(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レーダ装置は、樹脂部材と金属部材によって挟まれた空間内に、前記レーダ装置の検出面が前記樹脂部材に相対し、前記検出面の裏側に位置する裏側面が前記金属部材に相対するように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置を取り付けた構造体。
前記反射面は、前記レーダ装置の左右の領域において、前記レーダ装置の前記検出面よりも前記樹脂部材の配される方向に突出するように傾きを有することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置を取り付けた構造体。
前記反射面は、前記樹脂部材との反射による反射波を前記2αの視野外に反射する第1反射面と、前記第1反射面とは異なる傾きを有する第2反射面とを少なくとも有することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置を取り付けた構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術では、ターゲットを検出する能力のばらつきを低減することはできるが、後述するように、角度特性を十分改善することが困難であるという課題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術では、誤検知防止手段としてのブラケットがレーダ装置の送信視野角内だけでなく、受信視野角内にも存在し得ることから、レーダ装置の検出特性、角度特性に影響を及ぼす可能性があるという課題がある。
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、レーダ装置の検出特性に影響を与えることなく、レーダの角度特性を改善することが可能なレーダ装置を取り付けた構造体、レーダ装置の取り付け方法、および、ブラケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ターゲットの角度を検出可能なレーダ装置を取り付けた構造体において、前記レーダ装置は、垂直方向に2αの視野角を有するとともに水平方向に2β(>2α)の前記視野角を有し、複数の受信アンテナを筐体内に備え、これら複数の受信アンテナを用いて前記水平方向における前記ターゲットの角度を検出するレーダ装置であって、前記レーダ装置の近傍全周のうち少なくとも前記レーダ装置の左右の領域に配された反射面を有し、前記反射面は、前記レーダ装置の視野中心方向と直交する面に対して前記垂直方向に傾きを有し、当該傾きを有する部分によって電波を前記2αの視野外に反射するように構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記反射面は、前記2βの前記視野角の範囲外に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記レーダ装置は、樹脂部材と金属部材によって挟まれた空間内に、前記レーダ装置の検出面が前記樹脂部材に相対し、前記検出面の裏側に位置する裏側面が前記金属部材に相対するように配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記電波は前記樹脂部材と前記金属部材から反射された反射波であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記反射面は、前記レーダ装置の左右の領域において、前記レーダ装置の前記検出面よりも前記樹脂部材の配される方向に突出するように傾きを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記反射面は、前記レーダ装置の視野中心方向と直交する面に対して前記垂直方向に傾きを有するとともに、前記レーダ装置の視野中心方向と直交する面に対して前記水平方向に傾きを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記反射面は、前記樹脂部材との反射による反射波を前記2αの視野外に反射する第1反射面と、前記第1反射面とは異なる傾きを有する第2反射面とを少なくとも有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記構造体は車両であり、前記金属部材は前記車両のボディまたはシャーシであり、前記樹脂部材は前記車両のバンパであり、前記反射面の前記レーダ装置の左右の領域の傾きは、前記樹脂部材の傾きよりも大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記反射面は、金属によって構成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記構造体は車両であり、前記金属部材は前記車両のボディまたはシャーシであり、前記樹脂部材は前記車両のバンパであり、前記反射面の前記レーダ装置の左右の領域は、前記樹脂部材と逆方向に傾きを有するように設定されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、ターゲットの角度を検出可能なレーダ装置を構造体に取り付ける取り付け方法において、前記レーダ装置は、垂直方向に2αの視野角を有するとともに水平方向に2β(>2α)の前記視野角を有し、複数の受信アンテナを筐体内に備え、これら複数の受信アンテナを用いて前記水平方向における前記ターゲットの角度を検出するレーダ装置であって、前記レーダ装置の近傍全周のうち少なくとも前記レーダ装置の左右の領域に反射面を配置し、前記反射面は、前記レーダ装置の視野中心方向と直交する面に対して前記垂直方向に傾きを有し、当該傾きを有する部分によって電波を前記2αの視野外に反射する、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、ターゲットの角度を検出可能なレーダ装置を構造体に取り付けるブラケットにおいて、前記レーダ装置は、垂直方向に2αの視野角を有するとともに水平方向に2β(>2α)の前記視野角を有し、複数の受信アンテナを筐体内に備え、これら複数の受信アンテナを用いて前記水平方向における前記ターゲットの角度を検出するレーダ装置であって、前記レーダ装置の近傍全周のうち少なくとも前記レーダ装置の左右の領域に配された反射面を有し、前記反射面は、前記レーダ装置の視野中心方向と直交する面に対して前記垂直方向に傾きを有し、当該傾きを有する部分によって電波を前記2αの視野外に反射するように構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーダ装置の検出特性に影響を与えることなく、レーダの角度特性を改善することが可能なレーダ装置を取り付けた構造体、レーダ装置の取り付け方法、および、ブラケットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示すレーダ装置の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すレーダ装置のビーム形状を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるレーダ装置、バンパ、ボディの位置関係を示す図である。
【
図5】
図4に示すレーダ装置によって推定される角度と、実際の角度の対応関係を示す図である。
【
図6】
図4に示すレーダ装置のボディの角度θと角度誤差との関係を示す図である。
【
図7】
図4に示すレーダ装置のボディの角度θと最小傾きとの関係を示す図である。
【
図8】視野中心方向と直交する面に平行にボディを配置するとともに、バンパを傾けて配置した場合の構成例を示す図である。
【
図9】
図8に示すレーダ装置のボディの角度θと角度誤差との関係を示す図である。
【
図10】
図8に示すレーダ装置のボディの角度θと最小傾きとの関係を示す図である。
【
図11】
図4に示すボディ3の角度θを0度から15度の間で変化させた場合の最小傾きと角度誤差の関係を示す図である。
【
図14】視野中心方向と直交する面に対して傾きを有するようにボディを配置するとともに、ボディと反対方向にバンパを傾けて配置した場合の構成例を示す図である。
【
図15】
図11に示すレーダ装置のボディの角度θと角度誤差との関係を示す図である。
【
図16】
図11に示すレーダ装置のボディの角度θと最小傾きとの関係を示す図である。
【
図17】視野中心方向と直交する面に対して傾きを有するようにボディを配置するとともに、ボディと平行するようにバンパを傾けて配置した場合の構成例を示す図である。
【
図18】
図17に示すレーダ装置のボディの角度θと角度誤差との関係を示す図である。
【
図19】
図17に示すレーダ装置のボディの角度θと最小傾きとの関係を示す図である。
【
図20】ボディを視野中心方向に対して凸である「く」の字形状とした場合の構成例を示す図である。
【
図21】
図20に示すレーダ装置のボディの角度θと最小傾きとの関係を示す図である。
【
図22】ボディを視野中心方向に対して凹である「く」の字形状とした場合の構成例を示す図である。
【
図23】
図22に示すレーダ装置のボディの角度θと最小傾きとの関係を示す図である。
【
図24】
図20に示す構成において、バンパを傾けた場合の構成例を示す図である。
【
図25】
図24に示すレーダ装置のボディの角度θと角度誤差との関係を示す図である。
【
図26】
図24に示すレーダ装置のボディの角度θと最小傾きとの関係を示す図である。
【
図27】レーダ装置背面のボディ等の金属部材にレーダ装置の外形を投影した図である
【
図31】各ボディ形状における角度特性として最小傾きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
(A)本発明の実施形態の説明
図1は、本発明の実施形態に係る車両を示す図である。
図1(A)はレーダ装置10−1,10−2が取り付けられた車両1を上方向から見た図であり、
図1(B)は車両1を左方向から見た図である。
図1(A)に示すように、2台のレーダ装置10−1,10−2は、車両1の後部のバンパ2内の両側に配置されている。レーダ装置10−1,10−2は、車両1の後方に向かって電波をそれぞれ送信し、後続車両等のターゲットによって反射された反射波を受信し、ターゲットまでの距離、角度、速度等を検出する。例えば、E1,E2の範囲がレーダの受信視野範囲となる。また、
図1(B)に示すように、レーダ装置10−1,10−2は、樹脂等によって構成されるバンパ2の内側に配置される。本案では、受信信号の角度特性に係るため、レーダ装置の受信特性に着目する。
【0024】
図2は、
図1に示すレーダ装置10−1,10−2の斜視図である。レーダ装置10−1,10−2はそれぞれ、平面状の基板を内包し直方体をベースとした形で形成されている。なお、レーダ装置10−1,10−2は同様または類似した構成を有しているので、以下では、これらをレーダ装置10として説明する。また、レーダ装置10−1,10−2の受信視野E1,E2は、受信視野Eとして説明する。
図2に示すように、レーダ装置10は、視野側の面である検出面11と、検出面11の裏側に配置される裏側面12とを有している。
図2において、X方向はレーダ装置10の左右方向に対応し、Y方向はレーダ装置10の前後方向に対応し、Z方向はレーダ装置10の上下方向に対応している。また、
図2において、破線は、レーダ装置10から遠方を仮定した受信視野Eの形状を模式的に示している。受信視野Eは、車両の水平方向であるXY面方向には幅が広く、車両の上下方向であるYZ面方向には幅が狭い形状を有している。なお、レーダ装置10のXY面の視野角は2βであり、YZ面の視野角は2αである。また、ここで視野中心方向はAである。
【0025】
図3は、
図2に示すレーダ装置10の受信ビームパターンの一例を示す図である。
図3の横軸は
図2に示すYZ面上における視野中心方向Aからの角度(
図2の上下方向への角度)を示し、縦軸はアンテナ利得(dBi)を示している。ここで、ビームパターンの幅として十分強度を持たない程度指標としてアンテナ無指向である0dBi程度を指標とした場合に、受信メインビームの利得が0dBi以下となる角度を2αとすると、
図3の例では、ビームパターンは、マイナス9度〜プラス9度の範囲のビームとなっていることから、
図2に示す2αは略18度である。例えば、地面上、路面上、床上いずれも水平面内のターゲットを検出する際には、水平面に比べて仰角面内においてターゲットの存在角度が限定されるため、必ずしも広いビームは必要なく、仰角面内において上記のような幅、あるいは、その前後程度の幅をもつビームパターンが適用可能である。
【0026】
図4は、レーダ装置10とバンパ2およびボディ3の位置関係を模式的に示す図である。レーダ装置10は、バンパ2およびボディ3によって挟まれた空間内に配置される。
図4の例では、バンパ2はレーダ装置10の検出面11に相対する位置関係を有し、ボディ3はレーダ装置10の裏側面12に相対する位置関係を有している。
図4の例では、バンパ2はレーダ装置10の視野中心方向Aと直交している。また、ボディ3は視野中心方向Aと直交する平面P(破線で示す平面)から角度θ傾いた状態とされている。なお、バンパ2は樹脂部材によって構成され、また、ボディ3は金属部材によって構成される。また、レーダ装置10は、図示しない取り付け部材によってボディ3に取り付けられる。さらに、ボディ3は、例えば、ボディ3やバンパ2とレーダ装置10の接続機構であるブラケット等の接続部品であってもよく、以下の説明において同様の効果を示す。
【0027】
レーダ装置10は、複数の受信アンテナ(不図示)を筐体内に有し、これら複数の受信アンテナを用いて、例えば、モノパルス方式、フーリエ変換方式、または、相関行列の固有展開等の、到来角推定等によって、ターゲットの角度を測定する。より詳細には、レーダ装置10は、ある角度方向にターゲットが存在する場合、受信アンテナの受信信号から、上記各種到来角推定法に基づいて、識別値を算出する。レーダ装置10は、各方式によって得られた識別値から理論上の角度値を導出することができる。このようにして得られた理論上の角度値を推定角度値とした場合、レーダ装置10の所望の角度範囲における角度測定能力は、例えば、横軸をターゲット存在角度、縦軸を推定角度値とする角度テーブルによって定義することができる。この角度テーブルでは、ターゲット存在角度と推定角度が1対1に対応し、完全に線形であることが望ましい。しかし、実際には多少のずれが存在するため、レーダ装置10は、角度テーブルを用いて補正を行うことでずれを除去する。なお、本案では上記角度測定を略視野中心方向Aを含むXY面におけるターゲットに対して行う。
【0028】
ところで、レーダ装置10をプラスチックカバーや金属体からなる構造体(車両1)に設置すると、
図5に示すように角度特性が変動することがある。より詳細に、
図5の横軸はターゲットの実際の角度θを示し、縦軸はレーダ装置10が検出した角度θ’を示す。また、実線は車両1への取り付け前の特性を示し、破線は車両1への取り付け後の特性を示す。取り付け前の特性を示す実線は、傾きが略1であり、略直線の特性を有している。一方、取り付け後の特性を示す破線では、実線から乖離する部分が所々に存在するとともに、直線ではなく実線を中心として蛇行する曲線となっている。このため、レーダ装置10を車両1に取り付けた場合、レーダ装置10が推定する角度値が変動し、この変動分が角度誤差を生じる結果となる。
【0029】
そこで、このような誤差を示す指標としての「角度誤差」と「最小傾き」を求める。ここでは、角度誤差を所定の角度範囲(例えば、−60度〜+60度の範囲)における角度誤差値の平均値とする。また、最小傾きとしてはここでは所定の角度範囲(例えば、−60度〜+60度の範囲)における角度テーブルの傾きの最小値を取得する。角度誤差はできるだけ小さい方が好ましいが、場合によっては補正によって除去することができる。しかしながら、角度テーブルの単調増加性、線形性が確保できない場合には、補正が実行できず、角度不定となる領域が発生し得る。より詳細には、
図5に楕円で囲んだ領域のように、リップルによって単調増加性が確保できない場合、角度が一意に定まらず、アンビギュイティといわれる角度不定となる領域が発生する。角度不定の領域が生じないためには、角度テーブルが完全な線形、すなわち傾き1を最良として、所望の角度範囲にて角度テーブルの傾きが負とならないことが必要である。すなわち、傾きが負の値である場合には、リップルが生じていることを示すため、「最小傾き」は正の値であることが望ましい。
【0030】
図6は、
図4におけるボディ3の傾き角度θと、角度誤差の関係を示す図である。この
図6に示すように、角度θが0度の場合には、約1.3度の誤差が存在するが、角度θが5度の場合には約1.1度の誤差となり、角度θが10度および15度の場合には角度誤差は約1.0度となる。
【0031】
図7は、
図4におけるボディ3の傾き角度θと、最小傾きの関係を示す図である。この
図7に示すように、レーダ装置10のみの場合(車両1への取り付け前の場合)には最小傾きは約0.8である。一方、車両1への取り付け後であって、角度θが0度の場合には、約−0.5の最小傾きとなり、角度θが5度では約0.4の最小傾きとなり、角度θが10度では約0.6の最小傾きとなり、角度θが15度では約0.7の最小傾きとなる。
【0032】
図6および
図7に示す結果から、ボディ3の角度θを5度程度とすると、0度の場合に比較して角度誤差が減少するとともに、最小傾きが正の値となる。このため、
図4に示すように、レーダ装置10の視野中心方向Aに直交する平面Pに対して、ボディ3が所定の角度θだけ傾くようにすることで、角度誤差を低減するとともに、最小傾きを正の値にすることができる。特に、最小傾きを正の値にできることから、アンビギュイティといわれる角度不定となる領域が発生することを防止できる。ボディ3での反射を介した不要な受信波を低減することで、角度特性を改善できる。
【0033】
図8は、比較のために、ボディ3は視野中心方向Aと直交する平面Pと平行とし、バンパ2を視野中心方向Aと直交する平面Pから角度θ傾けた状態を示している。
図9は、
図8における角度θと、角度誤差の関係を示す図である。
図9の例では、角度θが5度の場合には角度誤差は約0.8度であり、角度θが10度および15度の場合には約0.9度および約0.7度の誤差となり、これは、
図4に比較すると誤差が若干少ない。しかしながら、
図10に示す最小傾きの測定結果では、最小傾きは0度、5度、および、10度の場合には負であり、15度の場合に略0となっている。このため、アンビギュイティに関係する重要な特性である最小傾きに注目した場合、
図8に示すバンパ2を傾けた場合よりも、
図4に示すボディ3を傾けた場合の方が、特性がよいことが分かる。
【0034】
図11は、
図4に示すボディ3の角度θを0度から15度の間で変化させた場合の最小傾きと角度誤差の関係を示す図である。
図11に示すように、角度θが3度の場合に傾きが正となり、角度θが5度になると特性の改善が顕著となる。このため、ボディ3の角度θについては、少なくとも3度以上、好ましくは5度以上に設定することが望ましいと考えられる。
【0035】
以上では、ボディ3の角度θと最小傾きおよび角度誤差との関係から、角度θを決定するようにしたが、
図2および
図3に示すビームパターンとの関係から角度θを決定するようにしてもよい。具体的には、狭い面内において強度が十分落ちる角度、例えば、利得0dBi程度を指標とした場合に、受信メインビームが0dBi以下となる角度を2αと定義する。この場合、幾何光学的解釈によれば、ボディ3にα/2以上の傾きを設けることで、バンパ2を介した後、視野中心方向に入ることを避けることができる。より具体的には、例えば、
図3のビームパターンでは、0dBiになるのは−9度から+9度の範囲であることから2α=18度である。このため、ボディ3の角度θを略4.5度(=α/2=9/2)に設定することで、バンパ2からの反射波が視野中心方向に入ることを避けることができる。また、より望ましくはメインローブだけでなくサイドローブ等含めてさらに強度が十分に落ちる角度まで避けることが好ましい。一方、
図8のようなバンパ2を傾ける構成においても幾何光学的解釈によると、本来上記角度以上傾けることで、改善が想定されるが、
図7と
図10の比較のとおり、より光学解釈が適用できるのが金属部材における傾き装荷である。これはレーダ装置10すなわち波源から電波経路上はバンパ2よりボディ3の方が距離を有していることも一因として考えられる。
【0036】
以上を、
図12および
図13を参照して詳細に説明する。
図12はXY面におけるレーダ装置10を示す。レーダ装置10は、XY面において広い視野角2βを有している。
図12(A)に示すように、XY面において検知中心方向Aから角度をもったターゲットからの到来波において、ボディ3およびバンパ2がない場合、レーダ装置10は視野角内の主要な受信波アのみを受信する。しかし、
図12(B)に示すように、ボディ3およびバンパ2が存在することにより、ボディ3とバンパ2の反射を介した不要な受信反射波イも視野角内に入ってくる場合があり、視野角内の主要な受信波に干渉し、角度特性に影響を及ぼす。一方、
図13にYZ面におけるレーダ装置10を示す。レーダ装置10は、YZ面においてはXY面内より狭い視野角2αを有している。金属部材であるボディ3がレーダ装置10の視野中心方向Aに直交する平面Pの状態とそれに対して角度θの傾きを有する状態とを比較する。YZ面において検知中心方向Aのターゲットからの到来波において、
図12同様に主要な受信波をアとし、不要な受信反射波をイとする。すなわち、YZ面内においては、ア、イとも平面Pに直交する方向から到来するものとしている。平面Pの状態の場合、不要な受信反射波イは主要な受信波アと同方向からレーダ装置10に入射して干渉し、角度特性に影響を及ぼす。一方、ボディ3が角度θの傾きを有する状態では、不要な受信反射波イ’の反射方向を視野中心方向Aに対して2θ傾かせ、レーダ装置10への入射において視野角中心から外す、あるいは視野角の範囲外とすることで不要な受信波の受信を低減し、主要な受信波アとの干渉を低減できる。これによりアンビギュイティを解消する等の角度特性の改善ができる。YZ面における視野角2αはXY面内の視野角2βより狭いため、XY面内においてボディ3に傾きを設けるよりも小さい角度θで、不要な受信反射波を視野角の範囲外に反射することができる。
【0037】
(B)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、
図4の例では、ボディ3だけを傾けるようにしたが、
図14に示すように、バンパ2も併せて傾けるようにしてもよい。より詳細には、
図14の例では、視野中心方向Aに直交する平面Pに対して、ボディ3が角度θ傾いた状態とされるとともに、バンパ2も視野中心方向Aに直交する平面Pに対して角度θ傾いた状態とされている。すなわち、バンパ2は、ボディ3に対して反対方向に傾けられている。
図15は、
図14に示す構成例における角度θと角度誤差との関係を示す図である。この
図15と
図6を比較すると、
図14に示す構成例の方が角度誤差の減少傾向が顕著となっている。また、
図16は、
図14に示す構成例における角度θと最小傾きとの関係を示す図である。この
図16と
図7を比較すると、
図14に示す構成例も同様に角度θを3度以上に設定することで、アンビギュイティを解消することができる。
【0038】
なお、
図14の構成例では、バンパ2がボディ3に対して反対方向へ傾くようにしたが、
図17に示すように、バンパ2とボディ3とが平行になるように配置することも考えられる。しかしながら、このような配置の場合には、
図18に示すように、角度誤差は
図15と比較すると劣化し、
図19に示すように最小傾きも
図16と比較すると劣化している。このことから、バンパ2については、ボディ3と非平行の状態に配置することが望ましいと考えられる。仮にバンパ2と同じ方向へボディ3が傾きをもつ場合はバンパ2以上の傾きをボディ3に追加的に設けることが好ましい。
【0039】
また、
図4に示す実施形態では、ボディ3は平面形状を有するようにしたが、例えば、
図20に示すように凸状に複数の傾き面を持つ形状を有するようにしてもよい。より詳細には、
図20の例では、ボディ3は、レーダ装置10の視野中心方向Aに凸の形状を有し、断面が「く」の字形状を有している。
図21は、
図20に示す実施形態の最小傾きを示している。この
図21の例では、
図20に示す角度θが約12度以上になった場合に、最小傾きが0以上になっている。このように一様な傾きでなく複数の傾きをもつ構成であっても、アンビギュイティを解消することができる。これらはバンパ2の設計に合わせてボディ3等の金属部材を設計できない状況、例えば、バンパ2の傾きが
図14や
図19のように不確定なあらゆるバンパ2の傾きにも対応できる好適な形状となる。
【0040】
一方、
図22は、
図20と同様に断面が凸形状を有するボディ3を、視野中心方向Aと反対方向となるよう、視野中心方向Aに凹の状態となるように配置した例である。
図23は、
図22に示す実施形態の最小傾きを示している。この例では、
図21と比較すると、最小傾きに対する改善効果は高くない。このため、ボディ3については、
図20に示すように視野中心方向Aに凸な形状を有することが望ましいと考えられる。
【0041】
さらに、
図24は、
図20と同様に断面が凸の形状、特に「く」の字形状を有するボディ3を、視野中心方向Aと同じ方向に凸の状態となるように配置するとともに、バンパ2を図中矢印で示す方向に傾けて配置した状態を示している。
図25は、
図24に示す構成において、角度θを15度に設定し、バンパ2を視野中心方向Aと直交する平面に対して0度、5度、10度、15度傾けた場合の角度誤差を示している。また、
図26は、
図24に示す構成において、角度θを15度に設定した場合に、レーダ装置10のみのとき、バンパ2を視野中心方向Aと直交する平面に対して0度、5度、10度、15度傾けたときの最小傾きを示している。
図26に示すように、角度θを15度に設定していることから、全ての測定値の最小傾きは0.5度前後である。一方、
図25に示すように、バンパ2の傾きを大きくすると、例えば、
図8に示す実施形態に比較して、角度誤差が小さくなっている。この結果、
図24に示すように、断面が「く」の字形状を有するボディ3を、視野中心方向Aと同じ方向に凸の状態となるように配置するとともに、バンパ2を視野中心方向Aに直交する平面に対して傾きを有するようにしても角度検出特性を改善することができる。
【0042】
図27はレーダ装置10背面のボディ3等の金属部材にレーダ装置10の外形を投影した図である。ボディ3とのバンパ2の反射を介してレーダ装置10に入射する不要波成分はレーダ装置10の周辺を一旦介すため、不要波の低減に有効なボディ3の領域は
図27のとおりレーダ装置10外形を投影した周辺部分といえ、この領域において傾きを設けることが好ましい。すなわち
図27のとおり、効果がみられる領域はレーダ装置10の近傍全周であり、視野が狭い面とこれに平行な面でのボディ3の断面において、レーダ装置10を含む断面(a)、レーダ装置10を含まない断面(b)のいずれか、望ましくはいずれにも傾きを設けることが好ましい。傾きを持つ面の大きさは波長に対して大きいこと、例えば、少なくとも2λ以上の大きさと見立てられる傾きが好ましい。
【0043】
図28は、上記
図27(a)におけるボディ3の構成例を示す図である。まず、
図28(A)は、ボディ3のレーダ装置10に相対する領域(図中上下方向への直線として示される領域)の周辺領域が、視野中心方向Aとは逆方向に折り曲げられた構造を有している。
図28(B)は、ボディ3のレーダ装置10に相対する領域の周辺領域の一方が視野中心方向Aとは逆方向に折り曲げられ、他方が視野中心方向Aに折り曲げられた構造を有している。
図28(C)は、ボディ3がレーダ装置10の筐体構造に応じた凹形形状を有するとともに、レーダ装置10に相対する領域の周辺領域が視野中心方向Aとは逆方向に折り曲げられた構造を有している。
図28(D)は、ボディ3のレーダ装置10に相対する領域の周辺領域の一方が、視野中心方向Aとは逆方向に折り曲げられた構造を有している。
図28(E)は、ボディ3のレーダ装置10に相対する領域の周辺領域が、視野中心方向とは逆方向に折り曲げられるとともに、相対する領域が凹凸構造を有している。また、
図28(F)は、ボディ3が視野中心方向Aと同方向に凸形状を有する曲線形状を有している。いずれも、細部によらず平均的な面形状として傾きが形成されることでこれら
図28(A)〜
図28(F)に示す形状によっても、角度検出特性を改善することができる。
図28(A)〜
図28(F)ではバンパ2は図示していないが、バンパ2についても視野中心方向Aに直交する面に対して傾きを有するようにしてもよい。
【0044】
なお、
図28(A)〜
図28(F)に示す形状に共通する構造としては、レーダ装置10と相対する領域(例えば、
図28(A)の上下方向への直線として示される領域)の周辺の少なくとも一部の領域は、レーダ装置10の視野角が狭い面方向(YZ面)において傾きを有しており、また、これらの一部の領域はレーダ装置10の視野を妨げない構造を有していることである。ボディ3等の金属部材において、本願効果が飽和する以上の大きすぎる傾きを設けること、あるいは、レーダ装置10の前面までに大きく出っ張る構造とした場合、送信また受信の視野の妨げによる検出特性への影響や、特殊な形状となる設計や構造の負荷もあるため、本案効果が飽和する以上の傾きは必要としない。
【0045】
なお、以上の各実施形態では、金属部材としてボディ3を例に挙げて説明したが、ボディ3ではなく、金属によって構成されるシャーシであってもよい。あるいは、レーダ装置10をシャーシ、ボディ3またはバンパ2に対して装着するための金属のブラケット(固定部材)が、前述したボディ3と同様の構成を有するようにしてもよい。
図28(A)〜(D)に示すようにレーダ背面が平板となる場合は、プリント基板を内包する略直方体のレーダ装置10をネジ等で固定することは容易である。一方、例えば、
図4のような一様に傾きをもつ金属面をレーダ投影領域周辺に設ける場合、略直方体のレーダ10を設置するための座面をボディ3、シャーシにおける凸構造やブラケットによる板金折り曲げ構造によって形成することができる。座面は、
図29に示すようにレーダ装置10の全周ではなく数点の支持部材50〜53で構成しても良い。これによって、レーダ装置10を固定しつつ、レーダ投影領域周辺における斜面形成も可能となる。
【0046】
また、以上の各実施形態では、レーダ装置10の視野の狭い方向(
図2のYZ面)に対して、ボディ3が傾きを有するようにしたが、視野の広い方向(
図2のXY面)に対してボディ3が傾きを有するようにしてもよい。もちろん、視野の狭い方向および視野の広い方向のいずれか一方に対してボディ3が傾きを有するようにするだけでなく、これらの双方に対して傾きを有するようにしてもよい。ただし、本案のとおり、ターゲットからの受信信号がボディ3等の金属部材で反射し、さらにバンパ2等の樹脂部材の反射を介した不要波がレーダ装置10の視野角内に入らないようにするためには、その傾きを視野の狭い面において構成することが、効率的である。すなわち、視野が狭い面であれば、その視野に入らなくなる程度のわずかな傾きの付加によって、容易に角度特性の保持が可能となる。
【0047】
また、
図2等に示すレーダ装置10の筐体の形態は一例であって、これ以外の構造を有する形態を有するようにしてもよい。なお、異なる筐体の形態を有する場合であっても、視野中心方向Aに直交する面に対してボディ3が傾きを有するように設定すれば、前述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、
図28(A)〜(D)の例では
図27(a)において広い座面が形成でき、仮に
図27(b)領域まで同形状とした場合は
図30(A)となる。一方、先に述べたとおり、(b)領域も含むレーダ近傍全周の斜面化が角度特性改善に効果をもつため、(b)領域を(a)とは異なる形状で構成することで、レーダ近傍全周にわたって斜面を形成することができる。具体的には、
図30(B)に示すように、ボディ3の一部にレーダ装置10の筐体に応じた平らな形状を有する載置部3dを設け、この載置部3dの上にレーダ装置10を配置するようにしてもよい。また、
図31にそれぞれのボディ形状における角度特性として最小傾きの程度を記載する。いずれも斜面の角度15degにおいて、(2)に
図30(A)、(3)に
図30(B)を、参考に(1)に傾きのない場合(
図4のθ=0deg)、(4)に一様な傾きの場合(
図4のθ=15deg)もプロットしている。これより、レーダ装置10近傍全周における斜面形成が角度特性の改善に寄与しており、レーダ装置10を固定する座面は保持しつつ、
図27の(a)と(b)いずれにも斜面形成できることが望ましいといえる。
【0049】
また、以上の各実施形態では、レーダ装置10を取り付ける対象物として、車両1を例に挙げて説明したが、これ以外の対象物に取り付けるようにしてもよい。具体的には、船舶、飛行機、電柱および建造物等の構造体に取り付けるようにしてもよい。また、以上例示してきたレーダ背面における金属部材は、金属板そのものだけでなく、金属に近い反射率を示す部材、例えば金属に近い導電率を有す粒子等を含有する部材であってもよい。
【0050】
また、上述の複数の斜面をもつボディ等の斜面形成において、視野角が狭いYZ面に斜面を持たせるべく、X軸に沿う直線上における折れ曲がり構成の事例を示したが、
図32(A)のようにX軸に沿わない直線上での折れ曲がり構成において、レーダ周辺部分のボディ等金属部材の十分な領域において反射波が視野外となるよう、特に視野角が狭いYZ面に平行な面において
図32(B)の断面図のように十分な斜面を形成することで同様に効果が得られる。また斜面の形成において、本案で示した図例以外の適用可能な変形構成であっても本案の効果を得ることが可能である。