特許第6787832号(P6787832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787832
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】帯状金属材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 19/06 20060101AFI20201109BHJP
   B23D 33/08 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   B23D19/06 D
   B23D33/08 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-70411(P2017-70411)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171677(P2018-171677A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年2月28日
【審判番号】不服-7517(P-7517/J1)
【審判請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 直幸
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野村 知康
【合議体】
【審判長】 刈間 宏信
【審判官】 青木 良憲
【審判官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−244577(JP,A)
【文献】 特開2006−346838(JP,A)
【文献】 JISハンドブック46機械計測、768−770ページ、2017年1月31日、一般財団法人日本規格協会発行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 19/06
B23D 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状に巻き取られている帯状金属材の製造方法であって、当該製造方法におけるスリット工程において、スリット後に前記帯状金属材の長手方向の側面に直線定規を当てて直線定規と帯状金属材の長手方向に直角な方向の隙間を長さ50mm毎に測定したとき、当該帯状金属材の長手方向1mあたりの前記隙間の最大値が0.12mm以下となるようにスリットをしコイル状に巻き取ることを特徴とする帯状金属材の製造方法
【請求項2】
長手方向1mあたりの曲がり量が0.03mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の帯状金属材の製造方法
【請求項3】
前記帯状金属材が銅又は銅合金の帯状金属材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯状金属材の製造方法
【請求項4】
前記帯状金属材のビッカース硬さが180〜300HV、板厚が0.10〜0.16mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯状金属材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯状金属材、金属素材を長手方向に沿って所定幅に連続的に切断し帯状金属材を得るためのスリット方法、並びに帯状材の蛇行測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟鋼、銅、銅合金、ステンレス等の金属素材の製造ラインでは、金属素材は長手方向に搬送されながら圧延工程で最終板厚とされた後、ユーザーの希望に応じ所定の帯幅にスリットして分割され、それぞれコイル状に巻き取られて出荷される。金属素材を所定の幅にスリットする方法として、金属素材を上下配置された丸刃カッターを備えたスリッターの間を通す方法が慣用的に行なわれている。
【0003】
スリットされる前の金属素材の形状が平坦でなく波打ったものであると、スリットされた後の帯状金属材の両サイドエッジが平行直線状にならず、図2に示すような曲がりを有した形状を示すことになる。このような曲がりを有した形状では厳しい寸法精度が要求される用途には不向きである。例えば帯状金属材からリードフレームをエッチングにより形状加工する場合、曲がりが大きいと一定間隔でのプレス工程による穴開けが困難となり、製品歩留まりが著しく低下する。
【0004】
曲がりを防止する方法としては、金属素材がスリッターを通過する前に、金属素材の両サイドから搬送方向に直線上に並んだガイドローラーを押し当てる方法が知られている(例:特許文献1)。
【0005】
また、特許文献2には、銅帯板を送り出す巻出回転装置と、銅帯板にこれを厚さ方向に完全に分離しない程度にせん断加工を施す複数の上円盤カッタ及び下円盤カッタと、せん断加工が施された銅帯板を厚さ方向に押圧して完全に分離切断する押圧ロールと、分離切断された細銅帯板を巻き取る巻取回転装置とを備え、銅帯板を長手方向に切断するスリッティング装置において、上円盤カッタ及び下円盤カッタの刃先部が、銅帯板との接触角度が0°であるフラット部と、フラット部の延長線上に形成された銅帯板との角度が5〜30°である傾斜部とからなる部分テーパー刃先部からなる銅帯板のスリッティング装置が記載されており、かかる発明の副次的な効果として、スリッティングされた細銅帯板の曲がりの量も小さくなる。
【0006】
ここで、曲がり量の測定は、通常JIS H 3100(2012)に準拠して測定し、具体的には、図2に示すように,任意の箇所の基準の長さ1000mmに対する弧の深さをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−109217号公報
【特許文献2】特開2013−237116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記手段では、依然としてプレス工程における製品歩留まりが低下する課題を完全に解決するに至っていない。さらに、本発明者らは、上記JIS基準により測定される曲がり量を低くしても、プレス工程における不具合の課題が解消されない場合があるということを発見した。
そして、本発明者らがさらに鋭意検討した結果、金属素材を長手方向に沿って所定幅に連続的に切断し帯状金属材を得るに際し、幅方向及び垂直方向の微振動が生じ、これにより帯状金属材が微小な周期で蛇行することを知見した。かかる微小な周期の蛇行(以下「微小蛇行うねり」という。)は、上記JIS基準によっては検出できない場合があり、その結果、上記JIS基準により測定される曲がり量が小さくても、プレス工程に適した帯状金属材を得ることができない場合がある。
そのため、かかる微小蛇行うねりを抑制した平行度の高い帯状金属材、及びこのような帯状金属材が得られるようにするためのスリット方法が必要である。また、上記JIS基準以外、スリットの際の微振動により生じた微小蛇行うねりを反映した合理的な測定方法が必要である。
すなわち、帯状金属材は、JIS基準により測定される曲がり量と、微小蛇行うねりとの両方を有する。そのため、JIS基準により測定される曲がり量がゼロであるものが仮に製造できたとしても、微小蛇行うねりはゼロにはならない。
これは、JIS基準により測定される曲がり量と、微小蛇行うねりとでは、発生の原因系が異なることによるものである。つまり、JIS基準により測定される曲がりの発生は、スリット前における素材の形状に起因する。そして、スリット前における素材の形状は、仕上げ冷間圧延工程、又は、仕上げ圧延工程後の形状矯正工程若しくは歪取焼鈍工程に影響を受ける。一方、微小蛇行うねりの発生は上記のとおりスリッタ設備及びスリット方法に起因する。
【0009】
そこで、本発明の課題は、スリット後に高い平行度をもつ帯状金属材及びこのような帯状金属材が得られるようにするためスリット方法を提供するとともに、帯状材の微小蛇行うねりを合理的に測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下のような形態を含むものである。
(1)帯状金属材の長手方向の側面に直線定規を当てて直線定規と帯状金属材の長手方向に直角な方向の隙間を長さ50mm毎に測定したとき、当該帯状金属材の長手方向1mあたりの前記隙間の最大値が0.12mm以下であることを特徴とする帯状金属材。
(2)長手方向1mあたりの曲がり量が0.03mm以下であることを特徴とする(1)に記載の帯状金属材。
(3)前記帯状金属材が銅又は銅合金の帯状金属材であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の帯状金属材。
(4)金属素材を長手方向に搬送しながら所定の帯幅にスリットする方法であって、
長手方向に搬送される金属素材の両サイドのマージン領域を切り落とすための二対の丸刃カッターと、前記二対の丸刃カッターの各内側に配置され、前記金属素材を所定の幅に切断するための少なくとも一対の丸刃カッターを有するスリッターを用いて、金属素材を所定の帯幅にスリットするスリット工程と、以下の(i)〜(iii)の工程を実施することを含む方法。
(i)前記スリット工程の前、長手方向に搬送される金属素材の動きを、丸刃カッターの位置から、金属素材幅の少なくとも1倍の位置までの領域において、金属素材の通板方向を両サイドから規制する工程。
(ii)前記スリット工程の前、長手方向に搬送される金属素材の動きを、丸刃カッターの位置から、金属素材幅の少なくとも1倍の位置までの領域において、表裏方向から規制する工程。
(iii)前記スリット工程の後、前記スリットされた金属素材の動きを、丸刃カッターの位置から、金属素材幅の3倍の位置までの領域において、少なくとも1か所以上の位置で表裏方向から規制する工程。
(5)長手方向に搬送される金属素材の動きを両サイド及び表裏方向から規制する工程を実施する前に、金属素材をレベラー矯正する工程を更に含む(4)に記載の方法。
(6)帯状材の蛇行測定方法であって、長手方向一定長さに切り取った帯状材側面に直線定規を当てて直線定規と帯状材の長手方向に直角な方向の隙間を一定長さのピッチ毎に測定することを特徴とする蛇行測定方法。
(7)前記ピッチが帯状材長さの10分の1以下であることを特徴とする(6)に記載の蛇行測定方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蛇行を抑制した平行度の高い帯状金属材を得ることができ、上記プレス工程における不具合を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】帯状金属材が蛇行している状態を示す模式図である。
図2】JIS H 3100(2012)における曲がり量の測定方法を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るスリッター設備の構成を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る帯状材の蛇行測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(帯状金属材)
帯状金属材の種類としては特に制限はないが、例えば軟鋼、銅、銅合金、ステンレス等が挙げられる。
ここで、帯状金属材の長手方向の側面に直線定規を当てて直線定規と帯状金属材の長手方向に直角な方向の隙間を長さ50mm毎に測定したとき、当該帯状金属材の長手方向1mあたりの前記隙間の最大値が0.12mm以下であることが肝要である。
前述のように、金属素材を長手方向に沿って所定幅に連続的に切断し帯状金属材を得るに際し、幅方向及び垂直方向の微振動が生じ、これにより帯状金属材が蛇行する。このような微振動から生じる蛇行は、必ずしも帯状金属材の曲がりとして現れるとは限らないため、JIS H 3100(2012)における曲がり量の測定方法では正確に測定できない場合がある。このような蛇行を正確に評価するには、JIS H 3100(2012)における方法よりも、測定点を増やす必要がある。そのため、本発明は、帯状金属材の長手方向の側面に直線定規を当てて直線定規と帯状金属材の長手方向に直角な方向の隙間を長さ50mm毎に測定したとき、当該帯状金属材の長手方向1mあたりの前記隙間の最大値が0.12mm以下であると設定している。これにより多数の測定点から隙間の値を得ることができ、微振動から生じる蛇行を正確に反映させることができる。その結果、その後のプレス工程等に適した帯状金属材を確実に提供することができる。
前記隙間の最大値を測定する方法の詳細は後述する。
【0014】
また、上記条件を満たすとともに、長手方向1mあたりの曲がり量が0.03mm以下である帯状金属材であることが好ましい。かかる曲がり量は、JIS H 3100(2012)における曲がり量の測定方法により得られた値である。これにより、帯状金属材の品質をさらに確実に担保することができる。
【0015】
帯状金属材の引張強さが600MPa以上であれば、電気電子部品の素材として必要な強度を有しているといえる。引張強さが950MPaを超えると加工が困難となる場合もあるので、950MPa以下が好ましい。また、同じく強度と加工性を両立させる観点から、帯状金属材のビッカース硬さは180〜300とすることが好ましい。
【0016】
次に、図面を参照しながら本発明のスリッター設備及びスリット方法説明する。図3には本実施形態に係るスリッター設備(100)の構成を示す模式図が示されている。ペイオフリール(図示せず)から巻き出された長尺の金属素材(200)が長手方向に搬送されながらスリッター(130)において所望の帯幅にスリットして分割される。分割後、金属素材(200)はそれぞれテンションリール(図示せず)でコイル状に巻き取ることができる。図示しないが、金属素材(200)はスリッター設備(100)の前段及び後段ではループ状に弛ませることができる。これにより、金属素材(200)の搬送速度の調整が容易となる。
【0017】
スリットする金属素材(200)の種類としては特に制限はないが、例えば軟鋼、銅、銅合金、ステンレス等が挙げられる。金属素材(200)がスリッター(130)に入る前に、レベラーロールなどでレベラー矯正して平坦度を高めておくことが、スリット後に高い平行度をもつ金属素材(200)を得る上では望ましい。金属素材の厚みは0.10〜0.16mmとすることが好ましい。0.10mm未満のものは強度が低く、金属単体での使用が難しく樹脂等との貼り合わせが必要となる。0.16mmを超えると曲げ加工において曲げ半径を大きく設定する必要があり、電気電子部品の小型化に不向きである。また、スリット後の帯状金属材の幅は100〜200mmと設定することが好ましい。100mm未満のものは生産性が劣り、200mmを超えるものは全ての幅において品質が安定したプレス加工をすることが難しくなる。
【0018】
(ガイドローラー)
スリッター(130)の前段には、搬送中の金属素材(200)の両サイドにガイドローラー(120)が設置されている。ガイドローラー(120)は金属素材(200)の通板方向を両サイドから規制することで蛇行を防止するための装置である。搬送中の金属素材(200)が蛇行しかけると、金属素材(200)の側面がガイドローラー(120)の側面に当接することで、蛇行を阻止して所定の通板方向に矯正する。ガイドローラー(120)の回転軸が金属素材(200)の表裏方向と平行であることで、金属素材(200)がガイドローラー(120)に当接したときのガイドローラーの回転方向が金属素材(200)の通板方向と一致する。これにより金属素材(200)とガイドローラー(120)の間の摩擦を低減することが可能となる。蛇行防止効果を確保するため、ガイドローラー(120)は後述するスリッターの丸刃カッターの位置から、金属素材幅の少なくとも1倍の位置までの領域内に配置する必要がある。蛇行防止効果を高めるため、ガイドローラー(120)は各サイドに直線状に複数配列することが好ましい。また、ガイドローラー(120)は金属素材(200)の対向する両サイドにペアで設置されていることが好ましい。
【0019】
(スリッター前段の蛇行防止板)
ただし、ガイドローラー(120)の設置のみでは蛇行防止効果は限定的であり、蛇行を高い次元で阻止することはできない。また、ガイドローラー(120)のみでは金属素材(200)は上下方向への動きが規制されていないため、波打が発生したり、金属素材(200)がガイドローラー(120)へ乗り上げたりする場合もある。そこで、スリッター(130)の前段には、更なる蛇行防止手段として、金属素材(200)を上下から押さえるための一対の蛇行防止板(110a、110b)を設置することが効果的である。蛇行防止、波打防止、ガイドローラー(120)への乗り上げ防止の観点から、ガイドローラー(120)と蛇行防止板(110a、110b)を設置する通板方向の長さ範囲は少なくとも部分的に重複していることが好ましい。下側の蛇行防止板(110b)を適切な土台や床上に敷き、その上に、搬送中の金属素材(200)を挟むようにして上側の蛇行防止板(110a)を載置することができる。ガイドローラー(120)に加えて蛇行防止板(110a、110b)を設置することで、金属素材(200)の蛇行、波打及びガイドローラーへの乗り上げが抑制されるので、より平坦な状態で元材をスリット工程に進入させることが可能となる。蛇行防止効果を確保するため、蛇行防止板(110a、110b)は後述するスリッターの丸刃カッターの位置から、金属素材幅の少なくとも1倍の位置までの領域内に配置する必要がある。
【0020】
蛇行防止板(110a、110b)の金属素材(200)と接触する面には、金属素材(200)にキズが付かないように、また、搬送抵抗が大きくならないように、市販の不織布などの摩擦抵抗の低い材質のシートを貼り付けることが好ましい。蛇行防止板(110a、110b)からの金属素材(200)に対する押圧力は蛇行防止効果との兼ね合いで適宜設定すればよいが、蛇行防止板(110a、110b)をベニヤ板としたときの自重程度でも十分な効果が得られる。蛇行防止板の自重では蛇行防止効果が不十分な場合は蛇行防止板の上に更に重りを載せることもできる。
【0021】
蛇行防止板(110a、110b)の幅は金属素材(200)の幅以上とし、金属素材(200)の幅方向全体にわたって金属素材(200)を押圧できるように設置することが蛇行防止効果を高める観点で好ましい。蛇行防止板(110a、110b)の通板方向の長さは蛇行防止効果との兼ね合いで適宜設定すればよい。上下の蛇行防止板(110a、110b)はそれぞれ一枚で構成することもでき、搬送方向に複数枚配列することで構成してもよい。具体的には、蛇行防止板(110a、110b)の通板方向の長さは500〜800mmとすることが好ましい。
【0022】
(スリッター)
図3を参照すると、スリッター(130)は一実施形態において、長手方向に搬送される金属素材の両サイドのマージン領域を切り落とすための上下二対の丸刃カッターと、前記二対の丸刃カッターの各内側に配置され、前記金属素材を所定の幅に切断するための少なくとも上下一対の丸刃カッターを有することができる。
【0023】
(スリッター後段の蛇行防止板)
スリット後の金属素材(200)の平行度を顕著に高めるためには、スリッター(130)の後段にも蛇行防止板(140a、140b、160a、160b、170a、170b)を設置することが効果的となる。スリット後の金属素材(200)の蛇行を防止することでスリット後の金属素材(200)が重なることを防止でき、また、スリット後の金属素材(200)の蛇行を防止することはスリット前及びスリット中の金属素材(200)の蛇行防止にも寄与する。蛇行防止効果を確保するため、蛇行防止板(140a、140b、160a、160b、170a、170b)はスリッターの丸刃カッターの位置から、金属素材幅の3倍以上の位置までの領域内に配置する必要がある。蛇行防止板(140a、140b、160a、160b、170a、170b)の自重では蛇行防止効果が不十分な場合は蛇行防止板の上に更に重り(150)を載せることもできる。蛇行防止板(140a、140b、160a、160b、170a、170b)の好適な態様はスリッター(130)前段の蛇行防止板(110a、110b)と同様であるので、説明を省略する。
【0024】
次に、本発明の帯状材の蛇行測定方法について説明する。帯状材の蛇行を測定するにあたり、長手方向一定長さに切り取った帯状材側面に直線定規を当てて、当該直線定規と当該帯状材の長手方向に直角な方向の隙間を一定長さのピッチ毎に測定する。これにより、スリットの際の微振動により生じた蛇行を測定結果に有効に反映させることができる。例えば、帯状材長さの10分の1以下の長さでピッチを設定し、10点以上測定し、得られた値の最大値を蛇行の指標値として、当該最大値が一定の指標以下のものを合格とすることができる。
【0025】
例えば、図4に示すように、帯状材(250)を載置するための平面、及び該平面上に測定方向に沿って所定のピッチで設けられた複数の測定穴(210)を有する測定テーブル(203)上に、各測定穴を部分的に塞ぐようにして測定方向に沿って前記測定テーブル(203)上に基準直定規(204)を載置し、各測定穴(210)における基準直定規(204)と帯状材(250)の隙間を測定することができる。ここで、基準直定規(204)と帯状材(250)の隙間の測定の容易にするため、帯状材(250)を基準直定規(204)から各測定穴を部分的に塞ぐことのできる距離で測定方向に沿ってスペーサ(208)を配置することもできる。かかるスペーサ(208)を配置する場合、基準直定規(204)と帯状材(50)の隙間の実際値は、測定値からスペーサ(208)のオフセットを減じて得た値である。
【0026】
本発明の帯状材の蛇行測定方法は、本発明の帯状金属材に適用することができる。また、本発明の帯状材の蛇行測定方法は、長尺状の帯状材であれば適用することができ、必ずしも帯状金属材に適用しなくてもよい。
【実施例】
【0027】
以下に本発明の実施例を示すが、実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0028】
表1に示す引張強さ、ビッカース硬さ、板厚及び板幅を有する金属素材であるコルソン銅合金(2〜4質量%Ni−0.4〜1.0質量%Si−Cu)を図3に示す構造を有するスリッター設備を用いて、金属素材に対してスリット加工を行った。各実施例及び発明例について、スリッター前段の蛇行防止板の長さ(110a、110b)、スリッター後段の蛇行防止板(140a、140b、160a、160b、170a、170b)の有無、スリット後帯状金属材の幅も表1に示すとおり調節した。
【0029】
スリッター設備の操業条件は以下である。
ガイドローラー(120):通板方向に直線状に両サイドに設置。ガイドローラーを設置する領域は、前段の蛇行防止板(110a、110b)を設置する領域と同じものとした。
前段の蛇行防止板(110a、110b):金属素材と接する面に市販の不織布を貼り付けたベニヤ板。スリキズ発生しないように重さを調整した。
後段の蛇行防止板(140a、140b、160a、160b、170a、170b):金属素材と接する面に市販の製の不織布を貼り付けたベニヤ板。スリキズ発生しないように重さを調整した。
重り(150):スリキズ発生しないように重さを調整した。
【0030】
それぞれの実施例及び比較例の評価は以下のように行った。
<引張強さ>
引張試験機により、JIS−Z2241に従い、圧延方向と平行な方向における引張強さを測定した。
<ビッカース硬さ>
JIS−Z−2244(2009)に従い、マイクロビッカース硬さ試験を、荷重:0.098Nで行い、マイクロビッカース硬さを測定した。
<曲がり>
JIS H 3100(2012)に準拠して測定した。
<微小蛇行うねり>
スリット後の帯状金属材の長手方向に沿って1m分切り抜き、その長手方向の側面に直線定規を当てて直線定規と帯状金属材の長手方向に直角な方向の隙間を長さ50mm毎に測定し、その最大値を微小蛇行うねりの値とした。
<プレスの不具合の有無>
図2に示すように、送りピッチ(送り長さ)でパイロット穴を作製する工程、送りピッチ(送り長さ)で材料を送る工程、送りピッチ(送り長さ)でパイロット穴にパイロットパンチを挿入させる工程を順次行い、この一連の動作を繰り返すことにより帯状金属帯を連続して送るプレス試験を行った。プレス試験において次のように、不具合あり及び不具合なしを判定した。
・プレス不具合あり:帯状金属帯の送りが停止した。
・プレス不具合あり:プレス後の帯状金属帯のエッジが、プレス機構造部との接触により変形した。
・プレス不具合あり:プレス後の帯状金属帯のエッジにプレス機構造部との接触によるキズが発生した。
・プレス不具合なし:上記の停止、変形及びキズのいずれも認められなかった。
【0031】
【表1】
【0032】
実施例1〜11は、蛇行の値が0.12mm以下であるため、その後のプレス工程で不具合はなかった。曲がりの値も0.03mm以下に抑えることができた。
一方、比較例1〜6は、蛇行の値が0.13mmを超えたため、その後のプレス工程で不具合が生じた。特に、比較例1〜3において、曲がりの値は低い水準にあるが、蛇行の値が高かったため、プレス工程での不具合を抑えることができなかったことがわかる。
【符号の説明】
【0033】
110a、110b 前段の蛇行防止板
120 蛇行防止用ガイドローラー
130 スリッター
140a、140b、160a、160b、170a、170b 後段の蛇行防止板
15 重り
200 金属素材
203 測定テーブル
204 基準直定規
208 スペーサ
210 測定穴
250 帯状材
図1
図2
図3
図4