13が捕捉しようとする対象物の最大幅より若干大きい。第2サブウェル24の最大幅W24は、第2電極対14が捕捉しようとする対象物の最大幅より若干大きい。第3サブウェル25の最大幅W25は、第3電極対15が捕捉しようとする対象物の最大幅より若干大きい。
【0057】
第1サブウェル23外は、第1サブウェル23内と比べて、第1電極対13からの離間距離が大きく、かつサブウェル形成層19が介在しているため、第1電極対13が対象物を捕捉する力が弱い。第2サブウェル24外は、第2サブウェル24内と比べて、第2電極対14からの離間距離が大きく、かつサブウェル形成層19が介在しているため、第2電極対14が対象物を捕捉する力が弱い。第3サブウェル25外は、第3サブウェル25内と比べて、第3電極対15からの離間距離が大きく、かつサブウェル形成層19が介在しているため、第3電極対15が対象物を捕捉する力が弱い。
【0058】
つまり、対象物捕捉装置1bによれば、第1電極対13が対象物を捕捉する力が強い領域を、第1サブウェル23内に制限することができる。また、対象物捕捉装置1bによれば、第2電極対14が対象物を捕捉する力が強い領域を、第2サブウェル24内に制限することができる。また、対象物捕捉装置1bによれば、第3電極対15が対象物を捕捉する力が強い領域を、第3サブウェル25内に制限することができる。この結果、対象物捕捉装置1bによれば、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15の各々が、意図せず多くの対象物を捕捉してしまう虞を小さくすることができる。
【0059】
図6は、本発明の実施の形態2に係る対象物捕捉装置1bの変形例である対象物捕捉装置1cの構成を示す、平面図およびX−Y線断面図である。対象物捕捉装置1cは、対象物捕捉装置1bと比べて、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15が互いに近接して配置されている。これに伴い、対象物捕捉装置1cにおいては、対象物捕捉装置1bにおける、第1サブウェル23、第2サブウェル24、および第3サブウェル25が互いに結合された構成となっている。
図6においては、対象物捕捉装置1bの構成に対して、第1サブウェル23、第2サブウェル24、および第3サブウェル25が互いに結合されて形成されたものを、サブウェル集合体26としている。
【0060】
サブウェル集合体26には、狭窄部27〜狭窄部29が形成されている。狭窄部27〜狭窄部29はそれぞれ、サブウェル集合体26の幅を狭めることを目的として形成されている。例えば、狭窄部27が形成されている場合におけるサブウェル集合体26の幅W27は、狭窄部27が形成されていない場合におけるサブウェル集合体26の幅W26と比べて狭くなっている。
【0061】
対象物捕捉装置1cによれば、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15のそれぞれが対象物を捕捉する力が強い領域がさらに制限される。この結果、対象物捕捉装置1cによれば、第1電極対13、第2電極対14、および第3電極対15の各々が、意図せず多くの対象物を捕捉してしまう虞をさらに小さくすることができる。
【0062】
〔実施の形態3〕
図7は、本発明の実施の形態3に係る対象物捕捉装置1dの構成を示す、平面図およびX−Y線断面図である。対象物捕捉装置1dは、電極対群3ではなく、電極対群3aを備えている点が、対象物捕捉装置1と異なっている。
【0063】
電極対群3aは、第1電極33、第2電極34、第3電極35、および共通電極36を有している。第1電極33、第2電極34、第3電極35、および共通電極36は、半導体基板2内におけるウェル16の底部に配置されており、制御回路12と接続されている。第1電極33と共通電極36とが対になって第1電極対37を構成しており、この第1電極対37が、対象物捕捉装置1の第1電極対13と同等の機能を有している。第2電極34と共通電極36とが対になって第2電極対38を構成しており、この第2電極対38が、対象物捕捉装置1の第2電極対14と同等の機能を有している。第3電極35と共通電極36とが対になって第3電極対39を構成しており、この第3電極対39が、対象物捕捉装置1の第3電極対15と同等の機能を有している。換言すれば、複数組の電極対のいずれかである第1電極対37の電極と、複数組の電極対のいずれかであり第1電極対37と異なる第2電極対38の電極とが、共通電極36の形態で共用されている。同様に、複数組の電極対のいずれかである第2電極対38の電極と、複数組の電極対のいずれかであり第2電極対38と異なる第3電極対39の電極とが、共通電極36の形態で共用されている。同様に、複数組の電極対のいずれかである第3電極対39の電極と、複数組の電極対のいずれかであり第3電極対39と異なる第1電極対37の電極とが、共通電極36の形態で共用されている。なお、対象物捕捉装置1dにおいては、共通電極36が、第1電極33の近傍、第2電極34の近傍、および第3電極35の近傍を除く、ウェル16の底部全体に配置されているが、ウェル16の底部における共通電極36の配置については特に限定されない。
【0064】
対象物捕捉装置1dによれば、対象物捕捉装置1の電極対群3と比較して、電極対群3aを構成する電極の方が総面積を小さくできるため、対象物からの蛍光を半導体基板2の中で検知する場合に、蛍光が電極により遮断されにくくなる、という効果を奏する。
【0065】
図8は、本発明の実施の形態3に係る対象物捕捉装置1dの第1変形例である対象物捕捉装置1eの構成を示す、平面図およびX−Y線断面図である。対象物捕捉装置1eは、電極対群3ではなく、電極対群3aを備えている点が、対象物捕捉装置1bと異なっている。なお、電極対群3ではなく電極対群3aを備えていることに伴い、対象物捕捉装置1eにおいて、第1サブウェル23、第2サブウェル24、および第3サブウェル25は、それぞれ、第1電極33の直上、第2電極34の直上、および第3電極35の直上に形成されている。これにより、対象物捕捉装置1eにおいては、対象物捕捉装置1bによる効果と、対象物捕捉装置1dによる効果との両方を得ることができる。
【0066】
図9は、本発明の実施の形態3に係る対象物捕捉装置1dの第2変形例である対象物捕捉装置1fの構成を示す、平面図およびX−Y線断面図である。対象物捕捉装置1fは、電極対群3ではなく、電極対群3aを備えている点が、対象物捕捉装置1cと異なっている。なお、電極対群3ではなく電極対群3aを備えていることに伴い、対象物捕捉装置1fにおいて、サブウェル集合体26は、第1電極33の直上、第2電極34の直上、および第3電極35の直上に亘って形成されている。これにより、対象物捕捉装置1fにおいては、対象物捕捉装置1cによる効果と、対象物捕捉装置1dによる効果との両方を得ることができる。
【0067】
図10は、本発明の実施の形態3に係る対象物捕捉装置1dの第3変形例である対象物捕捉装置1gの構成を示す、平面図およびX−Y線断面図である。対象物捕捉装置1gは、対象物捕捉装置1fの構成に加え、フォトダイオード18を備えている。これにより、対象物捕捉装置1gにおいては、対象物捕捉装置1aによる効果と、対象物捕捉装置1fによる効果との両方を得ることができる。
【0068】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る対象物捕捉装置は、ウェルと、上記ウェルの底部に配置された、複数組の電極対(第1電極対13〜第3電極対15)である電極対群とを備えており、上記電極対群は、上記複数組の電極対毎に個別の交流電圧が印加され、印加された交流電圧に応じて発生した誘電泳動により対象物を捕捉する。
【0069】
上記の構成によれば、誘電泳動の原理によって、複数組の電極対がそれぞれ狙いの対象物を引き付けて捕捉する。このため、上記の構成によれば、特定の組み合わせで、複数の対象物を捕捉することを、高確率で実現することが可能となる。
【0070】
また、上記の構成によれば、複数の対象物捕捉装置を備えた対象物捕捉装置ユニットを構成することによって、対象物捕捉装置毎に対象物の組み合わせを変えることができる。また、上記の構成によれば、ウェルに蓋をすることによって、ウェルを容易に密閉することが可能である。また、上記の構成によれば、電極対が3組以上であれば、それらのそれぞれによって、3個以上の対象物の組み合わせを作ることが可能である。
【0071】
従って、上記の構成によれば、特定の組み合わせで、複数の対象物を効率良く捕捉することが可能となる。
【0072】
本発明の態様2に係る対象物捕捉装置は、上記態様1において、上記複数組の電極対毎に、その上方にサブウェル(第1サブウェル23〜第3サブウェル25)が配置されている。
【0073】
上記の構成によれば、複数組の電極対が対象物を捕捉する力が強い領域を、それぞれ、それらの上方に配置されたサブウェル内に制限することができる。この結果、上記の構成によれば、複数組の電極対の各々が、意図せず多くの対象物を捕捉してしまう虞を小さくすることができる。
【0074】
本発明の態様3に係る対象物捕捉装置は、上記態様2において、上記サブウェルのうち少なくとも2つが互いに結合されて、サブウェル集合体が形成されている。
【0075】
そして、本発明の態様4に係る対象物捕捉装置は、上記態様3において、上記サブウェル集合体に、上記サブウェル集合体の幅を狭める狭窄部が形成されている。
【0076】
上記の構成によれば、複数組の電極対のそれぞれが対象物を捕捉する力が強い領域がさらに制限される。この結果、上記の構成によれば、複数組の電極対の各々が、意図せず多くの対象物を捕捉してしまう虞をさらに小さくすることができる。
【0077】
本発明の態様5に係る対象物捕捉装置は、上記態様1から4のいずれかにおいて、上記複数組の電極対のいずれかである第1電極対の電極と、上記複数組の電極対のいずれかであり上記第1電極対と異なる第2電極対の電極とが共用されている。
【0078】
上記の構成によれば、電極対群を構成する電極の総面積を小さくできるため、対象物からの蛍光を半導体基板の中で検知する場合に、蛍光が電極により遮断されにくくなる、という効果を奏する。
【0079】
本発明の態様6に係る対象物捕捉装置は、上記態様1から5のいずれかにおいて、上記電極対群の下方に配置されたフォトダイオードを備えている。
【0080】
上記の構成によれば、複数の細胞の相互作用を蛍光物質の生成によって評価する実験において好適である。すなわち、ウェルの上方からウェルに対して、レーザーダイオード等によって励起光を照射し、この励起光によって当該蛍光物質を励起し、この励起によって生じた光をフォトダイオードによって受光する。そして、フォトダイオードによって受光した光を、複数の細胞の相互作用の評価に用いることにより、蛍光顕微鏡を使用すること無く、当該評価が可能となる。
【0081】
本発明の態様7に係る対象物捕捉装置は、上記態様1から6のいずれかにおいて、上記複数組の電極対のうち少なくとも1組は、細胞膜を破壊するための電界を発生することが可能である。
【0082】
本発明の態様8に係る対象物捕捉装置は、上記態様1から6のいずれかにおいて、細胞膜を破壊するための電界を発生する細胞破壊用電極を備えている。
【0083】
上記の両構成によれば、対象物捕捉装置が捕捉した対象物が細胞である場合、当該細胞の細胞膜を破壊して内部の遺伝子を解析することができる。
【0084】
本発明の態様9に係る対象物捕捉装置ユニットは、上記対象物捕捉装置である第1対象物捕捉装置と、上記対象物捕捉装置であり、上記第1対象物捕捉装置と異なる第2対象物捕捉装置とを備えており、上記第2対象物捕捉装置は、上記第1対象物捕捉装置が捕捉しない物体を、上記対象物として捕捉する。
【0085】
上記の構成によれば、対象物捕捉装置毎に異なる対象物の組み合わせを実現することができる。
【0086】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。