特許第6787345号(P6787345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニコンの特許一覧

特許6787345エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置
<>
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000002
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000003
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000004
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000005
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000006
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000007
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000008
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000009
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000010
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000011
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000012
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000013
  • 特許6787345-エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787345
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20201109BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20201109BHJP
   H02K 11/22 20160101ALI20201109BHJP
【FI】
   G01D5/347 110N
   B25J19/02
   H02K11/22
【請求項の数】21
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-562509(P2017-562509)
(86)(22)【出願日】2017年1月6日
(86)【国際出願番号】JP2017000285
(87)【国際公開番号】WO2017126339
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-7469(P2016-7469)
(32)【優先日】2016年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅彦
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−276018(JP,A)
【文献】 特開2012−8024(JP,A)
【文献】 特開2014−13163(JP,A)
【文献】 特開2005−249571(JP,A)
【文献】 特開平11−94594(JP,A)
【文献】 特開2010−85254(JP,A)
【文献】 特開2011−112381(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0130450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26− 5/40
G01B 11/26−11/275
B25J 19/02
H02K 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールと、
前記スケールへ光を照射する発光部と、
移動部の移動によって前記スケールとの相対位置が変化する光検出部と、前記光検出部の検出結果に基づいて前記移動部の位置情報を検出する検出部とを含む位置検出系と、
前記移動部の移動によって電気信号が発生する電気信号発生部と、
前記発光部へ電力を供給する電源と、
前記電気信号が発生すると前記電源から前記発光部に前記電力を供給し、前記発光部からの光の照射を調整する発光調整部と、
前記電気信号に基づいて、前記位置検出系に含まれる回路に電力を供給する電力供給系と、を備えるエンコーダ装置。
【請求項2】
前記発光調整部は、前記発光部から照射される光の強度を変化させるタイミングを調整する、請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記発光調整部は、前記発光部から照射される光の点灯状態と消灯状態とを切り替えるタイミングを調整する、請求項1又は請求項2に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記電気信号は、前記位置検出系に含まれる回路における導通と遮断との切替に用いられる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記発光調整部は、前記電気信号に基づいて、前記発光部からの光の照射を開始させる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記発光調整部は、前記発光部からの光の照射を開始させてから所定の時間が経過した時点で、前記発光部からの光の照射を停止させる、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記発光調整部は、前記光検出部が前記スケールからの光を検出した後に、前記発光部からの光の照射を停止させる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記発光調整部は、前記発光部へ電力を供給するか否かを切り替える、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記移動部は、回転軸を含み、
前記位置検出系は、前記光検出部の検出結果に基づいて前記回転軸の多回転情報を検出する多回転情報検出部を備え、
前記発光調整部は、前記多回転情報検出部が動作する期間の少なくとも一部において前記発光部からの光の照射を停止させる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
前記移動部は、回転軸を含み、
前記位置検出系は、
前記光検出部の検出結果に基づいて前記回転軸の多回転情報を検出する多回転情報検出部と、
前記回転軸の多回転情報を記憶する記憶部と、を備え、
前記発光調整部は、前記記憶部が前記多回転情報を書き込む期間の少なくとも一部において前記発光部からの光の照射を停止させる、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
前記電気信号発生部で発生する電気信号に応じて、前記電源から前記検出部への電力の供給の有無を切り替える切替部を備え、
前記発光調整部は、前記切替部と前記発光部との間の電力の供給経路に設けられる、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項12】
前記発光調整部は前記発光部から照射される光の光量を調整する光量補償部を備える、請求項1から請求項1のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項13】
前記光量補償部は、前記光検出部の検出結果に基づいて、前記発光部から照射される光の光量が所定値に近づくように前記発光部へ供給される電力を調整する、請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項14】
前記電気信号発生部は、
前記移動部と連動して移動する磁石と、
前記磁石の移動に伴う磁界の変化によって大バルクハウゼンジャンプを生じる感磁性部と、を含む、請求項1から請求項1のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項15】
スケールの位置情報を光学的に検出するとともに、移動部の移動によって前記スケールとの相対位置が変化する検出系と、
前記移動部の移動によって信号を出力する信号発生部と、
前記信号に基づいて前記検出系の動作を制御する調整部と、
前記検出系に含まれる回路に電力を供給する電源と、
前記信号が閾値以上であると前記電源から前記検出系に含まれる回路に電力を供給する電力供給系と、を備えるエンコーダ装置。
【請求項16】
前記調整部は光の照射又は光の受光を制御する、請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項17】
前記信号が出力されると前記電源から発光部又は受光センサへの電力供給の有無を切り替える切替部を備える、請求項1又は請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項18】
前記調整部は、前記スケールに光が照射されるタイミングを制御する、請求項1から請求項1のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項19】
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、
前記移動部に動力を供給する動力供給部と、を備える駆動装置。
【請求項20】
移動物体と、
前記移動物体を移動させる請求項19に記載の駆動装置と、を備えるステージ装置。
【請求項21】
請求項19に記載の駆動装置と、
前記駆動装置によって相対移動する第1アームおよび第2アームと、を備えるロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸の回転の数を区別する多回転型のエンコーダ装置は、ロボット装置などの各種装置に搭載されている(例えば、下記の特許文献1参照)。ロボット装置の動作中において、エンコーダ装置は、例えばロボット装置の主電源から電力供給を受けて、回転の数を示す多回転情報、および1回転未満の角度位置を示す角度位置情報を含む回転位置情報を検出する。
【0003】
ところで、ロボット装置が所定の処理を終了すると、その主電源がオフにされることがある。この場合に、ロボット装置の主電源からエンコーダ装置への電力供給も停止される。ロボット装置には、主電源が次にオンに切り替えられた際に、つまり次回の動作を開始する際に、初期の姿勢などの情報が必要とされることがある。そのため、エンコーダ装置には、外部から電力が供給されない状態においても、多回転情報を保持することが求められる。そこで、エンコーダ装置として、主電源からの電力供給が得られない状態において、バッテリーから供給される電力によって多回転情報を保持するものが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−50034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなエンコーダ装置は、バッテリーのメンテナンス(例、交換)がない、あるいはメンテナンスの頻度が低いことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、スケールと、スケールへ光を照射する発光部と、移動部の移動によってスケールとの相対位置が変化する光検出部と、光検出部の検出結果に基づいて移動部の位置情報を検出する検出部とを含む位置検出系と、移動部の移動によって電気信号が発生する電気信号発生部と、発光部へ電力を供給する電源と、電気信号が発生すると電源から発光部に電力を供給し、発光部からの光の照射を調整する発光調整部と、電気信号に基づいて、位置検出系に含まれる回路に電力を供給する電力供給系と、を備えるエンコーダ装置が提供される。また、本発明の第1の態様に従えば、スケールと、スケールへ光を照射する発光部と、移動部の移動によってスケールとの相対位置が変化する光検出部と、光検出部の検出結果に基づいて移動部の位置情報を検出する検出部とを含む位置検出系と、移動部の移動によって電気信号が発生する電気信号発生部と、電気信号に基づいて、発光部からの光の照射を調整する発光調整部と、を備えるエンコーダ装置が提供される。
【0007】
本発明の態様によれば、スケールの位置情報を光学的に検出するとともに、移動部の移動によってスケールとの相対位置が変化する検出系と、移動部の移動によって信号を出力する信号発生部と、信号に基づいて検出系の動作を制御する調整部と、検出系に含まれる回路に電力を供給する電源と、信号が閾値以上であると、電源から検出系に含まれる回路に電力を供給する電力供給系と、を備えるエンコーダ装置が提供される。また、本発明の第の態様に従えば、スケールの位置情報を光学的に検出するとともに、移動部の移動によってスケールとの相対位置が変化する検出系と、移動部の移動によって信号を出力する信号発生部と、信号に基づいて検出系の動作を制御する調整部と、を備えるエンコーダ装置が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、第1の態様または第2の態様のエンコーダ装置と、移動部に動力を供給する動力供給部と、を備える駆動装置が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様に従えば、移動物体と、移動物体を移動させる第3の態様の駆動装置と、を備えるステージ装置が提供される。
【0010】
本発明の第5の態様に従えば、第3の態様の駆動装置と、駆動装置によって相対移動する第1アームおよび第2アームと、を備えるロボット装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るエンコーダ装置を示す図である。
図2】実施形態に係るスケール、及び受光センサの例を示す図である。
図3】実施形態に係る磁石および電気信号発生ユニットの例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る電力供給系および多回転情報検出部の回路構成を示す図である。
図5】第1実施形態に係る電力供給系および多回転情報検出部の動作を示す図である。
図6】実施形態に係る発光部および受光素子の動作タイミングを示す図である。
図7】第2実施形態に係るエンコーダ装置の回路構成を示す図である。
図8】第3実施形態に係るエンコーダ装置を示す図である。
図9】第3実施形態に係るエンコーダ装置の回路構成を示す図である。
図10】変形例のエンコーダ装置の一部を示す図である。
図11】実施形態に係る駆動装置の一例を示す図である。
図12】実施形態に係るステージ装置の一例を示す図である。
図13】実施形態に係るロボット装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るエンコーダ装置ECを示す図である。このエンコーダ装置ECは、モータM(動力供給部)の回転軸SF(移動部)の回転位置情報を検出する。回転軸SFは、例えばモータMのシャフト(回転子)であるが、モータMのシャフトに変速機などの動力伝達部を介して接続されるとともに負荷に接続される作用軸(出力軸)であってもよい。エンコーダ装置ECが検出した回転位置情報は、モータ制御部MCに供給される。モータ制御部MCは、エンコーダ装置ECから供給された回転位置情報を使って、モータMの回転を制御する。モータ制御部MCは、回転軸SFの回転を制御する。
【0013】
エンコーダ装置ECは、位置検出系1および電力供給系2を備える。位置検出系1は、回転軸SFの回転位置情報を検出する。エンコーダ装置ECは、いわゆる多回転アブソリュートエンコーダであり、回転軸SFの回転の数を示す多回転情報、および1回転未満の角度位置(回転角)を示す角度位置情報を含む回転位置情報を検出する。エンコーダ装置ECは、回転軸SFの多回転情報を検出する多回転情報検出部3、及び回転軸SFの角度位置を検出する角度検出部4を備える。
【0014】
位置検出系1の少なくとも一部(例、角度検出部4)は、例えば、エンコーダ装置ECが搭載される装置(例、駆動装置、ステージ装置、ロボット装置)の電源が投入されている状態で、この装置から電力の供給を受けて動作する。また、位置検出系1の少なくとも一部(例、多回転情報検出部3)は、例えば、エンコーダ装置ECが搭載される装置の電源が投入されていない状態で、電力供給系2から電力の供給を受けて動作する。例えば、エンコーダ装置ECが搭載される装置からの電力の供給が断たれた状態において、電力供給系2は、位置検出系1の少なくとも一部(例、多回転情報検出部3)に対して断続的(間欠的)に電力を供給し、位置検出系1は、電力供給系2から電力が供給された際に回転軸SFの回転位置情報の少なくとも一部(例、多回転情報)を検出する。
【0015】
角度検出部4は、例えば、スケールの一回転内の位置情報(角度位置情報)を光学的に検出する。角度検出部4は、発光素子11(発光部、照射部)、スケールS、受光センサ12(光検出部)、及び検出部13を備える。角度検出部4は、例えば、スケールSのパターンニング情報を受光素子で読み取ることにより、回転軸SFの1回転以内の角度位置を検出する。スケールSのパターンニング情報は、例えば、スケールS上の明暗のスリットで表される。
【0016】
スケールSは、回転軸SFに固定された円板14に設けられている。スケールSは、インクリメンタルスケール及びアブソリュートスケールを含む。発光素子11は、スケールSに光を照射する。受光センサ12は、発光素子11から照射されスケールSを経由した光を検出する。発光素子11および受光センサ12は、回転軸SF(移動部)の回転(移動)によってスケールSとの相対位置が変化する。図1において、角度検出部4は透過型であり、受光センサ12は、スケールSを透過した光を検出する。受光センサ12は、インクリメンタルスケールを経由した光を検出(受光)する受光部(図示せず)、及びアブソリュートスケールを経由した光を検出(受光)する受光部(図示せず)を含む。角度検出部4は反射型であってもよい。受光センサ12は、角度位置情報の検出結果を示す信号を検出部13へ供給する。例えば、検出部13は、アブソリュートスケールからの光を検出した結果を使って第1分解能の角度位置を検出する。また、検出部13は、インクリメンタルスケールからの光を検出した結果を使って、第1分解能の角度位置に内挿演算を行うことにより、第1分解能よりも高い第2分解能の角度位置を検出する。
【0017】
図2は、本実施形態に係るスケールS、及び受光センサ12を示す図である。なお、図2には、多回転情報の検出に用いる部分を図示し、角度位置情報の検出に用いる部分(インクリメンタルスケール、アブソリュートスケール、及びこれらに対応する受光部)の図示を省略した。スケールSは、第1スケールSaおよび第2スケールSbを含む。第1スケールSaおよび第2スケールSbは、それぞれ、回転軸SFを中心とする環状の部材である。第1スケールSaおよび第2スケールSbは、それぞれ、その周方向の角度位置によって光学特性(例、透過率、反射率、光吸収率)が変化する。例えば、第1スケールSaおよび第2スケールSbは、それぞれ、回転軸SFに対する周方向において光学特性が2値的に切替わる。第1スケールSaおよび第2スケールSbのそれぞれにおいて、光学特性が2値的に切替わる角度位置は、磁石11の周方向においてN極とS極との境界の角度位置と異なるように設定される。第2スケールSbは、第1スケールSaと同様であるが、第1スケールSaと比較して、周方向で光学特性が変化する位相が異なる。第1スケールSaと第2スケールSbとの光学特性の位相差は、0°より大きく180°よりも小さい範囲に設定され、例えば、90°に設定される。なお、第1スケールSaおよび第2スケールSbは、インクリメンタルスケール、アブソリュートスケールと別の部材に設けられてもよく、例えば、磁石11と同じ円板15に設けられてもよい。この場合、第1スケールSaおよび第2スケールSbに光を照射する発光素子は、例えば、インクリメンタルスケール、アブソリュートスケールに光を照射する発光素子と別に設けられる。
【0018】
受光センサ12は、第1受光部12aおよび第2受光部12bを含む。第1受光部12aは、発光素子11から照射されて第1スケールSaを経由(例、透過、反射)した光が入射する位置に配置される。例えば、第1スケールSaは周方向で透過率が変化し、発光素子11から照射されて第1スケールSaを透過する光の光量は、第1スケールSa(回転軸SF)の角度位置に応じて変化し、第1受光部12aに入射する光の光量も第1スケールSa(回転軸SF)の角度位置に応じて変化する。
【0019】
第2受光部12bは、発光素子11から照射されて第2スケールSbを経由(例、透過、反射)した光が入射する位置に配置される。第2受光部12bは、例えば、スケールSの周方向において第1受光部12aとほぼ同じ角度位置に配置される。例えば、第2スケールSbは周方向で透過率が変化し、発光素子11から照射されて第2スケールSbを透過する光の光量は、第2スケールSb(回転軸SF)の角度位置に応じて変化し、第2受光部12bに入射する光の光量も第2スケールSb(回転軸SF)の角度位置に応じて変化する。
【0020】
第1スケールSaと第2スケールSbとで光学特性の位相差があることから、検出部13は、例えば、第1受光部12aの検出結果をA相信号に利用し、第2受光部12bの検出結果をB相信号に利用することができる。なお、図2においては、第1スケールSaと第2スケールSbとで光学特性の変化の位相が異なり、第1受光部12aおよび第2受光部12bの角度位置がほぼ同じであるが、第1スケールSaと第2スケールSbとで光学特性の変化の位相が同じであり、第1受光部12aおよび第2受光部12bの角度位置が異なっていてもよい。この場合にも、第1受光部12aの検出結果をA相信号に利用し、第2受光部12bの検出結果をB相信号に利用することができる。
【0021】
なお、図1の説明において、角度検出部4の検出部13は、受光センサ12の第1受光部12aおよび第2受光部12bの検出結果を使って、回転軸SFの角度位置を検出してもよい。
【0022】
多回転情報検出部3は、角度検出部4の検出対象と同じ回転軸SFの多回転情報を光学的に検出する。多回転情報検出部3は、発光素子11(発光部)、スケールS、受光センサ12(光検出部)、検出部21、及び記憶部22を備える。なお、発光素子11、スケールS、受光センサ12の少なくとも一部は、多回転情報検出部3と角度検出部4とで共用であってもよい。検出部21は、受光センサ12の検出結果を使って、回転軸SFの多回転情報を検出する。また、例えば、検出部21は、回転軸SFが所定の向きに回転してスケールS上の所定の位置が受光センサ12による検出位置を通過した場合、回転の数を1だけ加算する(インクリメントする)。また、例えば、検出部13は、回転軸SFが所定の向きの逆向きに回転してスケールS上の所定の位置が受光センサ12による検出位置を通過した場合、回転の数を1だけ減算する(デクリメントする)。記憶部22は、検出部21が検出した多回転情報を記憶する。
【0023】
本実施形態において、エンコーダ装置ECは、信号処理部25を備える。信号処理部25は、位置検出系1による検出結果を処理する。信号処理部25は、合成部26および外部通信部27を備える。合成部26は、検出部13が検出した第2分解能の角度位置情報を取得する。また、合成部26は、多回転情報検出部3の記憶部22から回転軸SFの多回転情報を取得する。合成部26は、検出部13からの角度位置情報、及び多回転情報検出部3からの多回転情報を合成し、回転位置情報を算出する。例えば、検出部13の検出結果がθ[rad]であり、多回転情報検出部3の検出結果がn回転である場合に、合成部26は、回転位置情報として(2π×n+θ)を算出する。回転位置情報は、多回転情報と、1回転未満の角度位置情報とを組にした情報でもよい。
【0024】
合成部26は、回転位置情報を外部通信部27に供給する。外部通信部27は、有線または無線によって、モータ制御部MCの通信部MC1と通信可能に接続されている。外部通信部27は、デジタル形式の回転位置情報を、モータ制御部MCの通信部MC1に供給する。モータ制御部MCは、角度検出部4の外部通信部27からの回転位置情報を適宜復号する。モータ制御部MCは、回転位置情報を使ってモータMへ供給される電力(駆動電力)を制御することにより、モータMの回転を制御する。
【0025】
電力供給系2は、電気信号発生ユニット31、バッテリー32(電池)、切替部33、及び発光調整部34を備える。電気信号発生ユニット31は、回転軸SFの回転によって電気信号が発生する。この電気信号は、例えば、電力(電流、電圧)が時間変化する波形を含む。電気信号発生ユニット31には、例えば、回転軸SFの回転に応じて変化する磁界によって、電気信号として電力が発生する。例えば、回転軸SFには円板36が設けられ、円板36には磁石37が設けられる。回転軸SFの回転によって、磁石37と電気信号発生ユニット31との相対位置(相対的な角度位置)が変化し、磁石37によって電気信号発生ユニット31の位置に形成される磁界が変化する。
【0026】
図3は、本実施形態に係る磁石37および電気信号発生ユニット31を示す図である。図3(A)には斜視図を示し、図3(B)には回転軸SFの方向から見た平面図を示した。
【0027】
磁石37は、回転軸SFに対する放射方向(径方向)における磁界の向きおよび強さが回転によって変化するように構成される。磁石37は、例えば回転軸SFと同軸の円環状の部材である。磁石37の主面(表面および裏面)は、それぞれ、回転軸SFとほぼ垂直である。図3(B)に示すように、磁石37は、例えば、8極に着磁された永久磁石である。磁石37は、同心円状の2つの環状の磁石を組み合わせた形状である。2つの環状の磁石は、それぞれ、4極に着磁されており、その周方向にN極、S極が交互に配置される。2つの環状の磁石は、その径方向(回転軸SFの放射方向)において、N極とS極が並んでいる。磁石37は、磁石37の外部に固定された座標系に対し、磁石37の回転に伴って径方向の磁界の向きが反転する交流磁界を形成する。電気信号発生ユニット31は、磁石37の主面の法線方向から見て磁石37と重なる位置に配置されている。
【0028】
ここでは説明の便宜上、回転軸SFの先端側(図1のモータMと反対側)から見た場合の、反時計回りの回転を順回転、時計回りの回転を逆回転という。また、順回転の角度を正の値で表し、逆回転の角度を負の値で表す。なお、回転軸SFの基端側(図1のモータM側)から見た場合の、反時計回りの回転を順回転、時計回りの回転を逆回転と定義してもよい。
【0029】
本実施形態において、電気信号発生ユニット31は、磁石37と非接触に設けられている。電気信号発生ユニット31は、感磁性部41および発電部42を備える。感磁性部41および発電部42は、磁石37の外部に固定されており、磁石37の回転に伴って磁石37上の各位置との相対位置が変化する。
【0030】
感磁性部41は、ウィーガントワイヤなどの感磁性ワイヤである。感磁性部41には、磁石37の回転に伴う磁界の変化によって大バルクハウゼンジャンプ(ウィーガンド効果)が生じる。感磁性部41は、円柱状の部材であり、その軸方向が磁石37の径方向に設定されている。感磁性部41は、その軸方向に交流磁界が印加され磁界が反転する際に、軸方向の一端から他端に向かう磁壁が発生する。
【0031】
発電部42は、感磁性部41に巻き付けられて配置される高密度コイルなどである。発電部42には、感磁性部41における磁壁の発生に伴って電磁誘導が生じ、誘導電流が流れる。磁石37が感磁性部41の位置に形成する磁界の向きが反転する際に、発電部42にパルス状の電流(電気信号)が発生する。この電気信号は、位置検出系1に含まれる回路における導通と遮断との切替に用いられる。
【0032】
発電部42に発生する電流の向きは、磁界の反転前後の向きに応じて変化する。例えば、磁石37の外側を向く磁界から内側を向く磁界へ反転時に発生する電流の向きは、磁石37の内側を向く磁界から外側を向く磁界へ反転時に発生する電流の向きの反対になる。発電部42に発生する電力(誘導電流)は、例えば高密度コイルの巻き数により設定できる。
【0033】
図3(A)に示すように、感磁性部41および発電部42は、ケース43に収納されている。ケース43には端子43aおよび端子43bが設けられている。発電部42の高密度コイルは、その一端が端子43aと電気的に接続され、その他端が端子43bと電気的に接続されている。発電部42で発生した電力は、端子43aおよび端子43bを介して、電気信号発生ユニット31の外部へ取り出し可能である。
【0034】
なお、図1に示したスケールSは、円板36に設けられてもよいし、円板36と一体化された部材であってもよい。例えば、スケールSは、円板36において磁石37と反対側の面に設けられていてもよい。スケールSは、磁石37の内側と外側の少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0035】
図1の説明に戻り、バッテリー32は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号に応じて、位置検出系1で消費される電力の少なくとも一部を供給する。バッテリー32は、例えばボタン型電池、乾電池などの一次電池である。バッテリー32は、例えばボタン型電池であり、保持部45に保持される。保持部45は、例えば、位置検出系1の少なくとも一部が設けられる回路基板などである。保持部45は、例えば、検出部21、切替部33、及び記憶部22を保持する。保持部45には、例えば、バッテリー32を収容可能な電池ケース、及びバッテリー32と接続される電極、配線などが設けられる。
【0036】
切替部33は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号に応じて、バッテリー32から位置検出系1への電力の供給の有無を切り替える。例えば、切替部33は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号のレベルが閾値以上になることでバッテリー32から位置検出系1への電力の供給を開始させる。例えば、切替部33は、電気信号発生ユニット31で閾値以上の電力が発生することでバッテリー32から位置検出系1への電力の供給を開始させる。また、切替部33は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号のレベルが閾値未満になることでバッテリー32から位置検出系1への電力の供給を停止させる。例えば、切替部33は、電気信号発生ユニット31で発生する電力が閾値未満になることでバッテリー32から位置検出系1への電力の供給を停止させる。例えば、電気信号発生ユニット31にパルス状の電気信号が発生する場合、切替部33は、この電気信号のレベル(電力)がローレベルからハイレベルに立ち上がった際に、バッテリー32から位置検出系1への電力の供給を開始させ、この電気信号のレベル(電力)がローレベルへ変化してから所定の時間経過後に、バッテリー32から位置検出系1への電力の供給を停止させる。
【0037】
発光調整部34は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号に基づいて、発光素子11(発光部)から照射される光の調整を行う。例えば、発光素子11から光が照射されるタイミングを調整する。例えば、発光調整部34は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号を用いて、発光素子11の点灯状態と消灯状態とを切り替える。発光調整部34は、例えば、発光素子11へ電力を供給するか否かを切り替えることで、発光素子11(発光部)から光が照射されるタイミングを調整する。発光調整部34は、切替部33と発光素子11との間の電力の供給経路に設けられる。例えば、発光調整部34は、切替部33と電気的に接続され、切替部33から電力の供給を受けることが可能である。発光調整部34は、発光素子11と電気的に接続され、発光素子11に対して、発光素子11が点灯状態を維持するのに必要とされる電力を供給可能である。発光調整部34は、例えば、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号に応じて切替部33から電力が供給されることをトリガーとして、発光素子11への電力の供給を開始する。例えば、発光調整部34は、切替部33から電力が供給された際に、この電力を発光素子11に供給することで発光素子11を点灯させる。このように、発光調整部34は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号を用いて、発光素子11からの光の照射を開始させる。なお、発光調整部34は、発光素子11(発光部)から照射される光の強度(発光量)を調整するのでもよい。例えば、発光調整部34は、発光素子11が所定の期間において所定の光量で光を照射した後、発光素子11から照射される光量を上記の所定の光量よりも減らしてもよい。また、発光調整部34は、発光素子11から照射される光のタイミングおよび発光量を調整するのでもよい。例えば、発光調整部34は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号を用いて、発光素子11の発光量を調整してもよい。
【0038】
本実施形態において、発光調整部34は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号に基づいて、受光センサ12が検出動作を行うタイミングを調整してもよい。例えば、発光調整部34は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号を用いて、受光センサ12が検出動作を行う検出期間と検出動作を行わない非検出期間とを切り替える。発光調整部34は、例えば、受光センサ12へ電力を供給するか否かを切り替えることで、検出期間と検出動作を行わない非検出期間とを切り替える。発光調整部34は、切替部33と受光センサ12との間の電力の供給経路に設けられる。例えば、発光調整部34は、受光センサ12と電気的に接続され、受光センサ12に対して、受光センサ12が光を検出する(検出動作を行う)のに必要とされる電力を供給可能である。例えば、発光調整部34は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号に応じて切替部33から電力が供給されることをトリガーとして、受光センサ12の検出期間を開始する。例えば、発光調整部34は、切替部33から電力が供給された際に、この電力を受光センサ12に供給することで、受光センサ12が検出動作を行うことが可能な状態にする。なお、発光調整部34は、受光センサ12が検出動作を行うタイミングを調整しなくてもよい。例えば、受光センサ12は、発光調整部34を介することなく電力の供給を受けて、検出動作を行ってもよい。
【0039】
発光調整部34は、例えば、受光センサ12がスケールSからの光を検出した後に、発光素子11からの光の照射を停止させる。例えば、発光調整部34は、発光素子11からの光の照射を開始させてから所定の時間が経過した時点で(所定時間の経過をトリガーとして)、発光素子11からの光の照射を停止させる。上記の所定の時間は、例えば、受光センサ12が検出動作を行うことが可能な時間以上に予め設定される。発光調整部34は、例えば、発光素子11への電力の供給を開始してから所定の時間が経過した時点で、発光素子11への電力の供給を停止することで、発光素子11を消灯状態にする。なお、発光調整部34は、例えば、受光センサ12の検出期間を開始してから所定の時間が経過した時点で、受光センサ12の非検出期間へ切り替えてもよい。例えば、発光調整部34は、受光センサ12への電力の供給を開始してから所定の時間が経過したことをトリガーとして、受光センサ12への電力の供給を停止することで、受光センサ12が検出動作を行わない状態にしてもよい。例えば、発光素子11から光が照射される期間の長さは、電気信号発生ユニット31で発生した電気信号に基づいて、位置検出系1への電力の供給を行う期間の長さ以下になる。例えば、発光素子11から光が照射される期間は、電気信号発生ユニット31で発生した電気信号に基づいて、位置検出系に含まれる回路が導通している期間の一部になる。また、例えば、発光素子11が点灯状態となってから消灯状態となるまでの期間は、電気信号発生ユニット31で電気信号が発生する期間の一部になる。電気信号発生ユニット31にパルス状の電気信号が発生している場合には、電気信号が発生する期間は、例えば、パルス状の電気信号が発生し始めてから(パルスの立ち上がり時点から)、発生しなくなるまで(パルスの立下りの時点)の期間である。また、発光調整部34は、非検出期間へ切り替えを行わなくてもよい。例えば、受光センサ12は、発光調整部34を介することなく電力の供給を受けて検出動作を行い、電力の供給が絶たれることで検出動作を行わない状態になってもよい。
【0040】
図4は、本実施形態に係る電力供給系2および多回転情報検出部3の回路構成を示す図である。電力供給系2は、電気信号発生ユニット31、整流スタック51、及びバッテリー32を備える。また、電力供給系2は、図1に示した切替部33として、レギュレータ52を備える。
【0041】
整流スタック51は、電気信号発生ユニット31から流れる電流を整流する整流器である。整流スタック51の第1入力端子51aは、電気信号発生ユニット31の端子43aと接続されている。整流スタック51の第2入力端子51bは、電気信号発生ユニット31の端子43bと接続されている。整流スタック51の接地端子51gは、シグナルグランドSGと同電位が供給される接地線GLに接続されている。多回転情報検出部3の動作時に、接地線GLの電位は、回路の基準電位になる。整流スタック51の出力端子51cは、レギュレータ52の制御端子52aに接続されている。
【0042】
レギュレータ52は、バッテリー32から位置検出系1へ供給される電力を調整する。レギュレータ52は、バッテリー32と位置検出系1との間の電力の供給経路に設けられるスイッチ53を含んでもよい。レギュレータ52は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号をもとにスイッチ53の動作を制御する。
【0043】
レギュレータ52の入力端子52bは、バッテリー32に接続されている。レギュレータ52の出力端子52cは、電源線PLに接続されている。レギュレータ52の接地端子52gは、接地線GLに接続されている。レギュレータ52の制御端子52aはイネーブル端子であり、レギュレータ52は、制御端子52aに閾値以上の電圧が印加された状態で、出力端子52cの電位を所定電圧に維持する。レギュレータ52の出力電圧(上記の所定電圧)は、計数器57(後述する)がCMOSなどで構成される場合に例えば3Vである。記憶部22(後述する不揮発性メモリ58)の動作電圧は、例えば、所定電圧と同じ電圧に設定される。なお、所定電圧は、電力供給に必要な電圧であり、一定の電圧値のことだけでなく、段階的に変化する電圧であってもよい。
【0044】
スイッチ53は、第1端子53aが入力端子52bと接続され、第2端子53bが出力端子52cと接続される。レギュレータ52は、電気信号発生ユニット31から制御端子52aに供給される電気信号を制御信号(イネーブル信号)に用いて、スイッチ53の第1端子53aと第2端子53bとの間の導通状態(オン)と絶縁状態(オフ)とを切り替える。例えば、スイッチ53は、MOS、TFTなどのスイッチング素子を含み、第1端子53aと第2端子53bとはソース電極とドレイン電極であり、ゲート電極が制御端子52aと接続される。スイッチ53は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号(電力)によってゲート電極が充電され、ゲート電極の電位が閾値以上になると、ソース電極とドレイン電極との間が導通可能な状態(オン状態)になる。なお、スイッチ53はレギュレータ52の外部に設けられてもよく、例えばリレー等の外付けであってもよい。
【0045】
発光調整部34の第1入力端子34aは、電源線PLと接続されている。発光調整部34の第1出力端子34bは、発光素子11の電源端子11pと接続されている。発光素子11の接地端子11gは、接地線GLに接続されている。発光素子11は、電源端子11pおよび接地端子11gを介して電力供給系2から供給される電力によって、光を発する。発光調整部34は、第1入力端子34a(電源線PL)が所定の電位になった際に、第1入力端子34aと第1出力端子34bとの間を導通状態(オン)とし、所定の時間経過後に第1入力端子34aと第1出力端子34bとの間を絶縁状態(オフ)にする。発光調整部34は、第1入力端子34aと第1出力端子34bとの間が導通状態である場合に、発光素子11に電力を供給する。発光調整部34は、第1入力端子34aと第1出力端子34bとの間が絶縁状態である場合に、発光素子11に電力を供給しない。
【0046】
また、発光調整部34の第2入力端子34cは、電源線PLと接続されている。発光調整部34の第2出力端子34dは、受光センサ12の電源端子12pと接続されている。受光センサ12の接地端子12gは、接地線GLに接続されている。受光センサ12は、電源端子12pおよび接地端子12gを介して電力供給系2から供給される電力によって、光を検出する。受光センサ12の第1出力端子12cは、図2に示した第1受光部12aの検出結果を出力する。受光センサ12の第2出力端子12dは、図2に示した第2受光部12bの検出結果を出力する。発光調整部34は、第2入力端子34c(電源線PL)が所定の電位になった際に、第2入力端子34cと第2出力端子34dとの間を導通状態(オン)とし、所定の時間経過後に第2入力端子34cと第2出力端子34dとの間を絶縁状態(オフ)にする。発光調整部34は、第2入力端子34cと第2出力端子34dとの間が導通状態である場合に、受光センサ12に電力を供給する。発光調整部34は、第2入力端子34cと第2出力端子34dとの間が絶縁状態である場合に、受光センサ12に電力を供給しない。発光調整部34が受光センサ12へ電力の供給を開始するタイミングは、発光素子11へ電力の供給を開始するタイミングと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
多回転情報検出部3は、図1に示した検出部21として、アナログコンパレータ55、アナログコンパレータ56、及び計数器57を備える。
【0048】
アナログコンパレータ55は、受光センサ12の第1受光部12aから出力される電圧を所定電圧と比較する比較器である。アナログコンパレータ55の電源端子55pは、電源線PLに接続されている。アナログコンパレータ55の接地端子55gは、接地線GLに接続されている。アナログコンパレータ55の入力端子55aは、受光センサ12の第1出力端子12cと接続されている。アナログコンパレータ55の出力端子55bは、計数器57の第1入力端子57aに接続されている。アナログコンパレータ55は、第1受光部12aの出力電圧が閾値以上である場合に出力端子55bからHレベルの信号を出力し、閾値未満である場合に出力端子55bからLレベルの信号を出力する。
【0049】
アナログコンパレータ56は、受光センサ12の第2受光部12bから出力される電圧を所定電圧と比較する比較器である。アナログコンパレータ56の電源端子56pは、電源線PLに接続されている。アナログコンパレータ56の接地端子56gは、接地線GLに接続されている。アナログコンパレータ56の入力端子56aは、受光センサ12の第2出力端子12dと接続されている。アナログコンパレータ56の出力端子56bは、計数器57の第2入力端子57bに接続されている。アナログコンパレータ56は、第2受光部12bの出力電圧が閾値以上である場合に出力端子56bからHレベルの信号を出力し、閾値未満である場合に出力端子56bからLレベルの信号を出力する。
【0050】
計数器57は、回転軸SFの多回転情報を、バッテリー32から供給される電力を用いて計数する。計数器57は、例えばCMOS論理回路などを含む。計数器57は、電源端子57pおよび接地端子57gを介して供給される電力を用いて動作する。計数器57の電源端子57pは、電源線PLに接続されている。計数器57の接地端子57gは、接地線GLに接続されている。計数器57は、第1入力端子57aを介して供給される電圧、及び第2入力端子57bを介して供給される電圧を制御信号として、計数処理を行う。
【0051】
本実施形態において、図1に示した記憶部22として不揮発性メモリ58が設けられる。不揮発性メモリ58は、検出部21が検出した回転位置情報の少なくとも一部(例、多回転情報)を、バッテリー32から供給される電力を用いて記憶する(書き込み動作を行う)。不揮発性メモリ58は、電力が供給されている間に書き込まれた情報を、電力が供給されない状態においても保持可能である。不揮発性メモリ58は、検出部21が検出した回転位置情報として、計数器57による計数の結果(多回転情報)を記憶する。不揮発性メモリ58の電源端子58pは、電源線PLに接続されている。不揮発性メモリ58の接地端子58gは、接地線GLに接続されている。
【0052】
本実施形態において、整流スタック51とレギュレータ52との間には、コンデンサ59が設けられている。コンデンサ59の第1電極59aは、整流スタック51とレギュレータ52の制御端子52aとを接続する信号線に接続されている。コンデンサ59の第2電極59bは、接地線GLに接続されている。このコンデンサ59は、いわゆる平滑コンデンサであり、脈動を低減してレギュレータの負荷を低減する。コンデンサ59の定数は、例えば、検出部21により回転位置情報を検出して記憶部22に回転位置情報を書き込むまでの期間に、バッテリー32から検出部21および記憶部22への電力供給が維持されるように設定される。
【0053】
図5は、本実施形態に係る電力供給系および多回転情報検出部の動作を示す図である。図5の「磁石」は、回転軸SFの角度位置に応じた磁石の角度位置であり、N極とS極とを異なるハッチングで示した。「電気信号発生ユニット、受光素子」は、電気信号発生ユニット31および受光センサ12の角度位置であり、回転軸SFの角度位置に依らずに一定である。「電気信号発生ユニット」は、電気信号発生ユニット31の出力であり、1方向に流れる電流の出力を正(+)とし、その逆方向に流れる電流の出力を負(−)とした。また、回転軸SFが反時計回りに回転する際の電気信号発生ユニット31の出力を「反時計回り」に示し、回転軸SFが時計回りに回転する際の電気信号発生ユニット31の出力を「時計回り」に示した。「イネーブル信号」は、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号によりレギュレータ52の制御端子52aに印加される電位を示し、ハイレベルを「H」で表し、ローレベルを「L」で表した。「レギュレータ」は、レギュレータ52の出力を示し、ハイレベルを「H」で表し、ローレベルを「L」で表した。
【0054】
図5の「受光素子の第1出力」、「受光素子の第2出力」は、それぞれ、第1受光部12aの出力、第2受光部12bの出力である。「第1アナログコンパレータ」、「第2アナログコンパレータ」は、それぞれ、アナログコンパレータ55、アナログコンパレータ56からの出力を示す。
【0055】
電気信号発生ユニット31の出力は、回転軸SFの回転方向によって正負が反転するが、整流スタック51が電気信号発生ユニット31からの電流を整流するので、イネーブル信号は、回転軸SFが反時計回りに回転する場合と時計回りに回転する場合とで同じになる。イネーブル信号は、角度位置が45°、135°、225°、315°においてハイレベル(H)に立ち上がる。レギュレータ52の出力は、イネーブル信号の立ち上がりに応じてハイレベル(H)になる。レギュレータ52の出力がハイレベルになると、発光素子11および受光センサ12に電力が供給され、発光素子11は光をスケールSに照射し、受光センサ12は、発光素子11から照射されてスケールSを経由した光を検出する。ここで、アナログコンパレータ55の出力およびアナログコンパレータ56の出力の組を、Hを「1」とし、Lを「0」として(0,1)のように表す。アナログコンパレータ55の出力およびアナログコンパレータ56の出力の組は、角度位置45°、135°、225°、315°において、それぞれ、(1,1)、(1,0)、(0,0)、(0.1)となる。従って、アナログコンパレータ55の出力およびアナログコンパレータ56の出力の組から、4つの角度位置を区別することができる。計数器57は、アナログコンパレータ55の出力およびアナログコンパレータ56の出力を用いて、回転軸SFの多回転情報を検出する。例えば、上記の出力の組が前回の検出において(1,1)であり、今回の検出で(1,0)である場合、角度位置が45°から135°に変化したことが分かる。計数器57は、例えば、上記の出力の組みが(1,1)から(1,0)に変化した場合に、カウンタを1増加させ、上記の出力の組みが(1,0)から(1,1)に変化した場合に、カウンタを1減少させる。記憶部22(不揮発性メモリ58)は、計数器57が検出した多回転情報(カウンタの値)を記憶する。
【0056】
図6は、本実施形態に係る発光部および受光素子の動作タイミングを示す図である。図6では、信号の遅延などを無視してタイミングを概念的に示した。時刻t1において、イネーブル信号のレベルがLからHへ立ち上がり、レギュレータ52の出力電力がLからHに切り替わる。また、時刻t1において、発光調整部34は、レギュレータ52からの出力電力がLからHに切り替わったのを受けて、出力電力がLからHへ切り替わる。時刻t1において、発光調整部34は、発光素子11へ電力の供給を開始し、発光素子11は、消灯状態(図中「OFF」で表す)から点灯状態(図中「ON」)へ切り替わる。また、時刻t1において、発光調整部34は、受光センサ12へ電力の供給を開始し、受光センサ12(図中「受光素子」で表す)は、検出動作を行わない状態(図中「OFF」で表す)から、検出動作を行う状態(図中「ON」)へ切り替わる。受光センサ12は、検出動作を行う状態において所定のサンプリング周波数で光を検出し、検出結果を検出部21(図1参照)へ出力する。
【0057】
発光調整部34の出力電力は、時刻t1から所定の時間が経過した時刻t2において、HからLへ切り替わる。時刻t2において、発光調整部34は、発光素子11へ電力の供給を停止し、発光素子11は、点灯状態(「ON」)から消灯状態(「OFF」)へ切り替わる。また、時刻t2において、発光調整部34は、受光センサ12へ電力の供給を停止し、受光センサ12は、検出動作を行う状態(「ON」)から、検出動作を行わない状態(「OFF」)へ切り替わる。また、検出部21は、受光センサ12から出力された検出結果を用いて、時刻t2あるいはそれ以降に、多回転情報の検出動作を行う。検出部21は、時刻t2よりも後の時刻t3において、多回転情報の検出結果を記憶部22に出力する。記憶部22は、時刻t3あるいはそれ以降に、検出部21から出力された多回転情報の書込動作を行う。イネーブル信号は、時刻t3よりも後の時刻t4においてレベルがHからLへ立下り、レギュレータ52の出力がHからLへ立ち下がる。記憶部22は、時刻t4よりも前に多回転情報の書込みを完了させる。
【0058】
このように、発光調整部34は、例えば、多回転情報検出部3(例、検出部21)が動作する期間の少なくとも一部において発光素子11からの光の照射を停止させる。この場合、発光素子11を消灯状態にした分(発光時間を短縮した分)だけ消費電力を抑えることができ、バッテリー32の消耗を抑えることができる。また、発光調整部34は、例えば、記憶部22が多回転情報を書き込む期間の少なくとも一部において発光素子11からの光の照射を停止させる。この場合、受光センサ12が検出動作を行わない分だけ消費電力を抑えることができ、バッテリー32の消耗を抑えることができる。したがって、エンコーダ装置ECは、バッテリー32のメンテナンス(例、交換)がない、あるいはメンテナンスの頻度が低い。また、発光調整部34は、例えば、多回転情報検出部3(例、検出部21)が動作する期間の少なくとも一部において発光素子11からの光の照射量(発光強度)を下げてもよい。この場合、多回転情報検出部3(例、検出部21)が動作する期間において、発光量が大きい場合と小さい場合とが切り替えられる。この場合、発光素子11の発光量を抑えた期間は消費電力を抑えることができ、バッテリー32の消耗を抑えることができる。また、発光調整部34は、例えば、記憶部22が多回転情報を書き込む期間の少なくとも一部において発光素子11からの光の照射量(発光強度)を下げてもよい。この場合、受光センサ12が検出動作を行わない分だけ消費電力を抑えることができ、バッテリー32の消耗を抑えることができる。したがって、エンコーダ装置ECは、バッテリー32のメンテナンス(例、交換)がない、あるいはメンテナンスの頻度が低い。
【0059】
なお、上述の実施形態において、発光調整部34は、発光素子11への電力の供給を開始してから所定の時間が経過した時点で、発光素子11への電力の供給を停止するが、他のトリガーを用いて発光素子11の消灯するタイミングを調整してもよい。例えば、発光調整部34は、受光センサ12の出力、あるいは受光センサ12の出力から生成される信号をトリガーに用いて、発光素子11を消灯させてもよい。例えば、発光調整部34は、アナログコンパレータ55から所定の回数だけ信号が出力された時点で、発光素子11への電力の供給を停止してもよい。また、発光調整部34は、計数器57から記憶部22に信号(多回転情報)が出力された時点で、発光素子11への電力の供給を停止してもよい。
【0060】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。図7は、本実施形態に係るエンコーダ装置ECの回路構成を示す図である。このエンコーダ装置ECは、光量補償部61を備える。光量補償部61は、発光素子11から照射される光の光量を調整する。例えば、光量補償部61は、発光素子11に供給される電力を調整することにより、発光素子11の発光量を調整する。
【0061】
光量補償部61は、例えば、発光調整部34と発光素子11との間の電力の供給経路に設けられる。光量補償部61は、発光調整部34から供給される電力を調整して、調整後の電力を発光素子11に供給する。発光素子11は、経年劣化などによって発光効率が低下することがある。光量補償部61は、例えば、経年劣化による発光量の低下の少なくとも一部が補われるように、発光素子11へ供給される電力を調整する。光量補償部61は、例えば、受光センサ12の検出結果に基づいて、発光素子11から照射される光の光量が所定値に近づくように、発光素子11へ供給される電力を調整する。例えば、光量補償部61は、受光センサ12の第1出力端子12cと接続される。光量補償部61は、例えば、第1出力端子12cから出力される信号のレベルを閾値と比較する。光量補償部61は、例えば、第1出力端子12cから出力される信号のレベルが閾値未満である場合、発光素子11へ供給される電力を増加させる。この場合、発光素子11が経年劣化などにより発光効率が低下していても、受光センサ12の出力信号のレベルを確保することができる。また、光量補償部61は、受光センサ12の第2出力端子12dと接続される。光量補償部61は、第2出力端子12dから出力される信号を用いて、発光素子11から照射される光の光量が所定値に近づくように、発光素子11へ供給される電力を調整する。
【0062】
なお、光量補償部61は、例えば、第1出力端子12cあるいは第2出力端子12dから出力される信号のレベルが閾値を超える場合、発光素子11へ供給される電力を減少させてもよい。この場合、発光素子11で消費される電力が減少するので、バッテリー32の消耗を抑制することができる。また、光量補償部61は、受光センサ12の第1出力端子12cからの出力信号と第2出力端子12dからの出力信号の一方のみを用いて、発光素子11から照射される光の光量を調整してもよい。また、光量補償部61は、受光センサ12の検出結果を用いないで、発光素子11から照射される光の光量を調整してもよい。例えば、光量補償部61は、発光素子11の総発光時間に基づいて、発光素子11から照射される光の光量を調整してもよい。また、光量補償部61は、ユーザの設定に従って、発光素子11から照射される光の光量を調整してもよい。例えば、受光センサ12から出力される信号のレベルが位置情報の検出可能なレベルを超える場合に、予め発光素子11の発光量を減らすように光量補償部61によって調整しておいてもよい。また、受光センサ12から出力される信号のレベルが位置情報の検出可能なレベル未満である場合に、発光素子11の発光量を増やすように光量補償部61によって調整しておいてもよい。例えば、光量補償部61による光量の調整量は、耐ノイズ性能と電池の寿命のバランスを加味して、任意に設定、調整が可能である。耐ノイズ性能を優先する場合は発光素子11の発光量を強めに設定し、電池の寿命を優先する場合には発光素子11の発光量を弱めに設定することもできる。
【0063】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。図8は、本実施形態に係るエンコーダ装置ECを示す図である。本実施形態において、バッテリー32は、一次電池66および二次電池67を含む。モータ制御部MCは電源部MC2を備え、二次電池67は、電源部MC2から供給される電力により充電される。電源部MC2は、例えば、回転軸SF(移動部)の駆動に使われる電力を供給する電源であり、モータMに対して電力を供給する。二次電池67は、電源部MC2がモータMに対して電力を供給可能な状態(例、主電源がオンの状態)において、電源部MC2から電力の供給を受けて充電される。また、二次電池67への充電の少なくとも一部は、電気信号発生部(電気信号発生ユニット31)で発生する電気信号の電力を用いて行われる。この場合、エンコーダ装置ECに対して外部からの電力の供給が絶たれた状態(例、主電源のオフ状態、停電)などにおいても、二次電池67を充電することができる。
【0064】
バッテリー32は、位置検出系1で消費される電力の少なくとも一部を、一次電池66から供給することもできるし、二次電池67から供給することもできる。例えば、一次電池66および二次電池67は、それぞれ、切替部33と電気的に接続され、切替部33は、一次電池66からの電力または二次電池67からの電力を、検出部13および記憶部22のそれぞれへ供給する。
【0065】
図9は、本実施形態に係るエンコーダ装置ECの回路構成を示す図である。二次電池67は、モータ制御部MCの電源部MC2と電気的に接続されている。モータ制御部MCの電源部MC2が電力を供給可能な期間(例、主電源のオン状態)の少なくとも一部において、電源部MC2から二次電池67へ電力が供給され、この電力によって二次電池67が充電される。モータ制御部MCの電源部MC2が電力を供給不能な期間(例、主電源のオフ状態)において、電源部MC2から二次電池67への電力の供給は絶たれる。
【0066】
また、二次電池67は、電気信号発生ユニット31からの電気信号の伝達経路にも電気的に接続される。二次電池67は、電気信号発生ユニット31からの電気信号の電力により充電可能である。例えば、二次電池67は、整流スタック51とレギュレータ52との間の回路と電気的に接続される。二次電池67は、電源部MC2からの電力の供給が絶たれた状態において、回転軸SFの回転により電気信号発生ユニット31で発生する電気信号の電力によって、充電される。なお、二次電池67は、モータMに駆動されて回転軸SFが回転することにより電気信号発生ユニット31で発生する電気信号の電力によって、充電されてもよい。
【0067】
本実施形態に係るエンコーダ装置ECは、外部からの電力の供給が絶たれた状態において、一次電池66と二次電池67とのいずれから位置検出系1へ電力を供給するかを選択する。電力供給系2は、電源切替器68を備え、電源切替器68は、位置検出系1に対して一次電池66と二次電池67とのいずれから電力を供給するかを切り替える(選択する)。電源切替器68の第1入力端子は、一次電池66の正極と電気的に接続され、電源切替器68の第2入力端子は、二次電池67と電気的に接続される。電源切替器68の出力端子は、レギュレータ52の入力端子52bと電気的に接続される。
【0068】
電源切替器68は、例えば、二次電池67の残量に基づいて、位置検出系1に対して電力を供給する電池を、一次電池66または二次電池67に選択する。例えば、二次電池67の残量が閾値以上である場合、電源切替器68は、二次電池67から電力を供給させ、一次電池66から電力を供給させない。この閾値は、位置検出系1で消費される電力に基づいて設定され、例えば、位置検出系1へ対して供給すべき電力以上に設定される。例えば、電源切替器68は、位置検出系1で消費される電力を二次電池67からの電力でまかなうことが可能な場合、二次電池67から電力を供給させ、一次電池66から電力を供給させない。また、二次電池67の残量が閾未満である場合、電源切替器68は、二次電池67から電力を供給させず、一次電池66から電力を供給させる。電源切替器68は、例えば、二次電池67の充電を制御する充電器を兼ねていてもよく、充電の制御に使われる二次電池67の残量の情報を用いて、二次電池67の残量が閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0069】
本実施形態に係るエンコーダ装置ECは、二次電池67を併用するので、一次電池66の消耗を遅らせることができる。したがって、エンコーダ装置ECは、バッテリー32のメンテナンス(例、交換)がない、あるいはメンテナンスの頻度が低い。
【0070】
なお、バッテリー32は、一次電池66と二次電池67の少なくとも一方を備えればよい。また、上述の実施形態においては、一次電池66または二次電池67から択一的に電力を供給するが、一次電池66および二次電池67から並行して電力を供給してもよい。例えば、位置検出系1の各処理部(例、発光素子11、受光センサ12、アナログコンパレータ55、アナログコンパレータ56、計数器57、不揮発性メモリ58)の消費電力に応じて、一次電池66が電力を供給する処理部と、二次電池67が電力を供給する処理部とが定められてもよい。なお、二次電池67は、電源部EC2から供給される電力と、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号の電力との少なくとも一方を用いて、充電されればよい。また、エンコーダ装置ECは、バッテリー32を備えなくてもよく、例えば、電気信号発生ユニット31で発生する電気信号の電力によって、位置検出系1(例、多回転情報検出部3)で消費される電力をまかなってもよい。この場合、エンコーダ装置ECは、切替部33を備えなくてもよい。
【0071】
次に、変形例について説明する。図10(A)〜図10(D)は、それぞれ、変形例のエンコーダ装置の一部を示す図である。上述の各実施形態において、磁石37は、リング状の磁石(図3参照)により交流磁場を発生するが、図10(A)の磁石37は棒磁石により交流磁場を発生する。本変形例において磁石37は、円盤状のプレート72上に設けられた棒磁石71a〜71fを含む。
【0072】
プレート72は、回転軸SFに固定されており、回転軸SFと一体的に回転する。棒磁石71a〜71fは、プレート72と固定されており、プレート72および回転軸SFと一体的に回転する。棒磁石71a〜71fは、それぞれ、プレート72の径方向とほぼ平行に配置されている。
【0073】
棒磁石71a〜71cは、プレート72の中心(回転軸SF)にS極を向けて、かつN極を回転軸SFに対する放射方向(プレート72の外側)を向けて、配置されている。棒磁石71aは、プレート72の位置72dの付近に配置されている。棒磁石71bは、プレート72の位置72aに配置されている。棒磁石71cは、プレート72の位置72bの付近に配置されている。
【0074】
棒磁石71d〜71fは、プレート72の中心(回転軸SF)にN極を向けて、かつS極を回転軸SFに対する放射方向(プレート72の外側)を向けて、配置されている。棒磁石71dは、プレート72の位置72bの付近に、棒磁石71cと隣接して配置されている。棒磁石71eは、プレート72の位置72cに配置されている。棒磁石71fは、プレート72の位置72dの付近に、棒磁石71aと隣接して配置されている。
【0075】
このような磁石37によれば、プレート72の位置72bまたは位置72dが電気信号発生ユニット31の近傍を通過する際に、電気信号発生ユニット31における磁界の向きが反転し、電気信号発生ユニット31から電力が出力される。
【0076】
図10(B)の変形例において、電気信号発生ユニット31として、電気信号発生ユニット31aおよび電気信号発生ユニット31bが設けられる。電気信号発生ユニット31bは、磁石37の周方向において、電気信号発生ユニット31と180°の位相差で配置されている。磁石37の位置37aが電気信号発生ユニット31の近傍を通過する際に、磁石37の位置37cは、電気信号発生ユニット31cの近傍を通過する。このように、電気信号発生ユニット31aと電気信号発生ユニット31cとがほぼ同時に電力を発生することになり、電気信号発生ユニット31で発生する電力(電気信号のレベル)を増加させることができる。
【0077】
図10(C)の変形例において、電気信号発生ユニット31として、電気信号発生ユニット31aおよび電気信号発生ユニット31cが設けられる。電気信号発生ユニット31cは、磁石37に対して電気信号発生ユニット31aの反対側に設けられている。電気信号発生ユニット31cは、例えば、磁石37の周方向において電気信号発生ユニット31aと同じ角度位置に設けられる。このエンコーダ装置ECは、電気信号発生ユニット31aと電気信号発生ユニット31cとがほぼ同時に電力を発生することになり、電気信号発生ユニット31で発生する電力(電気信号のレベル)を増加させることができる。
【0078】
図10(D)の変形例において、磁石37として、磁石73aおよび磁石73bが設けられる。また、電気信号発生ユニット31として、電気信号発生ユニット31aおよび電気信号発生ユニット31dが設けられる。磁石73aは、図1などに示した円板36の表面に配置されており、磁石73bは裏面に配置されている。電気信号発生ユニット31aは、磁石73aの近傍に配置され、磁石73aが形成する磁界の変化によって発電する。電気信号発生ユニット31dは、磁石73bの近傍に配置され、磁石73bが形成する磁界の変化によって発電する。このように複数の電気信号発生ユニットが設けられる場合に、電気信号発生ユニット31aと対になる磁石73aと、電気信号発生ユニット31dと対になる磁石73bとが異なる別の部材であってもよい。
【0079】
なお、エンコーダ装置ECに設けられる電気信号発生ユニットの数は、3つ以上であってもよい。また、電気信号発生ユニットは、磁石37の一面側と他面側のそれぞれに感磁性部および発電部が設けられており、これら感磁性部および発電部が1つの筐体に収容されている態様であってもよい。
【0080】
なお、上述の実施形態において、位置検出系1は、位置情報として回転軸SF(移動部)の回転位置情報を検出するが、位置情報として所定方向の位置、速度、加速度の少なくとも一つを検出してもよい。エンコーダ装置ECは、ロータリーエンコーダを含んでもよいし、リニアエンコーダを含んでもよい。また、エンコーダ装置ECは、発電部および検出部が回転軸SFに設けられ、磁石37が移動体(例、回転軸SF)の外部に設けられることで、磁石と検出部との相対位置が移動部の移動に伴って変化するものでもよい。また、位置検出系1は、回転軸SFの多回転情報を検出しなくてもよく、位置検出系1の外部の処理部により多回転情報を検出してもよい。
【0081】
なお、電気信号発生ユニット31は、位置検出系1で消費される電力の少なくとも一部を供給してもよい。例えば、電力供給系2がバッテリー32(電池)を備えない場合に、発電部で発生した電気信号(電流)を、発光調整部に供給してもよい。例えば、電気信号発生ユニット31は、位置検出系1のうち消費電力が相対的に小さい処理部に対して、電力を供給してもよい。また、電力供給系2は、位置検出系1の一部に対して電力を供給しなくてもよい。例えば、電力供給系2は、検出部21に間欠的に電力を供給し、記憶部22へ電力を供給しなくてもよい。この場合、電力供給系2の外部に設けられる電源、バッテリーなどから記憶部22に対して、間欠的または連続的に電力が供給されてもよい。発電部は、大バルクハウゼンジャンプ以外の現象により電力が発生するものでもよく、例えば移動部(例、回転軸SF)の移動に伴う磁界の変化に伴う電磁誘導により、電力を発生するものでもよい。検出部の検出結果を記憶する記憶部は、位置検出系1の外部に設けられてもよく、エンコーダ装置ECの外部に設けられてもよい。
【0082】
[駆動装置]
次に、駆動装置について説明する。図11は、駆動装置MTRの一例を示す図である。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。この駆動装置MTRは、電動モータを含むモータ装置である。駆動装置MTRは、回転軸SFと、回転軸SFを回転駆動する本体部(駆動部)BDと、回転軸SFの回転位置情報を検出するエンコーダ装置ECとを有している。
【0083】
回転軸SFは、負荷側端部SFaと、反負荷側端部SFbとを有している。負荷側端部SFaは、減速機など他の動力伝達機構に接続される。反負荷側端部SFbには、固定部を介してスケールSが固定される。このスケールSの固定とともに、エンコーダ装置ECが取り付けられている。エンコーダ装置ECは、上述した実施形態、変形例、あるいはその組み合わせに係るエンコーダ装置である。
【0084】
この駆動装置MTRは、エンコーダ装置ECの検出結果を使って、図1などに示したモータ制御部MCが本体部BDを制御する。駆動装置MTRは、エンコーダ装置ECのバッテリー交換の必要性が無いもしくは低いので、メンテナンスコストを減らすことができる。なお、駆動装置MTRは、モータ装置に限定されず、油圧や空圧を利用して回転する軸部を有する他の駆動装置であってもよい。
【0085】
[ステージ装置]
次に、ステージ装置について説明する。図12は、ステージ装置STGの一例を示す図である。このステージ装置STGは、図11に示した駆動装置MTRの回転軸SFのうち負荷側端部SFaに、回転テーブル(移動物体)TBを取り付けた構成である。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。
【0086】
ステージ装置STGは、駆動装置MTRを駆動して回転軸SFを回転させると、この回転が回転テーブルTBに伝達される。その際、エンコーダ装置ECは、回転軸SFの角度位置等を検出する。従って、エンコーダ装置ECからの出力を用いることにより、回転テーブルTBの角度位置を検出することができる。なお、駆動装置MTRの負荷側端部SFaと回転テーブルTBとの間に減速機等が配置されてもよい。
【0087】
このようにステージ装置STGは、エンコーダ装置ECのバッテリー交換の必要性が低い又は無いので、メンテナンスコストを減らすことができる。なお、ステージ装置STGは、例えば、旋盤等の工作機械に備える回転テーブル等に適用できる。
【0088】
[ロボット装置]
次に、ロボット装置について説明する。図13は、ロボット装置RBTの一例を示す斜視図である。なお、図13には、ロボット装置RBTの一部(関節部分)を模式的に示した。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。このロボット装置RBTは、第1アームAR1と、第2アームAR2と、関節部JTとを有している。第1アームAR1は、関節部JTを介して、第2アームAR2と接続されている。
【0089】
第1アームAR1は、腕部101、軸受101a、及び軸受101bを備えている。第2アームAR2は、腕部102および接続部102aを有する。接続部102aは、関節部JTにおいて、軸受101aと軸受101bの間に配置されている。接続部102aは、回転軸SF2と一体的に設けられている。回転軸SF2は、関節部JTにおいて、軸受101aと軸受101bの両方に挿入されている。回転軸SF2のうち軸受101bに挿入される側の端部は、軸受101bを貫通して減速機RGに接続されている。
【0090】
減速機RGは、駆動装置MTRに接続されており、駆動装置MTRの回転を例えば100分の1等に減速して回転軸SF2に伝達する。図13に図示しないが、駆動装置MTRの回転軸SFのうち負荷側端部SFaは、減速機RGに接続されている。また、駆動装置MTRの回転軸SFのうち反負荷側端部SFbには、エンコーダ装置ECのスケールSが取り付けられている。
【0091】
ロボット装置RBTは、駆動装置MTRを駆動して回転軸SFを回転させると、この回転が減速機RGを介して回転軸SF2に伝達される。回転軸SF2の回転により接続部102aが一体的に回転し、これにより第2アームAR2が、第1アームAR1に対して回転する。その際、エンコーダ装置ECは、回転軸SFの角度位置等を検出する。従って、エンコーダ装置ECからの出力を用いることにより、第2アームAR2の角度位置を検出することができる。
【0092】
このようにロボット装置RBTは、エンコーダ装置ECのバッテリー交換の必要性が無いもしくは低いので、メンテナンスコストを減らすことができる。なお、ロボット装置RBTは、上記の構成に限定されず、駆動装置MTRは、関節を備える各種ロボット装置に適用できる。
【0093】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0094】
上述の実施形態に係るエンコーダ装置は、電気信号発生ユニットで発生した電気信号に基づいてバッテリのON、OFFを切り替え、バッテリからの電力によって位置検出系での少なくとも一部(例、発光素子11、検出部21、記憶部22)で消費される電力をまかなってもよい。また、上述の実施形態に係るエンコーダ装置は、電気信号発生ユニットで発生した電気信号を電力として取り出して、位置検出系の少なくとも一部(例、発光素子11、検出部21、記憶部22)で消費される電力をまかなってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1・・・位置検出系、2・・・電力供給系、3・・・多回転情報検出部、11・・・発光素子(発光部)、12・・・受光センサ(光検出部)、21・・・検出部、22・・・記憶部、31・・・電気信号発生ユニット(電気信号発生部)、32・・・バッテリー、33・・・切替部、34・・・発光調整部、61・・・光量補償部、EC・・・エンコーダ装置、MTR・・・駆動装置、RBT・・・ロボット装置、S・・・スケール、STG・・・ステージ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13