特許第6788401号(P6788401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788401
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】コンパレータ
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/08 20060101AFI20201116BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H03K5/08 H
   H03F3/45 110
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-136636(P2016-136636)
(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公開番号】特開2018-11103(P2018-11103A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】小川 正訓
【審査官】 及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−239103(JP,A)
【文献】 特開平09−321586(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0289580(US,A1)
【文献】 特開2011−077717(JP,A)
【文献】 特開2005−354266(JP,A)
【文献】 特開2011−223130(JP,A)
【文献】 特開2004−153713(JP,A)
【文献】 米国特許第4555673(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 5/08
H03F 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2のMOSトランジスタを用いてなる第1の差動対と、第3及び第4のMOSトランジスタを用いてなる第2の差動対とによって構成される入力段と、前記第1の差動対の差動出力を出力可能とするフォールデットカスコード回路と、前記フォールデットカスコード回路の出力段と接続されて出力信号を出力する出力回路とを具備し、
前記フォールデットカスコード回路の出力段は、PチャンネルMOSトランジスタを用いた第6のMOSトランジスタとNチャンネルMOSトランジスタを用いた第8のMOSトランジスタとが正電源電圧と負電源電圧との間に、前記第6のMOSトランジスタが前記正電源電圧側に位置するように直列接続されてなり、
前記フォールデットカスコード回路の出力段を構成すると共に前記出力回路の入力段と接続され、前記出力回路がLow出力状態の場合に、ゲート・ソース間の電位が上昇する前記第6のMOSトランジスタに対して、当該第6のMOSトランジスタに流れる電流を分流する分流用MOSトランジスタが設けられ、
前記分流用MOSトランジスタは、前記フォールデットカスコード回路の前記第6のMOSトランジスタに流れる電流を負電源電圧側に流入せしめ得るように、前記フォールデットカスコード回路の出力段と前記出力回路の入力段との相互の接続点と前記負電源電圧との間に、直列接続されて設けられてなるコンパレータにおいて、
前記分流用MOSトランジスタの前記負電源電圧側の一端と前記負電源電圧側との間に抵抗器が設けられ、当該抵抗器に前記第2の差動対を構成する抵抗器が用いられ、前記フォールデットカスコード回路の出力段と前記出力回路の入力段との相互の接続点と前記負電源電圧との間に前記分流用MOSトランジスタが前記抵抗器を介して直列接続されて設けられ、
前記第3及び第4のMOSトランジスタは、PチャンネルMOSトランジスタであって、前記第3及び第4のMOSトランジスタのソースは相互に接続され、その接続点と前記正電源電圧との間に、第1の定電流源が設けられ、前記第3のMOSトランジスタのドレインは第3の抵抗器を介して、前記第4のMOSトランジスタは第4の抵抗器を介して、それぞれ前記負電源電圧が印加され、前記第3のMOSトランジスタのゲートは、NチャンネルMOSトランジスタを用いた前記第1のMOSトランジスタのゲートに、前記第4のMOSトランジスタのゲートはNチャンネルMOSトランジスタを用いた前記第2のMOSトランジスタのゲートに、それぞれ接続される一方、
前記フォールデットカスコード回路は、前記第6及び第8のMOSトランジスタに加えて、PチャンネルMOSトランジスタを用いた第5のMOSトランジスタとNチャンネルMOSトランジスタを用いた第7のMOSトランジスタとを有し、前記第5及び第6のMOSトランジスタは、ゲートが相互に接続される一方、前記第5のMOSトランジスタのソースは、前記第1のMOSトランジスタのドレインに、前記第6のMOSトランジスタのソースは、前記第2のMOSトランジスタのドレインに、それぞれ接続され、
前記第7及び第8のMOSトランジスタは、各々のゲートと前記第7のMOSトランジスタのドレインとが相互に接続されると共に、前記第5のMOSトランジスタのドレインに接続され、前記第5のMOSトランジスタのドレイン及び前記第7のMOSトランジスタのドレインは分流用MOSトランジスタのゲートに接続され、
前記第8のMOSトランジスタのドレインは、前記第6のMOSトランジスタのドレインに接続され、
前記第7のMOSトランジスタのソースは、前記第3のMOSトランジスタのドレインに、前記第8のトランジスタのソースは、前記第4のMOSトランジスタのドレインに、それぞれ接続され、
前記分流用MOSトランジスタの前記負電源電圧側の一端と前記負電源電圧側との間に設けられる前記第2の差動対を構成する抵抗器は、前記第4の抵抗器又は前記第3の抵抗器であることを特徴とするコンパレータ。
【請求項2】
前記分流用MOSトランジスタがPチャンネルMOSトランジスタである場合には、そのソースが前記第6及び第8のMOSトランジスタのドレインに接続される一方、前記分流用MOSトランジスタのドレイン及びゲートは、前記第7のトランジスタのドレイン及びゲートに接続されて、前記分流用MOSトランジスタと前記第3の抵抗器との間に、前記第7のMOSトランジスタが直列接続されて設けられてなり、
前記分流用MOSトランジスタがNチャンネルMOSトランジスタである場合には、そのドレイン及びゲートが前記第6及び第8のMOSトランジスタのドレインに接続される一方、前記分流用MOSトランジスタのソースは、前記第7のトランジスタのドレイン及びゲートに接続されて、前記分流用MOSトランジスタと前記第3の抵抗器との間に、前記第7のMOSトランジスタが直列接続されて設けられてなることを特徴とする請求項1記載のコンパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパレータに係り、特に、高速応答特性、電圧依存性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の多様化に伴い、コンパレータは、同相入力電圧が広く、入力に対する高速応答性が良好なことが理想とされることは勿論、さらには、幅広い電源電圧で使用可能で、電源電圧に対して応答特性などの諸特性が変動しないことが望しい。このような観点から、同相入力電圧を負電源電圧から正電源電圧まで印加可能としたコンパレータの回路構成が様々提案、実用化されている(例えば、特許文献1等参照。)
【0003】
図8にはそのような従来のコンパレータの回路構成例が示されており以下、この従来回路について同図を参照しつつ説明する。
このコンパレータは、トランジスタM1,M2、及び、第2の定電流源CS2により構成された第1の差動対DEF1と、トランジスタM3,M4、及び、第1の定電流源CS1により構成された第2の差動対DEF2と、トランジスタM5〜M8を用いて構成されたフォールデットカスコード回路CASと、出力トランジスタM9による出力段PAとに大別されて構成されたものとなっている。
【0004】
このコンパレータにおいては、第1の差動対DEF1を構成するトランジスタM1,M2には、NMOSFET(NチャンネルMOS電界効果トランジスタ)が、第2の差動対DEF2を構成するトランジスタM3,M4には、PMOSFET(PチャンネルMOS電界効果トランジスタ)が、それぞれ用いられている。
フォールデットカスコード回路CASは、第1の差動対DEF1と第2の差動対DEF2繋ぐ機能を有するもので、トランジスタM5,M6には、PMOSFETが、トランジスタM7,M8には、NMOSFETが、それぞれ用いられている。
また、出力トランジスタM9には、NMOSFETが用いられている。
【0005】
上述の構成を有する従来のコンパレータにおける応答特性は、以下に説明するように求められるものとなっている。
先ず、以下に説明する応答特性は、コンパレータの出力電圧がLowからHighに変化するときの伝搬遅延時間のことであり、この伝搬遅延時間は、以下の説明においては、トランジスタM9のゲート電位VM9の変動時間が主であることを前提とする。
【0006】
最初に、出力電圧がLowの状態、すなわち、出力電圧がほぼ負電源電圧に近い値となっている場合の回路の主要な各ノード電位は、以下の通りとなる。
まず、反転入力端子INMの電位は非反転入力端子INPの電位よりも高く、そのため、第2の差動対DEF2のトランジスタM3よりトランジスタM4の方に定電流源CS1からの電流がより多く流れ、第4の抵抗器R4での電圧降下が増加する。
【0007】
そのため、トランジスタM8のゲート・ソース間電圧差VgsM8が、トランジスM7のゲート・ソース間電位差VgsM7よりも小さくなる。そして、ゲート・ソース間電位差VgsM8が小さい状態であるため、トランジスタM8のドレイン電位は上昇し、それに伴いトランジスタM9のゲート電位VgM9が上昇する。
【0008】
一方、第1の差動対DEF1においては、トランジスタM2よりもトランジスタM1の方に第2の定電流源CS2の電流がより多く流れ、第1の抵抗器R1での電圧降下が増加し、第2の抵抗器R2での電圧降下が減少する。
その結果、トランジスタM6のゲート・ソース間電圧差VgsM6が大きくなり、トランジスタM6のドレイン電位が上昇すると共に、トランジスタM9のゲート電位VgM9が上昇する。
【0009】
このトランジスタM9のゲート電位VgM9の上昇により、トランジスタM9のドレイン電位であるコンパレータの出力端子OUTの電位は、Lowとなる。
先に述べたように、トランジスタM8のゲート・ソース間電位差VgsM8は小さいが、このVgsM8が、例えば、トランジスタM8の閾値電圧VthM8より小さい場合、つまり、トランジスタM8のドレイン電流がほぼ流れない場合、トランジスタM9のゲート電位VgM9は、ほぼ正電源電圧VDDと同電位となる。
【0010】
一方、トランジスタM6において、ゲート・ソース間電位差VgsM6は、ドレイン電流IM6を流すような大きな値となるが、上述のように、トランジスタM9のゲート電位VgM9が、ほぼ正電源電圧VDDに等しい値となることで、トランジスタM6のドレイン・ソース間の電位差VdsM6が零になり、トランジスタM6のドレイン電流IM6は流れなくなる。
したがって、コンパレータの出力電圧がLowの場合、出力トランジスタM9のゲート電位VgM9は、ほぼ正電源電圧VDDとなる。
【0011】
ここで、改めて出力電圧がLowの場合のトランジスタM9のゲート電位をVgM9Lと定義すると、VgM9Lは下記する式1により表される。
【0012】
VgM9L≒VDD・・・式1
【0013】
次に、コンパレータの出力電圧がLowからHighに変化する場合の動作、すなわち、出力電圧がほぼ負電源電位からほぼ正電源電位になる場合の動作について説明する。
かかる状態において、非反転入力端子INPの電位は、反転入力端子INMの電位よりも高く、そのため、第2の差動対DEF2のトランジスタM4よりトランジスタM3の方に定電流源CS1からの電流がより多く流れ、第3の抵抗器R3での電圧降下が増加する。
【0014】
そのため、トランジスタM8のゲート・ソース間電圧差VgsM8が、トランジスタM7のゲート・ソース間電位差VgsM7よりも大きくなる。そして、ゲート・ソース間電位差VgsM8が大きい状態であるため、トランジスタM8にドレイン電流が流れ、トランジスタM8のドレイン電位は低下し、それに伴いトランジスタM9のゲート電位VgM9が低下する。
【0015】
この際、トランジスタM9のゲートと負電源電圧VSSとの間の寄生容量Ccにチャージされていた電荷が電流Icxとなって放電され、その一部は、トランジスタM8のドレイン電流となる。
【0016】
一方、第1の差動対DEF1においては、トランジスタM1よりトランジスタM2の方に第2の定電流源CS2の電流がより多く流れ、第2の抵抗器R2での電圧降下が増加する。なお、「R2」の表記は、以下の説明において、必要に応じて第2の抵抗器の抵抗値として用いるものとする。
【0017】
第2の抵抗器R2に流れる電流は、トランジスタM5,M6のゲートに印加される基準電圧VrefとトランジスタM6のゲート・ソース間の電位差VgsM6と、第2の抵抗器R2における電圧降下によって定まり、第2の抵抗器の抵抗値R2とトランジスタM6の電流IM6と基準電圧Vrefの関係は下記する式2で表される。
【0018】
R2×(IM2+IM6)+(2×IM6×L/k´×W1/2+VthM6=VDD −Vref・・・式2
【0019】
なお、ここで、IM2は、トランジスタM2のドレイン電流、IM6は、第6のトランジスタM6のドレイン電流、k´は、トランジスタM6の移動度と単位面積当たりのゲート酸化膜容量の積、Wは、トランジスタM6のゲート幅、Lは、トランジスタM6のゲート長、VthM6は、トランジスタM6の閾値電圧である。
【0020】
このような関係の下、第2の抵抗器R2に流れる電流の一部である電流IM6の大きさが定まることとなる。
第6のトランジスタM6には、ドレイン電流IM6は流れるが、VgsM6は第2の抵抗器R2で生ずる電圧降下のために低い値となる。そのため、第6のトランジスタM6においては、ドレインとソース間の電位差が大きくなり、電流IM6が流れ、その結果、第9のトランジスタM9のゲート電位VgsM9は低下することとなる。
【0021】
以上、出力電圧がLowからHighに変化する際の第1及び第2の差動対DEF1,DEF2の動作を説明したが、結局、トランジスタM9のゲート電位VgM9が低下し、トランジスタM9にドレイン電流が流れなくなり、コンパレータの出力電圧がHighになる。したがって、出力電圧がHighになるときのトランジスタM9のゲート電位VgM9は、トランジスタM9の閾値電圧VthM9まで低下することになる。
【0022】
ここで、改めて、出力電圧がHighの場合のトランジスタM9のゲート電圧をVgM9Hと定義すると、VgM9Hは、下記する式3により表される。
【0023】
VgM9H=VthM9・・・式3
【0024】
したがって、出力電圧がLowからHighに変化する際のトランジスタM9のゲート電圧変化量ΔVgM9は、先の式1と式3を用いて、下記する式4により表される。
【0025】
ΔVgM9=VgM9L−VgM9H≒VDD−VthM9・・・式4
【0026】
さらに、この式4を用いて、出力電圧がLowからHighに変化する際のゲート電位VgM9の変動時間tLHは、下記する式5により表される。
【0027】
LH=ΔVgM9×Cx/Icx=(VDD−VthM9)×Cx/Icx・・・式5
【0028】
ここで、Cxは、トランジスタM9のゲートと負電源電圧VSS間における寄生容量、Icxは、寄生容量Cxの放電電流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特許第3024579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
上述のように、出力電圧がLowからHighに変化する際のトランジスタM9の応答時間は、正電源電圧VDDが高いほど長くなるということが言える。
これをコンパレータにおける伝搬時間の変化で見ると図7に示されたように、正電源電圧VDDが高いほど、伝搬時間が増大していることが確認できる。すなわち、従来回路にあっては、電源電圧の増大と共に応答時間が劣化するという問題があり、電源電圧の影響を受けることなく安定した応答特性のコンパレータが所望されている。
【0031】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、応答特性の電源電圧依存性を確実に抑制可能なコンパレータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るコンパレータは、
第1及び第2のMOSトランジスタを用いてなる第1の差動対と、第3及び第4のMOSトランジスタを用いてなる第2の差動対とによって構成される入力段と、前記第1の差動対の差動出力を出力可能とするフォールデットカスコード回路と、前記フォールデットカスコード回路の出力段と接続されて出力信号を出力する出力回路とを具備し、
前記フォールデットカスコード回路の出力段は、PチャンネルMOSトランジスタを用いた第6のMOSトランジスタとNチャンネルMOSトランジスタを用いた第8のMOSトランジスタとが正電源電圧と負電源電圧との間に、前記第6のMOSトランジスタが前記正電源電圧側に位置するように直列接続されてなり、
前記フォールデットカスコード回路の出力段を構成すると共に前記出力回路の入力段と接続され、前記出力回路がLow出力状態の場合に、ゲート・ソース間の電位が上昇する前記第6のMOSトランジスタに対して、当該第6のMOSトランジスタに流れる電流を分流する分流用MOSトランジスタが設けられ、
前記分流用MOSトランジスタは、前記フォールデットカスコード回路の前記第6のMOSトランジスタに流れる電流を負電源電圧側に流入せしめ得るように、前記フォールデットカスコード回路の出力段と前記出力回路の入力段との相互の接続点と前記負電源電圧との間に、直列接続されて設けられてなるコンパレータにおいて、
前記分流用MOSトランジスタの前記負電源電圧側の一端と前記負電源電圧側との間に抵抗器が設けられ、当該抵抗器に前記第2の差動対を構成する抵抗器が用いられ、前記フォールデットカスコード回路の出力段と前記出力回路の入力段との相互の接続点と前記負電源電圧との間に前記分流用MOSトランジスタが前記抵抗器を介して直列接続されて設けられ、
前記第3及び第4のMOSトランジスタは、PチャンネルMOSトランジスタであって、前記第3及び第4のMOSトランジスタのソースは相互に接続され、その接続点と前記正電源電圧との間に、第1の定電流源が設けられ、前記第3のMOSトランジスタのドレインは第3の抵抗器を介して、前記第4のMOSトランジスタは第4の抵抗器を介して、それぞれ前記負電源電圧が印加され、前記第3のMOSトランジスタのゲートは、NチャンネルMOSトランジスタを用いた前記第1のMOSトランジスタのゲートに、前記第4のMOSトランジスタのゲートはNチャンネルMOSトランジスタを用いた前記第2のMOSトランジスタのゲートに、それぞれ接続される一方、
前記フォールデットカスコード回路は、前記第6及び第8のMOSトランジスタに加えて、PチャンネルMOSトランジスタを用いた第5のMOSトランジスタとNチャンネルMOSトランジスタを用いた第7のMOSトランジスタとを有し、前記第5及び第6のMOSトランジスタは、ゲートが相互に接続される一方、前記第5のMOSトランジスタのソースは、前記第1のMOSトランジスタのドレインに、前記第6のMOSトランジスタのソースは、前記第2のMOSトランジスタのドレインに、それぞれ接続され、
前記第7及び第8のMOSトランジスタは、各々のゲートと前記第7のMOSトランジスタのドレインとが相互に接続されると共に、前記第5のMOSトランジスタのドレインに接続され、前記第5のMOSトランジスタのドレイン及び前記第7のMOSトランジスタのドレインは分流用MOSトランジスタのゲートに接続され、
前記第8のMOSトランジスタのドレインは、前記第6のMOSトランジスタのドレインに接続され、
前記第7のMOSトランジスタのソースは、前記第3のMOSトランジスタのドレインに、前記第8のトランジスタのソースは、前記第4のMOSトランジスタのドレインに、それぞれ接続され、
前記分流用MOSトランジスタの前記負電源電圧側の一端と前記負電源電圧側との間に設けられる前記第2の差動対を構成する抵抗器は、前記第4の抵抗器又は前記第3の抵抗器であるものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、フォールデットカスコード回路のMOSトランジスタに流れる電流を分流できるようにすることで、出力回路を構成する出力トランジスタのゲート電位の不要な上昇を抑圧できるため、出力トランジスタの応答時間の電源電圧に対する依存性をほぼ無くすことができ、高電源電圧使用時における伝搬遅延時間が改善され、応答特性の安定性、信頼性の高いコンパレータを提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の形態におけるコンパレータの第1の実施例の回路例を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態におけるコンパレータの第2の実施例の回路例を示す回路図である。
図3】本発明の実施の形態におけるコンパレータの第3の実施例の回路例を示す回路図である。
図4】本発明の実施の形態におけるコンパレータの第4の実施例の回路例を示す回路図である。
図5】本発明の実施の形態におけるコンパレータの第5の実施例の回路例を示す回路図である。
図6】本発明の実施の形態におけるコンパレータの電源電圧の変化に対する伝搬遅延時間の変化例を従来回路の特性と共に示す特性線図である。
図7】従来回路の電源電圧の変化に対する伝搬遅延時間の変化例を従来回路の特性と共に示す特性線図である。
図8】従来のコンパレータの回路例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図6を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるコンパレータの第1の実施例における回路構成について、図1を参照しつつ説明する。
この第1の実施例におけるコンパレータは、第1の差動対101と、第2の差動対102と、フォールデットカスコード回路103と、出力回路104とに大別されて構成されたものとなっている。
【0036】
第1の差動対101は、第1及び第2のトランジスタ(図1においては、それぞれ「M1」、「M2」と表記)1,2と第2の定電流源(図1においては「CS2」と表記)22とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
この第1の実施例において、第1の差動対101を構成する第1及び第2のトランジスタ1,2には、NMOSFET(NチャンネルMOS電界効果トランジスタ)が用いられている。
【0037】
第1のトランジスタ1のドレインは、第1の抵抗器(図1においては「R1」と表記)31を介して、第2のトランジスタ2のドレインは、第2の抵抗器(図1においては「R2」と表記)32を介して共に、正電源電圧VDDが印加されるようになっている一方、各々のソースと負電源電圧VSSとの間には、第2の定電流源22が直列接続されて設けられている。
また、第1のトランジスタ1のゲートは、反転入力端子(図1においては「INM」と表記)41に、第2のトランジスタ2のゲートは、非反転入力端子(図1においては「INP」と表記)42に、それぞれ接続されている。
【0038】
次に、第2の差動対102においては、第3及び第4のトランジスタ3,4には、PMOSFET(PチャンネルMOS電界効果トランジスタ)が用いられて第3及び第4のトランジスタ3,4のソースは相互に接続され、その接続点と正電源電圧端子43との間には、第1の定電流源(図1においては「CS1」と表記)21が接続されている。
【0039】
また、第3のトランジスタ3のドレインは第3の抵抗器(図1においては「R3」と表記)33を介して、また、第4のトランジスタ4のドレインは、第4の抵抗器(図1においては「R4」と表記)34を介して、共に、負電源電圧端子44に接続されて負電源電圧VSSが印加されるようになっている。
さらに、第3のトランジスタ3のゲートは、先の第1のトランジスタ1のゲートに第4のトランジスタ4のゲートは先の第2のトランジスタ2のゲートに、それぞれ接続されている。
【0040】
フォールデットカスコード回路103は、第1の差動対101と第2の差動対102繋ぐ機能を有するもので、第5及び第6のトランジスタ5,6には、PMOSFETが、第7及び第8のトランジスタ7,8には、NMOSFETが、それぞれ用いられている。
第5及び第6のトランジスタ5,6は、各々のゲートが相互に接続されると共に、基準電圧端子45に接続される一方、第5のトランジスタ5のソースは、第1のトランジスタ1のドレインに、第6のトランジスタ6のソースは、第2のトランジスタ2のドレインに、それぞれ接続されている。
【0041】
一方、第7及び第8のトランジスタ7,8は、各々のゲートと第7のトランジスタ7のドレインとが相互に接続されると共に、第5のトランジスタ5のドレインに接続されている。
第8のトランジスタ8のドレインは、第6のトランジスタ6のドレインに接続されている。
【0042】
そして、第7のトランジスタ7のソースは、第3のトランジスタ3のドレインに、第8のトランジスタ8のソースは、第4のトランジスタ4のドレインに、それぞれ接続されている。
また、第8のトランジスタ8のドレインにソースが、第7のトランジスタ7のドレインにゲートが、それぞれ接続されたPMOSFETを用いた第101のトランジスタ(図1においては「M101」と表記)16が設けられており、そのドレインには、負電源電圧VSSが印加されれるようになっている。
【0043】
出力回路104は、NMOSFETである第9のトランジスタ(図1においては「M9」と表記)9を用いて構成されており、そのドレインと正電源電圧端子43との間には、第3の定電流源(図1においては「CS3」と表記)23が直列接続されて設けられると共にドレインには出力端子46が接続されている。
そして、第9のトランジスタ9のソースは、負電源電圧端子44に接続されて負電源電圧VSSが印加されるようになっている一方、ゲートは、第5及び第8のトランジスタ5,8のドレインに接続されたものとなっている。
【0044】
次に、上述の構成を有するコンパレータの応答特性について説明する。
以下に説明する応答特性は、コンパレータの出力電圧がLowからHighに変化するときの伝搬遅延時間のことであり、この伝搬遅延時間は、第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9の変動時間が主であることを前提とする。
最初に、出力電圧がLowの状態、すなわち、出力電圧がほぼ負電源電圧となっている場合の回路の主要な各ノード電位は、以下の通りとなる。
【0045】
まず、反転入力端子41の電位は、非反転入力端子42の電位よりも高く、そのため、第2の差動対102の第3のトランジスタ3より第4のトランジスタ4の方に第1の定電流源21からの電流がより多く流れ、第4の抵抗器34での電圧降下が増加する。
【0046】
そして、第8トランジスタ8のゲート・ソース間電圧差VgsM8が、第7のトランジスタ7のゲート・ソース間電位差VgsM7よりも小さくなる。
第8のトランジスタ8のゲート・ソース間電位差VgsM8が小さい状態であるため、第8のトランジスタ8のドレイン電位は上昇し、それに伴い第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9が上昇する。
【0047】
例えば、先に図8に示した従来のコンパレータにおいては、先の式1で示したように、図8の回路におけるトランジスタM9のゲート電位VgM9は正電源電圧VDD付近まで上昇したが、本発明の実施の形態におけるコンパレータにおいて、第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9の上昇は、下記する式6で表されるように抑制されるものとなっている。
【0048】
VgM9L=R3×(IM3+IM7)+VgsM7+VgsM101・・・式6
【0049】
ここで、IM3は、第3のトランジスタ3のドレイン電流、IM7は、第7のトランジスタ7のドレイン電流、VgsM7は、第7のトランジスタ7のゲートとソース間の電位差、VgsM101は、第101のトランジスタ16のゲートとソース間の電位差である。
【0050】
次に、出力電圧がLowの状態での第1の差動対101の動作について説明する。第1の差動対101においては、第2のトランジスタ2より第1のトランジスタ1の方に第2の定電流源22の電流がより多く流れて第1の抵抗器31での電圧降下が増加する一方、第2の抵抗器32での電圧降下が減少する。
【0051】
その結果、第6のトランジスタ6のゲートとソース間の電位差VgsM6が大きくなり、第6のトランジスタ6にはドレイン電流が流れ、ドレイン電位が上昇するため、第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9が上昇する。
この場合の第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9は、先の式6に表される値となる。
また、この際、第6のトランジスタ6のドレイン電流IM6は第101のトランジスタ16を通して負電源電圧VSS側に流れ込むこととなる。
【0052】
上述のように、出力電圧がLowの場合、第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9は、先の式6で表され、図8に示されたような従来回路と異なり、本発明の実施の形態においては、出力電圧がLowの場合の第9のトランジスタ9のゲート・ソース間電位VgsM9が正電源電圧VDDに依存することがない。
【0053】
次に、コンパレータの出力電圧がLowからHighに変化する場合の動作、すなわち、出力電圧がほぼ負電源電位からほぼ正電源電位になる場合の動作について説明する。
かかる状態において、非反転入力端子42の電位は、反転入力端子41の電位よりも高く、そのため、第2の差動対102の第4のトランジスタ4より第3のトランジスタ3の方に第1の定電流源21からの電流がより多く流れ、第3の抵抗器33での電圧降下が増加する。
【0054】
そのため、第8のトランジスタ8のゲート・ソース間電圧差VgsM8が、第7のトランジスタ7のゲート・ソース間電位差VgsM7よりも大きくなる。そして、第8のトランジスタ8のゲート・ソース間電位差VgsM8が大きい状態であるため、第8のトランジスタ8にドレイン電流が流れると共に、そのドレイン電位は低下し、それに伴い第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9が低下する。
【0055】
この際、第9のトランジスタ9のゲートと負電源電圧VSSとの間の寄生容量Ccにチャージされていた電荷が電流Icxとなって放電され、その一部は、第8のトランジスタ8のドレイン電流となる。
【0056】
一方、第1の差動対101においては、第1のトランジスタ1より第2のトランジスタ2の方に第2の定電流源22の電流がより多く流れ、第2の抵抗器32での電圧降下が増加する。なお「R2」の表記は、以下の説明において、必要に応じて第2の抵抗器32の抵抗値として用いるものとする。
【0057】
第2の抵抗器32に流れる電流は、第5及び第6のトランジスタ5,6のゲートに印加される基準電圧Vrefと、第6のトランジスタ6のゲート・ソース間の電位差VgsM6と、第2の抵抗器32における電圧降下によって定まり、第2の抵抗器32の抵抗値R2と第6のトランジスタ6の電流IM6と基準電圧Vrefの関係は下記する式7で表される。
【0058】
R2×(IM2+IM6)+(2×IM6×L/k´×W1/2+VthM6=VDD−Vref・・・式7
【0059】
なお、ここで、IM2は、第2のトランジスタ2のドレイン電流、IM6は、第6のトランジスタ6のドレイン電流、k´は、第6のトランジスタ6の移動度と単位面積当たりのゲート酸化膜容量の積、Wは、第6のトランジスタ6のゲート幅、Lは、第6のトランジスタ6のゲート長、VthM6は、第6のトランジスタ6の閾値電圧である。
このような関係の下、第2の抵抗器R2に流れる電流の一部である電流IM6の大きさが定まることとなる。
【0060】
第6のトランジスタ6には、ドレイン電流IM6は流れるが、VgsM6は第2の抵抗器32で生ずる電圧降下のために低い値となる。そのため、第6のトランジスタ6においては、ドレインとソース間の電位差が大きくなり、電流IM6が流れ、それによって、第9のトランジスタ9のゲート電位VgsM9は低下することとなる。
【0061】
以上、出力電圧がLowからHighに変化する際の第1及び第2の差動対101,102の動作を説明したが、結局、第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9が低下し、第9のトランジスタ9にドレイン電流が流れなくなり、コンパレータの出力電圧がHighになる。したがって、出力電圧がHighになるときの第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9は、第9のトランジスタ9の閾値電圧VthM9まで低下することになる。
ここで、改めて、出力電圧がHighの場合のトランジスタM9のゲート電圧をVgM9Hと定義すると、VgM9Hは、下記する式8により表される。
【0062】
VgM9H=VthM9・・・式8
【0063】
したがって、出力電圧がLowからHighに変化する際の第9のトランジスタ9のゲート電圧変化量ΔVgM9は、先の式6と式8を用いて、下記する式9により表される。
【0064】
ΔVgM9=VgM9L−VgM9H=R3×(IM3+IM7)+VgsM7+VgsM101−VthM9 ・・・式9
【0065】
さらに、この式9を用いて、出力電圧がLowからHighに変化する際のゲート電位VgM9の変動時間tLHは、下記する式10により表される。
【0066】
LH=ΔVgM9×Cx/Icx={R3×(IM3+IM7)+VgsM7+VgsM101−VthM9}×Cx/Icx・・・式10
【0067】
ここで、Cxは、第9のトランジスタ9のゲートと負電源電圧VSS間における寄生容量、Icxは、寄生容量Cxの放電電流である。
上述の式10により、出力電圧がLowからHighに変化する際の第9のトランジスタ9の応答時間は、先に式5に示された従来回路における応答時間と異なり、電源電圧に依存しないものであることが理解できる。
【0068】
したがって、本発明の実施の形態におけるコンパレータは、図6に示されたように、電源電圧の変化に対する伝搬遅延時間がほぼ一定に維持され、従来と異なり、電源電圧に対する応答特性の依存性が極めて小さく、安定性の高いものとなっている。
【0069】
次に、第2の実施例について、図2を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略し以下異なる点を中心に説明する。
この第2の実施例におけるコンパレータは、図1に示された第1の実施例における第101のトランジスタ16に代えて、第102のトランジスタ(図2においては「M102」と表記)17が次述するよう設けられた点が、第1の実施例と異なるものである。
【0070】
第102のトランジスタ17は、PMOSFETであり、そのソースが第6及び第8のトランジスタ6,8のドレインに接続される一方、ドレインが第8のトランジスタ8のソースに接続され、ゲートが第5及び第7のトランジスタ5,7のドレインに接続されたものとなっている。
【0071】
かかる構成における回路動作は、次述する点を除けば、基本的には、第1の実施例と同様である。
すなわち、先の第1の実施例においては、第101のトランジスタ16に流れる電流は負電源電圧VSS側に流れ込むのに対して、この第2の実施例における第102のトランジスタ17に流れる電流は、第4の抵抗器34に流れ込むものとなっている。
【0072】
このような回路動作にあっても、出力電圧がLowからHighに変化する際の第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9の変動時間tLHは、先の第1の実施例同様、先の式10により表される。
したがって、出力電圧がLowからHighに変化する際の第9のトランジスタ9の応答時間は、電源電圧に依存しなくなる。
【0073】
しかして、この第2の実施例におけるコンパレータも、図6に示されたように電源電圧の変化に対する伝搬遅延時間がほぼ一定に維持され従来と異なり、電源電圧に対する応答特性の依存性が極めて小さく、安定性の高いものとなっている。
【0074】
次に、第3の実施例について、図3を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略し以下異なる点を中心に説明する。
この第3の実施例におけるコンパレータは、図1に示された第1の実施例における第101のトランジスタ16に代えて、第103のトランジスタ(図3においては「M103」と表記)18が次述するよう設けられた点が、第1の実施例と異なるものである。
【0075】
第103のトランジスタ18は、PMOSFETであり、そのソースが第6及び第8のトランジスタ6,8のドレインに接続される一方、ドレインが第7のトランジスタ7のソースに接続され、ゲートが第5及び第7のトランジスタ5,7のドレインに接続されたものとなっている。
【0076】
かかる構成における回路動作は、次述する点を除けば、基本的には、第1の実施例と同様である。
すなわち、先の第1の実施例においては、第101のトランジスタ16に流れる電流は負電源電圧VSS側に流れ込むのに対して、この第3の実施例における第103のトランジスタ18に流れる電流は、第3の抵抗器33に流れ込むものとなっている。
【0077】
このように、出力電圧がLowからHighに変化する際における第103のトランジスタ18に流れる電流の流入先が、第1の実施例と異なるが、第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9の変動時間tLHは、下記する式11により表さる。
【0078】
LH=ΔVgM9×Cx/Icx={R3×(IM3+IM7+IM6)+VgsM7+VgsM101−VthM9}×Cx/Icx・・・式11
【0079】
結局、この第3の実施例においても、式11により、出力電圧がLowからHighに変化する際の第9のトランジスタ9の応答時間は、電源電圧に依存しないものであることが理解できる。
したがって、この第3の実施例のコンパレータも、図6に示されたように、電源電圧の変化に対する伝搬遅延時間がほぼ一定に維持され、従来と異なり、電源電圧に対する応答特性の依存性が極めて小さく安定性の高いものとなっている。
【0080】
次に、第4の実施例について、図4を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略し以下異なる点を中心に説明する。
この第4の実施例におけるコンパレータは、図1に示された第1の実施例における第101のトランジスタ16に代えて、第104のトランジスタ(図4においては「M104」と表記)19が次述するよう設けられた点が、第1の実施例と異なるものである。
【0081】
第104のトランジスタ19は、PMOSFETであり、そのソースが第6及び第8のトランジスタ6,8のドレインに接続される一方、ドレイン及びゲートが、第7のトランジスタ7のドレイン及びゲートに接続されたものとなっていかかる構成における回路動作は、次述する点を除けば、基本的には、先の第3の実施例と同様である。
【0082】
すなわち、先の第3の実施例においては、第103のトランジスタ18に流れる電流は第3の抵抗器33に流れ込むのに対して、この第4の実施例における第104のトランジスタ19に流れる電流は、第7のトランジスタ7に流れ込むものとなっている。
しかして、出力電圧がLowからHighに変化する際の第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9の変動時間tLHは、第3の実施例の場合と同様に、先の式11により表される。
【0083】
結局、この第4の実施例においても、式11により、出力電圧がLowからHighに変化する際の第9のトランジスタ9の応答時間は、電源電圧に依存しないものであることが理解できる。
したがって、この第4の実施例のコンパレータも、図6に示されたように、電源電圧の変化に対する伝搬遅延時間がほぼ一定に維持され、従来と異なり、電源電圧に対する応答特性の依存性が極めて小さく安定性の高いものとなっている。
【0084】
次に、第5の実施例について、図5を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略し以下異なる点を中心に説明する。
この第5の実施例におけるコンパレータは、図1に示された第1の実施例における第101のトランジスタ16に代えて、第105のトランジスタ(図5においては「M105」と表記)20が次述するよう設けられた点が、第1の実施例と異なるものである。
【0085】
第105のトランジスタ20は、NMOSFETであり、そのドレイン及びゲートが第6及び第8のトランジスタ6,8のドレインに接続される一方、ソースが第7のトランジスタ7のドレイン及びゲートに接続されたものとなっている。
かかる構成における回路動作は、基本的に、先の第4の実施例と同様である。
しかして、出力電圧がLowからHighに変化する際の第9のトランジスタ9のゲート電位VgM9の変動時間tLHは、第4の実施例の場合と同様に、先の式11により表される。
【0086】
結局、この第5の実施例においても、式11により、出力電圧がLowからHighに変化する際の第9のトランジスタ9の応答時間は、電源電圧に依存しないものであることが理解できる。
したがって、この第5の実施例のコンパレータも、図6に示されたように、電源電圧の変化に対する伝搬遅延時間がほぼ一定に維持され、従来と異なり、電源電圧に対する応答特性の依存性が極めて小さく安定性の高いものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0087】
電源電圧の変化に対する応答特性の変化が確実に抑制でき、さらなる安定性、
信頼性が所望されるコンパレータに適用できる。
【符号の説明】
【0088】
101…第1の差動対
102…第2の差動対
103…フォールデットカスコード回路
104…出力回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8