特許第6787478号(P6787478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JNC株式会社の特許一覧 ▶ JNC石油化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787478
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】重合性化合物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 219/34 20060101AFI20201109BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20201109BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20201109BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20201109BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   C07C219/34
   C09K19/38
   C09K19/42
   C09K19/54 Z
   G02F1/13 500
【請求項の数】7
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2019-505738(P2019-505738)
(86)(22)【出願日】2018年1月23日
(86)【国際出願番号】JP2018001895
(87)【国際公開番号】WO2018168205
(87)【国際公開日】20180920
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-48051(P2017-48051)
(32)【優先日】2017年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】矢野 智広
(72)【発明者】
【氏名】近藤 史尚
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−328973(JP,A)
【文献】 特開2000−119657(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/102076(WO,A1)
【文献】 特開2016−166344(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/143634(WO,A1)
【文献】 特開2005−172863(JP,A)
【文献】 特開2004−212959(JP,A)
【文献】 特開2001−166519(JP,A)
【文献】 特開平05−116461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09K
G02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1−1−4)から式(1−1−6)のいずれか1つで表される重合性化合物と、下記式(2)から式(8)のいずれかで表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物とを含有する重合性組成物。
【化1】
式(1−1−4)から式(1−1−6)において、
は、水素、ハロゲン、−SP−P、−SP−Pまたは炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
環A、環A、環Aおよび環Aは、独立して、炭素数3から18の脂環式炭化水素、炭素数6から18の芳香族炭化水素、または炭素数3から18のヘテロ芳香族炭化水素から誘導された二価基であり、これらの二価基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数1から12のアルケニル、または炭素数1から12のアルケニルオキシで置き換えられてもよく、これらの一価の炭化水素基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
SPおよびSPは、独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
およびPは、独立して、下記式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)または式(1e)で表される基であり;
【化2】
式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)および式(1e)において、
およびMは、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1から10のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
、R、RおよびRは、独立して、水素、または炭素数1から15の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【化3】
式(2)から式(4)において、
11およびR12は、独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルまたはアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環Bおよび環Bは、独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12およびZ13は、独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【化4】
式(5)から式(7)において、
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;
環C、環Cおよび環Cは、独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14、Z15およびZ16は、独立して、単結合、−(CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、または−(CH−であり;
11およびL12は、独立して、水素またはフッ素である。
【化5】
式(8)において、
14は、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Dは、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
17は、単結合、−(CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または−CHO−であり;
13およびL14は、独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【請求項2】
式(1−1−4)から式(1−1−6)において、
環Aおよび環Aは、独立して、1,4−フェニレンであり、これらの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく
環Aおよび環Aは、独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり、これらの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい、
請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
式(1−1−4)において、
は、水素であり、
環Aおよび環Aは、独立して、1,4−フェニレンであり、これらの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい、
請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の重合性組成物の重合によって生成する、液晶複合体。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の重合性組成物の重合によって生成する、光学異方性体。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の重合性組成物または請求項に記載の液晶複合体を含有する、液晶表示素子。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の重合性組成物、および請求項に記載の液晶複合体からなる群から選択された少なくとも1つの、液晶表示素子における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物、この重合性化合物と液晶組成物とを含む重合性組成物、この重合性組成物から調製した液晶複合体、および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、液晶組成物中の液晶分子が有する光学異方性、誘電率異方性などを利用したものである。液晶分子の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード、BTN(bistable twisted nematic)モード、ECB(electrically controlled birefringence)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、FFS(fringe field switching)モード、VA(vertical alignment)モードなどである。
【0003】
これらの液晶表示素子において、その初期配向は一般的にはポリイミド配向膜によって達成される。一方、配向膜を有しない液晶表示素子では、極性化合物および重合体または重合性の極性化合物を含有する液晶組成物が用いられる。まず、少量の極性化合物および少量の重合性化合物または少量の重合性極性化合物を添加した組成物を素子に注入する。ここで、極性化合物の作用によって液晶分子が配向することもある。次に、この組成物に紫外線を照射することで、重合性化合物または重合性極性化合物が重合する。それにより液晶分子が配向し、この配向状態が安定化されるか、または注入後の配向が安定化される。この組成物では、極性化合物および重合体または重合性極性化合物によって液晶分子の配向を制御することが可能になるので、素子の応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善される。さらに、配向膜を有しない素子では、配向膜を形成する工程が不要であり、配向膜がないので、配向膜と組成物との相互作用による素子の電気抵抗の低下がないという利点を有する。極性化合物と重合体の組合せによるこのような利点は、TN、ECB、OCB、IPS、VA、FFS、FPAのようなモードを有する素子に期待できる。
【0004】
液晶組成物に重合体を組み合わせる方法は、PS−TN、PS−IPS、PS−FFS、PSA−VA、PSA−OCBなどの様々な動作モードの液晶表示素子に適用することができる。このようなモードの素子で使用される重合性化合物には、液晶分子を配向させる優れた能力、適切な重合反応性、高い転化率および液晶組成物への高い溶解性等の特性が要求される。これまで様々な重合性化合物が開発されてきたが、上記の特性をさらに向上させた化合物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−307720号公報
【特許文献2】特開2004−131704号公報
【特許文献3】特開2006−133619号公報
【特許文献4】特表2010−537256号公報
【特許文献5】特開平10−186330号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開1889894号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開第101671252号明細書
【特許文献8】国際公開第2013/77343号
【特許文献9】国際公開第2014/6962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第一の課題は、液晶分子を配向させる優れた能力、適切な重合反応性、高い転化率、高い電圧保持率および液晶組成物への高い溶解度の少なくとも1つを有する重合性化合物を提供することである。第二の課題は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、適切な弾性定数、大きな比抵抗、適切なプレチルトなどの物性の少なくとも1つを充足する液晶複合体を提供することである。この課題は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶複合体を提供することである。第三の課題は、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命の少なくとも1つを有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
項1. 下記式(1)で表される重合性化合物。
【化15】
式(1)において、
は、水素、ハロゲン、−SP−Pまたは炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
MESは少なくとも1つの環およびN原子を有するメソゲン基であり;
SPは単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
は重合性基であり;
aは、0、1、2、3、または4であり;
cは、0、1、2、3、または4である。
【0008】
項2. 下記式(1−1)で表される、項1に記載の重合性化合物。
【化16】
式(1−1)において、
、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲン、−SP−P、−SP−Pまたは炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
a1およびa2は、独立して、0、1、2、3、または4であり、a1とa2の合計は1〜8であり;
環Aおよび環Aは、独立して、炭素数3から18の脂環式炭化水素、炭素数6から18の芳香族炭化水素、または炭素数3から18のヘテロ芳香族炭化水素から誘導された二価基であり、これらの二価基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数1から12のアルケニル、または炭素数1から12のアルケニルオキシで置き換えられてもよく、これらの一価の炭化水素基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
およびZは、独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−、−C(CH)=CH−、−CH=C(CH)−、−C(CH)=C(CH)−、または−CH≡CH−で置き換えられてもよく、これらの二価基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
b1およびb2は、独立して、0、1、2、または3であり;
SPおよびSPは、独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
およびPは、独立して、下記式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)または式(1e)で表される基であり;
【化17】
式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)および式(1e)において、
およびMは、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1から10のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
、R、RおよびRは、独立して、水素、または炭素数1から15の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0009】
項3. 下記式(1−1−1)から式(1−1−3)のいずれか1つで表される、項1に記載の重合性化合物。
【化18】
式(1−1−1)から式(1−1−3)において、
は、水素、ハロゲン、−SP−P、−SP−Pまたは炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
環A、環A、環Aおよび環Aは、独立して、炭素数3から18の脂環式炭化水素、炭素数6から18の芳香族炭化水素、または炭素数3から18のヘテロ芳香族炭化水素から誘導された二価基であり、これらの二価基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数1から12のアルケニル、または炭素数1から12のアルケニルオキシで置き換えられてもよく、これらの一価の炭化水素基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
、Z、ZおよびZは、独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−、−C(CH)=CH−、−CH=C(CH)−、−C(CH)=C(CH)−、または−CH≡CH−で置き換えられてもよく、これらの二価基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
SPおよびSPは、独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
およびPは、独立して、下記式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)または式(1e)で表される基であり;
【化19】
式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)および式(1e)において、
およびMは、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1から10のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
、R、RおよびRは、独立して、水素、または炭素数1から15の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0010】
項4. 下記式(1−1−4)から式(1−1−6)のいずれか1つで表される、項1に記載の重合性化合物。
【化20】
式(1−1−4)から式(1−1−6)において、
は、水素、ハロゲン、−SP−P、−SP−Pまたは炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
環A、環A、環Aおよび環Aは、独立して、炭素数3から18の脂環式炭化水素、炭素数6から18の芳香族炭化水素、または炭素数3から18のヘテロ芳香族炭化水素から誘導された二価基であり、これらの二価基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数1から12のアルケニル、または炭素数1から12のアルケニルオキシで置き換えられてもよく、これらの一価の炭化水素基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
SPおよびSPは、独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
およびPは、独立して、下記式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)または式(1e)で表される基であり;
【化21】
式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)および式(1e)において、
およびMは、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1から10のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
、R、RおよびRは、独立して、水素、または炭素数1から15の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0011】
項5. 式(1−1−4)から式(1−1−6)のいずれか1つで表される、項1に記載の重合性化合物。
【化22】
式(1−1−4)から式(1−1−6)において、
は、水素、ハロゲン、−SP−P、−SP−Pまたは炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
環Aおよび環Aは、独立して、1,4−フェニレンであり、これらの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環Aおよび環Aは、独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり、これらの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
SPおよびSPは、独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
およびPは、独立して、下記式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)または式(1e)で表される基であり;
【化23】
式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)および式(1e)において、
およびMは、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1から10のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
、R、RおよびRは、独立して、水素、または炭素数1から15の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0012】
項6. 下記式(1−1−7)で表される、項1に記載の重合性化合物。
【化24】
式(1−1−7)において、
環Aおよび環Aは、独立して、1,4−フェニレンであり、これらの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
SPおよびSPは、独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
およびPは、独立して、下記式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)または式(1e)で表される基であり;
【化25】
式(1a)、式(1b)、式(1c)、式(1d)および式(1e)において、
およびMは、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1から10のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
、R、RおよびRは、独立して、水素、または炭素数1から15の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0013】
項7. 項1から6のいずれか1項に記載の重合性化合物を少なくとも1つを含有する、重合性組成物。
【0014】
項8. 下記式(2)から式(4)のいずれかで表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項7に記載の重合性組成物。
【化26】
式(2)から式(4)において、
11およびR12は、独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルまたはアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環Bおよび環Bは、独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12およびZ13は、独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【0015】
項9. 下記式(5)から式(7)のいずれかで表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項7または8に記載の重合性組成物。
【化27】
式(5)から式(7)において、
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;
環C、環Cおよび環Cは、独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14、Z15およびZ16は、独立して、単結合、−(CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、または−(CH−であり;
11およびL12は、独立して、水素またはフッ素である。
【0016】
項10. 下記式(8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項7から9のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【化28】
式(8)において、
14は、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Dは、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
17は、単結合、−(CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または−CHO−であり;
13およびL14は、独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【0017】
項11. 項7から10のいずれか1項に記載の重合性組成物の重合によって生成する、液晶複合体。
【0018】
項12. 項7から10のいずれか1項に記載の重合性組成物の重合によって生成する、光学異方性体。
【0019】
項13. 項7から10のいずれか1項に記載の重合性組成物または項11に記載の液晶複合体を含有する、液晶表示素子。
【0020】
項14. 項1から6のいずれか1項に記載の化合物、項7から10のいずれか1項に記載の重合性組成物、および項11に記載の液晶複合体からなる群から選択された少なくとも1つの、液晶表示素子における使用。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第一の長所は、液晶分子を配向させる優れた能力、適切な重合反応性、高い転化率、高い電圧保持率、および液晶組成物への高い溶解度の少なくとも1つを有する重合性化合物を提供することである。第二の長所は、液晶複合体が、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、適切な弾性定数、大きな比抵抗、適切なプレチルトなどの物性の少なくとも1つを充足することである。この長所は、液晶複合体が少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有することである。第三の長所は、液晶表示素子が、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命の少なくとも1つを有することである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する非重合性の化合物、および液晶相を有しないが上限温度、下限温度、粘度、誘電率異方性のような液晶組成物の物性を調整する目的で混合される非重合性の化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。液晶組成物は、液晶性化合物の混合物である。重合性化合物は、重合体を生成させる目的で組成物に添加する化合物である。重合性組成物は、重合性化合物、液晶組成物、添加物などの混合物である。液晶複合体は、この重合性組成物の重合によって生成する複合体である。液晶表示素子は、液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度は、液晶組成物、重合性組成物、または液晶複合体におけるネマチック相−等方相の相転移温度であり、上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度は、下限温度と略すことがある。重合反応性は、反応物が重合するときの容易さの度合いを指す。転化率は、反応物に対する、化学反応によって消費された反応物の重量比である。
【0023】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。液晶性化合物の割合(含有量)は、この液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。この組成物に光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤のような添加物が必要に応じて添加される。添加物の割合(添加量)は、液晶性化合物の割合と同様に、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0024】
式(1)で表される化合物を化合物(1)と略すことがある。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。化合物(1−1)の環Aや環Aにおいて、円を横切る線は、−SP−P基が六員環、縮合環などの環上の結合位置を任意に選択できることを意味する。このルールは、−SP−P基のような記号にも適用される。式(2)から(8)において、六角形で囲まれたB、C、Dなどの記号は、環B、環C、環Dなどの環に対応する。R11の記号を式(2)、式(3)などの複数の式に使用する。これらの化合物において、任意の2つのR11が表す2つの末端基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。式(8)において、iが2のとき、2つのDが1つの式に存在する。この化合物において、2つのDが表す2つの環は、同一であってもよいし、または異なってもよい。このルールは、iが2より大きいときのDにも適用される。このルールは、−SP−P基のような他の記号にも適用される。
【0025】
「少なくとも1つの“A”は、“B”で置き換えられてもよい」の表現は、“A”の数が1つのとき、“A”の位置は任意であり、“A”の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく自由に選択できることを意味する。「少なくとも1つのAが、B、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられた場合、少なくとも1つのAがCで置き換えられた場合、および少なくとも1つのAがDで置き換えられた場合、さらに複数のAがB、C、Dの少なくとも2つで置き換えられた場合を含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの−CH−(または−(CH−)が−O−(または−CH=CH−)で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH−H)の−CH−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0026】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、環から水素を2つ除くことによって誘導された左右非対称な二価基にも適用される。
【化29】
【0027】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を意味する。好ましいハロゲンはフッ素または塩素である、さらに好ましいハロゲンはフッ素である。
【0028】
本発明は、次の項も含む。
(a)光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などの添加物の少なくとも1つをさらに含有する、上記の重合性組成物。
(b)少なくとも1つの重合開始剤をさらに含有する、上記の重合性組成物。
(c)式(1)で表されない重合性化合物をさらに含有する、上記の重合性組成物。
(d)PSAモードを有する液晶表示素子に適した重合性組成物において、式(1)で表される化合物の使用。
(e)PSAモードを有する液晶表示素子において、式(1)で表される化合物の使用。
(f)PSAモードを有する液晶表示素子において、式(1)、式(1−1)および式(1−1−1)から式(1−1−7)のいずれかで表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の使用。
(g)PSAモードを有する液晶表示素子において、上記の化合物の少なくとも1つを含有する重合性組成物の使用。
(h)PSAモードを有する液晶表示素子において、上記の重合性組成物の重合によって生成する液晶複合体の使用。
(i)PS−TN、PS−IPS、PS−FFS、PSA−VA、またはPSA−OCBのモードを有する液晶表示素子において、上記の化合物、上記の重合性組成物、または上記の液晶複合体の使用。
【0029】
本発明は、次の項も含む。
(j)PSAモードを有する液晶表示素子において、式(1)で表される化合物と、式(2)、式(3)および式(4)のいずれかで表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物とを含有する組成物の使用。
(k)PSAモードを有する液晶表示素子において、式(1)で表される化合物と、式(5)、式(6)および式(7)のいずれかで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物とを含有する組成物の使用。
(l)PSAモードを有する液晶表示素子において、式(1)で表される化合物と、式(8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物とを含有する組成物の使用。
【0030】
以下、本発明の重合性化合物についてまず説明し、その後に、合成法、重合性組成物、液晶複合体、液晶表示素子の順で説明をする。
【0031】
1.重合性化合物
下記式(1)で表される化合物。
【化30】
式(1)において、
は、水素、ハロゲン、−SP−Pまたは炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
MESは少なくとも1つの環およびN原子を有するメソゲン基であり;
SPは単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
は重合性基であり;
aは、0、1、2、3、または4であり;
cは、0、1、2、3、または4である。
【0032】
第一に、化合物(1)は、液晶性化合物に類似した棒状の分子構造を有するので、液晶組成物への溶解度は高い。したがって、化合物(1)は、PSAモードを有する素子に必要な重合性化合物として適している。第二に、化合物(1)は適切な重合性を有している。したがって、化合物(1)は安定に保存することが可能である。重合に際しては、光反応の速度を容易に制御することができ、紫外線を適度に照射することによって重合させることが可能である。また、過度の紫外線を必要としない。
【0033】
化合物(1)における好ましい構造は式(1−1)であり、式(1−1)における、重合性基P、連結基SP、環A、アルキルR、および結合基Zのそれぞれの好ましい例は、以下のとおりである。この例は、化合物(1)の下位の化合物にも適用される。化合物(1)は、これらの基の種類を適切に組み合わせることによって、物性を任意に調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
【化31】
【0034】
式(1−1)において、PおよびPは独立して重合性基である。重合性基の例は、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルオキシ、ビニルカルボニル、オキシラニル、オキセタニル、3,4−エポキシシクロヘキシル、マレイミドまたはイタコン酸エステルである。これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルで置き換えられてもよい。重合性基の好ましい例は、アクリロイルオキシ(下記式(1a))、オキシラニル(下記式(1b))、ビニルオキシ(下記式(1c))、マレイミド(下記式(1d))またはイタコン酸エステル(下記式(1e))である。
【化32】
ここで、式(1a)〜式(1e)において、
およびMは、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1から10のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は、ハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよく;
、R、RおよびRは独立して、水素、または炭素数1から15の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0035】
式(1−1)において、SPおよびSPは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの二価基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよい。
【0036】
SPまたはSPの好ましい例は、単結合、−CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−(CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CH=CH−O−、−O−CH=CH−、−C≡C−O−、−O−C≡C−、−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CH−、−(CHO−、または−O(CH−である。さらに好ましい例は、単結合、−CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CH=CH−O−、または−O−CH=CH−である。特に好ましい例は、単結合、−CH−、−CH=CH−、−CH=CH−O−、−O−CH=CH−、−CHCHO−、または−OCHCH−である。最も好ましい例は、単結合である。−CH=CH−の二重結合の立体配置はシス型であっても、トランス型であってもよい。トランス型はシス型より好ましい。
【0037】
式(1−1)において、R、RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、−S−P、−S−P、または炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲン、−SP−Pまたは−SP−Pで置き換えられてもよい。
【0038】
式(1−1)において、a1およびa2は独立して、0、1、2、3、または4である。−SP−Pまたは−SP−Pは、重合に関与する一価基である。−SP−Pおよび−SP−Pを合わせた個数(すなわち、a1+a2)は、1から8である。好ましい例は1から6であり、さらに好ましい例は1から3である。最も好ましい例は1または2である。
【0039】
式(1−1)において、環Aおよび環Aは独立して、炭素数3から18の脂環式炭化水素、炭素数6から18の芳香族炭化水素、または炭素数3から18のヘテロ芳香族炭化水素から、2つの水素を除くことによって誘導された二価基である。これらの二価基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数1から12のアルケニル、または炭素数1から12のアルケニルオキシで置き換えられてもよく、これらの一価の炭化水素基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。さらに、環Aはa1個の水素が−SP−Pで置き換えられていて、環Aはa2個の水素が−SP−Pで置き換えられている。
【0040】
脂環式炭化水素の例は、C2nで表される、シクロプロパン、シクロブタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどである。他の例は、デカヒドロナフタレンなどである。芳香族炭化水素の例は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、インダン、インデン、テトラヒドロナフタレンなどである。ヘテロ芳香族炭化水素の例は、ピリジン、ピリミジン、フラン、ピラン、チオフェン、ベンゾフランなどである。これらの炭化水素は、フッ素、塩素、アルキルのような一価基で置換されてもよい。環Aまたは環Aの好ましい例は、ベンゼン、フルオロベンゼン、ナフタレン、フルオレン、またはフェナントレンである。さらに好ましい例は、ベンゼンまたはシクロヘキサンである。
【0041】
式(1−1)において、ZおよびZは、独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH−は、−CH=CH−、−C(CH)=CH−、−CH=C(CH)−、−C(CH)=C(CH)−、または−CH≡CH−で置き換えられてもよく、これらの二価基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよい。
【0042】
およびZの好ましい例は、単結合、炭素数1から4のアルキレン、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C(CH)=CH−COO−、−OCO−CH=C(CH)−、−CH=C(CH)−COO−、−OCO−(CH)C=CH−、−C(CH)=C(CH)−COO−、−OCO−C(CH)=C(CH)−、−CO−CH=CH−、−CH=CH−CO−、−C(CH)=C(CH)−、−CH=CH−CHO−、−OCH−CH=CH−、−CH=CH−OCH−、−CHO−CH=CH−、または−CH≡CH−である。さらに好ましい例は、単結合、エチレン、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、または−CH≡CH−である。最も好ましい例は単結合である。
【0043】
式(1−1)において、b1およびb2は、独立して、0、1、2、または3である。b2が0のとき、この化合物は環Aで表される環をb1個有する。この場合、好ましい環Aは、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンゼンのような縮合環から、2つの水素を除くことによって誘導された二価基である。b1およびb2が1のとき、この化合物は、環Aと環Aとを有する。この場合、好ましい環Aまたは環Aは、ベンゼン、フッ素、またはメチルのような置換基で置換されたベンゼンから誘導された二価基である。b1が1でb2が2のとき、この化合物は、環A、環Aおよび環Aの3環を有する。好ましい環Aまたは環Aは、ベンゼン、フッ素のような置換基で置換されたベンゼンから誘導された二価基である。
【0044】
2.合成法
化合物(1)または化合物(1−1)の合成法を説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物質に目的の末端基、環、および結合基を導入する方法は、フーベン−ヴァイル(Houben-Wyle, Methoden der Organische Chemie, Georg-Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。
【0045】
2−1.結合基Zの生成
化合物(1−1)における結合基Zを生成する方法の例は、下記のスキームのとおりである。このスキームにおいて、MSG(またはMSG)は、少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。複数のMSG(またはMSG)が表す一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から化合物(1I)は、化合物(1)に相当する。エステルの生成においては、−COO−を有する化合物の合成法を示した。−OCO−を有する化合物もこの合成法によって合成することが可能である。他の非対称な結合基についても同様である。
【0046】
【化33】
【0047】
【化34】
【0048】
(1) 単結合の生成
アリールホウ酸(21)と公知の方法で合成される化合物(22)とを、炭酸塩水溶液中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(22)を反応させることによっても合成される。
【0049】
(2) −COO−の生成
化合物(23)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。化合物(24)と、公知の方法で合成されるフェノール(25)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(N,N−ジメチル−4−アミノピリジン)の存在下で脱水縮合させて化合物(1B)を合成する。
【0050】
(3) −CFO−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(26)を得る。化合物(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、化合物(1C)を合成する(M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992, 827.を参照)。化合物(1C)は化合物(26)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される(W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照)。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこの結合基を生成させることも可能である。
【0051】
(4) −CH=CH−の生成
化合物(22)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0052】
(5) −CHO−の生成
化合物(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(29)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(31)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(31)を化合物(30)と反応させて化合物(1E)を合成する。
【0053】
(6) −CH=CH−COO−の生成
水素化ナトリウムなどの塩基をジエチルホスホノ酢酸エチルに作用させてリンイリドを調製し、このリンイリドをアルデヒド(32)と反応させてエステル(33)を得る。エステル(33)を水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下で加水分解してカルボン酸(34)を得る。この化合物と化合物(25)とを脱水縮合させて化合物(1F)を合成する。
【0054】
(7) −C(CH)=CH−COO−の生成
水素化ナトリウムなどの塩基をジエチルホスホノ酢酸エチルに作用させてリンイリドを調製し、このリンイリドをメチルケトン(35)と反応させてエステル(36)を得る。次にエステル(36)を水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下で加水分解してカルボン酸(37)を得たのち、化合物(25)との脱水縮合によって化合物(1G)を合成する。
【0055】
(8) −CH=C(CH)−COO−の生成
公知の方法で合成される化合物(38)と公知の方法で合成される化合物(39)とをN,N−ジシクロヘキシルメチルアミン(CyNMe)のような塩基、およびビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1H)を合成する。
【0056】
(9) −C(CH)=C(CH)−COO−の生成
化合物(25)とピルビン酸との脱水縮合によって化合物(40)を得る。亜鉛および四塩化チタンの存在下、化合物(40)を化合物(35)と反応させることにより、化合物(1I)を合成する。
【0057】
2−2.連結基SPおよび重合性基Pの生成
重合性基Pの好ましい例は、アクリロイルオキシ(1a)、オキシラニル(1b)、ビニルオキシ(1c)マレイミド(1d)またはイタコン酸エステル(1e)である。
【化35】
この重合性基が連結基SPで環に結合した化合物を合成する方法の例は、下記のとおりである。まず、連結基SPが単結合である例を示す。
【0058】
(1) 単結合の生成
単結合を生成する方法は、下記のスキームのとおりである。このスキームにおいて、MSGは、少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。化合物(1S)から化合物(1Z)は、化合物(1)に相当する。
【0059】
【化36】
【0060】
【化37】
【0061】
連結基SPが単結合である化合物の合成法を以上に述べた。その他の連結基を生成する方法は、連結基Zの合成法を参考に合成できる。
【0062】
2−3.MESの生成
化合物(1)におけるMESは少なくとも1つの環およびN原子を有するメソゲン基である。好ましい例は以下(1J)である。化合物(1J)は、化合物(1)に相当する。環Aおよび環Aが共に芳香族炭化水素である場合、例えば以下のスキームで合成できる。
【化38】
【0063】
2−4.環Aおよび環Aの生成
環Aおよび環Aとしての、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−エチル−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン−3,17−ジイル、2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン−3,17−ジイルなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0064】
化合物(1)は、類似の化合物に比べ、適切な重合反応性、高い転化率および液晶組成物への高い溶解度を有する。化合物(1)は、これらの少なくとも2つの物性に関して、適切なバランスを有する。したがって、化合物(1)は、PSAモード用の液晶組成物に添加することができる。
【0065】
3.重合性組成物
重合性組成物は、化合物(1)の少なくとも1つを第一成分として含む。この組成物の成分が第一成分だけであってもよい。この組成物は、第二成分、第三成分などの他の成分を含んでもよい。第二成分などの種類は、目的とする重合体の用途に依存する。この重合性組成物は、第二成分として、化合物(1)とは異なる、その他の重合性化合物をさらに含んでもよい。その他の重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、およびビニルケトンである。さらに好ましい例は、少なくとも1つのアクリロイルオキシを有する化合物および少なくとも1つのメタクリロイルオキシを有する化合物である。さらに好ましい例には、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシの両方を有する化合物も含まれる。
【0066】
その他の重合性化合物の追加例は、化合物(M−1)から化合物(M−12)である。化合物(M−1)から化合物(M−12)において、R25、R26およびR27は独立して水素またはメチルであり;u、xおよびyは独立して0または1であり;vおよびwは独立して1から10の整数であり;L21、L22、L23、L24、L25、およびL26は独立して水素またはフッ素である。
【0067】
【化39】
【0068】
重合性組成物の第二成分が液晶相を有する重合性化合物であるとき、液晶分子の配向を制御しながら重合させることによって光学異方体が生成する。この光学異方体は、位相差膜、偏光素子、円偏光素子、楕円偏光素子、反射防止膜、選択反射膜、色補償膜、視野角補償膜などに用いることができる。光学異方体の物性を調整する目的で重合開始剤などの添加物を重合性組成物に添加してもよい。
【0069】
重合性組成物は、第二成分として液晶組成物を含んでもよい。PS−TN、PS−IPS、PS−FFS、PSA−VA、PSA−OCBなどのモード用の液晶表示素子を目的とする場合、重合性組成物は、化合物(1)を成分Aとして含み、下に示す成分B、CおよびDから選択された化合物をさらに含むことが好ましい。成分Bは、化合物(2)から化合物(4)である。成分Cは化合物(5)から化合物(7)である。成分Dは、化合物(8)である。このような重合性組成物を調製するときには、正または負の誘電率異方性、誘電率異方性の大きさなどを考慮して成分B、CおよびDを選択することが好ましい。成分を適切に選択した重合性組成物は、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性(すなわち、大きな光学異方性または小さな光学異方性)、正または負に大きな誘電率異方性、および適切な弾性定数(すなわち、大きな弾性定数または小さな弾性定数)を有する。
【0070】
重合性組成物は、液晶組成物に化合物(1)を添加することによって調製される。この組成物には、必要に応じて添加物を添加してよい。このような組成物において、化合物(1)、すなわち成分Aの添加量は、液晶組成物の重量に基づいて0.01重量%〜20重量%の範囲である。さらに好ましい添加量は、0.0133重量%〜10重量%の範囲である。最も好ましい添加量は、0.05重量%〜5重量%の範囲である。化合物(1)とは異なる、その他の重合性化合物の少なくとも1つをさらに添加してもよい。この場合、化合物(1)とその他の重合性化合物の合計の添加量は、上記の範囲内であることが好ましい。その他の重合性化合物を適切に選択することによって、生成する重合体の物性を調整することができる。その他の重合性化合物の例は、先に説明したとおり、アクリレート、メタクリレートなどである。この例には、化合物(M−1)から化合物(M−12)も含まれる。
【0071】
成分Bは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Bの好ましい例として、化合物(2−1)から化合物(2−11)、化合物(3−1)から化合物(3−19)、または化合物(4−1)から化合物(4−7)を挙げることができる。成分Bの化合物において、R11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルまたはアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0072】
【化40】
【0073】
成分Bは、誘電率異方性の絶対値が小さいので、中性に近い化合物である。化合物(2)は、主として粘度の調整または光学異方性の調整に効果がある。化合物(3)および化合物(4)は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学異方性の調整に効果がある。
【0074】
成分Bの含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が小さくなるが、粘度は小さくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。したがって、PS−IPS、PSA−VAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Bの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0075】
成分Cは、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。成分Cの好ましい例として、化合物(5−1)から化合物(5−16)、化合物(6−1)から化合物(6−113)、または化合物(7−1)から化合物(7−57)を挙げることができる。成分Cの化合物において、R13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;X11は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFである。
【0076】
【化41】
【0077】
【化42】
【0078】
【化43】
【0079】
【化44】
【0080】
【化45】
【0081】
【化46】
【0082】
成分Cは、誘電率異方性が正であり、熱、光などに対する安定性が非常に優れているので、PS−IPS、PS−FFS、PSA−OCBなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Cの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%〜99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%〜97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%〜95重量%の範囲である。成分Cを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Cの含有量は液晶組成物の重量に基づいて30重量%以下が好ましい。成分Cを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0083】
成分Dは、右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物(8)である。成分Dの好ましい例として、化合物(8−1)から化合物(8−64)を挙げることができる。成分Dの化合物において、R14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;X12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである。
【0084】
【化47】
【0085】
【化48】
【0086】
成分Dは、誘電率異方性が正であり、その値が大きいので、PS−TNなどのモード用の組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Dを添加することにより、組成物の誘電率異方性を大きくすることができる。成分Dは、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学異方性を調整する、という効果がある。成分Dは、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0087】
PS−TNなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%〜99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%〜97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%〜95重量%の範囲である。成分Dを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Dの含有量は液晶組成物の重量に基づいて30重量%以下が好ましい。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0088】
重合性組成物の調製は、必要な成分を室温よりも高い温度で溶解させるなどの方法により行われる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0089】
光学活性化合物は、液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。光学活性化合物を添加することによって、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好ましい例として、下記の化合物(Op−1)から化合物(Op−18)を挙げることができる。化合物(Op−18)において、環Jは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、R28は炭素数1から10のアルキルである。
【0090】
【化49】
【0091】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−1)および化合物(AO−2);IRGANOX 415、IRGANOX 565、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 3114、およびIRGANOX 1098(商品名:BASF社)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。具体例として下記の化合物(AO−3)および化合物(AO−4);TINUVIN 329、TINUVIN P、TINUVIN 326、TINUVIN 234、TINUVIN 213、TINUVIN 400、TINUVIN 328、およびTINUVIN 99−2(商品名:BASF社);および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0092】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−5)および化合物(AO−6);TINUVIN 144、TINUVIN 765、およびTINUVIN 770DF(商品名:BASF社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIRGAFOS 168(商品名:BASF社)を挙げることができる。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0093】
【化50】
【0094】
化合物(AO−1)において、R29は炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のアルコキシ、−COOR32、または−CHCHCOOR32であり、ここでR32は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−2)および化合物(AO−5)において、R30は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−5)において、R31は水素、メチルまたはO(酸素ラジカル)であり、環Kおよび環Lは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、xは0、1または2である。
【0095】
4.液晶複合体
化合物(1)は、適切な重合反応性、高い転化率および液晶組成物への高い溶解度を有する。化合物(1)と液晶組成物とを含む重合性組成物を重合させることによって液晶複合体が生成する。化合物(1)は、重合によって液晶組成物の中に重合体を生成する。この重合体は、液晶分子の初期配向を安定化させる効果がある。また、電場を印加させながら重合を行うと、プレチルを生じさせることも出来る。重合は、熱、光などによって起こる。好ましい反応は光重合である。電場または磁場を印加した状態で重合させてもよい。
【0096】
化合物(1)の重合反応性および転化率は調整することができる。化合物(1)はラジカル重合に適している。化合物(1)は、重合開始剤を添加することによって、速やかに重合させることができる。反応温度を最適化することによって、残存する化合物(1)の量を減少させることができる。光ラジカル重合開始剤の例は、BASF社のダロキュアシリーズからTPO、1173および4265であり、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959である。
【0097】
光ラジカル重合開始剤の追加例は、4−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物である。
【0098】
重合性組成物に光ラジカル重合開始剤を添加した後、電場を印加した状態で紫外線を照射することによって重合を行うことができる。しかし、未反応の重合開始剤または重合開始剤の分解生成物は、素子に画像の焼き付きなどの表示不良を引き起こすかもしれない。これを避けるために重合開始剤を添加しないまま光重合を行ってもよい。照射する光の好ましい波長は150nm〜500nmの範囲である。さらに好ましい波長は250nm〜450nmの範囲であり、最も好ましい波長は300nm〜400nmの範囲である。
【0099】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-tert-ブチルカテコール、4-メトキシフェノ−ル、フェノチアジンなどである。
【0100】
5.液晶表示素子
液晶表示素子における重合体の効果は、次のように解釈される。重合性組成物は、液晶性化合物、重合性化合物などの混合物である。この組成物を液晶セルに注入すると、用いたセルと組成物のそれぞれの特性により、様々の初期配向を示す。この状態で組成物に紫外線を照射して、重合性化合物を重合させる。この時にセルに電場を印加してもよい。この結果、重合性組成物中に重合体のネットワークが生成する。このネットワークの効果によって、液晶分子は紫外線照射前の状態で安定化される。また、初期配向はランダムな配向であるが、紫外線照射によりホモジニアス配向やホメオトロピック配向等の様な秩序的な配向を形成させることも出来る。このように、重合性組成物を紫外線照射によって重合させることにより、様々な配向状態で安定化された液晶表示素子を得ることができる。
【0101】
重合性組成物の重合は、表示素子の中で行うのが好ましい。一例は次のとおりである。少なくともどちらか一方に透明電極を備えた二枚のガラス基板を有する表示素子を用意する。化合物(1)、液晶組成物、添加物などを成分とする重合性組成物を調製する。この組成物を表示素子に注入する。この表示素子に紫外線を照射して化合物(1)を重合させる。この重合によって液晶複合体が生成する。この方法によって液晶複合体を有する液晶表示素子を容易に作製することができる。この方法では、配向膜のラビング処理を省略してもよく、また配向膜がなくても良い。
【0102】
重合性化合物の添加量が液晶組成物の重量に基づいて0.1重量%から2重量%の範囲であるとき、PSAモードの液晶表示素子が作製される。PSAモードの素子は、AM(active matrix)、PM(passive matrix)のような駆動方式で駆動させることができる。このような素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。重合性化合物の添加量を増やすことによって、高分子分散(polymer dispersed)モードの素子も作製することができる。
【実施例】
【0103】
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、実施例1の組成物と実施例2の組成物との混合物を含む。本発明は、実施例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物、組成物および素子の物性は、下記に記載した方法により測定した。
【0104】
NMR分析
測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。H−NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定では、CFClを内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0105】
HPLC分析
測定には、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリルと水を適宜混合して用いた。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、この溶液1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。
【0106】
紫外可視分光分析
測定には、島津製作所製のPharmaSpec UV−1700用いた。検出波長は190nmから700nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.01mmol/Lの溶液となるように調製し、石英セル(光路長1cm)に入れて測定した。
【0107】
測定試料
相構造および転移温度(透明点、融点、重合開始温度など)を測定するときには、化合物そのものを試料として用いた。液晶性化合物の上限温度、粘度、光学異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、この化合物と母液晶との混合物を試料として用いた。液晶組成物の物性を測定するときは、組成物そのものを試料として用いた。
【0108】
母液晶としては、下記の母液晶(A)または母液晶(B)等を用いた。母液晶(A)および(B)の成分の割合を重量%で示す。
【0109】
【化51】
【化52】
【0110】
測定方法
物性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA;Japan Electronics and Information Technology Industries Association)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0111】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置いた。この試料を3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0112】
(2)転移温度(℃)
測定にはパーキンエルマー社製の走査熱量計、Diamond DSCシステムまたはエスエスアイ・ナノテクノロジー社製の高感度示差走査熱量計、X−DSC7000を用いた。試料は、3℃/分の速度で昇降温した。試料の相変化に伴う吸熱ピークまたは発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物の融点、重合開始温度もこの装置を使って測定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0113】
結晶はCと表した。結晶の種類の区別がつく場合は、それぞれをC、Cのように表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS、S、S、またはSと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0114】
(3)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。試料が液晶性化合物と母液晶との混合物であるときは、TNIの記号で示した。試料が液晶性化合物と成分B、C、Dのような化合物との混合物であるときは、NIの記号で示した。
【0115】
(4)ネマチック相の下限温度(T;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管した後、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0116】
(5)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
粘度は、東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いて測定した。
【0117】
(6)光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングした後、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0118】
(7)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm)
電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0119】
(8)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を入れた後、紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子に、紫外線を400秒間照射した。紫外線の照射には、HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製のEXECURE4000−D型水銀キセノンランプを用いた。この素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0120】
(9)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%)
25℃の代わりに80℃で測定した以外は、上記の方法で電圧保持率を測定した。結果をVHR−2の記号で示した。
【0121】
(10)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0度であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加の後、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0122】
(11)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0123】
(12)弾性定数(K;25℃で測定;pN)
測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数Kは、このようにして求めたK11、K22およびK33の平均値で表した。
【0124】
(13)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0125】
(14)応答時間(τ;25℃で測定;ms)
測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0126】
(15)室温相溶性
化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製し、室温で1日放置した後、結晶またはスメクチック相が析出しているかどうかを観察した。
【0127】
1.化合物(1)の実施例
[合成例1] 化合物(No.1)の合成
【化53】
【0128】
化合物(50)(3.94g,19.58mmol)、トリエチルアミン(4.36g,43.1mmol)、およびジクロロメタン(100ml)を容器にとり、攪拌しながらメタクリル酸クロライド(4.09g,39.16mmol)を滴下した。その後1時間室温で攪拌した後、混合物をろ過し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(No.1)(2.2g)を得た。
なお、化合物(50)は公知であり、当業者であれば容易に入手することができる。
【0129】
H−NMR(CDCl;δppm):7.03(d,8H)、6.33(s,2H)、5.74(s,2H)、5.69(s,1H)、2.06(s,6H).
【0130】
化合物(No.1)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 91.0 C 99.2 I
室温相溶性:5重量%
電圧保持率:95%
電圧保持率を測る際に用いた組成物は、母液晶(B)に化合物(No.1)を0.4%添加したものを用いた。
【0131】
合成例1に記載された方法と同様の方法により、以下に示す化合物No.2からNo.54を合成することができる。
【0132】
【化54】
【0133】
【化55】
【0134】
[比較実験1]
特開2004−131704号公報(特許文献2)に開示されている比較化合物(R−1)について室温相溶性を測定した結果、母液晶(A)に対して、1重量%で結晶が析出した。また、電圧保持率を実施例1と同様の方法で測定した結果、80%であった。化合物(No.1)の室温相溶性は5重量%で結晶が析出し、電圧保持率は95%であることから、より液晶組成物への高い溶解度および高い電圧保持率を有するといえる。
【化56】
【0135】
2.重合性組成物の実施例
この実施例における化合物は、下記の表の定義に基づいて記号により表した。表において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。この実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の含有量(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を(外挿することなく)そのまま記載した。
【0136】
【表1】
【0137】
[使用例1]
2−HB−C (8−1) 6%
3−HB−C (8−1) 12%
3−HB−O2 (2−5) 15%
2−BTB−1 (2−10) 5%
3−HHB−F (6−1) 4%
3−HHB−1 (3−1) 7%
3−HHB−O1 (3−1) 5%
3−HHB−3 (3−1) 12%
3−HHEB−F (6−10) 3%
5−HHEB−F (6−10) 6%
2−HHB(F)−F (6−2) 6%
3−HHB(F)−F (6−2) 6%
5−HHB(F)−F (6−2) 6%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 7%
上記の組成物に化合物(No.1)を0.05重量%の割合で添加した。
NI=97.3℃;η=18.3mPa・s;Δn=0.103;Δε=4.7
【0138】
[使用例2]
3−HB−CL (5−2) 13%
3−HH−4 (2−1) 15%
3−HB−O2 (2−5) 8%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 6%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 24%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 22%
5−HBB(F)B−2 (4−5) 6%
5−HBB(F)B−3 (4−5) 6%
上記の組成物に化合物(No.2)を0.3重量%の割合で添加した。
NI=75.1℃;η=17.6mPa・s;Δn=0.115;Δε=4.9
【0139】
[使用例3]
7−HB(F,F)−F (5−4) 6%
3−HB−O2 (2−5) 7%
2−HHB(F)−F (6−2) 10%
3−HHB(F)−F (6−2) 8%
5−HHB(F)−F (6−2) 10%
2−HBB(F)−F (6−23) 9%
3−HBB(F)−F (6−23) 10%
5−HBB(F)−F (6−23) 14%
2−HBB−F (6−22) 4%
3−HBB−F (6−22) 5%
5−HBB−F (6−22) 5%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 4%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 8%
上記の組成物に化合物(No.8)を1重量%の割合で添加した。
NI=82.1℃;η=24.0mPa・s;Δn=0.113;Δε=5.2
【0140】
[使用例4]
5−HB−CL (5−2) 13%
3−HH−4 (2−1) 15%
3−HH−5 (2−1) 4%
3−HHB−F (6−1) 5%
3−HHB−CL (6−1) 3%
4−HHB−CL (6−1) 4%
3−HHB(F)−F (6−2) 9%
4−HHB(F)−F (6−2) 9%
5−HHB(F)−F (6−2) 8%
7−HHB(F)−F (6−2) 8%
5−HBB(F)−F (6−23) 5%
1O1−HBBH−5 (4−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
4−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
5−HHBB(F,F)−F (7−6) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
上記の組成物に化合物(No.1)を3重量%の割合で添加した。
NI=118.1℃;η=19.6mPa・s;Δn=0.091;Δε=3.6
【0141】
[使用例5]
3−HHB(F,F)−F (6−3) 11%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
4−H2HB(F,F)−F (6−15) 7%
5−H2HB(F,F)−F (6−15) 7%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 20%
3−H2BB(F,F)−F (6−27) 13%
5−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
5−HHEBB−F (7−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
1O1−HBBH−4 (4−1) 3%
1O1−HBBH−5 (4−1) 3%
上記の組成物に化合物(No.1)を5重量%の割合で添加した。
NI=93.9℃;η=34.3mPa・s;Δn=0.115;Δε=9.2
【0142】
[使用例6]
5−HB−F (5−2) 15%
6−HB−F (5−2) 7%
7−HB−F (5−2) 7%
2−HHB−OCF3 (6−1) 6%
3−HHB−OCF3 (6−1) 7%
4−HHB−OCF3 (6−1) 6%
5−HHB−OCF3 (6−1) 5%
3−HH2B−OCF3 (6−4) 6%
5−HH2B−OCF3 (6−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H (6−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (6−3) 5%
3−HH2B(F)−F (6−5) 3%
3−HBB(F)−F (6−23) 8%
5−HBB(F)−F (6−23) 10%
5−HBBH−3 (4−1) 4%
3−HB(F)BH−3 (4−2) 3%
上記の組成物に化合物(No.8)を0.1重量%の割合で添加した。
NI=87.5℃;η=14.9mPa・s;Δn=0.092;Δε=4.4
【0143】
[使用例7]
5−HB−CL (5−2) 15%
3−HH−4 (2−1) 5%
3−HHB−1 (3−1) 5%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 5%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (6−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (6−12) 3%
5−HHEB(F,F)−F (6−12) 5%
2−HBEB(F,F)−F (6−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (6−39) 5%
5−HBEB(F,F)−F (6−39) 5%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 4%
上記の組成物に化合物(No.2)を0.5重量%の割合で添加した。
NI=75.8℃;η=22.3mPa・s;Δn=0.103;Δε=9.0
【0144】
[使用例8]
3−HB−CL (5−2) 4%
5−HB−CL (5−2) 4%
3−HHB−OCF3 (6−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (6−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (6−19) 15%
V−HHB(F)−F (6−2) 6%
3−HHB(F)−F (6−2) 5%
5−HHB(F)−F (6−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (6−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (6−21) 10%
5−H2HB(F,F)−F (6−15) 4%
5−H4HB(F,F)−F (6−21) 7%
2−H2BB(F)−F (6−26) 5%
3−H2BB(F)−F (6−26) 11%
3−HBEB(F,F)−F (6−39) 6%
上記の組成物に化合物(No.1)を2重量%の割合で添加した。
NI=71.9℃;η=26.3mPa・s;Δn=0.098;Δε=8.5
【0145】
[使用例9]
5−HB−CL (5−2) 14%
7−HB(F,F)−F (5−4) 4%
3−HH−4 (2−1) 10%
3−HH−5 (2−1) 4%
3−HB−O2 (2−5) 14%
3−HHB−1 (3−1) 8%
3−HHB−O1 (3−1) 5%
2−HHB(F)−F (6−2) 8%
3−HHB(F)−F (6−2) 8%
5−HHB(F)−F (6−2) 8%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 6%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 6%
4−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
上記の組成物に化合物(No.1)を1.5重量%の割合で添加した。
NI=72.9℃;η=15.1mPa・s;Δn=0.074;Δε=3.0
【0146】
[使用例10]
5−HB−CL (5−2) 6%
7−HB(F)−F (5−3) 6%
3−HH−4 (2−1) 7%
3−HH−5 (2−1) 10%
3−HB−O2 (2−5) 11%
3−HHEB−F (6−10) 8%
5−HHEB−F (6−10) 10%
3−HHEB(F,F)−F (6−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (6−12) 5%
3−GHB(F,F)−F (6−109) 6%
4−GHB(F,F)−F (6−109) 5%
5−GHB(F,F)−F (6−109) 5%
2−HHB(F,F)−F (6−3) 7%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 4%
上記の組成物に化合物(No.8)を0.5重量%の割合で添加した。
NI=72.6℃;η=19.1mPa・s;Δn=0.069;Δε=5.9
【0147】
[使用例11]
1V2−BEB(F,F)−C (8−15) 10%
3−HB−C (8−1) 13%
2−BTB−1 (2−10) 8%
5−HH−VFF (2−1) 30%
3−HHB−1 (3−1) 5%
VFF−HHB−1 (3−1) 8%
VFF2−HHB−1 (3−1) 11%
3−H2BTB−2 (3−17) 5%
3−H2BTB−3 (3−17) 5%
3−H2BTB−4 (3−17) 5%
上記の組成物に化合物(No.2)を1重量%の割合で添加した。
NI=84.1℃;η=13.9mPa・s;Δn=0.131;Δε=8.8
【0148】
[使用例12]
5−HB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−41) 6%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 5%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 8%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 5%
3−HH−V (2−1) 38%
3−HH−V1 (2−1) 5%
3−HHEH−5 (3−13) 3%
3−HHB−1 (3−1) 5%
V−HHB−1 (3−1) 4%
V2−BB(F)B−1 (3−6) 5%
1V2−BB―F (5−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (6−97) 10%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
上記の組成物に化合物(No.1)を3重量%の割合で添加した。
NI=84.7℃;η=17.0mPa・s;Δn=0.113;Δε=8.0
【0149】
[使用例13]
3−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−57) 6%
5−HB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−41) 3%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 4%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 5%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (7−47) 4%
3−HH−V (2−1) 35%
3−HH−V1 (2−1) 7%
3−HHEH−5 (3−13) 3%
3−HHB−1 (3−1) 3%
V−HHB−1 (3−1) 5%
V2−BB(F)B−1 (3−6) 5%
1V2−BB―F (5−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (6−97) 7%
3−GB(F,F)XB(F,F)−F (6−113) 6%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 4%
上記の組成物に化合物(No.1)を0.05重量%の割合で添加した。
NI=82.5℃;η=18.3mPa・s;Δn=0.109;Δε=9.4
【産業上の利用可能性】
【0150】
重合性化合物(1)と液晶組成物とを含有する重合性組成物を重合させることによって、PSAなどのモードを有する液晶表示素子を作製することができる。最も好ましい態様では、この素子は、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、高い電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する。したがって、化合物(1)は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いることができる。化合物(1)は、光学異方体の原料としても用いることができる。