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特許6788680プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788680
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20201116BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01L21/302 101D
   H05H1/46 C
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-541872(P2018-541872)
(86)(22)【出願日】2017年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2017003087
(87)【国際公開番号】WO2018061235
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-188985(P2016-188985)
(32)【優先日】2016年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】玉利 南菜子
(72)【発明者】
【氏名】田村 仁
(72)【発明者】
【氏名】安井 尚輝
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−174229(JP,A)
【文献】 特開平06−005385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の内部に配置された処理室と、この処理室内に配置されその上面に処理対象のウエハが載せられる試料台と、前記処理室内に供給される電界を形成する電界形成部と、前記電界との相互作用によって前記処理室内に前記ウエハの処理に用いるプラズマを形成するための磁界を形成するコイルと、当該コイルが形成する前記磁界の強度の増減させて前記処理室内のプラズマの強度を増減する制御器とを備え、
前記制御器からの指令により、前記ウエハの処理中に前記磁界の強度を、少なくとも前記プラズマが消失する第1の値及び前記第1の値から増大され前記プラズマが再度形成される第2の値の各々を予め定められた期間だけ形成することを繰り返して、増減させて前記プラズマの形成と拡散とを繰り返プラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記制御器が前記プラズマが形成された後その強度の変化が所定の範囲内になった後に前記コイルの磁界の強度を低減するプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置であって、
前記制御器が前記プラズマの強度を示す量が所定の下限値より小さくなった後に前記コイルの磁界を増大させるプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記制御器が前記ウエハの処理中に前記プラズマの強度を示す量またはその変化を検出した結果を用いて前記コイルの磁界を増減させるプラズマ処理装置。
【請求項5】
真空容器の内部の処理室内の試料台上面に処理対象のウエハを載せて、前記処理室内に電界及びこの電界と作用する磁界をコイルから供給して当該処理室内にプラズマを形成して、当該プラズマを用いて前記ウエハを処理するプラズマ処理方法であって、
前記ウエハの処理中に前記コイルの形成する前記磁界の強度を少なくとも前記プラズマが消失する第1の値及び前記第1の値から増大され前記プラズマが再度形成される第2の値の各々を予め定められた期間だけ形成することを繰り返し増減し、前記プラズマの形成と拡散とを繰り返プラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項に記載のプラズマ処理方法であって、
前記プラズマが形成された後その強度の変化が所定の範囲内になった後に前記コイルの磁界の強度を低減するプラズマ処理方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のプラズマ処理方法であって、
前記プラズマの強度を示す量が所定の下限値より小さくなった後に前記コイルの磁界を増大させるプラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか一項に記載のプラズマ処理方法であって、
前記ウエハの処理中に前記プラズマの強度を示す量またはその変化を検出した結果を用いて前記コイルの磁界を増減させるプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理室内に形成したプラズマを用いて半導体ウエハ等の試料を処理するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に係り、特に処理室内に磁界を供給しプラズマに作用させて試料を処理するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体製造工程においては光リソグラフィーによる微細化限界が近づいており、多重露光やスペーサパターニング等のプロセスが主流になりつつある。このような多重露光やSADP(Self Aligned Double Patterning)に代表されるスペーサパターニングプロセスではエッチング工程が増加している。
【0003】
各エッチング工程で生じる処理対象の半導体ウエハ等の試料の面内でのわずかなエッチング性能の均一性低下が、エッチング工程が増加することで積算され、その工程数の増加に伴い、わずかな試料の面内の均一性の低下も許容することが難しくなってきている。
【0004】
よって最先端ロジックを代表とする半導体製造工程、特にFEOL(Front End of Line)工程では、被処理基板面内を高い均一性でエッチング処理ができる装置性能が求められている。
【0005】
マイクロ波プラズマエッチング装置においては上記の均一性を実現する手法としてリアクタおよび排気構造やプラズマの軸対称化技術、ウエハ載置電極の温度制御技術などが用いられる。
【0006】
このような基板内の処理分布の均一化するための従来技術として、特開平2−312227号公報(特許文献1)および特開平8−288259号公報(特許文献2)に記載される高周波電界分布の制御によるプラズマの密度分布を均一化するものが知られていた。
【0007】
特許文献1では、処理室内にプラズマを形成するパルス放電を実現するためにマグネトロンが発生するマイクロ波の周期的な強度の増減に同期させて、磁界を形成するコイルに供給される電流の大きさを周期的に増減することにより、処理室内のプラズマの電子温度を増大させて試料のエッチング処理速度を向上させる技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、チャンバ外部に巻かれた高周波アンテナとスイッチング手段を介して直流(DC)電源に接続されたソレノイドコイルとを備え、高周波アンテナからチャンバ内部に電界を供給しつつソレノイドコイルに供給される直流電流をスイッチング手段により周期的にオンオフすることで、ヘリコーンプラズマと誘導結合プラズマとを交互に形成して、チャンバ下方に配置した基板に向かうプラズマの輸送あるいはプラズマ中のイオン/ラジカルの生成比を所望に制御してプラズマの密度を自在に変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−312227号公報
【特許文献2】特開平8−288259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来技術は次の点について考慮が不十分であったため、下記のような問題が生じていた。
【0011】
すなわち、上記の従来技術に係るプラズマ処理装置では、ある特定の条件下において、プラズマを生成する真空容器内部の空間におけるプラズマの密度の分布が著しく不均一になる場合がある。上記従来の技術は、このような場合にも半導体ウエハ等の基板状の試料である被処理基板上の当該分布の不均一を抑制して試料表面に施される処理の不均一をある程度低減することが可能である。
【0012】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載された技術では、処理室に供給される磁界をコイルで間欠的に形成して基板上面上方におけるプラズマの密度の分布を処理の均一性を向上させるものに近づけようとするものであるが、これらの従来技術では、コイルにより形成される磁界の大きさを切り替えるタイミングやその期間について明記されておらず、処理対象の試料の処理を半径方向についてより均一に近づけるために必要なこれらの適正な基準について考慮されていなかった。
【0013】
本発明は、上記の問題点を解決し、均一性を向上させることが可能なプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、真空容器の内部に配置された処理室と、この処理室内に配置されその上面に処理対象のウエハが載せられる試料台と、前記処理室内に供給される電界を形成する電界形成部と、前記電界との相互作用によって前記処理室内に前記ウエハの処理に用いるプラズマを形成するための磁界を形成するコイルと、当該コイルが形成する前記磁界の強度の増減させて前記処理室内のプラズマの強度を増減する制御器とを備え、前記制御器からの指令により、前記ウエハの処理中に前記磁界の強度を、少なくとも前記プラズマが消失する第1の値及び前記第1の値から増大され前記プラズマが再度形成される第2の値の各々を予め定められた期間だけ形成することを繰り返して、増減させて前記プラズマの形成と拡散とを繰り返プラズマ処理装置により達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の装置構成に大幅な変更点を加えることなく、処理室内のプラズマ自体が自律的にその密度分布を均一化し、被処理基板の処理均一性を向上させることが可能となる。
【0016】
上記した以外の構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図2】従来技術に係るプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図および当該プラズマ処理装置の内部で実施されるウエハの処理の特性の分布を模式的に示すグラフである。
図3】従来技術に係るプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図および当該プラズマ処理装置の内部で実施されるウエハの処理の特性の分布を模式的に示すグラフである。
図4】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置において、コイル用電源からソレノイドコイルに直流の電力が供給されている特定の時刻において処理室内に形成されるプラズマの領域を模式的に示す縦断面図である。
図5】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置において、コイル用電源からソレノイドコイルに直流の電力が供給されている特定の時刻において処理室内に形成されるプラズマの領域を模式的に示す縦断面図である。
図6】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置において、コイル用電源からソレノイドコイルに直流の電力が供給されている特定の時刻において処理室内に形成されるプラズマの領域を模式的に示す縦断面図および当該プラズマ処理装置の内部で実施されるウエハの処理の特性の分布を模式的に示すグラフである。
図7図1に示す実施例の変形例に係るプラズマ処理装置において、コイル用電源からソレノイドコイルに直流の電力が供給されている特定の時刻における処理室内に形成されるプラズマの領域を模式的に示す縦断面図である。
図8図1に示す実施例の変形例に係るプラズマ処理装置において、コイル用電源からソレノイドコイルに直流の電力が供給されている特定の時刻における処理室内に形成されるプラズマの領域を模式的に示す縦断面図である。
図9図1に示す実施例の変形例に係るプラズマ処理装置において、コイル用電源からソレノイドコイルに直流の電力が供給されている特定の時刻における処理室内に形成されるプラズマの領域を模式的に示す縦断面図および当該プラズマ処理装置の内部で実施されるウエハの処理の特性の分布を模式的に示すグラフである。
図10図1に示す実施例におけるプラズマモニタを通して検出された処理室内のプラズマの発光の強度の時間の推移に伴う変化を示すグラフである。
図11図1に示す実施例においてソレノイドコイルに供給された電流の値の時間の推移に伴う変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を以下図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例について、図1乃至11を用いて説明する。図1は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を説明する縦断面図である。
【0020】
本実施例では、真空容器内部に配置され内側が減圧される処理室内に配置された試料台上面上方に載せられた半導体ウエハ(以下、ウエハ)等の基板状の試料を、当該処理室内に形成したプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置を説明する。特に、本実施例では、導波管を通して伝播されたマイクロ波の電界とソレノイドコイルで形成した磁界とを当該処理室内に供給してこれらの相互作用によって生起された電子マイクロトロン共鳴(Electron Microtron Resonance:ECR)により、当該処理室内に供給された処理用のガスの原子または分子を励起して形成したプラズマを用いて、試料をエッチング処理する、ECRプラズマエッチング処理装置について説明する。
【0021】
本実施例のプラズマ処理装置100は、大きく分けて、その内部に処理室が配置された真空容器部と、真空容器部の上部および周囲に配置された電磁界形成部と、真空容器下方に配置された排気装置部を備えている。電磁界形成部は、処理室内に供給される電界及び磁界を生成する部分である。
【0022】
また、排気装置部は、真空容器下方でその底面に連結されて配置され真空容器内部を排気して減圧するターボ分子ポンプ及びロータリーポンプ等粗引きポンプを含む真空ポンプと真空ポンプ入口と真空容器内部からの排気口との間の排気用の経路の流路断面積を増減して排気の流量または速度を調節する流量調節用のバルブとを備えている。図1は、このようなプラズマ処理装置100の主要部の構成を模式的に示す図である。
【0023】
本実施例のプラズマ処理装置100の真空容器115は、少なくとも上部を構成する側壁の一部分は円筒形の形状を有した金属製の容器である。当該円筒形の側壁の内側には、側壁の内壁の少なくとも一部分に外周を囲まれて円筒形の形状を有した空間である処理室104が配置されている。
【0024】
上記真空容器115の処理室104の上部の空間は、その内部に処理用のガスが供給される。供給された当該ガスは、電磁界形成部が形成して処理室104の上部に供給された電界または磁界により励起される。
【0025】
励起された処理用のガスの原子または分子は、放電を形成してイオン等の荷電粒子及び活性化されたラジカルを含む当該処理室プラズマを生成する。処理室104の上部の空間は、このようなプラズマを形成する放電用の空間となっている。
【0026】
この放電用の空間の上方には、真空容器115の上部を構成する窓部材105が配置されている。本実施例の窓部材105は、処理室104の上記円筒形を有した放電室を覆う石英等誘電体製の円板形状の部材である。窓部材105は、その下面の外周縁部と真空容器115側壁上端との間にOリング等のシール部材を挟んで、真空容器115の側壁の上端上方に載せられる。
【0027】
この構成により、Oリングを上下から押し付けて変形させることで処理室104内部と真空容器115外部との間が気密に封止される。また、窓部材105の下面下方には、シャワープレートが配置されている。
【0028】
シャワープレートは、処理室104の天井面を構成する円板形状を有した部材である。シャワープレートの中央部には、上記処理用のガスが通過して処理室104に上方から導入されるガス導入孔が複数の配置されている。
【0029】
また、シャワープレートは、窓部材105下面との間に、ガス導入孔と連通されると共に内部に供給された処理用ガスが拡散する隙間を空けて、窓部材105下方に配置されている。この隙間は、真空容器115上部に接続された処理用ガスのガス供給経路である配管と連結され連通されている。
【0030】
放電用の空間の下方の処理室104内部には、ウエハ107がその上面に載せられて保持される円筒形を有した試料台108が配置されている。試料台108の下方の処理室104下部の空間は、処理室104に面して円形を有した排気口を介して真空ポンプの入口と連通されている。
【0031】
処理室104には、円筒形を有した試料台108の側壁の外周側は当該側壁と円筒形を有した処理室104の内側壁との間の空間が試料台108を囲んで配置される。さらに、真空容器115と試料台108の側壁との間にこれらを接続する複数本の梁状の支持部材が、試料台108の上下方向の中心軸の周りに相互に等角度あるいはこれと見做せる程度に近似した角度を成して配置されている。
【0032】
本実施例では、シャワープレートの中心部のガス導入孔を通して処理室104内の試料台108上方の放電用の空間に供給されたガスまたは当該放電用の空間に形成されたプラズマの粒子やウエハ107処理中に生成された微粒子は、当該粒子の流路である試料台108と処理室104との側壁同士の間の空間を通って試料台108下方の処理室104の下部の空間に流入する。この下部の空間に流入した微粒子は、排気口から真空ポンプに流入して処理室104外部に排出される。
【0033】
本実施例では、このような粒子の処理室104内部での流れは、試料台108の上下方向の軸周りに対称となるように構成されている。このことにより、試料台108上面に上記中心軸に合わせるように載せられて保持されたウエハ107の中心軸周りの処理の特性やその結果の分布が周方向についてバラツキが低減される。
【0034】
上記の通り、窓部材105の上方及び処理室104の放電の用空間を囲む真空容器115上部の円筒形の側壁の外周側の箇所には、電磁界形成部が配置されている。窓部材105の上方には、電磁界形成部を構成する部分として、処理室104内に供給されるマイクロ波の電界の伝達経路である導波管103が配置されている。
【0035】
さらに、窓部材105上方で導波管103の下端部に接続され窓部材105または処理室104の放電用空間と同じかこれと見做せる程度に近似した径を有した円筒形の空洞部103’が配置され、電磁界形成部を構成する。
【0036】
本実施例の導波管103は、空洞部103’上端と接続され断面が円形を有した円筒形の部分を備えている。さらに、円筒形の導波管部分の上端部に一端部が接続されて水平方向に中心軸を有して断面が矩形状を有した方形の導波管の部分とを備えている。
【0037】
さらに、導波管103の方形の部分の他端部にはマグネトロン等の電力が供給されてマイクロ波の電界を発振して形成するマイクロ波発生用電源101が接続されて配置されて、電磁界形成部を構成している。
【0038】
マイクロ波発生用電源101により導波管103の方形部分の他端部において形成されたマイクロ波の電界は、方形部分をその軸に沿って水平方向に伝播する。その後、円筒形の部分をその軸に沿って下向き伝播し空洞部103’内に導入される。
【0039】
空洞部103’に導入されたマイクロ波の電界は、当該電界の特定のモードが形成または増強される。形成または増強された特定のモードの電界が窓部材105を透過して処理室104の放電用の空間に伝播される。この点で、処理室104は導波管103の一部を構成すると見做すこともできる。
【0040】
さらに、真空容器115の外周側の箇所に複数個のソレノイドコイル106a,106b,106cが配置されている。特に、真空容器115の放電用の空間を囲む側壁の外周側及び空洞部103’の上方側であって導波管103の円筒形部分の外周側に、これらを囲んで複数個のソレノイドコイル106a,106b,106cが配置されている。
【0041】
各々のソレノイドコイル106a〜cは、導波管103、空洞部103’及び処理室104の側壁を囲んでリング状に配置されている。本実施例は、これらのソレノイドコイル106a〜c各々の図上断面が矩形を有している。
【0042】
さらに、ソレノイドコイル106a〜c各々の巻線の中心の高さ位置は、上下方向に3つの異なる位置に配置され3段の構成を備えている。
【0043】
ソレノイドコイル106a〜cの各々には、各々に直流の電力を供給するコイル用電源114a,114b,114cが電気的に接続されている。さらに、これらのコイル用電源114a〜c各々には制御器113a,113b,113cがこれらと通信可能に接続されている。
【0044】
制御器113a,113b,113cは、各々が接続されたコイル用電源114a,114b,114cがこれらから供給される直流の電流の絶対値の大きさを時間の経過に伴って変動させるように調節する指令を、コイル用電源114a,114b,114c各々に発信する。
【0045】
さらに、本実施例では、処理室104の放電用の空間を囲む上部側壁の複数の箇所に、処理室104内に形成されたプラズマの強度や密度あるいはその分布等の状態を検出するために用いられるプラズマモニタ102が配置されている。プラズマモニタ102は、真空容器115側壁に配置された石英等の透光性と耐プラズマ性を有した部材により構成された窓と、これを通してプラズマからの発光を受光してその強度を検出可能な受光器とを備えている。
【0046】
なお、プラズマモニタ102はこのような光学的な検出器に限られない。例えば、試料台108に供給される高周波電力または直流の電力の電圧を検出する等のプラズマの強度等の状態を電気的に検出するものであっても良い。
【0047】
また、本実施例ではプラズマの状態を光学的に検出するプラズマモニタ102を配置する箇所は,検出する構成に応じて適切に選択される。例えば、試料台108内部または上面に備えられても良く、窓部材105の上方等処理室104外部に配置されていても良い。
【0048】
真空容器115の底面の下方には排気装置部が備えられている。排気装置部は、真空ポンプの一部を構成するターボ分子ポンプと、このターボ分子ポンプの入口と処理室104の排気口との間に配置された流量調節用のバルブとを備えている。
【0049】
流量調節用のバルブは、ターボ分子ポンプと排気口と間の排気用の経路であるダクト等配管の流路の内側で当該流路の中心軸を横切る方向に延在する軸の周りに回転して流路断面積を増減して排気の流量または速度を調節する複数枚の板状のフラップを備えている。さらに、本実施例では、円形の排気口とその上方で軸を合致させて配置された試料台108との間の処理室104内部に円形のバルブが備えられている。
【0050】
当該円形のバルブは、図示されていない真空容器115底面下方に配置されたステッピングモータや流体によるアクチュエータ等の駆動装置により試料台108下方の処理室104内で上下方向に移動して円形の排気口の外周縁を構成する真空容器115の内壁面と接続または離間する。このような構成により円形のバルブは、排気口を開放または気密に閉塞する或いは排気口との間の距離を増減させて排気経路の開口の面積を増減させる。
なお、本実施例では、窓部材105、シャワープレート、処理室104、特に試料台108上方の放電用の空間と、試料台108、及び排気口の各々の上下方向の中心軸は、上下方向から見て合致またはこれと見做せる程度に近似した位置に配置されている。
【0051】
試料台108は、上部にウエハ107が載置される面を備えている。この面は、アルミナあるいはイットリア等セラミクスにより構成され試料台108上部を覆う誘電体製の膜により覆われて構成される。
【0052】
膜の内部には、ウエハ107を静電吸着するためのタングステン等金属製の膜状の複数の電極が配置されている。これらの電極は、ウエハ107の半径方向について複数の領域に対応して配置されている。
【0053】
また、本実施例では、これら複数の電極は、静電吸着力を誘電体製の膜上に形成する静電気を形成するための直流電力を供給する直流電源109に電気的に接続されている。さらに、これら複数の電極は、所定の周波数の高周波電力を供給する高周波電源110と電気的に接続されている。
【0054】
高周波電源110は、ウエハ107の処理中にプラズマ中のイオン等荷電粒子をプラズマとの電位差に応じて当該ウエハ107上面に誘引するバイアス電位を形成する高周波電力を電極に供給する。高周波電源110は、各々高周波フィルタ回路111およびマッチング回路112を介して複数の電極に電気的に接続されている。
【0055】
このようなプラズマ処理装置100の真空容器115の側壁には、図示されていない別の真空容器である真空搬送容器が直接接続または別の部材を挟んで連結されている。真空搬送容器は、その内部に処理対象のウエハ107が搬送される減圧された搬送室を備えている。
【0056】
減圧された搬送室の圧力は、処理室104と同等か僅かにこれより高い圧力にされて維持される。この状態で、ウエハ107は、真空搬送容器内部の搬送室内に配置されたロボットアームにより搬送される。
【0057】
ウエハ107は、ロボットアームのハンドに載せられて、減圧された搬送室内部から処理室104内部に向けて搬送される。この際に、ウエハ107は、真空容器115の側壁及びこれに連結された真空搬送容器側壁を貫通して配置され搬送室と処理室104との間を連通する図示しないウエハ107の通路であるゲートを通して搬送される。
【0058】
ハンドに載せられて処理室107内側に搬入されたウエハ107は、試料台108上方まで移送されこれに受け渡される。その後、ロボットアームが処理室104から退室する。
【0059】
この後、ウエハ107が試料台108の誘電体製の膜で構成された載置面上に載せられる。誘電体製の膜上にウエハ108が載せられると、誘電体製の膜内に配置された複数の電極に直流電源109から直流の電力が供給される。
【0060】
供給された直流の電力により、セラミクス等の誘電体の材料を含む膜内に静電荷が形成され蓄積される。この静電荷によりウエハ107内部で電荷が分極して誘電体膜の電荷との間の静電気力が形成され、ウエハ107が膜上に吸着され保持される。
【0061】
この状態で、処理室104内が密封される。処理室104内部が密封された状態で、図示しないガス源からの処理用のガスがシャワープレート中央部に配置された複数のガス導入孔を通して処理室104内に上方から導入される。
【0062】
さらに、図示しない制御装置からの指令に応じて、排気装置部が駆動されガス導入口からのガスの導入と、排気口からの排気の流量または速度とのバランスによって、処理室104内の圧力がウエハ107の処理に適した所望の範囲内の値に調節される。
【0063】
この状態で、マイクロ波電源101が電力を発生して発振されたマイクロ波の電界が、導波管103内部の導波路を通して伝播される。伝播したマイクロ波は、導波管103の円形断面の部分を通り空洞部103’に導入される。さらに、空洞部103’底面を構成する窓部材105を透過して処理室104に導入される。
【0064】
さらに本実施例では、上記マイクロ波の供給とともに、処理室104の周囲のソレノイドコイル106a〜cにコイル用電源114a〜cから直流電流が供給される。これらソレノイドコイル106a〜cにより形成された磁界が処理室104内に供給される。
【0065】
また、本実施例においては、マイクロ波の電界は円筒形の部分において円偏波が形成される。形成された円偏波は導波管103の円筒形部分の下端部から空洞部103’を通り処理室104に供給される。
【0066】
本実施例では、制御器113a〜cからの指令信号により、コイル用電源114a〜c各々からソレノイドコイル106a〜c各々に供給される直流電流が、その絶対値の大きさを時間の経過に伴って所定の期間毎に大小複数の値となるように調節される。すなわち、本実施例においては、ウエハ107が処理中の期間において、ソレノイドコイル106a〜c各々に、大小複数の大きさの直流電流が各々繰り返して供給される。
【0067】
具体的には、コイル用電源114a〜cからは、絶対値の大きな直流電流が供給される第1の期間の後に絶対値の小さい直流の電流が供給される第2の期間とが連続して供給される。そして、これら第1及び第2の期間から構成される期間の集合を一纏まりとして、当該直流の電流がその出力を大小の各値にされる一纏まりの期間が繰り返されて供給される。
【0068】
処理室104内では、供給されたマイクロ波の電界とソレノイドコイル106からの磁界との相互作用により電子サイクロトロン共鳴(ECR)が生起され、処理室104内に供給された処理用ガスの原子、分子が励起される。そして、励起した処理用のガスの粒子にほり処理室104内にプラズマが形成される。
【0069】
このプラズマを用いてウエハ107の上面に予め形成されたマスク層と処理対象の膜層とを含む複数層の膜構造の処理対象の膜層の処理が行われる。
【0070】
この処理中において、ウエハ107の裏面と試料台108の載置面を構成する誘電体製の膜上面との間の隙間には、He等の熱伝達性を有するガスが試料台108内部に配置された供給管路を通して供給される。さらに、試料台108内部の金属製の円板または円筒形状の部材の内部の流路に冷媒が供給されて通流する。
【0071】
上記熱伝達性のガスが供給されることで、ウエハ107と冷媒が冷媒流路を通流する試料台108との間の熱の伝達が促進される。熱伝達性のガスの圧力または冷媒流路を流れる冷媒の温度あるいは圧力は、ウエハ107の温度が処理に適した所望の値の範囲内となるように調節される。
【0072】
プラズマが形成された状態で、誘電体膜内に配置された電極に、高周波電源110から所定の高周波電力が供給される。そして、プラズマの電位に応じてウエハ107上面上方にバイアス電位が形成される。
【0073】
バイアス電位とプラズマとの電位差に応じてプラズマ中のイオン等の荷電粒子がウエハ107上面の方向に誘引され当該上面に衝突する。このことにより、ウエハ107上面の膜構造に含まれる処理対象の膜層の処理が所期の方向に促進される。
【0074】
このようなウエハ107の処理中において、プラズマからのものを含む処理室104内部から発光は、プラズマモニタ102を構成し真空容器115の側壁に配置された窓を通して受光器に受光される。さらに、その出力を用いて図示しないプラズマ処理装置100の制御装置において、処理の反応に対応する波長の光の強度とその時間変化とが時系列にデータとして検出される。
【0075】
本実施例では、このデータと予め定められた値との比較の結果を用いて処理がその終点へ到達したか否かが判定される。このような終点へ到達したことが判定され検出されるまで、ウエハ107の処理は継続される。終点の到達が判定されると高周波電源110から試料台108への高周波電力並びに処理室104への電界及び磁界の供給が停止されプラズマが消火されて、ウエハ107の処理が停止される。
【0076】
プラズマの消火後、直流電源109からの直流電力による静電吸着力が低減または除去される。そして、ゲートバルブが開放されて搬送室内から処理室104内に進入したロボットアームのハンド部上にウエハ107が受け渡される。
【0077】
次に処理される対象の別の未処理のウエハ107がある場合には、処理が終了したウエハ107がロボットアームにより搬出された後に別のアームのハンド部に載せられた未処理のウエハ107が処理室104内に搬入され試料台108に受け渡される。未処理のウエハ107がない場合には、当該プラズマ処理装置100におけるウエハ107の処理が停止される。
【0078】
本実施例においては、コイル用電源114a〜c各々からソレノイドコイル106a〜c各々に供給される直流の電流の大きさは、その絶対値が時間の経過に伴って大小複数の値にされる。特には、コイル用電源114a〜c各々は、複数の値各々を各々に対応する特定の期間だけ出力する。
【0079】
そして、直流電流が時間の経過に伴ってこれらの期間毎に対応する大きさで特定の順序で出力される(時間的に変調される)電力供給の一纏まりのパターンが処理中に繰り返して行われる。これに伴って、ソレノイドコイル106a〜c各々で生成され磁界が処理室104内に供給される。
【0080】
さらに、本実施例では、上記コイル用電源114a〜cから出力される電流の大きさ及びこれらの期間が、処理室104内に形成されるプラズマの強度または密度のウエハ107または処理室104の半径方向の分布が期間毎に所望のものとなるように、予め選択される。
【0081】
次に、本実施例がソレノイドコイルに供給する電流を調節する態様について、図10,11を用いて詳細に説明する。図10は、図1に示す実施例におけるプラズマモニタ102を通して検出された処理室内のプラズマの発光の強度の時間の推移に伴う変化を示すグラフである。図11は、図1に示す実施例においてソレノイドコイルに供給された電流の値の時間の推移に伴う変化を示すグラフである。
【0082】
なお、本例では、図10のデータを取得するため処理室104内に形成されたプラズマからの発光の強度とその時間的な変化を検出するプラズマモニタ102が用いられた。しかし、このようなモニタとしては、発光を検出する構成に限られず、処理室104内のプラズマの強度等のプラズマの状態を代表する特性を検出するものであってもよい。
【0083】
このような検出手段の例としては、載置電極108の直流の電圧の値や振幅等を検出するものが挙げられる。
【0084】
本実施例において、コイル用電源114a〜c各々と通信可能に接続された制御器113a〜cの各々は、処理室104内に形成されたプラズマの発光の強度が予め定められたサンプリング時間Δtごとに検出された結果に基づいて、各々が対応するソレノイドコイル106a〜cに供給する直流の電流を、同期させて変調する構成を備えている。
【0085】
すなわち、図11に示すように、時刻t0より以前の時刻t0’において、コイル用電源114a〜c各々からこれらが接続されたソレノイドコイル106a〜cの各々に直流の電流を予め定められた最大値にするように調節が開始される。このような電流が供給されることによりソレノイドコイルソレノイドコイル106a〜c各々は磁界を形成し、これによって処理室104内にECRによるプラズマが形成される。
【0086】
供給される電流の値は、制御器113a〜c各々からの指令信号を受けたコイル用電源114a〜c各々によって調節される。図11に示すように、本例では、時刻t0’において所定の最低値から上昇を始め時間ΔT後に所定の最大値に到達してその後時刻t0からt1までを含んだ期間で一定に維持される。
【0087】
その後、時刻t0からΔt後の時刻t1においてソレノイドコイル106a〜c各々に供給する電流が予め定められた最小値となるように調節が開始され、予め定められた最小の値まで時間ΔTの期間で低減される。その後、この電流が最小値にされた状態は、時刻t2からt5まで維持される。
【0088】
その後、時刻t5においてソレノイドコイル106a〜c各々に供給される直流の電流を予め定められた最大値にする調節が再度開始される。
【0089】
本実施例では、ウエハ107の処理中は、上記のような時刻t0’からt5までの期間のうち、t0’からt1まで期間は、コイル用電源114a〜cから絶対値の大きな電流の供給が行われる。さらに、時刻t1からt5までは絶対値の小さな電流の供給が行われる。
【0090】
これらの期間には、時刻t0’から絶対値の大きな電流の供給が開始された後にコイルに流れる電流が所定の最大値に到達する(生起される磁界の強度が最大となる)までの遷移に要する時間ΔTが含まれる。さらに、時刻t1から絶対値の小さな電流の供給が開始された後にコイルに流れる電流が所定の最小値になる(生起される磁界の強度が最小となる)までの遷移の期間ΔTが含まれる。
【0091】
さらには、本実施例では、このようなソレノイドコイル106a〜cに各々を所定の期間だけ異なる複数の大きさで磁界を発生させる或いは電力を供給する変調(以下、時間変調と称する)の動作が、ウエハ107の処理の期間で繰り返される。特に、本実施例では、試料台108の誘電体製の膜内の複数の電極へ高周波電源110から高周波電力の供給が開始された時刻から、経過した時間や処理対象の膜層の残り膜厚さあるいは深さ、特定の波長の発光の強度の変化等所定の処理の終了を判定する条件の発生または到達が検出されるまでの期間で繰り返される。
【0092】
本例では、最大値と最小値の2つの値に維持される時間及びこれらの遷移する時間を含めた時刻t0’からt5までの期間を一つのサイクルとして、当該サイクルが処理を終了する条件の発生や処理対象の膜の目標の膜厚さへの到達(終点)の判定まで繰り返される。以下、本例のソレノイドコイル106a〜cへ供給する電流の調節を具体的に説明する。
【0093】
本例においては、時刻t0’から絶対値の大きな電流が開始され、ΔT後に電流値が1つのサイクルにおける最大の値にされて処理室104内に形成されたプラズマの強度または分布が定常の状態に達したことが、プラズマモニタ102からの出力を用いて図示しない制御装置により検出される。この判定された時刻をt1とする。
【0094】
本実施例では、プラズマモニタ102により受光された処理室104内の発光に関するデータは、制御装置において間隔Δtの処理中の時刻ごとの時系列のプラズマの発光の強度のデータとして検出される。さらに、この制御装置において、その時系列のデータから当該発光の強度の時間変化の傾きの大きさが検出される。
【0095】
検出された発光の強度の変化の傾きを示すデータは、制御装置内部あるいはこれと有線または無線による通信手段で通信可能に接続されたハードディスクやリムーバブルディスク等の記憶装置に記憶される。さらに、当該記憶装置に予め記憶された基準のデータと比較されてプラズマの変動の大小が判定される。
【0096】
より具体的には、制御装置内の演算器により、処理中の所定の時刻に検出されたプラズマの発光強度の時間変化の傾きが定常な状態であることを判定するための基準の値として予め記憶装置に記録または記憶された傾き値A0と比較される。当該時刻の発光強度の時間変化の傾きとA0とを比較した結果、前者が小さいと判定された場合に、プラズマが定常状態であると判定される。
【0097】
図10には、処理室104内の処理用ガスが励起されてプラズマが着火されたプラズマ形成初期におけるプラズマの発光強度の時間変化の傾きを示す破線の線分1001と、プラズマが着火されソレノイドコイル106a〜cに供給される電流が最大値に維持された期間の時点(時刻t0から時刻t1)におけるプラズマからの発光の強度の時間の推移に対する変化の傾きを示す破線の線分1002が示されている。この図に示すように、プラズマが着火された直後の期間ではプラズマの発光の強度はその変動が大きい一方で、時刻t0から時刻t1までの時間Δtの期間では変動が小さくなっている。
【0098】
本実施例では、上記した傾きの基準値A0は、線分1001のものより小さい値に設定されている。このため時刻t1において検出された、時刻t0からの時間Δtの期間における発光強度の時間変化の傾きがA0より小さいと判定され、時刻t1においてプラズマが定常な状態に達したと判定される。
【0099】
次に、時刻t1において制御装置によりプラズマの強度あるいはその分布が定常な状態に達したと判定された後、ソレノイドコイル106a〜c各々に供給する電流が予め定められた最小値となるように調節が開始される。電流が予め定められた最小の値まで時間ΔTの期間で低減された後、当該電流は最小の値が維持される。
【0100】
本実施例では、この電流の値はプラズマの発光の強度が所定の値より小さくなり当該プラズマの密度あるいは強度がプラズマが消失したと見做せる程度まで低下したことが検出されるまで当該最小の値が維持される。図10,11に示す時刻t5は、プラズマモニタ102により検知されたプラズマからの発光の強度がこの所定の最低値より小さくなり実質的にプラズマが消失したと看做せると判定された時刻を表す。
【0101】
本例においては、このように定常状態の判定の場合と同様に、消失の判定においても予めプラズマからの発光の強度の基準値を設定している。制御装置が、プラズマモニタ102を介して得られたプラズマからの発光の強度が当該値より小さくなったことを検出すると、プラズマが実質的に消失したと見做せると判定する。
【0102】
図10に示すように、時刻t1にソレノイドコイル106a〜cに供給される直流の電流の大きさが小さくされた後、最小値が維持された状態でプラズマからの発光の強度は一様に低減される。そして、時刻t5において、設定された最小強度値以下となることが検出される。
【0103】
このようなプラズマからの発光の強度の変化は、処理室104内に形成されていたプラズマは時刻t1においてソレノイドコイル106a〜cに供給されていた直流の電流が遮断、または低減の開始がされることで処理室104内のECR面が消失またはその強度が著しく低下することにより生起される。すなわち、ECR面の消失または強度の低下により、処理室104内の処理用ガスの励起による荷電粒子や活性種の生成が損なわれる。
【0104】
さらに、プラズマを構成していたイオン等の荷電粒子への磁界またはこれを構成する磁力線による拘束が低減する。この結果、荷電粒子は、時刻t1以降、時刻t1の時点でプラズマの密度が相対的に低くなっていた領域あるいは処理室104の外周側壁に向かって処理室104内部を拡散することになる。
【0105】
これに伴ってプラズマ中の活性種も拡散して、プラズマの発光の強度が低下する。この拡散に伴って低減するプラズマの発光の強度が予め設定された判定用の最低の基準値に達する時刻がt5となる。
【0106】
次に、プラズマの発光の強度が判定用の最低の基準値以下となったことが検出された時刻t5直後において、ソレノイドコイル106a〜c各々に供給される直流の電流を予め定められた最大値にする調節が再度開始される。すなわち、本実施例では、時刻t0’〜t5までを一つのサイクルとして、大小2つの直流の電流の値を設定された目標値として各々時刻t0’乃至t1、時刻t1乃至t5の期間だけ供給するこのサイクルを繰り返して、電流がソレノイドコイル106a〜cに供給される。
【0107】
このような時刻t0’,t1,t5等のサイクルの期間の開始、終了の時刻は、予め製品用のウエハ107と同じ構成(種類、寸法)の膜構造を備えた試験用のウエハを処理してプラズマモニタ102を介して得られた結果から当該製品用のウエハ107の処理開始前に定めておいても良い。予め定められたこれらの時刻、あるいは時刻間の間隔を定めておいて、処理を開始した時刻から当該間隔毎に上記電流の出力の絶対値を増減する調節を制御装置が行っても良い。
【0108】
また、製品用のウエハ107を処理中にプラズマモニタ102を通して検出したプラズマの発光の強度とその時間の経過に伴う変化の量の値を予め定められた基準値と比較して、異なる絶対値の大きさで電流を供給する期間またはその大きさを切り替える調節の始点または終点の到達の判定を行い、この結果に基づいて電流の大きさと発生する磁界の大きさとを調節しても良い。
【0109】
なお、時間ΔTは、所期の大きさでソレノイドコイル106a〜cへの供給が開始された電流が当該大きさでコイルを流れるまで或いは当該大きさの電流で生起される磁界が形成されるまでの遷移に要する時間である。このような時間は、ウエハ107の処理のスループットの観点からより短い方が望ましい。
【0110】
このことから、制御器113a〜cには、例えばソレノイドコイル106a〜cに供給される電流を減衰・増進させる際に瞬時的に逆電流を印加し当該電流の立ち上がり時間を短縮するような機構を備えてもよい。
【0111】
本実施例との比較例として、上記実施例の磁界を時間の変化的に変調して供給しない従来の技術によるプラズマ処理装置における処理室104内のプラズマの分布の変化を図2および図3を用いて説明する。
【0112】
図2(a)、図3(a)は、従来技術に係るプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図である。また、図2(b)及び図3(b)は、図2(a)、図3(a)に示す従来技術に係るプラズマ処理装置の内部で実施されるウエハの処理の特性の分布を模式的に示すグラフである。
【0113】
これらの図に示す従来技術においても、処理容器215内部に配置された円筒形状を有する処理室204の上方でこれを覆って処理室204の内外を気密に封止する円板形状を有した誘電体製の窓部材205が配置される。また、窓部材205の上方に配置された円筒形の空洞203’とこれに連通して上方に配置された導波管203の内部を伝播してきたマイクロ波の電界が、窓部材205を透過して処理室204内に供給される。
【0114】
また、処理容器215の側壁の外周及び窓部材205または空洞203’の上方を覆って3個のリング状のソレノイドコイル206a,206b,206cが配置されている。これらの各々に電気的に接続されたコイル用電源214a,214b,214cから直流電流が供給されて、各々のソレノイドコイルがソレノイドコイル206a,206b,206cが形成する磁界が処理室204内に供給される。
【0115】
さらに、このような磁界とマイクロ波の電界との相互作用により処理室204内に形成されたECR(電子サイクロトロン共鳴)面223とこれを含む周囲の空間において、図示しないガス導入口から処理室204内に導入されたガスの原子または分子が励起されてプラズマ222が生成される。このプラズマ222中の荷電粒子の動きはECR面223及び上記磁界の磁力線221に拘束される。
【0116】
このため、荷電粒子は当該磁力線221の向かう方向に沿って処理室204内を移動し円筒形を有した試料台208の略円形の上面に載せられて保持されたウエハ207上面に衝突する。このような荷電粒子の作用により、当該ウエハ207上面に配置された樹脂等のマスク層と処理対象の膜層とを含む複数層の膜構造の処理対象の膜層のエッチングが促進される。
【0117】
本比較例おいては、図2(a)に示すように、ECR面223におけるプラズマ222の粒子が処理室204の中心部に集中しその外周側での密度が中心部と比べ著しく小さい、謂わば中心に偏在している。この場合では、ウエハ207上面に到達するプラズマ222の粒子の単位面積当たり数(密度)は、当該ウエハ207の中心部で高く中心で最大の値を有してその外周側の領域においてウエハ207の外周端に近づくに伴って低くなる、所謂中高の分布となる。
【0118】
この理由は、上記のようにプラズマ222中の荷電粒子の動きが磁力線221に拘束されており、試料台208上方の処理室204内の磁力線221がウエハ207に向かって下向きに漏斗状の末広がりな分布の形状を有しているためである。そして、中心部に形成されたプラズマ222の荷電粒子は下向きに移動しつつウエハ207の外周端に向かって拡散するためである。
【0119】
このため、本例のウエハ207上面の径方向についてのエッチング速度の分布は、図2(b)に示すように、ウエハ207の中心部で最も高く、外周部に行くほど低くなるという、不均一な分布となる。
【0120】
次に、プラズマ222が中心部に集中して偏在している図2(a)で示した例に対して、真空容器の中心部の周囲にリング状にプラズマが形成された場合の処理の分布について図3を用いて説明する。
【0121】
本例では、図3(a)に示したように、導波管303から処理室304内に供給されたマイクロ波の電界により、処理室304内に形成されたプラズマ322の密度あるいは強度の高い領域が試料台308上方でリング状に分布する。このような条件では、ウエハ307上面に到達するプラズマ中の粒子の単位面積当たりの数(密度)の分布は、ウエハ307上面の半径方向についてその中心部と最外周部で低く、これらの間の領域で高くなる分布となる。
【0122】
このことから、ウエハ307上面の半径方向についてのエッチング速度の変化は、図3(b)に示すように、中心部と最外周部で低くこれらの間の点で最も高い極大値をとる、所謂M字状の不均一な分布となる。
【0123】
一方で、図1に示したプラズマ処理装置100は、その縦断面の中心が上下方向に3つの異なる高さ位置に配置されたソレノイドコイル114a,b,c各々に直流電源113a,b,cから供給される直流電力の電流を時間変調させる構成を備えている。以下に説明する例では、簡単のため時間変調して供給される電流の大きさは、これを示す信号が、所定の最小値及び最大値の各々が予め定められた各々の期間連続して出力されるパルス波形を有している例を説明する。
【0124】
本実施例では、直流電流の最小値が0以外の有限の絶対値を有する時間変調に基づいて大きさが調節された電流をソレノイドコイル106a〜cに供給する構成を備えても良い。
【0125】
このように、処理室104内に供給する電界または磁界の強度の大きさと時間とを調節した場合のプラズマの領域とウエハ107上面のエッチング速度の分布を図4乃至6を用いて説明する。なお、以下の説明における時刻t0乃至t5は、図10,11において説明された同じ名称の時刻に対応する。
【0126】
図4(a)は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置100において、コイル用電源113からソレノイドコイル106に最大値の直流の電力が供給されている時刻(t0)において処理室104内に形成されるプラズマ401の領域を模式的に示す縦断面図である。図4の状態において、ソレノイドコイル106a〜cに最大値の電流が供給されている期間において、処理室104内に生起される電子サイクロトロン共鳴(ECR)によって処理室104内に導入された処理用ガスの粒子が励起され、プラズマ401が生成される。
【0127】
この際のプラズマ401が存在する処理室104内の領域は、図2(a)に示したものと同等である。すなわち、ソレノイドコイル106a〜cが生起する各々の磁界が合成された磁界の磁力線402が処理室104の上下方向の中心軸の回りに対称且つ下向きに漏斗状に末広がりな形状で形成される。
【0128】
その一方で、処理室104内に形成されるプラズマ401中の荷電粒子は磁力線402の向きにその移動方向が制約される。このため、電子サイクロトロン共鳴により形成されるプラズマ401の密度または強度は、処理室104の中心部で最も高く、外周側にいくほど低くなるという分布になる。
【0129】
このようなプラズマ401および磁力線402の下方に配置された試料台108上面に載せられ保持されたウエハ107上面の中心から半径方向について当該上面上の各位置でのエッチング速度は、中心部で最も高く外周側に向かうほど低くなる分布となる。
【0130】
図10,11に示した通り、本実施例では、制御器113a〜c各々の動作により、コイル用電源114a〜c各々からソレノイドコイル106a〜cに供給される直流の電流の大きさが所定の各々の時間間隔で大小の2つの値となることを同期して繰り返すように調節される。図4乃至6に示す例では、電流の値が最大値にされている時刻t0からt1秒経過した時刻t1において、電流の大きさを最小値に向けて低減する動作が開始される。
【0131】
本例の電流の大きさが最小にされた状態では、ソレノイドコイル106a〜cから生起される磁界は、処理室104内においてイオン等のプラズマ401中の荷電粒子の移動方向を拘束することができず、実質的に磁界は処理室104に供給されていない(OFFにされる)状態となっている。時刻t1においてソレノイドコイル106a〜cに供給する電流の値が0にされて、これが時刻t5まで維持される構成であっても良い。
【0132】
図4(b)は、時刻t1からΔT以上の任意の時間が経過した時刻(時刻t2)における、処理室104内のプラズマ403が形成されている領域を模式的に示す縦断面図である。時刻t1においてソレノイドコイル106a〜cに供給される電流が制御器113a〜cにより最小値にされ、処理室104に供給されていた磁界が実質的に消滅することになる。
【0133】
このため、磁力線402によるプラズマ401内の荷電粒子が移動する方向の制約が低下または消滅し、荷電粒子は磁力線402よりも寧ろ自由な運動による拡散によって処理室104内を移動する。この結果、プラズマ403が形成されている領域は、その密度勾配に依存して磁界が形成されていた期間ではその密度が低かった領域に向かってプラズマ401の粒子が拡散したものになる。
【0134】
時刻t1後の時間では、処理室104の中心部に集中していたプラズマ401の粒子が外周側へ拡散する。このため、ウエハ107上面においても中心部のプラズマの密度が低下しその外周側の領域において増大する。
【0135】
つまり、時刻t0におけるプラズマの密度のウエハ107または処理室104の径方向についてのエッチング速度の分布と比較して、時刻t2以降の時刻のエッチング速度の分布は、ウエハ107上面の中心から外周縁に向かう方向ついて、中心部のエッチング速度が小さくなりその外周側の位置におけるエッチング速度が上昇するものとなる。つまり、当該分布はM字状となる。
【0136】
なお、本図及び以降の図において、プラズマが存在する領域をハッチングを施した箇所として図示しているが、これらはその密度が他より高い領域を模式的に表現したものである。すなわち、これらの本実施例および変形例においてハッチングされていない領域には当該プラズマを構成する粒子が存在しないことを意味していない。
【0137】
図5(a)は、時刻t2から任意の時間が経過した時刻(時刻t3)における、処理室104内のプラズマ501が形成されている領域を模式的に示す縦断面図である。本実施例では、時刻t1からt3までの間はコイル用電源114a〜cの各々からソレノイドコイル106a〜cの各々に供給される直流の電流は大きさが最小の値にされ、実質的に磁界は処理室104に供給されていない(OFFにされる)状態となっている。
【0138】
本例では、供給される直流の電流が0、つまり停止されていても良い。この時刻において実質的に処理室104内に磁力線は形成されていない。
【0139】
このため、図5におけるプラズマ501は、図4(b)の時刻t2におけるプラズマ403と比較して、プラズマ403の相対的に密度が高い領域がさらに処理室104の外周側に向かって拡散したものとなる。その分布は、当該プラズマ403と比較して、処理室104の中心部における密度がより低下し、その密度の大きな領域がより外周側の領域に移動したものとなる。
【0140】
つまり、プラズマ501の密度の分布は、ウエハ107の半径方向についての密度が最大となる位置が時刻t2のプラズマ403のものよりもさらにウエハ107の外周側にまで移動したものとなる。このため、この下方に位置するウエハ107上面のエッチング速度の分布は、ウエハ107の中心から外周側に向かう半径方向の、図4の場合よりも外周側の位置において最も高く、この位置から中心側及び外周側に向かって低くなるものとなる。
【0141】
図5(b)は、時刻t3から更に所定の時間が経過した時刻(t4)において、本実施例のプラズマ処理装置100の処理室104内に形成されたプラズマ502を模式的に示す縦断面図である。本実施例の時刻t3からt4までの間は、上記の時間t1〜t3と同様にコイル用電源114a〜cの各々からソレノイドコイル106a〜cの各々に供給される直流の電流は大きさが最小値にされこれらから形成され処理室104内に供給される磁界は実質的に0、つまり停止された状態となっている。
【0142】
つまり、処理室104内の荷電粒子に対して磁力線は処理室104内に実質的に形成されていない状態となる。このため、処理室104内の荷電粒子は磁力線402よりも寧ろ自由な運動による拡散によって処理室104内を移動する。
【0143】
図5(b)におけるプラズマ502は、図5(a)の時刻t3におけるプラズマ501が形成された領域からさらに処理室104の外周側に向かって拡散したものとなる。プラズマの密度の分布は、時刻t3におけるプラズマ分布501に対して、処理室中心部の値はより低下したものとなると共に、プラズマは処理室の壁に到達した状態になる。
【0144】
本実施例では、時刻t4においてウエハ107上面の中心から外周側に向かう半径方向の位置上においてプラズマ502の密度が極大となる位置はウエハ107の外周縁または外周の製品として処理される最外周の位置に達する。このため、時刻t4においてウエハ107上面または処理室104の中心と外周縁との間の径方向上の位置でのウエハ107上面のエッチング速度の分布は、中心で最も低くウエハ107の外周縁部で最も高い極大値をとり中心から外周縁に向かって高くなるものとなる。
【0145】
図6(a)は、時刻t4から更に所定の時間が経過した時刻(t5)において、本実施例のプラズマ処理装置100の処理室104内のプラズマの領域を模式的に示す縦断面図である。本実施例では、時刻t4からt5においても、時刻t1〜t4の時間と同様に、コイル用電源114a〜cの各々からソレノイドコイル106a〜cの各々に供給される直流の電流は大きさが最小値にされ、これらから形成され処理室104内に供給される磁界は実質的に0、つまり停止された状態となっている。
【0146】
このため、磁界は処理室104内に実質的に供給されておらず、時刻t5において処理室104内のプラズマは図5(b)に示したプラズマ502からさらに拡散された状態となっている。本例では、時刻t4後、プラズマは拡散を続け、ウエハ107または処理室104の半径方向についてプラズマの密度の最も高い位置はプラズマ502のものより処理室104の外周側に移動して、時刻t5以前に処理室104の放電室周囲を囲む真空容器115上部の円筒形の側壁の内側壁面に達する。
【0147】
通常、プラズマ中の粒子は温度の低い部材の表面に接触するとその有しているポテンシャルエネルギーを消失してしまう。図6(b)に示した本実施例は、時刻t5では励起され活性を具備したプラズマ中の粒子の大部分は側壁の内側壁面に接触して励起されたエネルギーを失った結果、プラズマモニタ102を介して検出されるプラズマの発光の強度は処理に実質的に寄与するプラズマが形成されていない状態であると判断される基準を下回る状態となる。
【0148】
このようにプラズマの分布が変化する本実施例において処理されるウエハ107上面におけるエッチング速度の分布の時間の進行に伴う変化は、次のようなものとなる。すなわち、ソレノイドコイル106a〜cからの磁界が処理室104内に供給される時刻t0〜t1の時間においては、ウエハ107中心部で最も高い極大を有するものとなる。
【0149】
ウエハ107または処理室104半径方向におけるエッチング速度が極大となる位置は、上記磁界の供給または磁力線の形成が停止またはこれと見做せる程度に低減される時刻t1から時刻t4の期間で、プラズマの拡散に伴ってウエハ107または処理室104の中心から半径方向の外周側に向かって徐々に移動する。その後、ウエハ107の最外周縁部に達しt5においてプラズマが処理室104の側壁面で消失する量が増大し実質的にエッチングを生起できなくなることにより、エッチング速度は全体で0になる。
【0150】
すなわち、ウエハ107上面のエッチング速度は、時刻t0からt5の期間において、時間の経過とともに中心部の値が極大から一様に減少する。また、外周縁部の値が最も低い状態から一様に増大して極大となった後急減する。
【0151】
本実施例では、ウエハ107の処理中は、上記のように時刻t0〜t1を含む期間に処理室104内部でECRによるプラズマを生起するための磁界が供給され、その後の時刻t2から時刻t5の期間に磁界の処理室104内部への供給が低減または停止される。期間t0〜t1及び期間t2〜t5の各々は、コイル用電源114a〜cの各々からソレノイドコイル106a〜cの各々に供給される直流の電流が最小値から増加して最大値にされ最大値が維持されるt0’〜t1の第1の期間及び最大値から最小値に減少して最小値が維持されるt1〜t5の第2の期間各々に含まれる。
【0152】
ウエハ107の処理中は、これらの2つの期間が連続したものを一纏まりとしたコイル用電源114a〜cからの直流の電力の供給またはソレノイドコイル106a〜cから処理室104への磁界の供給のサイクルが所定の周期で繰り返される。この結果、ウエハ107の処理中に、処理室104内にプラズマを形成する磁界が供給される期間と実質的に供給されない期間とが交互に繰り返される。
【0153】
上記の実施例において、ウエハ107の処理中に処理室104に供給されるマイクロ波の電界は、コイル用電源114a〜cからの直流の電力の供給またはソレノイドコイル106a〜cから処理室104への磁界の供給のサイクルに関わらず一定の強度を備えてマイクロ波発生用電源101から発生または導波管103から処理室104内に供給されても良い。或いは、当該直流の電力の供給または磁界の供給のサイクルに対応して、電界の発生または強度の大きさが増減されても良い。
【0154】
特に、当該サイクルに同期したサイクルで大小または所定値及び0との2つの強度のマイクロ波の電界がマイクロ波発生用電源101から発生または導波管103から処理室104内に供給されても良い。上記実施例では、マイクロ波の電界は、磁界の発生または供給のサイクルに関わらず一定の強度を備えて処理室104内に供給される。
【0155】
時間の経過に伴って上記のように動作するプラズマ処理装置100の処理室104内部に形成されるプラズマの時間平均としての密度あるいは強度の分布は、その中心から処理室104の内側壁に向かう方向上の偏りが抑制されたものとなる。このためプラズマによるエッチング処理のウエハ107上面における時間平均としてのエッチング速度は、図6(b)に示したように一様あるいは図2(b)、図3(b)に示したものと比較して偏りが低減されて均一により近づけられた分布となる。
【0156】
上記の図4乃至6に示した実施例は、プラズマ401が処理室104の中心部の領域に集中して形成される構成を備えたものであった。次に、この実施例の変形例として、処理室104内でのプラズマが当該処理室104の上下方向の中心軸の周りにリング状に集中して形成される構成において、ソレノイドコイルに供給する電力の大きさを時間の経過とともに変化させてプラズマが形成される領域を調節する例を、図7乃至図9を用いて説明する。
【0157】
図7は、図1に示す実施例の変形例に係るプラズマ処理装置内の処理室内に形成されるプラズマの領域を模式的に示す縦断面図である。本例に置いても、ウエハ107上面の処理対象の膜層のエッチング処理中は、任意の時刻t0からt1までの期間にコイル用電源114a〜cの各々からソレノイドコイル106a〜c各々に最大値の直流の電力が供給され、その後の時刻t2〜t5の期間に当該直流の電力の供給が停止または低減される。
【0158】
そして、当該のエッチング処理が開始され処理の終点が図示しない制御装置により検出されるまで、これらの2つの期間が連続して交互に繰り返される。図7(a)は、特には、ECRによるプラズマを用いるエッチング処理装置であるプラズマ処理装置100において、コイル用電源114a〜cの各々からソレノイドコイル106a〜c各々に最大値の直流の電力が供給されている時刻(t0)において処理室104内に形成されるプラズマ701の領域を模式的に示す縦断面図である。
【0159】
ソレノイドコイル106a〜cに電流の最大値が供給されている間、これらソレノイドコイル106a〜cから供給された磁界により処理室104内に生起される電子サイクロトロン共鳴(ECR)により形成されるECR面上でプラズマ701が生成される。本例のプラズマ701は、その密度が周囲より高い領域が円筒形を有した処理室104の試料台108上方のプラズマ形成用の空間である放電室の上下方向の中心軸周りにリング状に形成される。
【0160】
このようなプラズマ701は、ソレノイドコイル106a〜c各々が発生する磁界が合成されて形成される磁界の強度の分布が調節されることで、処理室104の試料台108上面上方の任意の高さに形成可能なECR面において、プラズマ701は処理室104の中心軸からウエハ107の半径方向について所定の距離だけ離れた位置で最も高い密度の極大値を有するように実現される。さらに、プラズマ701は、当該位置からウエハ107半径方向中心側ないしは外周側に距離が離れるほど密度が小さくなる分布を有するものとなる。
【0161】
処理室104内で、ソレノイドコイル106a〜cが生起する磁界により、処理室104内には処理室104中心軸周りに対称で下向きに末広がりとなる漏斗状の分布の形状を有する磁力線702が形成される。そして、プラズマ701中の荷電粒子の移動の方向がこの磁力線702の方向に拘束される。
【0162】
このため、放電室下方の試料台108上面上に吸着されて保持されたウエハ107の上面の中心から外周側に向かう半径方向の各々の位置におけるエッチング速度の分布は、中心と外周縁との間の或る位置において最も高い値(極大値)を有するものとなる。さらに、当該位置の中心側あるいは外周側の位置では極大となる位置から距離が離れる程に小さくなる分布となる。
【0163】
次に、本例において、時刻t0から所定の時間を経過した後の時刻t1でコイル用電源114a〜cからソレノイドコイル106a〜cに供給される直流の電流を停止した場合に、時刻t1以降の時刻で処理室104内を移動するプラズマが形成された領域を図7(b)及び図8,9を用いて説明する。図7(b)は本例のプラズマ処理装置の時刻t1での処理室104内でプラズマが形成されている領域を模式的に示す縦断面図である。
【0164】
また、図8(a)は時刻t1から所定の時間経過した時刻t2での、図8(b)はt2の後の時刻t3での処理室104内でプラズマが形成されている領域を模式的に示す縦断面図である。さらに、図9(a)はt3の後の時刻t4での、図9(b)は時刻t4の後の時刻t5での処理室104内でプラズマが形成されている領域を模式的に示す縦断面図である。
【0165】
図7(b)では、時刻t1から所定の時間が経過した時刻t2における処理室104内に形成されたプラズマ702の領域がハッチングされて示されている。本例では、上記実施例と同様に、ソレノイドコイル106a〜cに最大値のものが供給されていた直流の電流が時刻t1において低減が開始され時刻t2までの間当該低減され続けている。
【0166】
そして、時刻t1〜t2の期間では、時刻t1以前で処理室104内に形成されていた磁界による磁力線402が低減されこれによるプラズマ702中の荷電粒子が移動する方向の制約が低減される。時刻t1においてプラズマ702の密度の高い領域に在った荷電粒子は、時刻t1でその密度が低かった領域に向かってその密度勾配に依存して拡散する。
【0167】
このため、時刻t0からt1においては処理室104内でECR面上で処理室104の上下方向の中心軸から特定の距離離れた半径方向の位置で中心軸の周りにリング状に集中して形成されていたプラズマ701は、時刻t1以後は当該半径方向の特定の位置から、密度の低い中心側および外周側へ拡散する。このため、ウエハ107上面においても、前記特定の位置に対応する中心と外周縁との間の半径方向の位置に到達するプラズマ中の活性の高い粒子の密度が低下し、中心および外周側の位置での粒子の密度が増大する。
【0168】
このことから、ウエハ107上面のエッチング速度は、時刻t0のものと比較して、前記特定の位置に対応する中心と外周縁との中間間の半径方向の位置の値が低下し、これより中心側および外周側の位置でのエッチング速度が上昇する分布となる。
【0169】
図8(a)に、時刻t2からさらに時間が経過した時刻t3における処理室104内のプラズマ801が形成された領域を模式的に示す。本変形例においても実施例と同様、時刻t2からt3の間においては、コイル用電源114a〜cからソレノイドコイル106a〜cに供給される直流の電力は0または所定の最低値にされる。
【0170】
この際、ソレノイドコイル106a〜cから処理室104内に供給される磁界によりウエハ107のエッチングを生起させるだけの強度または密度を有したプラズマは形成されておらず、時刻t2後の時刻t3において実質的に処理室104内に磁界は供給されていない。このため、時刻t3のプラズマ801は、時刻t2におけるプラズマ702と比較して、荷電粒子の移動は、磁力線による移動の方向の制約が低減されて荷電粒子の自由な拡散に寧ろ近いものとなる。
【0171】
このため、プラズマ801は、時刻t2〜t3の期間でプラズマ701ではその密度が相対的に小さかった領域である処理室104の中心側及び外周側に荷電粒子の拡散が進行した結果、プラズマ701と比較して密度あるいは強度が高い部分が集中している領域が外周側に移動した分布となる。さらに、本例では、中心部でのプラズマ801の密度または強度は低下している。
【0172】
このため、ウエハ107上面に到達する時刻t3のプラズマ801の粒子の密度が極大となる位置は、時刻t2のものと比べ、外周側に移動したものとなる。そして、その中心側及び外周側の箇所において当該極大となる位置との距離が離れるほどほど、つまり中心または外周縁に近づくほど低くなる分布となる。
【0173】
図8(b)に、時刻t3から更に時間が経過した時刻t4における処理室104内のプラズマ802が形成された領域を模式的に示す。本例でも実施例と同様に、時刻t3からt4の間においてもソレノイドコイル106a〜cに供給される直流の電力は所定の最小値または0にされている。
【0174】
このため、時刻t3〜t4の期間においても時刻t2〜t3と同様に、ソレノイドコイル106a〜cが発生する磁界は処理室104内に実質的に供給されていない。このことから、プラズマ802は、時刻t3におけるプラズマ分布801と比較して、さらに拡散されたものとなり処理室104中心部の密度はより低下し、ウエハ107または処理室104の半径方向について密度の極大となる位置は外周側に移動したものとなる。
【0175】
本例では、時刻t4においてウエハ107上面の中心から外周側に向かう半径方向の位置上においてプラズマ802の密度が極大となる位置はウエハ107の外周縁または外周の製品として処理される最外周の位置に達する。このため、時刻t4においてウエハ107上面の中心から外周側に向かう半径方向上の位置でのエッチング速度の分布は、ウエハ107の外周縁部で最も高い極大となり中心側に向かって低くなるものとなる。
【0176】
図9(a)に、時刻t4から更に時間が経過した時刻t5における、処理室104内に形成されたプラズマの状態を模式的に示している。本実施例では、時刻t4からt5においても、時刻t2〜t4の時間と同様に、コイル用電源114a〜cの各々からソレノイドコイル106a〜cの各々に供給される直流の電流は絶対値の大きさが最小値または0にされている。
【0177】
このため、時刻t4〜t5の期間においても、処理室104内に磁界は実質的に供給されていない。時刻t5において処理室104内のプラズマは図8(b)に示したプラズマ802からさらに拡散された状態となっている。
【0178】
本例では、時刻t4後、プラズマは拡散を続け、ウエハ107または処理室104の半径方向についてプラズマの密度の最も高い位置はプラズマ802のものより処理室104の外周側に移動して、時刻t5以前に処理室104の放電室周囲を囲む真空容器115上部の円筒形の側壁の内側壁面に達する。時刻t5では、励起され活性を具備したプラズマ中の粒子の大部分は側壁の内側壁面に接触して励起されたエネルギーを失う。
【0179】
この結果、プラズマモニタ102を介して検出されるプラズマの発光の強度の時刻t5に対応するデータは、処理に実質的に寄与するプラズマが形成されていない状態であると判断される基準を下回るものとなる。
【0180】
このようにプラズマの分布が変化する本実施例において処理されるウエハ107上面におけるエッチング速度の分布の時間の進行に伴う変化は、次のようなものとなる。すなわち、コイル用電源114a〜cから直流の電流の最大値が供給されソレノイドコイル106a〜cからの磁界が処理室104内に供給される時刻t0〜t1の時間においては、ウエハ107の半径方向について中心と外周縁との間の特定の位置において最も高い極大を有するものとなる。
【0181】
ウエハ107または処理室104半径方向におけるエッチング速度が極大となる位置は、上記磁界の供給または磁力線の形成が停止またはこれと見做せる程度に低減される時刻t1から時刻t4の期間で、プラズマの拡散に伴ってウエハ107または処理室104の中心から半径方向の外周側に向かって徐々に移動する。その後、ウエハ107の最外周縁部に達しt5においてプラズマが処理室104の側壁面で消失する量が増大し実質的にエッチングを生起できなくなることにより、エッチング速度は全体で0になる。
【0182】
すなわち、ウエハ107上面のエッチング速度は、時刻t0からt5の期間において、時間の経過とともに中心部の値が極大から一様に減少する。また、外周縁部の値が最も低い状態から一様に増大して極大となった後急減する。本例においても、ウエハ107の処理中は、上記のように時刻t0〜t1を含む期間に処理室104内部でECRによるプラズマを生起するための磁界が供給され、その後の時刻t2から時刻t5の期間に磁界の処理室104内部への供給が低減または停止される。
【0183】
期間t0〜t1及び期間t2〜t5の各々は、コイル用電源114a〜cの各々からソレノイドコイル106a〜cの各々に供給される直流の電流が最小値から増加して最大値にされ最大値が維持されるt0’〜t1の第1の期間及び最大値から最小値に減少して最小値が維持されるt1〜t5の第2の期間各々に含まれる。ウエハ107の処理中は、これらの2つの期間が連続したものを一纏まりとしたサイクルが所定の周期で繰り返される。
【0184】
この結果、ウエハ107の処理中に、処理室104内にプラズマを形成する磁界が供給される期間と実質的に供給されない期間とが交互に繰り返される。本例においても、ウエハ107の処理中に処理室104に供給されるマイクロ波の電界は、上記2つの期間が繰り返されるコイル用電源114a〜cからの直流の電力の供給またはソレノイドコイル106a〜cから処理室104への磁界の供給のサイクルに関わらず一定の強度を備えてマイクロ波発生用電源101から発生または導波管103から処理室104内に供給される。
【0185】
当該直流の電力の供給または磁界の供給のサイクルに対応して、電界の発生または強度の大きさが増減されても良く、特に、当該サイクルに同期したサイクルで大小または所定値及び0との2つの強度のマイクロ波の電界がマイクロ波発生用電源101から発生または導波管103から処理室104内に供給されても良い。
【0186】
時間の経過に伴って上記のように動作するプラズマ処理装置100の処理室104内部に形成されるプラズマの時間平均としての密度あるいは強度の分布は、その中心から処理室104の内側壁に向かう方向上の偏りが抑制されたものとなる。このためプラズマによるエッチング処理のウエハ107上面における時間平均としてのエッチング速度は、図9(b)に示したように一様あるいは図2(b)、図3(b)に示したものと比較して偏りが低減されて均一により近づけられた分布となる。
【0187】
以上説明した通り、本実施例のように、プラズマモニタ102を用いて検出したプラズマの状態に基づいてソレノイドコイル106a〜cに供給する電流を時間変調させて供給することで、処理室104内に形成されるプラズマの強度或いは密度の高い領域をウエハ107の半径方向について処理室104内またはウエハ107上面を時間的に移動させる、或いは分配する。このことにより、時間の経過に伴うウエハ107上面の処理の進行の度合いや速度の偏りを低減して、ウエハ107上面の処理の結果をより均一に近づけることができる。
【0188】
図1乃至11に示した実施例及び変形例では、ウエハ107の処理中において、ソレノイドコイル106a〜cにコイル用電源114a〜cから、交互に繰り返される連続する2つの期間各々で大きさが異なる値に調節されて、直流の電力が供給される。ウエハ107の処理中において、電流の大きさは、任意の回数目の第1の期間である時刻t0’〜t1では最小値から最大値に増加されて時刻t0〜t1で当該最大値が維持され、当該任意の回数目の第1の期間に続く当該任意の回数目の第2の期間である時刻t1〜t5では最大値から最小値に向かって低減され、特に時刻t2〜t5の間では当該最小値が維持される。
【0189】
上記の例では、プラズマモニタ102を通して検出されるプラズマからの発光強度が所定の許容範囲を下回ったことが検出された後、時刻t5において、制御装置からの指令信号に応じてコイル用電源114a〜cからソレノイドコイル106a〜cに供給される直流の電力の大きさが増加される任意の回数+1回目の第1の期間が再度開始される。すなわち、任意の回数目の第2の期間が終了する時刻t5がその次の回数目の第1の期間が開始される時刻t0’となり、この次の回数目の第1の期間が時刻t1(任意の回数目の時刻t5から(t1−t0’)秒後)で終了すると、引き続いて次の回数目の第2の期間が開始され、このような第1、第2の期間がウエハ107の処理中に繰り返される。
【0190】
一方、第2の期間は少なくとも拡散が生じる時間を持たせるだけ、例えば、上記実施例の時刻t1からt3までを1周期として時刻t1においてプラズマの密度が極大の箇所が拡散して処理室104の外周側に向かって移動し処理室104の外周側の内壁面に接して消失するのを待たずに次の(新たな)プラズマを生成する第1の期間を開始し、これを繰り返してプラズマの生成と拡散とを繰り返すようにしても良い。この場合でも、マイクロは発生用電源101により発振されて形成されたマイクロ波は、繰り返される第1、第2の期間にわたり連続して導波管103内を伝播し窓部材105を透過して処理室104内に供給される。
【0191】
このような第1、第2の期間が繰り返されるウエハ107の処理中の処理室104においては、内部でプラズマが生成されている任意の回数目の第1の期間ではソレノイドコイル106a〜cにより形成された磁場が供給され、この磁界により当該任意の回数目の第1の期間の前の(任意の回数−1回目の)第2の期間において既に拡散中のプラズマを構成する荷電粒子の動きは磁力線の向きに沿った方向に制限されて拡散が抑制される。このため、任意の回数−1回目の第2の期間で拡散しているプラズマの密度が極大となる箇所は、処理室104またはウエハ107の半径方向の特定の位置に留められ、任意の回数目の第1の期間が終了して次の(任意の回数目の)第2の期間が開始されソレノイドコイル106a〜cに供給される電流が低減され或いは停止されてこれらから処理室104内に供給される磁界の強度が低下或いは最低値にされ当該磁界による上記拘束が低減または取り除かれ任意の回数−1回目の第2の期間に拡散していたプラズマ中の荷電粒子は任意の回数目の第1の期間で形成されたプラズマ中の粒子とともに拡散する。
【0192】
この際、任意の回数−1目の第2の期間中に拡散していたプラズマの粒子の密度は、磁界によって移動方向が制限されている任意の回数目の第1の期間中に減少するものの、ソレノイドコイル106a〜cから処理室104への磁界の供給が低減または停止され当該プラズマ中の粒子が処理室104の内側壁面に向かって拡散してプラズマが消失するまで第2の期間が継続する上記実施例の場合と比べ、処理室104またはウエハ107の半径方向の同じ位置で高い密度が維持される。上記の通り、マイクロ波が処理室104内に第2の期間中も供給されている本例では、当該マイクロ波の強度がその電界のみによってプラズマを形成できる値以上にされている場合は、第2の期間中におけるプラズマの密度をマイクロ波のみで形成されるプラズマでの密度以上の値に制御することができる。
【0193】
さらに、本例では、任意の回数目の第1の期間で形成されたプラズマは、続く第2の期間でこれ以前に形成されて拡散していたプラズマと共に拡散を開始する。このため、より密度の高いプラズマを処理室104内のウエハ107の半径方向の複数位置において、形成あるいは拡散させることができ、ウエハ107の半径方向についての処理の均一性あるいは速度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0194】
100…プラズマ処理装置、101…マイクロ波発生用電源、102…プラズマモニタ、103…導波管、104…処理室、105…窓部材、106a,106b,106c…ソレノイドコイル、107…ウエハ、108…試料台、109…直流電源、110…高周波電源、111…高周波フィルタ、112…マッチング回路、113a,113b,113c…制御器、114a,114b,114c…コイル用電源、115…真空容器、203…導波管、204…処理室、205…窓部材、206a,206b,206c…ソレノイドコイル、208…試料台、214a,214b,214c…コイル用電源215…処理容器、221…磁力線、222…プラズマ、223…ECR面、224…ECR面のプラズマ、401…プラズマ、402…磁力線、403…プラズマ、501,502…プラズマ、701,702…プラズマ、801,802…プラズマ。
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