(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外周縁に直交する断面で、前記第1板は前記第1主表面の端部から前記第1主表面に対し斜めに延びる第2直線状面取り部を有し、前記第1直線状面取り部の端部と前記第2直線状面取り部の端部とは円弧状面取り部で繋がれている請求項1から3のいずれか一項に記載の積層板。
前記中間膜の端部における断面形状は、前記中間膜の厚みの中心を通り、前記第2主表面及び前記第3主表面と平行な線を中心に、非対称である請求項1から5のいずれか一項に記載の積層板。
前記積層板の重心における法線を含む断面のうち、前記第1主表面の曲率半径が最大となる断面を横断面とすると、前記横断面において、前記中間膜による接合が解除される場合に、前記第2主表面は前記第3主表面よりも小さい曲率半径を有する請求項1から10のいずれか一項に記載の積層板。
前記積層板の重心における法線を含む断面のうち、前記第1主表面の曲率半径が最大となる断面を横断面、前記横断面に対し直交する断面を縦断面とすると、前記横断面及び前記縦断面の両方において、前記中間膜による接合が解除される場合に、前記第2主表面は前記第3主表面よりも小さい曲率半径を有する請求項1から11のいずれか一項に記載の積層板。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態に係る積層板について説明する。なお、以下の説明において、一例として、車両用摺動窓として用いられる合わせガラスの場合について記すが、本発明はこれに限定されない。例えば、建築用の窓ガラス、グレージング、プラスチック板及び車両の内装又は外装に用いられる化粧板などであってもよい。
【0012】
また車両用窓として、例えばフロントガラス、摺動窓、嵌め込み窓、リアガラス、ルーフガラスなどであってもよい。
【0013】
また、形態を説明するための図面において、図内左下に矢印で座標を定義しており、必要があればこの座標を用いて説明する。また、本明細書において「X方向」とは、X座標を示す矢印の根元から先端に向かう方向だけでなく、180度反転した先端から根元に向かう方向も指すものとする。「Y方向」「Z方向」も同様に、それぞれY、Z座標を示す矢印の根元から先端に向かう方向だけでなく、180度反対とした先端から根元に向かう方向も指すものとする。本明細書において、X方向及びY方向は平面方向、Z方向は板厚方向ともいう。
【0014】
また、本明細書において、「平行」、「垂直」などの用語は、本発明の効果を損なわない程度のズレを許容するものである。例えば、厳密な意味での平行、垂直の位置関係を基準として、±5°程度の誤差は許容する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である、摺動する車両用合わせガラス102が車両に組み付けられた状態を示す構成図である。
【0016】
本実施形態において、車両用合わせガラス102は、車両のドアに装着されるものであって、昇降装置120により、窓枠130に沿って上下に昇降されるものである。特に、窓枠130のうち、車両用合わせガラス102の側辺を支持する部分をガラスラン131ともいう。昇降装置120は、アーム式レギュレータであり、二本のアーム121、122、昇降レール123、固定レール124及びレギュレータなどから構成されている。なお、図中の破線は車両のドアの開口部の下端の位置(ベルトライン)を模式的に示している。
【0017】
二本のアーム121、122は、支点125を軸にして回動可能に互いに連結されている。昇降レール123は、水平方向に延在しており、車両ドアに対して上下に昇降可能なレールである。アーム121、122の上端は共に、昇降レール123に水平方向にスライド可能に取り付けられている。また、固定レール124は、水平方向に延在しており、車両ドアに対して固定されたレールである。アーム121の下端は、固定レール124に水平方向にスライド可能に取り付けられており、アーム122の下端は、ギヤ126を介してレギュレータに接続されている。係る構成において、レギュレータを介してギヤ126が駆動されると、アーム121、122が支点125を軸にして回動することで、昇降レール123が昇降される。
【0018】
車両用合わせガラス102は、下辺103にホルダ127が装着され、昇降装置120の昇降レール123に取り付けられる。
【0019】
このような状態で車両用合わせガラス102を上下に摺動させた場合、合わせガラス102の側辺105a、105bは常に窓枠130の一部であるガラスラン131と摺動する摺動辺である。また、合わせガラス102の上辺104も、合わせガラス102を閉じる際に、窓枠130と摺動する摺動辺である。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態の積層板である合わせガラスの平面図である。
図3は、本発明の第1実施形態の合わせガラスのA−A断面図である。以下、A−A断面のことを外周縁に直交する断面ともいう。
【0021】
合わせガラス102は、第1ガラス板201と、第1ガラス板201と中間膜203を介して接合される第2ガラス板202とを備える。
【0022】
第1ガラス板201は、中間膜203とは反対側に配される第1主表面211と、中間膜203に接する第2主表面212とを備える。
【0023】
第2ガラス板202は、中間膜203に接する第3主表面213と、中間膜203とは反対側に配される第4主表面214とを備える。
【0024】
なお、中間膜203は、特に限定されない。単層の中間膜でもよく、複数の層が重ね合わされた中間膜であってもよい。また、例えば断面楔状ように、板厚が部位によって異なる中間膜でもよい。
【0025】
なお、本願は2枚のガラス板が積層された合わせガラスに限定されない。2枚以上のガラス板が中間膜を介して接合された合わせガラスであってよい。
【0026】
また、合わせガラス102の外端部には、樹脂枠体が取り付けられていてもよい。
【0027】
第1ガラス板201の板厚は、第2ガラス板202の板厚よりも厚い。第2ガラス板202の板厚は、0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3mm以上0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以上0.7mm以下である。
【0028】
第2ガラス板202の板厚を1.0mm以下とすることにより、合わせガラス102を軽量化できる。また、第2ガラス板202の板厚を0.2mm以上とすることにより、曲げ剛性が高まり、第2ガラス板202の運搬時に作業者が取り扱いやすい。
【0029】
また遮音性の観点からは、第2ガラス板202の板厚は、0.4mm以上1.8mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以上1.6mm以下、さらに好ましくは0.7mm以上1.6mm以下、さらに好ましくは0.8以上1.3mm以下である。このようにすることで、合わせガラス102を軽量化しつつ、遮音性の低下を抑制できる。
【0030】
また、第1ガラス板201の板厚は、1.7mm以上4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは2.0mm以上3.7mm以下、さらに好ましくは2.5mm以上3.5mm以下である。
【0031】
第1ガラス板201の板厚を4.0mm以下とすることで、合わせガラス102を軽量化できる。また、第1ガラス板201の板厚を1.5mm以上とすることで、合わせガラス102に充分な曲げ剛性が得られる。
【0032】
また遮音性の観点からは、第1ガラス板201の板厚は、1.5mm以上3.5mm以下であることが好ましく、おり好ましくは1.5mm以上2.8mm以下、さらに好ましくは1.5mm以上2.5mm以下である。このようにすることで、合わせガラス102を軽量化しつつ、遮音性の低下を抑制できる。
【0033】
また、第2ガラス板202の板厚を、第1ガラス板201の板厚で除した値が、0.1以上0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.13以上0.48以下、さらに好ましくは0.15以上0.45以下である。第2ガラス板202の板厚を、第1ガラス板201の板厚で除した値が、0.1以上0.5以下であることにより、剛性が高く、かつ軽量な合わせガラス102が得られる。
【0034】
また遮音性の観点からは、第2ガラス板202の板厚を、第1ガラス板201の板厚で除した値が、0.5より大きく0.9以下であることが好ましく、より好ましくは、0.55以上0.85以下、さらに好ましくは0.6以上0、8以下である。第2ガラス板202の板厚を、第1ガラス板201の板厚で除した値が、0.5より大きく0.9以下であることにより、軽量化しつつ、遮音性の低下を抑制できる合わせガラス102が得られる。
【0035】
また、
図3で示すように、合わせガラス102の側辺105aの少なくとも一部において、第1ガラス板201は、端部に、面取りされた第1面取り領域204を備える。
【0036】
第1ガラス板201は、第2主表面212の端部から第2主表面212に対し斜めに延びる第1直線状面取り部206を備える。
【0037】
第2ガラス板202は、第1直線状面取り部206の延長線207(
図3中の一点鎖線)よりも、面内側に位置する。面内側とは、ガラス板の重心により近い位置を指す。
【0038】
このような構成とすることで、第1ガラス板201の第1直線状面取り部206及びその延長線207よりも面内側は、物体と接触しにくい。したがって合わせガラス102の端部に物体が衝突した場合でも、第2ガラス板202の端部が破損しにくくなる。
【0039】
また、窓枠130と合わせガラス102の間に異物を挟み込みながら合わせガラス102を摺動させた場合、異物(例えば小枝や車のキーなど)は、第1直線状面取り部206及びその延長線207に沿った角度の姿勢に維持される。そのため、第2ガラス板202の端部が異物と接触しにくく、第2ガラス板202の端部が破損しにくくなる。
【0040】
第1直線状面取り部206と、第2主表面212とがなす第1角度αは、0度より大きく40以下であることが好ましく、より好ましくは5度以上35度以下、さらに好ましくは8度以上30度以下である。
【0041】
第1角度αが40度以下であれば、第2主表面212と第1直線状面取り部206とが滑らかに繋がるため、その境界に角が生じにくくなる。
【0042】
また、第1角度αが5度以上であれば、砥石の端面形状とガラス端部が安定して擦れ合えるため、製造過程でガラス板が割れてしまうことを抑制できる。
【0043】
なお、本実施形態のように直線状面取り部を有さず、円弧状面取り部のみから形成されたものは、仮に第1角度αを定めるとすれば、0度となる。
【0044】
また、外周縁に直交する断面において、第1直線状面取り部206の長さは、0.05mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.15mm以上である。このようにすることで、より板厚が薄い第2ガラス板202の端部が異物と接触しにくくなり、板厚が薄い第2ガラス板202の端部が破損しにくくなる。
【0045】
また、本明細書において第1直線状面取り部206とは、厳密な直線だけでなく、ほぼ直線に近似できる円弧状も含むものとする。ほぼ直線に近似できる円弧状とは、特に限定されないが、例えば、矢高が1×10
−1オーダー以下である。
【0046】
第1ガラス板201の面取りは、従来公知の面取り手段を使用して実現できる。例えば、第1ガラス板201を糸面取りして、第1直線状面取り部206及び/又は第2直線状面取り部208を形成してよい。また、その後に面取りホイールを用いて円弧状面取り部209を形成してよい。あるいは、予め第2直線状面取り部208と円弧状面取り部209に対応する形状の面取りホイールを用意し、第1ガラス板201を押し付けて面取りしても良い。
【0047】
なお、第2主表面212側だけでなく、第1主表面211側も同様に第2直線状面取り部208を有してよい。本実施形態では、第1ガラス板201の板厚の中心を通り第1及び第2主表面211、212に平行な線を中心として、対称形で例示した。このような構成であれば、第1ガラス板201の中間膜203と貼り合わせる側が限定されないため、製造時及び中間膜203の貼り合わせ時に取り扱いが容易になる。
【0048】
また、第1直線状面取り部206の第2主表面212とは反対側の端部と、第1主表面211又は第2直線状面取り部208とは、円弧状面取り部209によって、繋がれてよい。端面を円弧状に面取りすることによって角が無くなり、第1ガラス板201がより破損しにくくなる。
【0049】
なお、第2ガラス板202は、端部に、面取りされた第2面取り領域230を備えてよい。第2ガラス板202の面取り形状は、特に限定されない。第1ガラス板201と同様でもよい。
【0050】
本実施形態において、中間膜203は、第2ガラス板202の第2面取り領域230の中間膜203側の少なくとも一部を覆う。その結果、中間膜203の端部における断面形状は、中間膜203の厚みの中心を通り、第2主表面212及び第3主表面213と平行な線221を中心に、非対称である。これにより第2ガラス板202の剥がれ、及び合わせガラス102の端部における発泡を抑制できる。
【0051】
また、中間膜203は、第1直線状面取り部206の延長線207(
図3中の一点鎖線)よりも、面内側に位置する。これにより、合わせガラス102の端部に物体が衝突した場合及び窓枠130と合わせガラス102の間に異物を挟み込みながら合わせガラス102を摺動させた場合でも、中間膜203の端部が破損しにくくなる。中間膜203の周囲が破損すると、破損部位が乱反射して白く見えるなど、美観の低下を招く。
【0052】
また、本実施形態において、中間膜203の端部の断面輪郭線220は、第2ガラス板202の端点202Pから、第2主表面212に向かって伸び、第2主表面212と直角である。このような形状であれば、2枚のガラス板を貼り合わせた後の中間膜203の耳切り作業が容易になる。
【0053】
また、
図4、
図5、
図6は、第1実施形態の変形例である。これらは、第1実施形態とは、中間膜203の端面、及び板厚方向における断面視での断面形状で相違する。
【0054】
図4は、中間膜の端面は、第2ガラス板202の端点202Pよりも面内側にある。これにより、合わせガラス102の端部に物体が衝突した場合及び窓枠130と合わせガラス102の間に異物を挟み込みながら合わせガラス102を摺動させた場合でも、中間膜203の端部が破損しにくくなる。
【0055】
また、
図4において、中間膜203の断面輪郭線320はV字型になっており、その頂点の位置は、中間膜203の厚みの中心を通り、第2主表面212及び第3主表面213と平行な線221をよりも第2主表面側にある。このようにすることで、中間膜203の耳切り作業中に、カッターの先端の鋭利な部分が第2ガラス板202の端部に接触する可能性を低減できる。
【0056】
また、中間膜203の断面輪郭線320は、V字型の頂点周囲における接線が連続である。これにより、V字型の頂点を起点としてクラックが生じにくくなる。
【0057】
図5、
図6において、中間膜203の端面の少なくとも一部は、第2ガラス板202の端点202Pよりも面外側にある。これにより、中間膜203の耳切り作業が容易になる。また、中間膜203の耳切り作業中に、カッターの先端の鋭利な部分が第2ガラス板202の端部に接触する可能性を低減できる。
【0058】
特に
図6は、中間膜203の端面が、第2主表面側に凸の円弧状である。これにより、中間膜203の端部が目立ちにくくできる。また耳切り作業中に、カッターの先端の鋭利な部分が第2ガラス板202の端部に接触する可能性を低減できる。
【0059】
中間膜203の耳切りは、従来公知の耳切り手段を用いて達成できる。例えば、カッターや彫刻刀のような刃を用いて達成できる。また、回転する研磨シートに合わせガラス102を押し当てて、中間膜203を研削及び又は研磨してもよい。
【0060】
本実施形態において、以上のような特徴を備えるのは、合わせガラス102の側辺105aの少なくとも一部として示したが、これに限定されない。すなわち、合わせガラス102の外周縁の全周に渡ってもよい。例えば、上記のような特徴を下辺に備えた場合、合わせガラス102を自動車に組み付ける際、ベルトライン(
図1中破線)以下に合わせガラス102を差し込む時に、第2ガラス板202の端部が破損しにくくなる。また、摺動辺(側辺105a、及び/又は側辺105b、及び/又は上辺104)に備えた場合は、窓枠130と合わせガラス102の間に異物が挟まれやすいため、得られる効果が大きい。
【0061】
なお、本実施形態の特徴を満たす「外周縁の少なくとも一部」とは、露出部であってもよい。「露出部」とは、合わせガラス102の端部において、第2ガラス板202の端面と、中間膜の端面とが、外部に露出している部位を指す。合わせガラス102の端部に黒色遮蔽膜が設けられていたとしても、樹脂枠体等の他部材によって覆われていなければ、露出部とする。
【0062】
また、合わせガラス102が湾曲形状である場合、第1ガラス板201と第2ガラス板202は、従来から既知の曲げ方法によって曲げ成形されてよい。例えば、第1ガラス板201と第2ガラス板202とを重ねてリング状の金型に載置し、軟化点以上まで加熱して、自重によって曲げ成形してもよい。また、第1ガラス板201と第2ガラス板202を加熱した状態で、それぞれ、又は重ねてプレス成形してもよい。
【0063】
また、第1湾曲形状に湾曲された第1ガラス板201と、第1湾曲形状とは異なる第2形状である第2ガラス板202とが、中間膜203によって接合された合わせガラス102であってもよい。このような合わせガラス102は、2枚のガラス板のうちいずれか一方、又は2枚のガラス板が互いに、弾性変形した状態で接合されている(以下、2枚のガラス板のいずれか一方、又は2枚のガラス板を互いに弾性変形させて接合する合わせガラスの製造方法を「コールドベンド」ともいう)。
【0064】
図7は中間膜203によって接合される前の第1ガラス板201と第2ガラス板202との状態を示している。また、
図8は、
図7の状態から中間膜203によって接合された後の合わせガラス102を示している。
【0065】
合わせガラス102が、単曲の湾曲形状(シリンドリカル形状)だった場合、合わせガラス102の重心における法線を含む断面のうち、第1主表面211の曲率半径が最大となる断面を横断面とすると、横断面において、中間膜203による接合が解除される場合に、第2主表面212は第3主表面213よりも小さい曲率半径を有する。
【0066】
合わせガラス102が、複曲の湾曲形状だった場合、合わせガラス102の重心における法線を含む断面のうち、第1主表面211の曲率半径が最大となる断面を横断面、横断面に対し直交する断面を縦断面とすると、横断面及び縦断面の両方において、中間膜203による接合が解除される場合に、第2主表面212は第3主表面213よりも小さい曲率半径を有する。
【0067】
このように、第1湾曲形状に湾曲された第1ガラス板201と、第1湾曲形状とは異なる第2形状である第2ガラス板202とが、中間膜203によって接合された合わせガラス102は、弾性変形による曲げ応力を有する。特に、第1ガラス板201に比べて、第2ガラス板202の板厚が薄い場合、第2ガラス板202が主に弾性変形した状態で貼り合わされているため、第2ガラス板202に曲げ応力が形成される。第2ガラス板202の端部近傍では曲げ圧縮応力が形成され、第2ガラス板202の中央付近には、曲げ引張応力が形成される。
【0068】
なお、曲げ圧縮応力及び曲げ引張応力は、市販の表面応力計によって測定できる。第2ガラス板202が強化ガラスの場合、第2ガラス板202の第4主表面214には、残留応力と曲げ応力の両方が生じている。残留応力は、強化によるものであり、接合前に生じている。この場合、接合後の応力値を計測し、その計測値から、自然状態での第2ガラス板202の応力値を引くことで、曲げ応力が算出できる。
【0069】
例えば、第1ガラス板201を熱により曲げ成形して所望の湾曲形状に曲げ成形した後に、化学強化した平板状の第2ガラス板202を、中間膜を介して第1ガラス板201に貼り合わせてよい。例えば、第1ガラス板201は2つの直交する方向に曲がった複曲形状、第2ガラス板202は平板状でよい。第1湾曲形状を複曲形状にすることで、意匠性に優れた車両用窓ガラスが作成でき、車両デザインの多様なニーズに対応できる。第2形状を平板状とすることで、機能膜が形成しやすくなる。また、第2ガラス板202の曲げ成形工程を省略できる。
【0070】
このように、2枚のガラス板のいずれか一方を弾性変形させて接合する合わせガラスの製造方法を用いることで、以下のような利点が得られる。すなわち、従来は、機能膜が形成された湾曲形状の合わせガラス102を得るには、成形前の平板状の2枚のガラス板のいずれか一方、又は両者に機能膜を形成した後に、2枚のガラス板を軟化点付近まで加熱して曲げ成形し、接合する方法が知られていた。しかし、この方法では、機能膜がガラス板の軟化点付近まで加熱されることで、その機能が低下することがあった。
【0071】
一方、平板状の第2ガラス板202に機能膜を形成し、コールドベンドを用いて、所望の形状に曲げ成形した第1ガラス板201に接合すれば、機能膜がガラス板の軟化点付近まで加熱させずに、湾曲した合わせガラス102が得られるため、機能膜の機能が充分に発揮できる。
【0072】
また、機能膜が形成された湾曲形状の合わせガラスを得る別の方法として、ガラス板を所望の湾曲形状に曲げ成形した後に、機能膜をその表面に形成する方法があった。しかし、この方法は、平板状のガラス板に機能膜を形成するよりも難しく、工程及び装置の煩雑化を招いていた。コールドベンドを用いれば、平板状の第2ガラス板202に機能膜を形成できるため、工程及び装置を簡易化できる。
【0073】
また、コールドベンドを用いることで、第2ガラス板202を軟化点付近まで加熱して曲げ成形するという工程を省略できる。特に第2ガラス板202の板厚が1mm以下の場合、加熱による曲げ成形の精度を保つ難易度が上がるので、効果が大きい。
【0074】
また、コールドベンドで用いられる第2ガラス板202は、第1湾曲形状とは異なる、第2湾曲形状であってよい。本実施形態において、第2湾曲形状の曲率半径は、第1湾曲形状の曲率半径よりも大きい。第2ガラス板202は、加熱による曲げ成形で第2湾曲形状に曲げ成形されてもよく、化学強化の過程で曲げ成形されてもよい。
【0075】
化学強化の過程で曲げ成形するとは、具体的には、第3主表面213の化学強化の入り方を、第4主表面214よりも大きくすることで、第3主表面213が凸面、第4主表面214が凹面となるよう第2ガラス板202を曲げ成形できる。このように第2ガラス板202を化学強化の過程で曲げ成形することで、第2ガラス板202を軟化点付近まで加熱して曲げ成形するという工程を省略できる。また、第2ガラス板202を湾曲形状とすれば、第1湾曲形状との曲率半径の差が小さくなるため、コールドベンドの時に発生する曲げ応力を低減できる。
【0076】
なお、化学強化の入り方の大小は、例えば、第3主表面213のNaの量と第4主表面214のNaの量とを比較すれば明らかとなる。第3主表面213のNaの量とは、蛍光X線(XRF)によって測定されたKα軌道の強度を指し、第3主表面213の表面から深さ3μmまでのNaの量を指すものとする。第4主表面214も同様である。
【0077】
コールドベンドは、テープなどの仮止め手段によって固定された第1ガラス板201、第2ガラス板202及び中間膜の積層体と、従来公知であるニップローラー又はゴム袋などの予備圧着装置及びオートクレーブを用いることで達成できる。
【0078】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態である、合わせガラスを車両のフロントガラスとして用いた場合の平面図である。
図10は、本発明の第2実施形態である、合わせガラスを車両のフロントガラスとして用いた場合の断面図である。
【0079】
図9および
図10に示す合わせガラス102は、第1ガラス板201の第2主表面212の周縁部に黒色などの暗色不透明の遮蔽層(暗色セラミック層)250が全周にわたって帯状に形成されている点で第1の実施形態と異なっている。なお、その他の構成要素については、第1実施形態に係る車両用合わせガラス102と同様であるので、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0080】
なお、
図10では遮蔽層250は第1ガラス板201の第2主表面212に設けられている場合が例示されているが、第2ガラス板202の第3主表面213、第2ガラス板202の第4主表面214の両方、もしくはいずれか一方にも設けられていてもよい。遮蔽層250は、合わせガラス102を車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を有している。遮蔽層250は、セラミックペーストを第1ガラス板201及び/または第2ガラス板202の周縁部の面上に塗布した後に焼成することにより形成される。
【0081】
ここで、
図3〜
図6に示されているような、第1ガラス板201の第2主表面212の周縁部に遮蔽層250が形成されていない合わせガラス102の場合、合わせガラス102を車外側から見たときに、第2ガラス板202の面取り部に接着された中間膜203が乱反射してしまい、美観を損ねてしまう。
【0082】
しかしながら、第1ガラス板201の第2主表面212の周縁部に遮蔽層250を形成しておくと、第2ガラス板202の面取り部に接着された中間膜203が乱反射することがないため、美観を損なうことはない。