特許第6790153号(P6790153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6790153二次電池負極集電体用圧延銅箔、それを用いた二次電池負極集電体及び二次電池並びに二次電池負極集電体用圧延銅箔の製造方法
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  • 特許6790153-二次電池負極集電体用圧延銅箔、それを用いた二次電池負極集電体及び二次電池並びに二次電池負極集電体用圧延銅箔の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790153
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】二次電池負極集電体用圧延銅箔、それを用いた二次電池負極集電体及び二次電池並びに二次電池負極集電体用圧延銅箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/02 20060101AFI20201116BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20201116BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20201116BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   C22C9/02
   C22F1/08 B
   H01M4/66 A
   !C22F1/00 622
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 630G
   !C22F1/00 630K
   !C22F1/00 661C
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 686A
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 694B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-39017(P2019-39017)
(22)【出願日】2019年3月4日
(65)【公開番号】特開2020-143313(P2020-143313A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡部 史弥
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−081833(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/021969(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/021970(WO,A1)
【文献】 特許第6648088(JP,B2)
【文献】 特開2015−017301(JP,A)
【文献】 特開2016−003358(JP,A)
【文献】 特開2016−191088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 9/00− 9/10
C22F 1/00、 1/08
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sn0.2質量%を超え2.0質量%以下であり、残部がCu及び不可避的不純物からなる二次電池負極集電体用圧延銅箔であって、
引張強さが650MPa以上、破断伸びが1.0%以上である二次電池負極集電体用圧延銅箔。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔を有する二次電池負極集電体。
【請求項3】
請求項1に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔を有する二次電池負極。
【請求項4】
請求項1に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔を有する二次電池。
【請求項5】
インゴットを熱間圧延した後、所定厚みに仕上げる最終冷間圧延工程を含む請求項1に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔の製造方法であって、前記最終冷間圧延工程において、下記式に示す各パス終了時点の加工度ηと、当該パスに用いるワークロールの直径r(mm)とが、η×r≦250の関係を満たし、前記最終冷間圧延工程の1パス当たりの最小加工度が24%以上であり、総加工度が99.9%を超えることを特徴とする製造方法。
η=ln(T0/Tn
0:最終冷間圧延工程を行う前のインゴット厚さ、Tn:当該パス終了時点におけるインゴット厚さ。
【請求項6】
前記最終冷間圧延工程の前、さらに熱間圧延した後のインゴットに対して冷間圧延処理及び焼鈍処理を行い、次いで前記最終冷間圧延工程を行うことを特徴とする請求項5に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次電池負極集電体用圧延銅箔、それを用いた二次電池負極集電体及び二次電池並びに二次電池負極集電体用圧延銅箔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は他の二次電池と比べて、高エネルギー密度かつ高電圧という特徴を有している。そのため、各種小型電子機器のバッテリーや電気自動車といった大型機器の駆動用電源などで開発が進められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は正極、負極及びセパレータから構成されている。正極はアルミニウム箔集電体とその表面に塗布されたリチウム酸化物系活物質から成り、負極は銅箔集電体とその表面に塗布された炭素系活物質から成る。正極と負極はセパレータにより絶縁されており、その間の電解質中をリチウムイオンが移動することで充放電が行われる。
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池の高容量化が求められており、各種部材の開発が進められている。その1つとして負極材の場合、既存の炭素系活物質からシリコン系活物質などの新規活物質への代替が検討されている。これらの新規活物質は、電池容量は大きいが、同時に充放電時の体積変化率も大きいという特徴を有する。このため繰り返し使用した際に、活物質が集電体から脱落しやすく、サイクル特性が劣化しやすいという問題がある。これは充放電時における活物質の膨張・収縮に伴い、集電体である銅箔が塑性変形及び破断するためだと考えられている。
【0005】
このような不具合を回避する方法として、0.04質量%以上0.20質量%以下のスズ、0.01質量%以上の銀の少なくともいずれかを含有し、スズ及び銀の両方を含有する場合はスズ及び銀の合計含有量が0.20質量%以下であり、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金箔が開発されている(特許文献1)。特許文献1には1回の加工度が60%以下である冷間圧延を総加工度が95%以上になるように所定回数連続して行う銅合金箔の製造方法が記載されている。この発明では、銅合金箔が所定の引張強さだけでなく所定の伸びも有することで、所定の引張強さを有する銅合金箔では抑制することができなかった銅合金箔の破断を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5739044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、二次電池の大容量化に伴い、大容量の活物質が使用されるようになり、これに伴い、より大きな体積変化に耐え得る二次電池負極集電体用圧延銅箔が求められている。
【0008】
本発明は、活物質の体積変化に伴う応力の発生などによる銅箔の塑性変形及び破断を良好に抑制できる二次電池負極集電体用圧延銅箔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は検討の結果、二次電池負極集電体用圧延銅箔のSn含有量、引張強さ及び破断伸びを高めることによって、活物質の体積変化による銅箔の塑性変形及び破断を抑制することができるとの知見を得た。
また発明者は、二次電池負極集電体用圧延銅箔の製造にあたり、インゴットの熱間圧延後、特定の径のワークロールを用いて1パス当たりの最小加工度を24%以上とした総加工度99.9%以上の最終冷間圧延をすることで、銅箔の加工硬化により強度と伸びの両方を向上させることで、活物質の体積変化による銅箔の塑性変形及び破断を抑制することができるとの知見を得た。
【0010】
そこで、本発明は、以下の通りである。
(1)Snを0.2〜2.0質量%含有し、引張強さが650MPa以上、破断伸びが1.0%以上である二次電池負極集電体用圧延銅箔。
(2)(1)に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔を有する二次電池負極集電体。
(3)(1)に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔を有する二次電池負極。
(4)(1)に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔を有する二次電池。
(5)インゴットを熱間圧延した後、所定厚みに仕上げる最終冷間圧延工程を含む(1)に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔の製造方法であり、前記最終冷間圧延工程において、下記式に示す各パス終了時点の加工度ηと、当該パスに用いるワークロールの直径r(mm)とが、η×r≦250の関係を満たし、前記最終冷間圧延工程の1パス当たりの最小加工度が24%以上であり、総加工度が99.9%を超えることを特徴とする製造方法。
η=ln(T0/Tn
0:最終冷間圧延工程を行う前のインゴット厚さ、Tn:当該パス終了時点におけるインゴット厚さ。
(6)前記最終冷間圧延工程の前、さらに熱間圧延した後のインゴットに対して冷間圧延処理及び焼鈍処理を行い、次いで前記最終冷間圧延工程を行うことを特徴とする(5)に記載の二次電池負極集電体用圧延銅箔の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、活物質の体積変化に伴う銅箔の塑性変形及び破断を良好に抑制できる二次電池負極集電体用圧延銅箔を提供することができ、二次電池、特にリチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性の向上と高容量化の実現への寄与が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態と従来技術の引張強さ及び破断伸びを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
(圧延銅箔の組成)
本発明の二次電池負極集電体用圧延銅箔の材料としては、JIS−H3100−C1020に規格する無酸素銅が好ましい。この組成は純銅に近いため、銅箔の導電率が低下せず、集電体に適する。無酸素銅を用いた場合、銅箔に含まれる酸素濃度は0.001質量%以下である。
本発明に係る銅箔は、工業的に使用される銅で形成されており、不可避的不純物を含んでいる。この不可避的不純物としてのP、Fe、Zr、Mg、S、Ge及びTiは、微少量存在していても、銅箔の曲げ変形によって結晶方位が回転し易くなり、せん断帯も入り易く、集電体が曲げ変形を繰り返した時にクラックや破断が発生しやすくなるため好ましくない。このため、本発明に係る銅箔は、不可避的不純物としてのP、Fe、Zr、Mg、S、Ge及びTiからなる群から選択された1種又は2種以上を合計で20質量ppm以下に制御することが好ましい。
また、材料の特性改善のためにSnを0.2〜2.0質量%含んでもよい。銅箔にSnを添加すると、最終冷間圧延後の材料強度が高くなり、材料の取り扱い性が良好となるものの、Snの添加量が2.0質量%を超えると、再結晶温度が上昇し、銅合金の表面酸化を抑えつつ再結晶焼鈍することが困難、あるいは負極材の製造工程で、活物質塗工後の乾燥時に集電体である銅箔が再結晶し難くなることで、本発明の特性を発現できなくなる。従って、Snの添加量は2.0質量%以下が好ましく、1.8質量%以下がより好ましく、1.6質量%以下が更により好ましい。Snの添加量が0.2質量%未満となると、強度が不足してしまう。この観点から、Snの添加量は0.2質量%以上が好ましく、0.4質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上が更により好ましい。
また、SnはCuよりも酸化しやすいので、銅箔中で酸化物を形成して電池の充放電サイクル試験における亀裂発生の起点となるなどの悪影響が考えられるため、無酸素銅の溶湯中に添加するのが一般的である。
なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとし、「無酸素銅」を単独で用いたときには無酸素銅をベースとした銅合金箔を含むものとする。
【0014】
(圧延銅箔の引張強さ及び破断伸び)
本発明の圧延銅箔の特徴の一つは、引張強さが650MPa以上、破断伸びが1.0%以上というところである。
【0015】
従来技術では、破断伸びを高くすることで、圧延銅箔が負極集電体として用いられた二次電池において、二次電池の充放電の際に負極活物質が体積変化した場合であっても、負極活物質の体積変化に追従するように銅合金箔が伸び縮みするようになる。
しかし、伸びの大きい銅箔を負極集電体に用いても、充放電によって銅箔にクラックや破断が発生する場合がある。具体的には、充放電によって活物質が膨張、収縮することにより、集電体である銅箔が繰返し応力集中を受けて集電体が部分的に曲げ変形を起こすようになり、充放電によって曲げ変形が繰り返される。曲げ変形は、活物質の膨張・収縮に伴うものであり、曲げ及び曲げ戻しが交互に繰り返される。このような過酷な条件では、集電体である銅箔にクラックや破断が発生し、塗布された活物質が脱落してしまい電池のサイクル特性が劣化する場合がある。
【0016】
そのため、本発明は破断伸びだけでなく、引張強さを向上させることで応力による圧延銅箔の塑性変形を抑制し、これと破断伸びの向上との相乗効果として、圧延銅箔の塑性変形及び破断を有効に抑制でき、二次電池、特にリチウムイオン二次電池の充放電サイクル特性の向上と高容量化の実現への寄与が期待される。
この観点から、引張強さは660MPa以上が好ましく、670MPa以上がより好ましく、680MPa以上がさらにより好ましい。破断伸びは1.0%以上が好ましく、1.05%以上がより好ましく、1.1%以上がさらにより好ましい。この理由は、例えば、リチウムイオン二次電池の充放電時の活物質の膨張収縮に対し密着性を維持し、かつ追随する必要が求められるためである。
【0017】
(圧延銅箔の厚さ)
本発明に用いることのできる圧延銅箔の厚さとしては、5〜20μmが好ましい。銅箔の厚さに特に下限は無いが、5μm未満であると銅箔のハンドリングが悪くなるため、5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましい。箔の厚さの上限も特に無いが、厚みが増すほど電池の単位重量あたりのエネルギー密度が低下し、さらに材料のコストも上昇するため、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0018】
本発明において、引張強さとは、常温(23℃)において、IPC−TM−650 Test Method 2.4.18に基づく引張強さ試験をした場合の値を示す。
破断伸びとは、常温(23℃)においてIPC−TM−650に基づく引張強さ試験をしたときに、試験片が破断した際の伸び率を指す。破断伸びは以下の数式から求められる。式中、Loは試験前の試料長さ、Lは破断時の試料長さである。
破断伸び(%)=(L−Lo)/Lo×100
【0019】
(圧延銅箔の製造方法)
本発明の実施形態に係る圧延銅箔は、例えば以下のようにして製造することができる。規定の組成で鋳造したインゴットを熱間圧延後、表面研削で酸化物を除去し、最終冷間圧延工程で所定の厚みまで加工することで銅箔を製造する。最終冷間圧延工程において、総加工度は99.9%を超えるとする。
総加工度は下記の数式から求められる。式中、T0は最終冷間圧延工程を行う前のインゴットの厚さであり、Tは最終冷間圧延工程での冷間圧延処理が終了した時の圧延材(つまり圧延銅箔)の厚さである。
総加工度(%)={(T0−T)/T0}×100
総加工度99.9%を超えることによって、加工硬化により圧延銅箔の引張強さ及び破断伸びを向上させた圧延銅箔を得ることができる。
また、圧延では、一対のロール間に材料を繰り返し通過させて厚みを仕上げていくが、この時、ロール間に1回材料を通過させることを1パスという。材料の引張強さを高めることを目的として適切な歪み速度で圧延するために、1パス当たりの加工度は24%以上が好ましく、27%以上がより好ましく、30%以上がさらにより好ましい。1パス当たりの加工度が24%未満であると、歪み速度が遅く、十分な引張強さが得られない。但し、1パス当たりの加工度は、高すぎると圧延機への負荷が大きくなり過ぎることから、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下がさらにより好ましい。1パス当たりの加工度は以下の数式から求められる。式中、Tn-1は当該パスによる圧延前のインゴットの厚さであり、Tnは当該パス終了時点におけるインゴットの厚さである。
1パス当たりの加工度(%)={(Tn-1−Tn)/Tn-1}×100
さらに最終冷間圧延工程の前に、熱間圧延した後のインゴットに対して冷間圧延処理及び焼鈍処理を行うことができる。焼鈍処理を行うことにより、さらに耐折れ曲げ性などを向上させることができる。
【0020】
最終冷間圧延工程において、任意の圧延パスにおける加工度ηを次のように定義する。式中、T0は最終冷間圧延工程を行う前のインゴットの厚さであり、Tnは当該パス終了時点におけるインゴットの厚さである。
η=ln(T0/Tn
ηが高いと加工硬化により材料の強度が上がり、目標板厚を得るためにはより小さい径のワークロールを使用してより高い圧力を材料に付加する必要がある。ηとワークロールの直径(以下、「ワークロール径」ともいう。)rの積が250を超えると必要な圧力に対してワークロール径が大きいため、圧延に必要な圧力が得難く圧延機への負荷が大きくなることから、任意のパスでのηに応じてワークロール径を小さくする必要がある。また、径の小さなワークロールを使用することで、圧延工程を進行させ更なる高加工度圧延を実現でき、さらにせん断帯の発生を抑制できる。そこで、ηとワークロール径の積の値の上限を250とする。ηとワークロール径の積の値の上限は好ましくは240であり、より好ましくは230である。せん断帯は変形が局所的に集中した組織であり、歪みが堆積し転位密度が増加している部分である。周囲の組織に比べて変形しにくいため、材料中にせん断帯が生じると伸びが悪化する。ただし、ワークロール径が小さいほどメンテナンス頻度は増えるため、製造性の観点からηとワークロール径rの積は下限値40が好ましい。ηとワークロール径rの積の下限値は70がより好ましく、100がさらにより好ましい。
【0021】
本発明の圧延銅箔の製造方法による効果を示すものとして、図1には、最終冷間圧延工程における総加工度を変更した本発明及び従来技術の引張強さ(TS)及び破断伸びが記載されている。図中、本発明及び従来技術の最終冷間圧延工程における総加工度はそれぞれ99.9%超及び99%であり、それ以外の製造条件は同一である。図1によれば、最終冷間圧延工程における総加工度が99.9%を超えることにより、引張強さ及び破断伸びを向上させることができた。
【実施例】
【0022】
次に、この発明の圧延銅箔を試作し、その性能を確認したので以下に説明する。ただし、ここでの説明は単なる例示を目的とするものであり、それに限定されることを意図するものではない。
【0023】
まず、Cu−0.20質量%Snの組成を有するインゴットを溶製し、このインゴットを900℃から熱間圧延し、厚さ100mmの板を得た。その後、表1に一例を示すようなA〜Iの各パス条件での最終冷間圧延工程により、最終的に厚さ10μmの圧延銅箔を得た。表中の「−」は加工していないことを示す。
このようにして得られた各試験片に対し、以下の特性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0024】
<0.2%耐力>
長手方向100mm、幅方向12.7mmの試験片を作製し、IPC−TM−650 Test Method 2.4.18 に準拠して、引張試験機により圧延方向と平行に引張試験を行い、JIS Z 2241 に準拠して、0.2%耐力を解析した。
<導電率>
試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS H 0505に準拠し、4端子法で導電率(EC:%IACS)を測定した。
<引張強さ>
長手方向100mm、幅方向12.7mmの試験片を作製し、IPC−TM−650 Test Method 2.4.18 に準拠して、引張試験機により圧延方向と平行に引張試験を行い、引張り強さを測定した。
<破断伸び>
長手方向100mm、幅方向12.7mmの試験片を作製し、スタンプを用いて5mm間隔の印をつけた後、IPC−TM−650 Test Method 2.4.18 に準拠して、引張試験機により圧延方向と平行に引張試験を行い、破断後の試料の破断部を含む部位の印の間隔を測定することにより破断伸びを測定した。
【0025】
<二次電池の特性評価>
実施例1〜4、及び比較例1〜7の銅合金箔をそれぞれ用いて形成した二次電池の特性について評価を行った。具体的には、二次電池の特性として、負極の破断箇所の有無を評価した。
【0026】
(負極の作製)
まず、実施例1〜4、及び比較例1〜7の各銅合金箔のいずれかの主面上に負極活物質層を形成し、負極を作製した。具体的には、負極活物質として鱗片状の黒鉛粉末を45質量部及び一酸化ケイ素(SIO)を5質量部と、結着材としてのSBRを2質量部と、増粘剤水溶液を20質量部と、を混練分散させて負極活物質層のスラリー(ペースト)を生成した。なお、増粘剤水溶液は、増粘剤としてのCMC1質量部に対して99質量部の水を溶解させて生成した。続いて、実施例1〜4、及び比較例1〜7の各銅合金箔のいずれかの主面(片面)上にそれぞれ、ドクターブレード方式により、生成した負極活物質層用のスラリーを厚さが100μmになるよう塗布した。その後、負極活物質層用のスラリーを塗布した実施例1〜4、及び比較例1〜7の各銅合金箔をそれぞれ、200℃の条件下で1時間加熱し、乾燥させた。これにより、実施例1〜4、及び比較例1〜7の各銅合金箔上にそれぞれ厚さが100μmの負極活物質層を形成した。そして、負極活物質層を加圧することで、負極活物質層の厚さを50μmに調整した。その後、銅合金箔と負極活物質層との積層体に対して打ち抜き加工を行うことで、所定形状の負極(負極板)を作製した。
【0027】
(二次電池の作製)
二次電池に用いられる正極板(正極)を作製した。具体的には、正極活物質としてのLiCoO2粉末を50質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラックを1質量部と、結着剤としてのPVDFを5質量部と、を水(溶媒)中に混練分散して、正極活物質層用のスラリー(ペースト)を生成した。続いて、正極集電体としての厚さが20μmであるアルミニウム箔のいずれかの主面(片面)上に、ドクターブレード方式により、生成した正極活物質層用のスラリーを厚さが100μmになるように塗布した。その後、正極活物質層用のスラリーを塗布したアルミニウム箔を120℃の条件下で1時間加熱し、乾燥させた。これにより、アルミニウム箔上に厚さが100μmである正極活物質層を形成した。そして、正極活物質層を加圧することで、正極活物質層の厚さを50μmに調整した。その後、アルミニウム箔と正極活物質層との積層体に対して打ち抜き加工を行うことで、所定形状の正極(正極板)を作製した。
【0028】
実施例1〜4、及び比較例1〜7の各銅合金箔(銅箔)を用いた各負極と、正極と、セパレータと、電解液と、を用いて、コインセル型のリチウムイオン二次電池を作製した。つまり、各負極が備える負極活物質層と、正極が備える正極活物質層と、が対向するように配置し、負極活物質層と正極活物質層との間に、厚さが20μmであるポリプロピレン樹脂製の多孔膜からなるセパレータを挟み、負極と正極とセパレータとの積層体を作製した。そして、負極と正極とセパレータとの積層体をコイン型の容器(セル)内に収容し、正極及び負極をそれぞれ、セル内部の端子に電気的に接続した。その後、ECを30体積%と、MECを50体積%と、プロピオン酸メチルを20体積%と、を混合して生成した混合溶媒中に、電解質としてのLiPF6を1モル/リットルと、添加剤としてのVCを1質量%と、を溶解させた電解液をセル内に注入した後、セルを密封して、二次電池を作製した。
【0029】
(破断箇所の有無の評価)
実施例1〜4、及び比較例1〜7の各銅合金箔を用いて形成したそれぞれの二次電池について、二次電池を充放電した後に、銅合金箔に破断が生じている箇所を目視で確認した。具体的には、25℃の条件下で充電と放電とを50回ずつ交互に行った後の、銅合金箔の破断の有無を目視で確認した。
(サイクル特性の評価)
実施例1〜4、及び比較例1〜7の各銅合金箔を用いて形成したそれぞれの二次電池について、二次電池を充放電した後の容量維持率を測定した。具体的には、25℃の条件下で充電と放電とを行い、2サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の比率、すなわち(50サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100として算出した。その際、充電は、1mA/cm2の定電流密度で電池電圧が4.2Vに達するまで行った後、4.2Vの定電圧で電流密度が0.05mA/cm2に達するまで行い、放電は、1mA/cm2の定電流密度で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。なお、充電を行う際には、負極の容量の利用率が90%となるようにし、負極に金属リチウムが析出しないようにした。測定された容量維持率の結果を表2に示す。また、容量維持率に対する評価を表2に示す。評価としては、◎は特に良好、○は良好、×は不良である。
【0030】
<評価結果>
実施例1〜4、及び比較例1〜7から、所定の引張強さと伸びを有する銅合金箔は、二次電池の負極集電体として用いられる場合、二次電池の充放電によって銅合金箔が破断することを抑制できると確認した。例えば、650MPa以上の引張強さを有するとともに、伸びが1.0%以上である銅合金箔が負極集電体として用いられた二次電池では、二次電池を繰り返し充放電しても、銅合金箔の塑性変形及び破断が抑制されることを確認した。
【0031】
つまり、所定の引張強さと伸びを有することで、二次電池を充放電した際に負極活物質の体積変化により発生する応力によって、銅合金が塑性変形及び破断することを抑制できると確認した。したがって、銅合金箔が塑性変形及び破断することをより抑制できることを確認した。
【0032】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示すように、実施例1〜4は本発明所定量のSnを含有し、また所定の最終冷間圧延を行ったことにより、引張強さ及び破断伸びを向上させることができた。
【0035】
比較例1はSn濃度が不足しているため引張強さが十分でなかった。
比較例2はSn濃度が過剰であるため伸びが不足であった。
比較例3、4は最終冷間圧延の総加工度が十分でないため引張強さが十分でなかった。
比較例5はワークロール径rと加工度ηの積が250を超えているため材料中にせん断帯が発生して、伸びが不足であった。
比較例6、7は1パスあたりの最小加工度が十分でないためひずみ速度が遅く、引張強さが十分でなかった。
図1