(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図17(B)に基づいて説明する。
【0013】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の概略構成が示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、すなわち、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行なう。
【0014】
露光装置100は、照明系10、レチクルRを保持するレチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハWが載置されるウエハステージWST1,WST2を含むウエハステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。
【0015】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系とを含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステム)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0016】
レチクルステージRST上には、回路パターンなどがそのパターン面(
図1における下面)に形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(
図1では不図示、
図6参照)によって、XY平面内で微少駆動可能であるとともに、走査方向(
図1における紙面直交方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0017】
レチクルステージRSTのXY平面(移動面)内の位置情報(θz方向の位置(θz回転量)の情報を含む)は、
図1に示される、移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)に測長ビームを照射するレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。なお、レチクルRの少なくとも3自由度方向の位置情報を計測するために、レチクル干渉計16の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書などに開示されているエンコーダシステムを用いても良い。
【0018】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの
図1における下方(−Z側)に配置され、不図示のボディの一部を構成するメインフレーム(メトロロジーフレーム)に保持されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、該鏡筒40に保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLとを有している。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)からなる屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによって照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の、前記照明領域IARに共役な領域(露光領域)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWST1、WST2との同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0019】
なお、メインフレームは、従来用いられている門型、及び例えば米国特許出願公開第2008/0068568号明細書などに開示される吊り下げ支持型のいずれであっても良い。
【0020】
鏡筒40の−Z側端部の周囲には、例えば鏡筒40の下端面とほぼ同一面となる高さで、スケール板21がXY平面に平行に配置されている。スケール板21は、本実施形態では
図2に示されるように、例えばL字状の4つの部分(部品)21
1,21
2,21
3,21
4から構成され、その中央に形成される例えば矩形の開口21a内に鏡筒40の−Z側端部が挿入されている。ここで、スケール板21のX軸方向及びY軸方向の幅はそれぞれa及びb、開口21aのX軸方向及びY軸方向の幅はそれぞれai及びbiである。
【0021】
スケール板21から+X方向に離間した位置には、
図1に示されるように、スケール板21とほぼ同一平面上にスケール板22が、配置されている。スケール板22も、
図3に示されるように、例えばL字状の4つの部分(部品)22
1,22
2,22
3,22
4から構成され、その中央に形成される例えば矩形の開口22a内に後述するアライメント系ALGの−Z側端部が挿入されている。スケール板22のX軸方向及びY軸方向の幅はそれぞれa及びb、開口22aのX軸方向及びY軸方向の幅はそれぞれai及びbiである。なお、本実施形態ではX軸及びY軸方向に関してスケール板21、22の幅、及び開口21a、22aの幅をそれぞれ同一としたが、必ずしも同一の幅とする必要はなく、X軸及びY軸方向の少なくとも一方に関してその幅を異ならせても良い。
【0022】
本実施形態では、スケール板21,22は、投影ユニットPU及びアライメント系ALGを支持する不図示のメインフレーム(メトロロジーフレーム)に吊り下げ支持されている。スケール板21,22の下面(−Z側の面)には、X軸を基準とする45度方向(Y軸を基準とする−45度方向)を周期方向とする所定ピッチ、例えば1μmの格子と、X軸を基準とする−45度方向(Y軸を基準とする−135度方向)を周期方向とする所定ピッチ、例えば1μmの格子とから成る反射型の2次元回折格子RG(
図2、
図3及び
図4参照)が形成されている。ただし、2次元回折格子RG及び後述するエンコーダヘッドの構成上、スケール板21,22を構成する部分21
1〜21
4,22
1〜22
4のそれぞれの外縁近傍には幅tの非有効領域が含まれる。スケール板21,22の2次元回折格子RGは、それぞれ、少なくとも露光動作時及びアライメント(計測)時におけるウエハステージWST1,WST2の移動範囲をカバーしている。
【0023】
ウエハステージ装置50は、
図1に示されるように、床面上に複数(例えば3つ又は4つ)の防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたステージベース12、ステージベース12上に配置されたウエハステージWST1,WST2、ウエハステージWST1,WST2を駆動するウエハステージ駆動系27(
図1では一部のみ図示、
図6参照)、及びウエハステージWST1,WST2の位置を計測する計測系等を備えている。計測系は、
図6に示される、エンコーダシステム70,71及びウエハレーザ干渉計システム(以下、ウエハ干渉計システムと略称する)18等を備えている。なお、エンコーダシステム70,71及びウエハ干渉計システム18については、さらに後述する。ただし、本実施形態では、ウエハ干渉計システム18は必ずしも設けなくても良い。
【0024】
ステージベース12は、
図1に示されるように、平板状の外形を有する部材からなり、その上面は平坦度が高く仕上げられ、ウエハステージWST1,WST2の移動の際のガイド面とされている。ステージベース12の内部には、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル14aを含むコイルユニットが、収容されている。
【0025】
なお、ステージベース12とは別にこれを浮上支持するための別のベース部材を設けて、ステージベース12を、ウエハステージWST1,WST2の駆動力の反力の作用により、運動量保存則に従って移動するカウンターマス(反力キャンセラ)として機能させても良い。
【0026】
ウエハステージWST1は、
図1に示されるように、ステージ本体91と、該ステージ本体91の上方に配置され、不図示のZ・チルト駆動機構によって、ステージ本体91に対して非接触で支持されたウエハテーブルWTB1とを有している。この場合、ウエハテーブルWTB1は、Z・チルト駆動機構によって、電磁力等の上向きの力(斥力)と、自重を含む下向きの力(引力)との釣り合いを3点で調整することで、非接触で支持されるとともに、少なくともZ軸方向、θx方向、及びθy方向の3自由度方向に微小駆動される。ステージ本体91の底部には、スライダ部91aが設けられている。スライダ部91aは、XY平面内でXY二次元配列された複数の磁石から成る磁石ユニットと、該磁石ユニットを収容する筐体と、該筐体の底面の周囲に設けられた複数のエアベアリングとを有している。磁石ユニットは、前述のコイルユニットとともに、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示される電磁力(ローレンツ力)駆動による平面モータ30を構成している。なお、平面モータ30としては、ローレンツ力駆動方式に限らず、可変磁気抵抗駆動方式の平面モータを用いることもできる。
【0027】
ウエハステージWST1は、上記複数のエアベアリングによってステージベース12上に所定のクリアランス(隙間/間隔/間隙(ギャップ)/空間距離)、例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持され、平面モータ30によって、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に駆動される。従って、ウエハテーブルWTB1(ウエハW)は、ステージベース12に対して、6自由度方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向(以下、X,Y,Z,θx、θy、θz)と略記する)に駆動可能である。
【0028】
本実施形態では、コイルユニットを構成する各コイル14aに供給される電流の大きさ及び方向が、主制御装置20によって制御される。平面モータ30と、前述のZ・チルト駆動機構とを含んで、ウエハステージ駆動系27が構成されている。なお、平面モータ30はムービングマグネット方式に限らず、ムービングコイル方式でも良い。また、平面モータ30として、磁気浮上方式の平面モータを用いても良い。この場合、前述のエアベアリングを設けなくても良い。また、平面モータ30によってウエハステージWST1を6自由度方向に駆動することとしても良い。また、ウエハテーブルWTB1を、X軸方向、Y軸方向、θz方向のうちの少なくとも一方向に微動可能としても良い。すなわち、ウエハステージWST1を粗微動ステージにより構成しても良い。
【0029】
ウエハテーブルWTB1上には、不図示のウエハホルダを介してウエハWが載置され、不図示のチャック機構によって例えば真空吸着(又は静電吸着)され、固定されている。図示していないが、ウエハテーブルWTB1上の一方の対角線上には、ウエハホルダを挟んで第1基準マーク板と第2基準マーク板とが設けられている。第1、第2基準マーク板の上面には、後述する一対のレチクルアライメント系13A,13B及びアライメント系ALGにより検出される複数の基準マークがそれぞれ形成されている。なお、第1、第2基準マーク板の複数の基準マークの位置関係は既知であるものとする。
【0030】
ウエハステージWST2も、ウエハステージWST1と同様に構成されている。
【0031】
エンコーダシステム70,71は、それぞれ、投影光学系PL直下の領域を含む露光時移動領域とアライメント系ALG直下の領域を含む計測時移動領域とにおけるウエハステージWST1,WST2の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報を求める(計測する)。ここで、エンコーダシステム70,71の構成等について詳述する。なお、露光時移動領域(第1移動領域)は、投影光学系PLを介してウエハの露光が行われる露光ステーション(第1領域)内で、露光動作中にウエハステージが移動される領域であり、その露光動作は、例えばウエハ上でパターンを転写すべき全てのショット領域の露光だけでなく、その露光のための準備動作(例えば、前述の基準マークの検出)なども含む。計測時移動領域(第2移動領域)は、アライメント系ALGによるウエハのアライメントマークの検出によってその位置情報の計測が行われる計測ステーション(第2領域)内で、計測動作中にウエハステージが移動される領域であり、その計測動作は、例えばウエハの複数のアライメントマークの検出だけでなく、アライメント系ALGによる基準マークの検出(さらには、Z軸方向に関するウエハの位置情報(段差情報)の計測)なども含む。
【0032】
ウエハテーブルWTB1,WTB2には、それぞれ
図2及び
図3の平面図に示されるように、上面の4隅のそれぞれにエンコーダヘッド(以下、適宜、ヘッドと略称する)60
1〜60
4が配置されている。ここで、ヘッド60
1,60
2間のX軸方向の離間距離とヘッド60
3,60
4間のX軸方向の離間距離は互いに等しくAである。また、ヘッド60
1,60
4間のY軸方向の離間距離とヘッド60
2,60
3間のY軸方向の離間距離は互いに等しくBである。これらの離間距離A,Bは、スケール板21の開口21aの幅ai,biよりも大きい。厳密には、前述の非有効領域の幅tを考慮して、A≧ai+2t,B≧bi+2tである。ヘッド60
1〜60
4は、
図4にヘッド60
1を代表的に採り上げて示されるように、ウエハテーブルWTB1,WTB2に形成されたZ軸方向の所定深さの穴の内部にそれぞれ収容されている。
【0033】
ヘッド60
1は、
図5に示されるように、X軸を基準とする135度方向(すなわちX軸を基準とする−45度方向)及びZ軸方向を計測方向とする2次元ヘッドである。同様に、ヘッド60
2〜60
4は、それぞれ、X軸を基準とする225度方向(すなわちX軸を基準とする45度方向)及びZ軸方向、X軸を基準とする315度方向(すなわちX軸を基準とする−45度方向)及びZ軸方向、X軸を基準とする45度方向及びZ軸方向を計測方向とする2次元ヘッドである。ヘッド60
1〜60
4は、
図2及び
図4から明らかなように、それぞれ、対向するスケール板21の部分21
1〜21
4又はスケール板22の部分22
1〜22
4の表面に形成された2次元回折格子RGに計測ビームを照射し、2次元回折格子からの反射・回折ビームを受光することにより、それぞれの計測方向についてのウエハテーブルWTB1,WTB2(ウエハステージWST1,WST2)の位置を計測する。ここで、ヘッド60
1〜60
4のそれぞれとして、例えば米国特許第7,561,280号明細書に開示される変位計測センサヘッドと同様の構成のセンサヘッドを用いることができる。
【0034】
上述のようにして構成されたヘッド60
1〜60
4では、計測ビームの空気中での光路長が極短いため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。ただし、本実施形態では、光源及び光検出器は各ヘッドの外部、具体的には、ステージ本体91の内部(又は外部)に設けられ、光学系のみが各ヘッドの内部に設けられている。そして、光源及び光検出器と、光学系とは、不図示の光ファイバを介して光学的に接続されている。ウエハテーブルWTB(微動ステージ)の位置決め精度を向上させるため、ステージ本体91(粗動ステージ)とウエハテーブルWTB(微動ステージ)との間(以下、粗微動ステージ間と略述する)で、レーザ光等を空中伝送しても良いし、あるいはヘッドをステージ本体91(粗動ステージ)に設けて、該ヘッドによりステージ本体91(粗動ステージ)の位置を計測し、かつ別のセンサで粗微動ステージ間の相対変位を計測する構成としても良い。
【0035】
ウエハステージWST1,WST2が前述の露光時移動領域内に位置する際には、ヘッド60
1は、スケール板21(の部分21
1)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板21の表面(下面)に形成されたX軸を基準とする135度方向、すなわちX軸を基準とする−45度方向(以下、単に−45度方向と称する)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1,WTB2の−45度方向及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70
1、71
1(
図6参照)を構成する。同様に、ヘッド60
2〜60
4は、それぞれ、スケール板21(の部分21
2〜21
4)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板21の表面(下面)に形成されたX軸を基準とする225度方向、すなわちX軸を基準とする+45度方向(以下、単に45度方向と称する)、315度方向、すなわちX軸を基準とする−45度方向、及び45度方向を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1,WTB2の225度(45度)方向及びZ軸方向の位置、315度(−45度)方向及びZ軸方向の位置、及び45度方向及びZ軸方向の位置、を計測する2次元エンコーダ70
2〜70
4、71
2〜71
4(
図6参照)を構成する。
【0036】
また、ウエハステージWST1,WST2が前述の計測時移動領域内に位置する際には、ヘッド60
1は、スケール板22(の部分22
1)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板22の表面(下面)に形成された135度方向(−45度方向)を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1,WTB2の135度方向及びZ軸方向の位置を計測する2次元エンコーダ70
1、71
1(
図6参照)を構成する。同様に、ヘッド60
2〜60
4は、それぞれ、スケール板22(の部分22
2〜22
4)に計測ビーム(計測光)を照射し、スケール板22の表面(下面)に形成された225度方向(45度方向)、315度方向(−45度方向)、及び45度方向を周期方向とする格子からの回折ビームを受光して、ウエハテーブルWTB1,WTB2の225度方向(45度方向)及びZ軸方向の位置、315度方向(−45度方向)及びZ軸方向の位置、及び45度方向及びZ軸方向の位置を、それぞれ計測する2次元エンコーダ70
2〜70
4、71
2〜71
4(
図6参照)を構成する。
【0037】
上述の説明からわかるように、本実施形態では、スケール板21,22のどちらに計測ビーム(計測光)を照射するか、すなわち、ウエハステージWST1,WST2が前述の露光時移動領域、計測時移動領域のいずれの領域内にあるかにかかわらず、ウエハステージWST1上のヘッド60
1〜60
4は、計測ビーム(計測光)を照射しているスケール板とともに、それぞれ2次元エンコーダ70
1〜70
4を構成し、ウエハステージWST2上のヘッド60
1〜60
4は、計測ビーム(計測光)を照射しているスケール板とともに、それぞれ2次元エンコーダ71
1〜71
4を構成するものとしている。
【0038】
2次元エンコーダ(以下、適宜、エンコーダと略称する)70
1〜70
4,71
1〜71
4のそれぞれの計測値は、主制御装置20(
図6参照)に供給される。主制御装置20は、2次元回折格子RGが形成されたスケール板21(を構成する部分21
1〜21
4)の下面に対向する少なくとも3つのエンコーダ(すなわち、有効な計測値を出力している少なくとも3つのエンコーダ)の計測値に基づいて、投影光学系PL直下の領域を含む露光時移動領域内でのウエハテーブルWTB1,WTB2の位置情報を求める。同様に、主制御装置20は、2次元回折格子RGが形成されたスケール板22(を構成する部分22
1〜22
4)の下面に対向する少なくとも3つのエンコーダ(すなわち、有効な計測値を出力している少なくとも3つのエンコーダ)の計測値に基づいて、アライメント系ALG直下の領域を含む計測時移動領域内でのウエハテーブルWTB1,WTB2の位置情報を求める。
【0039】
また、本実施形態の露光装置100では、ウエハステージWST1,WST2(ウエハテーブルWTB1,WTB2)の位置は、ウエハ干渉計システム18(
図6参照)によって、エンコーダシステム70,71とは独立して、計測可能である。ウエハ干渉計システム18の計測結果は、エンコーダシステム70,71の計測値の長期的変動(例えばスケールの経時的な変形などによる)を補正(較正)する場合、あるいはエンコーダシステム70,71の出力異常時のバックアップ用などとして補助的に用いられる。なお、ウエハ干渉計システム18の詳細は省略する。
【0040】
アライメント系ALGは、
図1に示されるように、投影光学系PLの+X側に所定間隔を隔てて配置されたオフアクシス方式のアライメント系である。本実施形態では、アライメント系ALGとして、一例としてハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光でマークを照明し、このマーク画像を画像処理することによってマーク位置を計測する画像処理方式のアライメントセンサの一種であるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。アライメント系ALGからの撮像信号は、不図示のアライメント信号処理系を介して主制御装置20(
図6参照)に供給される。
【0041】
なお、アライメント系ALGとしては、FIA系に限らず、例えばコヒーレントな検出光をマークに照射し、そのマークから発生する散乱光又は回折光を検出する、あるいはマークから発生する2つの回折光(例えば同次数の回折光、あるいは同方向に回折する回折光)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。アライメント系ALGとして、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示される、複数の検出領域を有するアライメント系を採用しても良い。
【0042】
この他、本実施形態の露光装置100には、アライメント系ALGと一緒に計測ステーションに配置され、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(
図1では不図示、
図6参照)が設けられている。多点AF系AFによる計測動作はその少なくとも一部がアライメント系ALGによるマーク検出動作と並行して行われるとともに、前述のエンコーダシステムによってその計測動作中にウエハテーブルの位置情報が計測される。多点AF系AFの検出信号は、AF信号処理系(不図示)を介して主制御装置20に供給される(
図6参照)。主制御装置20は、多点AF系AFの検出信号と前述のエンコーダシステムの計測情報に基づいて、ウエハW表面のZ軸方向の位置情報(段差情報/凹凸情報)を検出し、露光動作ではその事前検出情報と前述のエンコーダシステムの計測情報(Z軸、θx及びθy方向の位置情報)とに基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、露光ステーション内で投影ユニットPUの近傍に多点AF系を設け、露光動作時にウエハ表面の位置情報(凹凸情報)を計測しつつウエハテーブルを駆動して、ウエハWのフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。
【0043】
露光装置100では、さらに、レチクルRの上方に、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに開示される露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)方式の一対のレチクルアライメント系13A,13B(
図1では不図示、
図6参照)が設けられている。レチクルアライメント系13A,13Bの検出信号は、不図示のアライメント信号処理系を介して主制御装置20に供給される。なお、レチクルアライメント系に代えて、ウエハステージWST上に設けられた不図示の空間像計測器を用いてレチクルアライメントを行っても良い。
【0044】
図6には、露光装置100のステージ制御に関連する制御系が一部省略して、ブロック図にて示されている。この制御系は、主制御装置20を中心として構成されている。主制御装置20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなるいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、装置全体を統括して制御する。
【0045】
上述のようにして構成された露光装置100では、デバイスの製造に際し、主制御装置20により、ウエハがローディングされたウエハステージWST1,WST2の一方を計測ステーション(計測時移動領域)内で移動して、アライメント系ALG及び多点AF系によるウエハの計測動作が実行される。すなわち、計測時移動領域内でウエハステージWST1,WST2の一方に保持されたウエハWに対して、アライメント系ALGを用いたマーク検出、いわゆるウエハアライメント(例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示されるエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)など)と、多点AF系を用いたウエハの面情報(段差/凹凸情報)の計測とが行われる。その際、エンコーダシステム70(エンコーダ70
1〜70
4)又はエンコーダシステム71(エンコーダ71
1〜71
4)により、ウエハステージWST1,WST2の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報が求められる(計測される)。
【0046】
ウエハアライメントなどの計測動作後、一方のウエハステージ(WST1又はWST2)は露光時移動領域に移動し、主制御装置20により、レチクルアライメント系13A,13B、ウエハテーブル(WTB1又はWTB2)上の基準マーク板(不図示)などを用いて、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順(例えば、米国特許第5,646,413号明細書などに開示される手順)で、レチクルアライメント等が行われる。
【0047】
そして、主制御装置20により、ウエハアライメント等の計測結果に基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われ、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作は、レチクルステージRSTとウエハステージWST1又はWST2との同期移動を行う走査露光動作と、ウエハステージWST1又はWST2をショット領域の露光のための加速開始位置に移動させるショット間移動(ステッピング)動作とを交互に繰り返すことで行われる。露光動作時には、エンコーダシステム70(エンコーダ70
1〜70
4)又はエンコーダシステム71(エンコーダ71
1〜71
4)により、一方のウエハステージ(WST1又はWST2)の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報が求められる(計測される)。
【0048】
また、本実施形態の露光装置100は、2つのウエハステージWST1,WST2を備えている。そこで、一方のウエハステージ、例えばウエハステージWST1上にロードされたウエハに対してステップ・アンド・スキャン方式の露光を行うのと並行して、他方のウエハステージWST2上に載置されたウエハに対してウエハアライメントなどを行う、並行処理動作が行われる。
【0049】
本実施形態の露光装置100では、前述の通り、主制御装置20は、露光時移動領域内及び計測時移動領域内のいずれにおいても、エンコーダシステム70(
図6参照)を用いて、ウエハステージWST1の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報を求める(計測する)。また、主制御装置20は、露光時移動領域内及び計測時移動領域内のいずれにおいても、エンコーダシステム71(
図6参照)を用いて、ウエハステージWST2の6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)の位置情報を求める(計測する)。
【0050】
ここで、エンコーダシステム70,71によるXY平面内の3自由度方向(X軸方向,Y軸方向及びθz方向(X,Y,θz)とも略記する))の位置計測の原理などについてさらに説明する。ここでは、エンコーダヘッド60
1〜60
4又はエンコーダ70
1〜70
4の計測結果又は計測値は、エンコーダヘッド60
1〜60
4又はエンコーダ70
1〜70
4のZ軸方向でない計測方向の計測結果を意味する。
【0051】
本実施形態では、前述のようなエンコーダヘッド60
1〜60
4及びスケール板21の構成及び配置を採用したことにより、露光時移動領域内ではエンコーダヘッド60
1〜60
4のうちの少なくとも3つが、常時、スケール板21(の対応する部分21
1〜21
4)に対向する。
【0052】
図7及び
図13には、ウエハステージWST1上のエンコーダヘッド60
1〜60
4及びスケール板21の各部分21
1〜21
4の配置とエンコーダシステム70の計測領域A
0〜A
4との関係が示されている。なお、ウエハステージWST2はウエハステージWST1と同様に構成されているので、ここではウエハステージWST1についてのみ説明する。
【0053】
ウエハステージWST1の中心(ウエハの中心に一致)が、露光時移動領域内で、かつ露光中心(露光領域IAの中心)Pに対して+X側かつ+Y側の領域(露光中心Pを原点とする第1象限内の領域(ただし、領域A
0を除く))である第1領域A
1内に位置する場合、ウエハステージWST1上のヘッド60
4,60
1,60
2がそれぞれスケール板21の部分21
4,21
1,21
2に対向する。第1領域A
1内では、ヘッド60
4,60
1,60
2(エンコーダ70
4,70
1,70
2)から有効な計測値が主制御装置20に送られる。なお、以下の説明中のウエハステージWST1、WST2の位置は、そのウエハステージの中心(ウエハの中心に一致)の位置を意味する。すなわち、ウエハステージWST1、WST2の中心の位置と記述する代わりに、ウエハステージWST1、WST2の位置と記述する。
【0054】
同様に、ウエハステージWST1が、露光時移動領域内で、かつ露光中心Pに対して−X側かつ+Y側の領域(露光中心Pを原点とする第2象限内の領域(ただし、領域A
0を除く))である第2領域A
2内に位置する場合、ヘッド60
1,60
2,60
3がそれぞれスケール板21の部分21
1,21
2,21
3に対向する。ウエハステージWST1が、露光時移動領域内で、かつ露光中心Pに対して−X側かつ−Y側の領域(露光中心Pを原点とする第3象限内の領域(ただし、領域A
0を除く))である第3領域A
3内に位置する場合、ヘッド60
2,60
3,60
4がそれぞれスケール板21の部分21
2,21
3,21
4に対向する。ウエハステージWST1が、露光時移動領域内で、かつ露光中心Pに対して+X側かつ−Y側の領域(露光中心Pを原点とする第4象限内の領域(ただし、領域A
0を除く))である第4領域A
4内に位置する場合、ヘッド60
3,60
4,60
1がそれぞれスケール板21の部分21
3,21
4,21
1に対向する。
【0055】
本実施形態では、前述のエンコーダヘッド60
1〜60
4及びスケール板21の構成及び配置についての条件(A≧ai+2t,B≧bi+2t)に加えて、ウエハ上のパターンが形成されるショット領域のサイズ(W,L)を考慮して、条件A≧ai+W+2t,B≧bi+L+2tを加える。ここで、W、Lは、それぞれ、ショット領域のX軸方向、Y軸方向の幅である。W、Lは、それぞれ、走査露光区間の距離、X軸方向へのステッピングの距離に等しい。この条件では、
図7及び
図13に示されるように、ウエハステージWST1が、露光中心Pを中心とする十字状の領域A
0(露光中心Pを通るY軸方向を長手方向とする幅A−ai−2tの領域とX軸方向を長手方向とする幅B−bi−2tの領域とを含む領域(以下、第0領域と呼ぶ))内に位置する場合、ウエハステージWST1上の全ヘッド60
1〜60
4がスケール板21(対応する部分21
1〜21
4)に対向する。従って、第0領域A
0内では、全ヘッド60
1〜60
4(エンコーダ70
1〜70
4)から有効な計測値が主制御装置20に送られる。なお、本実施形態では上記条件(A≧ai+2t,B≧bi+2t)に加えて、パターンが形成されるウエハ上のショット領域のサイズ(W,L)を考慮して、条件A≧ai+W+2t,B≧bi+L+2tを加えても良い。ここで、W、Lは、それぞれ、ショット領域のX軸方向、Y軸方向の幅である。W、Lは、それぞれ、走査露光区間の距離、X軸方向へのステッピングの距離に等しい。
【0056】
主制御装置20は、ヘッド60
1〜60
4(エンコーダ70
1〜70
4)の計測結果に基づいて、ウエハステージWST1のXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。ここで、エンコーダ70
1〜70
4の計測値(それぞれC
1〜C
4と表記する)は、ウエハステージWST1の位置(X,Y,θz)に対して、次式(1)〜(4)のように依存する。
【0057】
C
1=−(cosθz+sinθz)X/√2
+(cosθz−sinθz)Y/√2+√2psinθz…(1)
C
2=−(cosθz−sinθz)X/√2
−(cosθz+sinθz)Y/√2+√2psinθz…(2)
C
3= (cosθz+sinθz)X/√2
−(cosθz−sinθz)Y/√2+√2psinθz…(3)
C
4= (cosθz−sinθz)X/√2
+(cosθz+sinθz)Y/√2+√2psinθz…(4)
ただし、pは、
図5に示されるように、ウエハテーブルWTB1(WTB2)の中心からのヘッドのX軸及びY軸方向に関する距離である。
【0058】
主制御装置20は、ウエハステージWST1の位置する領域A
0〜A
4に応じてスケール板21に対向する3つのヘッド(エンコーダ)を特定し、それらの計測値が従う式を上式(1)〜(4)から選択して連立方程式を組み、3つのヘッド(エンコーダ)の計測値を用いて連立方程式を解くことにより、ウエハステージWST1のXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。例えば、ウエハステージWST1が第1領域A
1内に位置する場合、主制御装置20は、ヘッド60
1,60
2,60
4(エンコーダ70
1,70
2,70
4)の計測値が従う式(1),(2),及び(4)から連立方程式を組み、式(1),(2),及び(4)それぞれの左辺に各ヘッドの計測値を代入して連立方程式を解く。
【0059】
なお、ウエハステージWST1が第0領域A
0内に位置する場合、主制御装置20は、ヘッド60
1〜60
4(エンコーダ70
1〜70
4)から任意の3つを選択すれば良い。例えば、ウエハステージWST1が第1領域から第0領域に移動した後では、第1領域に対応するヘッド60
1,60
2,60
4(エンコーダ70
1,70
2,70
4)を選択すると良い。
【0060】
主制御装置20は、上の算出結果(X,Y,θz)に基づいて、露光時移動領域内でウエハステージWST1を駆動(位置制御)する。
【0061】
ウエハステージWST1が、計測時移動領域内に位置する場合、主制御装置20は、エンコーダシステム70を用いて3自由度方向(X,Y,θz)の位置情報を計測する。ここで、計測原理等は、露光中心Pがアライメント系ALGの検出中心に、スケール板21(の部分21
1〜21
4)がスケール板22(の部分22
1〜22
4)に置き換わる以外、ウエハステージWST1が先の露光時移動領域内に位置する場合と同様である。
【0062】
さらに、主制御装置20は、ウエハステージWST1,WST2の位置に応じて、スケール板21,22に対向するヘッド60
1〜60
4のうちの3つを、少なくとも1つが異なる3つに切り換えて使用する。ここで、エンコーダヘッドを切り換える際には、例えば米国特許出願公開第2008/0094592号明細書などに開示されているように、ウエハステージの位置計測結果の連続性を保証するためのつなぎ処理が行われる。
【0063】
ここで、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時におけるヘッド60
1〜60
4の切り換えとつなぎ処理についてさらに説明する。
【0064】
第1の例として、
図7に示されるウエハW
1に対する露光動作について説明する。ここで、ウエハW
1上には、一例として、
図8に拡大して示されるように、X軸方向に偶数、Y軸方向に奇数の全36個のショット領域S
1〜S
36が、配列されているものとする。
【0065】
ウエハW
1に対して、
図9に示される経路に沿って、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われる。なお、
図9中の経路は、露光中心(露光領域IAの中心)Pが各ショット領域上を通過する軌跡を示すものである。この軌跡中の実線部は、各ショット領域の走査露光の際の露光中心Pの移動軌跡を示し、点線部(破線部)は、走査方向及び非走査方向の隣接ショット領域間における露光中心Pのステップ移動の際の軌跡を示す。なお、実際には、露光中心Pが固定で、ウエハが
図9の経路と逆向きに移動するのであるが、本明細書中では、説明の便宜上から、固定のウエハに対して露光中心が移動するものとしている。
【0066】
本実施形態の露光装置100では、ヘッド60
1〜60
4のうちのスケール板21に対向する3つが、ウエハステージWST1の位置に応じて切り換えて、使用される。従って、ウエハステージWST1が、
図7に示される領域A
1〜A
4のうちの1つの領域から領域A
0を介して他の領域に移動する際に、使用するヘッドが切り換えられる。そこで、
図9には、ウエハW
1上の露光中心Pの軌跡に重ねて、該軌跡中の露光中心Pの位置にウエハステージWST1が位置するときにスケール板21に対向するヘッドの組に対応する領域B
0〜B
4が示されている。
【0067】
図9における領域B
0〜B
4は、それぞれ、
図7におけるウエハステージWST1の移動領域A
0〜A
4に対応する。例えば、領域Bi内のショット領域を走査露光する、あるいは次のショット領域へステップ移動する際には、ウエハステージWST1は領域Ai内を移動する。従って、露光中心Pが領域B
1内に位置する際には、ヘッド60
4,60
1,60
2がスケール板21に対向する。同様に、露光中心Pが領域B
2,B
3,B
4,及びB
0内に位置する際には、それぞれ、ヘッド60
1,60
2,60
3、ヘッド60
2,60
3,60
4、ヘッド60
3,60
4,60
1、及び全ヘッド60
1〜60
4がスケール板21に対向する。
【0068】
従って、ショット領域の走査露光又はショット領域間のステップ移動により、露光中心Pが
図9に示される軌跡上を移動して、領域B
1〜B
4のうちの1つの領域から領域B
0を介して他の領域に移動する際に、使用するヘッドが切り換えられる。そこで、
図9中には、ウエハW
1に対するヘッドの切り換えの発生場所が二重丸にて示されている。
【0069】
例えば、まず、露光中心Pが、第1ショット領域S
1〜第3ショット領域S
3を露光処理して領域B
1から領域B
0へ移動した後、円C
1内に示される領域B
0内の第4ショット領域S
4を露光処理して領域B
2内の第5ショット領域S
5へステップ移動する際に、ヘッドの切り換え(第1切換)が発生する。ここで、前述の通り、露光中心Pが領域B
1,B
0,B
2内に位置する際には、それぞれ、ヘッド60
4,60
1,60
2、全ヘッド60
1〜60
4、ヘッド60
1,60
2,60
3がスケール板21に対向する。従って、第1切換では、ヘッド60
4,60
1,60
2からヘッド60
1,60
2,60
3へ、使用するヘッドが切り換えられる。
【0070】
図10(A)には、第1切換の詳細を説明するための
図9中の円C
1内部の拡大図が示され、第1切換前後におけるウエハステージWST1のY軸方向に関する速度Vyの時間変化が
図10(B)に示されている。
【0071】
主制御装置20は、第3ショット領域S
3を露光処理した後、ヘッド60
4,60
1,60
2(エンコーダ70
4,70
1,70
2)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を駆動(位置制御)して、露光中心Pを第4ショット領域S
4の露光のための加速開始位置e4に移動させる。露光中心Pが加速開始位置e4に到達すると、主制御装置20は、ウエハステージWST1(ウエハW
1)とレチクルステージRST(レチクルR)との同期移動を開始する。すなわち、主制御装置20は、ウエハステージWST1を加速駆動し、それと同時にレチクルステージRSTを、ウエハステージWST1と反対向きかつウエハステージWST1の速度の投影倍率βの逆数倍の速度で、ウエハステージWST1の動きに追従して駆動する。
図10(B)に示されるように、加速開始(時刻t4)から加速時間Taの経過後、両ステージWST1、RSTの速度は一定になる。
【0072】
加速終了後、露光開始までの整定時間Tbの間、主制御装置20は、ウエハW
1とレチクルRとの変位誤差が所定の関係(ほぼ零)になるまでレチクルステージRSTをウエハステージWST1に対して追従駆動する。
【0073】
整定時間Tbの後、主制御装置20は、ヘッド60
4,60
1,60
2(エンコーダ70
4,70
1,70
2)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を等速駆動する。これにより、露光時間Tcの間、
図10(A)に示されるように、露光領域IA(露光中心P)がショット領域S
4の−Y端から+Y端まで等速度で移動し、ショット領域S
4が走査露光される。走査露光中、ウエハW
1とレチクルRとの等速同期移動状態が維持される。
【0074】
露光終了後、等速度オーバースキャン時間(後整定時間)Tdの間、ウエハステージWST1は等速度で移動する。この間に、
図10(A)に示されるように、露光中心Pはショット領域S
4の+Y側の第1切換位置P
1を等速度で通過する。この時、主制御装置20は、ヘッド60
4,60
1,60
2(エンコーダ70
4,70
1,70
2)からヘッド60
1,60
2,60
3(エンコーダ70
1,70
2,70
3)へ、使用するヘッドを切り換える。ここで、主制御装置20は、切り換えの前後を通じてウエハステージWST1の位置の計測結果の連続性を保障するために、つなぎ処理を実行する。すなわち、主制御装置20は、ヘッド60
1,60
2,60
3の計測値から得られるウエハステージWST1の位置の計測結果(X’,Y’,θz’)がヘッド60
4,60
1,60
2の計測値から得られるウエハステージWST1の計測結果(X,Y,θz)に一致するように、切り換え後に新たに使用するヘッド60
3の計測値C
3をリセットする。このつなぎ処理の詳細は後述する。
【0075】
切り換え後、減速オーバースキャン時間Teの間、主制御装置20は、ヘッド60
1,60
2,60
3(エンコーダ70
1,70
2,70
3)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を減速駆動する。同時に、レチクルステージRSTも減速させる。なお、減速オーバースキャン時間Teにおいては、ウエハステージWST1は、Y軸方向への移動と並行してX軸方向にも移動される。これにより、露光中心Pがショット領域S
4の+Y端からU字状の軌跡を描いて、領域B
2内の次のショット領域S
5に向かってステップ移動する。
【0076】
主制御装置20は、ウエハステージWST1の減速終了後、引き続き、先と同様に、ただしウエハステージWST1とレチクルステージRSTとをそれぞれ逆方向に駆動して、次のショット領域S
5を露光する。
【0077】
エンコーダシステム70(71)の計測結果にはスケールの製造誤差等に起因する計測誤差が含まれる。
【0078】
ここで、以下においては、ヘッドの切り換え及びつなぎ処理の原理を簡単に説明するため4つのヘッドを抽象的にEnc1,Enc2,Enc3,Enc4とも表記するものとする。
【0079】
図11(A)には、ヘッド(エンコーダ)Enc1,Enc2,Enc3からエンコーダEnc2,Enc3,Enc4への切り換え前後における、エンコーダEnc1,Enc2,Enc3の計測値から算出されるウエハステージWST1の位置座標(X,Y,θz)と、エンコーダEnc2,Enc3,Enc4の計測値から算出されるウエハステージWST1の位置座標(X’,Y’,θz’)との時間変化(の軌跡)が示されている。スケールの製造誤差等に起因する計測誤差により、ウエハステージWST1の位置の計測結果の軌跡は微細に揺らぐ。そのため、例えば米国特許出願公開第2008/0094592号明細書などに開示されているような単純なつなぎ処理では、その計測誤差まで取り込んで新たに使用されるエンコーダEnc4の計測値(ここではヘッド60
4の計測値C
4)がリセットされてしまう。本実施形態では、かかる事態が生じることがないようなつなぎ処理を採用している。
【0080】
次に、本実施形態の露光装置100で行われるつなぎ処理の原理を説明する。本実施形態では、ウエハステージWST1の位置座標は、主制御装置20により、例えば96μsecの時間間隔で制御されている。この制御サンプリング間隔毎に、位置サーボ制御系(主制御装置20の一部)が、ウエハステージWST1の現在位置を更新し、目標位置に位置決めするための推力指令値などを演算し、その結果をウエハステージ駆動系27に出力している。前述のように、ウエハステージWST1の現在位置は、エンコーダシステム70を構成するヘッド60
1〜60
4(エンコーダ70
1〜70
4)のうちの3つの計測値より算出される。これらのヘッド(エンコーダ)の計測値は、制御サンプリング間隔よりはるかに短い時間間隔(計測サンプリング間隔)で監視されている。
【0081】
図12には、エンコーダシステム70の計測結果に基づくウエハステージWSTの駆動(位置制御)、ヘッド60
1〜60
4(エンコーダ70
1〜70
4)の切り換え、及び該切り換えに伴うつなぎ処理の概略が示されている。
図12中の符号CSCKは、ウエハステージWST1の位置制御のサンプリングクロック(制御クロック)の発生タイミングを示し、符号MSCKは、エンコーダの計測のサンプリングクロック(計測クロック)の発生タイミングを示す。
【0082】
主制御装置20は、制御クロック(CSCK)毎に、エンコーダシステム70(を構成する4つのエンコーダEnc1,Enc2,Enc3,Enc4)の計測値を監視する。
【0083】
第1切換時には、エンコーダEnc1,Enc2,Enc3,Enc4は、それぞれ、ヘッド60
4,60
1,60
2,60
3(エンコーダ70
4,70
1,70
2,70
3)に対応する。
【0084】
制御クロック時には、主制御装置20は、第1制御クロック時のように、エンコーダEnc1,Enc2,Enc3の計測値から対応する式(1)〜式(3)から成る連立方程式を用いてウエハステージWST1の位置座標(X,Y,θz)を算出するとともに、切り換え後に使用するエンコーダEnc2,Enc3,Enc4の計測値からもウエハステージWST1の位置座標(X’,Y’,θz’)を算出する。
【0085】
主制御装置20は、ショット領域S
4の走査露光(露光時間Tc)の終了まで、エンコーダEnc1,Enc2,Enc3の計測値から算出されたステージ位置座標(X,Y,θz)をサーボ制御用ステージ座標としてウエハステージ駆動系27に出力して、ウエハステージWST1を駆動する。露光終了後、等速度オーバースキャン時間(後整定時間)Tdの間の第3制御クロック時に、主制御装置20は、エンコーダEnc1,Enc2,Enc3からエンコーダEnc2,Enc3,Enc4へ切り換える。
【0086】
図11(A)に示されるように、スケールの製造誤差等に起因する計測誤差により、単純なつなぎ処理では、算出されるステージ位置座標の連続性が満たされない。そこで、主制御装置20は、ショット領域S
4に対する走査露光、すなわち
図10(A)に示される走査露光区間の一部Q
1についてウエハステージWST1を等速駆動するのと並行して、制御クロック(CSCK)毎につなぎ処理のための前処理(つなぎ演算とも呼ぶ)を実行する。すなわち、主制御装置20は、
図12に示されるように、位置座標(X,Y,θz)と位置座標(X’,Y’,θz’)との差分を求め、さらに所定のクロック数Kについて差分の移動平均MA
K{(X,Y,θz)−(X’,Y’,θz’)}を求め、座標オフセットOとして保持する。
図12中、移動平均の演算が符号MA
Kにて表されている。
【0087】
なお、位置座標(X,Y,θz)と位置座標(X’,Y’,θz’)のそれぞれに対して所定のクロック数Kについて移動平均MA
K(X,Y,θz)とMA
K(X’,Y’,θz’)を求め、これらの差MA
K(X,Y,θz)−MA
K(X’,Y’,θz’)を座標オフセットOとして保持しても良い。
【0088】
主制御装置20は、切り換えの際、つなぎ処理を実行する。すなわち、主制御装置20は、直前の制御クロック時(この場合、第2制御クロック時)にエンコーダEnc1,Enc2,Enc3の計測値より算出されたウエハステージWST1の位置座標(X,Y,θz)と一致するよう、第3制御クロック時に、エンコーダEnc2,Enc3,Enc4の計測値より算出されるウエハステージWST1の位置座標(X’,Y’,θz’)に、直前の第2制御クロック時に保持された座標オフセットOを加える。オフセット補正された位置座標{(X’,Y’,θz’)+O}を、エンコーダEnc4の計測値が従う式(1)〜(4)のいずれかに代入して、エンコーダEnc4の計測値を算出し、それをエンコーダEnc4の計測値としてセットする。
図12では、このつなぎ処理が記号CHにて示されている。
【0089】
上のつなぎ処理を行う際、座標オフセットOの値が直近の所定クロック数について十分安定していることを確認することとする。さらに、前述の通り、スケールの製造誤差等に起因する計測誤差のため、エンコーダシステム70の計測値より算出されるウエハステージWST1の位置座標(X,Y,θz)は、真の位置に対して微細に揺らぐ。そこで、エンコーダEnc1,Enc2,Enc3の計測値より算出されるウエハステージWST1の位置座標(X,Y,θz)とエンコーダEnc2,Enc3,Enc4の計測値より算出されるウエハステージWST1の位置座標(X’,Y’,θz’)との差が十分安定している座標オフセットOに一致又はほぼ一致するタイミング(クロック発生時)にて、つなぎ処理を行うと良い。
【0090】
以上のつなぎ処理により、
図11(B)に示されるように、切り換え前後で算出されるウエハステージの位置座標の連続性が保障される。
【0091】
なお、つなぎ処理は、上記のように、切り換え後のヘッドの計測値を補正する場合に限らず、他の処理もあり、それらを採用しても良い。例えば、その計測誤差をオフセットとしてウエハステージの現在位置又は目標位置にオフセットを加えて、ウエハステージを駆動(位置制御)する、あるいはその計測誤差分だけレチクル位置を補正するなど他の手法を適用しても良い。
【0092】
切り換え後、
図12における第4制御クロック時以降、主制御装置20は、エンコーダEnc2,Enc3,Enc4の計測値から算出される位置座標(X’,Y’,θz’)をサーボ制御用ステージ座標としてウエハステージ駆動系27に出力して、ウエハステージWST1を駆動制御する。
【0093】
なお、上述の第1切換では、領域B
0内の第4ショット領域S
4を走査露光した後、領域B
2内の第5ショット領域S
5へステップ移動する前に、使用するヘッドを切り換えた。ここで、
図7に示されるウエハW
1上のショット領域の配列では、
図9に示されるように領域B
0内に第3ショット領域S
3も含まれている。そこで、
図10(C)に示されるように、領域B
0内の第3ショット領域S
3を走査露光した後、第4ショット領域S
4へステップ移動する前に、使用するヘッドを切り換えることも可能である。この場合、ショット領域S
3に対する走査露光区間の一部Q
1’についてウエハステージWST1を等速駆動するのと並行して上述のつなぎ演算を行い、第3ショット領域S
3を走査露光した後、ウエハステージWST1が第3ショット領域S
3の−Y側の切り換え発生位置P
1’を等速度で通過する際に、使用するヘッドをヘッド60
4,60
1,60
2からヘッド60
1,60
2,60
3へ切り換えることとなる。その際、主制御装置20は、切り換えの前後を通じてウエハステージWST1の位置の計測結果の連続性を保障するために、つなぎ処理、すなわち切り換え後に新たに使用するヘッド60
3の計測値C
3をつなぎ演算よって求められた座標オフセットOを用いてリセットする。
【0094】
上述の第1切換と同様に、露光中心Pが、第7ショット領域S
7〜第10ショット領域S
10を露光処理して領域B
2から領域B
0へ移動した後、領域B
0内の第11ショット領域S
11を露光処理して領域B
1内の第12ショット領域S
12へステップ移動する際に、ヘッドの切り換え(第2切換)が発生する。ここでは、ヘッド60
1,60
2,60
3からヘッド60
4,60
1,60
2へ、使用するヘッドが切り換えられる。
【0095】
次に、ウエハW
1上のY軸方向の中央にX軸方向に並ぶ第15ショット領域S
15〜第22ショット領域S
22をステップ・アンド・スキャン露光する際に、露光中心Pが、領域B
0を介して領域B
1,B
4間又は領域B
2,B
3間を移動する。ここで、ヘッドの切り換え(第3〜第11切換)が発生する。露光中心Pが、領域B
0を介して、領域B
1,B
4間を移動する際にはヘッド60
4,60
1,60
2とヘッド60
3,60
4,60
1との間で、領域B
2,B
3間を移動する際にはヘッド60
1,60
2,60
3とヘッド60
2,60
3,60
4との間で、使用するヘッドが切り換えられる。
【0096】
図10(D)には、第3〜第11切換を代表して第8及び第9切換の詳細を説明するための
図9中の円C
2内部の拡大図が示されている。この
図10(D)からわかるように、第20ショット領域S
20及び第21ショット領域S
21(及びその他の第15ショット領域S
15〜第19ショット領域S
19、第22ショット領域S
22)は、領域B
0内に位置する。露光中心Pの軌跡は、領域B
0をまたいで領域B
2,B
3間に拡がっている。すなわち、露光中心Pは、領域B
0をまたいで領域B
2,B
3間を往復する。
【0097】
主制御装置20は、第19ショット領域S
19を露光処理した後、ヘッド60
2,60
3,60
4(エンコーダ70
2,70
3,70
4)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を駆動(位置制御)して、露光中心Pを、
図10(D)において破線で表されるU字上の経路に沿って、第20ショット領域S
20に向けてステップ移動させる。
【0098】
ステップ移動の途中で、露光中心Pが加速開始位置に到達すると、主制御装置20は、ウエハステージWST1(ウエハW
1)とレチクルステージRST(レチクルR)との加速(同期駆動)を開始する。加速開始から加速時間(Ta)の経過後、両ステージWST1、RSTの速度は一定になる。
【0099】
さらに整定時間(Tb)の後の露光時間(Tc)の間、主制御装置20は、ヘッド60
2,60
3,60
4(エンコーダ70
2,70
3,70
4)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を等速駆動する。これにより、露光中心Pが、
図10(D)において実線を用いて表される直線経路(走査露光経路)に沿って等速移動する。すなわち、露光領域IA(露光中心P)がショット領域S
20の+Y端から−Y端まで等速度で移動し、ショット領域S
20が走査露光される。
【0100】
主制御装置20は、上のショット領域S
20の走査露光と並行して、厳密にはショット領域S
20に対する走査露光経路の一部Q
2についてウエハステージWST1を等速駆動するのと並行して前述のつなぎ演算を行う。主制御装置20は、第20ショット領域S
20を走査露光した後、ウエハステージWST1が第20ショット領域S
20の−Y側の切り換え発生位置P
2を等速度で通過する際に、使用するヘッドをヘッド60
2,60
3,60
4からヘッド60
1,60
2,60
3へ切り換える。ここで、主制御装置20は、切り換えの前後を通じてウエハステージWST1の位置の計測結果の連続性を保障するために、前述のつなぎ処理、すなわち切り換え後に新たに使用するヘッド60
1の計測値C
1をつなぎ演算よって求められた座標オフセットOを用いてリセットする。
【0101】
切り換え後、主制御装置20は、ヘッド60
1,60
2,60
3(エンコーダ70
1,70
2,70
3)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を駆動(位置制御)して、次のショット領域S
21に向けてステップ移動させる。ここで、露光中心Pは、ショット領域S
20の−Y端からU字状の軌跡を描いて、一旦領域B
2に退出し、再び領域B
0内に戻り、次のショット領域S
20に向かう。
【0102】
ステップ移動の途中で、露光中心Pが加速開始位置に到達すると、主制御装置20は、ウエハステージWST1(ウエハW
1)とレチクルステージRST(レチクルR)との加速(同期駆動)を開始する。
【0103】
そして、加速開始から加速時間Ta及び整定時間Tbの経過後、主制御装置20は、ヘッド60
1,60
2,60
3(エンコーダ70
1,70
2,70
3)の計測結果に基づいて、ウエハステージWST1を、
図10(D)中に実線で表される直線経路(走査露光経路)に沿って等速駆動する。これにより、露光領域IA(露光中心P)がショット領域S
21の−Y端から+Y端まで等速度で移動し、ショット領域S
21が走査露光される。
【0104】
主制御装置20は、上のショット領域S
21の走査露光と並行して、厳密にはショット領域S
21に対する走査露光経路の一部Q
3についてウエハステージWST1を等速駆動するのと並行して前述のつなぎ演算を行う。主制御装置20は、第21ショット領域S
21を走査露光した後、ウエハステージWST1が第21ショット領域S
21の+Y側の切り換え発生位置P
3を等速度で通過する際に、使用するヘッドをヘッド60
1,60
2,60
3からヘッド60
2,60
3,60
4へ切り換える。ここで、主制御装置20は、切り換えの前後を通じてウエハステージWST1の位置の計測結果の連続性を保障するために、前述のつなぎ処理、すなわち切り換え後に新たに使用するヘッド60
4の計測値C
4をつなぎ演算よって求められた座標オフセットOを用いてリセットする。
【0105】
切り換え後、主制御装置20は、ヘッド60
2,60
3,60
4(エンコーダ70
2,70
3,70
4)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を駆動(位置制御)して、次のショット領域S
22に向けてステップ移動させる。ここで、露光中心Pは、ショット領域S
21の+Y端からU字状の軌跡を描いて、一旦領域B
3に退出し、再び領域B
0内に戻り、次のショット領域S
22に向かう。
【0106】
次に、露光中心Pが、第23ショット領域S
23〜第26ショット領域S
26を露光処理して領域B
3から領域B
0へ移動した後、領域B
0内の第27ショット領域S
27を露光処理して領域B
4内の第28ショット領域S
28へステップ移動する際に、ヘッドの切り換え(第12切換)が発生する。ここでは、ヘッド60
2,60
3,60
4からヘッド60
3,60
4,60
1へ、使用するヘッドが切り換えられる。その詳細は、前述の第1切換と同様である。
【0107】
同様に、露光中心Pが、第31ショット領域S
31〜第33ショット領域S
33を露光処理して領域B
4から領域B
0へ移動した後、領域B
0内の第34ショット領域S
34を露光処理して領域B
3内の第35ショット領域S
35へステップ移動する際に、ヘッドの切り換え(第13切換)が発生する。ここでは、ヘッド60
3,60
4,60
1からヘッド60
2,60
3,60
4へ、使用するヘッドが切り換えられる。この詳細も、前述の第1切換と同様である。
【0108】
上述のヘッドの切り換え手順及びつなぎ処理により、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作において、ウエハ上の各ショット領域を走査露光する最中にヘッドの切り換えが発生することがないので、十分なパターンの重ね合わせ精度が維持され、安定したウエハの露光処理が実現される。また、走査露光中、ウエハステージWST1(WST2)が等速移動している間につなぎ演算を行い、その結果を用いて走査露光直後につなぎ処理及びヘッドの切り換えを行うので、ヘッドの切り換え前後を通じてウエハステージの位置計測結果の連続性が保障される。
【0109】
次に、第2の例として、
図13に示されるウエハW
2に対する露光動作について説明する。ここで、ウエハW
2上には
図14に拡大して示されるように、X軸方向に奇数、Y軸方向に偶数の全38個のショット領域S
1〜S
38が配列されている。
【0110】
ウエハW
2に対して、
図15に示される経路に沿って、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われる。
図15中、経路に重ねて、該経路中の露光中心Pの位置にウエハステージWST1が位置するときにスケール板21に対向するヘッドの組に対応する領域B
0〜B
4と、ヘッドの切り換えの発生場所とが示されている。
図15の表記は、
図9の表記と同様である。
【0111】
まず、露光中心Pが、第1ショット領域S
1を露光処理して領域B
1から領域B
0へ移動した後、領域B
0内の第2ショット領域S
2を露光処理して領域B
2内の第3ショット領域S
3へステップ移動する際に、ヘッドの切り換え(第1切換)が発生する。ここで、前述の通り、露光中心Pが領域B
1,B
0,B
2内に位置する際には、それぞれ、ヘッド60
4,60
1,60
2、全ヘッド60
1〜60
4、ヘッド60
1,60
2,60
3がスケール板21に対向する。従って、第1切換では、ヘッド60
4,60
1,60
2からヘッド60
1,60
2,60
3へ、使用するヘッドが切り換えられる。その詳細は、前述の第1の例におけるウエハW
1に対する第1切換と同様である。
【0112】
上述の第1切換と同様に、露光中心Pが、第4ショット領域S
4〜第6ショット領域S
6を露光処理して領域B
2から領域B
0へ移動した後、領域B
0内の第7ショット領域S
7を露光処理して領域B
1内の第8ショット領域S
8へステップ移動する際に、ヘッドの切り換え(第2切換)が発生する。ここでは、ヘッド60
1,60
2,60
3からヘッド60
4,60
1,60
2へ、使用するヘッドが切り換えられる。
【0113】
次に、ウエハW
2上のY軸方向の中央(第3行目)にX軸方向に並ぶ第11ショット領域
S11〜第19ショット領域S
19をステップ・アンド・スキャン露光する際に、露光中心Pが、領域B
0を介して領域B
1,B
4間又は領域B
2,B
3間を移動する。ここで、ヘッドの切り換え(第3〜第10切換)が発生する。同様に、第4行目にX軸方向に並ぶ第20ショット領域S
20〜第28ショット領域S
28をステップ・アンド・スキャン露光する際に、露光中心Pが、領域B
0を介して領域B
1,B
4間又は領域B
2,B
3間を移動する。ここで、ヘッドの切り換え(第11〜第18切換)が発生する。露光中心Pが、領域B
0を介して、領域B
1,B
4間を移動する際にはヘッド60
4,60
1,60
2とヘッド60
3,60
4,60
1との間で、領域B
2,B
3間を移動する際にはヘッド60
1,60
2,60
3とヘッド60
2,60
3,60
4との間で、使用するヘッドが切り換えられる。
【0114】
図16(A)には、第3〜第18切換を代表して第3及び第4切換の詳細を説明するための
図15中の円C
3内部の拡大図が示されている。この
図16(A)からわかるように、第11ショット領域S
11及び第12ショット領域S
12は、領域B
0と領域B
1との境界上に位置する。露光中心Pの軌跡は、領域B
0をまたいで領域B
1,B
4間に拡がっている。すなわち、露光中心Pは、領域B
0をまたいで領域B
1,B
4間を往復する。
【0115】
この例では、露光対象のショット領域が領域B
0内に完全に含まれていないため、第3及び第4切換の詳細手順は、前述のウエハW
1に対する第8及び第9切換の詳細手順と幾分相違する。そこで、相違点に重点を置いて、第3及び第4切換の詳細を説明する。
【0116】
主制御装置20は、第10ショット領域S
10を露光処理した後、ヘッド60
4,60
1,60
2(エンコーダ70
4,70
1,70
2)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を駆動(位置制御)して、露光中心Pを、
図15において破線で表される経路に沿って、第11ショット領域S
11の露光のための加速開始位置に向けてステップ移動させる。
【0117】
ステップ移動後、主制御装置20は、ウエハステージWST1(ウエハW
1)とレチクルステージRST(レチクルR)との加速同期駆動を開始する。加速開始から加速時間(Ta)の経過後、両ステージWST1、RSTの速度は一定になる。
【0118】
さらに整定時間(Tb)の後の露光時間(Tc)の間、主制御装置20は、ヘッド60
4,60
1,60
2(エンコーダ70
4,70
1,70
2)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を等速駆動する。これにより、露光中心Pが、
図16(A)中に実線で表される直線経路(走査露光経路)に沿って等速移動する。すなわち、露光領域IA(露光中心P)がショット領域S
11の−Y端から+Y端まで等速度で移動し、ショット領域S
11が走査露光される。
【0119】
主制御装置20は、前述のウエハW
1に対する第8及び第9切り換えと同様に、ショット領域S
11の走査露光と並行して、厳密にはショット領域S
11に対する走査露光経路の一部Q
5についてウエハステージWST1を等速移動するのと並行して前述のつなぎ演算を行う。主制御装置20は、第11ショット領域S
11を走査露光した後、ウエハステージWST1が第11ショット領域S
11の+Y側の切り換え発生位置P
5を等速度で通過する際に、使用するヘッドをヘッド60
4,60
1,60
2からヘッド60
3,60
4,60
1へ切り換える(第3切換)。ここで、主制御装置20は、切り換えの前後を通じてウエハステージWST1の位置の計測結果の連続性を保障するために、前述のつなぎ処理、すなわち切り換え後に新たに使用するヘッド60
3の計測値C
3をつなぎ演算よって求められた座標オフセットOを用いてリセットする。
【0120】
切り換え後、主制御装置20は、ヘッド60
3,60
4,60
1(エンコーダ70
3,70
4,70
1)の計測結果に基づいてウエハステージWST1を駆動(位置制御)して、次のショット領域S
12に向けてステップ移動させる。ここで、露光中心Pは、ショット領域S
11の+Y端からU字状の軌跡を描いて、一旦領域B
4に退出し、再び領域B
0内に戻り、次のショット領域S
12に向かう。
【0121】
ステップ移動の途中で、露光中心Pが加速開始位置に到達すると、ショット領域S
12を露光処理するため、主制御装置20は、ウエハステージWST1(ウエハW
1)とレチクルステージRST(レチクルR)との加速(同期駆動)を開始する。しかし、ショット領域S
12は領域B
0と領域B
1との境界上に位置するため、第12ショット領域S
12を走査露光する最中にヘッドを切り換える必要が生じる。そこで、第4切換では、第12ショット領域S
12を走査露光する前に、使用するヘッドをヘッド60
3,60
4,60
1からヘッド60
4,60
1,60
2へ切り換える。
【0122】
第4切換では、主制御装置20は、切り換えに先立って、露光中心PがU字状の経路に沿ってショット領域S
11からショット領域S
12へステップ移動する途中、整定時間Tb中に通過する一部の短い直線区間Q
6についてウエハステージWST1を等速駆動するのと並行して、前述のつなぎ演算を行う。主制御装置20は、第12ショット領域S
12を走査露光する前、ウエハステージWST1が第12ショット領域S
12の+Y側の切り換え発生位置P
6を等速度で通過する際に、使用するヘッドをヘッド60
3,60
4,60
1からヘッド60
4,60
1,60
2へ切り換える。ここで、主制御装置20は、切り換えの前後を通じてウエハステージWST1の位置の計測結果の連続性を保障するために、前述のつなぎ処理、すなわち切り換え後に新たに使用するヘッド60
2の計測値C
2をつなぎ演算よって求められた座標オフセットOを用いてリセットする。
【0123】
切り換え後、主制御装置20は、ヘッド60
4,60
1,60
2(エンコーダ70
4,70
1,70
2)の計測結果に従って、ウエハステージWST1を、
図16(A)中に実線で表される直線経路(走査露光経路)に沿って等速移動する。これにより、露光領域IA(露光中心P)がショット領域S
12の+Y端から−Y端まで等速度で移動し、ショット領域S12が走査露光される。
【0124】
ただし、整定時間Tb中のつなぎ演算では、ウエハステージWST1が等速度で駆動される距離(直線区間Q
6の距離)が短いため、十分に安定した座標オフセットOが得られないことが起こり得る。
【0125】
かかる事態の発生を未然に防止するため、つなぎ演算のための時間を十分に確保する(十分に安定した座標オフセットOを得る)ための第1の方法として、ウエハステージWST1が加速駆動される間に、すなわち
図16(A)において露光中心PがU字状の経路に沿ってショット領域S
12に向かってステップ移動する途中、加速時間Ta(あるいは減速オーバースキャン時間Teと加速時間Ta)中に通過する十分に長い曲線区間Q
6’についてウエハステージWST1を駆動するのと並行して、前述のつなぎ演算を行うことが考えられる。しかし、この時、ウエハステージWST1は加速されるため、エンコーダシステム70によるステージ位置計測に誤差が発生し得る。
【0126】
すなわち、
図17(A)に示されるように、本実施形態のエンコーダシステム70では、ウエハステージWST1に搭載されたヘッド60
1から、Z軸に平行に、対向するスケール板21(22)に計測ビームが照射される。しかし、ウエハステージWST1に、例えば
図17(B)中に矢印で示される方向(−X方向)の加速度が加えられると、エンコーダヘッド60
1の設置位置がウエハステージWST1に対して相対的に+X方向にシフトするとともに設置姿勢がθy方向に傾く。これにより計測ビームが傾き、設計上の照射点からずれたスケール板21(22)上の点に照射され、計測誤差が発生する。
【0127】
そこで、加速時間中もつなぎ演算を行う場合のあることを考慮して、予めウエハステージWST1(WST2)の加速度とエンコーダシステム70(71)の計測誤差との関係を実測し、露光装置の稼働中、その実測データを用いてエンコーダシステム70(71)の計測結果を補正することとしても良い。あるいは、ウエハステージWST1(WST2)にヘッド60
1〜60
4の位置と傾きを測定する測定器を設け、測定器の測定結果に基づいてヘッド60
1〜60
4の計測値を補正することとしても良い。
【0128】
つなぎ演算のための時間を十分に確保するための第2の方法として、
図16(B)に示されるように、ステップ経路に冗長区間Q
6”を設けてウエハステージWST1が等速移動する区間(すなわち
図16(A)における区間Q
6)を伸長し、その区間をウエハステージWST1が等速度で駆動される間につなぎ演算を行うことが考えられる。
【0129】
つなぎ演算のための時間を十分に確保するための第3の方法として、前述のエンコーダヘッド60
1〜60
4及びスケール板21の構成及び配置についての条件(B≧bi+L+2t)に加えて、さらにU字状のステップ区間のY軸方向の距離Laを考慮して、条件B≧bi+2La+2tを加える(すなわち、条件B≧bi+Max(L,2La)+2tに変更する。)ことが考えられる。
【0130】
図16(C)には、
図15中の円C
4の内部が拡大して示されている。ただし、この
図16(C)では、上記の条件B≧bi+Max(L,2La)+2tに従い、領域B
0がY軸方向に拡げられている。この
図16(C)の場合、U字状のステップ区間が領域B
0内に完全に含まれるため、ショット領域S
19を走査露光した後、ショット領域S
20に向かってYステップする際にのみヘッド切換(
図15における第10切換)を要し、
図15における第3〜9切換及び第11〜18切換が不要となる。
【0131】
なお、条件B≧bi+Max(L,2La)+2tは、ウエハW
2のようにY軸方向に偶数のショット領域が配列されたショット配列に限らず、任意のショット配列に対して適用することも可能である。
【0132】
次に、露光中心Pが、第29ショット領域S
29〜第31ショット領域S
31を露光処理して領域B
4から領域B
0へ移動した後、領域B
0内の第32ショット領域S
32を露光処理して領域B
3内の第33ショット領域S
33へステップ移動する際に、ヘッドの切り換え(第19切換)が発生する。ここでは、ヘッド60
3,60
4,60
1からヘッド60
2,60
3,60
4へ、使用するヘッドが切り換えられる。その詳細は、前述の第1切換と同様である。
【0133】
同様に、露光中心Pが、第36ショット領域S
36を露光処理して領域B
3からB
0へ移動した後、領域B
0内の第37ショット領域S
37を露光処理して領域B
4内の第38ショット領域S
38へステップ移動する際に、ヘッドの切り換え(第20切換)が発生する。ここでは、ヘッド60
2,60
3,60
4からヘッド60
3,60
4,60
1へ、使用するヘッドが切り換えられる。この詳細も、前述の第1切換と同様である。
【0134】
上述のヘッドの切り換え手順及びつなぎ処理により、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作において、ウエハ上の各ショット領域を走査露光する最中にヘッドの切り換えが発生することがないので、十分なパターンの重ね合わせ精度が維持され、安定したウエハの露光処理が実現される。また、主制御装置20は、走査露光中、ウエハステージWST1(WST2)が等速移動している間につなぎ演算を行い、その結果を用いて走査露光直後につなぎ処理及びヘッドの切り換えを行う。あるいは、主制御装置20は、ステップ移動中、ウエハステージWST1(WST2)が等速移動している間につなぎ演算を行う、若しくは加速移動している間に加速度補正をしつつつなぎ演算を行い、その結果を用いて走査露光直前につなぎ処理及びヘッドの切り換えを行う。これにより、ヘッドの切り換え前後を通じてウエハステージの位置計測結果の連続性が保障される。
【0135】
次に、エンコーダシステム70,71による3自由度方向(Z,θx,θy)の位置計測の原理などについてさらに説明する。ここでは、エンコーダヘッド60
1〜60
4又はエンコーダ70
1〜70
4の計測結果又は計測値は、エンコーダヘッド60
1〜60
4又はエンコーダ70
1〜70
4のZ軸方向の計測結果を意味する。
【0136】
本実施形態では、前述のようなエンコーダヘッド60
1〜60
4及びスケール板21の構成及び配置を採用したことにより、露光時移動領域内では、ウエハステージWST1(WST2)の位置する領域A
0〜A
4に応じて、エンコーダヘッド60
1〜60
4のうちの少なくとも3つがスケール板21(の対応する部分21
1〜21
4)に対向する。スケール板21に対向するヘッド(エンコーダ)から有効な計測値が主制御装置20に送られる。
【0137】
主制御装置20は、エンコーダ70
1〜70
4の計測結果に基づいて、ウエハステージWST1(WST2)の位置(Z,θx,θy)を算出する。ここで、エンコーダ70
1〜70
4のZ軸方向に関する計測値(前述のZ軸方向ではない計測方向、すなわちXY平面内の一軸方向についての計測値C
1〜C
4と区別して、それぞれ、D
1〜D
4と表記する)は、ウエハステージWST1(WST2)の位置(Z,θx,θy)に対して、次式(5)〜(8)のように依存する。
【0138】
D
1=−ptanθy+ptanθx+Z …(5)
D
2= ptanθy+ptanθx+Z …(6)
D
3= ptanθy−ptanθx+Z …(7)
D
4=−ptanθy−ptanθx+Z …(8)
ただし、pは、ウエハテーブルWTB1(WTB2)の中心からのヘッドのX軸及びY軸方向に関する距離(
図5参照)である。
【0139】
主制御装置20は、ウエハステージWST1(WST2)の位置する領域A
0〜A
4に応じて3つのヘッド(エンコーダ)の計測値の従う式を上式(5)〜(8)から選択し、選択した3つの式から構成される連立方程式に3つのヘッド(エンコーダ)の計測値を代入して解くことにより、ウエハステージWST1(WST2)の位置(Z,θx,θy)を算出する。例えば、ウエハステージWST1(又はWST2)が第1領域A
1内に位置する場合、主制御装置20は、ヘッド60
1,60
2,60
4(エンコーダ70
1,70
2,70
4)(又はヘッド60
1,60
2,60
4(エンコーダ71
1,71
2,71
4)の計測値が従う式(5),(6),及び(8)から連立方程式を組み、式(5),(6),及び(8)それぞれの左辺に計測値を代入して解く。
【0140】
なお、ウエハステージWST1(又はWST2)が第0領域A
0内に位置する場合、ヘッド60
1〜60
4(エンコーダ70
1〜70
4)(又はヘッド60
1,〜60
4(エンコーダ71
1〜71
4))から任意の3つを選択し、選択した3つのヘッドの計測値が従う式から組まれる連立方程式を用いれば良い。
【0141】
主制御装置20は、上の算出結果(Z,θx,θy)と前述の段差情報(フォーカスマッピングデータ)とに基づいて、露光時移動領域内でウエハステージWST1(又はWST2)をフォーカス・レベリング制御する。
【0142】
ウエハステージWST1(又はWST2)が、計測時移動領域内に位置する場合、主制御装置20は、エンコーダシステム70又は71を用いて3自由度方向(Z,θx,θy)の位置情報を計測する。ここで、計測原理等は、露光中心がアライメント系ALGの検出中心に、スケール板21(の部分21
1〜21
4)がスケール板22(の部分22
1〜22
4)に置き換わる以外、ウエハステージWST1が先の露光時移動領域内に位置する場合と同様である。主制御装置20は、エンコーダシステム70又は71の計測結果に基づいて、ウエハステージWST1又はWST2をフォーカス・レベリング制御する。なお、計測時移動領域(計測ステーション)では必ずしもフォーカス・レベリングを行わなくても良い。すなわち、マーク位置及び段差情報(フォーカスマッピングデータ)の取得を行っておき、その段差情報から段差情報取得時(計測時)のウエハステージのZ・チルト分を差し引くことで、ウエハステージの基準面、例えば上面を基準とする段差情報得て置く。そして、露光時には、この段差情報とウエハステージ(の基準面)の3自由度方向(Z,θx,θy)の位置情報とに基づいて、フォーカス・レベリングが可能になるからである。
【0143】
さらに、主制御装置20は、ウエハステージWST1,WST2の位置に応じて、スケール板21,22に対向するヘッド60
1〜60
4のうちの3つを、少なくとも1つが異なる3つに切り換えて使用する。ここで、エンコーダヘッドを切り換える際には、ウエハステージWST1(又はWST2)の位置の計測結果の連続性を保証するため、前述と同様のつなぎ処理が行われる。
【0144】
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100には、投影光学系PL(アライメント系ALG)直下の領域を除くウエハステージWST1,WST2の移動範囲をカバーするスケール板21に、ウエハステージWST1,WST2に搭載された4つのヘッド60
1〜60
4から計測ビームを照射することによって、ウエハステージWST1,WST2の6自由度(X,Y,Z,θx,θy,θz)方向の位置情報を計測するエンコーダシステム70,71が設けられている。そして、ヘッド60
1〜60
4の配置間隔A,Bは、それぞれ、スケール板21,22の開口の幅ai,biよりも大きく定められている。これにより、ウエハステージWST1,WST2の位置に応じて4つのヘッド60
1〜60
4の中からスケール板21,22に対向する3つのヘッドを切り換えて使用することにより、ウエハステージWST1,WST2の位置情報を求める(計測する)ことが可能となる。
【0145】
さらに、本実施形態の露光装置100では、ヘッド60
1〜60
4の配置間隔A,Bは、それぞれ、スケール板21,22の開口の幅ai,biとショット領域の幅W,Lとの和よりも大きく定められている。これにより、ウエハを露光するためにウエハを保持するウエハステージWST1,WST2を走査(等速)駆動する間に、ヘッド60
1〜60
4を切り換えることなしにウエハステージWST1,WST2の位置情報を計測することができる。従って、精度良くパターンをウエハ上に形成することができ、特に第2層目(セカンドレイヤ)以後の露光に際しては重ね合わせ精度を高精度に維持することが可能となる。
【0146】
また、本実施形態の露光装置100では、4つのヘッド60
1〜60
4により計測されるウエハステージWST1,WST2の位置情報の計測結果を用いることによって、ウエハ上の対象ショット領域を露光するために、ウエハを保持するウエハステージWST1,WST2が走査(等速)駆動され、駆動の後、ウエハステージWST1,WST2の位置に応じて4つのヘッド60
1〜60
4の中から位置情報を計測するために用いられる3つ1組のヘッド組が(異なるヘッドを少なくとも1つ含む)別のヘッド組に切り換えられる。あるいは、位置情報の計測結果を用いることによって、ウエハステージWST1,WST2が、対象ショット領域についての走査(等速)駆動の開始点に向けてステップ駆動され、ステップ駆動の後、ウエハステージWST1,WST2が対象ショット領域を露光するために走査(等速)される前に、ウエハステージWST1,WST2の位置に応じて4つのヘッド60
1〜60
4の中から位置情報を計測するために用いられるヘッド組が(異なるヘッドを含む)別のヘッド組に切り換えられる。これにより、ウエハを露光するためにウエハを保持するウエハステージWST1,WST2を走査(等速)駆動する間に、ヘッド60
1〜60
4を切り換えることなしにウエハステージWST1,WST2の位置情報を計測することができる。従って、精度良くパターンをウエハ上に形成することができ、特に第2層目(セカンドレイヤ)以後の露光に際しては重ね合わせ精度を高精度に維持することが可能となる。
【0147】
なお、上記実施形態では、ウエハテーブル上面の4隅のヘッドにそれぞれ近接して少なくとも1つの補助ヘッドを設け、メインのヘッドに計測異常が生じた場合に、近接する補助ヘッドに切り換えて計測を継続しても良い。その際、補助ヘッドについても前述の配置条件を適用しても良い。
【0148】
なお、上記実施形態では、スケール板21,22の部分21
1〜21
4,22
1〜22
4のそれぞれの下面に2次元回折格子RGが形成された場合について例示したが、これに限らず、対応するエンコーダヘッド60
1〜60
4の計測方向(XY平面内での一軸方向)のみを周期方向とする1次元回折格子が形成された場合においても、上記実施形態は適用可能である。
【0149】
また、上記実施形態では、各ヘッド60
1〜60
4(エンコーダ70
1〜70
4)として、XY平面内の一軸方向とZ軸方向とを計測方向とする2次元エンコーダが採用された場合について例示したが、これに限らず、XY平面内の1軸方向を計測方向とする1次元エンコーダとZ軸方向とを計測方向とする1次元エンコーダ(あるいは非エンコーダ方式の面位置センサ等)とを採用しても良い。又は、XY平面内で互いに直交する2軸方向を計測方向とする2次元エンコーダを採用することも可能である。さらに、X軸、Y軸及びZ軸方向の3方向を計測方向とする3次元エンコーダ(3DOFセンサ)を採用しても良い。
【0150】
なお、上記実施形態では、露光装置がスキャニング・ステッパである場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に上記実施形態を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計によりステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンのウエハ上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の投影露光装置にも上記実施形態は適用することができる。さらに、例えば、米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されるように複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置に上記実施形態を適用しても良い。また、例えば、米国特許出願公開第2007/0211235号明細書及び米国特許出願公開第2007/0127006号明細書などに開示されるようにウエハステージとは別に、計測部材(例えば、基準マーク、及び/又はセンサなど)を含む計測ステージを備える露光装置に上記実施形態を適用しても良い。
【0151】
また、上記実施形態の露光装置を、例えば国際公開第99/49504号、米国特許出願公開第2005/0259234号明細書などに開示される液浸型としても良い。
【0152】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0153】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0154】
また、上記実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、そのステージの位置をエンコーダを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0155】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記実施形態を適用することができる。
【0156】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
【0157】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0158】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0159】
半導体などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、上記実施形態の露光装置で、マスクに形成されたパターンをウエハ等の物体上に転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハ(物体)を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置及び露光方法が用いられるので、高集積度のデバイスを歩留り良く製造することができる。
【0160】
また、上記実施形態の露光装置(パターン形成装置)は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。