特許第6788520号(P6788520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6788520優れた靱性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788520
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】優れた靱性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20201116BHJP
   C22C 38/46 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C22C38/00 301H
   C22C38/00 302E
   C22C38/46
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-25861(P2017-25861)
(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公開番号】特開2018-131654(P2018-131654A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 康政
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−221594(JP,A)
【文献】 特開2016−089260(JP,A)
【文献】 特表2006−504868(JP,A)
【文献】 特開平05−140695(JP,A)
【文献】 特開平08−188852(JP,A)
【文献】 特開2011−001573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 − 38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分として、質量%で、
C:0.30〜0.50%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.10〜1.00%、
Cr:4.50〜5.40%、
Ni:0.80%未満、
Mo:2.40%以下、
W:4.80%以下、
かつMo当量(Mo+1/2W):1.70〜2.40%、
V:0.30〜0.70%、
N:0.0250%超え0.0350%以下
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、不純物中のTiは0.005%以下、Alは0.050%以下、Pは0.025%以下、Sは0.010%以下であることを特徴とする優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼。
【請求項2】
請求項1に記載の熱間工具鋼の構成要件に加え、Mo当量(Mo+1/2)とCrは質量%で、Mo+1/2W<4.45−0.44Crの関係式を満たすことを特徴とする優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱間工具鋼の構成要件に加え、焼入焼戻し状態での2mmUノッチ試験片でのシャルピー衝撃値が30J/cm2以上であることを特徴とする優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間工具鋼の構成要件に加え、高温軟化量ΔHR
C=HRC0−HRC1が13.0HRC以下であることを特徴とする優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼。
ただし、焼入焼戻しによって44.5〜45.5HRCになるように調質した状態での硬さをHRC0、調質後600℃で100時間保持、空冷した状態での硬さをHRC1とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間工具鋼に関し、特に熱間鍛造、熱間押出し、鋳造あるいはダイカストなどの製造に用いる熱間工具鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間工具鋼は、熱間温度域にある被加工物を加工するための工具として用いられる場合が多く、JIS G4404に主として熱間金型用に提供されるとしてSKD4、SKD5、SKD6、SKD61、SKD62、SKD7、SKD8、SKT3、SKT4、SKT6が分類されている。
【0003】
ところで、熱間加工工具用鋼材として、例えば、特表2002−509986号公報(特許文献1)に記載されているように、高レベルの靭性及び延性を備え、且つ焼戻し耐性及び高温強度の劣化を防ぐため、化学成分として、C:0.3〜0.4重量%、Mn:0.2〜0.8重量%、Cr:4〜6重量%、Mo:1.8〜3重量%、V:0.4〜0.8重量、残部はFeと不可避的不純物からなり、非金属不純物の含量はSi:0.25重量%以下、N:0.010重量%以下、O:10ppm以下、P:0.010重量%以下とする熱間加工工具用鋼材の開発が開示されている。しかし、この提案の熱間加工工具用鋼材はNの添加が不充分であり、焼入れ温度が高くなった際に、結晶粒の粗大化が起き、靭性が低下する問題がある。
【0004】
さらに、熱間金型用鋼として、例えば、特開平9−165649号公報(特許文献2)に記載されているように、充分な高温強度と靭性を得るため、化学成分として、C:0.25〜0.40重量%、Si:0.20〜0.50重量%、Mn:0.30〜1.50重量%、Ni:0.50〜2.00重量%、Cr:2.70〜5.50重量%、Mo:1.00〜2.00重量%、V:0.50重量%を超え0.80重量%以下、Al:0.005重量%以上0.10重量%未満、P:0.015重量%以下、S:0.005重量%以下、N:0.004重量%以下、残部はFeと不可避的不純物からなる熱間金型用鋼の発明が開示されている。しかし、この提案の熱間金型用鋼はNの添加が不充分であり、焼入れ温度が高くなった際に、結晶粒の粗大化が起き、靭性が低下する問題がある。
【0005】
さらに、熱間金型用鋼として、例えば、特開2013−87322号公報(特許文献3)に記載されているように、高靭性及び高強度を得るため、化学成分として、質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:4.00〜6.00%、Mo:1.40〜2.60%、V:0.20〜0.80%、Ti:0.0030%以下、N:0.0120%以下を含有、残部をFeおよび不可避不純物とし、MoとCrのバランスが質量%で、0.33×[%Cr]−0.37<[%Mo]<4.45−0.44×[%Cr]の関係を満たす熱間金型用鋼の開発が開示されている。しかし、この提案の熱間金型用鋼はNの添加が不充分であり、焼入れ温度が高くなった際に、結晶粒の粗大化が起き、靭性が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−509986号公報
【特許文献2】特開平9−165649号公報
【特許文献3】特開2013−87322号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱間工具鋼は、温間鍛造、熱間鍛造あるいはダイカストや押出用金型などに広く用いられている。近年は熱間加工品が大型化や複雑形状化し、さらに生産性向上を目的とした成形ピッチの短縮化により金型に加わる負荷が増大しており、この金型材料にはより一層優れた特性が要求されている。熱間工具鋼が用いられる金型、特にダイカストなどにおける意匠性が重視される用途では、ヒートチェックによる表面の荒れが問題となるケースも多い。耐ヒートチェック性の向上のためには、金型材料の靭性および軟化抵抗性を向上させることが有効であることが知られている。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記した点を考慮して、優れた靱性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための本発明の第1の手段は、化学成分として、質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:4.50〜5.40%、Ni:0.80%未満、Mo:2.40%以下、W:4.80%以下、かつMo当量(Mo+1/2W):1.70〜2.40%、V:0.30〜0.70%、N:0.0250%超え0.0350%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、不純物中のTiは0.005%以下、Alは0.050%以下、Pは0.025%以下、Sは0.010%以下であることを特徴とする優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼である。
【0010】
第2の手段は、第1の手段の熱間工具鋼の構成要件に加え、Mo当量(Mo+1/2)とCrは質量%で、Mo+1/2W<4.45−0.44Crの関係式を満たすことを特徴とする優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼である。
【0011】
第3の手段は、第1の手段または第2の手段の熱間工具鋼の構成要件に加え、焼入焼戻し状態での2mmUノッチ試験片でのシャルピー衝撃値が30J/cm2以上であることを特徴とする優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼である。
【0012】
第4の手段は、第1の手段、第2の手段または第3の手段の熱間工具鋼の構成要件に加え、高温軟化量ΔHRC=HRC0−HRC1が13.0HRC以下であることを特徴とする優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼である。
ただし、焼入焼戻しによって44.5〜45.5HRCになるように調質した状態での硬さをHRC0、調質後600℃で100時間保持、空冷した状態での硬さをHRC1とする。
【発明の効果】
【0013】
上記の手段とすることで、温間鍛造、熱間鍛造あるいはダイカストや押出用金型などに適用可能な、焼入焼戻し状態での2mmUノッチ試験片でのシャルピー衝撃値が30J/cm2以上、高温軟化量ΔHRC=HRC0−HRC1が13.0HRC以下である優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼を得ることができる。
ただし、焼入焼戻しによって44.5〜45.5HRCになるように調質した状態での硬さをHRC0、調質後600℃で100時間保持、空冷した状態での硬さをHRC1とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明の実施の形態の記載に先立って、本発明の熱間工具鋼の化学成分の限定理由および各特性の限定理由について説明する。なお、化学成分は質量%である。
【0015】
C:0.30〜0.50%
Cは、炭化物を形成させることで耐摩耗性、軟化抵抗性を得るための元素である。Cが0.30%未満では十分な耐摩耗性および軟化抵抗性が得られない。一方、Cが0.50%を超えると、凝固偏析を助長し、靱性を低下させる。そこで、Cは0.30〜0.50%とし、望ましくは0.33〜0.43%とする。
【0016】
Si:0.10〜0.50%
Siは、製鋼での脱酸に必要な元素である。Siが0.10%未満であると脱酸が不十分となる。一方、Siが0.50%を超えると靱性を低下させる。そこで、Siは0.10〜0.50%とし、望ましくは0.10〜0.40%とする。
【0017】
Mn:0.10〜1.00%
Mnは、焼入性を向上させ、靭性を確保するのに必要な元素である。Mnが0.10%未満では焼入性が不十分となり、靭性が低下する。一方、Mnが1.00%を超えると加工性を低下させる。そこで、Mnは0.10〜1.00%とし、望ましくは0.40〜1.00%とする。
【0018】
Cr:4.50〜5.40%
Crは、焼入性を向上させ、靭性を確保するのに必要な元素である。Crが4.50%未満では焼入性が不十分となり、靭性が低下する。一方、Crが5.40%を超えると、焼戻し時にCr系の炭化物が過剰に形成され、軟化抵抗性を低下させる。そこで、Crは4.50〜5.40%とし、望ましくは、Crは4.75〜5.20%とする。
【0019】
Ni:0.80%未満
Niは焼入性を改善させ、靭性を向上させる。そのため添加が望まれる元素である。一方、多量に添加すると焼なまし硬さが増加し、被削性が悪化する。そこで、Niは0.80%未満とし、望ましくは0.50%未満とする。
【0020】
Mo:2.40%以下、W:4.80%以下、かつMo当量(Mo+1/2W):1.70〜2.40%
MoとWは炭化物を形成させることで耐摩耗性、軟化抵抗性を得るための元素である。Mo当量が1.70%未満では耐摩耗性、軟化抵抗性が不足する。一方、Mo、Wを多量に含み、Moが2.40%を超える、Wが4.80%超える、またはMo当量が2.40%を超えると、炭化物の粗大化、偏析の助長が起き、靱性が低下する。そのため、Moは2.40%以下、Wは4.80%以下、かつMo当量(Mo+1/2W)は1.70〜2.40%とし、望ましくは、Moは2.20%以下、W:4.40%以下、かつMo当量(Mo+1/2W):1.90〜2.20%とする
【0021】
V:0.30〜0.70%
Vは、焼戻し時に微細で硬質な炭化物や炭窒化物を析出し、軟化抵抗性、耐摩耗性に寄与する元素である。Vが0.30%未満であると、軟化抵抗性、耐摩耗性が不足する。一方、Vが0.70%を超えると、凝固時に粗大なMX型炭化物や炭窒化物を晶出し、靱性を阻害する。そこで、Vは0.30〜0.70%とし、望ましくは、Vは0.40〜0.60%とする。
【0022】
N:0.0250%超え0.0350%以下
Nは、微細炭窒化物を安定化させ、焼入れ時の結晶粒粗大化による靭性の低下を抑制する。Nが0.0250%以下ではその効果が得られない。一方、0.0350%を超えて添加すると、MC型粗大炭化物が均質化熱処理で固溶せず、靱性が低下する。そこで、Nは0.0250%超え0.0350%以下とする。
【0023】
Ti:0.005%以下
Tiは、不可避不純物であるが、0.005%を超えると粗大炭化物の固溶温度を上昇させる。その結果、均質化熱処理における炭化物の固溶効果が十分に得られず、粗大炭化物が残存し、靱性を低下させる。そこで、Tiは不可避不純物として0.005%以下とする。
【0024】
Al:0.050%以下
Alは、不可避不純物であるが、0.050%を超えると介在物の形成を助長し、靱性を低下する。そこで、Alは不可避不純物として0.050%以下とする。
【0025】
P:0.025%以下
Pは、不可避不純物であるが、0.025%を超えると偏析が大きくなり、靱性が低下する。そこで、Pは不可避不純物として0.025%以下とする。
【0026】
S:0.010%以下
Sは、不可避不純物であるが、0.010%を超えると偏析が大きくなり、靱性が低下する。そこで、Sは不可避不純物として0.01%以下とする。
【0027】
質量%で、Mo+1/2W<4.45−0.44Cr
熱間工具鋼において、Cr、Mo、Wは焼戻しにより炭化物を形成する。形成された炭化物はM236、M6C、M2Cなどの結晶構造をとるのだが、M2C以外の炭化物の形成は、高温保持の際に炭化物の粗大化を促進し、軟化抵抗性が低下する。また、Mo当量(Mo+1/2W)とCrのバランスが、Mo+1/2W≧4.45−0.44Crとなると全炭化物中のM2C以外の炭化物の割合は大きくなり、軟化抵抗性は低下する。そこで、Mo+1/2W<4.45−0.44Crとする。
【0028】
焼入焼戻し状態での2mmUノッチ試験片でのシャルピー衝撃値:30J/cm2以上シャルピー衝撃値は靭性を表す値である。靭性の低下は耐ヒートチェック性の悪化を招き、耐ヒートチェック性が悪化すると、ダイカスト金型に用いた際に、金型表面にクラックが発生し、製品の意匠性が悪くなる。そのため、製品の意匠性向上には、焼入焼戻し状態でのシャルピー衝撃値の向上が必要である。そこで、製品の意匠性を良好にするには、2mmUノッチ試験片でのシャルピー衝撃値は30J/cm2以上必要であり、望ましくは40J/cm2以上必要である。
【0029】
高温軟化量ΔHRC:13.0HRC以下
高温軟化量ΔHRCは軟化抵抗性を示す指標であり、ΔHRCが小さいほど、軟化抵抗性が高いことを示す。一方、軟化抵抗性の低下は耐ヒートチェック性の悪化を招き、耐ヒートチェック性が悪化すると、ダイカスト金型に用いた際に、金型表面にクラックが発生し、製品の意匠性が悪くなる。これらのことから、製品の意匠性向上には、ΔHRCの低下が必要である。そこで、製品の意匠性を良好にするには、ΔHRCは13.0HRC以下にする必要があり、望ましくは10.0HRC以下にする必要がある。
なお、ΔHRC=HRC0−HRC1であり、焼入焼戻しによって44.5〜45.5HRCになるように調質した状態での硬さをHRC0、調質後600℃で100時間保持、空冷した状態での硬さをHRC1とする。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を具体的に実施するための実施例について説明する。
表1に示す各発明鋼例、および表2に示す各比較鋼の化学成分の鋼塊を真空溶解炉で溶製し、得られた1t鋼塊を1280℃で均質化熱処理した後、熱間鍛造によって鍛練成形比6Sの鍛伸材にし、870℃で焼なましを行うことで鋼材を製造した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
表1に示すNo.1〜33は本発明例であり、表2に示すNo.34〜52は比較例である。
【0033】
靱性の評価は、表1、表2に示すシャルピー衝撃値により評価した。このシャルピー衝撃試験に用いた試験片は、上記の焼なまし状態の鋼材の中心部から鍛伸方向に試料を割出し、この割出材を1050℃に保持した後、空冷によって焼入れを行ない、焼入れ後、520〜650℃で2回の焼戻しを行ない、44.5〜45.5HRCに調質した後、2mmUノッチを鍛伸方向に平行となる面に加工して作製した。このシャルピー衝撃試験片をシャルピー衝撃試験機により試験した。衝撃値が40J/cm2以上であれば評価は◎とし、30J/cm2以上40J/cm2未満であれば評価は○とし、30J/cm2未満であれば×として評価した。
【0034】
軟化抵抗性の評価は、高温軟化量により評価した。上記の焼なまし状態の鋼材の表面と中心の中間位置から試料を採取し、焼入焼戻しにより44.5〜45.5HRCに調質した状態での硬さ(HRC0)を測定した。その後、この調質材を600℃にて100時間保持し、空冷した後に硬さ(HRC1)を測定した。高温軟化量ΔHRC=HRC0−HRC1として、ΔHRCが10.0HRC以下であれば評価は◎とし、10.0HRC超え13.0HRC以下であれば○とし、13.0HRC超えであれば×として評価した。高温軟化量が小さいほど軟化抵抗性が高いことを示している。
【0035】
表1に示す本発明例であるNo.1〜No.33の特性はいずれも、シャルピー衝撃値は30J/cm2以上、高温軟化量ΔHRCは13.0HRC以下であり優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼である。
【0036】
一方、表2に示す比較例であるNo.34〜No.51について以下に検討する。比較例No.34はC含有量が低いため、高温軟化量ΔHRCが13.0HRCを超えている。比較例No.35はC含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.36はSi含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.37はMn含有量が低いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.38はCr含有量が低いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.39はCr含有量が高いため、ΔHRCが13.0HRCを超えている。
【0037】
比較例No.40はMo当量(Mo+1/2W)が低いため、ΔHRCが13.0HR
Cを超えている。比較例No.41はMo含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.42はW含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.43はMo当量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.44はV含有量が低いため、ΔHRCが13HRCを超えている。比較例No.45はV含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.46はN含有量が低いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.47はN含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。
【0038】
比較例No.48はTi含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満と
なっている。比較例No.49はAl含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.50はP含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.51はP含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm2未満となっている。比較例No.52はMo+1/2W≧4.45−0.44Crとなっているため、ΔHRCが13.0HRCを超えている。
以上のように、比較例No.34〜No.52は靭性または軟化抵抗性が不足しており
、本発明に該当しない。


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊