(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モデル学習部は、第1時刻における前記第1監視モデルの監視結果を教師データとして用い、前記第1時刻に対して遷移時間分異なる第2時刻における前記第2監視データと、前記第2時刻における前記第1監視データとを入力パラメータとした前記第2監視モデルに対する子モデル学習処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の協調型学習システム。
前記第2工程に対する上流又は下流の第3工程の第3監視データと、前記第2監視データを入力パラメータとして前記子モデル学習処理によって構築された第2監視モデルが出力する前記第2工程の監視結果と、が時系列に記憶されており、
前記モデル学習部は、第3時刻における前記第2監視モデルの監視結果を教師データとして用い、前記第3時刻に対して遷移時間分異なる第4時刻における前記第3監視データを入力パラメータとした第3監視モデルに対する前記子モデル学習処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の協調型学習システム。
所定の遷移時間間隔で時系列に連続する複数の工程別に監視モデルが設けられたプロセス監視における協調型学習処理を行うコンピュータによって実行されるプログラムであって、
第1工程の第1監視データと、前記第1工程に対する上流又は下流の第2工程の第2監視データと、前記第1監視データを入力パラメータとして第1監視モデルが出力する前記第1工程の監視結果と、を時系列に記憶する第1機能と、
前記第1監視データと前記第1監視モデルの監視結果とを用いて、前記第1監視モデルに対する親モデル学習処理と、第1時刻の前記第1監視モデルの監視結果を教師データとして用い、前記第1時刻に対して遷移時間分異なる第2時刻における前記第2監視データを入力パラメータとした第2監視モデルに対する子モデル学習処理と、を行う第2機能と、
を前記コンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1から
図8は、第1実施形態の協調型学習モデルを用いたプロセス改善方法を説明するための図であり、
図1は、協調型学習システムが適用された監視システムの機能ブロックを示す図である。
図1に示すように、監視装置100には、時系列に連続する複数の工程から収集された監視データが入力され、複数の工程別に設けられた監視モデルでの監視結果を用いてプロセス全体の管理を行う。
【0009】
時系列に連続する複数の工程を含むプロセスは、一例として、水処理がある。水処理は、調整槽、曝気槽、沈殿槽、凝集反応槽などの各工程を水が流れて浄化される。これら各槽は、所定の遷移時間間隔で時系列に連続しており、各槽を監視することで、水処理プロセス全体の管理を行っている。
【0010】
なお、本実施形態の協調型学習の仕組みは、水処理プロセスの改善及び管理以外にも、他のプロセス管理に適用することができる。例えば、製品や材料の製造ライン、熱処理や化学処理などの加工ライン、ゴミや廃棄物などの焼却ラインなど、2つ以上の工程が所定の遷移時間間隔で時系列に連続したプロセス監視に協調型学習モデルを適用することができる。
【0011】
図1の例において、処理プロセスは、工程フェーズnを起点プロセスとして設定されており、工程フェーズnを起点に、上流側の工程が工程フェーズn−1,n−2、下流側のフェーズがn+1,n+2と表現されている。これらの工程フェーズは、時系列に連続する複数の工程であるため、工程フェーズnの時刻tにおいて処理される対象は、他の工程においてそれぞれの遷移時間分異なる時刻に処理されている。言い換えれば、同じ時刻において、工程フェーズnで処理されている対象は、前段の工程フェーズn−1では処理済みであり、後段の工程フェーズn+1では処理待ちとなる。
【0012】
本実施形態では、各工程フェーズ別に監視モデルが設定され、各工程フェーズにおいて各監視モデルによる監視結果それぞれが出力される。監視モデルとは、監視データを入力パラメータとして、工程フェーズが正常状態であるか異常状態であるかを判定する判定ロジックである。監視モデルは、機械学習によってその工程の特殊性や環境に合わせてカスタマイズされる。
【0013】
監視データとは、各工程に設けられたセンサ機器から出力されるセンサ情報である。温度情報や設備の稼働情報、水質情報などの値以外にも、例えば、カメラ等の撮影装置で撮影された画像データも監視データとして含まれる。監視モデルは、例えば、正常/異常を判定するための閾値や基準画像データなどが設定され、センサ値が閾値を超えているか、基準画像データとのマッチング率が閾値を超えて低いかなどを判定し、その判定結果を監視結果として出力する。これら監視結果及びその監視データ(測定値)を用いて機械学習することで、例えば、判定基準が更新され、最適化された監視モデルが構築されることになる。
【0014】
本実施形態の監視装置100は、処理プロセスに含まれる各工程フェーズで取得された監視データが入力される。データ収集制御装置110は、複数の工程それぞれから出力される各監視データの収集制御を行い、記憶装置130に時系列に記憶する。監視制御装置120は、複数の工程別に各監視モデルを設定すると共に、設定された各監視モデルを用い、工程別に各監視データに基づく監視結果を出力する。監視結果は、時系列に記憶装置130に記憶される。これらの監視制御は、監視制御部121によって遂行される。
【0015】
一方、本実施形態の監視制御装置120は、工程別の監視モデルの学習制御を行う協調型学習装置を備えており、
図1の例では、監視モデル管理部122及び教師データ管理部123によって協調型学習システムが構築されている。なお、本実施形態では、協調型学習システムが監視装置100に内蔵された態様を一例に説明しているが、これに限るものではない。例えば、監視装置100に対して外的に接続された個別の協調型学習システムとして構築することもできる。また、監視装置100に対してネットワーク等で接続された学習システムとして適用することもできる。
【0016】
図2は、本実施形態の協調型学習モデルの説明図である。協調型学習システムの学習処理及び教師データの生成処理は、任意のタイミングで行うことができる。
【0017】
まず、監視モデル管理部122は、起点プロセスとなる親モデルを設定する。例えば、工程フェーズnの監視モデルYnを親モデルとして設定し、監視モデルYnに対しては、監視データA(第1監視データ)と監視モデルYn(第1監視モデル)の監視結果と、監視モデルYnに対して予め作成された教師データを用いて、機械学習による監視モデルYnに対する親モデル学習処理を行う。親モデル学習処理は、公知の技術を適用することができ、後述する子モデル学習処理においても、教師データを用いた機械学習自体は、同様に公知の手法を適用することができる。
【0018】
起点プロセスの上流又は下流の各工程フェーズの各監視モデルは、親モデルである監視モデルYnの監視結果を教師データとして用いた学習処理によって構築される。監視モデル管理部122は、親モデル学習処理を経て構築された監視モデルYnの監視結果を教師データとして、工程フェーズn−1,n+1の各監視モデルYn−1,Yn+1に対する各子モデル学習処理を行う。
【0019】
さらに、工程フェーズn−1の上流の工程フェーズn−2では、親モデルの教師データを用いて子モデル学習処理によって構築された監視モデルYn−1の監視結果を教師データとして、監視モデルYn−2に対する子モデル学習処理を行う。工程フェーズn+1の下流の工程フェーズn+2も同様であり、親モデルの教師データを用いて子モデル学習処理によって構築された監視モデルYn+1の監視結果を教師データとして、監視モデルYn+2に対する子モデル学習処理を行う。
【0020】
なお、工程フェーズn−2及び工程フェーズn+2の各工程において、二点鎖線で示すように、親モデル学習処理を経て構築された監視モデルYnの監視結果を教師データとして、工程フェーズn−2,n+2の各監視モデルYn−2,Yn+2に対する各子モデル学習処理を行うように構成してもよい。
【0021】
図3は、本実施形態の各工程を監視する協調型学習モデルの構築例を示す図であり、起点プロセスに対する上流の監視モデルの協調型学習処理を説明するための図である。
【0022】
工程フェーズn(第1工程)の監視データAと、工程フェーズnに対する上流の工程フェーズn−1(第2工程)の監視データBと、監視データAを入力パラメータとして監視モデルYnが出力する工程フェーズnの監視結果と、監視データBを入力パラメータとして監視モデルYn−1が出力する工程フェーズn−1の監視結果と、がそれぞれ時系列に記憶される。
【0023】
このとき、時刻tにおいて起点プロセスである工程フェーズnで異常が検出された場合、上流の工程フェーズn−1での監視結果は、正常となる。つまり、工程フェーズn−1の監視結果は「正常」であっても、遷移時間s1経過後の下流の工程フェーズnでは、監視結果が「異常」となる。したがって、工程フェーズn−1の監視結果が時刻t−s1において正常でも、s1時間経過すれば、下流の工程フェーズnの監視結果が異常になるので、監視データBだけでは「正常」と判定する工程フェーズn−1の監視モデルYn−1を、下流の監視モデルYnの監視結果を教師データ(解)として学習処理を行う。
【0024】
監視モデル管理部122は、時刻t(第1時刻)の監視モデルYn(第1監視モデル)の監視結果を教師データ(解)として用い、時刻t(第1時刻)に対して遷移時間s1分異なる時刻t−s1(第2時刻)における監視データB(第2監視データ)を入力パラメータとした監視モデルYn−1(第2監視モデル)に対する子モデル学習処理を行う。このとき、教師データ管理部123は、教師データとして使用される工程の監視結果と、その監視結果に対する各監視データとを、工程間の遷移時間を考慮して時系列に管理し、監視モデル管理部122に、学習処理に必要なデータを提供する。
【0025】
このように構成することで、監視モデルYn−1が、s1時間経過する前に監視データBで、下流側の工程フェーズnの「異常」を判定することができる。したがって、(1)下流の工程フェーズnが「異常」となる前に対処可能であり、(2)下流の工程フェーズnが「異常」となる前に対処が可能なので、その後「異常」になっても「正常」となるまでの復帰時間が早くなり、(3)下流の工程フェーズnの「異常」判定の見逃しを検知することもできる。上記(3)は、本来ならs1時間経過後の監視結果では異常と判定しなければならないところ、何らかの理由で異常と判定していない場合、s1時間前の監視モデルYn−1での事前「異常」検知を記録しておき、s1時間経過後の時刻tにおける監視モデルYnの監視結果が「正常」であれば、異常検知の警告を工程フェーズnにおいて出力するように構成することができる。
【0026】
図4は、本実施形態の各工程を監視する協調型学習モデルの構築例を示す図であり、起点プロセスに対する下流の監視モデルの協調型学習処理を説明するための図である。
【0027】
工程フェーズn(第1工程)の監視データAと、工程フェーズnに対する下流の工程フェーズn+1(第2工程)の監視データCと、監視データAを入力パラメータとして監視モデルYnが出力する工程フェーズnの監視結果と、監視データCを入力パラメータとして監視モデルYn+1が出力する工程フェーズn+1の監視結果と、がそれぞれ時系列に記憶される。
【0028】
そして、時刻tにおいて起点プロセスである工程フェーズnにおいて異常が検出されても、同じ時刻tにおいて下流の工程フェーズn+1での監視結果は、正常となる。つまり、工程フェーズn+1の監視結果は「正常」であっても、遷移時間s2前の上流の工程フェーズnでは、監視結果が「異常」となっている。したがって、工程フェーズn+1の監視結果が時刻tにおいて正常でも、s2時間経過すれば、監視結果が異常になるので、監視データCだけでは「正常」と判定する工程フェーズn+1の監視モデルYn+1を、上流の監視モデルYnの監視結果を教師データ(解)として学習処理を行う。
【0029】
監視モデル管理部122は、時刻t(第1時刻)の監視モデルYn(第1監視モデル)の監視結果を教師データ(解)として用い、時刻t(第1時刻)に対して遷移時間s2分異なる時刻t+s2(第2時刻)における監視データC(第2監視データ)を入力パラメータとした監視モデルYn+1(第2監視モデル)に対する子モデル学習処理を行う。このときも教師データ管理部123は、教師データとして使用される工程の監視結果と、その監視結果に対する各監視データとを、工程間の遷移時間を考慮して時系列に管理し、監視モデル管理部122に、学習処理に必要なデータを提供する。
【0030】
したがって、監視モデルYn+1が、s2時間経過前の上流工程フェーズnの異常と連動して、監視データCで「異常」を検知する。このため、(4)下流の工程フェーズn+1で、上流の工程フェーズnが「異常」となる傾向を事前に把握でき、(5)上流の工程フェーズnの「異常」を踏まえて、下流の工程フェーズn+1に対する事前対処を行うことができ、(6)上流の工程フェーズnの「異常」判定の見逃しも検知することができる。上記(6)は、本来なら工程フェーズnにおいて時刻tの監視結果では異常と判定しなければならないところ、何らかの理由で異常と判定していない場合、s2時間前の監視モデルYn+1での事前「異常」検知を記録しておき、s2時間経過前の時刻tにおける監視モデルYnの監視結果が「正常」であれば、異常検知の警告を工程フェーズn+1において出力するように構成することができる。
【0031】
なお、上述したように、工程フェーズn−1(第2工程)に対する上流の工程フェーズn−2についても、工程フェーズn−2(第3工程)の監視データD(第3監視データ)と、監視データB(第2監視データ)を入力パラメータとして子モデル学習処理によって構築された監視モデルYn−1(第2監視モデル)が出力する工程フェーズn−1(第2工程)の監視結果と、が時系列に記憶されているので、監視モデル管理部122は、時刻t−s1(第3時刻)における監視モデルYn−1(第2監視モデル)の監視結果を教師データ(解)として用い、時刻t−s1(第3時刻)に対して遷移時間s3分異なる時刻t−s1−s3(第4時刻)における監視データD(第3監視データ)を入力パラメータとした監視モデルYn−2(第3監視モデル)に対する子モデル学習処理を行うことができる。親モデルから見ると、監視モデルYn−2は、孫モデルとなる。工程フェーズYn+2についても同様である。
【0032】
また、工程フェーズn−2の子モデル学習処理の教師データとして、工程フェーズYn−1ではなく、工程フェーズYnの親モデルの監視結果を用いることができる。この場合、工程フェーズn−1(第2工程)に対する上流の工程フェーズn−2(第3工程)の監視データD(第3監視データ)が監視モデルYnの監視結果と共に時系列に記憶されており、監視モデル管理部122は、時刻t(第1時刻)の監視モデルYn(第1監視モデル)の監視結果を教師データとして用い、時刻t(第1時刻)に対して遷移時間s1+s3分異なる時刻t−s1−s3(第5時刻)における監視データD(第3監視データ)を入力パラメータとした監視モデルYn−2(第3監視モデル)に対する子モデル学習処理を行うことができる。この場合、親モデルから見ると、監視モデルYn−2は、監視モデルYn−1と同様に、子モデルとなる。工程フェーズYn+2についても同様である。
【0033】
図5は、本実施形態の時系列に連続する複数の工程において、起点プロセスに対する各協調型学習モデル間の関係を説明するための図である。
図5に示すように、協調型学習モデルの構築により、各工程フェーズでの監視モデルが、起点プロセスを中心とした予兆検知モデルとして構成される。起点プロセスの監視モデルYnは、親としての異常検知モデルであり、前工程の監視モデルYn−1は、工程フェーズnの予兆検知モデルとして、さらに前工程の監視モデルYn−2は、工程フェーズn−1の予兆検知モデルとして構築される。また、後工程の監視モデルYn+1は、工程フェーズnの予兆検知モデルとして、さらに後工程の監視モデルYn+2は、工程フェーズn+1の予兆検知モデルとして構築される。
【0034】
図6は、本実施形態の協調型学習モデルを適用した水処理におけるプロセス改善例を示す図である。
図7は、本実施形態の協調型学習モデルによるボトルネック工程に対するプロセス全体の改善例を説明するための図である。
【0035】
本実施形態の協調型学習モデルは、親モデルの学習処理によって判定精度が向上すると、子モデルの判定精度が連動して向上する。
図7に示すように、水処理では、ボトルネックとなるボトルネック工程が存在し、このボトルネック工程での処理能力がプロセス全体の処理能力に影響を及ぼす。このため、ボトルネック工程の監視モデルの精度を向上させてスループットを向上させるが重要であるが、ボトルネック工程のスループット向上に対して他の工程の監視モデルを個別にチューニングするのではなく、連動した協調型学習で他の工程の監視モデルの精度が向上し、プロセス全体のスループットが向上する。
図7の例において、白色領域がスループットの改善(向上)部分であり、ボトルネック工程に対して他の工程のスループットが連動して向上している。
【0036】
親モデルの監視精度が向上することで、工程フェーズn−1,n+1において、親モデルの工程フェーズn(ボトルネック工程)に対する予兆検知モデルが構築され、予兆検知モデルの構築により、工程フェーズnの監視精度がさらに向上する改善循環が形成される。このため、ボトルネックとなる工程フェーズnの監視精度が予兆検知モデルにより向上すると、工程フェーズnのスループットが向上するので、工程フェーズn−1,n+1のスループット(処理能力)を向上させることができ、プロセス全体のスループットの底上げが実現できる。
【0037】
図8は、本実施形態の協調型学習モデルの構築処理及び更新処理を示すフローチャートである。まず、所定の遷移時間間隔で時系列に連続する複数の工程のうち、特定の工程を親モデルとなる起点プロセス(例えば、ボトルネック工程)として設定する。そして、親モデルの工程フェーズの監視データ及び複数の子モデルの各工程フェーズの監視データを時系列に収集する。監視データの収集処理は、各工程フェーズに対するインターフェースであるデータ収集制御装置110が行い、記憶装置130(監視データ保存部)に記憶される(S101,S102)。
【0038】
このとき、監視データの収集と共に、監視制御部121では、各工程別に設定された各監視モデルを用いた監視制御を行い、監視結果を出力する。監視結果は、収集された監視データと紐付けて時系列に記憶装置130に記憶される。
【0039】
次に、監視モデル管理部122は、予め設定された任意のタイミングでモデル更新処理、すなわち、モデル学習処理を行う。監視モデル管理部122は、まず、親モデルの更新処理を行う(S103のYES)
【0040】
監視モデル管理部122は、親モデルの工程フェーズの監視データと親モデルの監視モデルの監視結果とを用いて親モデル学習処理を行い(S104)と、学習済み親モデルとして当該監視モデルを更新する(S105)。
【0041】
教師データ管理部122は、親モデルの学習更新に伴い、子モデル学習処理で使用する教師データを生成し、記憶装置130に記憶する(S106,S107)。具体的には、更新された親モデルと時系列に蓄積された監視データとに基づいて、更新された親モデルの検証を行い、検証結果を推論結果として出力する。例えば、時刻t+s1において判定結果の推論は、「異常」であると検証することができる。この時刻t+s1の推論結果が教師データとして生成され、保存される。
【0042】
教師データが生成されると、監視モデル管理部122は、子モデル学習処理を行う。このとき、子モデル学習対象の工程フェーズにおいて、監視データの蓄積が十分であるか否かをチェックし、監視データの蓄積量が所定値(数又は量)未満である場合、子モデル学習処理を行わずに、十分な情報の蓄積を待ってから子モデル学習処理を行うように構成することができる。
【0043】
監視モデル管理部122は、子モデル学習対象の工程フェーズにおいて、監視データの蓄積が十分であると判別された場合(S108のYES)、生成された教師データを用いて子モデル学習処理を行う(S109)。具体的には、時刻t+s1の推論結果を解として、時刻t(親モデルに対する遷移時間がs1時間前)の子モデルの工程フェーズの監視データを記憶装置130から取得し、時刻tにおける子モデルの工程フェーズの監視データに対する学習処理を行い、学習済み子モデルの更新処理を行う(S110)。監視モデル管理部122は、全てのまたは選択された子モデルに対して順次子モデル学習処理を行い、子モデル学習処理を終了する(S111のYES)。
【0044】
なお、上記説明では、監視モデルが、各工程の監視データだけで監視結果を出力する構成としているが、これに限るものではない。例えば、親モデルの監視データも使用して子モデルを構築するように構成してもよい。
【0045】
例えば、時刻t+s1の監視モデルYnの監視結果を教師データとして用い、時刻tにおける監視データBと、時刻tにおける監視データAとを入力パラメータとした監視モデルYn−1に対する子モデル学習処理を行うように構成することができる。この場合、監視制御における監視モデルYn−1の入力パラメータは、所定の同時刻における監視データBと監視データAの双方となる。
【0046】
したがって、
図2の例において、一点鎖線で示すように、工程フェーズn−1の監視モデルYn−1は、同時刻の監視データBと監視データAを説明変数として、工程フェーズn−1の監視結果(目的変数)Yn−1を得る監視モデル(Yn−1=f(B,A))として構成される。このとき、監視モデルYn−1の学習は、時刻tにおける監視モデルYnの監視結果を教師データとして用い、時刻tに対して遷移時間s1分異なる時刻t−s1における監視データB及び同時刻t−s1における監視データAの2つの入力パラメータに対する学習処理を行うように構成される。なお、所定時刻における監視データとその監視モデルの監視結果とがセットになったものを教師データとして用いて学習処理を行うように構成することもできる。
【0047】
本実施形態によれば、時系列に連続する複数の工程のプロセス監視において、プロセス全体の効率改善を実現することができる。
【0048】
特に、ボトルネックとなる起点プロセスの監視結果が出力された時刻tに対して、起点プロセスの上流プロセス又は下流プロセスが、プロセス間の遷移時間間隔分相違する時刻t´においてどのような状況であるのかを把握し、起点プロセスの監視結果(対応する監視データを含んでもよい)を、遷移時間間隔分遡った又は遷移時間間隔分前倒しで(
図3,
図4参照)上流プロセス又は下流プロセスの各監視モデルに反映させる学習処理を行う。このため、各プロセスを監視する監視モデルは、起点プロセスの監視モデルと協調した予兆検知モデルとして構築され、プロセス全体の効率改善を実現することができる。
【0049】
以上、実施形態について説明したが、監視装置100は、ハードウェア構成として上述以外にも、メモリ(主記憶装置)、マウス、キーボード、タッチパネル、スキャナー等の操作入力手段、プリンタなどの出力手段、補助記憶装置(ハードディスク等)等を備えることができる。
【0050】
また、本発明の各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該プログラムを制御部が実行して、コンピュータに本発明の各部の機能を動作させることができる。他方、監視装置100や協調型学習システムの各機能は、各々個別の装置で構成することもでき、複数の装置を直接に又はネットワークを介して接続してコンピュータシステムを構成することもできる。
【0051】
また、上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で、コンピュータに提供することも可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD−ROM等の光ディスク、DVD−ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【0052】
なお、本発明の実施形態を説明したが、当該実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。