【文献】
ICHIMURA,Kunihiro,Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry,1987年,25,3063-3077
【文献】
VIJAYALAKSHMI,S.,Journal of Applied Polymer Science,2006年,99,1516-1522
【文献】
VIJAYALAKSHMI,S.,Designed Monomers and Polymers,2006年,9(5),425-437
【文献】
DANEL,Andrzej,Journal of Materials Chemistry,1999年,9,339-342
【文献】
RICE, Kenner C.,Journal of Medicinal Chemistry,1976年,19(7),887-892
【文献】
EPLING, Gary A.,Journal of Heterocyclic Chemistry,1987年,May-Jun,853-857
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明において「波長分散特性」とは、可視光領域の波長ごとの基材つき液晶重合体の複屈折率の分布を指す。
本発明において「正波長分散特性」とは、可視光領域の波長の増加に伴う基材つき液晶重合体のレターデーションの
減少が大き
いことを意味する。
本発明において「低正波長分散特性」とは、可視光領域の波長の増加に伴い、基材つき液晶重合体のレターデーションの
減少が低いこと、または、可視光領域の波長の増加に伴い、基材つき液晶重合体のレターデーションが
増加することを意味する。
【0048】
本発明において、「Δn」は基材つき液晶重合体の複屈折率である。
本発明において、「Δn(550)」とは波長550nmにおけるΔnである。
本発明において「Re」とは、レターデーションであり、常光に対する異常光の位相の遅れのことである。液晶重合膜の厚みをdとすると、Re=Δn・dで表される。
本発明において「Re
450」とは、波長450nmの光をフィルム面に対して垂直に入射した時のレターデーションである。
本発明において「Re
550」とは、波長550nmの光をフィルム面に対して垂直に入射した時のレターデーションである。
本発明において「Re
650」とは、波長650nmの光をフィルム面に対して垂直に入射した時のレターデーションである。
【0049】
本発明において「芳香環」とは、縮合環や環集合(ring assemblies)を含む環構造を
有するものであって、価電子の非局在化によって価電子の局在化を仮定したときよりもエネルギー的に安定な状態となる官能基である。該官能基は、酸素、窒素、または硫黄原子を有するものも含む。
本発明において有機化合物の「π電子の数」とは、有機化合物の価電子が局在化しているとみなして示した、有機化合物の価標による構造式において、{有機化合物の価標による構造式中の2重結合の個数}×2で算出した数である。
【0050】
本発明において「化合物(X)」とは、式(X)で表わされる化合物を意味する。ここで、「化合物(X)」中のXは文字列、数字、記号等である。
【0051】
本発明において「液晶化合物」とは、(A)純物質として液晶相を有する化合物および(B)液晶組成物の成分となる化合物の総称である。
【0052】
本発明において「重合性基」とは、光、熱、触媒そのほかの手段により重合し、より大きな分子量を有する化合物に変わる能力を化合物に与える官能基である。
本発明において「重合性化合物」とは、光、熱、触媒そのほかの手段により重合し、より大きな分子量を有する化合物に変わる能力を有する化合物である。
本発明において「重合性液晶化合物」とは、液晶化合物かつ重合性化合物である物である。
【0053】
本発明において「単官能化合物」とは、光、熱、触媒そのほかの手段により、大きな分子量を有する高分子へと変化させる能力を有する官能基を一つ有する化合物である。
本発明において「多官能化合物」とは、光、熱、触媒そのほかの手段により、より大きな分子量を有する高分子へと変化させる能力を有する官能基を複数有する化合物である。
本発明において「X官能化合物」とは、光、熱、触媒そのほかの手段により、より大き
な分子量を有する高分子へと変化させる能力を有する官能基をX個有する化合物である。
ここで「X官能化合物」中のXは整数である。
【0054】
本発明において、「重合性液晶組成物」とは、重合性化合物および液晶化合物を含む組成物並びに「重合性液晶化合物」を含む組成物を意味する。
本発明において、「液晶重合体」とは、重合性液晶組成物を重合して得られた部分を意味する。
本発明において、「基材つき液晶重合体」とは、基材上の重合性液晶組成物を重合して得られる、基材を含む物を意味する。
本発明において、「液晶重合膜」とは、「液晶重合体」および「基材つき液晶重合体」の総称を意味する。
本発明において、「位相差フィルム」とは、光学的異方性を有する偏光変換素子であって、主に光学素子に利用される物である。
【0055】
本発明において、「フィルム面」とは、液晶重合体と空気との面を意味する。
本発明において、「チルト角」とは、液晶分子の配向方向と基材の面の間の角度である。
本発明において、「ホモジニアス配向」とは、チルト角が0度から5度の配向である。
本発明において、「ホメオトロピック配向」とは、チルト角が、85度から90度の配向である。
本発明において、「チルト配向」とは、液晶分子の長軸の配向方向が、液晶分子が基材から離れるにしたがって、基材に対して平行から垂直に立ちあがっている状態を指す。
本発明において、「ツイスト配向」とは、液晶分子の長軸方向の配向方向が基材に対して平行ではあり、かつ、基材から離れるにしたがって、基材表面の垂線を軸として、階段状にねじれている状態をいう。
【0056】
本発明において、「固定化」とは、重合により、液晶化合物の配向が動かなくなることをいう。
【0057】
本発明において、「室温」とは、15℃から35℃を指す。
本発明において、「NI点」とは、ネマチック相から等方性液体への転移温度である。
【0058】
化合物の構造を説明する際に用いる用語「少なくとも一つの」は、位置だけでなく個数についても少なくとも一つであることを意味する。例えば、「少なくとも一つのAはB、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも一つのAがBで置き換え
られる場合、少なくとも一つのAがCで置き換えられる場合および少なくとも一つのAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。但し、少なくとも一つの−CH
2−が−O−で置き換えられてもよいとする定義には、結果として結合基−O−O−が生じるような置き換えは含まれない。また、少なくとも一つの−CH
2−が−O−で置き換えられる場合、炭素数が記載の範囲を越えることはない。
例えば、式(1)におけるQ
1は炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン
において少なくとも一つの−CH
2−は−O−などで置き換えられてもよいが、−O−などでの置き換えを含むQ
1の炭素数は、この場合20を超えない。このルールは、他の定
義についても適用する。
【0059】
化学式として、下記に示す内容の記載があった場合には、AからBへの直線は結合を意味しており、環Aにおける水素が基Bで置き換えられていて、その位置は任意であることを意味している。Xは置き換えられる基Bの数を示している。Xが0の場合は、Bは存在しない、換言すると置き換えられていないことを示す。
【化6】
【0060】
また、化学式として、下記Cに示すような基の記載があった場合には、波線部が基としての結合位置であることを意味するものとする。
【化7】
【0061】
≪重合性液晶化合物≫
本発明の一態様である重合性液晶組成物(以下、「本発明の重合性液晶組成物」と略す場合がある。)は、式(1)で表される重合性液晶化合物を少なくとも一つ含有することを特徴とする。本発明の重合性液晶組成物を利用することにより、波長450nmの光に対する複屈折率をΔn(450)、波長550nmの光に対する複屈折率をΔn(550)、波長650nmの光に対する複屈折率をΔn(650)としたとき、Δn(450)/Δn(550)≦1.05かつΔn(650)/Δn(550)≧0.97の関係を満たす液晶重合膜即ち、低
正波長分散特性の液晶重合膜を製造することができる。
通常、液晶性化合物は、芳香環や脂環をコア骨格とし、アルキル等からなるフレキシブルな基がこれに結合した、棒状またはディスク状の分子形状を持つ。一方、本発明における式(1)で表される重合性液晶化合物は、棒状分子の短軸方向にキノリン骨格、イソキノリン骨格、キノキサリン骨格またはキナゾリン骨格が伸びた形のコア骨格を有する。
式(1)で表される重合性液晶化合物を含有することにより、低
正波長分散特性の液晶重合膜が得られるメカニズムは以下のように考察される。屈折率の波長分散特性は、Lorentz−Lorenzの式で表されているように、物質の吸収波形と密接な関係にある。物質の光吸収の極大が生じる領域では、長波長側から短波長側へ向かい吸収波長に近づくにつれて(波長が短くなるに従い)、屈折率が急激に増大する異常分散領域が存在する。つまり、側方部に剛直で共役系を伸張させる置換基を導入することによって、短軸方向の吸収を長波長領域に拡大することができ、これに伴いno(通常屈折率)の波長に対する屈折率変化率を大きくすることができる。また、長軸方向にシクロヘキサン環などを導入することで長軸方向の吸収を短波長化させることができ、ne(異常屈折率)の波長に対する屈折率変化率を小さくすることができる。この2つの効果により、複屈折率の波長分散特性を制御することができると考えられる。
本発明の重合性液晶組成物は、(1)室温付近で良好な液晶相を示す、(2)有機溶剤に対する良好な溶解性を示す、(3)溶剤を除去した後も室温下において長時間液晶相を維持することができる等の特性を持った組成物とすることができ、さらにこれを重合して
得られた液晶重合体は、光学異方性、透明性、耐熱性、密着性、寸法安定性、および機械的強度等に優れるため、本発明の重合性液晶組成物は、液晶重合体、基材つき液晶重合体のような液晶重合膜の製造に非常に適した材料である。
【0062】
≪化合物(1)≫
本発明の重合性液晶組成物は、下記式(1)で表される化合物を含む。
【化8】
【0063】
≪化合物(1)のA
1≫
この式(1)中、A
1は独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1
−シクロへキセン−1,4−イレン、2−シクロへキセン−1,4−イレン、ピリジン−2,5−ジイルまたはナフタレン−2,6−ジイルである。
化合物(1)中の1,4−フェニレンおよびナフタレン−2,6−ジイルは、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル、または炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよい。
【0064】
化合物(1)と、液晶化合物または有機溶媒とを混ぜたときの相分離の防止、重合性液晶組成物による液晶相の誘導、および合成コストが低減の観点から、化合物(1)中のA
1は、1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレンまたは1−シクロへキセン−1,
4−イレン、2−シクロへキセン−1,4−イレンであることが好ましい。
液晶重合膜の正波長分散特性の低さの観点から、該液晶重合膜の原料となる化合物(1)中のA
1は1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。
液晶重合膜の複屈折率の大きさの観点から、該液晶重合膜の原料となる化合物(1)中のA
1は1,4−フェニレン骨格を有することがより好ましい。
重合性液晶組成物による液晶相の誘導の観点から、化合物(1)中のA
1は1,4−フ
ェニレン骨格を有する場合、置換基を有さないことがより好ましい。
【0065】
≪化合物(1)のZ
1≫
式(1)中、Z
1は独立して単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−O
CO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−、−OCH
2CH
2O−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH
2CH
2COO−、−OCOCH
2CH
2−、−CH
2CH
2OCO−、−COOCH
2CH
2−、−CH=CH−、−N=CH−、−CH=N−、−N=C(CH
3)−、−C(CH
3)=N−、−N=N−または−C≡C−である。
(A)化合物(1)の液晶相の誘導、および(B)化合物(1)の製造コスト低減するため、Z
1が単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CF
2
O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−OCH
2CH
2O−、−CH
2CH
2COO−、−OCOCH
2CH
2−、−CH
2CH
2OCO−、または−COOCH
2CH
2−であることが好ましい。
液晶化合物または有機溶媒と混ぜたときに相分離を防止するため、Z
1のうち少なくと
も一つが−CH
2CH
2COO−、または−OCOCH
2CH
2−であることが好ましい。
化合物(1)を含む重合性液晶組成物の透明点を低下させるため、Z
1のうち少なくと
も一つが−CH
2CH
2COO−、または−OCOCH
2CH
2−であることが好ましい。
化合物(1)を含む組成物中の再結晶の発生を抑えるためを、Z
1のうち少なくとも一
つが−CH
2CH
2COO−、または−OCOCH
2CH
2−であることが好ましい。
【0066】
≪化合物(1)のG≫
Gは、キノリン骨格、イソキノリン骨格、キノキサリン骨格、またはキナゾリン骨格を有し、かつ、π電子の数が10〜24である2価の有機基である。
【0067】
Gは、
(A)キノリン骨格を有しており、キノリン骨格のそれぞれ5位と8位で連結している、2価の官能基、
(B)イソキノリン骨格を有しており、イソキノリン骨格のそれぞれ5位と8位で連結している、2価の官能基、
(C)キノキサリン骨格を有しており、キノキサリン骨格のそれぞれ5位と8位で連結している、2価の官能基、または
(D)キナゾリン骨格を有しており、キナゾリン骨格のそれぞれ5位と8位で連結している、2価の官能基であることが好ましい。
液晶重合膜の低正波長分散特性の観点から、該液晶重合膜の原料となる化合物(1)のGは、式(G−1)、式(G−2)、または式(G−3)に記載の基であることが好ましい。
重合性液晶組成物による液晶相の誘導を目的として、液晶重合膜の原料となる化合物(1)のGは、式(G−1)、式(G−2)、または(G−3)に記載の基であることが好ましい。
【0069】
(式(G−1)〜式(G−3)中、
X
1は−C(R
3)=または−N=であり、ここでR
3は独立して水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜12のアルキルまたはフェニルであり、
T
1、T
2およびT
3は、独立して水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル、炭素数1〜12のアルカノイルまたはπ電子の数が6〜18の芳香環であり、該アルキル、該アルコキシ、該アルコキシカルボニルおよび該アルカ
ノイルにおいて少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−CO−または−S−で置き換えられてもよく、T
1中の任意の原子とT
2中の任意の原子は化学結合を形成して環となっていてもよく、
R
2は独立して水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜12のアルキルまたはフェニルである。)
化合物(1)を含む重合性液晶組成物の液晶相の誘導、液晶化合物または有機溶媒を混ぜたときの相分離の防止、および化合物(1)を原料とした液晶重合膜の低正波長分散特性を、目的として、式(G−1)〜式(G−3)中、T
1およびT
2の少なくともどちらか一方、およびT
3が式(T−1)〜式(T−9)に記載のいずれかの芳香環である化合物(1)が好ましい。
【0071】
(式(T−1)〜式(T−9)中、X
2は−O−、−S−または−NR
4−であり、
ここでR
4は水素、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルカノイルまたはフェニルであり、少なくとも一つの−CH=は-N=に置き換えられてもよく、少なくとも一
つの水素はフッ素、塩素、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロアセチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルキルエステルまたは炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよい)
【0072】
≪化合物(1)のR
1≫
化合物(1)中の一つのR
1は、式(2)で表される基である。化合物(1)中のもう一方のR
1は、水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数1〜12のアルキルエステルまたは式(2)で表される基である。
【0074】
(式(2)中、
Y
1は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−であり、
Q
1は単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、
PGは式(PG−1)〜式(PG−9)のいずれか1つで表される官能基である。)
【0076】
PGは独立して、式(PG−1)〜式(PG−9)のいずれか1つで表される官能基である。
式(PG−1)、式(PG−8)および式(PG−9)で表される官能基は、アルケンに隣接して電子吸引基を有しているので、様々な手段により重合し、より大きな分子量を有する高分子へと変化させる重合性官能基である。
式(PG−2)で表される官能基は、アルケンに隣接して電子供与基を有しているので、様々な手段により重合し、より大きな分子量を有する高分子へと変化させる重合性官能基である。
式(PG−3)〜式(PG−7)で表される官能基は、ひずみを有するオキサ環を有しているので、様々な手段により重合し、より大きな分子量を有する高分子へと変化させる重合性官能基である。
このため、式(PG−1)〜式(PG−9)は、重合性基である。化合物(1)は、少なくともひとつの重合性基を有することから、重合性化合物である。
化合物(1)中の式(PG−1)〜式(PG−9)で表される重合性基は、フィルムの製造条件に応じて最適なものを選択する。
光硬化で化合物(1)を原料とする液晶重合膜を作製する場合、重合速度の調整、液晶化合物と有機溶媒とを混ぜたときの相分離の防止、および、合成コストの低下の観点から、式(PG−1)を有する化合物(1)が好ましい。
【0077】
≪化合物(1)のm≫
式(1)中、mは独立して0〜3の整数である。ただし、mのうち少なくとも一つは0ではない。
高い液晶性の観点から、化合物(1)のmは独立して0〜3の整数が好ましい。
化合物(1)と、液晶化合物または有機溶媒とを、混ぜたときに相分離しにくいことから、化合物(1)のmは独立して0〜3の整数が好ましい。
化合物(1)を含む重合性液晶組成物の液晶相の誘導のため、化合物(1)のmが2であることが好ましい。液晶化合物と有機溶媒とを混ぜたときに相分離の防止のため、化合物(1)のmが2であることが好ましい。
【0078】
≪液晶化合物≫
通常、液晶相を誘導する化合物は、棒状またはディスク状である。液晶化合物は、(A)複数の、芳香環および/または脂肪環、並びに、(B)それらの環を連結したアルキレンそのほかのフレキシブルな基を有することが、多い。
【0079】
≪波長分散特性≫
屈折率の波長分散特性は、Lorentz−Lorenzの式で表されているように、物質の吸収波形に関係にする。物質の光の吸収極大波長周辺の領域では、長波長側から吸収極大波長に近づくにつれて、屈折率が急激に増加する。この屈折率の急激な増加する波長領域は、異常分散領域と呼ばれる。
化合物(1)は、多数の共役二重結合を有する剛直な複素環が短軸方向に張り出している。キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環およびキナゾリン環などが、該複素環に該当する。該複素環類は、十分な数の共役二重結合を有するため、短軸方向に振動するより波長の長い光を吸収できる。故に、該複素環によって、常光の波長に対する屈折率変化率を大きくすることができる。
化合物(1)は、長軸方向に、共役二重結合のない、または、共役二重結合数が少ない官能基を有する。シクロヘキサン環、シクロヘキセン環などが、該官能基に該当する。該官能基は、十分な数の共役二重結合を有さないため、長軸方向に振動するより波長の短い光しか吸収できない。よって、異常光の波長に対する屈折率変化率を小さくすることができる。
【0080】
該官能基および該複素環の効果により、式(1)で表される重合性液晶化合物は、低正波長分散特性を有する。
【0081】
化合物(1)は、重合性液晶化合物に多量に含有させた場合でも、結晶が析出しにくい。化合物(1)を含む重合性液晶組成物は、溶媒を除去後も結晶が析出しにくい。化合物(1)を含む重合性液晶組成物は、溶媒の除去後も結晶が析出しにくいため、配向欠陥が「なし」の液晶重合膜を作成しやすい。
【0082】
故に、化合物(1)を原料とすると、Re
450/Re
550の値が低く、かつRe
6
50/Re
550の値が高い、位相差フィルムを製造できる。つまり、低正波長分散特性
である液晶重合膜を、製造できる。
【0083】
式(1)で表される重合性液晶化合物の好ましい例を次に示す。ただし、以下に示すものに限定されるものではない。
【0092】
式(1−1−1)〜式(1−1−12)、式(1−2−1)〜式(1−2−14)、式(1−3−1)〜式(1−3−5)、式(1−4−1)〜式(1−4−7)、式(1−5−1)〜式(1−5−7)、および式(1−6−1)〜式(1−6−5)において、
Y
1は独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−であり
、
Q
1は独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、該アルキレンにおい
て少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−COO−、または−OCO−で置き換えられ
てもよく、
PGは独立して上記式(PG−1)〜式(PG−9)で表されるいずれか1つの重合性の基である。
【0093】
式(1)で表される重合性液晶化合物は、公知の有機合成化学の手法を組み合わせることにより合成できる。出発物質に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、ホーベン−ワイル(Houben-Wyle, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.
)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、および、新実験化学講座(丸善)等の成書に記載されている。
【0094】
式(1)で表される化合物のコア構造がキノキサリン骨格である場合は、o−フェニレンジアミン誘導体とα−ケトアルデヒド類やα−ジケトン類との縮合反応によって合成することが出来る。具体的には、例えば下記式で表される反応工程を経ることによって合成することができる。
【0095】
【化20】
1,2−ジアミノ−3,6−ジメトキシベンゼンとフェニルグリオキサールの反応によって得られたジメトキシキノキサリン化合物を脱保護、次いでジエステル化することにより、式(1)で表される化合物へと誘導できる。
【0096】
式(1)で表される化合物のコア構造がキノリン骨格である場合は、Friedlanderの合
成法、Pfitzingerの合成法、Skraupの合成法、Doebner-von Millerの合成法、Knorrの合
成法、Combesの合成法およびConrad-Limpachの合成法などを利用することによって合成することが出来る。式(1)で表される化合物のコア構造がイソキノリン骨格である場合は、Pomeranz-Fritschの合成法、Schlitter-Mullerの合成法およびBischler-Napieralskiの合成法などを利用することによって合成することが出来る。式(1)で表される化合物のコア構造がキナゾリン骨格である場合は、Niementowskiの合成法などを利用することによって合成することが出来る。
【0097】
また、下記式のように4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸等を用いることにより、1,4−シクロへキシレンを導入することができる。
【0098】
【化21】
ここで、上記式においてrは2〜20の整数である。
なお、合成された化合物の構造は、例えば、プロトンNMRスペクトルにより確認することができる。
【0099】
≪重合性液晶組成物≫
本発明の重合性液晶組成物は、式(1)で表される重合性液晶化合物を少なくとも1つ含有する。本発明の重合性液晶組成物は、比較的低い温度でネマチック相やスメクチック相の液晶相を有する。本発明の重合性液晶組成物を、ラビング処理等の配向処理がなされているプラスチック基材上やプラスチックの薄膜で表面が被覆された基材に塗工して製膜する場合、重合性液晶組成物は、ホモジニアス配向やチルト配向となる。また、本発明の重合性液晶組成物に、後述する非重合性あるいは重合性の光学活性化合物を添加した場合
、重合性液晶組成物は、ツイスト配向となる。本発明の重合性液晶組成物に、後述するカルド構造を有する化合物、または末端に極性基を有する化合物を加えた場合、重合性液晶組成物は、ホメオトロピック配向が得られやすくなる。ここで、極性基とは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、スルホン酸基、エステル基、アミド基、またはアンモニウム基を例示できるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性基を有する化合物の合計量100重量%に対し、式(1)で表される本発明の重合性液晶化合物の少なくとも1種を通常10重量%以上含有する態様を挙げることができ、好ましくは30重量%以上含有する態様を挙げることができる。重合性液晶化合物(1)の含有量が上記範囲にあると、複屈折率の波長分散制御が容易で、本発明の重合体の効果を顕著に発現させることができる。一方、式(1)で表される本発明の重合性液晶化合物の少なくとも1種の含有量の上限としては、重合性基を有する化合物の合計量を100重量%とした場合、100重量%以下である態様を挙げることができる。
また、重合性液晶組成物の全重量を100重量%とした場合は、式(1)で表される本発明の重合性液晶化合物の少なくとも1種を4重量%以上、50重量%以下含有することが好ましい。
また、重合性液晶組成物における重合性液晶化合物の重量を100重量%とした場合、重合性液晶化合物(1)の含有量が、20重量%以上あることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。一方、この含有量については、100重量%以下であることがより好ましい。
【0101】
その他の液晶性化合物として、液晶性化合物のデータベースであるリクリスト(LiqCryst, LCI Publisher GmbH, Hamburg, Germany)に記載されている化合物から選択することができる。中でも下記式(LC)で表される化合物が好ましい。
【0102】
【化22】
式(LC)中、
A
2は独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、ピリジン−2,5−
ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、およびナフタレン−2,6−ジイルから選ばれるいずれかの二価基であり、該二価基において、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル、または炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよく;
Z
2は独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、該アルキレンにおい
て少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=
CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、該アルキレンにおいて少なくとも一つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
bは1〜5の整数であり;
R
3は独立して水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロア
セチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルコキシであり、該アルキルにおいて少なくとも一つの−CH
2−は−
O−または−CH=CH−で置き換えられてもよい。
【0103】
以下、上記式(LC)で表される化合物の具体例を示す。
【0107】
本発明の重合性液晶組成物は、上記の式(LC)で表される化合物を含有する場合、重合性液晶組成物全量に対し、通常50重量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0108】
その他の重合性液晶化合物としては、下記式(M1)、(M2)および(M3)で表される化合物が好ましい。
【0109】
【化26】
式(M1)、(M2)および(M3)中、
A
Mは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1−シクロへキセン
−1,4−イレン、2−シクロへキセン−1,4−イレン、ピリジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルから選ばれるいずれかの二価基であり、該二価基において、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル、または炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよく;
Z
Mは独立して単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CO
S−、−SCO−、−OCOO−、−CONH−、−NHCO−、−CF
2O−、−OC
F
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH
−、−CH
2CH
2COO−、−OCOCH
2CH
2−、−CH=CH−、−N=CH−、−CH=N−、−N=C(CH
3)−、−C(CH
3)=N−、−N=N−、−C≡C−または−C≡C−C≡C−であり;
X
Mは水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭
素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルコキシ、または炭素数1〜20のアルコキシカルボニルであり;
qは1〜4の整数であり;
cおよびdは独立して0〜3の整数であり、かつ1≦c+d≦4の関係であり;
aは独立して0〜20の整数であり;
R
Mは独立して水素またはメチルであり;
Y
Mは独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−である
。
ここで、q、c、またはdが2以上である場合、このA
MおよびZ
Mはその繰り返し毎に異なっていてもよい。
【0110】
また、上記式(M1)、(M2)および(M3)で表される化合物において、式(M1)または(M2)で表される化合物を用いることがより好ましい。
【0111】
低
正波長分散特性を示し、良好な液晶性を示し、透明点の低さ、有機溶剤への溶解性の高さ、他の化合物との相溶性の高さ、容易かつ安価に化合物を製造できるなどの点で、上記式(M1)または(M2)において、A
Mが1,4−フェニレンまたは1,4−シクロへキシレンであるが、少なくとも一つは1,4−シクロへキシレンであり、Z
Mが単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2COO−、または−OCOCH
2CH
2−で表される化合物がより好適である。
【0112】
式(M1)で表される化合物は単官能重合性液晶化合物である。単官能重合性液晶化合物の組成を調整することによって、重合性液晶組成物の液晶温度範囲、光学特性および配向性が制御できる。また、添加量を増やすことでチルト角が高くなる傾向にあり、ホメオトロピック配向を得やすくなる。式(M2)で表される化合物は2官能重合性液晶化合物である。これを多く含む重合性液晶組成物が重合した重合体は三次元構造になるため、重合性基を1つのみ有する式(M1)で表される化合物と比較して硬い重合体となる。式(M3)で表される化合物は3官能重合性液晶化合物である。これを多く含む重合性液晶組成物が重合した重合体はさらに強固なネットワークを形成することができるので、1つおよび2つの重合性基を有する化合物を多く含む重合体と比較してさらに硬い重合体となる。今後、式(M1)、(M2)および(M3)で表される化合物や、これらから派生する化合物の総称として式(M)と称することがある。
【0113】
以下、式(M1)で表される化合物の好ましい例を示す。
【0115】
【化29】
式(M1−1)〜(M1−24)において、R
Mは独立して水素またはメチルであり、
aは独立して1〜12の整数である。
【0116】
以下、式(M2)で表される化合物の好ましい例を示す。
【0119】
【化32】
式(M2−1)〜(M2−31)において、R
Mは独立して水素またはメチルであり、
aは独立して1〜12の整数である。式中に2つ以上のaがあるとき、任意の2つのaは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0120】
以下、式(M3)で表される化合物の好ましい例を示す。
【0122】
【化34】
式(M3−1)〜(M3−10)において、R
Mは独立して水素またはメチルであり、
aは独立して1〜12の整数である。式中に2つ以上のaがあるとき、任意の2つのaは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0123】
本発明の重合性液晶組成物は、式(M)で表される化合物を含む場合、式(1)で表される本発明の重合性液晶化合物の少なくとも1種と、式(M)で表される化合物の少なくとも1種との、合計量100重量%に対し、式(1)で表される本発明の重合性液晶化合物の少なくとも1種を20〜99重量%含有することが好ましく、40〜99重量%含有することがさらに好ましい。重合性液晶組成物中の上記各成分の含有量が上記範囲にあると、室温付近で幅広い液晶相を有し、複屈折率の波長分散特性の制御が容易で、良好な塗布性を有する重合性液晶組成物を得ることができる。
【0124】
本発明の重合性液晶組成物は、さらに界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としてはイオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられる。重合性液晶組成物から形成される塗布膜の平滑性を向上させる効果や空気界面側のチルト配向を抑制する効果が高いことから、非イオン性界面活性剤を使用することがより好ましい。
【0125】
界面活性剤を添加する場合の好ましい割合は、式(1)で表される重合性液晶化合物の重量に対して、重量比で0.0001〜0.1である。その他の液晶化合物やその他の重合性液晶化合物を含有する場合は式(1)で表される重合性液晶化合物との合計重量に対して重量比で0.0001〜0.1である。より好ましい重量比の範囲は0.0001〜0.005である。
【0126】
イオン性界面活性剤は、チタネート系化合物、イミダゾリン、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族または芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、およびパーフルオロアルキルカルボン酸塩の化合物を例示できるが、これらに限定されない。
【0127】
非イオン性界面活性剤は、シリコーン系、フッ素系、ビニル系、および炭化水素系の化合物を例示できるが、これらに限定されない。
【0128】
シリコーン系非イオン性界面活性剤は、未変性シリコーンあるいは変性シリコーンを主成分としたポリフローKL−400HF、ポリフローKL−401、ポリフローKL−4
02、ポリフローKL−403、ポリフローKL−404、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−342、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−370、BYK−371、BYK−375、BYK−377、BYK−378、BYK−3455、BYK−3500、BYK−3510、BYK−3530、BYK−3570、BYK−Silclean3720、およびTEGOFlow425を例示できるが、これらに限定されない。
【0129】
フッ素系非イオン性界面活性剤は、BYK−340、フタージェント251、フタージェント212M、フタージェント215M、フタージェント250、フタージェント222F、フタージェント245F、フタージェント208G、フタージェント240G、フタージェント220P、フタージェント228P、フタージェントFTX−218、フタージェントDFX−18、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント730LM、メガファックF−251、メガファックF−410、メガファックF−430、メガファックF−444、メガファックF−477、メガファックF−551、メガファックF−553、メガファックF−554、メガファックF−556、メガファックF−557、メガファックF−558、メガファックF−559、メガファックF−562、メガファックF−563、メガファックF−565、メガファックF−570、メガファックR−40、メガファックR−41、メガファックR−43、およびメガファックR−94を例示できるが、これらに限定されない。
【0130】
ビニル系非イオン性界面活性剤は、アクリル系ポリマーを主成分としたポリフローNo.7、ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95、ポリフローNo.99C、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−380N、BYK−381、BYK−392、BYK−399、BYK−Silclean3700、TEGOFlow300、TEGOFlow370、およびTEGOFlowZFS460を例示できるが、これらに限定されない。
【0131】
また、界面活性剤は重合性液晶化合物と一体化させるために重合性基を有していてもよい。界面活性剤に導入される重合性基としては、UV反応型の官能基または熱重合性を有する官能基を例示できるが、これらに限定されない。重合性液晶化合物との反応性の観点からUV反応型の官能基が好ましい。
UV反応型の非イオン性界面活性剤は、フタージェント601AD、フタージェント602A、フタージェント650A、メガファックRS−55、メガファックRS−56、メガファックRS−72−K、メガファックRS−75、メガファックRS−78、およびメガファックRS−90を例示できるが、これらに限定されない。
【0132】
基材への塗れ性を最適化するには、(基材)湿潤剤として分類される界面活性剤を併用してもよい。湿潤剤は重合性液晶組成物の表面張力を低下させ、塗工基材への塗れ性を向上させる効果を有する。このような湿潤剤は、ポリフローシリーズ(KL−100、KL−700、LE−604、LE−605、LE−606)、TEGO Twinシリーズ(4000)、TEGO Wetシリーズ(KL245、250、260、265、270、280、500、505、510)を例示できるが、これらに限定されない。なお、湿潤剤の補助剤として、フッ化変性ポリマーやフッ素変性アクリルポリマーを主成分とした界面活性剤を適用してもよい。これに該当するものは、AFCONA社製の3000シ
リーズ(例えば、3277、3700、3770等)を例示できるが、これらに限定されない。
【0133】
なお、ポリフローシリーズは共栄社化学(株)から販売されている。BYKシリーズはビックケミー・ジャパン(株)から販売されている。フタージェントシリーズは(株)ネオスから販売されている。メガファックシリーズはDIC(株)から販売されている。TEGOFlowシリーズはエボニック・ジャパン(株)から販売されている。
【0134】
上記の界面活性剤は、単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0135】
次に、その他の重合性化合物、添加物、有機溶剤を例示する。
【0136】
その他の重合性化合物としては、ビニル誘導体、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、オキシラン誘導体、オキセタン誘導体、ソルビン酸誘導体、フマル酸誘導体、イタコン酸誘導体などの化合物であって液晶性を有しないものが挙げられる。この液晶性を有しないその他の重合性化合物には、重合性基を1つ有する化合物、重合性基を2つ有する化合物および重合性基を3つ以上有する多官能化合物などがある。
その他の重合性化合物は、液晶相を維持できる限り添加してもよい。式(1)で表される重合性液晶化合物の重量、およびその他の液晶化合物やその他の重合性液晶化合物を含有する場合は式(1)で表される重合性液晶化合物との合計重量に対する重量比で0.5以下であることが好ましい。
【0137】
重合性基を1つ有する化合物は、スチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、脂肪酸ビニル(酢酸ビニルなど)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸など)、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル((メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸メチルカルビルエステル、(メタ)アクリル酸エチルカルビルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルカルビルエステルなど)、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、重合度1〜100のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステル又はジ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステルを例示できるが、これらに限定されない。
【0138】
重合性基を2つ有する化合物は、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート(ビスコート
V#700)、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートに置換した化合物を例示できるが、これらに限定されない。
【0139】
重合性基を3つ以上有する化合物は、ペンタエリスリトール、トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスコート V#802(官能基数=8)、およびビスコート V#1000(官能基数=平均14)を例示できるが、これらに限定されない。「ビスコート」は大阪有機化学株式会社の商品である。官能基が16以上のものはPerstorp Specialty Chemicalsが販売しているBoltorn H20(16官能)、Boltorn H30(32官能)、Boltorn H40(64官能)を原料にそれらをアクリル化することで得られる。
【0140】
その他の重合性化合物は、カルド構造を有する重合性フルオレン誘導体やビスフェノール構造を有する重合性化合物を例示できるが、これらに限定されない。カルド構造を有する重合性フルオレン誘導体は、配向の制御や重合体の硬化度をさらに高める。そして、ビスフェノール構造を有する重合性化合物は、液晶組成物の被膜形成能や配向均一性の補助に適している。カルド構造を有する重合性フルオレン誘導体の例は式(α−1)〜(α−3)で示した。重合性ビスフェノール誘導体の例を式(N−1)〜(N−8)で示した。
【0141】
【化35】
式(α−1)〜(α−3)において、R
αは独立して水素またはメチルであり、sは独立して0〜4の整数である。式中に2つ以上のsがあるとき、任意の2つのsは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0142】
【化36】
式(N−1)〜(N−8)において、R
Nは独立して水素またはメチルであり、tは独
立して2〜12の整数である。式中に2つ以上のtがあるとき、任意の2つのtは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0143】
その他の重合性化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0144】
重合速度を最適化するために、重合開始剤を重合性液晶組成物に添加してもよい。重合開始剤は、光ラジカル開始剤を例示できる。光ラジカル重合開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュアー1173)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュアー651)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュアー184)、イルガキュアー127、イルガキュアー500(イルガキュアー184とベンゾフェノンの混合物)、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379、イルガキュアー754、イルガキュ
アー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、イルガキュアー1870、ダロキュアー4265、ダロキュアーMBF、ダロキュアーTPO、イルガキュアー784、イルガキュアー754、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、アデカオプトマーN−1919、アデカクルーズNCI−831、およびアデカクルーズNCI−930を例示できるが、これらに限定されない。上記のダロキュアシリーズおよびイルガキュアーシリーズはBASFジャパン(株)から販売されている。アデカオプトマーシリーズおよびアデカクルーズシリーズは(株)ADEKAから販売されている。
【0145】
上記光ラジカル重合開始剤は、さらに、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、およびベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物を例示できるが、これらに限定されない。
【0146】
光ラジカル重合開始剤の好ましい添加量は、式(1)で表される重合性液晶化合物の重量に対して、またはその他の液晶化合物やその他の重合性液晶化合物を含有する場合は式(1)で表される重合性液晶化合物との合計重量に対する重量比で0.0001〜0.20である。この重量比のより好ましい範囲は0.001〜0.15である。さらに好ましい範囲は0.01〜0.15である。上記光ラジカル開始剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0147】
また、これら光ラジカル重合開始剤に、増感剤を添加して使用してもよい。増感剤は、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアーEDB)、および2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアーEHA)を例示できるが、これらに限定されない。これら増感剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0148】
重合体の重合反応率や機械特性を制御する等のために、連鎖移動剤を重合性液晶組成物に添加してもよい。連鎖移動剤を用いることにより、得られる重合体の反応率や鎖長を制御することができる。連鎖移動剤の量を増大させると、重合反応率が低下し、ポリマー鎖の長さは減少する。連鎖移動剤は、チオール化合物またはスチレンダイマーを例示できるが、これらに限定されない。これら連鎖移動剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0149】
上記チオール系連鎖移動剤は、単官能性チオールおよび多官能性チオールを例示できるが、これらに限定されない。該単官能性チオールは、ドデカンチオール、3−メルカプトプロピオン 2−エチルへキシルを例示できるが、これらに限定されない。該多官能性チオールは、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(カレンズMT BD1)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT PE1)、および1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(カレンズMT NR1)を例示できるが、これらに限定されない。カレンズシリーズは昭和電工株式会社から販売されている。
【0150】
上記スチレンダイマー系連鎖移動剤は、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンおよび2,4−ジフェニル−1−ブテンを例示できるが、これらに限定されない。
【0151】
重合性液晶組成物には、保存時の重合開始を防止するために重合防止剤を添加することができる。公知の重合防止剤を使用できる。重合防止剤は、2,5−ジ(t−ブチル)ヒドロキシトルエン(BHT)、ハイドロキノン、メチレンブルー、ジフェニルピクリン酸ヒドラジド(DPPH)、フェノチアジン、N,N−ジメチル−4−ニトロソアニリンなどのニトロソ化合物、O−ヒドロキシベンゾフェノン、および2H−1,3−ベンゾチアジン−2,4−(3H)ジオンなどのベンゾチアジン誘導体を例示できるが、これらに限定されない。
【0152】
重合性液晶組成物の保存性を向上させるために、重合阻害剤を添加することもできる。重合性液晶組成物やその溶液内でラジカルが発生した場合は、重合性化合物の重合反応が促進される。これを防ぐ目的で重合阻害剤を添加することが好ましい。重合阻害剤は、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤を例示できるが、これらに限定されない。
【0153】
重合性液晶組成物の耐候性を更に向上させるために、紫外線吸収剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤)および酸化防止剤等を添加してもよい。紫外線吸収剤は、チヌビンPS、チヌビンP、チヌビン99−2、チヌビン109、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン384−2、チヌビン571、チヌビン900、チヌビン928、チヌビン1130、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン460、チヌビン479、チヌビン5236、アデカスタブLA−32、アデカスタブLA−34、アデカスタブLA−36、アデカスタブLA−31、アデカスタブ1413、およびアデカスタブLA−51を例示できるが、これらに限定されない。チヌビンシリーズはBASFジャパン(株)から販売されている。アデカスタブシリーズはADEKAから販売されている。これら紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0154】
光安定剤は、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292、チヌビン622、チヌビン770、チヌビン765、チヌビン780、チヌビン905、チヌビン5100、チヌビン5050、5060、チヌビン5151、キマソーブ119FL、キマソーブ944FL、キマソーブ944LD、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87、サイテック社製のサイアソーブUV−3346、およびグッドリッチ社のグッドライトUV−3034を例示できるが、これらに限定されない。キマソーブシリーズはBASFジャパン(株)から販売されている。これら光安定剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0155】
酸化防止剤は、ADEKAのアデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−80、住友化学(株)から販売されているスミライザーBHT、スミライザーBBM−S、およびスミライザーGA−80、並びにBASFジャパン(株)から販売されているIrganox1076、Irganox1010、Irganox3114、およびIrganox245を例示できるが、これらに限定されない。これら酸化防止剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0156】
基材との密着性を制御する等のために、シランカップリング剤を重合性液晶組成物に添加してもよい。シランカップリング剤は、ビニルトリアルコキシシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリ
アルコキシシラン、N−(1,3-ジメチルブチリデン)−3−(トリアルコキシシリル
)−1−プロパンアミン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−クロロトリアルコキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、および3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどを例示できるが、これらに限定されない。また、上記アルコキシシランにおいて、アルコキシ基(3つ)のうちの1つをメチルに置き換えられたジアルコキシメチルシランも、シランカップリング剤として用い得る。これらシランカップリング剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0157】
本発明の重合性液晶組成物は、塗布を容易にするために、溶剤を含有してもよい。溶剤は、エステル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、およびアセテート系溶剤を例示できるが、これらに限定されない。
【0158】
エステル系溶剤は、酢酸アルキル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチルなど)、トリフルオロ酢酸エチル、プロピオン酸アルキル(プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチルなど)、酪酸アルキル(酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸プロピルなど)、マロン酸ジアルキル(マロン酸ジエチルなど)、グリコール酸アルキル(グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなど)、乳酸アルキル(乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸n-プロピル、乳酸ブチル、乳酸エチルヘキシルなど)、モノアセチン、γ−ブチロラクトン、およびγ−バレロラクトンを例示できるが、これらに限定されない。
【0159】
アミド系溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、N−メチルカプロラクタム、およびジメチルイミダゾリジノンを例示できるが、これらに限定されない。
【0160】
アルコール系溶剤は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ブタノール、2−エチルブタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、1−ドデカノール、エチルヘキサノール、3、5、5−トリメチルヘキサノール、n−アミルアルコール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、シクロヘキサノール、およびメチルシクロヘキサノールを例示できるが、これらに限定されない。
【0161】
エーテル系溶剤は、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビス(2−プロピル)エーテル、1,4−ジオキサン、およびテトラヒドロフラン(THF)を例示できるが、これらに限定されない。
【0162】
グリコールモノアルキルエーテル系溶剤は、エチレングリコールモノアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテルを例示できるが、これらに限定されない。)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテ
ル(ジエチレングリコールモノエチルエーテルを例示できるが、これに限定されない。)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノブチルエーテルを例示できるが、これに限定されない。)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを例示できるが、これに限定されない。)、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを例示できるが、これに限定されない。)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを例示できるが、これに限定されない。)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートを例示できるが、これらに限定されない。)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを例示できるが、これに限定されない。)、およびジエチレングリコールメチルエチルエーテルを例示できるが、これらに限定されない。
【0163】
芳香族炭化水素系溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、およびテトラリンである。ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤はクロロベンゼンなどが好ましい。脂肪族炭化水素系溶剤は、ヘキサンおよびヘプタンなどが好ましい。ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤は、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、およびテトラクロロエチレンなどが好ましい。脂環式炭化水素系溶剤は、シクロヘキサンおよびデカリンを例示できるが、これらに限定されない。
【0164】
ケトン系溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、およびメチルプロピルケトンを例示できるが、これらに限定されない。
アセテート系溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、および1−メトキシ−2−プロピルアセテートを例示できるが、これらに限定されない。
【0165】
重合性液晶化合物の溶解性の観点からは、アミド系溶剤、芳香族炭化水素系、ケトン系溶剤の使用が好ましい。溶剤の沸点を考慮すると、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤の併用も好ましい。溶剤の選択に関して特に制限はない。支持基材としてプラスチック基材を用いる場合は、基材の変形を防ぐために乾燥温度を低くすること、および溶剤が基材を侵食しないようにすることが必要である。このような場合に好ましい溶剤は、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、アセテート系溶剤、およびグリコールモノアルキルエーテル系溶剤を例示できある。
【0166】
溶剤を使用する場合の好ましい割合は、式(1)で表される重合性液晶化合物の重量に対して、またはその他の液晶化合物やその他の重合性液晶化合物を含有する場合は式(1)で表される重合性液晶化合物との合計重量に対して30〜96重量%である。この割合の好ましい範囲は50〜90重量%であり、より好ましい範囲は60〜80重量%である。これら溶剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0167】
液晶重合膜は、次のようにして得ることができる。まず、重合性液晶組成物を流動性のある状態で基材上に塗布し、塗膜を形成させる。重合性液晶組成物の溶液を調製した場合
は、基材上に塗布し、これを乾燥させて塗膜を形成させる。その塗膜に光照射して重合性液晶組成物を重合させ、塗膜中の重合性液晶組成物が液晶状態で形成するネマチック配向を固定化する。使用できる基材の材質は、ガラスおよびプラスチックを例示できるが、これらに限定されない。プラスチックは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロースおよびその部分鹸化物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびシクロオレフィン系樹脂を例示できるが、これらに限定されない。基材は、通常の場合、シート状またはフィルム状である。
【0168】
シクロオレフィン系樹脂は、ノルボルネン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂が例示できるが、これらに限定されない。ノルボルネン系樹脂は、1種又は2種以上のノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体の水素添加物、1種又は2種以上のノルボルネン系モノマーの付加(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマー(エチレン、α−オレフィン等)との付加共重合体、ノルボルネン系モノマーとシクロオレフィン系モノマー(シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等)との付加共重合体、及び、これらの変性物等が例示できるが、これらに限定されない。これに該当する市販品は、ZEONEX、ZEONOR(共に商品名、日本ゼオン(株)製)、ARTON(商品名、JSR(株)製)、TOPAS(商品名、ティコナ社製)、APEL(商品名、三井化学(株)製)、およびエスシーナ(商品名、積水化学工業(株)製)、OPTOREZ(商品名、日立化成(株)製)を例示できるが、これに限定されない。
【0169】
基材として用い得る上記の重合体フィルム(プラスチックフィルム)は、一軸延伸フィルムであってよく、二軸延伸フィルムであってもよい。これらのフィルムは、例えば、コロナ処理若しくはプラズマ処理などの親水化処理、または疎水化処理などの表面処理を施したものであってもよい。親水化処理の方法は特に制限はない。親水化処理は、コロナ処理あるいはプラズマ処理が好ましい。特に好ましい方法はプラズマ処理である。プラズマ処理は、特開2002−226616号公報、特開2002−121648号公報などに記載されている方法を用いてもよい。また、液晶重合体とプラスチックフィルムとの密着性を改良するためにアンカーコート層を形成させてもよい。無機系材料、有機系材料のいずれであっても、液晶重合体とプラスチックフィルムの密着性を高めるものであれば、このようなアンカーコート層は有効である。また、プラスチックフィルムは積層フィルムであってもよい。プラスチックフィルムに代えて、表面にスリット状の溝をつけたアルミニウム、鉄、銅などの金属基材、または表面をスリット状にエッチング加工したアルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラスなどのガラス基材なども利用可能である。
【0170】
ホモジニアス配向およびチルト配向の液晶重合体を形成する場合は、重合性液晶組成物の塗膜形成に先立って、これらのガラス基材及びプラスチックフィルム等の基材に、ラビング等による物理的、機械的な表面処理を行う。ホメオトロピック配向の液晶重合体を形成する場合はラビング等の表面処理を行わない場合が多い。該基材に、配向欠陥等を防止する点でラビング処理を行ってもよい。ラビング処理には任意の方法が採用できる。通常はレーヨン、綿、ポリアミドなどの素材からなるラビング布を金属ロールなどに捲き付け、基材または重合体被膜に接した状態でロールを回転させながら移動させる方法、ロールを固定したまま基材側を移動させる方法などが採用される。ラビング処理は基板に直接施されていてもよく、または基材上に予め一般に配向膜と呼ばれるポリイミドなどの重合体被膜を設け、その重合体被膜にラビング処理を施してもよい。ラビング処理の方法は前述
のとおりである。支持基板の種類によっては、その表面に酸化ケイ素を傾斜蒸着して配向能を付与することもできる。
【0171】
また、ホモジニアス配向およびチルト配向の液晶重合体を形成する場合は、基材上に予め一般に光配向膜と呼ばれるポリイミドやポリアクリレートなどの重合体被膜を設け、その重合体被膜に偏光UV処理を施してもよい。
【0172】
重合性液晶組成物またはその溶液を塗布するとき、均一な膜厚を得る必要がある。このときの塗布の方法は、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、およびダイコート法を例示できるが、これらに限定されない。ラビング等による基材の表面処理を行わないで、塗布時に重合性液晶組成物にせん断応力がかかるワイヤーバーコート法等を、重合性液晶組成物の配向を制御する場合に用いてもよい。
【0173】
本発明の重合性液晶組成物の溶液を塗布するときに、塗布後に基材上に膜厚の均一な重合性液晶組成物の層を形成させるために、熱処理を行ってもよい。熱処理に、ホットプレートや、乾燥炉、温風や熱風の吹き付けなどが利用できる。
【0174】
塗膜を熱処理する際の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、光源から照射する光の量などの好ましい範囲は、重合性液晶組成物に用いる化合物の種類と組成比、光重合開始剤の添加の有無やその添加量などに依存する。従って、以下に説明する塗膜の熱処理の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、および光源から照射する光の量についての条件は、あくまでもおよその範囲を示すものである。
【0175】
塗膜の熱処理は、重合性液晶組成物の均一配向性が得られる条件で行うことが好ましい。重合性液晶組成物の液晶相転移点以上で行ってもよい。熱処理方法の一例は、前記重合性液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度まで塗膜を加温して、塗膜中の重合性液晶組成物にネマチック配向を形成させる方法である。重合性液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度範囲内で、塗膜の温度を変化させることによってネマチック配向を形成させてもよい。この方法は、上記温度範囲の高温域まで塗膜を加温することによって塗膜中にネマチック配向を概ね完成させ、次いで温度を下げることによってさらに秩序だった配向にする方法である。上記のどちらの熱処理方法を採用する場合でも、熱処理温度は室温〜120℃である。この温度の好ましい範囲は室温〜100℃である。また、配向均一性をより向上させる目的で、80℃〜120℃の温度範囲にて熱処理した後、NI点−15℃〜NI点の温度範囲にてさらに熱処理を行ってもよい。熱処理時間は5秒〜2時間である。この時間の好ましい範囲は10秒〜40分であり、より好ましい範囲は20秒〜20分である。重合性液晶組成物からなる層の温度を所定の温度まで上昇させるためには、熱処理時間を5秒以上にすることが好ましい。生産性を低下させないためには、熱処理時間を2時間以内にすることが好ましい。このようにして重合性液晶層が得られる。
【0176】
重合性液晶層中に形成された液晶化合物のネマチック配向状態は、この液晶化合物を光照射により重合させることによって固定化される。光照射に用いられる光の波長は特に限定されない。電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)などを利用することができる。通常は、紫外線または可視光線を用いればよい。波長の範囲は150〜500nmである。好ましい範囲は250〜450nmであり、より好ましい範囲は300〜400nmである。光源の例は、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)である。光源の好ましい例は、メタルハライドランプやキセノンランプ、超高圧水銀ランプおよび高圧水銀ランプである。光源と重合性液晶層との間にフィルターなどを設置して特定の波長領域のみを
通すことにより、照射光源の波長領域を選択してもよい。光源から照射する光量は、塗膜面到達時で2〜5000mJ/cm
2である。光量の好ましい範囲は10〜3000mJ
/cm
2であり、より好ましい範囲は100〜2000mJ/cm
2である。光照射時の温度条件は、上記の熱処理温度と同様に設定されることが好ましい。また、重合環境の雰囲気は窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気、空気雰囲気のいずれでもよい。窒素雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気が硬化性を向上させる観点から好ましい。
【0177】
重合性液晶層、およびこれを光や熱などにより重合させた液晶重合体を様々な光学素子に用いる場合、または液晶表示装置に用いる光学補償素子として適用する場合には、厚み方向における液晶分子のチルト角の分布の制御が極めて重要となる。
【0178】
チルト角を制御する方法の一つは、重合性液晶組成物に用いる液晶化合物の種類や組成比などを調整する方法である。この重合性液晶組成物に他の成分を添加することによっても、チルト角を制御することができる。液晶重合体のチルト角は、重合性液晶組成物中の溶剤の種類や溶質濃度、他の成分の1つとして加える界面活性剤の種類や添加量などによっても制御することができる。基材または重合体被膜の種類やラビング条件、重合性液晶組成物の塗膜の乾燥条件や熱処理条件などによっても、液晶重合体のチルト角を制御することができる。さらに、配向後の光重合工程での照射雰囲気や照射時の温度なども液晶重合体のチルト角に影響を与える。即ち、液晶フィルムの製造プロセスにおけるほとんど全ての条件が多少なりともチルト角に影響を与えると考えてよい。従って、重合性液晶組成物の最適化と共に、液晶重合体の製造プロセスの諸条件を適宜選択することにより、任意のチルト角にすることができる。
【0179】
ホモジニアス配向は、本発明の重合性液晶組成物を、ラビング等の表面処理を行った基材の表面に塗布し、塗膜を形成させることによって得られる。
【0180】
本発明の重合性液晶組成物にはキラルな化合物、つまりは光学活性を有する化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好適例は、式(Op−1)〜(Op−25)で表される化合物である。これらの式において、Akは独立して炭素数1〜15のアルキルまたは炭素数1〜15のアルコキシを、Me、EtおよびPhはそれぞれ、メチル、エチルおよびフェニルを表す。P
2は独立して重合性の基であり、(メタ)アクリロイルオキシ、ビニ
ルオキシ、オキシラニル、またはオキセタニルを含む基であることが好ましい。本発明の重合性液晶組成物は以下に説明する重合体の原料として用いる他、液晶表示素子の構成要素である液晶として用いてもよい。
【0182】
【化38】
具体例として、特開2011−148762号公報のp.70の段落0159〜p.81の段落0170記載の化合物がある。
【0183】
光学活性を有する化合物を含有した重合性液晶組成物、または、光学活性を有する重合性化合物を含有した重合性液晶組成物を、配向処理した基材に塗布して重合することによって、らせん構造(ツイスト構造)を示す位相差フィルムとしての基材つき液晶重合体が得られる。重合性液晶組成物の重合によって、このらせん構造が固定される。得られる液晶重合体の特性は、得られたらせん構造のらせんピッチに依存する。このらせんピッチ長は、光学活性化合物の種類および添加量により調整できる。添加する光学活性化合物は1つでもよいが、らせんピッチの温度依存性を相殺する目的で複数の光学活性化合物を用いてもよい。なお、重合性液晶組成物には、光学活性化合物の他に、その他の重合性化合物が含まれてもよい。
【0184】
上記のような液晶重合体の特性である可視光の選択反射は、らせん構造が入射光に作用し、円偏光や楕円偏光を反射させるものである。選択反射特性はλ=n・Pitch(λは選
択反射の中心波長、nは平均屈折率、Pitchはらせんピッチ)で表されるため、nまたはPitchを変えることにより中心波長(λ)および波長幅(Δλ)を適宜調整することができる。色純度を改善するには波長幅(Δλ)を小さくすればいい。広帯域の反射を改善する
には波長幅(Δλ)を大きくすればよい。さらにこの選択反射は重合体の厚みの影響も大きく受ける。色純度を保つために、液晶重合体の厚みが小さくなりすぎないようにしなければならない。均一な配向性を保つために、液晶重合体の厚みが大きくなりすぎないようにしなければならない。したがって、適度な液晶重合体の厚みの調整が必要であり、0.5〜25μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
【0185】
らせんピッチを可視光よりさらに短くすることで、W. H. de Jeu, Physical Properties of Liquid Crystalline Materials, Gordon and Breach, New York(1980)に記載のネガティブ型Cプレート(Negative C plate)を調製できる。らせんピッチを短くするためには、ねじり力(HTP:ヘリカル・ツイスティング・パワー)の大きな光学活性化合物を用い、さらにその添加量を増やすことで達成できる。具体的にはλを350nm以下、好ましくは250nm以下とすることで、ネガティブ型Cプレートを調製できる。このネガティブ型Cプレートは液晶表示素子のうちVAN型、VAC型、OCB型等の表示素子に適した光学補償膜である。
【0186】
液晶重合体は、らせんピッチを可視光より長くすることで特開2004−333671号公報に記載されているような反射波長領域を近赤外(波長800〜2500nm)に設定した反射フィルムに用いることができる。らせんピッチを長くするためには、例えば、ねじり力の小さな光学活性化合物を用いること、または光学活性化合物の添加量を減らすことにより達成できる。
【0187】
上記光学活性化合物は、らせん構造を誘起し、ベースとなる重合性液晶組成物と適切に混合できれば、いずれの光学活性化合物を用いてもよい。また、重合性化合物でも非重合性化合物のいずれでもよく、目的に応じて最適な化合物を添加することができる。耐熱性および耐溶剤性を考慮した場合、重合性化合物の方が好適である。
【0188】
さらに上記光学活性化合物の中でも、ねじり力(HTP:ヘリカル・ツイスティング・パワー)が大きいものは、らせんピッチを短くする上で好適である。ねじり力の大きな化合物の代表例が、GB2298202号公報、DE10221751号公報で開示されている。
【0189】
基材つき液晶重合体の厚さ(膜厚)は、目的とする素子に応じたレターデーションや液晶フィルムの複屈折率(光学異方性の値)によって適当な厚さが異なる。従って、厚さの範囲は目的に依存する。厚さの範囲は、0.05〜100μmである。より好ましい範囲は0.1〜50μmである。さらに好ましい範囲は0.5〜20μmである。液晶重合膜の好ましいヘイズ値は2.0%以下であり、好ましい透過率は80%以上である。より好ましいヘイズ値は1.0%以下である。より好ましい透過率は90%以上である。可視光領域でこれらの条件を満たす透過率を有することが好ましい。
【0190】
液晶重合体の複屈折率(光学異方性の値)が高いほど基材つき液晶重合体の厚みを薄くできる。厚みが薄いほど基材つき液晶重合体のヘイズ値や透過率などの光学特性は良くなる傾向がある。
液晶重合膜は、液晶表示素子(特に、アクティブマトリックス型およびパッシブマトリックス型の液晶表示素子)に適用する光学補償素子として有効である。この液晶重合膜を光学補償膜として使用するのに適している液晶表示素子の型の例は、IPS型(イン・プレ
ーン・スイッチング)、OCB型(光学的に補償された複屈折)、TN型(ツィステッド・ネ
マティック)、STN型(スーパー・ツィステッド・ネマティック)、ECB型(電気的に制御された複屈折)、DAP型(整列相の変形効果)、CSH型(カラー・スーパー・ホメオトロピック)、VAN/VAC型(垂直配向したネマチック/コレステリック)、OMI型(光学モード
干渉)、SBE型(超複屈折効果)などである。さらにゲスト−ホスト型、強誘電性型、反
強誘電性型などの表示素子用の位相レターダーとして、この液晶重合膜を使用することもできる。なお、液晶重合膜に求められるチルト角の厚み方向の分布や厚みなどのパラメーターの最適値は、補償すべき液晶表示素子の種類とその光学パラメーターに強く依存するので、素子の種類によって異なる。
【0191】
液晶重合膜は、偏光板などと一体化した光学素子としても使用することができる。この場合に、液晶重合膜は、液晶セルの外側に配置させられる。一方、光学補償素子としての液晶重合膜は、セルに充填された液晶への不純物の溶出がないかまたは少ないので、液晶セルの内部に配置させることも可能である。例えば、特開2008−01943号公報に開示されている方法を応用すれば、カラーフィルター上に重合性液晶層を形成することでカラーフィルターの機能を更に向上させることが可能となる。また本発明の液晶重合膜が適用できる光学素子に用いられる偏光板の種類には、特に制限はない。広く実用されているヨウ素をドープした吸収型の偏光板はもとより、ワイヤーグリッド偏光板等の反射型偏光板の光学補償にも好適に用いることが出来る。
【0192】
液晶重合体の原料は二色性色素等の添加物を含有してもよい。二色性色素は、300〜700nmの範囲に極大吸収波長(λ
MAX)を有するものが好ましい。このような二色性
色素は、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素を例示できるが、これらに限定されない。アゾ色素は、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素を例示できるが、これらに限定されない。二色性色素と複合化したホモジニアス配向の液晶重合膜は、吸収型偏光板としても使用することができる。また、蛍光色素と複合化したホモジニアス配向の液晶重合膜は、偏光発光型フィルムとしても使用することができる。
【0193】
本発明にかかる基材つき液晶重合体は、波長450nmにおける複屈折率Δn(450)と波長550nmにおける複屈折率Δn(550)がΔn(450)/Δn(550)≦1.05の関係を満たし、かつ波長650nmにおける複屈折率Δn(650)と波長550nmにおける複屈折率Δn(550)がΔn(650)/Δn(550)≧0.97の関係を満たす波長分散特性を有する。上記波長分散特性を満たす液晶重合膜は重合性液晶化合物を用いた従来からの光学異方性フィルムと比較し、色むらや視野角などの視認性を向上させることができる。
特に、0.75≦Δn(450)/Δn(550)≦1.05、かつ0.97≦Δn(650)/Δn(550)≦1.24の関係を満たす波長分散特性を有することがさらに好ましい。
Δn(450)/Δn(550)の値が小さすぎると、緑に対して最適なレターデーションを設定した場合は、青のレターデーションが最適値から小さすぎる値になってしまうため、視野角特性が悪くなる。該値が大きすぎると、緑に対して最適なレターデーションを設定した場合に青のレターデーションが最適値から大きすぎる値になってしまうため、視野角特性が悪くなる。
また、Δn(650)/Δn(550)の値が小さすぎると緑に対して最適なレターデーションを設定した場合に赤のレターデーションが最適値から小さすぎる値になってしまうため、視野角特性が悪くなる。該値が大きすぎると緑に対して最適なレターデーションを設定した場合に赤のレターデーションが最適値から大きすぎる値になってしまうため、視野角特性が悪くなる。
前記関係式を満足するものは、従来のものとは異なり、屈折率の波長分散特性が低いもの、または波長が大きくなるに伴い複屈折率が大きくなるものとなる。前記関係式を満足するものは、より最適化された光学異方性フィルム材料となる。
【0194】
さらに、本発明によって、下記の効果の実現が期待できる。
(A)液晶ディスプレイなどの光学デバイスにおいて、光学デバイスの光源から放出さ
れる光の波長に応じた偏光状態の変化が抑制され、意図した色相の実現、
(B)有機ELディスプレイなどの光学デバイスにおいて、可視領域の全波長の光に対して効果的な反射防止機能、
(C)上記(A)および(B)に供すことのできる液晶重合膜の原料が、有機溶媒と相溶性が高いことによる、基材つき液晶重合体の製造過程そのほかの段階での取り扱いの容易化、または、
(D)上記(A)および(B)に供すことのできる液晶重合膜の原料が、室温下での液晶相保持時間が長いことによる、基材つき液晶重合体の製造過程そのほかの段階での取り扱いの容易化。
【実施例】
【0195】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されない。
【0196】
本発明の実施例において、「DCC」は1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドである。
本発明の実施例において、「DMAP」は4−ジメチルアミノピリジンである。
【0197】
本発明の実施例において、「IPA」は2−プロパノールである。
本発明の実施例において、「pTSA」はp−トルエンスルホン酸である。
本発明の実施例において、「THF」はテトラヒドロフランである。
【0198】
本発明の実施例において、「Irg−907」は、BASFジャパン(株)製のイルガキュアー(商標)907(Irg−907)である。
本発明の実施例において、「FTX−218」は、(株)ネオス製のフタージェント(商標)FTX−218である。
本発明の実施例において、「NCI−930」は、(株)ADEKA製のアデカクルーズ(商標)NCI−930である。
本発明の実施例において、「PF No.75」は、共栄社化学(株)のポリフロー(商標)No.75である。
【0199】
本発明の実施例において、「PIA−5370」は、JNC(株)製のリクソンアライナーPIA−5370である。
【0200】
本発明の実施例において、「TF370」は、エボニック・ジャパン(株)のTEGOFlow(商標)370である。
【0201】
<化合物の構造確認>
500MHzのプロトンNMRの測定により化合物の構造を確認した。計測対象の化合物を、CDCl
3に溶解させて、計測した。測定したピークの位置を単位ppmをのぞいて表し、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、mはマルチプレットを表す。プロトンNMRの測定には、ブルカー製のDRX−500を用いた。
【0202】
<相転移温度>
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、3℃/分で試料を加熱しながら、試料の相が転移する温度を測定した。一部の試料は、偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、3℃/分で冷却しながら相が別の相に転移する温度も測定した。
【0203】
<重合性液晶組成物の重合条件>
窒素雰囲気下において、室温で超高圧水銀灯を用いて光を照射して、重合性液晶組成物を重合させた。該超高圧水銀灯は、ウシオ電機社製のマルチライト−250である。
【0204】
光照射量は、照射対象の表面に500mJ/cm
2になるように調整した。
該光照射強度は、ウシオ電機社製の紫外線照度計であるUIT−150−Aおよびウシオ電機社製の受光器であるUVD−S365を用いて計測した。
【0205】
<重合性液晶組成物の重合条件>
窒素雰囲気下において、室温で超高圧水銀灯を用いて光を照射して、重合性液晶組成物を重合させた。該超高圧水銀灯は、ウシオ電機社製のマルチライト−250である。
【0206】
光照射量は、照射対象の表面に500mJ/cm
2になるように調整した。
該光照射強度は、ウシオ電機社製の紫外線照度計であるUIT−150−Aおよびウシオ電機社製の受光器であるUVD−S365を用いて計測した。
【0207】
<配向の評価>
(1)ラビング処理済み配向膜付きの、ガラス基材を、以下の手順で作製した。
(i)PIA−5370を、ガラス基材にスピンコートし、ガラス基材に塗膜を作成し
、
(ii)該ガラス基材を80℃のホットプレート上に置くことで、該塗膜の溶媒を除去し、
(iii)該ガラス基材を、30分間、230℃のオーブンで焼成し、
(iv)該ガラス基材の塗膜を、一方向にレーヨン布で拭くことでラビング処理した。
【0208】
(2)目視による観察方法
クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に、基材つき液晶重合体を挟持して観察し、基材を水平面内で回転させ、明暗の状態を確認した。基材つき液晶重合体を偏光顕微鏡で観察し、配向欠陥の有無を確認した。
【0209】
(3)偏光解析装置による測定
基材つき液晶重合体のレターデーションを、シンテック(株)製のOPIPRO偏光解析装置で計測した。該計測は、450nm、550nmおよび650nmの波長を有する光を、基材つき液晶重合体のフィルム面に照射して行った。該照射光のフィルム面上の入射角を、−50°から、5°ずつ増加させながら、50°まで、該レターデーションを計測した。
【0210】
<膜厚測定>
液晶重合体の膜厚を以下の手順で測定した。
(1)液晶重合体の層を、基材つき液晶重合体から削り出し、
(2)前記削り出しによってできた段差の深さを、微細形状測定装置で測定した。
【0211】
ここで、微細形状測定装置は、KLA TENCOR(株)製のアルファステップIQである。
【0212】
<Δn(550)の算出>
Δn(550)は、ホモジニアス配向を有する基材つき液晶重合体のRe
550を膜厚で除算することで、算出した。
【0213】
[実施例1]
化合物(1−1−1−1)を以下の手順で合成した。
【0214】
【化39】
【0215】
1,2−ジアミノ−3,6−ジメトキシベンゼンは、Org. Lett. 13, 10, 2642(2011)に従って合成した。
【0216】
5.8gの1,2−ジアミノ−3,6−ジメトキシベンゼンおよび4.6gのフェニル
グリオキサールを、58mLのエタノールに加え、窒素雰囲気下室温で攪拌し、0.7gのアミノ硫酸を少しずつ加えた。その後、室温で8時間攪拌した。さらに、水および酢酸エチルを加え有機層を抽出し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をトルエン/ヘプタン混合液で再結晶することにより、化合物(ex−1)9.2gを得た。ここで、該トルエン/ヘプタン混合液の容積比は、15:1である。
【0217】
7.9gの化合物(ex−1)を、80mLのジクロロメタンに加え、窒素雰囲気下の−60℃以下で冷却しながら撹拌した。そこへ、16.4gのBBr
3を滴下した。滴下
後、−60℃以下で1時間攪拌し、その後室温で16時間撹拌した。反応液を氷水に注ぎ込みクエンチし、酢酸エチルを加え有機層を抽出した。有機層を飽和重曹水で洗浄し、さらに水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、減圧乾燥することにより、3.3gの化合物(ex−2)を得た。
【0218】
25.0gのtrans−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸および26.3gのト
リエチルアミンを、125mLのジメチルホルムアミドに加え、窒素雰囲気下10℃以下で冷却しながら撹拌した。そこへ、14.7gのクロロメチルメチルエーテルをゆっくり滴下した。滴下後、室温で8時間撹拌した。さらに酢酸エチルおよび水を加えて有機層を抽出し、有機層を飽和重曹水および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、減圧乾燥することにより、25.2gの化合物(ex−3)を得た。ただし、該カラムクロマトグラフィーのカラム充填物は、シリカゲルである。ただし、該カラムクロマトグラフィーの溶離液は、容積比2:1のトルエンと酢酸エチルとの混合物である。
【0219】
化合物(ex−4)は、特開2008−239873号の実施例1と同様の方法で合成した。
【0220】
25.2gの化合物(ex−3)、42.9gの化合物(ex−4)および3.3gのDMAPを、430mLのジクロロメタンに加え、窒素雰囲気下で氷浴で5℃に冷却しながら撹拌した。そこへ、60mLの、29.0gの1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを溶解させたジクロロメタン溶液を滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析
出した沈殿物を濾別し、有機層を飽和重曹水および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、減圧乾燥した。ただし、該カラムクロマトグラフィーのカラム充填物は、シリカゲルである。ただし、該カラムクロマトグラフィーの溶離液は、容積比4:1のトルエンと酢酸エチルとの混合物である。
【0221】
得られた残渣および2.1gのpTSAを、110mLのTHFおよび55mLのIPAの混合溶液に加え、40℃で8時間加熱撹拌した。さらに、酢酸エチルおよび水を加えて有機層を抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、容積比15:1の酢酸エチルとヘプタンとの混合溶液で再結晶することにより、31.8gの化合物(ex−5)を得た。
【0222】
1.3gの化合物(ex−2)、5.0gの化合物(ex−5)および0.3gのDMAPを、50mLのジクロロメタンに加え、窒素雰囲気下で氷浴で5℃に冷却しながら撹拌した。そこへ、5mLの、2.4gのDCCを溶解させたジクロロメタン溶液を滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、メタノールで再結晶することにより、3.8gの化合物(1−1−1−1)を得た。ただし、該カラムクロマトグラフィーのカラム充填物は、シリカゲルである。ただし、該カラムクロマトグラフィーの溶離液は、容積比8:1のトルエンと酢酸エチルの混合物である。
【0223】
化合物(1−1−1−1)を加熱すると104℃で結晶相から等方性液体へ転移した。
化合物(1−1−1−1)を冷却すると94℃で等方性液体からネマチック相へ転移した。
【0224】
化合物(1−1−1−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
9.29(s,1H),8.09(d,2H),7.58−7.52(m,3H),7.46(d,1H),7.41(d,1H),7.12(d,4H),6.82(d,4H),6.40(d,2H),6.16−6.08(m,2H),5.81(d,2H),4.87−4.79(m,2H),4.17(t,4H),3.94(t,4H),2.91(t,4H),2.85−2.76(m,2H),2.61(t,4H),2.38−2.29(m,4H),2.17−2.09(m,4H),1.94−1.67(m,12H),1.56−1.41(m,12H).
【0225】
[実施例2]
実施例1に記載の手順において、フェニルグリオキサールを1−フェニル−1,3−プ
ロパンジオンに変更することで、化合物(1−1−2−1)を合成した。
【0226】
【化40】
【0227】
化合物(1−1−2−1)を加熱すると71℃で結晶相からネマチック相へ転移した。化合物(1−1−2−1)を冷却すると89℃でネマチック相から等方性液体へ転移した
。
【0228】
化合物(1−1−2−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
7.64−7.59(m,2H),7.53−7.48(m,3H),7.40−7.35(m,2H),7.11(t,4H),6.85−6.79(m,4H),6.40(d,2H),6.16−6.08(m,2H),5.81(d,2H),4.88−4.82(m,1H),4.77−4.69(m,1H),4.17(t,4H),3.93(t,4H),2.93−2.86(m,4H),2.83−2.67(m,5H),2.63−2.55(m,4H),2.35−2.29(m,2H),2.24−2.10(m,4H),2.07−2.00(m,2H),1.94−1.67(m,10H),1.57−1.37(m,12H)
【0229】
[実施例3]
実施例1に記載の手順において、フェニルグリオキサールを1−フェニル−1,3−プ
ロパンジオンに変更することで、化合物(1−5−1−1)を合成した。
【0230】
【化41】
【0231】
化合物(1−5−1−1)を加熱すると、89℃で結晶相からスメクチック相へ転移し、137℃でスメクチック相からネマチック相へ転移し、146℃でネマチック相から等方性液体へ転移した。
【0232】
化合物(1−5−1−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
7.96−7.90(m,2H),7.79(t,1H),7.64(m,1H),7.49(d,1H),7.41(d,2H),7.13(d,4H),6.83(d,4H),6.40(d,2H),6.16−6.08(m,2H),5.81(d,2H),4.91−4.84(m,2H),4.17(t,4H),3.94(t,4H),2.95−2.89(m,4H),2.87−2.78(m,2H),2.66−2.59(m,4H),2.41−2.29(m,4H),2.22−2.12(m,4H),1.97−1.68(m,12H),1.60−1.41(m,12H).
【0233】
[実施例4]
化合物(1−2−1−1)を以下の手順で合成した。
【0234】
【化42】
【0235】
2−アミノ−3,6−ジメトキシベンズアルデヒドは、Heterocyclic communications. 8, 2, 135(2002)、およびJ.Org.Chem. 58, 7, 1666(1993)に従って合成した。
【0236】
5.0gの2−アミノ−3,6−ジメトキシベンズアルデヒド、3.3gのアセトフェ
ノンおよび1.7gの水酸化カリウムを、50mLのエタノールに加え、窒素雰囲気下で8時間、攪拌しながら還流した。放冷後、水および酢酸エチルを加え有機層を抽出し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、減圧乾燥することにより、5.8gの化合物(ex−6)を得た。
【0237】
7.9gの化合物(ex−6)を、80mLのジクロロメタンに加え、窒素雰囲気下でドライアイスバスで−60℃以下に冷却しながら撹拌した。そこへ、16.4gのBBr
3を滴下した。滴下後、−60℃以下で1時間攪拌し、その後室温で16時間撹拌した。
該溶液を氷水に注ぎ込みクエンチし、酢酸エチルを加え有機層を抽出した。有機層を飽和重曹水で洗浄し、その後、水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、減圧乾燥することにより、3.3gの化合物(ex−7)を得た。
【0238】
1.3gの化合物(ex−7)、5.0gの化合物(ex−5)および0.3gのDMAPを、50mLのジクロロメタンに加え、窒素雰囲気下で氷浴で5℃に冷却しながら撹拌した。そこへ、5mLの、2.4gのDCCを溶解させたジクロロメタン溶液を滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。
【0239】
析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、メタノールで再結晶することにより、3.3gの化合物(1−2−1−1)を得た。ただし、該カラムクロマトグラフィーのカラム充填物は、シリカゲルである。ただし、該カラムクロマトグラフィーの溶離液は、容積比8:1のトルエンと酢酸エチルとの混合物である。
【0240】
化合物(1−2−1−1)を加熱すると、107℃で結晶相からネマチック相へ転移し、111℃でネマチック相から等方性液体へ転移した。
【0241】
化合物(1−2−1−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
8.19(d,1H),8.06(d,2H),7.91(d,1H),7.55−7.45(m,3H),7.40(d,1H),7.26(d,1H),7.12(d,4H),6.82(d,4H),6.40(d,2H),6.16−6.08(m,2H),5.81(d,2H),4.87−4.77(m,2H),4.19−4.14(m,4H),3.94(t,4H),2.91(t,4H),2.85−2.70(m,2H),2.61(t,4H),2.40−2.28(m,4H),2.17−2.09(m,4H),1.95−1.67(m,12H),1.56−1.41(m,12H).
【0242】
[実施例5]
実施例3に記載の手順において、アセトフェノンを2−アセチルチオフェンに変更することで、化合物(1−2−4−1)を合成した。
【0243】
【化43】
【0244】
化合物(1−2−4−1)を加熱すると、84℃で結晶相からスメクチック相へ転移し、115℃でネマチック相から等方性液体へ転移した。
【0245】
化合物(1−2−4−1)のプロトンNMRシグナルは以下のとおりであった。
8.10(d,1H),7.82(d,2H),7.68(d,1H),7.49(d,1H),7.36(d,1H),7.18(d,1H),7.16−7.10(m,5H),6.86−6.81(m,4H),6.39(d,2H),6.16−6.08(m,2H),5.81(d,2H),4.87−4.77(m,2H),4.17(t,4H),3.94(t,4H),2.94−2.87(m,4H),2.85−2.79(m,1H),2.75−2.68(m,1H),2.64−2.58(m,4H),2.47−2.40(m,2H),2.34−2.27(m,2H),2.18−2.09(m,4H),1.97−1.66(m,12H),1.58−1.42(m,12H).
【0246】
[実施例6]
実施例3に記載の手順において、アセトフェノンを2−アセチルベンゾチオフェンに変更することで、化合物(1−2−5−1)を合成した。
【0247】
【化44】
【0248】
化合物(1−2−5−1)を加熱すると、108℃で結晶相からネマチック相へ転移し、125℃でネマチック相から等方性液体へ転移した。
【0249】
化合物(1−2−5−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
8.15(d,1H),7.97(d,1H),7.93(s,1H),7.92−7.89(m,1H),7.85−7.82(m,1H),7.42−7.36(m,3H),7.28−7.24(m,2H),7.17−7.10(m,4H),6.87−6.81(m,4H),6.40(d,2H),6.16−6.09(m,2H),5.82(d,2H),4.95−4.87(m,1H),4.85−4.78(m,1H),4.19−4.14(m,4H),3.94(t,4H),2.96−2.87(m,5H),2.77−2.69(m,1H),2.66−2.59(m,4H),2.51−2.45(m,4H),2.34−2.27(m,2H),2.23−2.10(m,4H),2.03−1.93(m,2H),1.87−1.67(m,10H),1.63−1.42(m,12H).
【0250】
[実施例7]
実施例1に記載の手順において、フェニルグリオキサールを1,2−ジ−2−チエニル−1,2−エタンジオンに変更することで、化合物(1−1−10−1)を合成した。
【0251】
【化45】
【0252】
化合物(1−1−10−1)を加熱すると、139℃で結晶相から等方性液体へ転移した。化合物(1−1−10−1)を冷却すると、121℃で等方性液体からネマチック相へ転移した。
【0253】
化合物(1−1−10−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
7.51(d,2H),7.35(s,2H),7.30(d,2H),7.12(d,4H),7.02−6.99(m,2H),6.83(d,4H),6.40(d,2H),6.15−6.09(m,2H),5.81(d,2H),4.86−4.78(m,2H),4.17(t,4H),3.94(t,4H),2.91(t,4H),2.81−2.73(m,2H),2.60(t,4H),2.38−2.31(m,2H),2.16−2.09(m,4H),1.92−1.68(m,12H),1.56−1.42(m,12H).
【0254】
[実施例8]
実施例1に記載の手順において、フェニルグリオキサールを2,3−ペンタンジオンに変更することで、化合物(1−1−12−1)を合成した。
【0255】
【化46】
【0256】
化合物(1−1−12−1)を加熱すると80℃で結晶相からネマチック相へ転移し、138℃でネマチック相から等方性液体へ転移した。
【0257】
化合物(1−1−12−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
7.31(s,2H),7.12(d,4H),6.82(d,4H),6.40(d,2H),6.15−6.09(m,2H),5.81(d,2H),4.87−4.78(m,2H),4.17(t,4H),3.94(t,4H),2.91(t,4H),2.81−2.73(m,2H),2.99−2.94(m,2H),2.90(t,4H),2.80−2.70(m,2H),2.67(s,3H),2.60(t,4H),2.34−2.26(m,4H),2.16−2.08(m,4H),1.90−1.67(m,12H),1.56−1.42(m,12H),1.35(t,3H).
【0258】
[実施例9]
化合物(1−6−1−1)を以下の手順で合成した。
【0259】
【化47】
【0260】
化合物(ex−8)は、Journal of Organometallic Chemistry, 750. (2014). 98-106に従って合成した。
【0261】
1.0gの化合物(ex−8)および0.8gのフェニルグリオキサールを、10mLのエタノールに加え、窒素雰囲気下室温で攪拌し、そこへ、0.1gのアミノ硫酸を加えた。その後、室温で8時間攪拌した。反応液に水を加え、析出物をろ別した。得られた結晶を水で洗浄することにより、1.5gの化合物(ex−9)を得た。
【0262】
1.4gの化合物(ex−9)を、14mLのエタノールに加え、氷浴で5℃に冷却し、窒素雰囲気下撹拌した。そこへ、0.4gの水素化ホウ素ナトリウムを加えた。その後、5℃で3時間攪拌した。その後、1N塩酸水溶液を酸性になるまでゆっくり滴下した。析出物をろ別し、得られた結晶を水でよく洗浄することにより、化合物(ex−10)1.2gを得た。
【0263】
1.2gの化合物(ex−10)、3.8gの化合物(ex−5)および0.2gのDMAPを、35mLのジクロロメタンに加え、氷浴で5℃に冷却し、窒素雰囲気下撹拌した。そこへ、5mLの、1.9gのDCCを溶解させたジクロロメタン溶液を滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。
【0264】
析出物を濾別し、ろ液に水を加え有機層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、メタノールで再結晶することにより、2.4gの化合物(1−6−1−1)を得た。ただし、該カラムクロマトグラフィーのカラム充填物は、シリカゲルである。ただし、該カラムクロマトグラフィーの溶離液は、容積比8:1のトルエンと酢酸エチルとの混合物である。
【0265】
化合物(1−6−1−1)を加熱すると、122℃で結晶相から等方性液体へ転移した。
【0266】
化合物(1−6−1−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
9.33(s,1H),8.18−8.10(m,4H),7.65−7.55(m,5H),7.13(d,4H),6.83(d,4H),6.40(d,2H),6.16−6.08(m,2H),5.81(d,2H),4.92−4.85(m,2H),4.17(t,4H),3.94(t,4H),3.04−2.96(m,2H),2.
92(t,4H),2.62(t,4H),2.52−2.43(m,4H),2.24−2.17(m,4H),2.07−1.94(m,4H),1.83−1.67(m,12H),1.63−1.42(m,12H).
【0267】
[比較例1]
化合物(C−1)を以下の手順で合成した。
【0268】
【化48】
【0269】
化合物(cex−1)は、特開2015−157776号公報の実施例1と同様の方法で合成した。
【0270】
化合物(cex−2)は、特開2016−128403号公報の実施例1と同様の方法で合成した。
【0271】
5.0gの化合物(cex−1)、1.5gの化合物(cex−2)、および0.3gのDMAPを、50mLのジクロロメタンに加え、窒素雰囲気下で氷浴で5℃に冷却しながら撹拌した。そこへ、5mLの、2.5gのDCCを溶解させたジクロロメタン溶液を滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、メタノールで再結晶することにより、3.8gの化合物(C−1)を得た。ただし、該カラムクロマトグラフィーのカラム充填物は、シリカゲルである。ただし、該カラムクロマトグラフィーの溶離液は、容積比4:1のトルエンと酢酸エチルとの混合物である。
【0272】
化合物(C−1)を加熱すると、104℃で結晶相からスメクチック相へ転移し、125℃でスメクチック相からネマチック相へ転移した。220℃付近にて重合したため、等方性液体への転移は確認できなかった。
【0273】
化合物(C−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
8.09−8.03(m,2H),7.55−7.46(m,3H),7.21(s,2H),7.00(d,4H),6.89(d,4H),6.41(d,2H),6.18−6.09(m,2H),5.83(d,2H),4.24(t,4H),3.99(t,4H),2.86−2.78(m,1H),2.75−2.59(m,3H),2.49−2.30(m,8H),1.92−1.65(m,16H).
【0274】
化合物(C−2)を以下の手順で合成した。
【0275】
【化49】
【0276】
10.0gの化合物(cex−1)、1.7gの2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、および0.6gのDMAPを、100mLのジクロロメタンに加え、窒素雰囲気下で氷浴で5℃に冷却しながら撹拌した。そこへ、5mLの、5.1gのDCCを溶解させたジクロロメタン溶液を滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。
【0277】
析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、メタノールで再結晶することにより、8.1gの化合物(cex−3)を得た。ただし、該カラムクロマトグラフィーのカラム充填物は、シリカゲルである。ただし、該カラムクロマトグラフィーの溶離液は、容積比4:1のトルエンと酢酸エチルとの混合物である。
【0278】
5.0gの化合物(cex−3)、0.2gの(±)−10−カンファースルホン酸を、100mLのTHFおよび20mLのエタノールの混合溶媒に加え、窒素雰囲気下で氷浴で5℃に冷却しながら撹拌した。そこへ、20mLの、1.1gの2−ヒドラジノベンゾチアゾールを溶解させたTHF溶液を滴下した。酢酸エチルおよび水を加え有機層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0279】
減圧下で溶剤を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、メタノールで再結晶することにより、化合物(C−2)2.2gを得た。ここで、該カラムクロマトグラフィーの溶離液は、容積比5:1のトルエンと酢酸エチルとの混合物である。
【0280】
化合物(C−2)を加熱すると、174℃で結晶相からネマチック相へ転移した。化合物(C−2)を更に加熱すると220℃付近にて重合したため、等方性液体への転移は確認できなかった。
【0281】
化合物(C−2)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
12.63(s,1H),8.10(s,1H),7.80(d,1H),7.61(d,1H),7.48(s,1H),7,35−7.21(m,3H),7.14(t,1H),6.99(d,4H),6.88(d,4H),6.41(d,2H),6.16−6.09(m,4H),5.83(d,2H),4.18(t,4H),3.95(t,4H),2.53−2.67(m,2H),2.64−2.57(m,2H),2.38−2.28(m,8H),1.84−1.65(m,16H).
【0282】
化合物(M1−13−1)は以下の手順で合成した。
【0283】
【化50】
【0284】
30.0gの化合物(ex−4)、23.1gのtrans−4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール、および2.3gのDMAPを、300mLのジクロロメタンに加え、窒素雰囲気下で氷浴で5℃に冷却しながら撹拌した。そこへ、40mLの、20.3gのDCCを溶解させたジクロロメタン溶液を滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。
【0285】
析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、メタノールで再結晶することにより、36.8gの化合物(M1−13−1)を得た。ただし、該カラムクロマトグラフィーのカラム充填物は、シリカゲルである。ただし、該カラムクロマトグラフィーの溶離液は、容積比40:1のトルエンと酢酸エチルとの混合物である。
【0286】
化合物(M1−13−1)は昇温時に39℃で結晶相からスメクチック相へ転移し、76℃でスメクチック相からネマチック相へ転移し、86℃でネマチック相から等方性液体へ転移した。
【0287】
化合物(M1−13−1)のプロトンNMRのシグナルは以下のとおりであった。
7.20−7.14(m,4H),6.92(d,2H),6.84(d,2H),6.41(d,1H),6.18−6.09(m,1H),5.83(d,1H),4.17(t,2H),3.95(t,2H),3.01(t,2H),2.83(t,2H),2.48−2.40(m,1H),1.90−1.68(m,8H),1.56−1.18(m,15H),1.08−0.98(m,2H),0.89(t,3H).
【0288】
化合物(M2−3−1)は、特許第4063873号の例6と同様の方法で合成した。
【0289】
化合物(M2−1−1)は、Makromolekulare Chemie (1991), 192(1), 59-74に記載の方法と同様の方法で合成した。
【0290】
【化51】
[実施例10]
表1に示した、化合物、重合開始剤、界面活性剤およびシクロヘキサンを、それぞれ、表1に示した含有量になるように混ぜて、重合性液晶組成物(S−1)から(S−11)を作成した。ただし、表1中の「0」は、該当する物を含有していないことを示す。
【0291】
【表1】
【0292】
[比較例1]
表2に示した、化合物、重合開始剤、界面活性剤およびシクロヘキサノンを、それぞれ、表2に示した含有量になるように混ぜて、重合性液晶組成物(SC−1)から(SC−4)を作成した。ただし、表1中の「0」は、該当する物を含有していないことを示す。
【0293】
【表2】
【0294】
<基材つき液晶重合体の作製>
[実施例11]
基材つき液晶重合体(F−1)を以下の手順で作成した。
手順(1) ラビング処理済み配向膜付きのガラスの基材の上へ、重合性液晶組成物(S−1)を、スピンコートにより塗布した。
手順(2) ホットプレートを使って、該基材を、80〜100℃で2分間加熱し、重合性液晶組成物中の溶媒を除去した。
手順(3) 続けて、ホットプレートの温度を下げ、該基材の重合性液晶組成物が液晶相となった温度で、2分間、該温度を一定に維持した。
手順(4) 続けて、該基材を室温で1分間冷却し、
手順(5) 該基材を空気中で紫外線照射により重合させた。
【0295】
基材つき液晶重合体(F−1)は、配向欠陥なしであった。
【0296】
[実施例12]
実施例11に記載の手順で、重合性液晶組成物(S−1)の代わりに重合性液晶組成物(S−2)〜(S−11)を使って、それぞれ、基材つき液晶重合体(F−2)〜(F−11)を得た。
【0297】
基材つき液晶重合体(F−2)〜(F−11)は、配向欠陥なしであった。
【0298】
[比較例2]
実施例11に記載の手順で、重合性液晶組成物(S−1)の代わりに重合性液晶組成物(SC−1)および(SC−2)を使って、それぞれ、基材つき液晶重合体(CF−1)および基材つき液晶重合体(CF−2)を得た。
【0299】
基材つき液晶重合体(CF−1)〜(CF−2)は、配向欠陥なしであった。
【0300】
[比較例3]
実施例11に記載の手順で、重合性液晶組成物(S−1)の代わりに重合性液晶組成物(SC−3)を使って、基材つき液晶重合体を得ようとしたところ、手順(4)の段階で、結晶が析出した。このため、重合性液晶組成物(SC−3)から、配向欠陥なしの基材
つき液晶重合体を得るのは困難であった。
このため、化合物(1)を含む重合性液晶組成物を原料として作成した基材つき液晶重合体のほうが、化合物(C−1)を含む重合性液晶組成物を原料として作成した基材つき
液晶重合体より、配向欠陥なしの基材つき液晶重合体を作成しやすいのは明らかである。
【0301】
[比較例4]
実施例11に記載の手順で、重合性液晶組成物(S−1)の代わりに重合性液晶組成物(SC−4)を使って、基材つき液晶重合体を得ようとしたところ、手順(3)の段階で、結晶が析出した。このため、重合性液晶組成物(SC−4)から、配向欠陥なしの基材つき液晶重合体を得るのは困難であった。この結果から、化合物(C−2)と比べて、化
合物(1)は、より多量の含有量であっても、配向欠陥なしの基材つき液晶重合体を得ることができることがわかった。
【0302】
<光学異方性フィルムの光学特性>
上記で作成した基材つき液晶重合体の波長分散特性の結果を表3に示す。
【0303】
【表3】
【0304】
表3から、基材つき液晶重合体(F−1)〜(F−11)のRe
450/Re
550は
、基材つき液晶重合体(CF−1)および(CF−2)のRe
450/Re
550に比べ
て、顕著に低いことがわかった。一方、基材つき液晶重合体(F−1)〜(F−11)のRe
650/Re
550は、基材つき液晶重合体(CF−1)および(CF−2)のRe
650/Re
550に比べて、顕著に高い。
【0305】
このことから、本発明の重合性液晶化合物から、可視光領域の波長の増加に伴うレターデーションの
減少の程度が低い液晶重合膜を製造できることがわかった。
【0306】
<化合物の溶媒への溶解性>
各種溶媒に対して特定量の化合物(1−1−1−1)を各種溶媒に加え、40℃のお湯で湯煎し、30分後の様子を目視で確認した。同様の方法を、化合物(1−1−1−1)の代わりに、それぞれ、化合物(1−1−2−1)、化合物(C−1)および化合物(C−2)で試した。
【0307】
上記の結果を表4に示した。表4に記載した加えた化合物の量は、該溶媒と該化合物の合計重量を100重量%としたときの相対値である。表4中の「○」は完全に溶解したことを示し、表4中の「×」は、不溶物が残ったことを示した。
【0308】
【表4】
【0309】
表4に示したデータから、化合物(1−1−1−1)または化合物(1−1−2−1)は、化合物(C−1)または化合物(C−2)に比べて、溶かすことのできる有機溶媒の種類が多いことがわかった。表4に示したデータから、化合物(1−1−1−1)または化合物(1−1−2−1)は、化合物(C−1)または化合物(C−2)に比べて、有機溶媒に対し、より多くの量を溶解できることが明らかとなった。
【0310】
以上の結果から、使用できる印刷方法、たとえば使用できる印刷機の選択肢が増え、液晶重合体の生産性向上に寄与することは、明らかである。化合物(1−1−1−1)または化合物(1−1−2−1)を使うと、厚膜成形が可能となり、所望の位相差を得やすいことは、明らかである。
【0311】
<液晶相の安定性>
実施例11に記載の方法の手順(4)の後、室温で放置し、重合性液晶組成物からの結晶の析出の有無を確認した。その結果を表5に示した。
【0312】
【表5】
【0313】
表5から、重合性液晶組成物(S−2)、(S−4)または(S−6)を原料として液晶重合体を作成するとき、手順(4)の後でも長時間液晶相を維持していることが明らかとなった。反対に、表5より、重合性液晶組成物(SC−3)または(SC−4)を原料とする場合は、手順(4)の後、液晶相の維持が困難であることが明らかとなった。
このことから、本発明の化合物は、液晶重合膜の製造過程そのほかの段階での取り扱いが容易である。