特許第6787008号(P6787008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787008
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ラテックス組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/22 20060101AFI20201109BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20201109BHJP
   C08L 9/10 20060101ALI20201109BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20201109BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20201109BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20201109BHJP
   B29C 41/14 20060101ALI20201109BHJP
   A41D 19/00 20060101ALN20201109BHJP
   B29K 9/00 20060101ALN20201109BHJP
【FI】
   C08F2/22
   C08F236/04
   C08L9/10
   C08K3/10
   C08L5/00
   C08K5/098
   B29C41/14
   !A41D19/00 P
   B29K9:00
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-193434(P2016-193434)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-149926(P2017-149926A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-34267(P2016-34267)
(32)【優先日】2016年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北川 昌
(72)【発明者】
【氏名】山本 実紗
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第00/073367(WO,A1)
【文献】 特開2005−060577(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/072900(WO,A1)
【文献】 特表2009−520049(JP,A)
【文献】 特開2012−188797(JP,A)
【文献】 特開2015−105281(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0232637(US,A1)
【文献】 特開平07−316211(JP,A)
【文献】 特開2009−138194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08F 2/00−2/60
A41D 19/04
B29C 41/14
B29K 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスと、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)と、を含有してなるラテックス組成物を製造する方法であって、
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体を少なくとも含む単量体混合物を、0〜25℃にて乳化重合することで、前記カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスを得る第1工程と、
前記カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに、前記金属化合物(B)と、前記アルコール性水酸基含有化合物(C)とを配合する第2工程とを備え、
前記アルコール性水酸基含有化合物(C)が、糖類(c1)、糖アルコール(c2)、ヒドロキシ酸(c3)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種であり、
前記金属化合物(B)と、前記アルコール性水酸基含有化合物(C)との配合比率が、「前記金属化合物(B):前記アルコール性水酸基含有化合物(C)」の重量比で、1:0.2〜1:45の範囲となる量であるラテックス組成物の製造方法。
【請求項2】
前記アルコール性水酸基含有化合物(C)が、糖アルコール(c2)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のラテックス組成物の製造方法。
【請求項3】
前記金属化合物(B)が、アルミニウム化合物である請求項1または2に記載のラテックス組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により得られるラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックス組成物の製造方法に関し、ラテックス組成物としての安定性に優れ、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いおよび高い応力保持率を備えるディップ成形体を与えることのできるラテックス組成物を製造するための方法、ならびに、このような製造方法により得られるラテックス組成物を用いたディップ成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ゴムのラテックスに代表される天然ラテックスを含有するラテックス組成物をディップ成形して、乳首、風船、手袋、バルーン、サック等の人体と接触して使用されるディップ成形体が知られている。しかしながら、天然ゴムのラテックスは、人体に即時型アレルギー(Type I)の症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、生体粘膜又は臓器と直接接触するディップ成形体としては問題がある場合があった。そこで、合成のニトリルゴムなどの合成ゴムのラテックスを用いる検討がされている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、アクリロニトリル、カルボン酸、およびブタジエンのカルボキシル化ニトリルブタジエンランダム三元重合体を含み、全固形分量が15〜25重量%のエマルジョンに、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤を配合してなるラテックス組成物が開示されている。しかしながら、この特許文献1の技術では、即時型アレルギー(Type I)の発生を防止できる一方で、ディップ成形体とした場合に、ディップ成形体に含まれる硫黄や加硫促進剤が原因で、人体に触れた際に、遅延型アレルギー(Type IV)のアレルギー症状を発生させることがあった。
【0004】
これに対し、たとえば、特許文献2では、アクリロニトリル残基25〜30重量%、ブタジエン残基62〜71重量%、および不飽和カルボン酸残基4〜8重量%を含み、酸化亜鉛を含み、架橋剤である硫黄および加硫促進剤である硫黄化合物を含まないラテックス組成物が開示されている。この特許文献2の技術によれば、硫黄および加硫促進剤である硫黄化合物を含まないため、即時型アレルギー(Type I)だけでなく、遅延型アレルギー(Type IV)の発生をも抑制できるものであるが、得られるディップ成形体は、伸びが低く、さらには、風合いおよび触感性にも劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5697578号公報
【特許文献2】特許第5184720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ラテックス組成物としての安定性に優れ、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いおよび高い応力保持率を備えるディップ成形体を与えることのできるラテックス組成物を製造するための方法、ならびに、このような製造方法により得られるラテックス組成物を用いたディップ成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の重合温度にて重合することにより得られたカルボキシル基含有共役ジエンゴムのラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物およびアルコール性水酸基含有化合物を配合することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスと、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)と、を含有してなるラテックス組成物を製造する方法であって、
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体を少なくとも含む単量体混合物を、0〜25℃にて乳化重合することで、前記カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスを得る第1工程と、
前記カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに、前記金属化合物(B)と、前記アルコール性水酸基含有化合物(C)とを配合する第2工程とを備え、
前記アルコール性水酸基含有化合物(C)が、糖類(c1)、糖アルコール(c2)、ヒドロキシ酸(c3)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種であるラテックス組成物の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の製造方法において、前記アルコール性水酸基含有化合物(C)が、糖アルコール(c2)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記金属化合物(B)が、アルミニウム化合物であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記本発明の製造方法により得られるラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ラテックス組成物としての安定性に優れ、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いおよび高い応力保持率を備えるディップ成形体を与えることのできるラテックス組成物を製造するための方法、ならびに、このような製造方法により得られるラテックス組成物を用いたディップ成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のラテックス組成物の製造方法は、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスと、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)と、を含有してなるラテックス組成物を製造する方法であって、
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体を少なくとも含む単量体混合物を、0〜25℃にて乳化重合することで、前記カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスを得る第1工程と、
前記カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに、前記金属化合物(B)と、前記アルコール性水酸基含有化合物(C)とを配合する第2工程とを備える。
また、本発明において、前記アルコール性水酸基含有化合物(C)は、糖類(c1)、糖アルコール(c2)、ヒドロキシ酸(c3)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種である。
【0013】
第1工程
本発明の製造方法における第1工程は、共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体を少なくとも含む単量体混合物を、0〜25℃にて乳化重合することで、前記カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスを得る工程である。
【0014】
第1工程にて製造するカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスとしては、共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体を少なくとも含む単量体混合物を、0〜25℃にて乳化重合することで得られるものであればよいが、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)のラテックス、カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2)のラテックスおよびカルボキシル基含有共役ジエンゴム(a3)のラテックスから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0015】
カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)のラテックスは、共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体に加えて、エチレン性不飽和ニトリル単量体を、0〜25℃にて乳化重合することにより得られる共重合体のラテックスであり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を、上記温度にて乳化重合することにより得られる共重合体のラテックスであってもよい。
【0016】
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)中における、共役ジエン単量体により形成される共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは56〜78重量%であり、より好ましくは56〜73重量%、さらに好ましくは56〜68重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0017】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、カルボキシル基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体;などが挙げられる。これらのなかでも、エチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩として用いることもできる。また、エチレン性不飽和カルボン酸単量体は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)中における、エチレン性不飽和カルボン酸単量体により形成されるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合は、好ましくは2〜5重量%であり、より好ましくは2〜4.5重量%、さらに好ましくは2.5〜4.5重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0018】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体により形成されるエチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは20〜40重量%であり、より好ましくは25〜40重量%、さらに好ましくは30〜40重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0019】
共役ジエン単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体およびエチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族単量体;フルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸−1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸−3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の架橋性単量体;などを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0021】
また、カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2)のラテックスは、共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエンおよびエチレン性不飽和カルボン酸単量体に加えて、スチレンを0〜25℃にて乳化重合することにより得られる共重合体のラテックスであり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を、上記温度にて乳化重合することにより得られる共重合体のラテックスであってもよい。
【0022】
カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2)中における、1,3−ブタジエンにより形成されるブタジエン単位の含有割合は、好ましくは56〜78重量%であり、より好ましくは56〜73重量%、さらに好ましくは56〜68重量%である。ブタジエン単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0023】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、カルボキシル基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、たとえば、上述したカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)のラテックスと同様のものを用いることができる。カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2)中における、エチレン性不飽和カルボン酸単量体により形成されるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合は、好ましくは2〜5重量%であり、より好ましくは2〜4.5重量%、さらに好ましくは2.5〜4.5重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0024】
カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2)中における、スチレンにより形成されるスチレン単位の含有割合は、好ましくは20〜40重量%であり、より好ましくは25〜40重量%、さらに好ましくは30〜40重量%である。スチレン単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0025】
共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエン、エチレン性不飽和カルボン酸単量体およびスチレンと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、上述したカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)のラテックスと同様のもの(ただし、スチレンを除く)の他、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレンなどの1,3−ブタジエン以外の共役ジエン単量体などが挙げられる。カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2)中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0026】
カルボキシル基含有共役ジエンゴム(a3)のラテックスは、共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体を0〜25℃にて乳化重合することにより得られる共重合体のラテックスであり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を、上記温度にて乳化重合することにより得られる共重合体のラテックスであってもよい。
【0027】
カルボキシル基含有共役ジエンゴム(a3)中における、共役ジエン単量体により形成される共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは80〜98重量%であり、より好ましくは90〜98重量%、さらに好ましくは95〜97.5重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0028】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、カルボキシル基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、たとえば、上述したカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)のラテックスと同様のものを用いることができる。カルボキシル基含有共役ジエンゴム(a3)中における、エチレン性不飽和カルボン酸単量体により形成されるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合は、好ましくは2〜10重量%であり、より好ましくは2〜7.5重量%、さらに好ましくは2.5〜5重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0029】
共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられ、共役ジエン単量体としてはこれらの何れかを単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、上述したカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)のラテックスと同様のものが挙げられる。カルボキシル基含有共役ジエンゴム(a3)中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0031】
そして、本発明の製造方法における第1工程においては、共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体を少なくとも含む単量体混合物を、0〜25℃にて乳化重合するこのより、このようなカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックス(上述したカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)のラテックス、カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2)のラテックス、カルボキシル基含有共役ジエンゴム(a3)のラテックスを含む。)を得るものである。
【0032】
本発明の製造方法においては、乳化重合の温度を0〜25℃に制御するものであり、これにより、得られるディップ成形体を、伸びに優れ、柔軟な風合いおよび高い応力保持率を備えるものとしながら、高い引張強度を有するものとすることができる。本発明の製造方法における、乳化重合の温度は、好ましくは0〜20℃であり、より好ましくは5〜20℃、さらに好ましくは5〜15℃である。乳化重合の温度が高すぎると、得られるディップ成形体の引張強度が低下してしまう。一方、乳化重合の温度が低すぎると、分散媒としての水が凝固してしまい、重合反応が進行しなくなってしまう。
【0033】
本発明の製造方法において、乳化重合方法としては、重合温度を上記範囲に制御することにより重合を行えるような方法であればよく、特に限定されず、上述した単量体を含有してなる単量体混合物を用い、従来公知の方法により重合することができる。
【0034】
また、乳化重合する際には、通常用いられる、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
【0035】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。これらの乳化剤は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0036】
重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、乳化重合温度を上記範囲に制御した際における重合活性に優れているという観点より、有機過酸化物が好ましい。また、架橋剤として、有機過酸化物を使用する際には、乳化重合温度を上記範囲に制御した際における重合活性をより高めるという観点より、還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することが好ましい。このような還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0037】
重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜2重量部である。また、還元剤を使用する場合における還元剤の使用量は、有機過酸化物100重量部に対して3〜1000重量部であることが好ましい。
【0038】
乳化重合する際に使用する水の量は、使用する全単量体100重量部に対して、80〜600重量部が好ましく、100〜200重量部が特に好ましい。
【0039】
乳化重合における、各単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する各単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、各単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。各単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。
【0040】
さらに、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができ、これらは種類、使用量とも特に限定されない。
【0041】
乳化重合を行う際の重合時間は、特に限定されないが、通常、5〜40時間程度である。
【0042】
以上のように単量体混合物を上記温度にて乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合停止剤を添加することにより、重合反応を停止する。重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上である。
【0043】
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05〜2重量部である。
【0044】
重合反応を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去し、固形分濃度やpHを調整することで、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスを得ることができる。
【0045】
また、第1工程で得られるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスには、必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、分散剤などを適宜添加してもよい。
【0046】
第1工程で得られるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスの数平均粒子径は、好ましくは60〜300nm、より好ましくは80〜150nmである。粒子径は、乳化剤および重合開始剤の使用量を調節するなどの方法により、所望の値に調整することができる。
【0047】
本発明の製造方法の第1工程により得られるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスにおいて、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のメチルエチルケトン不溶解分量は、好ましくは50〜90重量%であり、より好ましくは55〜85重量%である。また、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のメチルエチルケトンに対する膨潤度は、好ましくは10〜150倍であり、より好ましくは10〜100倍である。メチルエチルケトン不溶解分量およびのメチルエチルケトンに対する膨潤度を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度、破断時伸び、及び500%伸長時応力と応力保持率とのバランスを向上させることができる。なお、メチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトンに対する膨潤度は、例えば、次の方法により測定することができる。すなわち、まず、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のフィルムを得て、浸漬前の乾燥フィルムの重量(W1)を測定し、浸漬前のフィルムを、80メッシュのかご状金網に入れた状態にて、室温下において、メチルエチルケトン中に24時間浸漬させる。そして、かご状金網に残った浸漬後の膨潤フィルムの重量(W2)を測定し、次いで、浸漬後のフィルムを105℃で乾燥することによりメチルエチルケトンを除去することで、乾燥フィルムを得て、浸漬後の乾燥フィルムの重量(W3)を測定する。そして、得られた測定結果に基づいて、下記式(1)、(2)により算出することができる。
メチルエチルケトン不溶解分量(単位:重量%)=(浸漬後の乾燥フィルムの重量(W3)/浸漬前の乾燥フィルムの重量(W1))×100 (1)
メチルエチルケトンに対する膨潤度(単位:倍)=(膨潤フィルムの重量(W2)/浸漬後の乾燥フィルムの重量(W3)) (2)
【0048】
第2工程
本発明の製造方法における第2工程は、上述した第1工程で得られたカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)とを配合する工程であり、これにより、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスと、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)と、を含有してなるラテックス組成物を得ることができる。
【0049】
3価以上の金属を含む金属化合物(B)としては、3価以上の金属を含む化合物であればよく、特に限定されない。本発明の製造方法により得られるラテックス組成物において、3価以上の金属を含む金属化合物(B)は、架橋剤として作用する。
【0050】
本発明によれば、架橋剤として通常用いられる硫黄の代わりに、3価以上の金属を含む金属化合物(B)を架橋剤として用いるものであり、さらには、架橋に際しては、硫黄を含有する加硫促進剤をも必要としないものであるため、即時型アレルギー(Type I)に加えて、硫黄や、硫黄を含有する加硫促進剤に起因する、遅延型アレルギー(Type IV)の発生をも有効に抑制できるものである。
【0051】
3価以上の金属を含む金属化合物(B)としては、たとえば、アルミニウム化合物、コバルト化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物などが挙げられるが、これらのなかでも、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)をより良好に架橋させることができるという点より、アルミニウム化合物が好ましい。
【0052】
アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、たとえば、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウム金属、硫酸アルミニウムアンモニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アルミニウム・イソプロポキシド、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、亜硫酸アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。なお、これらアルミニウム化合物は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、本発明の作用効果をより顕著なものとすることができるという点より、アルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0053】
本発明の製造方法における、3価以上の金属を含む金属化合物(B)の配合量は、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜1.5重量部であり、より好ましくは0.1〜1.25重量部、さらに好ましくは0.1〜1.0重量部である。3価以上の金属を含む金属化合物(B)の含有割合が少なすぎると、架橋が不十分となってしまい、得られるディップ成形体は、引張強度および応力保持率に劣るものとなってしまうおそれがある。一方、多すぎると、ラテックス組成物としての安定性に劣るものとなってしまい、ラテックス組成物中に凝集物が多く発生し、ディップ成形体とした場合にも凝集物が多く含まれてしまい、これによりピンホールや凹凸が発生してしまうおそれがある。
【0054】
また、本発明の製造方法における第2工程では、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに対し、上述した3価以上の金属を含む金属化合物(B)に加えて、糖類(c1)、糖アルコール(c2)、ヒドロキシ酸(c3)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種のアルコール性水酸基含有化合物(C)を配合する。
【0055】
本発明によれば、上述したカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)とを含有させることにより、得られるラテックス組成物を、良好な安定性を有するものとすることができ、しかも、これを用いて得られるディップ成形体を、引張強度および伸びに優れることに加え、柔軟な風合いおよび高い応力保持率を備えるものとすることができるものである。
【0056】
具体的には、本発明においては、架橋剤として3価以上の金属を含む金属化合物(B)を使用するに際し、このような3価以上の金属を含む金属化合物(B)に対し、アルコール性水酸基含有化合物(C)を配合することにより、ラテックス組成物中における、3価以上の金属を含む金属化合物(B)の分散状態を良好なものとすることができ、これにより、得られるラテックス組成物を、良好な安定性を有するものとすることができ、しかも、3価以上の金属を含む金属化合物(B)とアルコール性水酸基含有化合物(C)との作用により、これを用いて得られるディップ成形体を、引張強度および伸びに優れることに加え、柔軟な風合いおよび高い応力保持率を備えるものとすることができるものである。
【0057】
特に、ディップ成形体を手袋用途に用いる場合には、引張強度および伸びに優れていることに加え、これを装着し、作業を行った際における使用感が重要となってくるものである。具体的には、風合い(500%伸長時の応力)に加えて、装着してから時間経過とともに緩みやたるみが発生することを有効に防止できること(すなわち、ディップ成形体を100%伸張した引張応力M100(0)に対する、伸張を停止してから6分経過後の応力M100(6)の百分率で示される応力保持率が高いこと)が望ましい。これに対し、本発明によれば、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに対し、3価以上の金属を含む金属化合物(B)およびアルコール性水酸基含有化合物(C)を配合することにより、得られるラテックス組成物を、良好な安定性を有するものとすることができ、しかも、これを用いて得られるディップ成形体を、引張強度および伸びに優れることに加え、500%伸長時の応力(風合い)に優れていることに加え、高い応力保持率を備えるものとすることができるものである。また、本発明によれば、架橋剤として通常用いられる硫黄の代わりに、3価以上の金属を含む金属化合物(B)を架橋剤として用いるものであり、さらには、架橋に際しては、硫黄を含有する加硫促進剤をも必要としないものであるため、即時型アレルギー(Type I)に加えて、硫黄や、硫黄を含有する加硫促進剤に起因する、遅延型アレルギー(Type IV)の発生をも有効に抑制できるものである。
【0058】
加えて、本発明においては、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスとして上記特定の温度範囲で乳化重合することにより得られたものを用いるため、得られるディップ成形体の引張強度を適切に高めることができるものである。
【0059】
本発明の製造方法で用いるアルコール性水酸基含有化合物(C)は、糖類(c1)、糖アルコール(c2)、ヒドロキシ酸(c3)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種であり、これらの中でも、得られるディップ成形体を、より柔軟な風合いを備えるとともに、より高い応力保持率を備えるものとすることができるという観点より、糖アルコール(c2)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、アルコール性水酸基含有化合物(C)として、2種以上を併用する場合には、糖類(c1)および糖アルコール(c2)から選択される少なくとも1種と、ヒドロキシ酸(c3)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種とを組み合わせて用いることが好ましく、糖アルコール(c2)とヒドロキシ酸塩(c4)とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0060】
糖類(c1)としては、単糖類、あるいは、2以上の単糖がグリコシド結合によって結合した多糖類であればよく特に限定されないが、たとえば、エリスロース、スレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、ガラクトース、イドース、エリスルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトースなどの単糖類;トレハロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、スクロース、パラチノースなどの二糖類;マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオース、メレジトース、プランテオース、ゲンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトスクロース、ラフィノースなどの三糖類;マルトテトラオース、イソマルトテトラオースなどのホモオリゴ糖;スタキオース、セロテトラオース、スコロドース、リキノース、パノースなどの四糖類;マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどの五糖類;マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどの六糖類;などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
糖アルコール(c2)としては、単糖あるいは多糖類の糖アルコールであればよく、特に限定されないが、たとえば、グリセリンなどのトリトール;エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトールなどのテトリトール;D−アラビニトール、L−アラビニトール、キシリトール、リビトール、ペンタエリスリトールなどのペンチトール;ペンタエリスリトール;ソルビトール、D−イジトール、ガラクチトール、D−グルシトール、マンニトールなどのヘキシトール;ボレミトール、ペルセイトールなどのへプチトール;D−エリトロ−D−ガラクト−オクチトールなどのオクチトール;などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、炭素数6の糖アルコールであるヘキシトールが好ましく、ソルビトールがより好ましい。
【0062】
ヒドロキシ酸(c3)としては、ヒドロキシル基を有するカルボン酸であればよく、特に限定されないが、たとえば、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、3−メチリンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、セリンなどの脂肪族ヒドロキシ酸;サリチル酸、クレオソート酸(ホモサリチル酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸)、バニリン酸、シリング酸、ヒドロキシプロパン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドドデカン酸、ヒドロキシトリデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシペンタデカン酸、ヒドロキシヘプタデカン酸、ヒドロキシオクタデカン酸、ヒドロキシノナデカン酸、ヒドロキシイコサン酸、リシノール酸などのモノヒドロキシ安息香酸誘導体、ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸などのジヒドロキシ安息香酸誘導体、没食子酸などのトリヒドロキシ安息香酸誘導体、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸などのフェニル酢酸誘導体、メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等のケイヒ酸・ヒドロケイヒ酸誘導体などの芳香族ヒドロキシ酸;などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、脂肪族ヒドロキシ酸が好ましく、脂肪族α−ヒドロキシ酸がより好ましく、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸がさらに好ましく、グリコール酸が特に好ましい。
【0063】
ヒドロキシ酸塩(c4)としては、ヒドロキシ酸の塩であればよく、特に限定されず、ヒドロキシ酸(c3)の具体例として例示したヒドロキシ酸の金属塩などが挙げられ、たとえば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の塩;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩が挙げられる。ヒドロキシ酸塩(c4)としては、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。ヒドロキシ酸塩(c4)としては、ヒドロキシ酸のアルカリ金属塩が好ましく、ヒドロキシ酸のナトリウム塩が好ましい。また、ヒドロキシ酸塩(c4)を構成するヒドロキシ酸としては、脂肪族ヒドロキシ酸が好ましく、脂肪族α−ヒドロキシ酸がより好ましく、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸がさらに好ましく、グリコール酸が特に好ましい。すなわち、ヒドロキシ酸塩(c4)としては、グリコール酸ナトリウムが特に好適である。
【0064】
本発明の製造方法における、アルコール性水酸基含有化合物(C)の配合量は、3価以上の金属を含む金属化合物(B)に対し、「3価以上の金属を含む金属化合物(B):アルコール性水酸基含有化合物(C)」の重量比で、好ましくは1:0.1〜1:50の範囲となる量であり、より好ましくは1:0.2〜1:45の範囲となる量、さらに好ましくは1:0.3〜1:30の範囲となる量である。3価以上の金属を含む金属化合物(B)に対する、アルコール性水酸基含有化合物(C)の配合量が少なすぎると、ラテックス組成物としての安定性に劣るものとなってしまい、ラテックス組成物中に凝集物が多く発生し、ディップ成形体などの膜成形体とした場合にも凝集物が多く含まれてしまい、これによりピンホールや凹凸が発生してしまうおそれがある。一方、3価以上の金属を含む金属化合物(B)に対する、アルコール性水酸基含有化合物(C)の配合量が多すぎると、得られるディップ成形体の引張強度および応力保持率が低下してしまうおそれがある。
【0065】
なお、アルコール性水酸基含有化合物(C)の配合量は、3価以上の金属を含む金属化合物(B)に対する配合量との関係で、上記した量とすればよいが、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)100重量部に対する配合量としては、0.03〜15重量部であることが好ましく、0.05〜10重量部であることがより好ましい。
【0066】
なお、本発明の製造方法の第2工程において、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)とを配合する方法としては、特に限定されず、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに対し、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)とを、そのまま添加してもよいが、得られるラテックス組成物中に、3価以上の金属を含む金属化合物(B)およびアルコール性水酸基含有化合物(C)を良好に分散させることができるという点より、3価以上の金属を含む金属化合物(B)およびアルコール性水酸基含有化合物(C)を水またはアルコールに溶解し、水溶液またはアルコール溶液の状態で添加することが好ましい。
【0067】
また、本発明の製造方法の第2工程においては、3価以上の金属を含む金属化合物(B)、およびアルコール性水酸基含有化合物(C)に加えて、所望により、充填剤、pH調整剤、増粘剤、老化防止剤、分散剤、顔料、充填剤、軟化剤等を配合してもよい。
【0068】
また、本発明の製造方法においては、必要におうじて、得られるラテックス組成物の固形分濃度やpHを調整してもよく、固形分濃度は、10〜40重量%の範囲とすることが好ましく、15〜35重量%の範囲とすることがより好ましく、pHは、8.0〜12の範囲とすることが好ましく、より好ましくは8.5〜11の範囲とすることがより好ましい。
【0069】
ディップ成形体
本発明のディップ成形体は、上記本発明の製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形して得られる。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
【0070】
凝固剤の使用方法の具体例としては、ラテックス組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、ラテックス組成物を沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0071】
凝固剤としては、たとえば、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等のハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛等の硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等の酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;等が挙げられる。なかでも、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムが好ましい。
凝固剤は、通常、水、アルコール、またはそれらの混合物の溶液として使用する。凝固剤濃度は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%である。
【0072】
得られたディップ成形層は、通常、加熱処理を施し架橋する。加熱処理を施す前に、水、好ましくは30〜70℃の温水に、1〜60分程度浸漬し、水溶性不純物(たとえば、余剰の乳化剤や凝固剤等)を除去してもよい。水溶性不純物の除去操作は、ディップ成形層を加熱処理した後に行なってもよいが、より効率的に水溶性不純物を除去できる点から、加熱処理前に行なうことが好ましい。
【0073】
ディップ成形層の架橋は、通常、80〜150℃の温度で、好ましくは10〜130分の加熱処理を施すことにより行われる。加熱の方法としては、赤外線や加熱空気による外部加熱または高周波による内部加熱による方法が採用できる。なかでも、加熱空気による外部加熱が好ましい。
【0074】
そして、架橋したディップ成形層をディップ成形用型から脱着することによって、ディップ成形体が得られる。脱着方法としては、手で成形用型から剥したり、水圧や圧縮空気の圧力により剥したりする方法を採用することができる。なお、脱着後、更に60〜120℃の温度で、10〜120分の加熱処理を行なってもよい。
【0075】
本発明のディップ成形体は、上述した本発明の製造方法により得られるラテックス組成物を用いて得られるものであるため、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の発生をも抑制され、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いおよび高い応力保持率を備えるものであり、そのため、手袋用途、とりわけ、手術用手袋に好適である。あるいは、本発明の製造方法により得られるディップ成形体は、手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験、評価は下記によった。
【0077】
カルボキシル基含有共役ジエン系ゴムのメチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトンに対する膨潤度
各製造例で得られたカルボキシル基含有共役ジエン系ゴムのラテックスを枠付きガラス板に流涎し、湿度23℃、相対湿度50%で48時間放置することで、厚みが1mmの乾燥フィルムを得た。得られた乾燥フィルム約0.2gを精秤し、これを浸漬前のフィルムの重量(W1)とした。そして、浸漬前のフィルムを80メッシュのかご状金網に入れて、かご状金網に入れた状態にて、メチルエチルケトン100mLに24時間浸漬させた。24時間経過後、メチルエチルケトンで膨潤したフィルムの重量を測定し、これを膨潤フィルムの重量(W2)とした。そして、膨潤フィルムを105℃で、3時間乾燥することにより、メチルエチルケトンを除去した後、乾燥フィルムの重量を測定し、これを浸漬後の乾燥フィルムの重量(W3)とした。そして、得られた結果より、下記式(1)、(2)にしたがって、メチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトンに対する膨潤度を算出した。
メチルエチルケトン不溶解分量(単位:重量%)=(浸漬後の乾燥フィルムの重量(W3)/浸漬前の乾燥フィルムの重量(W1))×100 (1)
メチルエチルケトンに対する膨潤度(単位:倍)=(膨潤フィルムの重量(W2)/浸漬後の乾燥フィルムの重量(W3)) (2)
【0078】
ラテックス組成物中の凝集物量(配合30分後)
実施例および比較例において得られたラテックス組成物(固形分濃度:30重量%)を、30℃の条件下で30分間攪拌した。その後、ラテックス組成物200gを取り出し、ASTM標準ふるい(200メッシュ)を用いて、発生した凝集物を濾過した。そして、ふるい上の凝集物を乾燥して、乾燥後の凝集物の重量を秤量し、ラテックス組成物の固形分に対する割合を百分率で求め、これを凝集物量とし、以下の基準で評価した。
○:凝集物量が5重量%未満
×:凝集物量が5重量%以上
なお、凝集物量が5重量%以上の場合には、ディップ成形体などの膜成形体とした場合にも、成形体中に凝集物が含まれてしまい、ピンホールや凹凸発生の原因となり、満足な成形体が得られなくなってしまう。
【0079】
ラテックス組成物中の凝集物量(配合3日後)
実施例および比較例において得られたラテックス組成物(固形分濃度:30重量%)を3日間保存した後、30℃の条件下で30分間攪拌した。その後、ラテックス組成物200gを取り出し、ASTM標準ふるい(200メッシュ)を用いて、発生した凝集物を濾過した。そして、ふるい上の凝集物を乾燥して、乾燥後の凝集物の重量を秤量し、ラテックス組成物の固形分に対する割合を百分率で求め、これを凝集物量とし、以下の基準で評価した。
○:凝集物量が5重量%未満
×:凝集物量が5重量%以上
なお、上記と同様に、凝集物量が5重量%以上の場合には、ディップ成形体などの膜成形体とした場合にも、成形体中に凝集物が含まれてしまい、ピンホールや凹凸発生の原因となり、満足な成形体が得られなくなってしまう。
【0080】
引張強度、破断時伸び、500%伸長時の応力
実施例および比較例において得られたディップ成形体としてのゴム手袋から、ASTM D−412に準じてダンベル(Die−C:ダンベル社製)を用いて、ダンベル形状の試験片を作製した。次いで、得られた試験片を、引張速度500mm/分で引っ張り、破断時の引張強度、破断時の伸び、および500%伸長時の応力を測定した。引張強度および破断時伸びは高いほど好ましく、また、500%伸長時の応力が小さいほど、柔軟な風合いとなるため、好ましい。
【0081】
応力保持率
実施例および比較例において得られたディップ成形体としてのゴム手袋から、ASTM D−412に準じてダンベル(Die−C:ダンベル社製)を用いて、ダンベル形状の試験片を作製し、該試験片の両端に速度500mm/分にて引張応力をかけ、該試験片の標準区間20mmが2倍(100%)に伸張した時点で伸張を止めると共に引張応力M100(0)を測定し、また、そのまま6分間経過した後の引張応力M100(6)を測定した。そして、M100(0)に対するM100(6)の百分率(すなわち、M100(6)/M100(0)の百分率)を応力保持率とした。応力保持率は大きいほど、手袋の使用に伴う、へたり(緩みやたるみ)が起きにくいため好ましい。
【0082】
製造例1(カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)のラテックスの製造)
攪拌機付きの耐圧重合反応容器に、1,3−ブタジエン63部、アクリロニトリル34部、メタクリル酸3部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.25部、脱イオン水132部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム1部、次亜硫酸ナトリウム0.01部を仕込み、重合反応容器温度を5℃に保持した。その後、イオン交換水6部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.020部、硫酸第一鉄0.002部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート0.003部を混合したものを重合反応容器に添加し、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド0.004部添加して温度5℃に保持して重合を開始した。そして、重合転化率が95%になるまで反応させ、その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。なお、重合反応中における、反応系の温度は5〜10℃の範囲で保たれていた。そして、得られた共重合体のラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHとを調整することで、固形分濃度40重量%、pH8.0のカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)のメチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトンに対する膨潤度を測定した結果、メチルエチルケトン不溶解分量は80重量%、メチルエチルケトンに対する膨潤度は45倍であった。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)の組成は、1,3−ブタジエン単位63重量%、アクリロニトリル単位34重量%、メタクリル酸単位3重量%であった。
【0083】
製造例2(カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2−1)のラテックスの製造)
攪拌機付きの耐圧重合反応容器に、1,3−ブタジエン63部、スチレン34部、メタクリル酸3部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部、脱イオン水132部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム1部、および次亜硫酸ナトリウム0.01部を仕込み、重合反応容器温度を10℃に保持した。その後、イオン交換水6部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05部、硫酸第一鉄0.006部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート0.05部を混合したものを重合反応容器に添加し、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.15部添加して温度10℃に保持して重合を開始した。重合転化率が50%、70%になった時点で、脱イオン交換水1.2部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部をそれぞれ重合反応容器に添加した。そして、重合転化率が95%になるまで反応させ、その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。なお、重合反応中における、反応系の温度は10〜15℃の範囲で保たれていた。そして、得られた共重合体のラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHとを調整することで、固形分濃度40重量%、pH8.0のカルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2−1)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2−1)のメチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトンに対する膨潤度を測定した結果、メチルエチルケトン不溶解分量は70重量%、メチルエチルケトンに対する膨潤度は60倍であった。得られたカルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2−1)の組成は、1,3−ブタジエン単位63重量%、スチレン単位34重量%、メタクリル酸単位3重量%であった。
【0084】
製造例3(カルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3−1)のラテックス)
攪拌機付きの耐圧重合反応容器に、1,3−ブタジエン97部、メタクリル酸3部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部、脱イオン水135部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム1部、次亜硫酸ナトリウム0.01部を仕込み、重合反応容器温度を10℃に保持した。その後、イオン交換水6部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄0.008部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート0.05部を混合したものを重合反応容器に添加し、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.05部添加して温度10℃に保持して重合を開始した。重合転化率が60%、80%になった時点で、脱イオン交換水1.2部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部をそれぞれ重合反応容器に添加した。また、重合転換率60%になった時点で、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.01部添加した。そして、重合転化率が95%になるまで反応させ、その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。なお、重合反応中における、反応系の温度は10〜15℃の範囲で保たれていた。そして、得られた共重合体のラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHとを調整することで、固形分濃度40重量%、pH8.0のカルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3−1)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3−1)のメチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトンに対する膨潤度を測定した結果、メチルエチルケトン不溶解分量は65重量%、メチルエチルケトンに対する膨潤度は80倍であった。得られたカルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3−1)の組成は、1,3−ブタジエン単位97重量%、メタクリル酸単位3重量%であった。
【0085】
製造例4(カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1’−2)のラテックスの製造)
攪拌機付きの耐圧重合反応容器に、1,3−ブタジエン63部、アクリロニトリル34部、メタクリル酸3部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.25部、脱イオン水132部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム1部、過硫酸カリウム0.3部、およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.005部を仕込み、重合温度を37℃に保持して重合を開始した。そして、重合転化率が70%になった時点で、重合温度を43℃に昇温し、継続して重合転化率が95%になるまで反応させ、その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。そして、得られた共重合体のラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHとを調整することで、固形分濃度40重量%、pH8.0のカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1’−2)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1’−2)のメチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトンに対する膨潤度を測定した結果、メチルエチルケトン不溶解分量は80重量%、メチルエチルケトンに対する膨潤度は25倍であった。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1’−2)の組成は、1,3−ブタジエン単位63重量%、アクリロニトリル単位34重量%、メタクリル酸単位3重量%であった。
【0086】
製造例5(カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2’−2)のラテックスの製造)
攪拌機付き耐圧容器に、脱イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3部、t−ドデシルメルカプタン0.4部、1,3−ブタジエン63部、スチレン34部、およびメタクリル酸3部仕込み、モノマーエマルジョンを得た。これとは別の攪拌機付きの耐圧重合反応容器に、脱イオン交換水40部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部、重炭酸ソーダ0.35部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05部を仕込み、攪拌混合しながら70℃に昇温した。そして、これに過硫酸カリウム0.5部添加した後、直ちに、上記にて得られたモノマーエマルジョンの添加を開始し、攪拌混合しながら5時間かけて連続添加した。モノマーエマルジョン添加終了後、過硫酸カリウム0.2部を3重量%水溶液にて添加し、重合転化率が90%になったときに、85℃に昇温して、さらに3時間反応を継続し重合転化率が95%の時点で重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。そして、得られた共重合体のラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHとを調整することで、固形分濃度40重量%、pH8.0のカルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2’−2)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2’−2)のメチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトンに対する膨潤度を測定した結果、メチルエチルケトン不溶解分量は85重量%、メチルエチルケトンに対する膨潤度は14倍であった。得られたカルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2’−2)の組成は、1,3−ブタジエン単位63重量%、スチレン単位34重量%、メタクリル酸単位3重量%であった。
【0087】
製造例6(カルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3’−2)のラテックス)
攪拌機付きの耐圧重合反応容器に、1,3−ブタジエン97部、メタクリル酸3部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.8部、脱イオン水132部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム1部、過硫酸カリウム0.3部、およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.005部を仕込み、重合温度を37℃に保持して重合を開始した。そして、重合転化率が70%になった時点で、重合温度を43℃に昇温し、継続して重合転化率が95%になるまで反応させ、その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。そして、得られた共重合体のラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHとを調整することで、固形分濃度40重量%、pH8.0のカルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3’−2)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3’−2)のメチルエチルケトン不溶解分量およびメチルエチルケトンに対する膨潤度を測定した結果、メチルエチルケトン不溶解分量は45重量%、メチルエチルケトンに対する膨潤度は70倍であった。得られたカルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3’−2)の組成は、1,3−ブタジエン単位97重量%、メタクリル酸単位3重量%であった。
【0088】
実施例1
ラテックス組成物の調製
製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)のラテックス250部(カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)換算で100部)に、アルミン酸ナトリウム0.2部、ソルビトール0.4部、グリコール酸ナトリウム0.4部を水溶させた混合水溶液を加えた。そして、これに脱イオン水および5重量%水酸化カリウム水溶液を加えて、固形分濃度を30重量%に、pHを9.2に調整することで、ラテックス組成物を得た。そして、得られたラテックス組成物について、上記方法にしたがい、凝集物量(配合30分後および配合3日後)を測定した。
【0089】
ディップ成形体の製造
硝酸カルシウム30部、ノニオン性乳化剤であるポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル0.05部および水70部を混合することにより、凝固剤水溶液を調製した。次いで、この凝固剤水溶液に、予め70℃に加温したセラミック製手袋型を5秒間浸漬し、引上げた後、温度70℃、10分間の条件で乾燥して、凝固剤を手袋型に付着させた。そして、凝固剤を付着させた手袋型を、上記にて得られたラテックス組成物に10秒間浸漬し、引上げた後、50℃の温水に90秒間浸漬して、水溶性不純物を溶出させて、手袋型にディップ成形層を形成した。
次いで、ディップ成形層を形成した手袋型を、温度125℃、25分間の条件で加熱処理してディップ成形層を架橋させ、架橋したディップ成形層を手袋型から剥し、ディップ成形体(ゴム手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(ゴム手袋)について、上記方法にしたがって、引張強度、破断時伸び、500%伸長時の応力、および応力保持率の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0090】
実施例2
ラテックス組成物を調製する際に、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)のラテックスに代えて、製造例2で得られたカルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2−1)のラテックス250部(カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2−1)換算で100部)を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
実施例3
ラテックス組成物を調製する際に、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)のラテックスに代えて、製造例3で得られたカルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3−1)のラテックス250部(カルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3−1)換算で100部)を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
実施例4
アルミン酸ナトリウムの配合量を0.2部から0.5部に、ソルビトールの配合量を0.4部から0.75部に、グリコール酸ナトリウムの配合量を0.4部から0.75部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
比較例1
ラテックス組成物を調製する際に、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)のラテックスに代えて、製造例4で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1’−2)のラテックス250部(カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1’−2)換算で100部)を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
比較例2
ラテックス組成物を調製する際に、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)のラテックスに代えて、製造例5で得られたカルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2’−2)のラテックス250部(カルボキシル基含有スチレン−ブタジエンゴム(a2’−2)換算で100部)を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
比較例3
ラテックス組成物を調製する際に、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1−1)のラテックスに代えて、製造例6で得られたカルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3’−2)のラテックス250部(カルボキシル基含有ブタジエンゴム(a3’−2)換算で100部)を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
比較例4
ラテックス組成物を調製する際に、アルミン酸ナトリウム、ソルビトールおよびグリコール酸ナトリウムを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
比較例5
ラテックス組成物を調製する際に、ソルビトールおよびグリコール酸ナトリウムを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1から、以下のことが確認できる。
すなわち、0〜25℃にて乳化重合することにより得られたカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物(B)およびアルコール性水酸基含有化合物(C)を配合してなるラテックス組成物は、凝集物量が5重量%未満であり、ラテックス組成物としての安定性に優れ、このようなラテックス組成物を用いて得られたディップ成形体(ゴム手袋)は、引張強度および伸びが大きく、柔軟な風合いであり(500%伸長時の応力が小さい)、高い応力保持率を備えるものであった(実施例1〜4)。
【0100】
37℃〜70℃で乳化重合することにより得られたカルボキシル基含有共役ジエン系ゴムを使用した場合には、得られるラテックス組成物は、凝集物量が5重量%未満となるものの、このようなラテックス組成物を用いて得られたディップ成形体(ゴム手袋)は、引張強度に劣るものであった(比較例1〜3)。
また、3価以上の金属を含む金属化合物(B)およびアルコール性水酸基含有化合物(C)を配合しなかった場合には、得られるラテックス組成物は、凝集物量が5重量%未満となるものの、このようなラテックス組成物を用いて得られたディップ成形体(ゴム手袋)は、引張強度および応力保持率に劣るものであった(比較例4)。
さらに、アルコール性水酸基含有化合物(C)を配合しなかった場合には、得られるラテックス組成物は、凝集物量が5重量%以上となってしまい、このようなラテックス組成物を用いて得られたディップ成形体(ゴム手袋)は、ディップ成形体中に凝集物が多く含まれてしまい、ディップ成形体としての評価ができないものであった(比較例5)。