(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788334
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】浄水システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20201116BHJP
B01D 61/08 20060101ALI20201116BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20201116BHJP
C02F 1/469 20060101ALI20201116BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/08
C02F1/44 D
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/469
B01D61/44 520
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-151517(P2015-151517)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-34636(P2016-34636A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】14002699.8
(32)【優先日】2014年8月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】金沢 旬宣
【審査官】
高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−119388(JP,A)
【文献】
特開2010−036160(JP,A)
【文献】
特開平10−066971(JP,A)
【文献】
特開昭54−085229(JP,A)
【文献】
特開2003−169849(JP,A)
【文献】
特開2004−275881(JP,A)
【文献】
特表2007−528781(JP,A)
【文献】
特開2007−029939(JP,A)
【文献】
特開平7−47364(JP,A)
【文献】
特開平11−244853(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0034292(US,A1)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次的な処置のためのラインおよび二次的な処置のためのラインを含む、浄水システムであって、
一次的な処置のためのラインは、第1の給水口、逆浸透のための手段、脱イオン化または電気的脱イオン化のための手段(A)、および第1の水出口をこの順番で接続して含み、
二次的な処置のためのラインは、第2の給水口、ポンプ、脱イオン化のための手段(B)、および第2の水出口をこの順番で接続して含み、
給水を選択的に、一次的な処置のためのラインまたは二次的な処置のためのラインに送達することができ、
給水が二次的な処置のためのラインに送達される場合、ポンプが、第2の給水口と脱イオン化のための手段(B)との間に流体連通して配置され、一方で、該ポンプが、脱イオン化または電気的脱イオン化のための手段(A)と流体連通にはないことを特徴とする、
前記浄水システム。
【請求項2】
第1の給水口および第2の給水口が、カプラに接続可能であるように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1の給水口および第2の給水口がバルブを有し、注入口の独立した開閉を可能にすることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の浄水システムを用いた、水の浄化方法であって、持ち運び可能な水タンクを第2の給水口への接続し、ポンプを通じて直接、給水の流れを脱イオン化のための手段(B)に通すステップを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害の場合において、水道水の代わりに持ち運び可能な水の使用を可能にする、浄水システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型の臨床分析器および免疫分析器装置のほとんどは、特にボウルの洗浄、試験管のすすぎ、サンプルの希釈、潤滑化および保温のために、純水を必要とする。
浄水システムは、典型的に、前処置手段、逆浸透浄化手段および脱イオン化または電気的脱イオン化(EDI)手段を含む。得られた、浄化された水は、タンクに貯蔵され、分析器に分配される。任意に、さらなる脱イオン化手段をタンクのあとに置き、CLSI(Clinical Laboratory Standard Institute)発行のCLRW(Clinical Laboratory Reagent Water)規格による、0.1μS/cm未満の水質を維持することができる。細菌を低減させるために、遠紫外線照射手段および/または膜フィルタを、追加して用いることができる。
【0003】
地震などの災害の場合において、病院における臨床試験実験室のサービスを維持することが要求される。化学分析器および免疫分析器装置のほとんどは、動作するために、電力および純水を必要とする。典型的には、例えば地震の場合における、インフラの破壊の後、大多数の病院は利用可能な非常用発電機を有するため、電力が最初に回復する。しかしながら、都市用水供給システムを修復し、回復させるには、一般的に、より多くの時間がかかる。水道水の給送がなければ、浄水システムは、分析器に純水を供給することができない。その結果、試験実験室は、かかる事態において、分析を停止するか、または、手作業でかつ苦心して、パッケージ化された純水を直接、分析器装置に供給しなければならない。
【0004】
災害の際において、持ち運び可能な水は、災害援助としてトラックによって、タンクにおいて供給される。しかしながら、浄水装置に給送するための持ち運び可能な水の使用は、結果として2つの主要な問題をもたらす。第1に、圧力がなく、浄水システムが機器の安全のために作動しない。第2に、逆浸透(RO)の間、廃水の容量が、相対的に高い。輸送される持ち運び可能な水は容量が制限されるため、ROの動作は合理的でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、災害または非常時の場合において、浄水システムから臨床分析器へと自動的に、純水を供給するための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、第1の給水口、逆浸透のための手段、任意に脱イオン化または電気的脱イオン化のための手段(A)、脱イオン化のための手段(B)および水出口を含む、浄水システムであって、該システムが、該脱イオン化のための手段(B)との流体連通にあるポンプと連通する、第2の給水口を含むことを特徴とする、前記浄水システムに関する。
【発明の効果】
【0007】
浄水システムは、典型的には、一次的な処置としての逆浸透および脱イオン化のための手段、貯蔵タンクおよび二次的な脱イオン化のための手段を包含する。水道水の供給が中断される災害の場合において、本発明は、通常の給水口(第1の給水口)から第2の給水口へと容易に切り替えることを可能にし、逆浸透を迂回し、二次的な脱イオン化ステップにおける持ち運び可能な水の、直接の使用を可能にする。
輸送された持ち運び可能な水は、内部または外部のポンプによって、二次的な脱イオン化に供給される。したがって、本発明は、災害の場合において、持ち運び可能な水から得られた純水を、臨床分析器装置に分配することを可能にする。
【0008】
浄水は、典型的に、下記のステップを含む。プレフィルタが、逆浸透を保護するために、典型的に用いられる。プレフィルタは、水中の粒子を除去するために、0.1μm〜10μmの孔径を有する。水道水における遊離塩素の除去のために、活性炭が、さらにプレフィルタとして用いられる。逆浸透(RO)の間、95〜99%のイオンが除去される。ROのために、0.2〜1.5MPaの圧力を作り出す、ポンプが必要である。透過水の、逆浸透後の濃縮した廃水に対する比率は、1:1〜10である。脱イオン化のために、典型的には、陽イオンおよび陰イオン交換樹脂の混床を含むカートリッジが用いられる。イオン交換樹脂が飽和し、水質が低下するときに、カートリッジを取り換え、飽和した樹脂を再生することができる。
対照的に、電気的脱イオン化(EDI)は、5〜10年まで連続して動作することができる。電気的脱イオン水回収は50〜95%であり、濃縮した廃水は5〜50%である。
タンクは、典型的に、プラスチックまたは非腐食性金属材料でできている。二次的な脱イオン化は、典型的には、再生することができない、混床イオン交換樹脂のカートリッジによって達成される。
【0009】
本発明によると、災害の場合において、電気が回復し、持ち運び可能な水が浄水システムに隣接して利用可能となったあとに、給水口は、直接的に二次的な脱イオン化(B)へと、切り替えられ得る。この切り替えは、当業者に知られている、任意の好適な動作、例えば(1)コネクタの接続/取り外し、または(2)バルブの動作などによってもなされ得る。(1)の場合において、通常の動作モードの間、給水は、カプラを経由して浄水の注入口に送達される。災害モードの間、カプラを注入口から外し、第2の注入口(バイパス注入口(by-pass inlet))に接続させる。(2)の場合において、バルブが、浄水の注入口およびバイパス注入口に置かれる。災害モードの間、バイパス注入口のバルブが開けられ、浄水の注入口は閉じられるだろう(
図4を参照)。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は臨床分析器装置のための典型的な浄水システムを示す図である。
【
図3】
図3は本発明のさらなる態様を示す図である。
【
図4】
図4は本発明によるバイパスがどのように実現され得るか、すなわち、コネクタ経由またはバルブ経由であることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
持ち運び可能な水タンクの典型的な大きさは、500L〜数千リットルである。
持ち運び可能な水を適切にシステムに供給するために、持ち運び可能な水を、二次的な脱イオン化手段を介して臨床分析器装置へ押し出すポンプが、持ち運び可能な水タンクと二次的な脱イオン化手段(B)との間に配置される必要がある。
【0012】
本発明の一態様において、ポンプは、水システムの内部に配置される。
代替的な態様において、ポンプは、浄水システムの外部に配置される。
代替的な態様において、浄水システムは、逆浸透のための手段、イオン交換カートリッジおよびタンクを含み、該浄水システムは、純水を直接、臨床分析器に分配する。この場合において、持ち運び可能な水タンクは、持ち運び可能な水を脱イオン化に供給する、外部のポンプに接続し、純水を臨床分析器に分配することができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明によると、災害の場合において、外部のポンプを経由して、二次的な脱イオン化に都市用水(170μS/cmおよび10mg/Lの二酸化炭素)を直接給送することにより、結果として1μS/cmの脱イオン水をもたらす。