(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787427
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】有機物及びカルシウム含有水の処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20201109BHJP
C02F 1/20 20060101ALI20201109BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20201109BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20201109BHJP
C02F 3/12 20060101ALI20201109BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20201109BHJP
C02F 9/02 20060101ALI20201109BHJP
C02F 9/14 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
C02F1/44 C
C02F1/20 A
C02F1/42 B
C02F1/44 D
C02F1/28 D
C02F1/42 A
C02F3/12 N
C02F1/52 K
C02F9/02
C02F9/14
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-58874(P2019-58874)
(22)【出願日】2019年3月26日
(65)【公開番号】特開2020-157223(P2020-157223A)
(43)【公開日】2020年10月1日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀樹
【審査官】
松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−168743(JP,A)
【文献】
特開2014−100691(JP,A)
【文献】
特開昭62−204892(JP,A)
【文献】
特開2012−196588(JP,A)
【文献】
特開2014−014738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00− 71/82
C02F 1/44
C02F 3/12
C02F 1/20− 1/26
C02F 1/30− 1/38
C02F 1/28
C02F 1/42
B01D 21/01
C02F 1/52− 1/56
C02F 9/00− 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物及びカルシウム含有水を生物処理した後、脱炭酸装置で脱炭酸処理し、脱炭酸処理水を軟化器で軟化処理し、軟化処理水をアルカリ条件下で逆浸透膜処理することを特徴とする有機物及びカルシウム含有水の処理方法。
【請求項2】
前記軟化器で処理した水を活性炭処理した後に前記逆浸透膜処理することを特徴とする請求項1に記載の有機物及びカルシウム含有水の処理方法。
【請求項3】
前記有機物及びカルシウム含有水を前記生物処理した後、凝集沈殿処理し、次いで凝集処理又は膜処理した後、前記脱炭酸装置に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機物及びカルシウム含有水の処理方法。
【請求項4】
有機物及びカルシウム含有水が順次に通水される脱炭酸装置、軟化器及び逆浸透膜装置と、
該逆浸透膜装置への給水にアルカリを添加するアルカリ添加手段と
を備え、
前記脱炭酸装置の前段に、前記有機物及びカルシウム含有水が通水される生物処理装置が設置されている有機物及びカルシウム含有水の処理装置。
【請求項5】
前記軟化器と逆浸透膜装置との間に活性炭塔が設置されており、該軟化器の処理水が該活性炭塔を経て前記逆浸透膜装置に供給されることを特徴とする請求項4に記載の有機物及びカルシウム含有水の処理装置。
【請求項6】
前記脱炭酸装置の前段に、前記有機物及びカルシウム含有水が順次に通水される前記生物処理装置と、凝集沈殿装置と、凝集濾過装置又は膜処理装置とが設置されており、該膜処理装置の処理水が前記脱炭酸装置に供給されることを特徴とする請求項4又は5の有機物及びカルシウム含有水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物及びカルシウム含有水の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物及びカルシウム含有水の処理方法の従来例の一例を
図2に示す。有機物及びカルシウムを含有する有機系排水が生物処理装置1で生物処理されて有機物が分解され、次いで凝集沈殿装置2で凝集沈殿処理されて菌体が分離される。
【0003】
この凝集沈殿処理水が有機物分解設備3に供給され、生物処理及び/又はUV酸化処理が施されて残存有機物が分解される。この有機物分解処理水にNaClO及び凝集剤が添加され、前処理装置4で凝集及び濾過処理又は膜処理よりなる前処理が施された後、活性炭塔5で活性炭濾過され、次いでRO(逆浸透膜)装置6でRO処理されて処理水となり、回収される。
【0004】
各種産業用工程での有機系排水の処理水(下水放流レベル)を更に処理して設備用水レベルに再利用する場合、RO装置は有機物・イオン類を効率的に除去できるため、主要な回収装置となる。しかし、スライムやSS・界面活性剤等によるROの閉塞を防止するために、RO装置に給水する前に生物処理装置やUV酸化装置、凝集濾過装置、活性炭塔等の前処理設備が必要であった。また有機系排水には工程排水以外にスクラバー排水等を経由して、濾過水由来のCaが含有される場合が多い。RO給水のCa濃度が高い場合、RO給水のpHを高くすると、カルシウムスケールが発生するので、RO給水のpHを高くすることはできない。
【0005】
そのため、有機物及びカルシウム含有水を設備用水等に回収しようとすると、
図2のように多数の設備が必要となり、広大な設置スペースが必要となる。
【0006】
このため回収設備の初期投資及び運転維持管理コスト、処理スペース等を考慮すると、回収による経済的メリットを享受できず、実際には採用されないケースが多々あった。
【0007】
特許文献1には、有機物及びカルシウム含有水を活性炭塔、軟化塔、RO装置の順に通水して処理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2010/098158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有機物及びカルシウム含有水をRO装置で処理する方法及び装置において、RO膜の閉塞を効果的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有機物及びカルシウム含有水の処理方法は、有機物及びカルシウム含有水を、脱炭酸装置及び軟化器で処理した後、アルカリ条件下で逆浸透膜処理することを特徴とする。
【0011】
本発明の有機物及びカルシウム含有水の処理装置は、有機物及びカルシウム含有水が順次に通水される脱炭酸装置、軟化器及び逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置への給水にアルカリを添加するアルカリ添加手段とを備えてなる。
【0012】
本発明の一態様では、前記軟化器で処理した水を活性炭処理した後に前記逆浸透膜処理する。
【0013】
本発明の一態様では、前記有機物及びカルシウム含有水を生物処理した後、凝集沈殿処理し、次いで凝集処理又は膜処理した後、前記脱炭酸装置に供給する。
【発明の効果】
【0014】
一般に、有機系排水の処理水(下水放流レベルの有機物濃度)にROを直接適用する場合、有機物により短時間でRO膜が閉塞する可能性が高い。本発明では、RO給水をpHを例えば10〜10.5程度に高く制御することにより、RO装置での生菌の繁殖を抑制し、RO膜の閉塞を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係る有機物及びカルシウム含有水の処理方法及び装置の構成図である。
【
図2】従来例に係る有機物及びカルシウム含有水の処理方法及び装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0017】
この実施の形態では、有機系排水(有機物及びカルシウム含有水)として、食品工場排水、化学工業排水、電子製造工程排水等を処理する。該排水中のカルシウム濃度は、通常2〜100mg/L特に5〜20mg/Lであり、TOC濃度は、通常5〜500mg/L特に10〜100mg/L程度である。ただし、排水の種類及びカルシウム濃度、TOC濃度はこれに限定されない。
【0018】
図1の通り、有機系排水は、生物処理装置11で生物処理され、有機物が分解処理された後、凝集沈殿装置12で凝集沈殿処理されて菌体が分離される。この凝集沈殿処理水にNaClO及び凝集剤が添加された後、前処理設備13に供給され、凝集濾過又は膜処理(MF膜等による膜濾過処理)が施される。この前処理水にHCl及び還元剤が添加され、pH4.5〜6.0特に5.0〜5.5の酸性に調整された後、脱炭酸塔14に通水され、脱炭酸処理される。
【0019】
この脱炭酸処理水にスライム抑制剤が添加された後、軟化器15に通水され、軟化処理される。この軟化処理水にNaOH及びスケール分散剤が添加され、pH9〜11特に10〜10.5程度の高pHに調整された後、活性炭塔16に通水され、界面活性剤やH
2O
2等の酸化剤が除去される。次いでRO装置17に通水され、RO透過水が処理水として設備用水槽(図示略)等に回収される。RO装置17は直列2段に設置されてもよい。
【0020】
なお、脱炭酸塔14への給水の有機物濃度(TOC)は2〜50mg/L特に2〜25mg/L程度が好ましく、カルシウム濃度は2〜100mg/L特に5〜20mg/L程度が好ましい。脱炭酸塔14への給水としては、排水を生物処理した後、凝集沈殿あるいは加圧浮上処理し、さらに濾過処理した水のほか、冷却塔ブロー水を除濁処理した水を例示することができる。
【0021】
前述の通り、有機系排水がカルシウムを含有していると共に、生物処理装置11からは高濃度の無機炭酸が発生することから、RO給水のpHを高くするとCaCO
3スケールによりRO膜を閉塞させることになる。それを防止するために、この実施の形態では、RO前段に脱炭酸塔14及び軟化器15を設置する。
【0022】
また、界面活性剤やH
2O
2等の酸化剤除去のための活性炭塔16の給水も高pHとし、有機物による閉塞を防止する。
【0023】
軟化器15給水も高pH域にすると、Ca濃縮によりカチオン樹脂表面にCaCO
3スケールが発生し閉塞することが懸念されるため、軟化器15は活性炭塔16の前段に設置し、軟化器15給水を中性域に管理するのが望ましい。
【0024】
本発明では、RO装置を2段直列に設置する場合、1段目ROブライン(濃縮水)のTOCが100μg/L以下になるようにするのが好ましい。なお、排水にフッ素が含有されていても、50μg/L以下であれば軟化器及びスケール分散剤の効果によりCaF
2スケールを未然に防ぎ、安定して排水を回収することが可能となる。
【0025】
この
図1のフローによると、
図2のフローで必要であった有機物分解設備3(生物処理やUV酸化装置等)が不要となったことで、装置の初期投資額、必要スペース及び運転コストを大幅に低減することが可能となる。
【0026】
本発明では、RO装置17の前段に設置された軟化器15によりCaが除去されるので、RO給水のpHを上げてもCaCO
3スケールの発生が抑制される。軟化器15からリークする微量のCa及び排水に含有される無機炭素(IC)により、RO装置17のブライン側でCa及びICが濃縮し析出するリスクが考えられるが、脱炭酸塔14でICを除去すること及び軟化器15処理水へのスケール分散剤注入により、ROブライン側でのカルシウムスケール析出が防止される。
【0027】
本発明では、スライムコントロール剤としては、有機系スライムコントロール剤(5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン化合物、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド等のハロシアノアセトアミド化合物)のほか、上記特許文献1に記載された塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤を含むものも好適である。
【0028】
この塩素系酸化剤としては、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸又はその塩、亜塩素酸又はその塩、塩素酸又はその塩、過塩素酸又はその塩、塩素化イソシアヌル酸又はその塩などを挙げることができる。これらのうち、塩形のものの具体例としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどの次亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウムなどの塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウムなどの塩素酸アルカリ土類金属塩などを挙げることができる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中で、次亜塩素酸塩は取り扱いが容易なので、好適に用いることができる。
【0029】
スルファミン酸化合物としては、スルファミン酸のほかに、N−メチルスルファミン酸、N,N−ジメチルスルファミン酸、N−フェニルスルファミン酸などを挙げることができる。スルファミン酸化合物の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びグアニジン塩などを挙げることができ、具体的には、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウムなどを挙げることができる。スルファミン酸及びこれらのスルファミン酸塩は、1種を単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤とスルファミン酸塩等のスルファミン酸化合物を混合すると、これらが結合して、クロロスルファミン酸塩を形成して安定化し、従来のクロラミンのようなpHによる解離性の差、それによる遊離塩素濃度の変動を生じることなく、水中で安定した遊離塩素濃度を保つことが可能となる。
【0031】
塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物との割合には特に制限はないが、塩素系酸化剤の有効塩素1モルあたりスルファミン酸化合物を0.5〜5.0モルとすることが好ましく、0.5〜2.0モルとすることがより好ましい。
【0032】
上記実施の形態では、脱炭酸装置として脱炭酸塔が用いられるが、脱炭酸塔のほか、真空脱気装置、膜脱気装置など各種のものを用いることができる。
【0033】
なお、脱炭酸塔を直列に2段に設置してもよい。また、脱炭酸塔からの脱炭酸処理水の一部を脱炭酸塔の入口側に戻す循環処理を行ってもよい。この循環処理方式の脱炭酸塔を複数台並列に設置してもよい。脱炭酸塔内に第1及び第2の充填床を設け、脱炭酸塔給水を第1の充填床に供給し、脱炭酸処理水を第2の充填床に供給するよう構成された高効率脱炭酸塔を用いてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1,11 生物処理装置
2,12 凝集沈殿装置
5,16 活性炭塔
6,17 RO装置