(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789721
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20201116BHJP
C23F 4/00 20060101ALI20201116BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20201116BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20201116BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20201116BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
H01L21/302 301
H01L21/302 105A
C23F4/00 A
H01L21/28 E
H01L21/28 301R
H01L29/78 627C
H01L29/78 616V
H01L29/78 616U
H05H1/46 L
H05H1/46 M
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-158745(P2016-158745)
(22)【出願日】2016年8月12日
(65)【公開番号】特開2018-26501(P2018-26501A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年5月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】神戸 喬史
【審査官】
宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−294470(JP,A)
【文献】
特開平11−340213(JP,A)
【文献】
特開2001−185541(JP,A)
【文献】
特開2006−120983(JP,A)
【文献】
特開2002−016047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
C23F 4/00
H01L 21/28
H01L 21/336
H01L 29/786
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機膜の上に形成されたメタル膜を有する基板にプラズマを用いたエッチングを施す基板処理方法であって、
前記基板へ前記プラズマにおける陽イオンを引きこむためのバイアス電圧を、最初に連続印加し、前記有機膜が露出するよりも所定の時間ほど前から前記バイアス電圧をパルス印加し始め、前記有機膜が露出した後も前記バイアス電圧のパルス印加を継続して前記メタル膜をエッチングし、
前記バイアス電圧のパルス印加におけるデューティー比は50%〜70%であることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
有機膜の上に形成されたメタル膜を有する基板にプラズマを用いたエッチングを施す基板処理方法であって、
前記基板へ前記プラズマにおける陽イオンを引きこむためのバイアス電圧を、最初に連続印加し、前記有機膜が露出するよりも所定の時間ほど前から前記バイアス電圧をパルス印加し始め、前記有機膜が露出した後も前記バイアス電圧のパルス印加を継続して前記メタル膜をエッチングし、
前記エッチングの進行に伴い、前記バイアス電圧のパルス印加におけるデューティー比を小さくしていくことを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
前記メタル膜は少なくともチタンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記メタル膜は少なくともアルミニウムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記メタル膜は下層側からチタン膜、アルミニウム膜及びチタン膜をこの順で積層してなるチタン/アルミニウム/チタン膜からなることを特徴とする請求項3又は4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記プラズマは塩素系ガスを含む処理ガスから生成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記塩素系ガスは塩素(Cl2)ガス又は三塩化硼素(BCl3)ガスを含むことを特徴とする請求項6記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機膜上に形成されたメタル膜にエッチングを施す基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)等のフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)に使用されるガラス基板上に形成される半導体デバイスにおいて、メタル膜としての、下層側からチタン膜、アルミニウム−シリコン膜及びチタン膜をこの順で積層してなるチタン/アルミニウム−シリコン/チタン膜からTFT(Thin Film Transistor)のソース電極やドレイン電極を形成する際、塩素を含む反応ガスからチャンバ内において生成されたプラズマを用いたエッチングがチタン/アルミニウム−シリコン/チタン膜に施される。このとき、塩素やアルミニウムの化合物が生成され、該化合物が、続くチタン/アルミニウム−シリコン/チタン膜のエッチングを阻害することがあった。
【0003】
そこで、チタン/アルミニウム−シリコン/チタン膜へプラズマを用いたエッチングを施した後に一旦、チャンバ内を真空引きしながら該チャンバ内へ酸素ガスを供給して酸素パージを行うことにより、上記化合物を酸素ガスと反応させて分解し、排気することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、LTPS(Low Temperature Poly-silicon)を用いたTFTでは、メタル膜としての、下層側からチタン膜、アルミニウム膜及びチタン膜をこの順で積層してなるチタン/アルミニウム/チタン膜が絶縁膜である有機膜上に形成され、チタン/アルミニウム/チタン膜にプラズマを用いたエッチングが施されることにより、ソース電極やドレイン電極が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−76487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、チタン/アルミニウム/チタン膜からソース電極やドレイン電極を形成する際、エッチングの進行に伴って部分的に有機膜が露出することがある。露出した有機膜もプラズマに晒されてエッチングが施されるが、このとき、有機膜が削られて生成される有機成分が阻害物質として飛散し、チタン/アルミニウム/チタン膜を覆う。チタン/アルミニウム/チタン膜を覆う阻害物質は当該チタン/アルミニウム/チタン膜を部分的にプラズマから隠し、結果として、チタン/アルミニウム/チタン膜のエッチングレートが低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、有機膜上に形成されたメタル膜のエッチングレートが低下するのを抑制することができる基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の基板処理方法は、有機膜の上に形成されたメタル膜を有する基板にプラズマを用いたエッチングを施す基板処理方法であって、前記基板へ前記プラズマにおける陽イオンを引きこむためのバイアス電圧を、最初に連続印加し、前記有機膜が露出するよりも所定の時間ほど前から前記バイアス電圧をパルス印加し始め、前記有機膜が露出した後も前記バイアス電圧のパルス印加を継続して前記メタル膜をエッチング
し、前記バイアス電圧のパルス印加におけるデューティー比は50%〜70%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板へプラズマにおける陽イオンを引きこむためのバイアス電圧をパルス印加するので、主に物理的エッチングによって削れられる有機膜へ物理的エッチングが施される時間が実質的に短縮され、有機膜が削られて生成される有機成分からなる阻害物質が減少し、メタル膜が阻害物質によって覆われにくくなる。さらに、メタル膜は主に化学的エッチングによって削られるため、バイアス電圧が印加されない時間が発生しても、メタル膜の削れが継続される。その結果、メタル膜のエッチングレートが低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1の基板処理装置においてプラズマを用いたエッチングが施される基板に形成されるTFTの構成を概略的に示す部分断面図である。
【
図3】
図2におけるドレイン電極及びソース電極を形成する際にメタル膜へ施されるエッチングの態様を説明するための工程図である。
【
図4】本実施の形態に係る基板処理方法におけるバイアス電圧の印加形態を示すシーケンス図である。
【
図5】本実施の形態に係る基板処理方法におけるエッチングの態様を説明するための工程図である。
【
図6】本実施の形態に係る基板処理方法におけるバイアス電圧の印加形態の第1の変形例を示すシーケンス図である。
【
図7】本実施の形態に係る基板処理方法におけるバイアス電圧の印加形態の第2の変形例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0014】
図1において、基板処理装置10は誘導結合型のプラズマ処理装置からなり、略矩形状のチャンバ11と、該チャンバ11内の下方に配置されて基板Sを頂部に載置する載置台としてのサセプタ12と、チャンバ11の天井部を構成する誘電体窓13と、サセプタ12と誘電体窓13を介して対向するように配置される渦巻き状の導体からなる誘導結合アンテナ14と、チャンバ11内に処理ガスを供給するガス供給機構15と、チャンバ11内を排気する排気管16とを備え、サセプタ12及び誘電体窓13の間には処理空間PSが形成される。なお、本実施の形態では、基板SとしてLCD等のFPDに使用されるガラス基板が用いられるが、基板Sとして、例えば、半導体チップが切り出される、シリコンからなるウエハを用いてもよい。
【0015】
サセプタ12にはバイアス用高周波電源17が整合器18を介して接続される。バイアス用高周波電源17はバイアス電圧をサセプタ12へ印加して当該サセプタ12にバイアス電位を生じさせる。誘導結合アンテナ14にはプラズマ生成用高周波電源19が整合器20を介して接続され、プラズマ生成用高周波電源19はプラズマ生成用の高周波電力を誘導結合アンテナ14へ供給する。プラズマ生成用の高周波電力を供給される誘導結合アンテナ14は処理空間PSに電界を生じさせる。
【0016】
この基板処理装置10では、基板Sへプラズマを用いたエッチングを施す際、処理空間PSを減圧し、処理ガスを処理空間PSへ導入するとともに誘導結合アンテナ14へプラズマ生成用の高周波電力を印加して処理空間PSに電界を生じさせる。処理空間PSへ導入された処理ガスは電界によって励起されてプラズマを生成するが、該プラズマにおける陽イオンはサセプタ12を介して基板Sに生じるバイアス電位によって基板Sへ引きこまれて基板Sに物理的エッチングを施す。また、プラズマにおけるラジカルは基板Sへ到達して基板Sに化学的エッチングを施す。基板処理装置10では、誘導結合アンテナ14が基板Sの全面を覆うように配置されるため、基板Sの全面を覆うようにプラズマが生成され、該プラズマによって基板Sの全面へ均一にエッチングが施される。なお、基板処理装置10が基板Sへエッチングを施す際、基板処理装置10の各構成要素の動作は装置コントローラ21により、所定のプログラムに従って制御される。
【0017】
図2は、
図1の基板処理装置においてプラズマを用いたエッチングが施される基板に形成されるTFTの構成を概略的に示す部分断面図である。
【0018】
図2において、TFT22は、LTPSからなるチャネル23と、該チャネル23との間にゲート絶縁膜24を挟んで対向するゲート電極25と、ゲート絶縁膜24上に形成される、有機成分(主に炭素)からなる有機絶縁膜26と、不純物がドープされたLTPSからなり、チャネル23の両脇に形成されるn型LTPS膜27と、該有機絶縁膜26上に形成され、且つゲート絶縁膜24及び有機絶縁膜26を貫通して各n型LTPS膜27へ接触するドレイン電極28及びソース電極29とを有する。TFT22では、有機絶縁膜26上に成膜されたチタン/アルミニウム/チタン膜からなるメタル膜30を所望の形状に成形してドレイン電極28やソース電極29を形成する。
【0019】
図3は、
図2におけるドレイン電極及びソース電極を形成する際にメタル膜へ施されるエッチングの態様を説明するための工程図である。
【0020】
まず、有機絶縁膜26上にCVD(Chemical Vapor Deposition)やPVD(Physical Vapor Deposition)によってメタル膜30が成膜される。メタル膜30は3層構造の膜であり、下方から下層チタン膜31、アルミニウム膜32及び上層チタン膜33が積層されて構成される。その後、メタル膜30を所定のパターンのマスク膜(図示しない)で覆う。
【0021】
次いで、ガス供給機構15がチャンバ11内へ塩素系ガス、例えば、塩素(Cl
2)ガスや三塩化硼素(BCl
3)ガスや希ガス、例えば、アルゴン(Ar)ガスを含む処理ガスを供給し、プラズマ生成用高周波電源19がプラズマ生成用の高周波電力を誘導結合アンテナ14へ供給する。このとき、処理空間PSに生じた電界によって処理ガスが励起されてプラズマが生成される。また、バイアス用高周波電源17がバイアス電圧をサセプタ12へ供給すると、
図3(A)に示すように、プラズマにおける塩素やアルゴンの陽イオン34(図中において「●」で示す。)が基板Sへ引きこまれ、陽イオン34のスパッタによってメタル膜30へ物理的エッチングが施される。さらに、プラズマにおける塩素のラジカル35(図中において「○」で示す。)が処理空間PSを漂って基板Sへ到達すると、メタル膜30へ化学的エッチングが施される。これらの物理的エッチング及び化学的エッチングを通じてメタル膜30において上層チタン膜33、アルミニウム膜32及び下層チタン膜31が順に削られる。
【0022】
ここで、メタル膜30に物理的エッチング及び化学的エッチングを施す際、マスク膜のパターンに起因してメタル膜30の各部のエッチングレートが異なる場合がある。この場合、
図3(B)に示すように、メタル膜30の各部の切削量に差が生じ、やがて有機絶縁膜26が部分的に露出することがある。
【0023】
その後、プラズマを用いたエッチングが継続されると、露出した有機絶縁膜26にも陽イオン34のスパッタによって物理的エッチングが施されるが、物理的エッチングによって有機絶縁膜26が削られると、有機絶縁膜26の有機成分が阻害物質36(図中において「◎」で示す。)として飛散する。飛散した阻害物質36はメタル膜30、例えば、下層チタン膜31の上に堆積して下層チタン膜31を部分的に覆い(
図3(C))、下層チタン膜31を陽イオン34やラジカル35から隠す。その結果、下層チタン膜31にラジカル35が到達しにくくなり、化学的エッチングの進行が抑制されて下層チタン膜31のエッチングレートが低下する。
【0024】
本実施の形態では、これに対応して有機絶縁膜26の削れ量を減少させて阻害物質36の発生を抑制する。ここで、チタンやアルミニウム等のメタルは主に化学的エッチングによって削られる一方、有機膜は主に物理的エッチングによって削れられることが知られている。そこで、本実施の形態では、有機膜へ物理的エッチングが施される時間を実質的に短縮する。具体的には、サセプタ12へバイアス電圧を連続印加することなく、露出した有機絶縁膜26へ連続的に陽イオン34が引きこまれるのを防止することにより、陽イオン34のスパッタによる物理的エッチングが露出した有機絶縁膜26へ連続的に施されるのを抑制する。
【0025】
図4は、本実施の形態に係る基板処理方法におけるバイアス電圧の印加形態を示すシーケンス図であり、
図5は、本実施の形態に係る基板処理方法におけるエッチングの態様を説明するための工程図である。
【0026】
図4に示すように、基板処理装置10では、メタル膜30へプラズマを用いたエッチングを施す際、バイアス用高周波電源17がサセプタ12へバイアス電圧をパルス印加する。具体的には、バイアス電圧の印加(以下、「バイアスON」という。)及びバイアス電圧の不印加(以下、「バイアスOFF」という。)を周期的に繰り返すが、バイアス電圧のパルス印加におけるバイアスONの時間比(以下、「デューティー比」という。)は50%〜70%に設定される。バイアス電圧のパルス印加において、特に、有機絶縁膜26が部分的に露出した後、バイアスOFFになると、露出した有機絶縁膜26へは化学的エッチングのみが施され、物理的エッチングが施されなくなる。このとき、有機絶縁膜26は殆ど削られないため、阻害物質36は殆ど飛散しない(
図5(A))。一方、バイアスONになると、露出した有機絶縁膜26へは化学的エッチングだけでなく物理的エッチングが施され、結果として阻害物質36が飛散する(
図5(B))。しかしながら、上述したように、デューティー比が50%〜70%に設定されるため、バイアス電圧のパルス印加において飛散する阻害物質36の全体量は、バイアス電圧の連続印加において飛散する阻害物質36の全体量よりも少なくなり、具体的には、バイアス電圧の連続印加において飛散する阻害物質36の全体量の50%〜70%に留まる。したがって、下層チタン膜31を覆う阻害物質36も少なくなり、下層チタン膜31へラジカル35が到達しにくくなることがない。また、上述したように、下層チタン膜31は主に化学的エッチングによって削られるため、バイアスOFFになり、下層チタン膜31へ物理的エッチングが施されなくなっても下層チタン膜31の削れが継続される。その結果、下層チタン膜31のエッチングレートが低下するのを抑制することができる。さらに、バイアス電圧のパルス印加により、露出した有機絶縁膜26の削れが抑制されるため、有機絶縁膜26に対する下層チタン膜31の選択比を高い値に維持することができる。
【0027】
また、バイアスOFFとなる時間が長くなると、処理空間PSにおいてプラズマの維持が困難になることがあるが、デューティー比が50%〜70%に設定されてバイアスOFFとなる時間がさほど長くならないため、処理空間PSにおいてプラズマが消失するのを抑制することができる。
【0028】
以上、本発明について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0029】
例えば、メタル膜30はチタン/アルミニウム/チタン膜に限られず、主に化学的エッチングによって削られる金属によって構成されればよく、当該金属によって構成されれば、単層膜及び積層膜のいずれであってもよい。また、基板処理装置10は、いわゆる誘導結合型のプラズマ処理装置によって構成されたが、本発明はバイアス電圧を印加可能なプラズマ処理装置であれば適用することができ、例えば、容量結合型のプラズマ処理装置(具体的には、平行平板型プラズマ処理装置)にも本発明を適用することができる。
【0030】
さらに、本発明は、メタル膜と有機膜が混在する環境に適用されたが、主に物理的エッチングによって削られる膜と主に化学的エッチングによって削られる膜が混在し、且つ化学的エッチングによって削られる膜のエッチングレートを低下させたくない環境であれば、本発明を適用することができる。
【0031】
上述した本実施の形態では、バイアス電圧をデューティー比が50%〜70%でパルス印加したが、バイアス電圧のパルス印加の形態はこれに限られない。例えば、
図6に示すように、メタル膜30へプラズマを用いたエッチングを施す際、まず、最初はバイアス電圧を連続印加し、或るタイミングにおいてバイアス電圧をパルス印加し始めてもよい。ここで、或るタイミングとしては、例えば、有機絶縁膜26が部分的に露出するよりも所定の時間ほど前のタイミングであればよい。これにより、有機絶縁膜26が部分的に露出する迄は、メタル膜30を化学的エッチングだけでなく、物理的エッチングによっても削ることができる。その結果、有機絶縁膜26が部分的に露出する迄、メタル膜30のエッチングレートを高めることができ、スループットを向上することができる。また、有機絶縁膜26が部分的に露出するよりも所定の時間ほど前からバイアス電圧をパルス印加し始めることにより、露出した有機絶縁膜26へ連続的に物理的エッチングが施されるのを確実に防止することができ、もって、阻害物質36の生成量が急激に増加するのを抑制することができる。なお、有機絶縁膜26が部分的に露出するタイミングはチャンバ11内の発光状態をモニタするEPD(End Point Detector)を用いて観測してもよい。但し、有機絶縁膜26が露出してもチャンバ11内の発光状態は大きく変動せず、寧ろ、アルミニウム膜32の削れが進行して下層チタン膜31が露出したときにチャンバ11内の発光状態は大きく変動するので、EPDによって下層チタン膜31が露出するタイミングを観測し、下層チタン膜31が露出したタイミングでバイアス電圧をパルス印加し始めてもよい。
【0032】
また、上述した本実施の形態では、プラズマを用いたエッチングの進行に伴って露出する有機絶縁膜26が増加し、有機絶縁膜26の削れ量が増加するおそれがあるが、これに対応して、
図7に示すように、エッチングの進行に伴ってバイアス電圧のパルス印加におけるデューティー比を小さくしてもよい。これにより、露出する有機絶縁膜26が増加するにつれて当該有機絶縁膜26へ物理的エッチングが施される時間を実質的に短縮することができ、有機絶縁膜26の削れ量が増加するのを防止することができる。その結果、露出する有機絶縁膜26が増加しても阻害物質36の生成量が増加するのを抑制し、下層チタン膜31のエッチングレートが低下するのを確実に抑制することができる。
【0033】
さらに、本発明の目的は、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、基板処理装置10の装置コントローラ21に供給し、該装置コントローラ21のCPUが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。
【0034】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、プログラムコード及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0035】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムコードを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムコードは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによって上記装置コントローラ21に供給されてもよい。
【0036】
また、CPUが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0037】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、上記装置コントローラ21に接続された機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0038】
上記プログラムコードの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0040】
まず、基板処理装置10において、チャンバ11内に塩素ガス及び三塩化硼素ガスの混合ガスを処理ガスとして供給し、誘導結合アンテナ14によって処理空間PSに電界を生じさせて処理ガスからプラズマを生成した。その後、基板Sを載置するサセプタ12へバイアス電圧を連続印加したときの下層チタン膜31及び有機絶縁膜26のエッチングレートを測定した(比較例)。このときの下層チタン膜31のエッチングレートは210.5nm/分であり、有機絶縁膜26のエッチングレートは209.4nm/分であり、有機絶縁膜26に対する下層チタン膜31の選択比は1.00であった。
【0041】
次に、基板処理装置10において、比較例と同じ条件でプラズマを生成した後、サセプタ12へバイアス電圧をデューティー比が50%でパルス印加したときの下層チタン膜31及び有機絶縁膜26のエッチングレートを測定した(実施例)。このときの下層チタン膜31のエッチングレートは293.7nm/分であり、有機絶縁膜26のエッチングレートは163.8nm/分であり、有機絶縁膜26に対する下層チタン膜31の選択比は1.79であった。
【0042】
以上より、バイアス電圧をパルス印加すると、バイアス電圧を連続印加したときに比して、有機絶縁膜26のエッチングレートを高くすることができ、さらに、有機絶縁膜26に対する下層チタン膜31の選択比を高い値に維持することができることが分かった。
【符号の説明】
【0043】
S 基板
10 基板処理装置
17 バイアス用高周波電源
26 有機絶縁膜
30 メタル膜
31 下層チタン膜