特許第6788075号(P6788075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788075
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】通信装置、起動方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20201109BHJP
   H04L 29/00 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
   H04L12/44 Z
   H04L13/00 T
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-133146(P2019-133146)
(22)【出願日】2019年7月18日
(62)【分割の表示】特願2016-26373(P2016-26373)の分割
【原出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2019-176529(P2019-176529A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 學
(72)【発明者】
【氏名】氏川 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓弥
【審査官】 宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−019182(JP,A)
【文献】 特開2015−170944(JP,A)
【文献】 特開2015−119380(JP,A)
【文献】 特開平08−292897(JP,A)
【文献】 特開昭62−222318(JP,A)
【文献】 特開平08−235444(JP,A)
【文献】 特開2010−165007(JP,A)
【文献】 特開平08−129495(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0239918(US,A1)
【文献】 特開2016−107480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00−12/955,29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他装置との通信を行う通信部と、
自装置の電源の状態を制御する制御部とを備え
記制御部は、
自装置の電源の状態を制御する状態制御部と、
前記自装置又は自装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断部と、
自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断部による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認部とを有し、
前記自装置又は前記自装置を構成する部品の故障確率に関する前記情報は、電力消費の累積、電圧を印加しない期間、電力消費、自装置において送信又は受信ができなかったフレームの数、或いは、要求帯域と自装置が通信を行った帯域との差分の情報であることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
他装置との通信を行う通信部と、
自装置の電源の状態を制御する制御部とを備え
記制御部は、
自装置の電源の状態を制御する状態制御部と、
自装置又は前記自装置を構成する部品に基づく故障確率が閾値以上となったか否かによって電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断部と、
自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断部による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認部とを有することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
他装置との通信を行う通信部と、
自装置の電源の状態を制御する制御部とを備え
記制御部は、
自装置の電源の状態を制御する状態制御部と、
自装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断部と、
自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断部による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認部とを有し、
前記判断部は、許容される通信停止時間を自装置の過去の通信のトラフィックに基づいて判断し、正常性確認を行ったときの起動時間が、許容される前記通信停止時間を超えるか否かによって、電源起動時の正常性確認の要否を判断することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、自装置がスリープ状態であるときに自装置の電源を停止状態とし、自装置がスリープ状態から稼働状態となったときに自装置の電源を起動する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信装置は、受動光ネットワークにおける光加入者線終端装置又は光回線終端装置のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
他装置と通信する通信装置に用いられる起動方法であって、
自装置の電源の状態を制御する状態制御過程と
記自装置又は自装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断過程と、
自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断過程による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認過程と
を有し、
前記自装置又は前記自装置を構成する部品の故障確率に関する前記情報は、電力消費の累積、電圧を印加しない期間、電力消費、自装置において送信又は受信ができなかったフレームの数、或いは、要求帯域と自装置が通信を行った帯域との差分の情報であることを特徴とする起動方法。
【請求項7】
他装置と通信する通信装置に用いられる起動方法であって、
自装置の電源の状態を制御する状態制御過程と
記自装置又は自装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断過程と、
自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断過程による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認過程と
を有し、
前記判断過程において、自装置が稼働した期間又は前記自装置を構成する部品が稼働した期間が、所定以上の故障確率となるまでの期間を超えたか否かによって、電源起動時の正常性確認の要否を判断することを特徴とする起動方法。
【請求項8】
他装置と通信する通信装置に用いられる起動方法であって、
自装置の電源の状態を制御する状態制御過程と
装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断過程と、
自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断過程による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認過程と
を有し、
前記判断過程において、許容される通信停止時間を自装置の過去の通信のトラフィックに基づいて判断し、正常性確認を行ったときの起動時間が、許容される前記通信停止時間を超えるか否かによって、電源起動時の正常性確認の要否を判断することを特徴とする起動方法。
【請求項9】
他装置と通信する通信装置に用いられるコンピュータを、本願請求項1から5のいずれか一項に記載の装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、起動方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク機器には、加入者がネットワークへアクセスするために用いられるものがある。このようなネットワーク機器を用いたアクセスシステムとして、例えば、PON(Passive Optical Network;受動光ネットワーク)システムがある(例えば、非特許文献1参照)。PONシステムは、顧客宅内に設置するONU(Optical Network Unit;光回線終端装置)と、局舎に設置するOLT(Optical Line Terminal;光加入者線終端装置)と、複数ONUとOLTを接続する光ファイバ網とから構成される。
【0003】
ネットワーク機器には、スリープ機能を有する通信装置が用いられる場合がある。スリープ機能を有する装置が起動状態からスリープ状態になるときには、装置の電源を停止することがある。スリープ状態の装置が再び電源を起動するときには、メモリチェックなど、装置の正常性の確認が行われる(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"ITU-T G.989.1"、International Telecommunication Union,2013年
【非特許文献2】"メモリ診断ツールの有効性を確認する ――IT管理者にとって必携のツールか?――"、[online]、アイティメディア株式会社、[平成27年12月16日検索]、インターネット〈URL:http://tokkyo.shinsakijun.com/information/newtech.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置がスリープ状態のために電源停止した後、再び起動する場合、起動時間が長いという問題がある。上述したように、この起動時間には、メモリチェック等、起動時に行う装置の正常性確認にかかる時間が含まれる。装置が通信機器である場合、正常性確認を行っている間は他の装置と通信できないため、通信の遅延などが発生し得る。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明は、起動時間を短くすることができる通信装置、起動方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、他装置との通信を行う通信部と、自装置の電源の状態を制御する制御部とを備え、前記制御部は、自装置の電源の状態を制御する状態制御部と、前記自装置又は自装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断部と、自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断部による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認部とを有し、前記自装置又は前記自装置を構成する部品の故障確率に関する前記情報は、電力消費の累積、電圧を印加しない期間、電力消費、自装置において送信又は受信ができなかったフレームの数、或いは、要求帯域と自装置が通信を行った帯域との差分の情報であることを特徴とする通信装置である。
【0008】
本発明の一態様は、他装置との通信を行う通信部と、自装置の電源の状態を制御する制御部とを備え、前記制御部は、自装置の電源の状態を制御する状態制御部と、自装置又は前記自装置を構成する部品に基づく故障確率が閾値以上となったか否かによって電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断部と、自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断部による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認部とを有することを特徴とする通信装置である。
【0009】
本発明の一態様は、他装置との通信を行う通信部と、自装置の電源の状態を制御する制御部とを備え、前記制御部は、自装置の電源の状態を制御する状態制御部と、自装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断部と、自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断部による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認部とを有し、前記判断部は、許容される通信停止時間を自装置の過去の通信のトラフィックに基づいて判断し、正常性確認を行ったときの起動時間が、許容される前記通信停止時間を超えるか否かによって、電源起動時の正常性確認の要否を判断することを特徴とする通信装置である。
【0010】
本発明の一態様は、上述した通信装置であって、前記制御部は、自装置がスリープ状態であるときに自装置の電源を停止状態とし、自装置がスリープ状態から稼働状態となったときに自装置の電源を起動する。
【0011】
本発明の一態様は、上述した通信装置であって、前記通信装置は、受動光ネットワークにおける光加入者線終端装置又は光回線終端装置のいずれかである。
【0012】
本発明の一態様は、他装置と通信する通信装置に用いられる起動方法であって、自装置の電源の状態を制御する状態制御過程と、前記自装置又は自装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断過程と、自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断過程による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認過程と、を有し、前記自装置又は前記自装置を構成する部品の故障確率に関する前記情報は、電力消費の累積、電圧を印加しない期間、電力消費、自装置において送信又は受信ができなかったフレームの数、或いは、要求帯域と自装置が通信を行った帯域との差分の情報であることを特徴とする起動方法である。
【0013】
本発明の一態様は、他装置と通信する通信装置に用いられる起動方法であって、自装置の電源の状態を制御する状態制御過程と、前記自装置又は自装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断過程と、自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断過程による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認過程と、を有し、前記判断過程において、自装置が稼働した期間又は前記自装置を構成する部品が稼働した期間が、所定以上の故障確率となるまでの期間を超えたか否かによって、電源起動時の正常性確認の要否を判断することを特徴とする起動方法である。
【0014】
本発明の一態様は、他装置と通信する通信装置に用いられる起動方法であって、自装置の電源の状態を制御する状態制御過程と、自装置を構成する部品の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時における正常性確認の要否を判断する判断過程と、自装置の電源が停止状態から起動する際に、前記判断過程による判断結果に従って電源起動時の正常性確認処理の実行又は抑制を行う正常性確認過程と、を有し、前記判断過程において、許容される通信停止時間を自装置の過去の通信のトラフィックに基づいて判断し、正常性確認を行ったときの起動時間が、許容される前記通信停止時間を超えるか否かによって、電源起動時の正常性確認の要否を判断することを特徴とする起動方法である。
【0015】
本発明の一態様は、他装置と通信する通信装置に用いられるコンピュータを、上記の通信装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通信装置の起動時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態におけるPONシステムの構成例を示す図である。
図2】第2の実施形態におけるPONシステムの構成例を示す図である。
図3】第4の実施形態におけるPONシステムの構成例を示す図である。
図4】同実施形態におけるOLTが実行する正常性確認要否判断処理を示す処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態によるPON(Passive Optical Network;受動光ネットワーク)システム1の構成を示す機能ブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみを抽出して示してある。PONシステム1は、アクセスネットワークとして用いられる通信システムである。PONシステム1は、顧客宅内に設置されるONU(Optical Network Unit;光回線終端装置)2と、局舎に設置されるOLT(Optical Line Terminal;光加入者線終端装置)3とを備える。OLT3と、複数のONU2とは、光ファイバ網4を介して接続される。
【0020】
光ファイバ網4は、光ファイバを、光カプラ5−1及び光カプラ5−2により接続して構成される。光カプラ5−1は、複数のONU2それぞれとの間の光ファイバ6−1から受信した上り通信の光信号を多重して、光カプラ5−2との間の光ファイバ6−2に出力する。光カプラ5−2は、光ファイバ6−2から受信した上り通信の光信号を、OLT3との間の光ファイバ6−3に出力する。また、光カプラ5−2は、光ファイバ6−3から受信した下り通信の光信号を、光ファイバ6−2に出力する。光カプラ5−1は、光ファイバ6−2から受信した下り通信の光信号を、複数のONU2それぞれとの間の光ファイバ6−1に分岐して出力する。これにより、PONシステム1は、ONU2の配下に接続される顧客端末(図示せず)と、OLT3に接続されるネットワーク上の上位装置(図示せず)との間の通信を中継する。同図では、光カプラ5−2のONU側に単一の光ファイバ6−2が接続される構成を示したが、複数の光ファイバ6−2が接続されてもよく、光カプラと光ファイバの接続数は適宜増減してよく、例えば光カプラ5−2及び光ファイバ6−2を除いて光ファイバ6−3と光カプラ5−1が接続されてもよい。
【0021】
本実施形態では、スリープ状態をとり得る通信装置がOLT3である場合を例に説明する。OLT3は、OSU(Optical Subscriber Unit;光加入者線終端装置)33と、制御部31とを備える。同図では、制御部31をOLT3に備える構成を示したが、OLT3の外部に備えていてもよい。外部とは例えば、制御システム、ONU、上位装置、又は他のOLT3内部等又はそれらの組み合わせである。制御部31を、複数のOLT3等のスリープ状態を取り得る通信装置や通信装置以外で共用してもよい。制御部31を共用すると、共用した機能部(例えば、制御部31)の駆動状態における電力消費を抑制しやすい。また、制御部31を外部に備えるとOLT3全体のスリープ状態への遷移が容易となる。
【0022】
OSU30は他装置との間の通信を行う通信部を構成する。OSU30は、光信号を終端する。OSU30は光送受信部301と信号処理部302とを備える。光送受信部301は、光ファイバ網4から受信した上り通信の光信号を電気信号に変換し、信号処理部302に出力する。また、光送受信部301は、下り通信の電気信号を光信号に変換し、光ファイバ網4に出力する。信号処理部302は、光送受信部301により電気信号に変換された上り通信の信号のフレームを、PONフレームから所望のフレームに変換し、上位装置と接続されるネットワークに出力する。また、信号処理部302は、上位装置と接続されるネットワークから受信した下り通信の信号のフレームをPONフレームに変換し、光送受信部301に出力する。なお、OSU30自体又はその一部機能は複数OSU30で一体であってもよい。
【0023】
制御部31は、各部の制御を行う。制御部31は、OLT3の状態をスリープ状態とするか、稼働状態とするかを制御する。制御部31は、OSU30を稼働状態からスリープ状態とする場合、OLT3が備える所定の機能部の電源、又は、OLT3全体の電源を停止状態とする。所定の機能部を停止状態とする場合、制御部31は、例えば、OSU30の信号処理部302への電源の供給を停止するよう制御してもよく、OSU30の光送受信部301への電源の供給を停止するよう制御してもよく、その両方への電源の供給を停止するよう制御してもよい。
【0024】
複数のOSU30の一部又は全体が一体となっている場合は、スリープ又は稼働状態とすべきOSU30の一部又は全体を遷移してもよいし、一部又は全体が一体となっているOSU30の全てをスリープとすべき場合、OSU30の全てをスリープ状態に遷移してもよい。
【0025】
OLT3全体の電源を停止状態とし、OLT3に制御部31を含む場合、制御部31はスリープ状態から、他の装置からの起動指示の受信、ユーザによる起動指示の入力、予め決められたデータの到着、予め決められた時間の経過、予め決められた時刻となったことの検出等の駆動状態に遷移させる所定の条件を検出し、駆動状態に遷移させる制御を開始するに要する機能は、コンデンサ等のバックアップバッテリ等を用いて電力供給なしにそれらの機能を稼働可能としている。OLT3全体の電源を停止状態としてもOLT3に制御部31を含まない場合、制御部31がOLT3を稼働状態に遷移させるためのバックアップバッテリ等は不要である。
【0026】
制御部31は、OLT3をスリープ状態から稼働状態に遷移する場合、スリープ状態のときに電源が停止状態であった機能部、又は、OLT3全体への電源を起動するよう制御する。これにより、制御部31は、電源を停止状態から供給状態へ遷移させる。このように制御部31は、自装置の電源の状態を制御する機能を有する。
【0027】
次に、OLT3の動作を説明する。
OLT3の制御部31は、所定の機能部の電源を停止状態としたスリープ状態にあるときに、稼働状態へ遷移すべき所定のトリガを検出すると、電源が停止状態である機能部の電源を起動する。トリガは、他の装置からの起動指示の受信、ユーザによる起動指示の入力、予め決められたデータの到着、予め決められた時間の経過、予め決められた時刻となったことの検出など、任意とすることができる。
【0028】
制御部31は、電源を起動すると、起動時の正常性確認処理を抑制する。これより、OLT3は、正常性確認を実行せずに起動する。
本実施形態は、正常性確認を実行せずに起動するため、従来よりも起動時間が短くなる効果を奏する。
【0029】
(第2の実施形態)
本実施形態と、第1の実施形態との違いは、非運用部分の正常性確認を抑止するところにある。以下では、第1の実施形態との差分について説明する。
【0030】
本実施形態のPONシステムの構成は、図1に示す第1の実施形態のPONシステム1と同様である。また、OLT3の動作は、以下の点を除き、第1の実施形態と同様である。
本実施形態では、制御部31は、非運用部分の起動時の正常性確認処理を抑制する。これにより、OLT3は、非運用部分の正常性確認を実行せずに起動する。非運用部分とは、駆動状態にて運用に供しない又はその可能性が多い、メモリやFPGA(Field Programmable Gate Array)やCPU(central processing unit)コアや配線や処理機能部等や複数のOSU30の一部又は全体が一体の場合で信号導通していないOSU30に係る部分等のリソースである。これらのリソースは、例えば余剰や予備を信号不動通や何らかの不具合等により運用しない。非運用部分の識別は通信装置製造時やスリープ状態遷移前に定めてもよい。例えば、設計情報や、自装置又は他装置の過去の1乃至複数の駆動状態において運用に供さなかった又は運用に供した割合が予め定めた割合よりも低い等で定めてもよい。例えば、設計情報や、自装置又は他装置の過去の1乃至複数の駆動状態において運用に供さなかった又は運用に供した割合が予め定めた割合よりも低い等で定めてもよい。
【0031】
本実施形態では、さらに、制御部31の内部又は外部に、記憶部と、判断部と、正常性確認部とのうち少なくともいずれかを備えていてもよい。この構成の一例を図2に示す。
なお、これら追加で備える機能のいずれかもOLT3の外部に備えていてもよいし、複数のOLT3等のスリープ状態を取り得る通信装置や通信装置以外で共用してもよいし、スリープ状態でコンデンサ等のバックアップバッテリ等を用いて電力供給なしにそれらの機能を稼働可能としてもよい。
【0032】
図2は、本実施形態のPONシステム1aの他の構成を示す機能ブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみを抽出して示してある。同図において、図1に示す第1の実施形態によるPONシステム1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。同図に示すPONシステム1aと、図1に示す第1の実施形態のPONシステム1とが異なる点は、OLT3に代えてOLT3aを備える点である。OLT3aは、制御部31の外部に記憶部32を備え、制御部31の内部に判断部311と正常性確認部312を備える構成であるときの例を示す。
【0033】
判断部311は、以下の(1)から(5)の少なくともいずれかのタイミングで、非運用部分を判断する。
(1)所定の時刻到来。
(2)OSU30又は制御部31又はOLT3の少なくとも一部の製造又は実装又は駆動開始又は信号導通開始のいずれか又はその組み合わせ。
(3)OSU30又は制御部31又はOLT3の少なくとも一部の製造又は実装又は駆動開始又は信号導通開始又は前回判断のいずれか又はその組み合わせから、所定の時間又は所定の駆動時間又は所定のスリープ時間の少なくともいずれか又はその組み合わせの経過。なお、前回判断とは、前回の非運用部分の判断である。
(4)OSU30又は制御部31又はOLT3の少なくとも一部の製造又は実装又は駆動開始又は信号導通開始又は前回判断のいずれか又はその組み合わせから、所定の駆動状態への遷移とスリープ状態への遷移のいずれか又はその組み合わせの回数。なお、前回判断とは、前回の非運用部分の判断である。
(5)制御部31による電源の起動又はスリープ状態への遷移前。
【0034】
正常性確認部312は、判断部311により非運用部分と判断された部分には正常性確認を実行せず、他の部分の正常性確認を実行する。
【0035】
記憶部32は、判断部311が非運用部分を判断するために用いる各種データ又は判断結果を記憶する。
【0036】
制御部31が電源を起動すると、判断部311は、記憶部32に記憶されているデータ、又は、OLT3a以外の他の装置から取得したデータに基づいて得られる情報を用いて、非運用部分か否かを判断する。非運用部分確認を行うか否かを判断に用いられるこの情報を、判断情報と記載する。
判断情報は、例えば、OSU30又はOLT3a等について想定される非運用に関する情報である。非運用部分又は非運用部分となる確率は、OLT3aの記憶部32に記憶されている統計データや、他の装置に蓄積されている統計データから得ることができる。統計データは、OSU30又はOLT3a等の設計情報、運用情報、電力消費情報、導通情報、故障情報、故障警報、OLT3が送受信した信号等に関する統計を示す。
【0037】
例えば、判断部311は、設計情報から設計上予め余剰や予備となる部分又は各部が予備となる確率から、非運用の部分又は各部が非運用となる確率を判断する。非運用となる確率の算出対象は、非運用となる可能性がある部分のみとしてもよい。例えば、判断部311は、運用情報によって、特に複数のOSU30を一体化している部分で非運用のOSU30に対応する非運用部分や、予備系である非運用部分から、非運用の部分又は各部が非運用となる確率を判断する。例えば、判断部311は、電力消費情報によって電力消費が他の部分或いは運用状態にある場合の所定の値と比べて少ない部分から、非運用の部分又は各部が非運用となる確率を判断する。また例えば、判断部311は、導通情報によって、導通のない部分から、非運用の部分又は各部が非運用となる確率を判断する。また例えば、判断部311は、故障情報や故障警報のある部分から、非運用の部分又は各部が非運用となる確率を判断する。判断部311は、統計データから得られた非運用の部分又は各部が非運用の確率が所定値以上である場合は、非運用部分と判断する。
【0038】
上記では、非運用部分を、OLT3の判断部311が判断しているが、設定時や電源停止前に人手によってOLT3に設定してもよい。また、判断部311を、OLT3と接続される他の装置が備えてもよい。OLT3の正常性確認部312は、他の装置が備える判断部311から受信した非運用部分の判断結果に従って、非運用部分の正常性確認を抑止する。
【0039】
本実施形態では、非運用部分の正常性確認を実行しないため、非運用部分の正常性確認を実行する場合よりも、起動時間は短くなる。また、運用に関係ない又は関係する可能性の低い部分の故障等の正常でない状態により、不要な起動停止による運用断や故障警報発出による運用システムへの負荷を軽減できる効果がある。さらに運用部分の正常性確認を行う場合、運用部分の正常性が失われた場合に、運用に関係する又は関係する可能性の高い部分の故障等の正常でない状態による運用が可能となる効果もある。
【0040】
(第3の実施形態)
本実施形態と、第1の実施形態と同様に起動時に正常性確認を抑止する。本実施形態と、第1の実施形態との違いは、運用中に正常性確認を実行するところにある。以下では、第1の実施形態との差分について説明する。
【0041】
本実施形態のPONシステムの構成は、図1に示す第1の実施形態のPONシステム1と同様である。また、OLT3の動作は、以下の点を除き、第1の実施形態と同様である。
本実施形態では、OLT3の制御部31は、運用中に正常性確認を実行するよう制御する。正常性確認は運用部分のみでもよいし、非運用部分のみでもよい。また、制御部31は、正常性確認を実施した非運用部分に運用部分を適宜移動することにより、OLT3は、正常性確認済みの部分にて運用を行う。例えば、OLT3がメモリA及びメモリBを有し、当初メモリAが運用中、メモリBが非運用であったとする。この場合、メモリAの運用中にメモリBの正常性確認を実施し、その後、メモリAの内容をメモリBに移してメモリBで運用する。また、OLT3は、正常性確認後に運用部分を戻してもよい。例えば、OLT3がメモリA及びメモリBを有し、当初メモリAが運用中、メモリBが非運用であったとする。この場合、OLT3は、メモリBでの運用に切り替え、メモリAの正常性確認を実施し、その後に、メモリAでの運用に戻す。この場合、メモリBの正常性確認は必須ではない。運用中には正常性確認ができない確認方法を運用部分に対して行う場合は、運用部分を一旦非運用部分に移して確認するか、確認済みの非運用部分で運用することが望ましい。なお、非運用部分とその判断と装置構成と処理は第2の実施形態と同様でもよい。
【0042】
本実施形態では、起動時に正常性確認を実行しないため、起動時間は短くなる。また、運用部分の正常性確認を行う場合、運用部分の正常性が失われた場合に、運用に関係する又は関係する可能性の高い部分の故障等の正常でない状態による運用を抑止しやすい効果もある。
【0043】
(第4の実施形態)
図3は、本発明の第4の実施形態によるPONシステム1bの構成を示す機能ブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみを抽出して示してある。同図において、図1に示す第1の実施形態のPONシステム1と同様の構成には同一の符号を付している。PONシステム1bは、アクセスネットワークとして用いられる通信システムである。PONシステム1bは、顧客宅内に設置されるONU2と、局舎に設置されるOLT3とを備える。OLT3bと、複数のONU2とは、光ファイバ網4を介して接続される。
【0044】
光ファイバ網4は、光ファイバを、光カプラ5−1及び光カプラ5−2により接続して構成される。光カプラ5−1は、複数のONU2それぞれとの間の光ファイバ6−1から受信した上り通信の光信号を多重して、光カプラ5−2との間の光ファイバ6−2に出力する。光カプラ5−2は、光ファイバ6−2から受信した上り通信の光信号を、OLT3bとの間の光ファイバ6−3に出力する。また、光カプラ5−2は、光ファイバ6−3から受信した下り通信の光信号を、光ファイバ6−2に出力する。光カプラ5−1は、光ファイバ6−2から受信した下り通信の光信号を、複数のONU2それぞれとの間の光ファイバ6−1に分岐して出力する。これにより、PONシステム1bは、ONU2の配下に接続される顧客端末(図示せず)と、OLT3bに接続されるネットワーク上の上位装置(図示せず)との間の通信を中継する。同図では、光カプラ5−2のONU側に単一の光ファイバ6−2が接続される構成を示したが、複数の光ファイバ6−2が接続されてもよく、光カプラと光ファイバの接続数は適宜増減してよく、例えば光カプラ5−2及び光ファイバ6−2を除いて光ファイバ6−3と光カプラ5−1が接続されてもよい。
【0045】
本実施形態では、スリープ状態をとり得る通信装置がOLT3bである場合を例に説明する。OLT3bは、OSU30と、制御部37と、記憶部38とを備える。同図では、制御部37と記憶部38をOLT3bに備える構成を示したが、少なくともいずれか一方はOLT3bの外部に備えていてもよい。外部とは例えば、制御システム、ONU、上位装置、又は他のOLT3b内部等又はそれらの組み合わせである。制御部37を、これらの少なくともいずれか一方は複数のOLT3b等のスリープ状態を取り得る通信装置や通信装置以外で共用してもよい。制御部37を共用すると、共用した機能部(例えば、制御部37と記憶部38の一方又は両方)の駆動状態における電力消費を抑制しやすい。また、制御部37を外部に備えるとOLT3b全体のスリープ状態への遷移が容易となる。
【0046】
OSU30は、他装置との間の通信を行う通信部を構成する。OSU30は、図1に示す第1の実施形態のOSU30と同様である。
【0047】
制御部37は、各部の制御を行う。制御部37は、状態制御部371と、判断部372と、正常性確認部373とを備える。
状態制御部371は、OLT3bの状態をスリープ状態とするか、稼働状態とするかを制御する。状態制御部371は、OLT3bを稼働状態からスリープ状態とする場合、OLT3bが備える所定の機能部の電源、又は、OLT3b全体の電源を停止状態とする。
所定の機能部を停止状態とする場合、状態制御部371は、例えば、OSU30の信号処理部302への電源の供給を停止するよう制御してもよく、OSU30の光送受信部301への電源の供給を停止するよう制御してもよく、その両方への電源の供給を停止するよう制御してもよい。
【0048】
複数のOSU30の一部又は全体が一体となっている場合、状態制御部371は、スリープ状態又は稼働状態とすべきOSU30の一部又は全体の状態を遷移してもよいし、一部又は全体が一体となっているOSU30の全てをスリープとすべき場合、OSU30の全てをスリープ状態に遷移してもよい。
【0049】
OLT3b全体の電源を停止状態とし、OLT3bに制御部37を含む場合、制御部37はスリープ状態から、他の装置からの起動指示の受信、ユーザによる起動指示の入力、予め決められたデータの到着、予め決められた時間の経過、予め決められた時刻となったことの検出等の駆動状態に遷移させる所定の条件を検出し、駆動状態に遷移させる制御を開始するに要する機能は、コンデンサ等のバックアップバッテリ等を用いて電力供給なしにそれらの機能を稼働可能としている。OLT3b全体の電源を停止状態としてもOLT3bに制御部37を含まない場合、制御部37がOLT3bを稼働状態に遷移させるためのバックアップバッテリ等は不要である。
【0050】
状態制御部371は、OLT3bをスリープ状態から稼働状態に遷移する場合、スリープ状態のときに電源が停止状態であった機能部、又は、OLT3b全体への電源を起動するよう制御する。これにより、状態制御部371は、電源を停止状態から供給状態へ遷移させる。このように状態制御部371は、自装置の電源の状態を制御する機能を有する。
【0051】
判断部372は、以下の(1)から(5)の少なくともいずれかのタイミングで、電源起動時の正常性確認の要否を判断する。
(1)所定の時刻到来。
(2)OSU30又は制御部37又はOLT3bの少なくとも一部の製造又は実装又は駆動開始又は信号導通開始のいずれか又はその組み合わせ。
(3)OSU30又は制御部37又はOLT3bの少なくとも一部の製造又は実装又は駆動開始又は信号導通開始又は前回判断のいずれか又はその組み合わせから、所定の時間又は所定の駆動時間又は所定のスリープ時間の少なくともいずれか又はその組み合わせの経過。なお、前回判断とは、前回の正常性確認の要否の判断である。
(4)OSU30又は制御部37又はOLT3bの少なくとも一部の製造又は実装又は駆動開始又は信号導通開始又は前回判断のいずれか又はその組み合わせから、所定の駆動状態への遷移とスリープ状態への遷移のいずれか又はその組み合わせの回数。なお、前回判断とは、前回の正常性確認の要否の判断である。
(5)状態制御部371による電源の起動又はスリープ状態への遷移前。
【0052】
正常性確認部373は、判断部372により正常性確認が不要と判断された場合には正常性確認を実行せず、正常性確認が必要と判断された場合には正常性確認を実行する。電源起動時の正常性確認は、例えば、メモリチェックなど、正常性確認対象の機能部(図示しない機能部も含む)が正常に動作するかの確認動作を含む。
【0053】
記憶部38は、判断部372が正常性確認の要否を判断するために用いる各種データ又は判断結果を記憶する。
【0054】
次に、OLT3bの動作を説明する。
図4は、スリープ状態から稼働状態へ遷移する際にOLT3bが実行する正常性確認要否判断処理を示す処理フローである。
OLT3bの状態制御部371は、所定の機能部の電源を停止状態としたスリープ状態にあるときに、稼働状態へ遷移すべき所定のトリガを検出すると、電源が停止状態である機能部の電源を起動する(ステップS10)。トリガは、他の装置からの起動指示の受信、ユーザによる起動指示の入力、予め決められたデータの到着、予め決められた時間の経過、予め決められた時刻となったことの検出など、任意とすることができる。
【0055】
状態制御部371が電源を起動すると、判断部372は、記憶部38に記憶されているデータ、又は、OLT3b以外の他の装置から取得したデータに基づいて得られる情報を用いて、正常性確認を行うか否かを判断する(ステップS20)。正常性確認を行うか否かを判断に用いられるこの情報を、判断情報と記載する。
判断情報は、例えば、OSU30又はOLT3b等について想定される故障確率に関する情報である。故障確率は、OLT3bの記憶部38に記憶されている統計データや、他の装置に蓄積されている統計データから得ることができる。統計データは、OSU30又はOLT3b等の設計情報、運用情報、電力消費情報、導通情報、故障情報、故障警報、OLT3bが送受信した信号に関する統計を示す。
【0056】
例えば、判断部372は、設計情報から設計上の使用頻度の多寡や処理の内容から故障又は故障確率を判断する。例えば、判断部372は、運用情報によって、特に複数のOSU30を一体化している部分で運用中のOSU30に対応する稼働状況や、予備系と運用系での稼働状況から故障又は故障確率を判断する。例えば、判断部372は、電力消費情報によって電力消費の累積が他の部分又は所定の値と比べて高い部分から、或いは、ある種のコンデンサのように電圧を印加しない期間の継続から、故障又は故障確率を判断する。また例えば、判断部372は、過去と比較して電力消費が所定の値を超過する増大又は減少、或いは、過去と比較して電力消費が所定の値を下回る増大又は減少から故障又は故障確率を判断する。また例えば、判断部372は、過去と比較して電力消費が所定の率を超過する増大率又は減少率から、或いは、過去と比較して電力消費が所定の率を下回る増大率又は減少率から、故障又は故障確率を判断する。また、例えば、判断部372は、導通情報に基づいて、時間当たりの導通あるいは累積の導通が所定の値より多いこと又は少ないことから故障又は故障確率を判断する。また、例えば、判断部372は、故障情報や故障警報の多寡や頻度と所定の値との比較から、故障又は故障確率を判断する。なお、これらは組み合わせて使用してもよいし、故障の確率は、連続的に増大又は減少するとのモデルを前提にしてもよいし、バスタブ曲線のように初期と稼働後所定の期間を経過後は大きいがその間の期間は故障の確率がするナイトのモデルを前提としてもよい。
【0057】
例えば、故障確率に関する情報として、OLT3bの通信部においてフレームの送信又は受信ができなかったフレーム落ちの発生回数を用いることができる。OLT3bに故障が発生した場合、データの送受信ができないため、フレーム落ちが発生することがある。
つまり、フレーム落ちの発生回数が多いことにより、故障確率が高いと判断できる。判断部372は、統計データから得られたフレーム落ちの発生回数が所定数以上である場合は、正常性確認要と判断し(ステップS20:YES)、所定数に満たない場合は正常性確認不要と判断する(ステップS20:NO)。
【0058】
また、故障確率に関する情報として、ONU2から要求された帯域の総和と実際にOLT3bとONU2との間で導通した(送受信された)データ帯域との差分を用いてもよい。差分として、要求された帯域の総和に対する導通したデータ帯域の割合を用いてもよい。OLT3bに故障が発生した場合、データの送受信ができないため、要求された帯域よりも実際にデータを送受信できた帯域が低くなることがある。つまり、要求帯域と導通したデータ帯域との差分が大きいことにより、故障確率が高いと判断できる。判断部372は、統計データから求めたこの差分が所定以上である場合は、正常性確認要と判断し(ステップS20:YES)、求めた差分が所定未満である場合は、正常性確認不要と判断する(ステップS20:NO)。なお、ONU2から要求された帯域の総和に代えて、OLT3bがONU2から要求された帯域に対応して割り当てを行った帯域の総和を用いてもよい。
【0059】
また、記憶部38に、稼働開始から故障確率が所定以上となるまでの期間を正常性確認不要期間として記憶しておく。さらに、記憶部38に、OLT3bが最初に稼働を開始した日時、及び、OSU30をOLT3bに挿入した日時の情報を記憶しておく。判断部372は、OLT3bが最初に稼働を開始してから、又は、OSU30をOLT3bに挿入したときからの稼働時間が、正常性確認不要期間を経過している場合には、正常性確認要と判断し(ステップS20:YES)、経過していない場合は、正常性確認不要と判断する(ステップS20:NO)。なお、OLT3bが最初に稼働を開始してから、又は、OSU30をOLT3bに挿入したときからの稼働時間は、電源が停止状態であった時間を含めた稼働時間でもよく、電源が停止状態であった時間を除いた稼働時間でもよい。
【0060】
また、スリープのために定期的に電源が停止状態となる場合、正常性確認が不要なスリープ回数を予め記憶部38に登録しておいてもよい。正常性確認が不要なスリープ回数は、正常性確認不要期間を、スリープが行われる時間間隔により除算して求められる。また、状態制御部371は、OLT3bがスリープした回数を示す情報を記憶部38に書き込んでおく。判断部372は、OLT3bのスリープ回数が、正常性確認が不要なスリープ回数を超えた場合は、正常性確認要と判断し(ステップS20:YES)、超えていない場合は、正常性確認不要と判断する(ステップS20:NO)。
【0061】
正常性確認部373は、判断部372が正常性確認要と判断した場合は(ステップS20:YES)、電源起動時の正常性確認を実行する(ステップS30)。一方、判断部372が正常性確認不要と判断した場合(ステップS20:NO)、正常性確認部373は、電源起動時の正常性確認を抑止し、実行しない(ステップS40)。
【0062】
また、判断部372は、故障確率が十分小さいと判断される所定の条件を満たす場合、例えば、OLT3b全体の電源停止後の電源起動、又は、OSU30の抜き差し直後のみ正常性確認要と判断してもよい。複数回のOLT3b全体の電源停止の後、又は、OSU30の抜き差しを複数回行った後に、OLT3bが稼働した場合であっても、判断部372は、故障確率が十分小さいと判断される条件を満たす場合、さらに、複数回のOLT3b全体の電源停止、又は、OSU30の複数回の抜き差しが行われた後に、正常性確認要と判断してもよい。
【0063】
上記では、正常性確認の要否を、起動毎にOLT3bの判断部372が判断しているが、電源停止前に人手によってOLT3bに設定してもよい。また、判断部372を、OLT3bと接続される他の装置が備えてもよい。OLT3bの正常性確認部373は、他の装置が備える判断部372から受信した正常性確認有無の判断結果に従って、正常性確認を実行又は抑止する。
【0064】
(第5の実施形態)
本実施形態と、第4の実施形態との違いは、正常性確認の要否のいずれかを出力する関数の出力結果に従って、正常性確認の要否を決定するところにある。本実施形態では、正常性確認の要否のいずれかを算出する確率関数は、故障の統計情報とは必ずしも関連しない。以下では、第4の実施形態との差分について説明する。
本実施形態のPONシステムの構成は、図3に示す第4の実施形態のPONシステム1bと同様である。また、OLT3bの動作は、以下の点を除き、図4に示す第4の実施形態と同様である。
【0065】
図4のステップS20の処理において、判断部372は統計情報の代わりに、確率関数を用いた確率計算の値が所定の範囲に含まれるか否かによって正常性確認処理の要否を判断する。正常性確認要となる確率は、サービス上許容される確率等に応じてもよいし、その他の予め定めた値であってもよい。本実施形態は統計情報が十分にない場合等に適し、統計情報が蓄積した後は第4の実施形態の処理に変更するとしてもよい。確率計算としては、当該通信装置(OLT3b)に合致した分布に従う計算が望ましいが、乱数でも疑似乱数でも一様分布でもガウス分布でもその他任意の分布に従う計算であってよいし、確率計算は毎回計算せずに予め計算結果を保持していてもよい。
【0066】
(第6の実施形態)
本実施形態と、第4の実施形態との違いは、統計情報の代わりに、統計情報に従った確率計算で正常性確認の要否を決定するところにある。統計情報に従った確率計算では、正常性確認の要否のいずれかがでる確率が統計情報に従って変わる。以下では、第4の実施形態との差分について説明する。
本実施形態のPONシステムの構成は、図3に示す第4の実施形態のPONシステム1bと同様である。また、OLT3bの動作は、以下の点を除き、図4に示す第4の実施形態と同様である。
図4のステップS20の処理において、判断部372は統計情報の代わりに統計情報に応じた確率計算の値が所定の範囲に含まれるか否かによって正常性確認処理の実行と抑止を判断する。確率計算は、統計情報から故障確率が増大すればそれに応じて正常性確認を実施する確率が多い確率計算を用い、減少すればその反対となる確率計算を用いる。用いる確率計算は、第5の実施形態と同様でもよく、同様に確率計算は毎回計算せずに予め計算結果を保持していてもよい。
【0067】
(第7の実施形態)
本実施形態と、第4の実施形態との違いは、電源停止近傍の導通トラフィックに応じて正常性確認の要否を決定するところにある。以下では、第4の実施形態との差分について説明する。
【0068】
本実施形態のPONシステムの構成は、図3に示す第4の実施形態のPONシステム1bと同様である。また、OLT3bの動作は、以下の点を除き、図4に示す第4の実施形態と同様である。
図4のステップS20の処理において、判断部372は、最後に電源停止状態となった時刻から所定時間遡った時刻までの期間である電源停止近傍に、OLT3bが送受信した信号のトラフィックである導通トラフィックを統計データから取得する。判断部372は、電源停止近傍の導通トラフィックに基づいて、許容されるスリープ時間を判断する。スリープしている時間は、通信が停止している時間である。そこで、例えば、5分おきにトラフィックが発生する場合、許容されるスリープ時間を5分、または、5分から所定時間減算した時間とする。判断部372は、正常性確認部373が正常性確認処理を行うことによってかかる起動時間が、許容されるスリープ時間を超過しない場合は、正常性確認要と判断し(ステップS20:YES)、正常性確認部373は、電源起動時の正常性確認を実行する(ステップS30)。一方、判断部372は、起動時間が、許容されるスリープ時間を超過する場合は、正常性確認不要と判断し(ステップS20:NO)、正常性確認部373による電源起動時の正常性確認の実行を抑止する(ステップS40)。
【0069】
なお、電源停止近傍の導通トラフィックに代えて、又は、加えて、過去の導通トラフィックを用いて、起動時間が許容されるスリープ時間を判断してもよい。許容されるスリープ時間の判断に用いられる過去の導通トラフィックには、同じ曜日の同じ時間帯の導通トラフィックなどを用いることができる。
【0070】
上述した実施形態によれば、通信装置(例えば、OLT3、3a、3b)において、通信部は、他装置と通信し、状態制御部は、自装置がスリープ状態であるときに自装置の電源を停止状態とし、自装置がスリープ状態から稼働状態となったときに自装置の電源を起動する。
通信装置は、自装置の電源が停止状態から起動する際に、電源起動時の正常性確認処理を抑制する。
或いは、通信装置は、自装置の電源が停止状態から起動する際に、電源起動時の非運用部分の正常性確認処理を抑制する。
また、或いは、通信装置の判断部は、自装置の故障確率に関する情報と、自装置の通信のトラフィックに関する情報と、正常性確認の要否の確率計算の結果と、故障確率に応じた正常性確認の要否の確率計算の結果とのうち少なくともいずれかに基づいて、電源起動時の正常性確認の要否を判断する。自装置の故障確率に関する情報として、通信部が故障する確率、自装置において送信又は受信ができなかったフレームの数、或いは、要求帯域と自装置が通信を行った帯域との差分などを用いることができる。また、判断部は、自装置が稼働した期間又は通信部が稼働した期間が、所定以上の故障確率となるまでの期間を超えたか否かによって、電源起動時の正常性確認の要否を判断してもよい。また或いは、判断部は、許容される通信停止時間(スリープ時間)を自装置の過去の通信のトラフィックに基づいて判断し、正常性確認を行ったときの起動時間がその許容される通信停止時間(スリープ時間)を超えるか否かによって、正常性確認の要否を判断してもよい。通信装置の正常性確認部は、電源が停止状態から起動する際に、判断部による判断結果に従って、電源起動時の正常性確認の実行又は抑制を行う。
【0071】
以上、通信装置として光加入者線終端装置(OLT)を例示したが、通信装置は、光回線終端装置(ONU)であってもよいし、それ以外の通信装置であってもよい。通信装置がONUである場合は、対向装置をONUからOLTに置き換えれば同様である。また制御部31、37をOLTに備えてもよい。
【0072】
従来の通信装置は、省電力のためにスリープ状態となって電源を停止した後に、再び電源を起動したときに、メモリチェック等の正常性確認に時間を要し、起動時間が長いという問題があった。本実施形態では、電源を停止した通信装置が電源起動時に行うチェックを、通信装置の故障確率又はトラフィックに応じて抑止するため、電源を起動した際の起動時間を短くすることが可能となる。
【0073】
上述した実施形態におけるOLT3の制御部31をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0074】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
他の装置と通信する通信装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1、1a、1b…PONシステム
2…ONU
3、3a、3b…OLT
4…光ファイバ網
5−1、5−2…光カプラ
6−1、6−2、6−3…光ファイバ
30…OSU
31、37…制御部
32、38…記憶部
311、372…判断部
312、373…正常性確認部
301…光送受信部
302…信号処理部
371…状態制御部
図1
図2
図3
図4