(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「FM帯」とは、FMラジオの周波数帯のことを意味する。「FM帯」は、たとえば、76MHz(メガヘルツ)〜108MHzの範囲の周波数帯である。
「DAB帯」とは、DABの周波数帯を意味する。「DAB帯」は、たとえば、170MHz〜240MHzのband IIIの周波数帯である。
【0019】
以下、本発明の実施形態のアンテナについて図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態のスポイラアンテナ1を車両に搭載した一例を示す外観図である。また、
図2は、本実施形態のスポイラアンテナ1の内部構成例を示す図である。
図1に示すリアスポイラ100(樹脂製部材の一例)は、自動車の車体2後部に取り付けられている。本実施形態において、リアスポイラ100は、内部にFM/DAB共用アンテナ10及びAM用アンテナ20を搭載したスポイラアンテナ1(アンテナの一例)に相当する。また、リアスポイラ100は、FM/DAB共用アンテナ10の上方又は下方に、ハイマウントストップランプ(HMSL:High Mount Stop Lamp)40を備えている。
【0020】
図2に示すスポイラアンテナ1は、リアスポイラ100と、一方の破線で囲まれた領域内に設けられたFM/DAB共用アンテナ10と、他方の破線で囲まれた領域内に設けられたAM用アンテナ20とを備えている。
図2の上側は、車体2側である。
FM/DAB共用アンテナ10は、1つのアンテナでFM帯とDAB帯との両方の電波を受信可能なアンテナである。FM/DAB共用アンテナ10は、アンテナ素子11と、無給電素子12と、一点鎖線で囲まれた領域内の容量結合部13と、給電点14とを備えている。
【0021】
アンテナ素子11は、たとえば、絶縁体(誘電体)の被膜で覆われた金属線である導線により構成される。アンテナ素子11は、リアスポイラ100内に備えられ、たとえば、FM帯(第1の周波数帯の一例)に共振可能な長さL1(第1の長さ)を有する。また、長さL1は、たとえば、FM帯の中心周波数における波長(λ)の1/4、すなわち(1/4)波長(λ)の長さである。アンテナ素子11は、給電点14を介して給電される。
なお、以下の説明において、「(1/4)波長(λ)の長さ」のことを、「(1/4)λ共振長」ということがある。また、「FM帯の中心周波数における波長」を「λ
FM」と表記することがある。
【0022】
また、長さL1は、FM帯に応じた所定の波長範囲(第1範囲)内の波長(第1波長)の1/4の長さであってもよい。ここで、所定の波長範囲は、FM帯の最大周波数に対応する波長λ
FMminに所定の係数を積算した波長からFM帯の最小周波数に対応する波長λ
FMmaxに所定の係数を積算した波長までの範囲である。たとえば、所定の波長範囲は、(1−k)×λ
FMmin≦λ
FM≦(1+k)×λ
FMmaxであり、k=0.21である場合には、0.79×λ
FMmin≦λ
FM≦1.21×λ
FMmaxである。すなわち、長さL1は、(0.79×λ
FMmin/4)以上、(1.21×λ
FMmax/4)以下の長さであってもよい。
【0023】
無給電素子12は、アンテナ素子11と同様に、絶縁体の被膜で覆われた金属線である導線により構成される。無給電素子12は、リアスポイラ100内に備えられ、たとえば、容量結合部13において、アンテナ素子11と所定の容量値により容量結合されている。また、容量結合部13は、たとえば、アンテナ素子11から無給電素子12にFM帯の信号を通過させない容量値を有している。すなわち、容量結合部13は、FM帯の信号を通過させないハイパスフィルタの機能を有する。また、無給電素子12は、アンテナ素子11が有する長さL1と合算することで、FM帯とは異なるDAB帯(第2の周波数帯の一例)に共振可能な長さL2(第2の長さ)の領域を少なくとも有する。また、DAB帯は、FM帯よりも周波数帯が高い。また、長さL1と長さL2とを合算した長さは、たとえば、DAB帯の中心周波数における波長(λ)の3/4、すなわち(3/4)波長(λ)の長さである。
なお、以下の説明において、「(3/4)波長(λ)の長さ」のことを、「(3/4)λ共振長」ということがある。また、「DAB帯の中心周波数における波長」を「λ
DAB」と表記することがある。
【0024】
また、長さL1と長さL2とを合算した長さは、DAB帯に応じた所定の波長範囲(第2範囲)内の波長(第2波長)の3/4の長さであってもよい。ここで、所定の波長範囲は、DAB帯の最大周波数に対応する波長λ
DABminに所定の係数を積算した波長からDAB帯の最小周波数に対応する波長λ
DABmaxに所定の係数を積算した波長までの範囲である。たとえば、所定の波長範囲は、(1−k)×λ
DABmin≦λ
DAB≦(1+k)×λ
DABmaxであり、k=0.21である場合には、0.79×λ
DABmin≦λ
DAB≦1.21×λ
DABmaxである。すなわち、長さL1と長さL2とを合算した長さは、(0.79×λ
DABmin×3/4)以上、(1.21×λ
DABmax×3/4)以下の長さであってもよい。
【0025】
また、アンテナ素子11と、無給電素子12とは、所定の容量値になるように、間隔d1(所定の間隔)、及び長さL3(所定の長さ)で重複して配置されることで容量結合される。すなわち、アンテナ素子11と、無給電素子12とは、長さL3及び間隔d1でそれぞれの導線(配線)を重ね合わせて配置されている。長さL3及び間隔d1は、アンテナ素子11から無給電素子12にFM帯の信号を通過させない容量値になるように、設定されている。間隔d1は、たとえば、30mm(ミリメートル)以下の値である。
【0026】
また、アンテナ素子11及び無給電素子12は、リアスポイラ100内に配置されている配線(たとえば、ストップランプ用配線41)と交差しないように配置される。アンテナ素子11及び無給電素子12は、たとえば、車体2等の金属部分から可能な限り離して配置されることが好ましい。すなわち、アンテナ素子11及び無給電素子12のうち、容量結合部13を含む素子の一部は、リアスポイラ100の車体2側の対向側に配置されることが好ましい。
【0027】
容量結合部13は、アンテナ素子11と無給電素子12が重複して配置されている長さL3及び間隔d1の部分である。また、無給電素子12の長さは、
図2に示す長さL2と長さL3とを合算した長さである。
給電点14は、アンテナ素子11の一端に接続される。アンテナ素子11には、給電点14から給電される。そして、FM/DAB共用アンテナ10が受信した電波に対応する信号が、給電点14から車体2内に備えられたアンプ30に出力される。
【0028】
AM用アンテナ20は、AMラジオ用の電波を受信可能なアンテナである。AM用アンテナ20は、アンテナ素子21と、給電点22とを備えている。
アンテナ素子21は、絶縁体の被膜で覆われた金属線である導線により構成される。
給電点22は、アンテナ素子21の一端に接続される。アンテナ素子21には、給電点22から給電される。そして、AM用アンテナ20が受信した電波に対応する信号が、給電点22からアンプ30に出力される。
【0029】
アンプ30は、FM/DAB共用アンテナ10が受信した信号、及びAM用アンテナ20が受信した信号を増幅して、たとえば、自動車が搭載しているカーラジオ、カーオーディオ等の機器に出力する。
【0030】
ハイマウントストップランプ(HMSL)40は、リアスポイラ100に取り付けられているストップランプである。また、ストップランプ用配線41は、HMSL40に電力を供給する配線であり、リアスポイラ100の内部に配置されている。また、
図2において、HMSL40は、二点鎖線に囲まれた位置に配置されているものとする。
【0031】
次に、
図3を参照して、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10の等価回路について説明する。
図3は、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10の等価回路を示す図である。
図3に示すように、FM/DAB共用アンテナ10は、容量結合部13をコンデンサに置き換えた等価回路として表すことができる。
【0032】
アンテナ素子11は、ほぼ(1/4)λ
FM共振長の長さL1(≒(1/4)λ
FM共振長)のアンテナであり、FM帯の電波を効率良く受信可能である。すなわち、FM/DAB共用アンテナ10は、FM帯の電波を受信する場合に、アンテナ素子11が、FM帯の(1/4)波長のアンテナとして機能する。
また、無給電素子12は、コンデンサを介してアンテナ素子11と接続されている。無給電素子12の長さL2と、アンテナ素子11の長さL1とを合算した長さL4(=L1+L2≒(3/4)λ
DAB共振長)は、ほぼ(3/4)λ
DAB共振長の長さになり、DAB帯の電波を効率良く受信可能である。すなわち、FM/DAB共用アンテナ10は、DAB帯の電波を受信する場合に、アンテナ素子11及び無給電素子12が、DAB帯の(3/4)波長のアンテナとして機能する。FM/DAB共用アンテナ10の長さL4は、たとえば、1m程度の長さとなる。
【0033】
以上のように、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10は、ほぼ(1/4)λ
FM共振長のアンテナ素子11によりFM帯の電波を効率良く受信し、ほぼ(3/4)λ
DAB共振長のアンテナ素子11及び無給電素子12によりDAB帯の電波を効率良く受信できる。すなわち、FM/DAB共用アンテナ10は、アンテナ素子11の先端に無給電素子12を付加することにより、FM帯の電波と、DAB帯の電波との両方を効率良く受信できる。
【0034】
次に、
図4を参照して、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10のアンテナ特性について説明する。
図4は、本実施形態のスポイラアンテナ1のアンテナ特性を示す図である。
図4は、従来のFM帯用のアンテナと、従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナと、本実施形態のスポイラアンテナ1とのアンテナ特性の測定結果を示している。
【0035】
図4に示す測定に用いた従来のFM帯用のアンテナは、無給電素子を有さずに、絶縁体の被膜で覆われた金属線である1本の導線により構成されている。また、従来のFM帯用のアンテナは、FM帯の周波数における波長の1/4の長さ(0.6m)を有する。
図4の説明において、従来のFM帯用のアンテナを「(1/4)λ
FMアンテナ」と表記する。
また、
図4に示す測定に用いた従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナは、無給電素子を有さずに、絶縁体の被膜で覆われた金属線である1本の導線により構成されている。また、従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナは、FM帯の周波数における波長の3/4の長さ(2.2m)を有する。
図4の説明において、従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナを「(3/4)λ
FMアンテナ」と表記する。
【0036】
図4において、縦軸の項目は、上から順に、「(1/4)λ
FMアンテナの平均利得[dB(デシベル)]」、「(3/4)λ
FMアンテナの平均利得[dB]」、及び「第1の実施形態のスポイラアンテナの平均利得[dB]」を示している。
【0037】
「(1/4)λ
FMアンテナの平均利得[dB(デシベル)]」は、従来のFM帯用のアンテナの特性を示す。また、「(3/4)λ
FMアンテナの平均利得[dB]」は、従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナの特性を示す。従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナは、2.2m程度の長さが必要となる。また、「第1の実施形態のスポイラアンテナの平均利得[dB]」は、FM/DAB共用アンテナ10の特性を示す。
また、横軸の項目は、「FM帯」の「水平偏波」及び「垂直偏波」と、「DAB帯」の「水平偏波」及び「垂直偏波」とを示している。
【0038】
図4に示すように、「(1/4)λ
FMアンテナの平均利得[dB]」は、「DAB帯」の「水平偏波」が“−12.44”であり、「垂直偏波」が“−15.08”である。これに対して、「第1の実施形態のスポイラアンテナの平均利得[dB]」は、「DAB帯」の「水平偏波」が“−10.40”であり、「垂直偏波」が“−10.80”である。結果として、
図4の示す測定結果は、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10が、従来のFM帯用のアンテナに比べて、「DAB帯」の受信特性が2dB〜4dB向上していることを示している。
【0039】
また、
図4に示すように、「(3/4)λ
FMアンテナの平均利得[dB]」は、「FM帯」の「水平偏波」が“−11.37”であり、「垂直偏波」が“−9.09”である。また、「DAB帯」の「水平偏波」が“−10.12”であり、「垂直偏波」が“−11.80”である。
これに対して、「第1の実施形態のスポイラアンテナの平均利得[dB]」は、「FM帯」の「水平偏波」が“−11.57”であり、「垂直偏波」が“−8.16”である。また、「DAB帯」の「水平偏波」が“−10.40”であり、「垂直偏波」が“−10.80”である。
結果として、
図4の示す測定結果は、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10が、「FM帯」と「DAB帯」との両方の周波数帯に対して、従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナと同等の受信特性を有していることを示している。また、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10は、従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナが2.2m程度の長さが必要であることに対して、1m程度と小型化を実現している。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のスポイラアンテナ1は、車体2に取り付けられるリアスポイラ100(樹脂製部材)と、アンテナ素子11と、無給電素子12とを備える。アンテナ素子11は、リアスポイラ100内に備えられ、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)に共振可能な長さL1(第1の長さ)を有する。無給電素子12は、リアスポイラ100内に備えられ、アンテナ素子11と所定の容量値により容量結合される。すなわち、無給電素子12は、容量結合部13を介してアンテナ素子11と容量結合される。そして、無給電素子12は、アンテナ素子11が有する長さL1と合算することで、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)とは異なる第2の周波数帯(たとえば、DAB帯)に共振可能な長さL2(第2の長さ)の領域を少なくとも有する。
【0041】
このことにより、本実施形態のスポイラアンテナ1は、アンテナ素子11が、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)を受信するアンテナとして機能し、アンテナ素子11と無給電素子12とが連係して第2の周波数帯(たとえば、DAB帯)を受信するアンテナとして機能する。その結果、
図4に示すように、本実施形態のスポイラアンテナ1は、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)と、第2の周波数帯(たとえば、DAB帯)との両方を受信可能にしつつ、アンテナ(FM/DAB共用アンテナ10)を小型化できる。よって、本実施形態のスポイラアンテナ1は、複数の周波数帯を受信可能なアンテナを小型化でき、当該アンテナをリアスポイラ100(樹脂製部材)内の限られた空間に搭載できる。
【0042】
また、本実施形態では、アンテナ素子11と、無給電素子12とは、所定の容量値になるように、所定の間隔(たとえば、間隔d1)、及び所定の長さ(たとえば、長さL3)で重ねて配置される、すなわち並走させることで容量結合される。すなわち、アンテナ素子11と、無給電素子12とは、所定の容量値になるように、所定の間隔(たとえば、間隔d1)を空けて、たとえば、長さL3(第3の長さ)を重ねて配置されることで容量結合される。無給電素子12は、長さL2に所定の長さ(たとえば、長さL3(第3の長さ))を付加した長さを有する。
これにより、本実施形態のスポイラアンテナ1は、アンテナ素子11と、無給電素子12とを重ねて配置するという簡易な手段により、複数の周波数帯(たとえば、FM帯とDAB帯との両方の周波数帯)の受信を実現できる。
【0043】
また、本実施形態では、第2の周波数帯(たとえば、DAB帯)が、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)よりも高い。そして、長さL1が、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)に含まれる周波数における(1/4)波長の長さであり、長さL1と長さL2とを合算した長さが、第2の周波数帯(たとえば、DAB帯)に含まれる周波数における(3/4)波長の長さである。たとえば、長さL1が、第1の周波数帯に応じた第1範囲内における第1波長の1/4の長さであり、長さL1と長さL2とを合算した長さが、第2の周波数帯に応じた第2範囲内における第2波長の3/4の長さである。具体的に、長さL1が、たとえば、(0.79×λ
FMmin/4)以上、(1.21×λ
FMmax/4)以下の長さであり、長さL1と長さL2とを合算した長さが、たとえば、(0.79×λ
DABmin×3/4)以上、(1.21×λ
DABmax×3/4)以下の長さである。
これにより、本実施形態のスポイラアンテナ1は、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)と、第2の周波数帯(たとえば、DAB帯)との両方の受信を実現しつつ、アンテナ(FM/DAB共用アンテナ10)を、第2の周波数帯(たとえば、DAB帯)の(3/4)波長の長さ程度に小型化できる。
【0044】
また、本実施形態では、所定の容量値は、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)の信号を通過させないように定められている。
これにより、本実施形態のスポイラアンテナ1は、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)を受信する際に、無給電素子12の影響を低減して、第1の周波数帯(たとえば、FM帯)を効率良く受信できる。また、本実施形態のスポイラアンテナ1は、第2の周波数帯(たとえば、DAB帯)を受信する際に、無給電素子12が機能して、第2の周波数帯(たとえば、DAB帯)を効率良く受信できる。
【0045】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態のスポイラアンテナ1aについて説明する。
図5は、第2の実施形態のスポイラアンテナ1aの内部構成例を示す図である。なお、スポイラアンテナ1aの外観は、
図1に示す第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
本実施形態のスポイラアンテナ1aは、第1の実施形態の容量結合部13の代わりに、コンデンサ13aを備えた場合の一例である。
【0046】
図5に示すスポイラアンテナ1aは、リアスポイラ100と、FM/DAB共用アンテナ10aと、AM用アンテナ20とを備えている。なお、
図5において、
図1に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0047】
FM/DAB共用アンテナ10aは、1つのアンテナでFM帯とDAB帯との両方の電波を受信可能なアンテナである。FM/DAB共用アンテナ10aは、アンテナ素子11と、無給電素子12aと、コンデンサ13aと、給電点14とを備えている。
【0048】
無給電素子12aは、アンテナ素子11と同様に、絶縁体の被膜で覆われた金属線である導線により構成される。無給電素子12aは、リアスポイラ100内に備えられ、たとえば、アンテナ素子11とコンデンサ13aを介して所定の容量値により容量結合されている。また、無給電素子12aは、アンテナ素子11が有する長さL1と合算することで、FM帯とは異なるDAB帯(第2の周波数帯の一例)に共振可能な長さL2(第2の長さ)の領域を有する。本実施形態による無給電素子12aは、第1の実施形態の無給電素子12とは異なり、容量結合部13に相当する長さL3の導線部分を備えない。
【0049】
コンデンサ13aは、アンテナ素子11の給電点14に接続されていない側の一端と、無給電素子12aとの間に接続され、アンテナ素子11と無給電素子12aとを所定の容量値により容量結合させる。また、所定の容量値は、第1の実施形態と同様に、たとえば、アンテナ素子11から無給電素子12aにFM帯の信号を通過させないように定められている。本実施形態では、コンデンサ13aが容量結合部13として機能する。
【0050】
また、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10aの等価回路は、
図3に示す第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10aの動作は、容量結合部13の代わりにコンデンサ13aによって、アンテナ素子11と無給電素子12aとを容量結合させる点を除いて、基本的に第1の実施形態のFM/DAB共用アンテナ10と同様である。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のスポイラアンテナ1aによれば、アンテナ素子11と、無給電素子12aとは、所定の容量値を有するコンデンサ13aを介して、容量結合される。
これにより、本実施形態のスポイラアンテナ1aは、第1の実施形態と同様に、複数の周波数帯を受信可能なアンテナを小型化でき、当該アンテナをリアスポイラ100内の限られた空間に搭載できる。
また、本実施形態のスポイラアンテナ1aは、コンデンサ13aを介して、アンテナ素子11と無給電素子12aとを容量結合させるため、安定した容量結合を実現できる。
【0052】
[第3の実施形態]
次に、図面を参照して、第3の実施形態のスポイラアンテナ1bについて説明する。
図6は、第3の実施形態のスポイラアンテナ1bの内部構成例を示す図である。なお、スポイラアンテナ1bの外観は、
図1に示す第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
本実施形態のスポイラアンテナ1bは、第1の実施形態の2本の導線を重ねて配置した容量結合部13の代わりに、2枚の導電板を、所定の隙間を設けて重ねて配置した容量結合部13bを備えた場合の一例である。
【0053】
図6に示すスポイラアンテナ1bは、リアスポイラ100と、FM/DAB共用アンテナ10bと、AM用アンテナ20とを備えている。なお、
図6において、
図1及び
図5に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0054】
FM/DAB共用アンテナ10bは、1つのアンテナでFM帯とDAB帯との両方の電波を受信可能なアンテナである。FM/DAB共用アンテナ10bは、アンテナ素子11と、無給電素子12aと、容量結合部13bと、給電点14とを備えている。
【0055】
本実施形態のアンテナ素子11は、給電点14に接続されていない側の一端に導電板PL1が接続されている。
また、本実施形態の無給電素子12aは、一端に導電板PL2が接続されている。無給電素子12aは、アンテナ素子11と容量結合部13bを介して所定の容量値により容量結合されている。
【0056】
容量結合部13bは、対向する2つの導電板(PL1、PL2)が所定の間隔で配置されており、アンテナ素子11と無給電素子12aとを所定の容量値により容量結合させる。すなわち、導電板PL1と、導電板PL2とは、
図7に示すように、所定の容量値になるように、所定の間隔で互いに対向して、好ましくは対面して配置される。また、所定の容量値は、第1の実施形態と同様に、たとえば、アンテナ素子11から無給電素子12aにFM帯の信号を通過させないように定められている。
【0057】
図7は、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10bの構成の一例を示す断面図である。
図7に示すFM/DAB共用アンテナ10bにおいて、容量結合部13bは、導電板PL1と、導電板PL2との間に、スペーサSP1が配置されている。
導電板(PL1、PL2)は、たとえば、金属等の導電体の平板である。また、スペーサSP1は、厚さd2の絶縁体(誘電体)の平板である。
導電板PL1と、導電板PL2とは、所定の容量値になるように、間隔d2で互いに対向して、好ましくは対面して配置されている。
【0058】
また、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10bの等価回路は、
図3に示す第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10bの動作は、容量結合部13の代わりに容量結合部13bによって、アンテナ素子11と無給電素子12aとを容量結合させる点を除いて、基本的に第1の実施形態のFM/DAB共用アンテナ10と同様である。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のスポイラアンテナ1bによれば、アンテナ素子11は、一端に給電点14が接続され、他端に導電体である導電板PL1(第1導電板)が接続される。また、無給電素子12aは、一端に導電体である導電板PL2(第2導電板)が接続される。そして、導電板PL1と、導電板PL2とは、所定の容量値になるように、所定の間隔(間隔d2)で互いに対向して配置される。
これにより、本実施形態のスポイラアンテナ1bは、第1及び第2の実施形態と同様に、複数の周波数帯を受信可能なアンテナを小型化でき、当該アンテナをリアスポイラ100内の限られた空間に搭載できる。
【0060】
[第4の実施形態]
次に、図面を参照して、第4の実施形態のスポイラアンテナ1cについて説明する。
第4の実施形態では、第1の実施形態のアンテナ素子11及び無給電素子12の長さを変更した変形例について説明する。すなわち、第4の実施形態では、アンテナ素子11を単独で(1/4)λ
DAB共振長のアンテナとして機能させるとともに、アンテナ素子11及び無給電素子12を(1/4)λ
FM共振長のアンテナとして機能させる変形例について説明する。
【0061】
本実施形態のスポイラアンテナ1cの構成は、基本的に、
図1及び
図2に示す第1の実施形態と同様である。本実施形態のスポイラアンテナ1cは、アンテナ素子11及び無給電素子12の長さが第1の実施形態と異なり、
図8に示す等価回路を参照して、該異なる点について説明する。本実施形態において、DAB帯が第1の周波数帯に対応し、FM帯が第2の周波数帯に対応する。また、本実施形態は、第1の周波数帯(たとえば、DAB帯)が、第2の周波数帯(たとえば、FM帯)よりも高い場合の一例である。
【0062】
図8は、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10の等価回路を示す図である。
図8に示すFM/DAB共用アンテナ10において、アンテナ素子11は、たとえば、DAB帯(第1の周波数帯の一例)に共振可能な長さL11(第1の長さ)を有する。また、長さL11は、たとえば、DAB帯の中心周波数における波長(λ)の1/4、すなわち(1/4)波長(λ)の長さ((1/4)λ
DAB共振長)になるように設定されている。すなわち、アンテナ素子11は、ほぼ(1/4)λ
DAB共振長の長さL11(≒(1/4)λ
DAB共振長)のアンテナであり、DAB帯の電波を効率良く受信可能である。つまり、FM/DAB共用アンテナ10は、DAB帯の電波を受信する場合に、アンテナ素子11が、DAB帯の(1/4)波長のアンテナとして機能する。
【0063】
また、長さL11は、DAB帯に応じた所定の波長範囲(第1範囲)内の波長(第1波長)の1/4の長さであってもよい。ここで、所定の波長範囲は、DAB帯の最大周波数に対応する波長λ
DABminに所定の係数を積算した波長からDAB帯の最小周波数に対応する波長λ
DABmaxに所定の係数を積算した波長までの範囲である。たとえば、所定の波長範囲は、(1−k)×λ
DABmin≦λ
DAB≦(1+k)×λ
DABmaxであり、k=0.21である場合には、0.79×λ
DABmin≦λ
DAB≦1.21×λ
DABmaxである。すなわち、長さL11は、(0.79×λ
DABmin/4)以上、(1.21×λ
DABmax/4)以下の長さであってもよい。
【0064】
また、無給電素子12は、アンテナ素子11が有する長さL11と合算することで、FM帯(第2の周波数帯の一例)に共振可能な長さL21(第2の長さ)を有する。また、長さL21は、たとえば、アンテナ素子11のDAB帯による共振に影響を与えないように、L11(第1の長さ)よりも長い(1/2)λ
DAB共振長の長さである。これにより、無給電素子12の長さL21と、アンテナ素子11の長さL11とを合算した長さL41は、DAB帯の周波数帯の中心周波数における波長(λ)の3/4の長さ((1/4)λ
DAB共振長+(1/2)λ
DAB共振長)である。また、長さL11と長さL21とを合算した長さL41は、たとえば、容量装荷型アンテナとして機能させるため、FM帯の中心周波数における波長(λ)の1/4、すなわち(1/4)λの長さより長め(+α)になるように設定されている。
また、無給電素子12とアンテナ素子11との容量結合は、無給電素子12及びアンテナ素子11が、容量装荷型アンテナとして機能するように所定の容量値に定められている。すなわち、無給電素子12の長さL21と、アンテナ素子11の長さL11とを合算した長さL41(=L11+L21≒(1/4)λ
FM共振長+α≒(3/4)λ
DAB共振長)は、容量装荷型アンテナとして機能させるため、(1/4)λ
FM共振長以上に設定され、FM帯の電波を効率良く受信可能である。つまり、FM/DAB共用アンテナ10は、FM帯の電波を受信する場合に、アンテナ素子11及び無給電素子12が、FM帯の(1/4)波長のアンテナとして機能する。FM/DAB共用アンテナ10の長さL41は、たとえば、1.2m程度の長さとなる。
【0065】
また、長さL11と長さL21とを合算した長さL41は、FM帯に応じた所定の波長範囲(第2範囲)内の波長(第2波長)の1/4以上の長さであってもよい。ここで、所定の波長範囲は、FM帯の最大周波数に対応する波長λ
FMminに所定の係数を積算した波長からFM帯の最小周波数に対応する波長λ
FMmaxに所定の係数を積算した波長までの範囲である。たとえば、所定の波長範囲は、(1−k)×λ
FMmin≦λ
FM≦(1+k)×λ
FMmaxであり、k=0.21である場合には、0.79×λ
FMmin≦λ
FM≦1.21×λ
FMmaxである。
【0066】
以上のように、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10は、ほぼ(1/4)λ
DAB共振長のアンテナ素子11によりDAB帯の電波を効率良く受信し、容量装荷型アンテナとして機能するほぼ(1/4)λ
FM共振長のアンテナ素子11及び無給電素子12によりFM帯の電波を効率良く受信できる。すなわち、FM/DAB共用アンテナ10は、アンテナ素子11の先端に無給電素子12を付加することにより、FM帯の電波と、DAB帯の電波との両方を効率良く受信できる。
【0067】
次に、
図9を参照して、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10のアンテナ特性について説明する。
図9は、本実施形態のスポイラアンテナ1cのアンテナ特性を示す図である。
図9は、従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナと、本実施形態のスポイラアンテナ1cとのアンテナ特性の測定結果を示している。
図9において、縦軸の項目は、上から順に、「(3/4)λ
FMアンテナの平均利得[dB]」、及び「第4の実施形態のスポイラアンテナの平均利得[dB]」を示している。
また、横軸の項目は、
図4と同様に、「FM帯」の「水平偏波」及び「垂直偏波」と、「DAB帯」の「水平偏波」及び「垂直偏波」とを示している。
【0068】
図9に示すように、「第4の実施形態のスポイラアンテナの平均利得[dB]」は、「FM帯」の「水平偏波」が“−13.36”であり、「垂直偏波」が“−10.99”である。また、「DAB帯」の「水平偏波」が“−11.30”であり、「垂直偏波」が“−8.50”である。
結果として、
図9の示す測定結果は、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10が、「FM帯」と「DAB帯」との両方の周波数帯に対して、従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナと同等の受信特性を有していることを示している。また、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10は、従来のFM帯及びDAB帯共用のアンテナが2.2m程度の長さが必要であることに対して、1.2m程度と小型化を実現している。
【0069】
以上説明したように、本実施形態のスポイラアンテナ1cは、車体2に取り付けられるリアスポイラ100と、アンテナ素子11と、無給電素子12とを備える。アンテナ素子11は、リアスポイラ100内に備えられ、第1の周波数帯(たとえば、DAB帯)に共振可能な長さL11(第1の長さ)を有する。無給電素子12は、リアスポイラ100内に備えられ、アンテナ素子11と所定の容量値により容量結合される。そして、無給電素子12は、アンテナ素子11が有する長さL11と合算することで、第1の周波数帯(たとえば、DAB帯)とは異なる第2の周波数帯(たとえば、FM帯)に共振可能な長さL21(第2の長さ)を有する。
【0070】
これにより、
図9に示すように、本実施形態のスポイラアンテナ1cは、第1の周波数帯(たとえば、DAB帯)と、第2の周波数帯(たとえば、FM帯)との両方を受信可能にしつつ、アンテナ(FM/DAB共用アンテナ10)を小型化できる。よって、本実施形態のスポイラアンテナ1cは、複数の周波数帯を受信可能なアンテナを小型化でき、当該アンテナをリアスポイラ100内の限られた空間に搭載できる。
【0071】
また、本実施形態では、第1の周波数帯(たとえば、DAB帯)が、第2の周波数帯(たとえば、FM帯)よりも高く、長さL11が、第1の周波数帯(たとえば、DAB帯)に含まれる周波数における(1/4)波長の長さである。また、長さL11と長さL21とを合算した長さが、第2の周波数帯(たとえば、FM帯)に含まれる周波数における(1/4)波長以上の長さである。たとえば、長さL11が、第1の周波数帯の中心周波数における波長の1/4の長さであり、長さL11と長さL21とを合算した長さL41が、第2の周波数帯の中心周波数における波長の1/4以上の長さである。また、たとえば、長さL11が、第1の周波数帯に応じた第1範囲内(たとえば、0.79×λ
DABmin≦λ
DAB≦1.21×λ
DABmax)の波長(第1波長:λ
DAB)の1/4の長さであってもよい。また、長さL11と長さL21とを合算した長さL41が、第2の周波数帯に応じた第2範囲(たとえば、0.79×λ
FMmin≦λ
FM≦1.21×λ
FMmax)内の波長(第2波長:λ
FM)の1/4以上の長さであってもよい。
【0072】
これにより、本実施形態のスポイラアンテナ1cは、第1の周波数帯(たとえば、DAB帯)と、第2の周波数帯(たとえば、FM帯)との両方の受信を実現しつつ、アンテナ(FM/DAB共用アンテナ10)を、第2の周波数帯(たとえば、FM帯)の(1/4)波長の長さ+α程度に小型化できる。
【0073】
また、本実施形態では、長さL21が、第1の周波数帯(たとえば、DAB帯)の中心周波数における波長の1/2の長さである。また、たとえば、長さL21が、前記第1波長(λ
DAB)の1/2の長さであってもよい。また、たとえば、長さL21は、前記第1範囲内の第3波長(λ
DAB’)の1/2の長さであってもよい。第3波長(λ
DAB’)は、第1波長(λ
DAB)と同一の長さであってもよいし、第1波長(λ
DAB)と異なる長さであってもよい。
これにより、本実施形態のスポイラアンテナ1cは、アンテナ素子11のDAB帯による共振に対する無給電素子12の影響を低減できる。
【0074】
[第5の実施形態]
次に、図面を参照して、第5の実施形態のスポイラアンテナ1dについて説明する。
第5の実施形態は、第4の実施形態の変形例であり、アンテナ素子11の長さL1をアンプ30の接続配線を含めた長さにした場合の一例である。
【0075】
図10は、本実施形態のスポイラアンテナ1dの内部構成例を示す図である。なお、スポイラアンテナ1dの外観は、
図1に示す第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
図10に示すスポイラアンテナ1dは、リアスポイラ100と、FM/DAB共用アンテナ10cと、AM用アンテナ20aと、接続コネクタ50とを備えている。なお、
図10において、
図1及び
図2に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0076】
FM/DAB共用アンテナ10cは、1つのアンテナでFM帯とDAB帯との両方の電波を受信可能なアンテナである。FM/DAB共用アンテナ10cは、アンテナ素子11aと、接続配線11bと、無給電素子12と、容量結合部13とを備えている。
アンテナ素子11aは、たとえば、絶縁体(誘電体)の被膜で覆われた金属線である導線により構成される。アンテナ素子11aは、接続コネクタ50を介してアンプ30に接続される接続配線11bと合算した長さが、DAB帯(第1の周波数帯の一例)に共振可能な長さになる長さL11(第1の長さ)になるように設定されている。たとえば、アンテナ素子11aの長さと、接続配線11bの長さとを合算した長さL11は、(1/4)λ
DAB共振長になるように設定されている。
【0077】
また、無給電素子12は、アンテナ素子11a及び接続配線11bの長さL11と合算することで、FM帯(第2の周波数帯の一例)に共振可能な長さL21(第2の長さ)を有する。また、長さL11と長さL21とを合算した長さL41は、たとえば、容量装荷型アンテナとして機能させるため、FM帯の中心周波数における波長λ
FMの1/4、すなわち(1/4)λ
FM共振長より長め(+α)になるように設定されている。
【0078】
また、アンテナ素子11aと、無給電素子12とは、所定の容量値になるように、間隔d1(所定の間隔)、及び長さL31(所定の長さ)で、それぞれの導線(配線)を重ね合わせて配置されている。長さL31及び間隔d1は、アンテナ素子11a及び無給電素子12を容量装荷型アンテナとして機能させる容量値になるように、設定されている。間隔d1は、たとえば、30mm以下の値である。
【0079】
AM用アンテナ20aは、AMラジオ用の電波を受信可能なアンテナである。AM用アンテナ20aは、アンテナ素子21aと、接続コネクタ50を介してアンプ30に接続配線21bとを備えている。
接続配線11bと接続配線21bとは、間隔d3(所定の間隔)で、それぞれの導線(配線)を重ね合わせて配置されている。間隔d3は、FM/DAB共用アンテナ10cとAM用アンテナ20aとが容量結合する間隔に設定されている。間隔d3は、たとえば、30mm以下の値である。
【0080】
アンテナ素子21aは、絶縁体の被膜で覆われた金属線である導線により構成される。アンテナ素子21aは、たとえば、メアンダ状の導線パターンを有している。また、アンテナ素子21aの長さと接続配線21bの長さとを合算した長さL42は、AMラジオ用の電波を受信可能な長さであるとともに、FM/DAB共用アンテナ10cの特性への影響を考慮して設定される。長さL42は、たとえば、DAB帯に共振可能な長さに設定されている。
【0081】
本実施形態のアンプ30は、接続配線11bによってアンテナ素子11aに接続されるとともに、接続配線21bによってアンテナ素子21aに接続される。また、本実施形態において、FM/DAB共用アンテナ10c及びAM用アンテナ20aの給電点は、接続コネクタ50としてもよいし、アンプ30の入力端子(不図示)としてもよい。
接続コネクタ50は、アンテナ素子11aと接続配線11bとを接続するとともに、アンテナ素子21aと接続配線21bとを電気的に接続する。
【0082】
次に、
図11を参照して、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10cのアンテナ特性について説明する。
図11は、本実施形態のスポイラアンテナ1dのアンテナ特性を示す図である。
図11に示す例は、FM/DAB共用アンテナ10c及びAM用アンテナ20aの各長さの異なる2つの例(「TypeA」及び「TypeB」)におけるアンテナ特性の測定結果を示している。
【0083】
図11において、縦軸の項目は、上から順に、「TypeAの平均利得[dB]」、及び「TypeBの平均利得[dB]」を示している。
また、横軸の項目は、「FM帯(76MHz−90MHz)」の「水平偏波」及び「垂直偏波」と、「FM帯(87MHz−108MHz)」の「水平偏波」及び「垂直偏波」と、「DAB帯」の「水平偏波」及び「垂直偏波」とを示している。
【0084】
また、「TypeA」において、アンテナ素子11aの長さが240mmであり、接続配線11bの長さが90mmであり、アンテナ素子11aと接続配線11bとを合算した長さL11は、330mmである。また、無給電素子12の長さが860mmであり、容量結合部13の長さL31が220mmであり、無給電素子12の長さから容量結合部13の長さL31を減算した長さL21は、640mmである。また、長さL11と長さL21を合算した長さL41は、970mmである。また、アンテナ素子21aの長さが1065mmであり、接続配線21bの長さが93mmであり、アンテナ素子21aと接続配線21bとを合算した長さL42は、1158mmである。
【0085】
「TypeA」の場合、長さL11を(1/4)λとする共振周波数は、DAB帯内の227MHzであり、長さL41を(1/4)λとする共振周波数は、FM帯内の77.3MHzである。また、長さL41を(3/4)λとする共振周波数は、DAB帯内の194MHzである。
【0086】
また、「TypeB」において、アンテナ素子11aの長さが260mmであり、接続配線11bの長さが90mmであり、アンテナ素子11aと接続配線11bとを合算した長さL11は、350mmである。また、無給電素子12の長さが870mmであり、容量結合部13の長さL31が240mmであり、無給電素子12の長さから容量結合部13の長さL31を減算した長さL21は、630mmである。また、長さL11と長さL21を合算した長さL41は、980mmである。また、アンテナ素子21aの長さが1100mmであり、接続配線21bの長さが93mmであり、アンテナ素子21aと接続配線21bとを合算した長さL42は、1193mmである。
【0087】
「TypeB」の場合、長さL11を(1/4)λとする共振周波数は、DAB帯内の214MHzであり、長さL41を(1/4)λとする共振周波数は、FM帯内の76.5MHzである。また、長さL41を(3/4)λとする共振周波数は、DAB帯内の189MHzである。
【0088】
図11に示すように、「TypeAの平均利得[dB]」は、「FM帯(76MHz−90MHz)」の「水平偏波」が“−7.31”であり、「垂直偏波」が“−4.09”である。「FM帯(87MHz−108MHz)」の「水平偏波」が“−10.37”であり、「垂直偏波」が“−7.35”である。また、「DAB帯」の「水平偏波」が“−5.65”であり、「垂直偏波」が“−4.40”である。
【0089】
また、「TypeBの平均利得[dB]」は、「FM帯(76MHz−90MHz)」の「水平偏波」が“−12.43”であり、「垂直偏波」が“−8.50”である。「FM帯(87MHz−108MHz)」の「水平偏波」が“−11.30”であり、「垂直偏波」が“−8.74”である。また、「DAB帯」の「水平偏波」が“−5.09”であり、「垂直偏波」が“−3.72”である。
【0090】
図11の示すように、「TypeA」と「TypeB」とのいずれの場合も、本実施形態のFM/DAB共用アンテナ10cが、「FM帯」と「DAB帯」との両方の周波数帯に対して、
図9に示す第4の実施形態のFM/DAB共用アンテナ10と同等以上の受信特性を有している。
このように、本実施形態では、長さL11及び長さL41に、アンテナ素子11aとアンプ30とを接続する接続配線11bの長さを含めるようにしたため、FM/DAB共用アンテナ10cの受信特性をさらに向上できる。
【0091】
次に、
図12を参照して、AM用アンテナ長とFM/DAB共用アンテナ10cのアンテナ特性との関係について説明する。
図12は、本実施形態のAM用アンテナ長とDAB帯のアンテナ特性との関係の一例を示す図である。
図12に示すグラフは、縦軸が「TypeA」の場合のFM/DAB共用アンテナ10cにおけるDAB帯の平均利得[dB]を示し、横軸が、AM用アンテナ20aのアンテナ長(長さL42)を示す。また、該グラフにおいて、特性波形W1は、「DAB帯」の「垂直偏波」の特性波形を示し、特性波形W2は、「DAB帯」の「水平偏波」の特性波形を示す。
【0092】
本実施形態では、AM用アンテナ20aの接続配線21bと、FM/DAB共用アンテナ10cの接続配線11bとを間隔d3で、それぞれの導線(配線)を重ね合わせて配置されて容量結合させている。そのため、
図12の特性波形W1及び特性波形W2に示すように、AM用アンテナ20aのアンテナ長(長さL42)を変更することで、FM/DAB共用アンテナ10cのDAB帯の受信特性が変化する。よって、本実施形態では、AM用アンテナ20aのアンテナ長(長さL42)を調整することで、FM/DAB共用アンテナ10cの受信特性を向上できる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態のスポイラアンテナ1dによれば、FM/DAB共用アンテナ10cの長さL11及び長さL41には、アンテナ素子11aとアンプ30とを接続する接続配線11bの長さを含める。すなわち、長さL11及び長さL41は、アンプ30を起点に設定される。また、長さL11は、DAB帯(第1の周波数帯)に応じた所定の波長範囲(第1範囲)内の波長(第1波長)の1/4の長さであり、長さL41は、FM帯(第2の周波数帯)に応じた所定の波長範囲(第2範囲)内の波長(第2波長)の1/4以上の長さである。
これにより、本実施形態のスポイラアンテナ1dは、アンテナ素子11aとアンプ30とを接続する接続配線11bがアンテナとして機能することを考慮するため、第4の実施形態よりさらにFM/DAB共用アンテナ10cの受信特性を向上できる。また、本実施形態のスポイラアンテナ1dは、リアスポイラ100(樹脂製部材)内のアンテナをさらに小型化できる。
【0094】
また、本実施形態では、AM用アンテナ20aの接続配線21bと、FM/DAB共用アンテナ10cの接続配線11bとを所定の間隔(間隔d3)で、それぞれの導線(配線)を重ね合わせて配置されて容量結合させて配置する。
これにより、本実施形態のスポイラアンテナ1dは、AM用アンテナ20aとFM/DAB共用アンテナ10cとを容量結合させることができ、FM/DAB共用アンテナ10cの受信特性をさらに向上できる。
【0095】
なお、本発明は、前記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
たとえば、各実施形態において、無給電素子12(12a)は、直線状に配置される例を説明したが、
図13に示すように、リアスポイラ100内において、折り曲げて配置してもよい。
図13は、第1の実施形態のFM/DAB共用アンテナ10の変形例を示す図である。
FM/DAB共用アンテナ10は、
図13に示すように導線が折り曲げられた無給電素子12を備えるようにしてもよい。これにより、FM/DAB共用アンテナ10は、車体2の横幅の短い自動車に対しても、リアスポイラ100内の限られた空間に搭載できる。
【0096】
また、各実施形態において、スポイラアンテナ1(1a〜1d)は、FM/DAB共用アンテナ10(10a〜10c)の他にAM用アンテナ20(20a)を備える例を説明したが、AM用アンテナ20(20a)を備えずに、FM/DAB共用アンテナ10(10a〜10c)のみでもよい。また、各実施形態におけるFM/DAB共用アンテナ10(10a〜10c)が、AM用アンテナを兼ねてもよい。すなわち、FM/DAB共用アンテナ10(10a〜10c)が、AM用アンテナ及びFM用/DAB用アンテナとして、使用されてもよい。
また、各実施形態において、スポイラアンテナ1(1a〜1d)は、FM帯とDAB帯との電波の受信を共用するFM/DAB共用アンテナ10(10a〜10c)を備える例を説明したが、他の周波数帯の電波の受信を共用するようにしてもよい。
【0097】
また、各実施形態において、FM/DAB共用アンテナ10(10a〜10c)は、2種類の周波数帯を受信する例を説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、FM/DAB共用アンテナ10(10a〜10c)は、さらに周波数の高い周波数帯の電波を受信するために、2つ以上の無給電素子を備え、容量結合により接続するようにしてもよい。
【0098】
また、各実施形態において、FM帯の波長を、FM帯の中心周波数における波長として説明したが、これに限定されるものではなく、たとえば、FM帯に含まれる周波数における波長であれば、他の周波数における波長であってもよい。
また、各実施形態において、DAB帯の波長を、DAB帯の中心周波数における波長として説明したが、これに限定されるものではなく、たとえば、DAB帯に含まれる周波数における波長であれば、他の周波数における波長であってもよい。
【0099】
また、各実施形態の容量結合部13(13b)において、無給電素子12(12a)が車体2側に設けられているが、アンテナ素子11(21)を車体2側に設けてもよい。
【0100】
また、各実施形態において、アンテナ素子11(11a、21、21a)及び無給電素子12(12a)は、絶縁体(誘電体)の被膜で覆われた金属線である導体により構成されているが、誘電体基板上に導線を配線した構成でもよい。さらに、各素子の長さは本発明の効果を損なわない程度のズレを許容するものである。
【0101】
また、各実施形態において、一例として、樹脂製部材がリアスポイラ100である場合の例を説明したが、リアスポイラ100の代わりに、樹脂製のテールゲートやトランク等であってもよく、車体に取り付けられる樹脂製部材であれば、他の樹脂製部材であってもよい。
【0102】
また、各実施形態において、所定の波長範囲に用いる係数kの一例として、k=0.21を用いる例を説明したが、他の値であってもよい。また、所定の波長範囲の上限値に用いる係数kと、下限値に用いる係数kとを異なる値にしてもよい。