【実施例】
【0030】
以下、本発明を具体的に実施するための実施例について説明する。
表1に示す各発明鋼例、および表2に示す各比較鋼の化学成分の鋼塊を真空溶解炉で溶製し、得られた1t鋼塊を1280℃で均質化熱処理した後、熱間鍛造によって鍛練成形比6Sの鍛伸材にし、870℃で焼なましを行うことで鋼材を製造した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
表1に示すNo.1〜33は本発明例であり、表2に示すNo.34〜52は比較例である。
【0033】
靱性の評価は、表1、表2に示すシャルピー衝撃値により評価した。このシャルピー衝撃試験に用いた試験片は、上記の焼なまし状態の鋼材の中心部から鍛伸方向に試料を割出し、この割出材を1050℃に保持した後、空冷によって焼入れを行ない、焼入れ後、520〜650℃で2回の焼戻しを行ない、44.5〜45.5HRCに調質した後、2mmUノッチを鍛伸方向に平行となる面に加工して作製した。このシャルピー衝撃試験片をシャルピー衝撃試験機により試験した。衝撃値が40J/cm
2以上であれば評価は◎とし、30J/cm
2以上40J/cm
2未満であれば評価は○とし、30J/cm
2未満であれば×として評価した。
【0034】
軟化抵抗性の評価は、高温軟化量により評価した。上記の焼なまし状態の鋼材の表面と中心の中間位置から試料を採取し、焼入焼戻しにより44.5〜45.5HRCに調質した状態での硬さ(HRC
0)を測定した。その後、この調質材を600℃にて100時間保持し、空冷した後に硬さ(HRC
1)を測定した。高温軟化量ΔHRC=HRC
0−HRC
1として、ΔHRCが10.0HRC以下であれば評価は◎とし、10.0HRC超え13.0HRC以下であれば○とし、13.0HRC超えであれば×として評価した。高温軟化量が小さいほど軟化抵抗性が高いことを示している。
【0035】
表1に示す本発明例であるNo.1〜No.33の特性はいずれも、シャルピー衝撃値は30J/cm
2以上、高温軟化量ΔHRCは13.0HRC以下であり優れた靭性および軟化抵抗性を有する熱間工具鋼である。
【0036】
一方、表2に示す比較例であるNo.34〜No.51について以下に検討する。比較例No.34はC含有量が低いため、高温軟化量ΔHRCが13.0HRCを超えている。比較例No.35はC含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.36はSi含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.37はMn含有量が低いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.38はCr含有量が低いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.39はCr含有量が高いため、ΔHRCが13.0HRCを超えている。
【0037】
比較例No.40はMo当量(Mo+1/2W)が低いため、ΔHRCが13.0HR
Cを超えている。比較例No.41はMo含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.42はW含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.43はMo当量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.44はV含有量が低いため、ΔHRCが13HRCを超えている。比較例No.45はV含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.46はN含有量が低いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.47はN含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。
【0038】
比較例No.48はTi含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満と
なっている。比較例No.49はAl含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.50はP含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.51はP含有量が高いため、シャルピー衝撃値が30J/cm
2未満となっている。比較例No.52はMo+1/2W≧4.45−0.44Crとなっているため、ΔHRCが13.0HRCを超えている。
以上のように、比較例No.34〜No.52は靭性または軟化抵抗性が不足しており
、本発明に該当しない。
特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊