(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789727
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】アナログデジタル混在回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/08 20060101AFI20201116BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
H03M1/08 A
H03M1/12 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-168742(P2016-168742)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-37817(P2018-37817A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 淳一
【審査官】
及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−504733(JP,A)
【文献】
特開平05−143187(JP,A)
【文献】
特開2006−157188(JP,A)
【文献】
特開2016−115891(JP,A)
【文献】
特開2011−120158(JP,A)
【文献】
特開2002−008317(JP,A)
【文献】
特開平04−003518(JP,A)
【文献】
特開平09−181604(JP,A)
【文献】
特開2011−076192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00−1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低速クロック及び高速クロックを発生するクロック発生器と、該クロック発生器で発生した前記低速クロックを利用してアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記クロック発生器で発生した前記高速クロックを利用して少なくとも前記A/D変換器から出力する前記デジタル信号を処理するデジタル回路とを備えたアナログデジタル混在回路において、
前記高速クロックは、前記高速クロックにより前記デジタル回路で発生するクロックノイズが前記A/D変換器の変換動作に悪影響を及ぼす期間だけ、停止しており、
前記A/D変換器は、前記低速クロックを使用したスイッチトキャパシタ利用のA/D変換器であり、
前記A/D変換器の変換動作に悪影響を及ぼす期間は、前記低速クロックの周期の終了間際の所定期間であり、
前記低速クロックの周期の終了間際の所定期間は、前記クロックノイズが大きいほど長く設定され、
前記クロックノイズの大きさは、前記デジタル回路の処理プログラムの内容に基づいて判定されることを特徴とするアナログデジタル混在回路。
【請求項2】
請求項1に記載のアナログデジタル混在回路において、
前記低速クロックの周期の終了間際の所定期間が予め設定された期間より長いとき、前記所定期間以外の期間で動作する前記高速クロックの周波数が、より高い周波数に切り替えられることを特徴とするアナログデジタル混在回路。
【請求項3】
請求項2に記載のアナログデジタル混在回路において、
前記デジタル回路は、前記高速クロックの周波数がより高い周波数に切り替えられるとき、そこに供給される電源電圧がより高い電圧に切り替えられ、又はそこに組み込まれているトランジスタの閾値がより小さい値に切り替えられることを特徴とするアナログデジタル混在回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のアナログデジタル混在回路において、
前記デジタル回路は、前記高速クロックが停止している期間は、そこに供給される電源が遮断され、又はそこに組み込まれているトランジスタの閾値がより大きい値に切り替えられることを特徴とするアナログデジタル混在回路。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のアナログデジタル混在回路において、
前記高速クロックが停止している期間は、前記デジタル回路に組み込まれる所定回路がディセーブルに制御されることを特徴とするアナログデジタル混在回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ回路とデジタル回路が混在する回路にかかり、特に、デジタル回路の動作に起因するクロックノイズがアナログ回路のA/D変換器の変換動作に及ぼす影響を抑制したアナログデジタル混在回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に従来のアナログデジタル混在回路を示す。このアナログデジタル混在回路は、A/D変換用の2相低速クロックφ1、φ2及びその2相低速クロックφ1、φ2よりも高速の高速クロックφ3を生成するクロック発生器40と、そのクロック発生器40で発生した2相低速クロックφ1、φ2を利用してアナログ入力信号Vinを1ビットストリームの信号Dinに変換するスイッチトキャパシタ利用のデルタシグマ変調型A/D変換器20と、クロック発生器40で発生した高速クロックφ3を利用してA/D変換器20から入力するデジタル信号Din及び図示しない別の入力データ信号をデジタル処理するCPU、MPU、DSP等を備えたデジタル回路50とを備えている。
【0003】
スイッチトキャパシタ利用のデルタシグマ変調型A/D変換器20は、
図7に示すように、アナログ入力信号Vinをサンプリングするサンプリング回路21と、サンプリングしたアナログ入力信号Vinを積分する積分器22と、積分器22の出力電圧を基準値Vref1と比較することで1ビットストリームデータDinにデジタル化する量子化器23と、出力する1ビットストリームデータDinをアナログの電圧に変換してサンプリング回路21の出力側に戻すD/A変換器24とで構成されている。
【0004】
サンプリング回路21は、キャパシタC1と、スイッチS1、S2、S3、S4で構成される。スイッチS1、S4は低速クロックφ1が“H”のときONして入力電圧VinをキャパシタC1に充電し、“L”のときOFFする。スイッチS2、S3は低速クロックφ2が“H”のときONしてキャパシタC1の電荷を積分器22に転送し、“L”のときOFFする。積分器22はオペアンプOP1とキャパシタC2で構成されている。量子化器23は、比較電圧Vref1(=0V)が入力する比較器CP1で構成されている。D/A変換器24は、キャパシタC3と、スイッチS5、S6、S7、S8、S9からなるスイッチトキャパシタ回路で構成されている。スイッチS6、S7は低速クロックφ1が“H”のときONして基準電圧Vref2又は0VをキャパシタC3に充電し、“L”のときOFFする。スイッチS5、S8は低速クロックφ2が“H”のときONしてキャパシタC3の電圧を積分器22に転送し、“L”のときOFFする。スイッチS9は量子化器23から出力する1ビットストリームのデジタル信号Dinが“H”のとき電圧Vref2を選択し、“L”のとき接地電圧を選択する。この種のA/D変換器は、特許文献1に記載がある。
【0005】
図8にこのA/D変換器20の動作波形を示す。入力する2相低速クロックφ1、φ2は180度位相が異なったクロックであり、通常では、両者が同時に“H”にならないようにデッドタイムが設定されているが、ここでは省略した。ここで、スイッチS9が基準電圧Vef2を選択していて、入力電圧Vi=0VのときのD/A変換器24の動作について説明する。
【0006】
低速クロックφ1が“H”のときは、スイッチS6、S7がONになって、キャパシタC3に電圧Vref2の充電が行われ、低速クロックφ2が“H”のときはスイッチS5、S8がONになって、キャパシタC3の電荷が積分器22に入力することで、積分器22のキャパシタC2の電圧Vc2が、理想的には
図8のVc2(ノイズ無)に示すように変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3916721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、デジタル回路30に入力する高速クロックφ3は、2相低速クロックφ1、φ2に比べて高速であるため、この高速クロックφ3により動作するデジタル回路30においてクロックノイズが発生し、このクロックノイズがアナログデジタル混在回路の共通の電源ラインに混入することで、A/D変換器20の積分器22のキャパシタC2の電圧Vc2に印加して量子化器23の量子化に影響を与え、A/D変換のS/N比やTDH(全高調波ひずみ)が悪化するという問題があった。
【0009】
これは、デジタル回路30を構成するそれぞれのトランジスタが高速クロックφ3に同期してON/OFFし、その都度電源間に間欠電流が流れるので、動作するトランジスタの数が多くなるほどその間欠電流が大きくなり、そのとき電源インピーダンスが有限であることから、間欠電流によって電源電圧が変動するからである。
【0010】
この電源電圧の変動は、容量結合を通じてA/D変換器20にクロックノイズとして混入する。容量結合を通じたクロックノイズは、サンプリング回路21、積分器22、量子化器23、D/A変換器24の動作に影響を与える。また、トランジスタのバックゲート電圧が変動することでそのトランジスタの閾値の変動を引き起こして、オペアンプOP1やコンパレータCP1の動作に影響を与える。このように、アナログデジタル混在回路、とりわけ同一の半導体集積回路に作成されたアナログデジタル混在回路では、デジタル回路50を動作させるための高速クロックφ3によるクロックノイズによってA/D変換器20が大きな影響を受ける。
【0011】
ここで、D/A変換器24が動作している場合の積分器22のキャパシタC2の電圧Vc2に着目してみる(入力アナログ電圧Vinは0Vと仮定する)と、
図8のVc2(ノイズ有)に示すように、低速クロックφ1、φ2の周期T1において、その電圧Vc2に高速クロックφ3によるクロックノイズが重畳すると、周期T1の終了間際で大きな影響を受けて、量子化時点の電圧Vc2の値がクロックノイズの振幅によって大きく変動し、これがA/D変換精度に大きな影響を与える。
【0012】
本発明の目的は、A/D変換器の変換動作に対するデジタル回路の高速クロックによる悪影響を抑制したデジタルアナログ混在回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、低速クロック及び高速クロックを発生するクロック発生器と、該クロック発生器で発生した前記低速クロックを利用してアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記クロック発生器で発生した前記高速クロックを利用して少なくとも前記A/D変換器から出力する前記デジタル信号を処理するデジタル回路とを備えたアナログデジタル混在回路において、前記高速クロックは、前記高速クロックにより前記デジタル回路で発生するクロックノイズが前記A/D変換器の変換動作に悪影響を及ぼす期間だけ、停止して
おり、前記A/D変換器は、前記低速クロックを使用したスイッチトキャパシタ利用のA/D変換器であり、前記A/D変換器の変換動作に悪影響を及ぼす期間は、前記低速クロックの周期の終了間際の所定期間であり、前記低速クロックの周期の終了間際の所定期間は、前記クロックノイズが大きいほど長く設定され、前記クロックノイズの大きさは、前記デジタル回路の処理プログラムの内容に基づいて判定されることを特徴とする。
【0014】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のアナログデジタル混在回路において、
前記低速クロックの周期の終了間際の所定期間が予め設定された期間より長いとき、前記所定期間以外の期間で動作する前記高速クロックの周波数が、より高い周波数に切り替えられることを特徴とする。
【0015】
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載のアナログデジタル混在回路において、
前記デジタル回路は、前記高速クロックの周波数がより高い周波数に切り替えられるとき、そこに供給される電源電圧がより高い電圧に切り替えられ、又はそこに組み込まれているトランジスタの閾値がより小さい値に切り替えられることを特徴とする。
【0016】
請求項4にかかる発明は、請求項
1乃至3
のいずれか1つに記載のアナログデジタル混在回路において、
前記デジタル回路は、前記高速クロックが停止している期間は、そこに供給される電源が遮断され、又はそこに組み込まれているトランジスタの閾値がより大きい値に切り替えられることを特徴とする。
【0017】
請求項5にかかる発明は、請求項
1乃至3のいずれか1つに記載のアナログデジタル混在回路において、
前記高速クロックが停止している期間は、前記デジタル回路に組み込まれる所定回路がディセーブルに制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、デジタル回路で高速クロックにより発生するクロックノイズがA/D変換器の変換動作に悪影響を及ぼす期間だけ、その高速クロックが停止するので、A/D変換動作に与える悪影響を抑制してS/N比やTHDの悪化を防止し、A/D変換精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)、(b)はスイッチトキャパシタ利用のデルタシグマ変調型A/D変換器のサンプリング動作の波形図である。
【
図2】本発明の第1実施例のアナログデジタル混在回路の構成ブロック図である。
【
図3】
図1のアナログデジタル混在回路のA/D変換器の一部の動作波形図である。
【
図4】本発明の第2実施例のアナログデジタル混在回路の構成ブロック図である。
【
図5】
図4のアナログデジタル混在回路のA/D変換器の一部の動作波形図である。
【
図6】従来のアナログデジタル混在回路の構成ブロック図である。
【
図7】スイッチトキャパシタ利用のデルタシグマ変調型A/D変換器の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図7のデルタシグマA/D変換器の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に、D/A変換器24のスイッチトキャパシタ動作によるキャパシタC2のサンプリング時の電圧Vc2の波形を示す。高速クロックφ3の影響を受けないときは、低速クロックφ1の周期T1のキャパシタC2の電圧Vc2が、
図1(a)に示すように変化するものとする。この例では、電圧Vc2は、目標値(Vref2=0dB)に収束するまでの目標値との差分が、例えば、クロック周期T1の90%終了の時点で−120dB、75%終了の時点で−100dB、60%終了の時点で−80dBである。高速クロックφ3によるクロックノイズは、電圧Vc2の変化のすべての時点においてその電圧Vc2に同じ振幅で重畳する。
【0024】
したがって、
図1(a)のように電圧Vc2が変化する場合には、高速クロックφ3によるクロックノイズの重畳成分の振幅が−100dBのときは、クロック周期T1の75%終了時点以降で高速クロックφ3を停止すれば、それからクロック周期T1終了時点までクロックノイズが消滅するので、電圧Vc2を目標値Vref2に正常に収束させることができる。また、クロックノイズの重畳成分の振幅が−80dBのときは、クロック周期T1の60%終了時点以降で高速クロックφ3を停止すれば、同様にして、電圧Vc2を目標値に正常に収束させることができる。
【0025】
図1(b)に、クロックノイズが重畳している場合において、クロック周期T1の60%終了時点で高速クロックφ3を停止したときの電圧Vc2の波形を示した。
図1(b)では、高速クロックφ3を停止した時点以降の期間では、それまでクロックノイズが重畳していた電圧Vc2は、波形a又はbのように変化して、目標値である電圧Vref2に収束する。
【0026】
以上はD/A変換器24の動作による場合であるが、サンプリング回路21による動作でも同様である。このようにして、A/D変換動作に悪影響を与えるクロック周期T1の終了間際の所定の時点以降で高速クロックφ3を停止させることにより、電圧Vc2を正常に目標値に収束させることができる。
【0027】
高速クロックφ3の停止を開始するタイミングについては、電圧Vc2に重畳する高速クロックφ3によるクロックノイズの最大振幅に対応して、固定的に設定することもできるが、デジタル回路30の動作内容に応じて設定することもできる。この場合、デジタル回路30が高速クロックφ3によりON/OFFするトランジスタの数が多いときは、クロックノイズの振幅が大きくなるのでその開始タイミングを早め、少ないときはクロックノイズの振幅が小さくなるので遅くする。
【0028】
<第1実施例>
図2に本発明の第1実施例のデジタル回路の機能ブロック図を示す。10はクロック発生器であり、2相低速クロックφ1、φ2と高速クロックφ3を生成するが、高速クロックφ3は制御信号S1を入力することによって出力が停止可能に構成されている。20は
図7で説明した回路構成を備えたA/D変換器である。30はCPU、MPU、DSP等を備えたデジタル回路であり、A/D変換器20から出力する1ビットストリームの入力データDin及び図示しない別のデジタル信号を入力して、高速クロックφ3によって所定のデジタル処理を行う。また、このデジタル回路30は内部にクロックパターン生成回路31を備え、そのクロックパターン生成回路31からクロック発生器10に向けて、前記した制御信号S1を出力する。
【0029】
図3に
図2のA/D変換器20のD/A変換器24と積分器22の動作波形を示す。2相低速クロックφ1、φ2は
図8で説明したものと同じであり、クロックφ1の“H”期間でサンプリングが行われ、クロックφ2の“H”期間で積分が行われ、クロックφ2の終了タイミングで量子化が行われる。また、デジタル回路30から出力する制御信号S1によって、クロック発生器10における処理クロックφ1の出力が一時的に停止する。その停止期間は、クロックφ1の“H”期間の終了間際の期間Taと、クロックφ2の“H”期間の終了間際の期間Tbである。これらの期間Ta、Tbは、低速クロックφ1、φ2の周期T1の例えば60〜100%の期間である。
【0030】
これらの期間Ta、Tbでは高速クロックφ3が発生しないので、その期間Ta、Tbでは電源電圧に高速クロックφ3によるクロックノイズが重畳することはない。このため、A/D変換器20におけるサンプリング波形や積分波形が高速クロックφ3の影響を受けることが防止され、サンプリング、積分、量子化の精度を向上させることができる。
【0031】
ところで、この期間Ta、Tbは、高速クロックφ3が停止しているので、デジタル回路30はデータ処理を行うことができないことになる。しかし、A/D変換器20から出力するデータ信号Dinは、適当なレジスタを使用して一時的に保存することで、期間Ta、Tb以外のタイミングで受け渡しができるので、A/D変換器20からデジタル回路30へのデータ転送については高速クロックφ3の停止による影響を受けないようにすることができる。ただ、デジタル回路30のデータ処理では、必要に応じて高速クロックφ3の停止を考慮したプログラムを作成しておく。
【0032】
また、期間Ta、Tbの長さについては、高速クロックφ3によるクロックノイズの振幅に応じて調整することができる。クロックノイズの振幅は、デジタル回路30における単位時間当たりのデータ処理量の大きさにほぼ比例する。また、データ処理量の大きさはその処理を実行するプログラムから解析して判定することができる。つまり、クロックノイズの振幅を実行プログラムの内容に基づいて判定することができる。したがって、予め期間Ta、Tbの長さを複数種類だけROM等のテーブルに用意しておいて、そのとき実行するデータ処理のプログラムの内容に応じて期間Ta、Tbの長さをそのテーブルから抽出し、クロックパターン生成回路31によりその抽出した期間Ta、Tbに対応した制御信号S1を生成すれば、デジタル回路30におけるデータ処理量変更によってクロックノイズの振幅が変化しても、そのクロックノイズの影響を回避して、A/D変換器20を所定の変換精度に保つことができる。
【0033】
また、デジタル回路30では、高速クロックφ3が停止している期間Ta、Tbを除く期間でデータ処理を行うことになり、このためデータ処理に遅延が生じることがある。そこで、その遅延を補償するためには、その高速クロックφ3の周波数をその遅延を見込んで従来よりも高く設定しておけばよいが、この場合はデジタル回路30が動作するときは常に高速動作することになり、消費電力が大きくなる。これを回避するには、期間Ta、Tbが予め設定した所定期間よりも長くなる場合に、高速クロックφ3の周波数を従来より高い周波数に切り替えればよい。このときは、同時にデジタル回路30の電源電圧を高くしたり、トランジスタのバックゲート電圧を調整してその閾値を小さくすることで、高速動作の実現をアシストすることができる。
【0034】
逆に、高速クロックφ3が停止している期間Ta、Tbでは、デジタル回路30の電源を遮断したり、トランジスタのバックゲート電圧を調整することでその閾値を大きくしてリーク電流を削減し、消費電力を削減することもできる。
【0035】
<第2実施例>
図4に本発明の第2実施例のアナログデジタル混在回路を示す。本実施例では、デジタル回路30からクロック発生器10に対してクロックφ3を停止するための制御信号S1を出力すると共に、そのクロック発生器10からデジタル回路30のメモリ回路32に対して、制御信号S1に応じてイネーブル信号ENを出力するようにしたものである。
【0036】
デジタル回路30に搭載されているメモリ回路32は、複数端子が同時に駆動されるので比較的大きな電流変化が発生し、ノイズが大きくなる。そこで、本実施例では、期間Ta、Tbにおいて、イネーブル信号ENをディセーブルに設定して、メモリ回路32を確実に動作停止できるようにしている。
図5に本実施例のアナログデジタル混在回路の動作波形図を示した。なお、イネーブル信号ENで制御する回路はメモリ回路32に限られるものではない。
【0037】
<その他の実施例>
以上説明した実施例では、高速クロックφ3を、デジタル回路30で発生させた制御信号S1によってクロック発生器10において停止させる場合を説明したが、クロック発生器10からデジタル回路30に入力する経路あるいはデジタル回路30の内部において、停止させるようにしてもよい。また、アナログデジタル混在回路に組み込まれるA/D変換器20として、スイッチトキャパシタ利用のデルタシグマ変調型A/D変換器を使用する場合について説明したが、高速クロックφ3によるクロックノイズの影響をうける他の方式のA/D変換器を使用するアナログデジタル混在回路についても、同様に本発明を適用して、同様な作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
10:クロック発生器、20:スイッチトキャパシタ利用のデルタシグマ変調型A/D変換器、30:デジタル回路、40:クロック発生器、50:デジタル回路
21:サンプリング回路、22:積分回路、23:量子化回路、24:D/A変換回路