(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
図1は、本実施の形態にかかる熱処理装置を備えた基板処理システム1の構成の概略を示す説明図である。
図2及び
図3は、基板処理システム1の内部構成の概略を示す正面図及び背面図である。なお、本実施の形態では、基板処理システム1がウェハWに対して塗布現像処理を行う塗布現像処理システムである場合を例にして説明す
る。
【0024】
基板処理システム1は、
図1に示すように複数枚のウェハWを収容したカセットCが搬入出されるカセットステーション10と、ウェハWに所定の処理を施す複数の各種処理装置を備えた処理ステーション11と、処理ステーション11に隣接する露光装置12との間でウェハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション13とを一体に接続した構成を有している。
【0025】
カセットステーション10には、カセット載置台20が設けられている。カセット載置台20には、基板処理システム1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置する、例えば4つのカセット載置板21が設けられている。
【0026】
カセットステーション10には、
図1に示すようにX方向に延びる搬送路22上を移動自在なウェハ搬送装置23が設けられている。ウェハ搬送装置23は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各カセット載置板21上のカセットCと、後述する処理ステーション11の第3のブロックG3の受け渡し装置との間でウェハWを搬送できる。
【0027】
処理ステーション11には、各種装置を備えた複数例えば4つのブロックG1、G2、G3、G4が設けられている。例えば処理ステーション11の正面側(
図1のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション11の背面側(
図1のX方向正方向側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション11のカセットステーション10側(
図1のY方向負方向側)には、第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション11のインターフェイスステーション13側(
図1のY方向正方向側)には、第4のブロックG4が設けられている。
【0028】
例えば第1のブロックG1には、
図2に示すように複数の液処理装置、例えばウェハWを現像処理する現像処理装置30、ウェハWのレジスト膜の下層に反射防止膜(以下「下部反射防止膜」という)を形成する下部反射防止膜形成装置31、ウェハWにレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布装置32、ウェハWのレジスト膜の上層に反射防止膜(以下「上部反射防止膜」という)を形成する上部反射防止膜形成装置33が下からこの順に配置されている。
【0029】
例えば現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33は、それぞれ水平方向に3つ並べて配置されている。なお、これら現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33の数や配置は、任意に選択できる。
【0030】
これら現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33では、例えばウェハW上に所定の塗布液を塗布するスピンコーティングが行われる。スピンコーティングでは、例えば塗布ノズルからウェハW上に塗布液を吐出すると共に、ウェハWを回転させて、塗布液をウェハWの表面に拡散させる。
【0031】
例えば第2のブロックG2には、
図3に示すようにウェハWの加熱や冷却といった熱処理を行う熱処理装置40や、ウェハWを疎水化処理するアドヒージョン装置41、ウェハWの外周部を露光する周辺露光装置42が上下方向と水平方向に並べて設けられている。熱処理装置40は、ウェハWを載置して加熱する熱板と、ウェハWを載置して温度調節する温度調節板を有し、加熱処理と温度調節処理の両方を行うものであり、その構成については後述する。また、熱処理装置40、アドヒージョン装置41、周辺露光装置42の数や配置は、任意に選択できる。
【0032】
例えば第3のブロックG3には、複数の受け渡し装置50、51、52、53、54、55、56が下から順に設けられている。また、第4のブロックG4には、複数の受け渡し装置60、61、62が下から順に設けられている。
【0033】
図1に示すように第1のブロックG1〜第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、例えばY方向、X方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有する、ウェハ搬送装置70が複数配置されている。ウェハ搬送装置70は、ウェハ搬送領域D内を移動し、周囲の第1のブロックG1、第2のブロックG2、第3のブロックG3及び第4のブロックG4内の所定の装置にウェハWを搬送できる。
【0034】
また、ウェハ搬送領域Dには、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送装置80が設けられている。
【0035】
シャトル搬送装置80は、例えばY方向に直線的に移動自在になっている。シャトル搬送装置80は、ウェハWを支持した状態でY方向に移動し、第3のブロックG3の受け渡し装置52と第4のブロックG4の受け渡し装置62との間でウェハWを搬送できる。
【0036】
図1に示すように第3のブロックG3のX方向正方向側の隣には、ウェハ搬送装置100が設けられている。ウェハ搬送装置100は、例えばX方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置100は、ウェハWを支持した状態で上下に移動して、第3のブロックG3内の各受け渡し装置にウェハWを搬送できる。
【0037】
インターフェイスステーション13には、ウェハ搬送装置110と受け渡し装置111が設けられている。ウェハ搬送装置110は、例えばY方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置110は、例えば搬送アームにウェハWを支持して、第4のブロックG4内の各受け渡し装置、受け渡し装置111及び露光装置12との間でウェハWを搬送できる。
【0038】
以上の基板処理システム1には、
図1に示すように制御部300が設けられている。制御部300は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、基板処理システム1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、基板処理システム1における後述の基板処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部300にインストールされたものであってもよい。
【0039】
本実施の形態にかかる基板処理システム1は以上のように構成されている。次に、基板処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。
【0040】
先ず、複数のウェハWを収納したカセットCが、基板処理システム1のカセットステーション10に搬入され、ウェハ搬送装置23によりカセットC内の各ウェハWが順次処理ステーション11の受け渡し装置53に搬送される。
【0041】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送され温度調節処理される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって例えば第1のブロックG1の下部反射防止膜形成装置31に搬送され、ウェハW上に下部反射防止膜が形成される。その後ウェハWは、第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送され、熱処理が行われる。
【0042】
熱処理装置40に搬送されたウェハWは、先ず冷却板160上に載置される。続いて冷却板160が熱板132の上方に移動される。次いで、昇降ピン141が上昇し、冷却板160のウェハWが昇降ピン141に受け渡される。その後、冷却板160が熱板132上から退避し、昇降ピン141が下降して、熱板132上にウェハWが受け渡される。
【0043】
所定時間ウェハWの熱処理が行われると、昇降ピン141が上昇してウェハWが熱板132の上方に移動すると共に、冷却板160が熱板132上まで移動して、昇降ピン141から冷却板160にウェハWが受け渡される。冷却板160に受け渡されたウェハWは、例えば常温まで冷却されて熱処理装置40から搬出される。
【0044】
熱処理装置40での熱処理を終えたウェハWは、レジスト塗布装置32に搬送され、ウェハW上にレジスト膜が形成される。その後ウェハWは、熱処理装置40に搬送され、プリベーク処理される。なお、プリベーク処理においても下部反射防止膜形成後の熱処理と同様な処理が行われ、また、後述の反射防止膜形成後の熱処理、露光後ベーク処理、ポストベーク処理においても同様な処理が行われる。ただし、各熱処理に供される熱処理装置40は互いに異なる。
【0045】
次にウェハWは、上部反射防止膜形成装置33に搬送され、ウェハW上に上部反射防止膜が形成される。その後ウェハWは、熱処理装置40に搬送されて、加熱され、温度調節される。その後、ウェハWは、周辺露光装置42に搬送され、周辺露光処理される。
【0046】
次にウェハWは、露光装置12に搬送され、所定のパターンで露光処理される。
【0047】
次にウェハWは、熱処理装置40に搬送され、露光後ベーク処理される。その後ウェハWは、たとえば現像処理装置30に搬送されて現像処理される。現像処理終了後、ウェハWは、熱処理装置40に搬送され、ポストベーク処理される。その後、ウェハWは、カセット載置板21のカセットCに搬送され、一連のフォトリソグラフィー工程が完了する。
【0048】
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態に係る熱処理装置40の構成について説明する。例えば熱処理装置40は、
図4及び
図5に示すように筐体120内に、ウェハWを加熱処理する加熱部121と、ウェハWを冷却処理する冷却部122を備えている。
図5に示すように筐体120の冷却部122近傍の両側面には、ウェハWを搬入出するための搬入出口123が形成されている。
【0049】
加熱部121は、
図4に示すように上側に位置して上下動自在な蓋体130と、下側に位置してその蓋体130と一体となって処理室Sを形成する熱板収容部131を備えている。
【0050】
蓋体130は、下面が開口した略筒形状を有し、後述の熱板132上に載置されたウェハWの被処理面である上面を覆う。蓋体130の上面中央部には、排気部130aが設けられている。処理室S内の雰囲気は、排気部130aから排気される。
また、蓋体130には、該蓋体130の温度を測定する温度測定部である温度センサ133が設けられている。図の例では、温度センサ133は蓋体130の端部に設けられているが、蓋体130の中央部等に設けてもよい。
【0051】
熱板収容部131の中央には、ウェハWが載置され、該載置されたウェハWを加熱する熱板132が設けられている。熱板132は、厚みのある略円盤形状を有しており、熱板132の上面すなわちウェハWの搭載面を加熱するヒータ140がその内部に設けられている。ヒータ140としては、例えば電気ヒータが用いられる。この熱板132の構成については後述する。
【0052】
熱板収容部131には、熱板132を厚み方向に貫通する昇降ピン141が設けられている。昇降ピン141は、シリンダなどの昇降駆動部142により昇降自在であり、熱板132の上面に突出して後述する冷却板160との間でウェハWの受け渡しを行うことができる。
【0053】
熱板収容部131は、例えば
図4に示すように熱板132を収容して熱板132の外周部を保持する環状の保持部材150と、その保持部材150の外周を囲む略筒状のサポートリング151を有している。
【0054】
加熱部121に隣接する冷却部122には、例えばウェハWを載置して冷却する冷却板160が設けられている。冷却板160は、例えば
図5に示すように略方形の平板形状を有し、加熱部121側の端面が円弧状に湾曲している。冷却板160の内部には、例えばペルチェ素子などの図示しない冷却部材が内蔵されており、冷却板160を所定の設定温度に調整できる。
【0055】
冷却板160は、例えば
図4に示すように支持アーム161に支持され、その支持アーム161は、加熱部121側のX方向に向かって延伸するレール162に取付けられている。冷却板160は、支持アーム161に取り付けられた駆動機構163によりレール162上を移動できる。これにより、冷却板160は、加熱部121側の熱板132の上方まで移動できる。
【0056】
冷却板160には、例えば
図5のX方向に沿った2本のスリット164が形成されている。スリット164は、冷却板160の加熱部121側の端面から冷却板160の中央部付近まで形成されている。このスリット164により、加熱部121側に移動した冷却板160と、熱板132上の昇降ピン141との干渉が防止される。
図4に示すように冷却部122内に位置する冷却板160の下方には、昇降ピン165が設けられている。昇降ピン165は、昇降駆動部166によって昇降できる。昇降ピン165は、冷却板160の下方から上昇してスリット164を通過し、冷却板160の上方に突出して、例えば搬入出口123から筐体120の内部に進入するウェハ搬送装置70との間でウェハWの受け渡しを行うことができる。
【0057】
次に、熱板132の構成について詳述する。熱板132は、
図6に示すように、1つの熱板132に対し1つの加熱部すなわちヒータ140を備える。
ヒータ140の発熱量は、熱板温調器143を介して制御部300により調整される。熱板温調器143は、ヒータ140の発熱量を調整して、熱板132の温度を所定の設定温度に制御できる。
制御部300には、温度センサ133で測定した蓋体130の温度の測定結果が入力される。
【0058】
レジストの種類の変更等といったプロセスレシピの変更によりウェハWの加熱温度が変更されると、熱板132の設定温度を変更させることになる。
前述したように、従前の熱処理装置、すなわち、蓋体に対し何ら温度調節機構を設けずに蓋体の冷却は自然冷却により行う熱処理装置では、設定温度の変更後、複数枚のウェハを連続して処理すると、ウェハ間で品質にばらつきが生じる。これは蓋体の温度が安定な状態になるまでに時間がかかるのがその原因の1つである。
【0059】
そこで、本発明者らは、まず、従来の熱処理装置において、熱板の設定温度を変更し安定状態になってから熱処理を連続して行った時と、熱板の設定温度を変更した直後に熱処理を連続して行った時の、ウェハの面内平均温度と蓋体の温度を測定した。
図7は、連続処理時のn枚目のウェハにおける上記ウェハの面内平均温度及び蓋体の温度を示す図である。
【0060】
図7において、横軸は処理枚数、縦軸はウェハの面内平均温度(WAF Ave温度)または蓋体の温度(チャンバー温度)である。また、ウェハの面内平均温度は、ウェハを模し複数の温度センサなどが搭載されたウェハ型温度測定装置により測定され、また、熱板にウェハ(ウェア型温度測定装置)が載置されてから60秒後の温度であり、さらに、本例ではウェハ(ウェハ型温度測定装置)の測定面内における29箇所で測定した温度の平均値である。
【0061】
図7に示すように、熱板の設定温度を110℃に変更後所定時間が経過し安定状態になってから熱処理を連続して行った場合、ウェハ間で面内平均温度と蓋体の温度にばらつきはない。
しかし、熱板の設定温度を110℃に変更直後から熱処理を連続して行った場合、1枚目と25枚目とでは面内平均温度と蓋体の温度に大きな差があり、ウェハ間でばらつきがある。
【0062】
この測定結果を踏まえ、本発明者らは、熱板の設定温度を変更し安定状態になってから熱処理を連続して行った時と、熱板の設定温度を変更した直後に熱処理を連続して行った時の、ウェハの面内平均温度と蓋体の温度との関係を検討した。
【0063】
図8は、上述のウェハの面内平均温度と蓋体の温度との関係を示す図である。
図8において、横軸は蓋体の温度、縦軸はウェハの面内平均温度である。
図8に示すように、両者には略正比例な相関関係があるものと推測される。
【0064】
以上の知見と、ウェハWの面内平均温度には熱板132のヒータ140による加熱量が寄与することと、熱板132は蓋体130より熱容量が非常に小さいことから、本実施形態では、熱板132によるウェハWの熱処理の際、蓋体130の温度を測定し、この測定結果に基づいて、熱板132のヒータ140による加熱量の補正を行い、熱板132の温度が早期に安定するようにする。この加熱量の補正は、少なくとも熱板132の設定温度が変更された際に行う。また、上記加熱量の補正は、蓋体130の温度が安定するまでの間、行う。
【0065】
上記加熱量の補正は、具体的には、例えば、以下のようにして行う。すなわち、熱板132の設定温度毎に、当該設定温度へ変更後に蓋体130の温度が安定した時の該蓋体の温度である安定時蓋体温度を記憶部(不図示)に予め記憶する。
そして、制御部300は、熱板132の設定温度が変更された際は、温度センサ133により測定された蓋体130の温度と、変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度との差分に基づいて、熱板132のヒータ140による加熱量を補正する。
【0066】
制御部300が行う加熱量の補正とは、熱板温調器143が出力するヒータ140の操作量の調整であり、制御部300は、該調整によって蓋体130の温度をフィードバック制御し、蓋体130の温度が、変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度となるようにする。
【0067】
図9は、本実施形態の熱処理装置40において、熱板132の設定温度を変更し安定状態になってから熱処理を連続して行った時と、熱板の設定温度を変更した直後に熱処理を連続して行った時の、ウェハWの面内平均温度を示す図である。
【0068】
図9において、横軸は処理枚数、縦軸はウェハWの面内平均温度である。また、ウェハWの面内平均温度の定義や測定方法は
図7におけるものと同様であるため省略する。
図9に示すように、熱板132の設定温度を130℃に変更後所定時間が経過し安定状態になってから熱処理を連続して行った場合も、熱板132の設定温度を130℃に変更直後から熱処理を連続して行った場合も、ウェハWの面内平均温度はウェハ間でばらつかない。よって、本実施形態の熱処理装置40によればウェハWの品質のばらつきを抑えることができる。また、本実施形態の熱処理装置40は、蓋体130の温度の調整にピエゾ素子等から成る温度調整機構を別途設けていないため、装置の構成が簡易である。
【0069】
つづいて、熱処理装置40での蓋体130の温度のフィードバック制御について詳述する。
【0070】
図10は、フィードバック制御時に行われる処理を説明するフローチャートである。
熱板132の設定温度の変更があると、まず、制御部300は、現在の蓋体130の温度の情報を温度センサ133から取得する(ステップS1)。
そして、制御部300は、現在の蓋体130の温度と、変更後の設定温度に対応する基準温度すなわち変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度とに基づいて、ヒータ140による加熱量の補正量を算出する(ステップS2)。具体的には、制御部300は、変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度と現在の蓋体130の温度との差分を算出し、該差分に基づき、所定の補正式にしたがって、ヒータ140による加熱量の補正量を算出する。
【0071】
上記所定の補正式は、実際の熱処理より前に予め得られたものであり、例えば以下のようにして与えられる。
上記所定の補正式を得る際には、制御部300は、熱板132の温度を補正式算出用の設定温度に変更・調整し、蓋体130の温度が安定してから、補正式算出用の設定温度に対応する安定時蓋体温度を温度センサ133により取得する。
また、熱板132の設定温度を補正式算出用のものに変更した直後、及び、変更後安定状態になった後に、蓋体130の温度のフィードバック制御機能をOFFにした状態で、熱処理を連続して行い、ウェハW毎に、該ウェハWの面内平均温度と蓋体130の温度を測定する。ウェハWの面内平均温度は、ウェハWを模し複数の温度センサなどが搭載されたウェハ型温度測定装置により測定する。なお、ウェハWの面内平均温度は、熱板132にウェハW(ウェア型温度測定装置)が載置されてから60秒後の温度であり、さらに、ウェハW(ウェハ型温度測定装置)の測定面内における29箇所で測定した温度の平均値である。
そして、各ウェハWについて、補正式算出用の設定温度と面内平均温度との差分を補正量として算出するとともに、補正式算出用の設定温度に対応する安定時蓋体温度と蓋体130の温度の差分ΔTを算出する。
【0072】
図11は、上記補正量と上記差分ΔTとの関係を示す図である。横軸は上記差分ΔT、縦軸は補正量である。
そして、制御部300は、
図11の関係を示す近似式を導出する。この補正式算出用の設定温度に対応する安定時蓋体温度と蓋体130の温度の差分ΔTと、補正量と、の関係を示す近似式を、変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度と現在の蓋体130の温度の差分と、補正量との関係を示す補正式とする。
なお、本例では、熱板132の設定温度が異なったとしても共通の補正式を用いるが、補正式を複数用意し、設定温度に応じて異なった補正式を用いるようにしてもよい。
【0073】
図10の説明に戻る。
補正量の算出後、制御部300は、算出した補正量と、蓋体130の温度のフィードバック制御を有効にするトリガ(起動トリガ)とを熱板温調器143に発行する(ステップS3)。
これにより、熱板温調器143が、発行された補正量に基づき、ヒータ140の加熱量を補正することで、蓋体130の温度フィードバック制御が開始される(ステップS4)。
なお、熱処理装置40でのウェハW毎の熱処理時間が60秒であるとすると、フィードバック制御を行う時間、すなわち、現在の蓋体130の温度が、変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度になるまでの時間は数秒である。
【0074】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る熱処理装置40の熱板132の構成の概略を示す平面の説明図である。
図13は、第2の実施形態に係る蓋体130の構成の概略を示す平面の説明図である。
【0075】
第2の実施形態に係る熱処理装置40の熱板132は、
図12に示すように、複数、例えば13個の熱板領域R
1〜R
13に区画されている。熱板132は、例えば平面から見て中心部に位置して円形の熱板領域R
1と、その熱板領域R
1の周囲を円弧状に4等分した熱板領域R
2〜R
5と、その熱板領域R
2〜R
5の周囲を円弧上に8等分した熱板領域R
6〜R
13に区画されている。
【0076】
熱板132の各熱板領域R
1〜R
13には、ヒータ140が個別に内蔵され、熱板領域R
1〜R
13毎に個別に加熱できる。各熱板領域R
1〜R
13のヒータ140の発熱量は、熱板温調器143を介して制御部300により調整される。制御部300は、各ヒータ140の発熱量を調整して、各熱板領域R
1〜R
13の温度を所定の設定温度に制御できる。
【0077】
また、
図13に示すように、蓋体130の下面には、温度センサ133が複数設けられている。温度センサ133は、中央の熱板領域R
1に対応する部分P1に1つ、熱板領域R
2〜R
5に対応する部分P2に1つ、
熱板領域R6〜R13に対応する部分P3に1つ配置されている。
【0078】
本発明者が鋭意検討した結果、各熱板領域R
1〜R
13に対応するウェハWの部分の面内平均温度と、各熱板領域R
1〜R
13に対応する蓋体130の部分の温度には相関関係があり、部分ごとにその相関関係は異なることが分かった。
そこで、本実施形態では、熱板132によるウェハWの熱処理の際、蓋体130の各部分P1〜P3の温度を測定し、この測定結果に基づいて、熱板132の各熱板領域R
1〜R
13のヒータ140による加熱量の補正を行う。
【0079】
上記加熱量の補正は、具体的には、例えば、以下のようにして行う。すなわち、熱板132の設定温度毎に、蓋体130の各部分P1〜P3の安定時蓋体温度を記憶部(不図示)に予め記憶する。そのうえで、制御部300は、熱板132の設定温度が変更された際は、各部分P1〜P3について、変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度と、温度センサ133により測定された蓋体130の温度と、の差分を算出する。そして、制御部300は、
熱板領域R
1〜R
13毎に、当該領域R
1〜R
13に対応する部分P1〜P3の安定時蓋体温度と、測定された該対応する部分P1〜P3の現在の温度と、の差分に基づいて、ヒータ140による加熱量を補正する。
【0080】
制御部300が行う加熱量の補正とは、熱板温調器143が出力する各ヒータ140の操作量の調整であり、制御部300は、該調整によって蓋体130の各部分P1〜P3の温度をフィードバック制御し、蓋体130の各部分P1〜P3の温度が、変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度となるようにする。
【0081】
図14は、第2の実施形態に係るフィードバック制御時に行われる処理を説明するフローチャートである。
本実施形態に係る熱処理装置40では、熱板132の設定温度の変更があると、
図14に示すように、まず、制御部300は、蓋体130の各部分P1〜P3の温度センサ133から、現在の各部分P1〜P3の温度の情報を取得する(ステップS11)。
そして、制御部300は、各部分P1〜P3について、現在の蓋体130の温度と、変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度とに基づいて、ヒータ140による加熱量の補正量を算出する(ステップS12)。具体的には、制御部300は、各部分P1〜P3について、変更後の設定温度に対応する安定時蓋体温度と現在の蓋体130の温度との差分を算出する。そして、所定の補正式にしたがって、各熱板領域R
1〜R
13について、当該熱板領域R
1〜R
13に対応する部分P1〜P3に係る上記差分に基づき、ヒータ140による加熱量の補正量を算出する。
【0082】
上記所定の補正式は、実際の熱処理より前に予め得られたものであり、例えば、部分P1〜P3毎に第1の実施形態と同様の手法により得ることができる。この補正式は、部分P1〜P3で共通であってもよいし、部分P1〜P3毎に異なってもよい。
【0083】
各熱板領域R
1〜R
13の補正量の算出後、制御部300は、算出した補正量と、蓋体130の温度のフィードバック制御を有効にするトリガ(起動トリガ)とを熱板温調器143に発行する(ステップS
13)。
これにより、熱板温調器143が、発行された補正量に基づき、各ヒータ140の加熱量を補正することで、蓋体130の温度フィードバック制御が開始される(ステップS
14)。
【0084】
本実施形態によれば、熱板132をそれぞれ独立して温度調整可能な複数の熱板領域R
1〜R
13に分割し、熱板領域R
1のヒータ140の操作量を調整することにより蓋体130の部分P1の温度をフィードバック制御し、熱板領域R
2〜R
5のヒータ140の操作量を調整することにより蓋体130の部分P2の温度をフィードバック制御し、熱板領域R
6〜R
13のヒータ140の操作量を調整することにより蓋体130の部分P3の温度をフィードバック制御する。
したがって、蓋体130の各部分P1〜P3の温度を速く安定させることができるため、熱板132の設定温度の変更直後からウェハWを連続処理したとしても、ウェハWの面内平均温度はウェハW間でばらつかないだけでなく、同一ウェハW内での温度のばらつきを抑えることができる。よって、本実施形態の熱処理装置40によればウェハW間の品質のばらつき及び同一ウェハW内での品質のばらつきを抑えることができる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。