特許第6787813号(P6787813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6787813半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787813
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20201109BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20201109BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20201109BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20201109BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20201109BHJP
   C23C 16/515 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H01L21/318 M
   H01L21/316 M
   H01L21/31 C
   C23C16/42
   C23C16/505
   C23C16/515
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-26850(P2017-26850)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2018-133477(P2018-133477A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2018年9月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】島本 聡
(72)【発明者】
【氏名】芦原 洋司
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一行
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−249626(JP,A)
【文献】 特開2001−358129(JP,A)
【文献】 特開2016−39247(JP,A)
【文献】 特開2015−149354(JP,A)
【文献】 特開2016−6876(JP,A)
【文献】 特開平10−256243(JP,A)
【文献】 特開2009−267391(JP,A)
【文献】 特開2010−87186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 − 16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/312 − 21/32
H01L 21/365
H01L 21/469 − 21/475
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素成分を含む第一の絶縁膜が形成された基板が処理室内の基板載置部に載置された状態で、処理ガスを前記処理室に供給する工程と、
プラズマ生成部から前記処理室に第一電力を供給してプラズマ生成し、前記絶縁膜上に第一シリコン窒化層を形成する工程と、
前記プラズマ生成と並行してイオン制御部から前記処理室に第二電力を供給して、前記第一シリコン窒化層上に前記第一シリコン窒化層よりも応力の低い第二シリコン窒化層を形成する工程と、
前記記第二シリコン窒化層を形成する工程の後、前記プラズマ生成部から前記第一電力を供給した状態で、前記イオン制御部からの第二電力の供給を停止して、前記第二シリコン窒化層上に、第三シリコン窒化層を形成し、前記第一シリコン窒化層と前記第二シリコン窒化層と前記第三シリコン窒化層とを有する犠牲膜を形成する工程と
前記犠牲膜上に酸素成分を含む第二の絶縁膜を形成する工程と、
前記犠牲膜を除去して空隙を形成する工程と、
前記空隙に導電膜を形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第一シリコン窒化層を形成する工程では、前記プラズマ生成部が前記処理室に高周波電力を供給し、前記第二シリコン窒化層を形成する工程では、前記プラズマ生成部が前記処理室に高周波電力を供給すると共に、前記イオン制御部が前記処理室に低周波電力を供給する請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記イオン制御部は低周波電源を有し、前記低周波電源は、パルス状に低周波を供給するよう構成される請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記処理ガスはアルゴンを含む請求項1から請求項3に記載のうち、いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第二シリコン窒化層を形成する際の前記第一電力の大きさは、前記第一シリコン窒化層を形成する際の前記第一電力よりも大きくなるよう構成される請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置は高集積化の傾向にある。それを実現する方法の一つとして、電極等を三次元的に配列する三次元構造が提案されている。このような半導体装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2015−50466
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラッシュメモリの三次元構造を形成する過程においては、絶縁膜と犠牲膜とを交互に積層する必要がある。ところが、絶縁膜と犠牲膜との熱膨張率の違い等の理由から、シリコンウエハにストレスがかかり、形成する過程において積層膜が破壊される現象がある。このような現象が半導体装置の特性の低下につながる恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、三次元構造のフラッシュメモリにおいても、良好な特性の半導体装置を形成可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、絶縁膜が形成された基板が処理室内の基板載置部に載置された状態で、処理ガスを前記処理室に供給し、プラズマ生成部から前記処理室に第一電力を供給してプラズマ生成し、前記絶縁膜上に第一シリコン窒化層を形成し、前記プラズマ生成と並行してイオン制御部から前記処理室に第二電力を供給して、前記第一シリコン窒化層上に前記第一シリコン窒化層よりも応力の低い第二シリコン窒化層を形成する技術を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る技術によれば、三次元構造のフラッシュメモリにおいても、良好な特性の半導体装置を形成可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る半導体装置の製造フローを説明する説明図である。
図2】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図3】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図4】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図5】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図6】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図7】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図8】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図9】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図10】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図11】実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図12】実施形態に係る基板処理装置の動作を説明するタイミングチャートである。
図13】実施形態に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図14】比較例に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
図15】比較例に係るウエハの処理状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第一の実施形態)
以下に本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1を用いて、半導体装置の製造工程の一工程を説明する。この工程では、電極を三次元的に構成した三次元構造の半導体装置を形成する。この半導体装置は、図8に記載のように、基板としてのウエハ100上に絶縁膜102と電極112とを交互に積層する積層構造を有する。以下に具体的なフローを説明する。
【0011】
(S102)
第一絶縁膜形成工程S102について、図2を用いて説明する。図2は、ウエハ100に形成する絶縁膜102を説明した図である。ウエハ100は、共通ソースライン(CSL、Common Source Line)101が形成されている。絶縁膜102は第一絶縁膜とも呼ぶ。
【0012】
ここではウエハ100上に絶縁膜102を形成する。絶縁膜102はシリコン酸化(SiO)膜で構成される。絶縁膜102は、ウエハ100を所定温度に加熱すると共に、シリコン成分を主成分とするシリコン含有ガスと酸素成分を主成分とする酸素含有ガスとをウエハ100上に供給し形成する。この処理は、一般的な装置で構成される酸化膜形成装置にて形成される。
【0013】
(S104)
犠牲膜形成工程S104について、図3を用いて説明する。ここでは絶縁膜102上に犠牲膜104を形成する。犠牲膜104は、後述する犠牲膜除去工程S114にて除去されるものであり、絶縁膜102に対してエッチングの選択性を有するものである。エッチングの選択性を有するとは、エッチング液に晒された際、犠牲膜はエッチングされやすく、絶縁膜はエッチングされにくい性質を示す。
【0014】
犠牲膜104は、例えばシリコン窒化(SiN)膜で構成される。犠牲膜104は、ウエハ100を所定温度に加熱すると共に、シリコン成分を主成分とするシリコン含有ガスと窒素成分を主成分とする窒素含有ガスとをウエハ100上に供給し形成する。シリコン含有ガスは、後述するように例えば塩素等の不純物を含む。詳細は後述する。ところで、形成メカニズムの違いにより、犠牲膜形成工程S104におけるウエハ100の加熱温度は絶縁膜形成工程S102と異なる。本工程にて使用するシリコン含有ガスと窒素含有ガスとをまとめて犠牲膜形成ガス、もしくは単に処理ガスと呼ぶ。
【0015】
犠牲膜104を形成する際は、犠牲膜104の膜応力を絶縁膜102の膜応力に近づけるよう処理する。
【0016】
以下に、膜応力を近づける理由について、比較例である図15を用いて説明する。図15では、犠牲膜を犠牲膜120とし、膜応力を絶縁膜102に近づけない場合の例を示す。即ち、本工程を行わずに、絶縁膜102と犠牲膜120を交互に積層したものである。絶縁膜102は、下方から順に絶縁膜102(1)、絶縁膜102(2)、・・・、絶縁膜102(8)が構成されている。また、犠牲膜120は、下方から順に犠牲膜120(1)、犠牲膜120(2)、・・・、犠牲膜120(8)が構成されている。前述したように、絶縁膜102を形成する際は、ウエハ100を所定温度に加熱すると共に、シリコン含有ガスと酸素含有ガスとをウエハ100上に供給し形成する。また、犠牲膜120を形成する際は、ウエハ100を、絶縁膜102とは異なる所定温度に加熱すると共に、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとをウエハ100上に供給し形成する。
【0017】
ところで、一般的に、SiO膜は圧縮応力が高く、SiN膜は引張応力が高いことが知られている。即ち、SiO膜とSiN膜は、膜応力に関して逆の特性を有する。これらの応力の性質は、膜が加熱された場合に顕著となる。
【0018】
図15においては、SiO膜で構成される絶縁膜102の形成とSiN膜で構成される犠牲膜120の形成を繰り返して形成するが、一部の膜では絶縁膜102と犠牲膜120が同時に存在した状態でウエハ100を加熱処理する。したがって絶縁膜102と犠牲膜120との間での応力差が顕著となり、例えば絶縁膜102と犠牲膜120との間で膜はがれ等が発生し、それが半導体装置の破壊や歩留まりの低下、特性の劣化につながる恐れがある。
【0019】
犠牲膜120(5)を形成する際、ウエハ100を、SiN膜を形成する温度に加熱する。その際、犠牲膜120(5)よりも下方に設けられた絶縁膜102(1)から絶縁膜102(5)は圧縮応力が高くなり、犠牲膜120(1)から犠牲膜120(4)は引っ張り応力が高くなる。従って、絶縁膜102と犠牲膜120との間で応力差が発生する。その応力差は半導体装置の破壊等につながる恐れがある。
【0020】
このような応力差を低減するために、本工程にて犠牲膜104の膜応力を絶縁膜102の膜応力に近づけるよう処理する。この処理方法の詳細は後述する。
【0021】
(S106)
ここでは、上述の絶縁膜形成工程S102から犠牲膜形成工程S104の組み合わせが所定回数実施されたか否かを判断する。即ち、図4における絶縁膜102と犠牲膜104の組み合わせが所定数積層されたか否かを判断する。本実施形態においては、例えば8層とし、絶縁膜102を8層(絶縁膜102(1)から絶縁膜102(8))、犠牲膜104を8層(犠牲膜104(1)から犠牲膜104(8))を交互に形成する。なお、犠牲膜104は、下方から順に、犠牲膜104(1)、犠牲膜104(2)、・・・、犠牲膜104(8)が構成される。
【0022】
所定回数実施していないと判断されたら、「NO」を選択し、第一絶縁膜形成工程S102に移行する。所定回数実施したと判断されたら、即ち所定層数形成されたと判断されたら、「YES」を選択し、第二絶縁膜形成工程S108に移行する。なお、ここでは絶縁膜102と犠牲膜104を8層ずつ形成した例を説明したが、それに限るものではなく、9層以上であってもよい。
【0023】
(S108)
続いて第二絶縁膜形成工程S108について説明する。ここでは図4に記載の絶縁膜105を形成する。絶縁膜105は絶縁膜102と同様の方法で形成するものであり、最も上の犠牲膜104上に形成する。
【0024】
(S110)
続いて図5を用いて、ホール形成工程S110を説明する。図5(a)は、図4と同様側面から見た図であり、図5(b)は図5(a)の構成を上方から見た図である。なお、図5(b)におけるα−α’における断面図が図5(a)に相当する。
【0025】
ここでは、絶縁膜102、105と犠牲膜104の積層構造に対して、ホール106を形成する。図5(a)に記載のように、ホール106はCSL101を露出させるように形成される。ホール106は図5(b)に記載のように絶縁膜105の面内に複数設けられる。
【0026】
(S112)
続いて、図6を用いてホール充填工程S112を説明する。ここでは、S110で形成したホール106の内側を積層膜108等で充填する工程である。ホール106内には、外周側から順に保護膜107、ゲート電極間絶縁膜-電荷トラップ膜-トンネル絶縁膜の積層膜108、チャネルポリシリコン膜109、充填絶縁膜110が形成される。各膜は筒状に構成される。
【0027】
例えば、保護膜107はSiOやメタル酸化膜で構成され、ゲート電極間絶縁膜-電荷トラップ膜-トンネル絶縁膜の積層膜108はSiO-SiN-SiO膜で構成される。犠牲膜104を除去する際に積層膜108にダメージが入るのを避けるべく、ホール106の内壁表面に、保護膜107を設け保護している。
【0028】
(S114)
続いて、図7を用いて犠牲膜除去工程S114を説明する。犠牲膜除去工程S114では、犠牲膜104をウエットエッチングで除去する。除去した結果、犠牲膜104が形成されていた位置に空隙111が形成される。ここでは、下方から順に、空隙111(1)、空隙111(2)、・・・、空隙111(8)が形成される。
【0029】
(S116)
続いて図8を用いて導電膜形成工程S116を説明する。導電膜形成工程S116では、電極となる導電膜112を空隙111に形成する。導電膜は例えばタングステン等で構成される。ここでは、導電膜112は、下方から順に、導電膜112(1)、導電膜112(2)、・・・、導電膜112(8)が構成される。
【0030】
続いて、犠牲膜形成工程S104で使用する基板処理装置200および形成方法を説明する。基板処理装置200に関しては図9図10図11を用いて説明する。形成方法については、図12図13を用いて説明する。
【0031】
(基板処理装置)
(処理容器)
図例のように、基板処理装置200は、処理容器(容器)202を備えている。容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。容器202内には、シリコンウエハ等のウエハ100を処理する処理室205と、ウエハ100を処理室205に搬送する際にウエハ100が通過する搬送空間206とが形成されている。容器202は、上部容器202aと下部容器202bで構成される。上部容器202aと下部容器202bの間には仕切り板208が設けられる。処理室205は、後述する分散板234、基板載置台212等で構成されている。
【0032】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ203に隣接した基板搬入出口204が設けられており、ウエハ100は基板搬入出口204を介して図示しない搬送室との間を移動する。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。
【0033】
処理室205には、ウエハ100を支持する基板支持部210が配される。基板支持部210は、ウエハ100を載置する基板載置面211と、基板載置面211を表面に持つ基板載置台212、基板載置台212内に設けられた加熱源としてのヒータ213とバイアス電極215を主に有する。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。ヒータ213には図示しないヒータ制御部が接続され、コントローラ280の指示によって所望の温度に加熱される。
【0034】
バイアス電極215には、イオン制御部251の一構成である第一電力供給線251aが電気的に接続される。第一電力供給線251aには、上流から順に低周波電源251b、整合器251cが設けられる。低周波電源251bはアース251dに接続される。
【0035】
更には、バイアス電極215には、プラズマ生成部252の一構成である第一電力出力線252eが電気的に接続される。第一電力出力線252eには、ハイパスフィルタ(high pass filter、以下HPFと呼ぶ。)252fが設けられる。ハイパスフィルタ252fはアース252dに接続される。
【0036】
ここで、低周波とは例えば1から400KHz程度を示し、高周波とは13.56MHz程度を示す。
【0037】
基板載置台212は、シャフト217によって支持される。シャフト217は、処理容器202の底部を貫通しており、さらに処理容器202の外部で昇降部218に接続されている。シャフト217は処理容器202と絶縁されている。
【0038】
昇降部218を作動させてシャフト217および基板載置台212を昇降させることにより、基板載置台212は、載置面211上に載置されるウエハ100を昇降させることが可能となっている。なお、シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、これにより処理室205内は気密に保持されている。
【0039】
基板載置台212は、ウエハ100の搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口204に対向する位置まで下降し、ウエハ100の処理時には、図9で示されるように、ウエハ100が処理室205内の処理位置となるまで上昇する。
【0040】
処理室205の上部(上流側)には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド230が設けられている。シャワーヘッド230の蓋231には貫通孔231aが設けられる。貫通孔231aの内周には、絶縁体231cが設けられる。絶縁体231cにはガス導入孔231bが設けられ、ガス導入孔231bは共通ガスd管242と連通される。絶縁体231cは共通ガス供給管242と蓋231を電気的に絶縁する。
【0041】
蓋231には、プラズマ生成部252の一構成である第二電力供給線252aが接続される。第二電力供給線252aには、上流から順に高周波電源252b、整合器252cが設けられる。高周波電源252bはアース252dに接続される。
【0042】
更に、蓋231には、第一電力出力線251eが接続される。第一電力出力線251eには、イオン制御部251の一部であるローパスフィルタ(low pass filter、以下LPFと呼ぶ。)251fが設けられる。LPF251fは、アース251dに接続される。
【0043】
少なくとも第一電力供給線251a、整合器251c、第一電力出力線251eをまとめてイオン制御部251と呼ぶ。イオン制御部251には、第一の電源である低周波電源251b、LPF251fのいずれか一つ、もしくはこれらの組み合わせを含めてもよい。
【0044】
また、少なくとも第二電力供給線252a、整合器252c、第一電力出力線252eをまとめてプラズマ生成部252と呼ぶ。プラズマ生成部252には、第二の電源である高周波電源252b、HPF252fのいずれか一つ、もしくはこれらの組み合わせを含めてもよい。
【0045】
シャワーヘッド230は、ガスを分散させるための分散機構としての分散板234を備えている。この分散板234の上流側がバッファ空間232であり、下流側が処理室205である。分散板234には、複数の貫通孔234aが設けられている。分散板234は、基板載置面211と対向するように配置されている。分散板234は例えば円盤状に構成される。貫通孔234aは分散板234の全面にわたって設けられている。
【0046】
上部容器202aはフランジを有し、フランジ上に絶縁性の支持ブロック233が載置され、固定される。支持ブロック233はフランジを有し、フランジ上には分散板234が載置され、固定される。更に、蓋231は支持ブロック233の上面に固定される。支持ブロック233によって、蓋231と上部容器202aが絶縁される。
【0047】
(ガス供給部)
蓋231に設けられたガス導入孔231bと連通するよう、蓋231には共通ガス供給管242が接続される。図10に記載のように、共通ガス供給管242には、第一ガス供給管243a、第二ガス供給管244a、第三ガス供給管245aが接続されている。
【0048】
(第一ガス供給系)
第一ガス供給管243aには、上流方向から順に、第一ガス源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。
【0049】
第一ガス源243bは第一元素を含有する第一ガス(「第一元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第一元素含有ガスは、原料ガス、すなわち、処理ガスの一つである。ここで、第一元素は、シリコン(Si)である。すなわち、第一元素含有ガスは、シリコン含有ガスである。具体的には、シリコン含有ガスとして、ジクロロシラン(SiHCl。DCSとも呼ぶ)やヘキサクロロジシラン(SiCl。HCDSとも呼ぶ。)ガスが用いられる。
【0050】
主に、第一ガス供給管243a、マスフローコントローラ243c、バルブ243dにより、第一ガス供給系243(シリコン含有ガス供給系ともいう)が構成される。
【0051】
(第二ガス供給系)
第二ガス供給管244aには、上流方向から順に、第二ガス源244b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)244c、及び開閉弁であるバルブ244dが設けられている。
【0052】
第二ガス源244bは第二元素を含有する第二ガス(以下、「第二元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第二元素含有ガスは、処理ガスの一つである。なお、第二元素含有ガスは、反応ガスとして考えてもよい。
【0053】
ここで、第二元素含有ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素としては、例えば、窒素(N)である。本実施形態では、第二元素含有ガスは、例えば窒素含有ガスであるとする。具体的には、窒素含有ガスとして、アンモニア(NH)ガスが用いられる。
【0054】
主に、第二ガス供給管244a、マスフローコントローラ244c、バルブ244dにより、第二ガス供給系244(反応ガス供給系ともいう)が構成される。
【0055】
第二ガス供給管244aであって、バルブ244dの下流には、ガス供給管247aが接続される。ガス供給管247aには、上流からアシストガス源247b、マスフローコントローラ247c、バルブ247dが設けられる。アシストガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)等、分子サイズの大きいガスが用いられる。ガス供給管247a、マスフローコントローラ247c、バルブ247dをまとめてアシストガス供給部と呼ぶ。なお、アシストガス供給部に、アシストガス源247bを含めても良い。また、第二ガス供給部244に、アシストガス供給部を含めても良い。
【0056】
(第三ガス供給系)
第三ガス供給管245aには、上流方向から順に、第三ガス源245b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)245c、及び開閉弁であるバルブ245dが設けられている。
【0057】
第三ガス源245bは不活性ガス源である。不活性ガスは、例えば、窒素(N)ガスである。
【0058】
主に、第三ガス供給管245a、マスフローコントローラ245c、バルブ245dにより、第三ガス供給系245が構成される。
【0059】
不活性ガス源245bから供給される不活性ガスは、基板処理工程では、容器202やシャワーヘッド230内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。
【0060】
なお、第一ガス供給系、第二ガス供給系、第三ガス供給系のいずれか、もしくはその組み合わせを処理ガス供給部と呼ぶ。
【0061】
(排気系)
容器202の雰囲気を排気する排気系を説明する。容器202には、処理室205に連通するよう、排気管262が接続される。排気管262には、処理室205内を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC(AutoPressure Controller)266が設けられる。APC266は開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、コントローラ280からの指示に応じて排気管262のコンダクタンスを調整する。また、排気管262においてAPC266の上流側にはバルブ267が設けられる。排気管262とバルブ267、APC266をまとめて排気系と呼ぶ。
【0062】
更に、DP(Dry Pump。ドライポンプ)269が設けられる。DP269は、排気管262を介して処理室205の雰囲気を排気する。
【0063】
(コントローラ)
基板処理装置200は、基板処理装置200の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。コントローラ280は、図11に記載のように、演算部(CPU)280a、一時記憶部280b、記憶部280c、I/Oポート280dを少なくとも有する。コントローラ280は、I/Oポート280dを介して基板処理装置200の各構成に接続され、上位装置270や使用者の指示に応じて記憶部280cからプログラムやレシピを呼び出し、その内容に応じてイオン制御部251やプラズマ生成部252等の各構成の動作を制御する。送受信制御は、例えば演算部280a内の送受信指示部280eが行う。なお、コントローラ280は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)282を用意し、外部記憶装置282を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ280を構成することができる。また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置282を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用いても良いし、上位装置280から受信部283を介して情報を受信し、外部記憶装置282を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。また、キーボードやタッチパネル等の入出力装置281を用いて、コントローラ280に指示をしても良い。
【0064】
なお、記憶部280cや外部記憶装置282は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部280c単体のみを含む場合、外部記憶装置282単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0065】
続いて、図1における犠牲膜形成工程S104の詳細について説明する。
【0066】
(犠牲膜形成工程S104)
以下、第一の処理ガスとしてHCDSガスを用い、第二の処理ガスとしてアンモニア(NH)ガスを用いて、犠牲膜104を形成する例について説明する。犠牲膜は、シリコン窒化膜(SiN膜)で構成される。
【0067】
容器202内に絶縁膜102が形成されたウエハ100を搬入したら、ゲートバルブ203を閉じて容器202内を密閉する。その後、基板載置台212を上昇させることにより、基板載置台212に設けられた基板載置面211上にウエハ100を載置させる。さらに基板載置台212を上昇させることにより、前述した処理室205内の処理位置(基板処理ポジション)までウエハ100を上昇させる。
【0068】
ウエハ100を基板載置台212の上に載置する際は、基板載置台212の内部に埋め込まれたヒータ213に電力を供給し、ウエハ100の表面が所定の温度となるよう制御される。ウエハ100の温度は、例えば室温以上800℃以下であり、好ましくは、室温以上であって700℃以下である。この際、ヒータ213の温度は、図示しない温度センサにより検出された温度情報に基づいてコントローラ280が制御値を抽出し、図示しない温度制御部によってヒータ213への通電具合を制御することによって調整される。
【0069】
続いて、ガス供給部、イオン制御部251、プラズマ生成部252それぞれの動作の関連について、図12記載のタイミングチャートを用いて説明する。更に、図13を用いて、図12における動作タイミングとの基板の処理状態との関係を説明する。
【0070】
なお、図12では、各部品が稼動している状態を網掛け部分で示す。例えば、第一ガス供給系243において網掛けされている箇所では、第一ガス供給系243のマスフローコントローラ243c等を制御して、処理室205に第一ガスを供給すること示す。第二ガス供給系244は、第二ガス供給系244のマスフローコントローラ244c等を制御して、処理室205に第二ガスを供給することを示す。第三ガス供給系245においては第三ガス供給系245のマスフローコントローラ245c等を制御して、処理室205に不活性ガスを供給することを示す。高周波電源252bにおいて網掛けされている箇所では、高周波電源252bを稼動させ、処理室205に高周波電力を供給している状態を示す。低周波電源251bにおいて網掛けされている箇所では、低周波電源251bを稼動させ、処理室205に低周波電力を供給している状態を示す。なお、高周波電源252bを稼動させる状態をプラズマ生成部が稼動させる状態とし、低周波電源251bが稼動する状態をイオン制御部が稼動する状態とも呼ぶ。本実施形態においては、高周波電力を第一電力とも呼び、低周波電力を第二電力とも呼ぶ。
【0071】
図13はウエハ100の処理状態を説明する図である。(a)は図3と同内容の図であり、(b)は(a)の一部分を拡大した図である。具体的には、絶縁膜102と犠牲膜104の一部を拡大した図である。なお、(b)におけるシリコン窒化層103(n1)、シリコン窒化層103(n2)、シリコン窒化層103(n3)は犠牲膜104を構成する層を示したものである。即ち、犠牲膜104は、複数のシリコン窒化層103で構成される。なお、ここでは3層を用いて説明したが、それに限るものではない。シリコン窒化層103(n)は第一シリコン窒化層、シリコン窒化層103(n2)は第二シリコン窒化層、シリコン窒化層103(n3)は第三シリコン窒化層とも呼ぶ。
【0072】
ところで例えばHCDSガスとプラズマ状態のNHガスを用いて犠牲膜104を形成する場合、処理室205では、分解されたHCDSガスとプラズマ状態のNHガスが存在する。即ち、処理室205にはSi、塩素(Cl)、窒素(N)、水素(H)の各成分が混合した状態で存在する。この中で、主にSiと窒素が結合することで、SiN膜で構成される犠牲膜104が形成される。
【0073】
犠牲膜104を形成する際、処理室205内には主成分であるSiとNのほかに、不純物としての塩素(Cl)、水素(H)の各成分が同時に存在する。従って、SiN膜が形成される過程では、SiがClやHと結合したり、Siと結合したNがClやHと結合したりしてしまう。それらはSiN膜中に入り込む。発明者による鋭意研究の結果、不純物との結合が引張応力の一因であることを見出した。
【0074】
前述のように、犠牲膜104の引張応力は絶縁膜102との応力差につながるものである。そこで本実施形態においては、犠牲膜104を形成する際、引張応力を絶縁膜102の膜応力に近づけるようにする。具体的には、図13のように、少なくとも薄いシリコン窒化層103(n1)と厚いシリコン窒化層103(n2)を形成すると共に、応力に対して支配的なシリコン窒化層103(n2)の引張応力を絶縁膜102の膜応力に近づける。
【0075】
以下に具体的内容を説明する。
(S201)
ここでは、絶縁膜102と接触する面に、シリコン窒化層103(n1)を形成する。
ウエハ100が所定の温度に維持されたら、第一ガス供給系243からHCDSガスを処理室205に供給すると共に、第二ガス供給系244からNHガスを供給する。
【0076】
次に、処理室205内が所定の圧力に到達したら、プラズマ生成部252は処理室205内に高周波の供給を開始する。具体的には、高周波電源252bを稼動させ、電力を供給する。処理室205内の処理ガスの一部が電離してプラズマ状態とされる。プラズマ状態となったHCDSガスとNHガスは互いに処理室205内で反応し、絶縁膜102上に供給される。
【0077】
高周波の供給開始から所定時間経過したら、図13に記載のように、絶縁膜202上に反応物が堆積し、緻密なシリコン窒化層103(n1)が形成される。シリコン窒化層103(n1)は第一のシリコン窒化層とも呼ぶ。
【0078】
シリコン窒化層103(n1)は、犠牲膜の応力に影響が無い程度の厚みとし、少なくともシリコン窒化層103(n2)よりも薄い膜である。
【0079】
(S202)
所定時間経過し、シリコン窒化層103(n1)が形成されたら、プラズマ生成部252からの高周波供給を維持しつつ、イオン制御部251は低周波電源251bを稼動させ、処理室205内に低周波の供給を開始する。
【0080】
処理ガスは、高周波によって高密度のプラズマ状態にされると共に、低周波によってプラズマ中のイオンがウエハ100に照射される。
【0081】
プラズマ状態とされたガスのうち、主にSiと窒素が結合して絶縁膜102上に供給されることで、シリコン窒化層103(n2)が形成される。それと並行して、不純物結合が、処理室205内に発生する。この不純物結合は、シリコン窒化層103(n2)中に取り込まれる恐れがある。なお、不純物結合には、例えば、SiとClが結合したSi-Cl結合、SiとHが結合したSi-H結合、Si-NとClが結合したSi-NCl結合、Si-NとHが結合したSi-NH結合、等の少なくともいずれかを有する。
【0082】
しかしながら、本工程においては、低周波によって、窒素等のイオン成分が形成過程のシリコン窒化層103(n2)中の、不純物結合等に供給され、結合を切断する。それらの結合が切断されることで、圧縮性の応力を有するシリコン窒化層103(n2)が形成される。
【0083】
更には、高周波によって高密度のプラズマ状態とされ、更には低周波によって窒素イオンがウエハ100に照射されるので、S201のような高周波のみに比べて膜形成レートを高めることができる。従って、シリコン窒化層103(n2)を早期に形成することが可能となる。
【0084】
また、より良くは、S202では処理ガスにアルゴン(Ar)等の不純物結合の切断をアシストするアシストガスを含めてもよい。Arは窒素に比べ分子サイズが大きいため、シリコン窒化層103(n2)を形成する際に発生した不純物結合の結合部の切断を促進できる。このとき、応力を調整するために、アルゴンの供給量を調整してもよい。調整する際は、マスフローコントローラ247cやバルブ247dを調整する。例えば、応力を低くする場合はアルゴンの供給量を増やし、応力を高くする場合はアルゴンの供給量を減らすよう調整する。
【0085】
このようにして、不純物との結合を切断することで、シリコン窒化層103(n2)の膜応力である引張応力を低減させる。
【0086】
ところで、本工程では不純物との結合だけでなく、Si−N結合も切断する可能性がある。仮に切断されると、膜密度が低下したり、エッチングレートが高くなったりするなど、膜質が悪くなることが考えられる。しかしながら、図7に記載のように、犠牲膜104は後の犠牲膜除去工程S114にて除去されるので、膜質が悪くなっても問題がない。
【0087】
より良くは、低周波の供給は、パルス状に供給することが望ましい。これは、低周波をかけ続けることで窒素等の高エネルギーのイオンや電子がウエハ100に常に衝突して反応が起こるため、シリコン窒化層103(n2)の温度が急激に上昇し、他の膜に影響を及ぼす可能性があるためである。パルス状に供給することで、常に反応することを防止し、シリコン窒化層103(n2)の温度上昇を抑制できる。
【0088】
また、S202のように少なくとも低周波を供給する際は、高周波電源252bから供給する高周波の電力をS201よりも大きくすることが望ましい。電力を大きくすることで、分解を促進することができるので、膜形成レートを更に向上させることができるので、より早くシリコン窒化層103(n2)を形成することができる。
【0089】
なお、図13においては、絶縁膜102の第一層上に犠牲膜104を形成する例を用いて説明したが、これに限るものではなく、第二層以上でもよい。例えば、図6における犠牲膜104(5)、104(7)等で本工程を用いてもよい。
【0090】
(S203)
S202にて所定時間経過したら、プラズマ生成部252は高周波の供給を維持しつつ、イオン制御部251は低周波の供給を停止する。高周波によってプラズマ状態とされた処理ガスは、シリコン窒化層103(n2)上にシリコン窒化層103(n3)を形成する。シリコン窒化層103(n3)はシリコン窒化層103(n1)と同様の性質であり、犠牲膜の応力に影響が無い程度の厚みとし、少なくともシリコン窒化層103(n2)よりも薄い膜であり、応力の低い膜とする。なお、シリコン窒化層103(n3)の上部には、図4に記載のように、絶縁膜102が形成される。
【0091】
(S204)
S203にて所定時間経過したら、処理ガスの供給、高周波電力の供給を停止すると共に、第三ガス供給系から不活性ガスを供給して、処理室の雰囲気を排気する。排気後、ウエハ100は搬出され、図示しない絶縁膜形成装置に移動され、犠牲膜104上に絶縁膜102が形成される。
【0092】
このように、シリコン窒化層103(n2)の圧縮応力を低減させた犠牲膜104を形成することで、図4から図6のように絶縁膜102と犠牲膜104を交互に積層したとしても、応力差等に起因する半導体装置の破壊や歩留まりの低下を抑制することができる。
【0093】
ところで、シリコン窒化層(n1)、シリコン窒化層103(n2)、シリコン窒化層103(n3)で構成される犠牲膜104は、図6に記載のように、上下に絶縁膜102が構成される。
【0094】
絶縁膜102には酸素成分が混入しており、ウエハ100を加熱した場合、酸素成分が移動することが考えられる。特にシリコン窒化層103(n2)のように結合を切断した膜に対しては、移動した酸素成分が浸透しやすいことが考えられる。
【0095】
そこで、本実施形態においては、下方の絶縁膜102とシリコン窒化層103(n2)の間に、緻密な窒化層であるシリコン窒化層103(n1)を形成する。ここで、緻密な窒化層とは結合度が高い窒化層をいう。結合度が高いとは、主要成分であるSiとNの結合や、不純物結合の結合が多い状態を示す。即ち、シリコン窒化層103(n2)よりも結合度が高い状態を示す。このような場合、シリコン窒化層103(n1)が壁となるため、シリコン窒化層103(n1)下方に設けられた絶縁膜102の酸素成分がシリコン窒化層(n2)に移動することを防ぐ。
【0096】
また、本実施形態においては、上方の絶縁膜102とシリコン窒化層103(n2)の間に、緻密な窒化層であるシリコン窒化層103(n3)を形成する。シリコン窒化層103(n3)が壁となるため、シリコン窒化層103(n3)上方に設けられた絶縁膜102の酸素成分がシリコン窒化層103(n2)に移動することを防ぐ。
【0097】
このように積層膜全体の応力を低減する役割であるシリコン窒化層103(n2)の膜密度が低く酸化しやすい状態であることから、絶縁膜102とシリコン窒化層103(n2)の間に緻密なシリコン窒化層103(n1)やシリコン窒化層103(n2)を形成するのがよい。
【0098】
仮に、本実施形態と異なり、シリコン窒化層103(n1)やシリコン窒化層103(n2)を形成しない場合を考える。この場合、犠牲膜104に絶縁膜102の酸素成分が浸透し、犠牲膜104が酸化してしまう。この酸化は意図的ではないので、不均一に酸化することが考えられる。
【0099】
ところで、一般的に知られているように、シリコン窒化層が酸化するとエッチングレートが低くなったり、誘電率が上昇したりしてしまう。このような状態でデバイスを製造した場合、例えば次のような問題が発生する。犠牲膜除去工程S114にて犠牲膜104をエッチングしようとしても、酸化された一部の犠牲膜104をエッチングできないため、エッチング量のばらつきが起きる恐れがある。
【0100】
これについて、比較例である図14を用いて説明する。図14(a)は、酸化された犠牲膜104をエッチングした後の状態の図である。図14(b)は図14(a)の一部を拡大した図であり、前述のエッチング量のばらつきを説明する図である。このように、エッチング量のばらつきが起きると、図14(b)に記載のように、絶縁膜102の上下に犠牲膜104の酸化部分が残留してしまう。
【0101】
犠牲膜104の酸化部分のばらつきとは、水平方向における高さのばらつきである。例えば絶縁膜102(4)(もしくは残留した犠牲膜104(4))と絶縁膜104(5)(もしくは残留した犠牲膜104(5))との間の距離h1、h2のばらつきをいう。もしくは、垂直方向におけるばらつきである。例えば絶縁膜102(4)(もしくは残留した犠牲膜104(4))との距離h1と、絶縁膜102(3)(もしくは残留した犠牲膜104(3))と絶縁膜102(4)(もしくは残留した犠牲膜104(4))との距離h3のばらつきをいう。このような状態でデバイスを製造した場合、導電膜112間で、電気的容量や抵抗値等の特性のばらつきが発生する。
【0102】
これに対して、本実施形態のように、S201にて絶縁膜102上に緻密なシリコン窒化層103(n1)を形成することで、犠牲膜104のシリコン窒化層103(n1)、シリコン窒化層103(n2)の酸化を抑制することができる。
【0103】
更には、S203にて、シリコン窒化層103(n2)上に緻密なシリコン窒化層103(n3)を形成することで、直上の絶縁膜102(例えば、シリコン窒化層103(n3)が犠牲膜104(2)の一部である場合、犠牲膜104(2)と接する絶縁膜102(3)示す。)からの酸素成分移動を抑制することができる。従って、犠牲膜104、特にシリコン窒化層103(n2)の酸化を抑制することができる。なお、緻密な窒化層とは、シリコン窒化層103(n1)と同様に、結合度が高い窒化層をいう。即ち、シリコン窒化層103(n2)よりも結合度が高い状態を示す。
【0104】
また、本実施形態においては、犠牲膜104を3つの層に分けて形成したが、それ以上の層でもよい。
【0105】
また、本実施形態においては、絶縁膜と犠牲膜の熱膨張率差により、半導体装置の破壊が起きる例について説明したが、それに限るものではない。例えば、図5に記載のホール106を形成した際に、絶縁膜または犠牲膜の膜応力の問題から、半導体装置の破壊が起きる恐れがある。しかしながら、上記実施形態のように、絶縁膜の膜応力を低減、あるいは犠牲膜の膜応力を低減することで、ホール106を形成した際の半導体装置の破壊を防ぐことができる。
【0106】
また、本実施形態におけるS201、S202、S203それぞれにおいては、犠牲膜を形成する際、二つのガスを同時に処理室に供給して形成したが、それに限るものではなく、例えば交互にガスを供給する交互供給処理を行い、絶縁膜102上で膜を形成しても良い。具体的には、絶縁膜102上にHCDSガスを供給してシリコンを主とする層を形成し、その後アンモニアを供給して分解して、シリコンを主とする層と反応させ、SiN層を形成しても良い。より良くは、緻密な膜が求められているS201では上記の交互供給処理を行い、高い成膜レートが求められているS202では上記実施例のように同時に処理室に供給して形成しても良い。ここでは、HCDSガス、NHガスのいずれか、もしくは両方を活性化させ、反応を促進してもよい。
【0107】
また、本実施形態では、イオン制御部251の一構成として低周波電源を用いたが、イオン成分を引き寄せられればそれに限るものではなく、例えば高周波電源でもよい。ただし、各電源の性質上、高周波電源に比べ低周波電源のほうがイオンを大きく移動させるよう制御することが可能であるので、低周波を用いることが望ましい。
【0108】
なお、図4等では絶縁膜102と犠牲膜104を交互に8層形成したが、それに限るものではなく、8層よりも多くの層であっても良い。層が増えるほど応力の影響を受けやすいので、それに応じて本実施形態で説明した技術がより有効となる。
【符号の説明】
【0109】
100 ウエハ(基板)
102 絶縁膜
104 犠牲膜
200 基板処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15