【文献】
吉村 憲子,Navigation timing APIを用いたWeb品質劣化切り分け手法のフィールド検証 Field validation of fault isolation of web services using Navigation timing API,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2015年11月19日,Vol.115 No.327,71-74
【文献】
吉村 憲子,Navigation Timing APIを用いた品質劣化区間判定手法の一検討 Study of quality deterioration section determination method using Navigation Timing API,電子情報通信学会2016年総合大会講演論文集 通信2,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2016年 3月11日,388
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の条件、前記第2の条件、前記第3の条件、前記第3'の条件、前記第4の条件、又は前記第5の条件は、当該条件の判定に使用される所要時間に対して、非劣化時の所要時間の集合値との分布形状差分があり、且つ、平均値及び分散値について閾値を上回る差分があり、且つ、有意差があることである、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の被疑箇所推定装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0012】
(システム構成)
図1は、本発明の実施の形態におけるWebシステムの構成例を示す図である。
図1において、2以上のユーザ端末20のうち、1以上のユーザ端末20aは1以上の基地局30のうちのいずれかを介して移動体通信事業者N2に接続可能である。また、ユーザ端末20aは、移動体通信事業者網N2、POI、及びインターネットN1等を介して、1以上のWebサーバ40と通信可能である。更に、ユーザ端末20aは、例えば、移動体通信事業者網N2を介して、被疑箇所推定装置10と通信可能である。
【0013】
2以上のユーザ端末20のうち、1以上のユーザ端末20bは1以上の基地局30のうちのいずれか及び移動体通信事業者網N2を介して仮想移動体通信事業者網N3に接続可能である。また、ユーザ端末20bは、移動体通信事業者網N2、仮想移動体通信事業者網N3、POI、及びインターネットN1等を介して、1以上のWebサーバ40と通信可能である。更に、ユーザ端末20bは、例えば、移動体通信事業者網N2と仮想移動体通信事業者網N3を介して、被疑箇所推定装置10と通信可能である。
【0014】
ユーザ端末20は、Webページを表示可能なWebブラウザ(以下、単に「ブラウザ」と言う。)を備えた通信端末である。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、車載機、又はPC(Personal Computer)等が、ユーザ端末20として利用されてもよい。なお、Webページは、例えば、HTML(HyperText Markup Language)、CSS(Cascading Style Sheets)、及びスクリプト等を含むデータである。
【0015】
被疑箇所推定装置10は、ユーザ端末20に表示されるWebページに関する表示時間(表示待ち時間)等の品質の劣化に関して、当該劣化の要因となった被疑箇所を推定するコンピュータである。本発明の実施の形態において、被疑箇所は、ユーザ端末20、基地局30、移動体通信事業者網N2、事業者間POIを含む仮想移動体通信事業者網N3、POI(又はインターネットN1)、及びWebサーバ40の6つの通信箇所のうちのいずれかの通信箇所に切り分けられる。なお、被疑箇所推定装置10は、例えば、仮想移動体通信事業者に設置されてもよい。
【0016】
Webサーバ40は、Webページを記憶又は生成するWebサイトを実現する1以上のコンピュータである。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態における被疑箇所推定装置のハードウェア構成例を示す図である。
図2の被疑箇所推定装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有する。
【0018】
被疑箇所推定装置10での処理を実現するプログラムは、CD−ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0019】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って被疑箇所推定装置10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態におけるユーザ端末及び被疑箇所推定装置の機能構成例を示す図である。
図3において、ユーザ端末20は、Web表示制御部21、ログ生成部22、ログ送信部23、及びログ保存部24等を有する。これら各部は、ユーザ端末20にインストールされた1以上のプログラムが、ユーザ端末20のCPUに実行させる処理により実現される。
【0021】
Web表示制御部21は、ユーザによるWebページの表示指示の入力に応じ、Webページのダウンロード及びWebページの表示等を行う。Webページの表示指示とは、例えば、URL(Uniform Resource Locator)の入力や、既に表示されているWebページ内のリンクの選択等である。なお、Web表示制御部21は、例えば、Webブラウザプログラムが、ユーザ端末20のCPUに実行させる処理により実現されてもよい。
【0022】
ログ生成部22は、Webページの表示指示の入力を契機として、Navigation Timing APIや、ユーザ端末20のOS(Operating System)が備える標準のAPI等を呼び出すことにより、Webページが表示されるまでの過程における、複数の段階(複数の区間)の所要時間を計測し、その計測結果を含むログ(以下、「ブラウザログ」という。)を生成する。
【0023】
ログ送信部23は、ログ生成部22によって生成されるブラウザログを、被疑箇所推定装置10に送信する。あるいは、ログ送信部23は、ログ保存部24に保存されたブラウザログを被疑箇所推定装置10に送信する。
【0024】
ログ保存部24は、ログ生成部22によって生成されたブラウザログを保存(記憶)する。
【0025】
被疑箇所推定装置10は、ログ受信部11、及び推定部12等を有する。これら各部は、被疑箇所推定装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU104に実行させる処理により実現される。被疑箇所推定装置10は、また、ログ記憶部13を利用する。ログ記憶部13は、補助記憶装置102、又は被疑箇所推定装置10にネットワークを介して接続可能な記憶装置等を用いて実現可能である。
【0026】
ログ受信部11は、ユーザ端末20から送信されるブラウザログを受信する。ログ受信部11は、受信したブラウザログをログ記憶部13に記憶する。従って、ログ記憶部13には、ブラウザログが蓄積される。なお、ブラウザログには、ユーザ端末20におけるWebページの表示過程を構成する複数の段階の所要時間等が含まれる。推定部12は、ログ記憶部13に記憶されたブラウザログに含まれる、Webページの表示過程を構成する複数の段階の所要時間について、それぞれに関する条件を満足するかを判定して、Webページの表示の品質劣化の要因の被疑箇所を推定する。即ち、本実施の形態では、Navigation Timingの出力情報等に基づいて、より高い粒度(又は精度)で品質劣化の被疑箇所の切り分けが実現される。
【0027】
なお、本発明の実施の形態では、以下の(1)〜(3)が前提とされる。
【0028】
(1)1つのブラウザログは、単一のユーザ端末20による同一サイト(Webサーバ40)へのアクセスに関する情報である。即ち、ブラウザログは、ユーザ端末20によるWebサーバ40へのアクセス単位で生成される。
【0029】
(2)ユーザ端末20が、名前解決に利用するリゾルバ(DNS(Domain Name System)サーバ)は、移動体通信事業者網N2及び仮想移動体通信事業者N3内に設置されている。当該リゾルバがキャッシュを持たないクエリについては、通常のDNSの動作に従い、インターネットN1上の権限サーバに対して、リゾルバから名前解決が要求される。
【0030】
(3)ユーザ端末20がWebページをダウンロードする際のTCP(Transmission Control Protocol)の3ウェイハンドシェイク(3−Way handshake)は、インターネットN1のWebサーバ40との間で実行される。
【0031】
(システムの動作)
以下、ユーザ端末20及び被疑箇所推定装置10のそれぞれが実行する処理手順について説明する。
図4は、ユーザ端末20が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0032】
ログ生成部22は、Webブラウザに対するWebページの表示指示の入力を待機している(S101)。ログ生成部22は、当該表示指示の入力を検知すると(S101でYes)、Navigation Timing APIやOSのAPI等を呼び出し(S102)、当該APIによって得られる情報を含むブラウザログを生成する(S103)。生成されたブラウザログは、ログ保存部24に保存される。続いて、ログ送信部23は、当該ブラウザログを、被疑箇所推定装置10に送信する(S104)。なお、被疑箇所推定装置10へのブラウザログの送信は、定期的に実行されてもよいし、ユーザによる指示の入力に応じて実行されてもよい。これらの場合、送信時期までに生成されたブラウザログがまとめて送信されてもよい。
【0033】
図5は、ユーザ端末から被疑箇所推定装置へ送信されるブラウザログの構成例を示す図である。
図5に示されるように、各ブラウザログは、例えば、日時、端末アドレス、基地局ID、サーバアドレス、及び指標値群等を含む。
【0034】
日時は、Webページの表示指示が入力された日時、又はWebページの表示が完了した日時等である。端末アドレスは、例えば、ユーザ端末20のIPアドレスである。基地局IDは、Webページの表示時にユーザ端末20がアクセスしていた基地局30の識別情報である。サーバアドレスは、Webページの提供元のWebサーバ40のアドレス情報(例えば、IPアドレス又はURL等)である。指標値群は、Webページの表示過程を構成する複数の段階のそれぞれの所要時間である。指標値群の詳細については後述される。
【0035】
なお、ステップS102及びS103に並行して、Web表示制御部21は、
図6に示されるようなWebページの表示処理を実行する。
【0036】
図6は、Webページの表示処理の処理手順の一例を示す図である。なお、
図6において、ユーザ端末20aとDNSサーバとの間のネットワークは、移動体通信事業者網N2であり、ユーザ端末20aとWebサーバ40との間のネットワークは、移動体通信事業者網N2、及びインターネットN1である。また、ユーザ端末20bとDNSサーバとの間のネットワークは、移動体通信事業者網N2、及び仮想移動体通信事業者網3であり、ユーザ端末20bとWebサーバ40との間のネットワークは、移動体通信事業者網N2、仮想移動体通信事業者網N3、及びインターネットN1である。
【0037】
ステップS201において、Web表示制御部21は、ユーザによって入力されたURLに関して、DNSサーバにDNSクエリを送信する。当該DNSクエリに応じ、DNSサーバは、名前解決結果を含むDNS応答を返信する(S202)。続いて、Web表示制御部21が、SYNパケットをWebサーバ40に送信すると(S203)、Webサーバ40は、SYN ACKパケットを返信する(S204)。続いて、Web表示制御部21が、ACKパケットをWebサーバ40に送信して(S205)、TCP3ウェイハンドシェイクが完了する。
【0038】
続いて、Web表示制御部21は、HTTPのGETメッセージをWebサーバ40に送信すると(S206)、Webページを構成するコンテンツデータのダウンロードが開始される(S207)。
【0039】
上記のような表示処理に関して、
図4のステップS103では、
図7に示される指標値群を含むブラウザログが出力される。
【0040】
図7は、ブラウザログに含まれる指標値群の一例を示す図である。
図7に示されるように、1つのブラウザログには、指標値1〜5が含まれる。
【0041】
指標値1は、DNS応答の受信からTCPのSYNパケットの送出までの所要時間である。指標値2は、TCPの3ウェイハンドシェイク完了からHTTPのGETメッセージの送出までの所要時間である。指標値3は、DNSクエリの送信からDNS応答の受信までの所要時間である。なお、仮想移動体通信事業者における指標3は、仮想移動体通信事業者内のDNSサーバを対象とする。指標値4は、TCPの3ウェイハンドシェイクの所要時間である。指標値5は、HTTPのGETメッセージの送出から最初の応答パケットの受信までの所要時間である。
【0042】
なお、
図6には、各指標値が示す所要時間に対応する区間に対して、各指標値の識別子((i)〜(v))が付されている。
【0043】
続いて、被疑箇所推定装置10が実行する処理手順について説明する。
図8は被疑箇所推定装置が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図8の処理は、例えば、ユーザ端末20bのユーザからの品質劣化の申告や、移動体通信事業者側での品質劣化の検知等に応じて実行されてもよいし、定期的に実行されてもよいし、任意のタイミングで実行されてもよい。
【0044】
なお、本手順において被疑箇所判定を行う際には予め、劣化データとの比較用データ(非劣化データ)を準備しておく必要がある。
【0045】
ステップS301において、推定部12は、ログ記憶部13から処理対象とするブラウザログの集合をユーザ端末20aとユーザ端末20bでそれぞれ抽出する。例えば、日時の値が、現在時刻から遡って所定時間内であるブラウザログが処理対象とされてもよい。また、ユーザからの品質劣化の申告や、仮想移動体通信事業者側での品質劣化の検知等において、品質が劣化した日時が或る程度特定されている場合、品質が劣化した日時の前後所定時間内の日時を含むブラウザログが処理対象とされてもよい。
【0046】
続いて、推定部12は、抽出されたユーザ端末20bのブラウザログの集合(以下、「集合L」という。)を、ユーザ端末20b別に分類する(S302)。ユーザ端末20b別への分類は、各ブラウザログの端末アドレスの値に基づいて行われてもよい。分類後の各集合を、以下「集合Lt」という。
【0047】
続いて、推定部12は、集合Ltごとに、指標値1が非劣化時と差があると言う条件(以下、「条件1」という。)、及び指標値2が非劣化時と差があると言う条件(以下、「条件2」という。)を判定する(S303)。指標値1もしくは指標値2が非劣化時と差があると言う条件は、非劣化時の当該所要時間の集合値と集合Ltの比較において、分布形状差分があり、且つ、平均値及び分散値について閾値を上回る差分があり、且つ、有意差があることとする。
【0048】
いずれかの集合Ltに関して(即ち、いずれかのユーザ端末20bに関して)条件1及び条件2の少なくともいずれか一方が満たされる場合(S303でYes)、推定部12は、条件1及び条件2の少なくともいずれか一方が満たされたユーザ端末20bが被疑箇所であると判定する(S304)。この場合、
図8の処理は終了する。
【0049】
一方、全ての集合Ltについて、条件1及び条件2の双方が満たされない場合(S303でNo)、推定部12は、集合Lを、基地局30別に分類する(S305)。即ち、ユーザ端末20b別の分類は解除された状態で、基地局30別への分類が行われる。基地局30別への分類は、各ブラウザログの基地局IDに基づいて行われてもよい。分類後の各集合を、以下「集合Lb」という。
【0050】
続いて、推定部12は、集合Lbごとに、指標値3が非劣化時と差があると言う条件(以下、「条件3」という。)を判定する(S306)。指標値3が非劣化時と差があると言う条件は、非劣化時の当該所要時間の集合値と集合Lbとの比較において、分布形状差分があり、且つ、平均値及び分散値について閾値を上回る差分があり、且つ、有意差があることとする。
【0051】
いずれかの集合Lbに関して(即ち、いずれかの基地局30に関して)条件3が満たされる場合(S306でYes)、劣化被疑箇所が移動体通信事業者と仮想移動体通信事業者間(事業者間POI)の影響であるかどうかを判定するために、推定部12はユーザ端末20aのブラウザログの集合から、S306での条件3が満たされた基地局30に該当するデータ集合Lcを抽出(S307)し、集合Lcの指標値3が非劣化時と差があると言う条件(以下、「条件3'」という。)を判定する(S308)。指標値3が非劣化時と差があると言う条件は、非劣化時の当該所要時間の集合値と集合Lcの比較において、分布形状差分があり、且つ、平均値及び分散値について閾値を上回る差分があり、且つ、有意差があることとする。いずれかの集合Lcに関して条件3'が満たされた場合(S308でYes)は、条件3'を満たす基地局30(つまり、無線アクセス区間)が被疑箇所であると判定し(S309)、いずれの集合Lcに関しても条件3'が満たされなかった場合(S308でNo)は仮想移動体通信事業者網N3が被疑箇所であると判定する(S310)。S309、S310いずれの場合も、
図8の処理は終了する。
【0052】
なお、事業者間POIは仮想移動体通信業者網に含まれ、基地局30は移動体通信事業者網に含まれると考えてよい。前述したように、移動体通信事業者網においては無線アクセス区間が、仮想移動体通信事業者網では移動体通信事業者網との接続点(事業者間POI)が、それぞれボトルネックとなり得る。よって、基地局30が被疑箇所であると判定された場合には移動体通信事業者網が被疑箇所であると考えることができ、基地局30が被疑箇所でなくて、移動体通信事業者網と仮想移動体通信事業者網を経由する部分(ユーザ端末20bによる
図6のDNSクエリ〜DNS応答)が被疑となる場合には、事業者間POI、すなわち仮想移動体通信業者網が被疑箇所となる。
【0053】
よって、本実施の形態により、移動体通信事業者網と仮想移動体通信事業者網のいずれの網が劣化被疑箇所であるかを、端末のログ情報から推定できる。
【0054】
一方、全ての集合Lbについて、条件3が満たされない場合(S306でNo)、推定部12は、集合Lを、Webサーバ40別に分類する(S311)。即ち、基地局30別の分類は解除された状態で、Webサーバ40別への分類が行われる。Webサーバ40別への分類は、各ブラウザログのサーバアドレスの値に基づいて行われてもよい。分類後の各集合を、以下「集合Ls」という。
【0055】
続いて、推定部12は、集合Lsごとに、指標値4が非劣化時と差があると言う条件(以下、「条件4」という。)、及び指標値5が非劣化時と差があると言う条件(以下、「条件5」という。)を判定する(S312)。指標値4もしくは指標値5が非劣化時と差があると言う条件は、非劣化時の当該所要時間の集合値と集合Lsの比較において、分布形状差分があり、且つ、平均値及び分散値について閾値を上回る差分があり、且つ、有意差があることとする。
【0056】
いずれかの集合Lsに関して(即ち、いずれかのWebサーバ40に関して)条件4及び条件5の少なくともいずれか一方が満たされる場合(S312でYes)、推定部12は、条件4及び条件5の少なくともいずれか一方が満たされたWebサーバ40が被疑箇所であると判定する(S313)。この場合、
図8の処理は終了する。
【0057】
一方、全ての集合Lsについて、条件4及び条件5の双方が満たされない場合(S312でNo)、推定部12は、POIが被疑箇所であると判定する(S314)。
【0058】
なお、
図8の処理が、品質の劣化とは無関係なタイミングで実行される場合、ステップS314においては、被疑箇所は無いと判定されてもよい。上述したように、本実施の形態によれば、不特定のログ情報に基づいてWebページの表示時間に関する品質劣化の要因の被疑箇所の推定を可能とすることができる。その結果、サービス事業者、プラットフォーム事業者、移動体通信事業者及び仮想移動体通信事業者の各事業者の責任範囲を明確化することができる。また、品質劣化発生時の状況把握と実態把握の迅速化や、監視技術の効率化等を期待することができる。
【0059】
なお、条件1、条件2、条件3、条件3'、条件4、条件5は、例えば、経験値に基づいて設定されてもよい。例えば、ユーザ端末20、基地局30、POI、Webサーバ40のそれぞれが被疑箇所である状況において収集されたそれぞれのブラウザログの集合に基づいて条件1、条件2、条件3、条件3'、条件4、条件5が設定されてもよい。又は、指標値1〜指標値5について、理論的に求まる正常な値と異常な値との境界が、条件1、条件2、条件3、条件3'、条件4、条件5として設定されてもよい。
【0060】
(実施の形態のまとめ)
以上説明したように、本実施の形態によれば、複数の端末におけるWebページの表示過程において生成されるログ情報を受信する受信部と、前記受信部によって受信された複数のログ情報のそれぞれが含む、前記表示過程における複数の段階のそれぞれの所要時間についての条件を判定することで、前記Webページの表示に関する品質劣化の要因の被疑箇所を推定する推定部と、を有し、前記推定部は、Webページの表示過程において移動体通信事業者網を介して通信を行う端末から生成されたログ情報、及び、Webページの表示過程において前記移動体通信事業者網及び仮想移動体通信事業者網を介して通信を行う端末から生成されたログ情報の両方を用いて、仮想移動体通信事業者網を介して通信を行う端末のWebページの表示に関する品質劣化の要因の被疑箇所を推定する、ことを特徴とする被疑箇所推定装置が提供される。
【0061】
前記推定部は、前記複数のログ情報のうち仮想移動体通信事業者網を介して通信を行う端末から生成されたログ情報について、前記ログ情報に含まれている前記端末の識別情報ごとの第1の集合に分類し、前記第1の集合ごとに、前記ログ情報に含まれている、DNS応答の受信からSYNパケットの送出までの第1の所要時間についての第1の条件と、前記ログ情報に含まれている、3ウェイハンドシェイクの完了からHTTPのGETメッセージの送出までの第2の所要時間についての第2の条件と、を判定し、いずれかの前記第1の集合において、前記第1の条件及び前記第2の条件の少なくともいずれか一方が満たされる場合には、前記端末が前記被疑箇所であると推定する、こととしてもよい。
【0062】
前記推定部は、全ての前記第1の集合について、前記第1の条件及び前記第2の条件の双方が満たされない場合には、前記仮想移動体通信事業者網を介して通信を行う端末から生成されたログ情報を、当該ログ情報に含まれている基地局の識別情報ごとの第2の集合に分類し、前記第2の集合ごとに、前記ログ情報に含まれている、DNSクエリ送出からDNS応答受信までの第3の所要時間についての第3の条件を判定し、いずれかの前記第2の集合において、前記第3の条件が満たされる場合には、前記移動体通信事業者網を介して通信を行う端末から生成されたログ情報から、前記第3の条件が満たされる前記第2の集合に対する基地局の識別情報を持つ第2'の集合を抽出し、前記第2'の集合について前記第3の所要時間に対する第3'の条件を判定し、前記第3'の条件が満たされる場合には、前記基地局が前記被疑箇所であると推定し、前記第3'の条件が満たされない場合には、前記仮想移動体通信事業者網が前記被疑箇所であると推定する、こととしてもよい。
【0063】
前記推定部は、全ての前記第2の集合について、前記第3の条件が満たされない場合には、前記仮想移動体通信事業者網を介して通信を行う端末から生成されたログ情報を、当該ログ情報に含まれるWebサーバの識別情報ごとの第3の集合に分類し、前記第3の集合ごとに、前記ログ情報に含まれている、TCPの3ウェイハンドシェイクの第4の所要時間についての第4の条件と、前記ログ情報に含まれている、HTTPのGETメッセージの送出から最初の応答パケットの受信までの第5の所要時間についての第5の条件と、を判定し、いずれかの前記第3の集合において、前記第4の条件及び前記第5の条件の少なくともいずれか一方が満たされる場合には、前記Webサーバが前記被疑箇所であると推定する、こととしてもよい。
【0064】
前記推定部は、全ての前記第3の集合について、前記第4の条件及び前記第5の条件の双方が満たされない場合には、POIが前記被疑箇所であると推定する、こととしてもよい。
【0065】
前記第1の条件、前記第2の条件、前記第3の条件、前記第3'の条件、前記第4の条件、又は前記第5の条件は、例えば、当該条件の判定に使用される所要時間に対して、非劣化時の所要時間の集合値との分布形状差分があり、且つ、平均値及び分散値について閾値を上回る差分があり、且つ、有意差があることである。
【0066】
なお、本実施の形態において、ユーザ端末20は、端末の一例である。ユーザ端末20aは移動体通信事業者網を介して通信を行う端末の一例である。ユーザ端末20bは移動体通信事業者網及び仮想移動体通信事業者網を介して通信を行う端末の一例である。ブラウザログは、ログ情報の一例である。ログ受信部11は、受信部の一例である。集合Ltは、第1の集合の一例である。集合Lbは、第2の集合の一例である。集合Lcは、第2'の集合の一例である。集合Lsは、第3の集合の一例である。条件1、条件2、条件3、条件3'、条件4、条件5は、第1の条件、第2の条件、第3の条件、第3'の条件、第4の条件、第5の条件の一例である。
【0067】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。