特許第6787021号(P6787021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787021
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20201109BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-200293(P2016-200293)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-61606(P2018-61606A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】渡部 考信
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 晴之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 紀美香
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/076973(WO,A1)
【文献】 特開平09−140706(JP,A)
【文献】 特開2015−202401(JP,A)
【文献】 特開2013−052023(JP,A)
【文献】 特開2010−088610(JP,A)
【文献】 特開2008−301893(JP,A)
【文献】 特開2008−295749(JP,A)
【文献】 特開2006−204622(JP,A)
【文献】 特開平05−244690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱線を螺旋状に巻回してなるコイルが内包され、放熱機能を有するブッシュを備え
前記ブッシュは、伝熱性粉体が混合された樹脂材料により形成され、
前記コイルは、前記ブッシュの内壁と接するように設けられている
ケーブル。
【請求項2】
前記ブッシュは、屈曲によるケーブルの断線を抑制可能に設けられている
請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記伝熱線は、ケーブルに取り付けられた熱源に接続され、前記熱源からの熱を受容するように構成されている
請求項1または2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記ブッシュの表面は平坦な面である
請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項5】
超音波深触子に用いられる
請求項1〜4のいずれか一項に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端部にブッシュを有するケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波深触子(超音波プローブ、エコープローブ、以下では単に「プローブ」ともいう。)と、制御部と、を有している。プローブは、圧電素子および集積回路(IC)を有する圧電部と、圧電部に取り付けられたケーブルと、を有し、圧電部と、ケーブルの少なくとも一部と、はハウジング内に収容されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−123536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の超音波診断装置に通電すると、圧電部が作動して圧電部が発熱する。圧電部の熱をプローブ外へ放熱させるため、ハウジングの表面から放熱できるようにハウジングを構成したり、ハウジング内に設けられたシールドに放熱機能を持たせたりしている。しかしながら、これらの放熱だけでは、放熱が不充分であることがあり、その結果、ハウジングが加熱されて被検査者が火傷するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、プローブの放熱を補助することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
伝熱線を螺旋状に巻回してなるコイルが内包され、放熱機能を有するブッシュを有するケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プローブの放熱を補助することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、本発明の一実施形態にかかるケーブルを有する超音波診断装置の概略図の一例を示す図であり、(b)は、図1(a)に示す超音波診断装置の断面概略図の一例を示す図である。
図2図1(b)の点線Aで示す箇所の拡大図の一例を示す図である。
図3図1(a)に示す超音波診断装置が有するケーブルのC−C’断面構成図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の一実施形態>
(1)超音波深触子の構成
超音波深触子(プローブ)の構成について、図1を参照しながら説明する。
【0010】
図1(a)に示すように、超音波診断装置1は、プローブ2と、制御部3と、を有している。図1(b)に示すように、プローブ2は、一端が圧電部21に取り付けられ(接続され)、他端が制御部3に接続されたケーブル22と、圧電部21およびケーブル22の一端部分を収容し、操作者の把持部となるハウジング23と、を有している。圧電部21は、圧電素子と、圧電素子から受信した超音波を電気信号に変換する集積回路(ICチップ)と、を有している。ケーブル22は、圧電部21と制御部3との間で電気信号を伝送可能なように構成されている。ハウジング23には、ハウジング23内に収容された圧電部21の表面を露出させる開口が形成されており、この開口から露出された圧電部21を測定対象物(例えば人の体)と接触させることとなる。超音波診断装置1では、圧電部21が測定対象物と接することで得た超音波を圧電部21で電気信号に変換し、この電気信号がケーブル22内を伝送して制御部3に送られ、制御部3で情報処理や画像処理等が行われる。
【0011】
(2)ケーブルの構成
上述のケーブル22として、ブッシュ付きケーブルが用いられる。以下では、このブッシュ付きケーブルの構成について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態にかかるケーブル22の一方の端部には、ブッシュ(ケーブルブッシュ)24が取り付けられている。ブッシュ24の取り付けは、ブッシュ24に形成された貫通孔24a内にケーブル22を挿通させることで行われる。
【0013】
ブッシュ24は、プローブ2を動かした際にハウジング23の根元箇所の近傍(例えば図1(a)の点線Bの箇所)でのケーブル22の曲げ半径(曲率半径)が所定値以下にならないように制御するためのものである。というのも、プローブ2が動いた際、ハウジング23の根元箇所の近傍でケーブル22が屈曲する回数が多く、またこの箇所でのケーブル22の屈曲は、曲げ半径が非常に小さくなるような厳しい屈曲となることが多い。このため、上述のようにブッシュ24を設けることで、ケーブル22が屈曲することによるケーブル22の断線を抑制することができる。
【0014】
ブッシュ24は、伝熱性粉体が混合された樹脂材料で形成されていることが好ましい。伝熱性粉体としては、例えばアルミナ(Al)の粉体を好適に用いることができる。樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)やシリコーンゴムを用いることができる。
【0015】
ブッシュ24は、その表面が平坦な面であることが好ましい。すなわち、ブッシュ24の表面には凹部(溝)が形成されていないことが好ましい。
【0016】
図2に示すように、ブッシュ24内(貫通孔24a内)には、伝熱線を螺旋状(スパイラル状)に巻回してなるコイル25が内包されている。
【0017】
コイル25は、コイル25に加わった力に応じて変形し、またコイル25に加わった力が除去されると元の形に戻るという特性、すなわちバネ性を有している。これにより、ケーブル22の動きにブッシュ24を追従させることができる。すなわち、ブッシュ24の追従性を確保することができる。また、ブッシュ24が繰り返し屈曲した場合であっても、ブッシュ24に加わった力が除去されるとブッシュ24が元の形状(屈曲していない形状)に自力で戻ることを長期にわたって確保することができる。すなわち、ブッシュ24の耐屈曲性を確保することができる。
【0018】
コイル25は、ブッシュ24に形成された貫通孔24a内に、貫通孔24a内を挿通するケーブル22の側周を囲うように設けられている。また、コイル25はブッシュ24の内壁24bと接するように設けられていることが好ましい。
【0019】
伝熱線は、例えば上述の圧電部21で発生した熱をブッシュ24内に導くことができる線(線材)である。伝熱線は、優れた熱伝導性(高い熱伝導率)を有するとともに、ブッシュ24の追従性やブッシュ24の耐屈曲性をより高める観点から、高い強度(引張強度)を有していることが好ましい。このような伝熱線として、銅線や銅合金線等を用いることができる。銅線の方が銅合金線よりも高い熱伝導率を有する点で好ましく、銅合金線の方が銅線よりも高い強度を有する点で好ましい。
【0020】
コイル25は、銅線等の伝熱線26を用いて、ケーブル22に取り付けられた熱源(例えば圧電部21)に接続され、熱源からの熱を受容するように構成されている。この伝熱線26は、ハウジング23の表面やハウジング23内に設けられたシールド等のプローブ2が従来から有する放熱経路とは異なる新たな放熱経路となる。すなわち、この伝熱線26は熱源からの熱伝導のバイパス路として機能する。伝熱線としては、例えば上述したコイル25を構成する伝熱線と同様のものを用いることができる。伝熱線26は、コイル25を構成する伝熱線と同一の線であってもよく、異なる線であってもよい。伝熱線26は、例えば図1(a)に示すようにハウジング23の外周面上に這わせるように設けられている。
【0021】
上述のケーブル22としては、例えば図3に示すように、心線ユニット31と、バインドテープ32と、シース33と、シールド34と、を有するケーブルを用いることができる。心線ユニット31は、電気信号を伝送可能な複数本の同軸ケーブル35等を撚り合わせてなる。同軸ケーブルとは、例えば、電気信号の伝送路となる内部導体と、内部導体の側周を囲うように設けられた絶縁層と、絶縁層の側周を囲うように設けられてシールドとして機能する外部導体と、外部導体の側周を囲うように設けられた外被(ジャケット)と、を有するケーブルである。バインドテープ32は、複数の心線ユニット32を撚り合わせた撚線を束ねるためのものであり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等で形成された樹脂テープからなる。シールド33は、複数の心線ユニット31(バインドテープ32が設けられている場合はバインドテープ32)の側周を囲う(被覆する)ように設けられている。シールド33として、銅を含む素線(例えば銅線)等を編み組みして形成した編組シールド等を用いることができる。シース34は、シールド33の側周を囲う(被覆する)ように設けられている。シース34は、例えば医療用絶縁樹脂で形成されている。医療用絶縁樹脂とは、毒性がなく生体と接触した際に炎症等のアレルギー症状を発生させることがない、生体適合性を有する(バイオコンパチビリティーが高い)樹脂であり、医療用樹脂、医療グレードの樹脂とも呼ばれるものである。このような医療用絶縁樹脂として、例えば医療用グレードのPVC(ポリ塩化ビニル)を用いることができる。
【0022】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0023】
(a)ブッシュ24内に伝熱線からなるコイル25を内包させ、ブッシュ24に放熱機能を持たせることで、上述のプローブ2において熱源となる圧電部21で発生した熱をブッシュ24内に受容した後ブッシュ24(プローブ2)外へ放熱することができる。すなわち、プローブ2の放熱を補助(アシスト)することができる。これにより、超音波診断装置1の使用時に操作者の把持部であるハウジング23が加熱されることを抑制できる。
【0024】
なお、ブッシュ24に放熱機能を持たせずに、熱源からの熱を例えばケーブル22が有するシールド33に受容させるように構成することも考えられる。しかしながら、上述のようにシールド33の外周には、厚さが厚い(例えば0.5mm〜1mm)シース34が設けられているため、シールド33が受容した熱がケーブル22外に放熱されにくいという問題がある。特にシース33とシールド34との間に空隙が形成されていると、空隙内に熱が溜まりやすくなるため、上述の問題がより顕著になる。
【0025】
(b)ブッシュ24に放熱機能を持たせることで、プローブ2のさらなる小型化を実現できるとともに、超音波診断装置1が有する表示部に表示する画像をより高画質なものにすることができる。
【0026】
というのも、プローブ2の小型化のためにハウジング23を小型にすると、ハウジング23の表面積が小さくなり、その結果、ハウジング23の表面からの放熱量が減少してしまう。ブッシュ24に放熱機能を持たせることで、プローブ2を小型にすることにより減少した放熱量をブッシュ24で補うことができ、プローブ2を小型にする前と同程度かそれ以上の放熱量を確保することができる。これにより、従来では困難であったプローブ2のさらなる小型化を実現できる。
【0027】
また、近年、上述の表示部に表示する画像をより高画質なものにすることが要求されている。例えば、上述の画像の解像度をさらに高くしたり、上述の画像の表示を3D表示やアニメーション表示にしたり、圧電部21においてビームフォーミング制御を行ったりすることが要求されている。上述の画像を高画質なものにすると、圧電部21での発熱量が増加する。このような場合であっても、ブッシュ24に放熱機能を持たせることで、プローブ2全体での放熱量を従来のプローブよりも増加させることができるため、圧電部21で発生した熱をプローブ2外へ確実に放熱することができる。
【0028】
(c)伝熱性粉体を混合した樹脂材料でブッシュ24を形成することで、ブッシュ24の放熱機能をより高めることができる。
【0029】
なお、一般的には、上述の伝熱性粉体を混合した樹脂材料で形成したブッシュ24は、伝熱性粉体が混合されていない樹脂材料で形成したブッシュよりも脆い(強度が低い)ため、ブッシュ24の耐屈曲性が低くなる。しかしながら、本実施形態のようにブッシュ24にコイル25を内包させることで、伝熱性粉体を混合することで低下したブッシュ24の耐屈曲性を補強することができる。その結果、伝熱性粉体を混合した樹脂材料でブッシュ24を形成した場合であっても、所定のブッシュ24の耐屈曲性を確保することができる。例えば、伝熱性粉体を混合しない樹脂材料で形成したブッシュと同程度以上の耐屈曲性を確保することができる。
【0030】
(d)コイル25をブッシュ24の内壁24bに接触させることで、コイル25が受容した熱を効率よく伝熱性粉体を介してブッシュ24外へ放熱することができる。
【0031】
(e)ブッシュ24の表面を平坦な面にすることで、その表面に凹部が形成されている場合よりもブッシュ24の表面積が小さくなるため、ブッシュ24に付着する埃の量を低減できる。また、表面に凹部を形成した場合よりも、ブッシュ24の表面に付着した埃を除去(掃除)しやすい。これらにより、本実施形態にかかるブッシュ24付きのケーブル22は、超音波診断装置1等の医療用器具(医療用装置)に好適に用いることができる。
【0032】
(f)本実施形態にかかるケーブル22は、上述のプローブ2等の熱源を把持して使用する必要がある場合に特に有効である。
【0033】
(本発明の他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0034】
上述の実施形態では、ブッシュ24内にコイル25を内包させる場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、ブッシュ24内に複数の伝熱線を編み組みしてなる編組部材を内包させてもよい。これによっても、ブッシュ24に放熱機能を持たせることができ、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。しかしながら、上述のブッシュ24の追従性やブッシュ24の耐屈曲性をより高めることができる点で、編組部材よりもコイル25を用いる方が好ましい。
【0035】
上述の実施形態では、熱源(圧電部21)とコイル25とを、ハウジング23の外周面に設けられた伝熱線26を介して接続する場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、ハウジング23内に設けられた放熱機能を有するシールドと、コイル25と、をハウジング23内で接続してもよい。これによっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0037】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
伝熱線を螺旋状に巻回してなるコイルが内包され、放熱機能を有するブッシュを備えるケーブルが提供される。
【0038】
[付記2]
本発明の他の態様によれば、
複数の伝熱線を編み組んでなる編組部材が内包され、放熱機能を有するブッシュを備えるケーブルが提供される。
【0039】
[付記3]
付記1または2のケーブルであって、好ましくは、
前記ブッシュは、伝熱性粉体が混合された樹脂材料により形成されている。
【0040】
[付記4]
付記1〜3のいずれかのケーブルであって、好ましくは、
前記伝熱線(前記コイルまたは前記編組部材)は、ケーブルに取り付けられた熱源に接続され、前記熱源からの熱を受容するように構成されている。
【0041】
[付記5]
付記1〜4のいずれかのケーブルであって、好ましくは、
前記ブッシュの表面は平坦な面である。
【0042】
[付記6]
付記1〜5のいずれかのケーブルであって、好ましくは、
超音波深触子に用いられる。
【符号の説明】
【0043】
1 超音波診断装置
2 プローブ
22 ケーブル
24 ブッシュ
25 コイル
図1
図2
図3