特許第6787974号(P6787974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6787974偏光板、画像表示装置及び偏光板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787974
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】偏光板、画像表示装置及び偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20201109BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20201109BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201109BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20201109BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   G02B5/30
   H01L27/32
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   G02F1/1335 510
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-209166(P2018-209166)
(22)【出願日】2018年11月6日
(65)【公開番号】特開2020-76839(P2020-76839A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2019年10月1日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【弁理士】
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】稲田 清孝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政仁
【審査官】 下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2018/0003860(US,A1)
【文献】 国際公開第2018/016520(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/016285(WO,A1)
【文献】 特開2018−092119(JP,A)
【文献】 特開2018−025630(JP,A)
【文献】 特開2019−184912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の偏光子と、
樹脂を含む少なくとも一対の光学フィルムと、
を備える偏光板であって、
前記偏光子が、前記一対の光学フィルムの間に位置し、且つ前記一対の光学フィルムと重なり、
凹部が、前記偏光板の外周に形成されており、
前記凹部に沿う前記偏光子の端部が、前記偏光板の外周の内側に位置し、
前記一対の光学フィルムと連続する樹脂層が、前記凹部に沿う前記偏光子の端部から前記偏光板の外周にかけて形成され、
前記樹脂層は、互いに融着した前記光学フィルム其々の端部から構成されている、
偏光板。
【請求項2】
前記凹部の内側の隅が曲面である、
請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光子の端部から前記偏光板の外周にかけて形成された前記樹脂層の幅が、10μm以上1000μm以下である、
請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記樹脂層が、前記凹部に沿う前記偏光子の端部に密着している、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記樹脂層が、前記凹部において露出している、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の偏光板を含む、
画像表示装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の偏光板を製造する方法であって、
フィルム状の偏光子と少なくとも一対の光学フィルムを重ねて、積層体を形成する積層工程と、
エンドミルを前記積層体の外周に接触させて、前記エンドミルを前記積層体の外周に沿って移動させる切削工程と、
を備え、
前記積層体において、前記偏光子が前記一対の光学フィルムの間に位置し、
前記切削工程を少なくとも二回繰り返すことにより、前記凹部及び前記樹脂層が形成され、
一回目の前記切削工程における前記エンドミルの送り速度が、100mm/分以上3000mm/分以下であり、
二回目の前記切削工程における前記エンドミルの送り速度が、100mm/分以上300mm/分以下であり、
前記一回目の前記切削工程における前記エンドミルの回転速度が、500rpm以上60000rpm以下であり、
記二回目の前記切削工程における前記エンドミルの回転速度が、10000rpm以上60000rpm以下である、
偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、画像表示装置及び偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶テレビ、有機ELテレビ、スマートフォン、スマートウォッチ、又は自動四輪車若しくは自動二輪車のメーターパネル等の画像表示装置に用いられる。偏光板は、フィルム状の偏光子と、偏光子に重なる光学フィルム(例えば、保護フィルム)と、を備える。画像表示装置の設計上の理由から、偏光板の外周に凹部が形成されることがある。例えば、下記特許文献1には、液晶の注入口として、凹部(切欠き部)を偏光板の外周に形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−155325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏光板は湿度又は温度の変化に伴い、膨張又は収縮する。偏光板の膨張又は収縮に伴う応力は凹部に集中し易く、凹部において亀裂が形成され易い。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、凹部における亀裂を抑制することができる偏光板、当該偏光板を含む画像表示装置、及び偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る偏光板は、フィルム状の偏光子と、樹脂を含む少なくとも一対の光学フィルムと、を備え、偏光子が、一対の光学フィルムの間に位置し、且つ一対の光学フィルムと重なり、凹部が、偏光板の外周に形成されており、凹部に沿う偏光子の端部が、偏光板の外周の内側に位置し、一対の光学フィルムと連続する樹脂層が、凹部に沿う偏光子の端部から偏光板の外周にかけて形成されている。
【0007】
凹部の内側の隅(cоrner)が曲面であってよい。
【0008】
偏光子の端部から偏光板の外周にかけて形成された樹脂層の幅が、10μm以上1000μm以下であってよい。
【0009】
樹脂層が、凹部に沿う偏光子の端部に密着していてよい。
【0010】
樹脂層が、凹部において露出していてよい。
【0011】
本発明の一側面に係る画像表示装置は、上記の偏光板を含む。
【0012】
本発明の一側面に係る偏光板の製造方法は、上記の偏光板を製造する方法であって、フィルム状の偏光子と少なくとも一対の光学フィルムを重ねて、積層体を形成する積層工程と、エンドミルを積層体の外周に接触させて、エンドミル(endmill)を積層体の外周に沿って移動させる切削工程と、を備え、積層体において、偏光子が一対の光学フィルムの間に位置し、切削工程におけるエンドミルの送り速度(feed rate)が、100mm/分以上1000mm/分未満であり、切削工程におけるエンドミルの回転速度が、500rpm以上60000rpm以下であり、切削工程により、凹部及び樹脂層を形成する。
【0013】
切削工程を少なくとも二回繰り返すことにより、凹部及び樹脂層を形成してよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、凹部における亀裂を抑制することができる偏光板、当該偏光板を含む画像表示装置、及び偏光板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る偏光板の表面(受光面)を示す模式図である。
図2図2は、図1に示される偏光板の断面のII‐II線方向の矢視図である。
図3図3は、図2に示される偏光板の断面の変形例である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る偏光板の製造方法において形成される積層体の分解斜視図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る偏光板の製造方法に用いるエンドミルと、エンドミルで切削される積層体の模式図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る偏光板の製造方法が備える切削工程におけるエンドミルの移動経路の一例を示す模式図である。
図7図7中の(a)は、本発明の他の実施形態に係る偏光板の上面の変形例を示す模式図であり、図7中の(b)も、本発明の他の実施形態に係る偏光板の上面の変形例を示す模式図である。
図8図8は、本発明の実施例1の偏光板の凹部における断面の写真である。
図9図9は、本発明の実施例1の偏光板の凹部における断面の写真であり、図8における偏光子、一対の光学フィルム及び樹脂層の配置を示す。
図10図10は、本発明の実施例2の偏光板の凹部における断面の写真である。
図11図11は、比較例3の偏光板の凹部における断面の写真である。
図12図12は、本発明の実施例4の偏光板の凹部における断面の写真である。
図13図13は、比較例5の偏光板の凹部における断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。図面において、同等の構成要素には同等の符号を付す。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。各図に示すX,Y及びZは、互いに直交する3つの座標軸を意味する。各図中のXYZ座標軸其々が示す方向は各図に共通する。
【0017】
(偏光板)
図1は、本実施形態に係る偏光板1の表面(受光面)を示す。図2に示される偏光板1の断面は、偏光板1の表面(受光面)に垂直であり、且つ凹部2の内側に位置する偏光板1の外周1pと直交する。
【0018】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る偏光板1は、少なくとも一対の光学フィルム(5,9)と、一対の光学フィルム(5,9)の間に位置するフィルム状の偏光子7を備える。以下では、説明の便宜上、偏光子7と一対の光学フィルム(5,9)から構成される偏光板1が主に説明される。ただし後述の通り、偏光板が備える光学フィルムの数は二枚に限定されない。
【0019】
「光学フィルム」とは、偏光板1を構成するフィルム状の部材(偏光子7自体を除く。)を意味する。例えば、光学フィルムは、保護フィルム及び離型フィルムを含意する。個々の光学フィルムは単独で特定の光学的機能を有していなくてもよい。「フィルム」(光学フィルム)は、「層」(光学層)と言い換えられてよい。一対の光学フィルム(5,9)其々は樹脂を含む。ただし、光学フィルム(5,9)其々の組成は限定されない。
【0020】
偏光子7は、光学フィルム(5,9)其々と直接的又は間接的に重なっている。例えば、偏光子7と光学フィルム(5,9)との間に別の光学フィルムがあってよい。偏光子7が接着層を介して光学フィルム(5,9)其々と重なっていてもよい。
【0021】
図1に示されるように、凹部2が、偏光板1の外周1pに形成されている。つまり、偏光板1の外周1pには凹部2がある。凹部2は、窪み、切欠き(cutоut)又はノッチ(nоtch)と言い換えられてよい。凹部2は、偏光板1の表面(受光面)に垂直な方向(Z軸方向)において偏光板1を貫通していてよい。偏光板1の外周1pとは、偏光板1の受光面に垂直な方向から見られる偏光板1(受光面)の外縁又は輪郭と言い換えられてよい。凹部2に沿う偏光子7の端部7eの一部又は全体は、偏光板1の外周1pの内側に位置する。一対の光学フィルム(5,9)と連続する樹脂層4が、凹部2に沿う偏光子7の端部7eから偏光板1の外周1pにかけて形成されている。つまり樹脂層4は、一対の光学フィルム(5,9)其々と継ぎ目なく(seamlessに)繋がっている。樹脂層4は凹部2において露出していてよい。つまり、凹部2に位置する偏光板1の端面の一部又は全体が樹脂層4であってよい。一方、凹部2に沿う偏光子7の端部7e(端面)は、凹部2において露出する樹脂層4で覆われていてよい。
【0022】
仮に樹脂層4がない場合、偏光子7及び光学フィルム(5,9)其々の端部が凹部2において露出する。湿度又は温度の変化に伴う偏光子7及び光学フィルム(5,9)其々の収縮率又は膨張率は異なる。したがって、湿度又は温度の変化に伴って、偏光子7及び光学フィルム(5,9)其々の端部が露出した凹部2に応力が集中し易く、応力に起因する亀裂が凹部2に形成され易い。さらに、偏光子7がポリビニルアルコールとヨウ素とから構成される錯体を含む場合、凹部2に露出した偏光子7は湿気、熱又は光(紫外線)に曝されることによって劣化し易く、凹部2に露出した偏光子7において亀裂が形成され易い。また仮に樹脂層4がない場合、偏光子7と光学フィルム(5,9)との境界(偏光子7と光学フィルム(5,9)との間の界面)が凹部2において露出する。応力が凹部2に集中することにより、偏光子7と光学フィルム(5,9)との境界近傍に亀裂が形成され易い。また、偏光子7と光学フィルム(5,9)との境界を介して、湿気が凹部2から偏光板1内に侵入することにより、偏光子7及び光学フィルム(5,6)其々が劣化し易く、偏光子7及び光学フィルム(5,6)の剥離が起き易く、偏光板1の凹部2における亀裂が形成され易い。
【0023】
一方、本実施形態では、凹部2に沿う偏光子7の端部7eは偏光板1の外周1pの内側に位置し、樹脂層4が偏光子7の端部7eから偏光板1の外周1pにかけて形成されている。つまり本実施形態では、偏光子7の端部7eは凹部2において露出せず、偏光子7の端部7eは樹脂層4によって偏光板1の内部に封止されている。つまり樹脂層4が偏光子7の端部7eを保護している。したがって本実施形態では、偏光子7の端部7eが凹部2に露出している場合に比べて、偏光子7及び光学フィルム(5,9)其々の収縮率又は膨張率の差に起因する応力が凹部2に作用し難く、応力に起因する亀裂が凹部2に形成され難い。また偏光子7の端部7eが凹部2に露出せずに樹脂層4で覆われているので、偏光子7が湿気、熱又は光(紫外線)に直接曝され難く、偏光子7が劣化し難く、偏光子7における亀裂が抑制される。さらに本実施形態では、樹脂層4が凹部2において露出しているので、偏光子7と光学フィルム(5,9)との境界は凹部2において露出しない。したがって、偏光子7と光学フィルム(5,9)との境界近傍において亀裂が形成され難い。また偏光子7と光学フィルム(5,9)との境界が凹部2に露出せず、樹脂層4が凹部2において露出しているので、湿気が凹部2から偏光板1内に侵入し難い。しがって、偏光子7及び光学フィルム(5,6)其々の劣化が抑制され、偏光子7及び光学フィルム(5,6)の剥離が抑制され、偏光板1の凹部2において亀裂が形成され難い。以上の理由から、本実施形態によれば、凹部2(特に凹部2の内側の隅2c)における亀裂を抑制することが可能になる。
【0024】
偏光子7の全体が偏光板1の外周1pの内側に位置してよく、偏光子7の端部7eの全域が樹脂層4で覆われていてよい。つまり偏光子7の全体が樹脂層4で囲まれていてよい。偏光子7の全体が偏光板1の外周1pの内側に位置し、偏光子7の全体が樹脂層4で囲まれることにより、偏光板1の外周1pの全域において亀裂が抑制される。
【0025】
凹部2の内側の隅2cが曲面であってよい。つまり、凹部2の内側の隅2cに位置する偏光板1の端面が曲面であってよい。つまり、凹部の内側の隅2cが面取り(chamfer)されていてよい。凹部2の内側の隅2cが曲面であることにより、凹部2の内側の隅2cにおける亀裂が抑制され易い。図1に示されるように、凹部2の両端に位置する角部、及び偏光板1の四隅に位置する角部其々も面取りされていてよい。
【0026】
凹部2に沿う偏光子7の端部7eから偏光板1の外周1pにかけて形成された樹脂層4の幅4wは、10μm以上1000μm以下であってよい。樹脂層4の幅4wとは、偏光板1の外周1p(凹部2に位置する偏光板1の端面)に対して垂直であり、且つ偏光板1の表面(受光面)に平行な方向における樹脂層4の幅と言い換えられてよい。樹脂層4の幅4wが10μm以上であることにより、偏光板1の凹部2における亀裂が抑制され易い。同様の理由から、樹脂層4の幅4wは、15μm以上100μm以下、又は27μm以上46μm以下であってもよい。
【0027】
樹脂層4は、凹部2に沿う偏光子7の端部7eの一部又は全体に密着していてよい。樹脂層4が偏光子7の端部7eに密着することにより、偏光子7の端部7eにおける亀裂が抑制され易い。ただし、樹脂層4と偏光子7の端部7eとの間に隙間が形成されていてもよい。
【0028】
樹脂層4において、光学フィルム(5,9)其々の端部が互いに接着又は融着していてよい。接着とは、接着剤を介して上下の光学フィルム(5,9)が密着している状態をいう。融着とは、接着剤を介さず上下の光学フィルム(5,9)が直接密着している状態をいう。つまり樹脂層4は、互いに接着又は融着した光学フィルム(5,9)の端部から構成されていてよい。樹脂層4を構成する光学フィルム(5,9)の端部が互いに接着又は融着していることにより、偏光子7の端部7eが凹部2に露出し難く、偏光子7の端部7eが偏光板1の内部に封止され易く、凹部2における亀裂が抑制され易い。樹脂層4は、光学フィルム(5,9)に含まれる成分のみならなっていてよい。樹脂層4は、光学フィルム(5,9)に含まれる成分に加えて他の成分を更に含んでもよい。他の成分とは、例えば、偏光子7及び接着層のうち一方又は両方に由来する成分であってよい。樹脂層4において、一対の光学フィルム(5,9)其々の端部が一体化又は融合されていてよい。つまり樹脂層4において、一対の光学フィルム(5,9)の間の境界(界面)はなくてよい。
【0029】
凹部2の幅(X軸方向における凹部2の幅)は、特に限定されないが、例えば、3mm以上160mm以下であってよい。凹部2の深さ(Y軸方向における凹部2の幅)は、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上160mm以下であってよい。凹部2が形成されている偏光板1の辺(短辺)の長さは、特に限定されないが、例えば、30mm以上90mm以下であってよい。凹部2が形成されていない偏光板1の辺(長辺)の長さは、特に限定されないが、例えば、30mm以上170mm以下であってよい。偏光板1全体の厚みは、特に限定されないが、例えば、30μm以上300μm以下であってよい。
【0030】
図1に示される凹部2は四角形状(長方形状)である。ただし、凹部2の形状は限定されない。例えば、凹部2は正方形状であってもよい。凹部2は、四角形及び三角形以外の他の多角形であってもよい。例えば図7中の(a)に示すように、凹部2の形状は、半円であってもよい。図7中の(b)に示すように、凹部2の形状は、三角形であってもよい。凹部2全体が曲線状であってもよい。凹部2が直線と曲線とから構成されていてもよい。図1図7中の(a)及び図7中の(b)に示される偏光板1の形状はいずれも対称性を有しているが、偏光板1の形状は非対称的であってもよい。複数の凹部2が偏光板1の外周1pに形成されていてもよい。複数の凹部2が、偏光板1の外周1pを構成する一つの辺に形成されてもよい。四角形状の偏光板1の四つの角部のうち少なくとも一つの角部が切り欠かれることにより、凹部2が形成されてよい。
【0031】
凹部2を除く偏光板1の全体的な形状は、ほぼ四角形(長方形)である。ただし、偏光板1の形状は限定されない。たとえば、偏光板1の形状は正方形であってもよい。偏光板1の形状は、四角形以外の多角形、円形、又は楕円形であってもよい。偏光子7及び光学フィルム(5,9)其々の全体的な形状は、偏光板1の形状と略同じであってよい。図1に示される長方形状の偏光板1の場合、凹部2は偏光板1の短辺に形成されているが、凹部2は偏光板1の長辺に形成されていてもよい。
【0032】
偏光子7は、延伸、染色及び架橋等の工程によって作製されたフィルム状のポリビニルアルコール系樹脂(PVAフィルム)であってよい。偏光子7の作成方法の詳細は以下の通りである。
【0033】
例えば、まず、PVAフィルムを、一軸方向又は二軸方向に延伸する。一軸方向に延伸された偏光子7の二色比は高い傾向がある。延伸に続いて、染色液を用いて、PVAフィルムをヨウ素、二色性色素(ポリヨウ素)又は有機染料によって染色する。染色液は、ホウ酸、硫酸亜鉛、又は塩化亜鉛を含んでいてもよい。染色前にPVAフィルムを水洗してもよい。水洗により、PVAフィルムの表面から、汚れ及びブロッキング防止剤が除去される。また水洗によってPVAフィルムが膨潤する結果、染色の斑(不均一な染色)が抑制され易い。染色後のPVAフィルムを、架橋のために、架橋剤の溶液(例えば、ホウ酸の水溶液)で処理する。架橋剤による処理後、PVAフィルムを水洗し、続いて乾燥する。以上の手順を経て、偏光子7が得られる。ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル、又は、酢酸ビニルと他の単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)であってよい。酢酸ビニルと共重合する他の単量体は、エチレンの他に、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、又はアンモニウム基を有するアクリルアミド類であってよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、アルデヒド類で変性されていてもよい。変性されたポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、又はポリビニルブチラールであってよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールの脱水処理物、又はポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルムであってよい。延伸前に染色を行ってもよく、染色液中で延伸を行ってもよい。延伸された偏光子7の長さは、例えば、延伸前の長さの3〜7倍であってよい。
【0034】
偏光子7の厚みは、例えば、1μm以上50μm以下、又は3μm以上15μm以下であってよい。偏光子7が薄いほど、温度変化に伴う偏光子7自体の収縮又は膨張が抑制され、偏光子7自体の寸法の変化が抑制される。その結果、応力が偏光子7に作用し難く、偏光子7における亀裂が抑制され易い。
【0035】
以下では、説明の便宜上、一対の光学フィルム(5,9)のうち一方は第一光学フィルム5と表記され、他方は第二光学フィルム9と表記される。
【0036】
第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9其々は、透光性を有する熱可塑性樹脂であってよい。第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9其々は、光学的に透明な熱可塑性樹脂であってもよい。第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9其々を構成する樹脂は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、又はこれらの混合物若しくは共重合体であってよい。第一光学フィルム5の組成は、第二光学フィルム9の組成と全く同じであってよい。例えば、第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9其々が環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)を含んでよい。第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9其々が環状オレフィンポリマー系樹脂(COP系樹脂)を含む場合、本発明の効果が得られ易い。第一光学フィルム5の組成は、第二光学フィルム9の組成と異なっていてもよい。第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9其々のガラス転移温度は、100℃以上200℃以下、又は120℃以上150℃以下であることが好ましい。第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9其々のガラス転移温度が上記範囲である場合、各光学フィルムの端部の研磨によって発生する熱により、第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9が互いに融着し易い。
【0037】
鎖状ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体であってよい。鎖状ポリオレフィン系樹脂は、二種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体であってもよい。
【0038】
環状オレフィンポリマー系樹脂(環状ポリオレフィン系樹脂)は、例えば、環状オレフィンの開環(共)重合体、又は環状オレフィンの付加重合体であってよい。環状オレフィンポリマー系樹脂は、例えば、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体(例えば、ランダム共重合体)であってよい。共重合体を構成する鎖状オレフィンは、例えば、エチレン又はプロピレンであってよい。環状オレフィンポリマー系樹脂は、上記の重合体を不飽和カルボン酸若しくはその誘導体で変性したグラフト重合体、又はそれらの水素化物であってもよい。環状オレフィンポリマー系樹脂は、例えば、ノルボルネン又は多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂であってよい。
【0039】
セルロースエステル系樹脂は、例えば、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース(TAC))、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート又はセルロースジプロピオネートであってよい。これらの共重合物を用いてもよい。水酸基の一部が他の置換基で修飾されたセルロースエステル系樹脂を用いてもよい。
【0040】
セルロースエステル系樹脂以外のポリエステル系樹脂を用いてもよい。ポリエステル系樹脂は、例えば、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体であってよい。多価カルボン酸又はその誘導体は、ジカルボン酸又はその誘導体であってよい。多価カルボン酸又はその誘導体は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、又はナフタレンジカルボン酸ジメチルであってよい。多価アルコールは、例えば、ジオールであってよい。多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、又はシクロヘキサンジメタノールであってよい。
【0041】
ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、又はポリシクロヘキサンジメチルナフタレートであってよい。
【0042】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介して重合単位(モノマー)が結合された重合体である。ポリカーボネート系樹脂は、修飾されたポリマー骨格を有する変性ポリカーボネートであってよく、共重合ポリカーボネートであってもよい。
【0043】
(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA));メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(例えば、MS樹脂);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)であってよい。
【0044】
第一光学フィルム5又は第二光学フィルム9其々は、滑剤、可塑剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、及び酸化防止剤からな群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を含んでよい。
【0045】
第一光学フィルム5の厚みは、例えば、5μm以上90μm以下、又は10μm以上60μm以下であってよい。第二光学フィルム9の厚みも、例えば、5μm以上90μm以下、又は10μm以上60μm以下であってよい。
【0046】
第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9のうち少なくとも一方は、光学機能を有するフィルムであってよい。光学機能を有するフィルムとは、例えば、位相差フィルム又は輝度向上フィルムであってよい。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムが得られる。
【0047】
第一光学フィルム5は、接着層を介して、偏光子7に重ねられてよい。第二光学フィルム9も、接着層を介して、偏光子7に重ねられてよい。接着層は、ポリビニルアルコール等の水系接着剤を含んでよい。接着層は、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでもよい。
【0048】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線を照射されることにより、硬化する樹脂である。活性エネルギー線は、例えば、紫外線、可視光、電子線、又はX線であってよい。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であってよい。
【0049】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、一種の樹脂であってよく、複数種の樹脂を含んでもよい。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂は、カチオン重合性の硬化性化合物、又はラジカル重合性の硬化性化合物を含んでよい。活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤を含んでよい。
【0050】
カチオン重合性の硬化性化合物は、例えば、エポキシ系化合物(分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物)、又はオキセタン系化合物(分子内に少なくとも一つのオキセタン環を有する化合物)であってよい。ラジカル重合性の硬化性化合物は、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に少なくとも一つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)であってよい。ラジカル重合性の硬化性化合物は、ラジカル重合性の二重結合を有するビニル系化合物であってもよい。
【0051】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、必要に応じて、カチオン重合促進剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、又は溶剤等を含んでよい。
【0052】
(画像表示装置)
本実施形態に係る画像表示装置は、上記の偏光板1を含む。画像表示装置は、例えば、液晶表示装置又は有機EL表示装置等であってよい。例えば、液晶表示装置が有する液晶パネルが、液晶セルと、液晶セルの一方の表面に重なる上記偏光板1を備えてよい。または、液晶表示装置が有する液晶パネルが、一対の上記偏光板1と、一対の上記偏光板1の間に配置され、各偏光板1と重なる液晶セルを備えていてもよい。偏光板1は、接着層又は粘着層を介して液晶セルに重ねられてよい。
【0053】
(偏光板の製造方法)
本実施形態に係る偏光板1の製造方法は、フィルム状の偏光子と少なくとも一対の光学フィルムを重ねて、積層体を形成する積層工程と、エンドミルを積層体の外周に接触させて、エンドミルを積層体の外周に沿って移動させる切削工程と、を備える。
【0054】
積層工程では、長尺な帯状の偏光子フィルムと、少なくとも一対の長尺な帯状の光学フィルムを重ねて互いに貼合することにより、積層体(第一積層体)を作製する。長尺な帯状の偏光子フィルムとは、加工・成形前の偏光子7である。長尺な帯状の複数の光学フィルムとは、加工・成形前の光学フィルム(5,9)である。積層工程では、偏光子フィルムが一対の光学フィルムの間に配置されるように、偏光子フィルム及び一対の光学フィルムが重ねられる。つまり図4に示されるように、第一積層体10において、偏光子7は一対の光学フィルム(5,9)の間に位置する。第一積層体10の切断により、第一積層体10の寸法が、加工し易い寸法へ調整されてよい。図4に示されるように、切削工程前の第一積層体10の外周全域において、偏光子7及び光学フィルム(5,9)其々の端部の位置は揃っていてよい。
【0055】
切削工程の前に、打ち抜き加工、又は切断加工によって、第一積層体の外周に凹部を形成してもよい。切断加工の手段としては、刃物又はレーザーが用いられてよい。ただし、打ち抜き加工又は切断加工だけでは、上述の樹脂層を形成することは困難であり、偏光子が凹部において露出し易い。
【0056】
図5及び図6に示されるように、切削工程に用いられるエンドミル50は、その回転軸線50aに略平行な側面において突出する刃(エッジ)50eを有している。切削工程では、エンドミル50の側面を第一積層体10の外周(端面)に接触させて、回転するエンドミル50を第一積層体10の外周に沿って移動させる。例えば、回転するエンドミル50を図6中の矢印で示される経路に沿って移動させてよい。その結果、第一積層体10の外周(端面)が刃50eによって切削又は研磨され、第一積層体10の外周(端面)が平滑になり、凹部2が形成され、凹部2の内側の隅が面取りされる。図5に示されるように、複数の第一積層体10を重ねて、第二積層体100を形成した後、エンドミル50の側面を第二積層体100の外周(端面)に接触させて、回転するエンドミル50を第二積層体100の外周に沿って移動させてもよい。つまり切削工程では、第二積層体100を構成する複数の第一積層体10の外周をエンドミル50で一括して切削又は研磨してよい。切削工程では、凹部2の両端に位置する角部、及び第一積層体10の四隅に位置する角部其々が面取りされていてよい。
【0057】
切削工程では、エンドミル50と第一積層体10の端面との摩擦によって、摩擦熱が発生する。この摩擦熱によって、凹部2に露出する光学フィルム(5,9)其々の端部が互いに融着して、樹脂層4が形成される切削工程を少なくとも二回繰り返すことにより、凹部2及び樹脂層4が形成されてもよい。切削工程が繰り返される場合、一回目の切削工程により、第一積層体10が粗く加工されてよい。つまり、一回目の切削工程によって、凹部2の寸法及び形状が粗く調整されたり、凹部2の内側の隅2cが面取されたりしてよい。二回目の切削工程により、第一積層体10が偏光板1へ仕上げられてよい。切削工程が少なくとも二回繰り返されることにより、樹脂層4が形成され易く、第一積層体10の端面にある凹凸(亀裂の一因)が低減され、第一積層体10の端面が十分に平滑になり易い。その結果、偏光板1の凹部2におけるクラックを抑制し易い。
【0058】
切削工程は三回以上繰り返されてもよい。例えば、三回目の切削工程では、第一積層体10を殆ど切削することになく、二回目の切削工程において生じた切り屑を第一積層体10の端面から除去してよい。各切削工程では、複数のエンドミルを用いてよい。
【0059】
切削工程におけるエンドミルの送り速度は、100mm/分以上1000mm/分未満であってよい。エンドミルの送り速度が100mm/分以上である場合、樹脂層4が形成され易い。ただしエンドミルの送り速度1000mm/分以上である場合、樹脂層4が形成され難く、偏光子7が凹部において露出し易い。樹脂層4が形成され易いことから、切削工程におけるエンドミルの送り速度は、100mm/分以上500mm/分以下、又は100mm/分以上300mm/分以下であってもよい。
【0060】
樹脂層4が形成され易く、偏光板1の凹部2における亀裂を抑制し易いことから、切削工程におけるエンドミルの回転速度は、例えば、500rpm以上60000rpm以下、好ましくは10000rpm以上60000rpm以下であってよい。樹脂層4が形成され易く、偏光板1の凹部2における亀裂を抑制し易いことから、切削工程における切削角度は、例えば、30°以上70°以下、好ましくは45°以上65°以下であってよい。エンドミル50のねじれ角がαである場合、切削角度βは90°−αと定義される。図5に示されるように、エンドミル50のねじれ角αは、エンドミル50の側面において刃50eが延びる方向d1とエンドミル50の回転軸線50aがなす角度である。切削角度βは、刃50eが延びる方向d1と回転軸線50aに垂直な方向d2がなす角度と言い換えられてもよい。樹脂層4が形成され易く、偏光板1の凹部2における亀裂を抑制し易いことから、切削工程に用いるエンドミル50の直径φ(太さ)は、例えば、3.0mm以上6.0mm以下であってよい。
【0061】
切削工程におけるエンドミル50の送り速度は、V[m/分]又はV/60[m/秒]と表されてよい。切削工程におけるエンドミル50の回転速度は、R[rpm]又はR/60[rps]と表されてよい。切削工程におけるエンドミル50の当接回数は、R/V[回/m]と定義される。当接回数は、第一積層体10の外周の単位長さ(1m)にエンドミル50が接触する回数を意味する。当接回数R/Vが大きいほど、エンドミル50と第一積層体10との摩擦によって生じる熱が大きく、光学フィルム(5,9)其々の端部が互いに融着し易く、樹脂層4が形成され易い。以上の理由から、切削工程におけるエンドミル50の当接回数R/Vは、40,000回/m以上500,000回/m以下、80,000回/m以上400,000回/m以下、又は100,000回/m以上300,000回/m以下であることが好ましい。
【0062】
樹脂層4の幅4wは、上記の切削工程において制御され得る。樹脂層4の幅4wは、切削工程以外の方法によって制御されてもよい。例えば、高温の金属製工具を第一積層体10の外周へ接触させる方法によって、樹脂層4の幅4wが制御されてよい。この方法の場合、金属製工具の温度は、100℃以上300℃以下、又は150℃以上250℃以下であってよい。高温の金属製工具を第一積層体10の外周へ接触させる方法によれば、樹脂層4の幅4wを大きくし易い。
【0063】
以上の方法により、本実施形態に係る偏光板1が得られる。
【0064】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0065】
例えば、偏光板は、一対の光学フィルム加えて、樹脂を含む別の光学フィルムを更に備えてよい。つまり、偏光板は、3枚以上の光学フィルムを備えていてよい。樹脂層は、一対の光学フィルムに加えて更に別の光学フィルムと連続していてよい。換言すれば、樹脂層は3枚以上の光学フィルムと連続していてよい。例えば、図3に示されるように、偏光板が、第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9と、第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9の間に位置する偏光子7と、第一光学フィルム5に重なる第三光学フィルム3を備えてよく、樹脂層4が、第一光学フィルム5、第二光学フィルム9及び第三光学フィルム3と連続していてよい。第三光学フィルム3は、上述の接着層を介して第一光学フィルム5に重ねられてよい。第三光学フィルム3に含まれる樹脂は、第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9其々に含まれる樹脂として列挙された上記の樹脂のうち少なくともいずれかであってよい。第三光学フィルム3の組成は、第一光学フィルム5の組成と同じであってよい。第三光学フィルム3の組成は、第一光学フィルム5の組成と異なってもよい。第三光学フィルム3の組成は、第二光学フィルム9の組成と同じであってよい。第三光学フィルム3の組成は、第二光学フィルム9の組成と異なってもよい。第三光学フィルム3の厚みは、例えば、5μm以上200μm以下であってよい。第三光学フィルム3が樹脂層4と連続していない場合、第三光学フィルム3は、画像表示装置の製造過程において、偏光板から剥離され、除去されてよい。つまり、第三光学フィルム3は、仮の保護フィルムであってよい。
【0066】
偏光板は、一対の光学フィルムのうち一方に重なる粘着層と、粘着層に重なる離型フィルムを更に備えてよい。例えば、図3に示される偏光板は、第二光学フィルム9に重なる粘着層と、粘着層に重なる離型フィルムを更に備えてよい。粘着層は、例えば、アクリル系感圧型接着剤、ゴム系感圧型接着剤、シリコーン系感圧型接着剤、又はウレタン系感圧型接着剤などの感圧型接着剤を含んでよい。粘着層の厚みは、例えば、2μm以上100μm以下であってよい。離型フィルムに含まれる樹脂は、第一光学フィルム5及び第二光学フィルム9其々に含まれる樹脂として列挙された上記の樹脂のうち少なくともいずれかであってよい。離型フィルムの組成は、第一光学フィルム5の組成と同じであってよい。離型フィルムの組成は、第一光学フィルム5の組成と異なってもよい。離型フィルムの組成は、第二光学フィルム9の組成と同じであってよい。離型フィルムの組成は、第二光学フィルム9の組成と異なってもよい。離型フィルムの厚みは、例えば、10μm以上100μm以下であってよい。離型フィルムは、画像表示装置の製造過程において、偏光板から剥離され、除去されてよい。離型フィルムが、粘着層を介して、偏光板の両面に配置されていてもよい。
【0067】
偏光板は、光学フィルム又は層として、反射型偏光フィルム、防眩機能付フィルム、表面反射防止機能付フィルム、反射フィルム、半透過反射フィルム、視野角補償フィルム、ウインドウフィルム、帯電防止層、ハードコート層、光学補償層、タッチセンサー層、及び防汚層からなる群より選ばれる少なくとも一種を更に備えてよい。
【実施例】
【0068】
以下では実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
一対の光学フィルムを、接着層を介して偏光子に貼合することにより、第一積層体を形成した。第一積層体の長方形状であった。第一積層体において、偏光子は一対の光学フィルムの間に配置された。一対の光学フィルムはいずれも、環状オレフィンポリマー系樹脂から構成されていた。偏光子は、延伸され、且つ染色されたフィルム状のポリビニルアルコールであった。
【0070】
偏光子の一方の表面に貼合された光学フィルムの厚みは、52μmであった。偏光子の他方の表面に貼合された光学フィルムの厚みは、21μmであった。偏光子の厚みは、8μmであった。偏光板全体の厚みは、101μmであった。厚みが52μmである光学フィルムと偏光子との間に介在する接着層は、ポリビニルアルコール系樹脂(水糊)であった。厚みが21μmである光学フィルムと偏光子との間に介在する接着層は、UV硬化性エポキシ樹脂であった。
【0071】
47枚の第一積層体其々の打ち抜き加工により、各第一積層体の短辺に凹部を形成した。凹部が形成された47枚の第一積層体を重ね合わせることにより、第二積層体を作製した。
【0072】
打ち抜き加工後、下記の三回の切削工程を実施した。いずれの切削工程においても、第二積層体をクランプで固定して、エンドミルの側面を第二積層体の外周(端面)に接触させた状態で、回転するエンドミルを第二積層体の外周(凹部を含む外周)に沿って移動させた。つまり、47枚の第一積層体其々の外周全体を一括してエンドミルで切削した。各切削工程に用いたエンドミルは、日進工具株式会社製のDXL‐4であった。切削角度βは、下記表1に示される値であった。エンドミルの直径φは、4mmであった。
【0073】
一回目の切削工程におけるエンドミルの回転速度(R)は、下記表1に示される値であった。一回目の切削工程におけるエンドミルの送り速度(V)は、下記表1に示される値であった。一回目の切削工程におけるエンドミルの当接回数(R/V)は、下記表1に示される値であった。一回目の切削工程における削り量は、下記表1に示される値であった。
【0074】
二回目の切削工程におけるエンドミルの回転速度(R)は、下記表1に示される値であった。二回目の切削工程におけるエンドミルの送り速度(V)は、下記表1に示される値であった。二回目の切削工程におけるエンドミルの当接回数(R/V)は、下記表1に示される値であった。二回目の切削工程における削り量は、下記表1に示される値であった。
【0075】
三回目の切削工程におけるエンドミルの回転速度(R)は、30000rpmであった。三回目の切削工程におけるエンドミルの送り速度(V)は、700mm/分であった。三回目の切削工程におけるエンドミルの当接回数(R/V)は約42857回/mであった。三回目の切削工程における削り量は、0μmであった。
【0076】
以上の方法により、47枚の実施例1の偏光板を作製した。各偏光板の形状、寸法及び積層構造は同じであった。各偏光板の全体の形状は、長方形であった。図1に示されるように、四角形状の凹部2が、偏光板1の短辺に形成されていた。偏光板1の短辺の長さは70mmであった。偏光板1の長辺の長さは140mmであった。凹部2の幅は、30mmであった。凹部2の深さは、5mmであった。
【0077】
偏光板1の表面(受光面)に垂直であり、且つ凹部2の内側に直交する方向において、偏光板1を切断した。この偏光板1の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEMで撮影された断面は、図8及び図9に示される。図8及び図9のいずれも、同じ断面の写真であり、図1に示されるII‐II線方向における断面の矢視図に相当する。図8及び図9其々に示される偏光板の左端は、凹部における偏光板の端面に相当する。SEMを用いた観察の結果、凹部2に沿う偏光子7の端部7eが、偏光板1の外周1pの内側に位置していることが確認された。また、一対の光学フィルム(5,9)と連続する樹脂層4が、凹部2に沿う偏光子7の端部7eから偏光板1の外周1pにかけて形成されていることが確認された。樹脂層4は、一対の光学フィルム(5,9)が融着することにより、形成されていた。図9に示される樹脂層4の幅4wは、下記表1に示される。
【0078】
以下、ヒートサイクル試験を行った。ヒートサイクル試験では、下記のステップ1と、ステップ1に続くステップ2と、ステップ2に続くステップ3とからなるサイクルを10回繰り返した。
ステップ1: 上記の偏光板を第一雰囲気中に30分保持するステップ。
ステップ2: 上記の偏光板を第二雰囲気中に5分保持するステップ。
ステップ3: 上記の偏光板を第三雰囲気中に30分保持するステップ。
第一雰囲気の温度は−40℃であり、第一雰囲気の相対湿度は、11%であった。
第二雰囲気の温度は23℃であり、第二雰囲気の相対湿度は、9%であった。
第三雰囲気の温度は85℃であり、第二雰囲気の相対湿度は、7%であった。
【0079】
ヒートサイクル試験後、偏光板の凹部に沿って偏光板の表面を光学顕微鏡で観察することにより、偏光板の凹部に形成されている亀裂の数を数えた。亀裂の数は、下記表1に示される。
【0080】
(実施例2)
実施例2の場合、打ち抜き加工後、二回の切削工程を実施したが、三回目の切削工程は実施しなかった。一回目の切削工程の諸条件は下記表1に示される。二回目の切削工程の諸条件は下記表1に示される。切削工程を除いて実施例1と同様の方法で、実施例2の偏光板を作製した。実施例1と同様の方法で、実施例2の偏光板の断面を観察した。実施例2の偏光板の断面は、図10に示される。観察の結果、凹部に沿う偏光子の端部が、偏光板の外周の内側に位置していることが確認された。また、一対の光学フィルムと連続する樹脂層が、凹部に沿う偏光子の端部から偏光板の外周にかけて形成されていることが確認された。樹脂層4は、一対の光学フィルム(5,9)が融着することにより、形成されていた。図10に示される樹脂層4の幅4wは、下記表1に示される。実施例1と同様の方法で実施例2のヒートサイクル試験を実施した。ヒートサイクル試験後の実施例2の偏光板の凹部に形成されている亀裂の数は、下記表1に示される。
【0081】
(比較例3)
比較例3の場合、打ち抜き加工後、二回の切削工程を実施したが、三回目の切削工程は実施しなかった。一回目の切削工程の諸条件は下記表1に示される。二回目の切削工程の諸条件は下記表1に示される。切削工程を除いて実施例1と同様の方法で、比較例3の偏光板を作製した。実施例1と同様の方法で、比較例3の偏光板の断面を観察した。比較例3の偏光板の断面は、図11に示される。観察の結果、偏光子の端部が凹部において露出していることが確認された。つまり比較例3の場合、一対の光学フィルムと連続する樹脂層が、凹部に沿う偏光子の端部から偏光板の外周にかけて形成されていなかった。実施例1と同様の方法で比較例3のヒートサイクル試験を実施した。ヒートサイクル試験後の比較例3の偏光板の凹部に形成されている亀裂の数は、下記表1に示される。
【0082】
(実施例4)
実施例4の場合、打ち抜き加工後、二回の切削工程を実施したが、三回目の切削工程は実施しなかった。各切削工程に用いたエンドミルは、ツールドインターナショナル株式会社製の7Leadersであった。切削角度βは、下記表1に示される値であった。一回目の切削工程の諸条件は下記表1に示される。二回目の切削工程の諸条件は下記表1に示される。切削工程を除いて実施例1と同様の方法で、実施例4の偏光板を作製した。実施例1と同様の方法で、実施例4の偏光板の断面を観察した。実施例4の偏光板の断面は、図12に示される。観察の結果、凹部に沿う偏光子の端部が、偏光板の外周の内側に位置していることが確認された。また、一対の光学フィルムと連続する樹脂層が、凹部に沿う偏光子の端部から偏光板の外周にかけて形成されていることが確認された。樹脂層4は、一対の光学フィルム(5,9)が融着することにより、形成されていた。図12に示される樹脂層4の幅4wは、下記表1に示される。実施例1と同様の方法で実施例4のヒートサイクル試験を実施した。ヒートサイクル試験後の実施例4の偏光板の凹部に形成されている亀裂の数は、下記表1に示される。
【0083】
(比較例5)
比較例5の場合、打ち抜き加工後、二回の切削工程を実施したが、三回目の切削工程は実施しなかった。各切削工程に用いたエンドミルは、ツールドインターナショナル株式会社製の7Leadersであった。切削角度βは、下記表1に示される値であった。一回目の切削工程の諸条件は下記表1に示される。二回目の切削工程の諸条件は下記表1に示される。切削工程を除いて実施例1と同様の方法で、比較例5の偏光板を作製した。実施例1と同様の方法で、比較例5の偏光板の断面を観察した。比較例5の偏光板の断面は、図13に示される。観察の結果、偏光子の端部が凹部において露出していることが確認された。つまり比較例3の場合、一対の光学フィルムと連続する樹脂層が、凹部に沿う偏光子の端部から偏光板の外周にかけて形成されていなかった。実施例1と同様の方法で比較例5のヒートサイクル試験を実施した。ヒートサイクル試験後の比較例5の偏光板の凹部に形成されている亀裂の数は、下記表1に示される。
【0084】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る偏光板は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の画像表示装置に適用される。
【符号の説明】
【0086】
1…偏光板、1p…偏光板の外周、2…凹部、2c…凹部の隅、3…第三光学フィルム、4…樹脂層、4w…樹脂層の幅、5…第一光学フィルム、7…偏光子、7e…偏光子の端部、9…第二光学フィルム、10…第一積層体、50…エンドミル、50a…エンドミルの回転軸線、50e…エンドミルの刃、100…第二積層体、d1…エンドミルの側面において刃が延びる方向、d2…エンドミルの回転軸線に垂直な方向、α…エンドミルのねじれ角、β…切削角度。
図1
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図13