(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体及び硫黄酸素陰イオン(sulfur oxyanion)化合物を含む成分を共重合することにより製造されたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスであって、
前記ラテックス粒子の表面に、前記不飽和カルボン酸単量体、前記不飽和ジカルボン酸単量体及び前記硫黄酸素陰イオン(sulfur oxyanion)化合物の全含量のうち、80重量%以上が共重合されて存在し、
前記不飽和ジカルボン酸単量体は、フマル酸であることを特徴とする、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス。
前記共役ジエン系単量体35ないし80重量%、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体20ないし50重量%、前記不飽和カルボン酸単量体2ないし10重量%、及び前記不飽和ジカルボン酸単量体0.1ないし3重量%を含む単量体合計100重量部に対して、前記硫黄酸素陰イオン化合物0.1ないし2重量部を使用することを特徴とする、請求項1に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス。
前記共役ジエン系単量体は、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン及びイソプレンからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス。
前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロニトリル及びα−シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス。
前記硫黄酸素陰イオン化合物は、過硫酸塩開始剤、アリルスルホン酸ナトリウム及びスチレンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス。
前記共役ジエン系単量体、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体、前記不飽和カルボン酸単量体、前記不飽和ジカルボン酸単量体及び前記硫黄酸素陰イオン(sulfur oxyanion)化合物を含む成分を重合することを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法であって、
前記重合工程の間に、重合転化率10ないし50%の時点で、前記不飽和カルボン酸単量体、前記不飽和ジカルボン酸単量体及び前記硫黄酸素陰イオン(sulfur oxyanion)化合物のうちのいずれか一つをさらに分割投与して共重合を行うことを特徴とする、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法。
前記分割投与は、全体の前記不飽和カルボン酸単量体、前記不飽和ジカルボン酸単量体及び前記硫黄酸素陰イオン化合物の総投与量の30重量%以下を投与することにより行うことを特徴とする、請求項7に記載のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造方法。
前記多価金属陽イオン化合物は、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウム硫酸塩、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートからなる群から選択された1つであることを特徴とする、請求項9に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
前記ディップ成形用ラテックス組成物は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス100重量部に対して前記多価金属陽イオン化合物0.1ないし5重量部を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳しく説明する。
【0021】
本明細書及び請求範囲で使われた用語や単語は、通常的や辞典的な意味で限定して解釈されてはならないし、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0022】
<カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス>
本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを示すが、前記共重合体ラテックス粒子の表面に陰イオンが過量存在し、多価の金属陽イオンとイオン結合を通じて架橋化が可能であり、従来アレルギーなどの問題を引き起こす硫黄及び加硫促進剤や酸性溶液内の湧出が深刻な酸化亜鉛を使用せずとも同等以上の物性を確保できる共重合体ラテックスを示す。
【0023】
本発明で示すカルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体及び硫黄酸素陰イオン(sulfur oxyanion)化合物を含んで共重合されたものである。
【0024】
前記共重合体を構成する単量体の中で、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和ジカルボン酸単量体はカルボキシル基という陰イオンを含み、硫黄酸素陰イオン化合物は硫酸塩またはスルホネートのような陰イオンを含む。この観点から見て、本明細書で言及する陰イオンは、カルボキシル基(COO
-)、硫酸塩基(SO
3-)及びスルホネート基(SO
42-)を全て合わせたものを意味する。また、前記陰イオンを含む単量体及び化合物は、以下「陰イオン性化合物」と総称する。
【0025】
本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体は、前記単量体を含んで共重合の際に前記単量体や硫黄酸素陰イオンによって陰イオンがランダムに共重合体ラテックス粒子全体にわたって存在することが一般的である。しかし、本発明では、共重合体ラテックス粒子の表面に陰イオンが集中的に存在するよう、前記陰イオンを有する陰イオン性化合物がラテックス粒子表面に共重合された形態で存在することを特徴とする。
【0026】
陰イオン性化合物のラテックス粒子表面での存在可否は、滴定方式、酸価測定、NMR(自己共鳴分析法)、またはFT−IR(フーリエ変換紫外線スペクトル分析法)などの方式で分析可能である。これらのうち、酸価やNMR、FT−IRは、全体的な陰イオン化合物の含量を予測するだけで、本発明で得ようとする「表面に存在」する陰イオン性化合物の含量を測定することが容易ではない。
【0027】
具体的に、ラテックス粒子表面に存在する陰イオン性化合物の含量は、選択中和法によって前記陰イオン性化合物内に存在する陰イオンを中和するために消耗されるKOHの投入量を計算する方式によって得られ、これは下記のように行われる。
【0028】
先ず、共重合体ラテックスを10%に希釈した後、3%KOH水溶液を添加し、pH12で90℃/2時間撹拌する。得られた希釈液を常温に冷やした後、2%塩酸水溶液を添加してpHを2に調節し、90℃/2時間撹拌する。次いで、常温に温度を下げた後、3%KOH水溶液で滴定し、粒子表面に結合された陰イオンの含量を計算する。この時、前記選択重合法の方式で測定された陰イオンの含量は、その数値が高いほど表面に陰イオンの含量が多いことを意味する。
【0029】
本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、選択中和法によって消耗されるKOHの投入量の計算を通じて測定され、全体陰イオン性化合物の含量のうち、80重量%以上、好ましくは、83重量%以上、より好ましくは、85ないし99.5重量%がラテックス粒子の表面に存在する。本発明において、全体陰イオン性化合物100重量%のうち、80重量%以上が共重合体ラテックス粒子の「表面に存在する」または「表面に共重合された形態で存在する」は、pH9以上で多価の金属陽イオンとイオン結合できる共重合体上の陰イオンを有する全体陰イオン性化合物の投入量の80重量%以上が表面に存在することを意味する。イオン結合のための陰イオンを有する陰イオン性化合物が粒子の内部に存在する場合、共重合体粒子の架橋度のため、pHを高めても表面に出てしまって多価の金属陽イオンと結合することができない。すなわち、陰イオン性化合物が共重合体に結合されずにセラムに存在する場合は、多価の金属陽イオンと結合しているとしても、ディップ成形品の耐久性と耐化学性を上げることに役に立たない。
【0030】
より具体的に、共重合体粒子の表面に存在する表面カルボン酸の含量は5重量%以上で、共重合体セラムに残留するカルボン酸の含量は、0.1重量%以下であることが好ましい。
【0031】
前記のように、共重合体ラテックス粒子の表面に80重量%以上の陰イオン性化合物が共重合された形態で存在するためには、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の製造に使用する各単量体の種類及び含量が限定されなければならないし、具体的な製造方法に対する工程制御が必要である。
【0032】
本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体及び硫黄酸素陰イオン(sulfur oxyanion)化合物を含んで重合段階を介して製造する。
【0033】
共役ジエン系単量体は、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン及びイソプレンからなるグループから選択された1種以上のものであり、これらの中で1,3−ブタジエンが最も好ましく使用される。
【0034】
前記共役ジエン系単量体は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を構成する全体単量体の総含量100重量%内で35ないし80重量%、好ましくは、40ないし75重量%、より好ましくは、45ないし70重量%で含まれる。もし、その含量が前記範囲の未満であれば、ディップ成形品が硬くなって着用感が悪くなるし、これと逆に、前記範囲を超えると、ディップ成形品の耐油性が悪くなって引張強度が低下する。
【0035】
本発明によるゴム手袋用ラテックスの共重合体を構成する他の単量体として、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロニトリル、及びα−シアノエチルアクリロニトリルからなるグループから選択された1種以上のものであり、この中でアクリロニトリルとメタクリロニトリルが好ましく、その中でアクリロニトリルが最も好ましく使用される。
【0036】
エチレン性不飽和ニトリル系単量体は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を構成する全体単量体の総含量100重量%内で20ないし50重量%、好ましくは、25ないし40重量%で含まれる。もし、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体の含量が前記範囲の未満であれば、ディップ成形品の耐油性が低下するだけでなく引張強度が低下し、これと逆に、前記範囲を超えると、ディップ成形品が硬くなって着用感が不良になるなどの問題が生じる。
【0037】
特に、本発明の共重合体ラテックスは、表面に過量の陰イオンが存在し、前記陰イオンは不飽和カルボン酸単量体及び不飽和ジカルボン酸単量体から由来する。
【0038】
不飽和カルボン酸単量体は、アクリル酸、メタクリル酸のうちの1種で、好ましくは、メタクリル酸を使用する。
【0039】
このような不飽和カルボン酸単量体は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を構成する全体単量体の総含量100重量%内で2ないし10重量%、好ましくは、4ないし7重量%で含まれる。前記不飽和カルボン酸単量体の含量が前記範囲の未満であれば、ディップ成形品が引張強度が低下し、これと逆に、前記範囲を超えると、ディップ成形品が硬くなって着用感が悪くなる。
【0040】
不飽和ジカルボン酸単量体は、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びグルコン酸からなる群から選択された1種以上が可能であり、好ましくは、イタコン酸またはフマル酸が使用されてもよい。
【0041】
前記不飽和ジカルボン酸単量体は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を構成する全体単量体の総含量100重量%内で0.1ないし3.0重量%、より好ましくは、0.5ないし2.5重量%で使用する。前記不飽和ジカルボン酸単量体は、架橋のための多価金属陽イオンとの結合をさらに強くする役割をし、ディップ成形品の耐久性及び耐化学性を上げる役割をする。ここで、前記範囲の未満で使用すると、ディップ成形品の前記物性向上効果を期待することができないし、これと逆に、前記範囲を超えるとディップ成形品の硬くなる問題が発生する。
【0042】
硫黄酸素陰イオン(sulfur oxyanion)化合物は、分子構造内の硫黄と酸素を含めて陰イオンを示すもので、分子構造内の硫酸塩基(SO
3-、sulfate)またはスルホネート基(SO
42-、sulfonate)を有する化合物を意味する。前記硫黄酸素陰イオン化合物は、共重合体ラテックス内に存在し、表面に強い陰イオン性を帯びるし、この陰イオン性によって架橋のために添加される多価金属陽イオンとのイオン結合をさらに強くする役割をする。
【0043】
このような硫黄酸素陰イオン化合物は、前述したように、分子構造内の硫酸塩基またはスルホネート基を有する化合物であれば、いずれも使用可能である。しかし、最終的に得られるディップ成形品の物性に影響を与えてはいけないので、過硫酸塩開始剤、アリルスルホン酸ナトリウム及びスチレンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択された1種が使用可能である。前記過硫酸塩開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムなどがあり、これを使用する場合、アリルスルホン酸ナトリウムやスチレンスルホン酸ナトリウムは排除することができる。また、アリルスルホン酸ナトリウムやスチレンスルホン酸ナトリウムを使用する場合、開始剤として過硫酸塩系ではない過リン酸カリウムや過酸化水素などの使用が可能である。
【0044】
硫黄酸素陰イオン化合物は、前記示した効果を得るためにカルボン酸変性ニトリル系共重合体を構成する全体単量体の総含量100重量部に対して0.1ないし2.0重量部、より好ましくは、0.5ないし1.7重量部で使用する。ここで、前記範囲未満で使用すると、ディップ成形品の前記物性向上効果を期待できないし、これと逆に、前記範囲を超えるとディップ成形品が硬くなる問題が発生する。
【0045】
本発明のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、既に言及したように、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を構成する単量体に、乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤などを添加して乳化重合することによって製造することができる。
【0046】
しかし、共重合体ラテックス粒子の表面に陰イオン性化合物の含量を高められるように、重合過程で前記陰イオン性化合物の添加方式を調節する。すなわち、陰イオン基を有する陰イオン性化合物は、不飽和カルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体及び硫黄酸素陰イオン化合物であって、これらは重合が進行した後、重合転化率が10%ないし50%間の地点で全体投入量の一部を分割投入して、これらを前記共重合体ラテックス表面に集中して分布させる。
【0047】
具体的に、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、
(段階a)反応器に共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体及び硫黄酸素陰イオン化合物、乳化剤、重合開始剤及び脱イオン水を添加する段階、
(段階b)乳化重合を行う段階、
(段階c)重合を行った後、重合転化率が10%〜50%の間で不飽和カルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体及び硫黄酸素陰イオン化合物の中で選択された1種以上の陰イオン性化合物の全体投入量の中で一部をさらに分割投与する段階、及び
(段階d)重合を持続した後、完了する段階を経て製造する。
【0049】
先ず、脱イオン水内に共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体及び硫黄酸素陰イオン化合物、乳化剤、分子量調節剤及び重合開始剤を添加して乳化重合を行う(段階a)。
【0050】
前記共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体及び硫黄酸素陰イオン化合物の組成は、前述したことに従う。
【0051】
乳化剤は、通常の乳化重合に使用されるものであれば、いずれも使用可能であり、本発明で特に限定されない。一例として、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などを使用することができる。この中で、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、及びアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選択された陰イオン性界面活性剤が特に好ましく使用される。
【0052】
乳化剤の使用量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を構成する単量体の総合100重量部に対して、具体的には、0.3〜10重量部、より具体的には、0.8〜8重量部、最も具体的には、1.5〜6重量部で使用される。もし、乳化剤の含量が前記範囲の未満であれば、重合時の安定性が低下され、これと逆に、前記範囲を超えると泡の発生が多くなってディップ成形品を製造し難い問題点がある。
【0053】
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物から選択された1種が使用されてもよい。
【0054】
重合開始剤の使用量は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を構成する全体単量体100重量部に対して、具体的には0.01〜2重量部、より具体的には0.02〜1.5重量部で含まれる。もし、前記重合開始剤の量が0.01重量部未満であると、重合速度が低下されて最終製品を製造し難いし、2重量部を超えると重合速度が速くなりすぎて重合速度を調節することができない。
【0055】
分子量調節剤としては、特に限定されないが、例えば、α−メチルスチレンダイマー、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロム化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物などを挙げることができる。
【0056】
このような分子量調節剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
これらのうち、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましく使用されることができる。分子量調節剤の使用量は、その種類によって異なるが、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を構成する全単量体100重量部に対して、具体的には0.1〜2.0重量部、より具体的には0.2〜1.5重量部、最も具体的には0.3〜1.0重量部で使用する。もし、前記分子量調節剤の量が0.1重量部未満であれば、ディップ成形品の物性が顕著に低下されるし、2重量部を超えると重合安定性が低下する問題点がある。
【0058】
脱イオン水は、乳化重合の媒質として使用される。
【0059】
前記組成以外に、必要に応じてラテックス樹脂の乳化重合に使用する通常の添加剤をさらに含むことができる。一例として、前記添加剤は、活性化剤、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、粒径調整剤、老化防止剤、酸素捕捉剤(oxygen scavenger)などが可能である。
【0060】
本段階aにおいて、単量体、乳化剤、分子量調節剤、重合開始剤、及びさらに添加剤は、反応器内で同時に添加したり、連続的に添加する方式が使用可能であり、適切な方法は、該分野における通常の知識を有する者によって選択される。
【0061】
次に、前記混合された混合物の乳化重合を行う(段階b)。
【0062】
前記乳化重合時の重合温度は、普通10ないし90℃であってもよく、好ましくは、20ないし80℃である。より好ましくは、25ないし75℃であってもよいが、特に限定されない。
【0063】
次に、重合を進めた後、一定重合転化率以下の条件で不飽和カルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体及び硫黄酸素陰イオン化合物からなる群から選択された1種を分割投与する(段階c)。
【0064】
前記分割投与は、各単量体の総投入量のうち、30%以下で行い、この分割投与方式を介して陰イオン性化合物が共重合体ラテックス粒子の表面に多量存在することができる。前記分割投与は、残りの単量体を一気に投入したり、連続して投入することができるし、一気に各使用含量を重合反応器に全て添加したり、その一部の含量を重合反応器に添加した後、残りの含量を再び重合反応器に連続的に供給することができる。
【0065】
特に、前記分割投与は、重合転化率50%以下、好ましくは、10ないし50%で行う。
【0066】
重合反応の重合転化率は、当業界で通常公知された方法によって測定することができる。例えば、一定時間の間隔で反応組成物から一定量の試料を採取し、固形分含量を測定した後、下記数式1で重合転化率を計算した。
【0067】
[数式1]
重合転化率(%)=(Ms−Mo)/(Mp−M'o)
(前記数式1において、
Msは、乾燥された共重合体ラテックスの重さで、
Moは、乳化剤と開始剤の重さの和で、
Mpは、100%重合された高分子の重さで、
M'oは、乳化剤と開始剤の重さの和である)
重合転化率の10%前に陰イオン性化合物の一部を投入することは、初めから入れることと変わらないし、50%後に投入する場合、共重合体に陰イオン性化合物が共重合されないので、セラムで検出される未反応陰イオン性化合物の量が多くなる。
【0068】
この時、投入される陰イオン性化合物の量は、全体投入量の30%以下が適当である。これ以上を投入する場合、セラムで検出される未反応陰イオン性化合物の量が多くなるか、重合反応の安定性が低下する問題が発生するおそれがある。
【0069】
次に、重合反応を終了し、ゴム手袋用共重合体ラテックスを得る(段階d)。
【0070】
重合反応の終了は、重合転化率が90%以上、好ましくは、93%以上の後で行う。前記重合反応の終了は、重合禁止剤とpH調節剤及び酸化防止剤を添加して行う。
【0071】
反応終了後、最終的に得られた共重合体ラテックスは、通常の奪臭濃縮工程を通じて未反応単量体を取り除いた後で使用する。
【0072】
このようなカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、ガラス転移温度が−40ないし−15℃、好ましくは、−35ないし−20℃を有する。前記ラテックスのガラス転移温度が前記範囲より小さい場合、引張強度が顕著に低下されたり、手袋のべたつきによって着用感が落ちるし、これと逆に、前記範囲より高い場合、ディップ成形品に亀裂が生じて好ましくない。前記ガラス転移温度は、前記共役ジエン単量体の含量を調節して調整することができるし、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry)で測定することができる。
【0073】
前記ディップ成形用ラテックスの平均粒径は、80nmないし300nmであってもよい。もし、前記ディップ成形用ラテックスの平均粒径が前記範囲内に該当する時、製造されたディップ成形品の引張強度が向上されることができる。
【0074】
前記ディップ成形用ラテックスの平均粒径は、前記乳化剤の種類や含量を調節して調整することができるし、前記平均粒径はレーザー分散分析器(Laser Scattering Analyzer、Nicomp)で測定することができる。
【0075】
<カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物>
前述した本発明によるカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、そのままディップ成形用ラテックス組成物で使用するか、ディップ成形品を製造する時、通常使用する組成(または添加剤)を添加することで、ディップ成形用ラテックス組成物を製造する。
【0076】
特に、本発明によるディップ成形用ラテックス組成物は、硫黄及び加硫促進剤や酸化亜鉛のような架橋剤を使用せずに、架橋化が可能となるように前記共重合体ラテックス粒子の表面に多量存在するカルボキシル基とイオン結合(すなわち、架橋化)が可能になるよう、多価金属陽イオン化合物を使用する。
【0077】
多価金属陽イオン化合物は、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウム硫酸塩、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネートなど、3価以上の金属陽イオンの塩のうちの1種が可能であり、好ましくは、アルミニウムアセチルアセトネートを使用する。
【0078】
前記多価金属陽イオン化合物は、共重合体ラテックス粒子の表面に多量存在するカルボキシル基とイオン結合が起きて、ディップ成形品の耐久性及び耐化学性を高めることができる。その結果、多価金属陽イオン化合物の含量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス100重量部に対して、0.1ないし5重量部、好ましくは、0.5ないし4重量部で使用する。もし、その含量が前記範囲の未満であれば、耐久性及び耐化学性が低いため、使用中に破れるなどの問題が発生し、前記範囲を脱して過量で使用すれば、硬くなるおそれがある。
【0079】
前記のように、陰イオンと金属陽イオンとのイオン結合による架橋化の機序は、特性上、酸性溶液、汗及び極性溶媒で結合が弱化する。特に、手袋などのディップ成形品は、食品や化学分野で酢酸などの酸性溶液を扱う場合が多く、この時、前記酸性溶液によって金属陽イオンが湧出される。特に、酸化亜鉛を架橋剤として使用する場合、湧出される亜鉛イオンの量は実質的に規制されている。また、人の汗の主な成分によって弱くなることがあるし、極性溶媒で前記結合が容易く切れて、耐化学性が低下されることがある。
【0080】
本発明によるディップ成形用ラテックス組成物は、架橋剤として酸化亜鉛ではなく、アルミニウム系多価金属陽イオン化合物を利用して架橋化を行い、これによって製造されたディップ成形品は、酸性溶液内に浸漬する時湧出される含量が最小化され、高い汗による耐久性と共に耐化学性に優れている。
【0081】
金属陽イオンの湧出は、濃度が知られた酸溶液に一定時間浸漬した後、湧出される湧出液の内で金属陽イオンの含量をICP−OES(誘導結合プラズマ分光器、inductively coupled plasma optical emission spectrometry)で分析して定量化する。この時、その数値が低いほど、湧出される金属陽イオンの含量が少ないことを意味する。
【0082】
前記抽出液は、ディップ成形品を10×10cm
2の面積で切って、4%アセット酸水溶液200gに浸漬させた後、60℃で30分間抽出して得られる。この方法を通じて製造された本発明によるディップ成形品は、酸溶液から抽出されるアルミニウムイオンが0.1ppm未満を満たす。この値は、陰イオンと金属陽イオンとのイオン結合力が非常に高いことを意味し、酢などの酸性溶液に使っても湧出される金属含量が非常に少ないことを意味する。
【0083】
また、汗に対する耐久性は、手に手袋形態のディップ成形品をはめてから破れる時までの時間を測定した結果、4時間以上の連続着用しても耐久性を維持することができた。そして、耐化学性の場合、EN374−3:2003規定に準して測定し、浸透溶媒としてヘキサン(hexane)を使用した結果、40分以上の優れた結果を示した。
【0084】
前記のような優れた効果を確保できる陰イオンと金属陽イオンとのイオン結合による架橋化が可能なディップ成形用ラテックス組成物は、多様な製品を製造するために前記多価金属陽イオン性化合物以外に多様な添加剤をさらに含んでもよい。
【0085】
前記添加剤としては、チタンジオキシドのような顔料、シリカのような充填剤、増粘剤、アンモニアまたはアルカリ水酸化物のようなpH調節剤など、ディップ成形の時に使用される添加剤が使用可能である。
【0086】
同時に、本発明によるディップ成形用ラテックス組成物は、固形分濃度が5ないし40重量%、好ましくは、8ないし35重量%、より好ましくは、10ないし33重量%を有する。もし、その濃度が低すぎると、ラテックス組成物の運送効率が低下し、高すぎると、固形分濃度が粘度の上昇を引き起こして、貯蔵安定性などの問題が生じ得るので、前記範囲内で適切に調節する。
【0087】
同時に、前記ディップ成形用ラテックス組成物のpHは、9ないし12であってもよく、好ましくは、9ないし11であってもよく、より好ましくは、9.5ないし10.5であってもよい。
【0088】
さらに、本発明によるラテックス組成物のpHは、一定量のpH調節剤を投入して調節することができるし、前記pH調節剤としては、主に1ないし5%水酸化カリウム水溶液または1ないし5%アンモニア水を使用してもよい。
【0089】
<ディップ成形品>
同時に、本発明は、前記ディップ成形用ラテックス組成物から製造されたディップ成形品を提供する。
【0090】
前記ディップ成形用ラテックス組成物は、既に言及したように、陰イオンと多価金属陽イオンのイオン結合だけで架橋化が可能であり、硫黄及び加硫促進剤や酸化亜鉛のような架橋剤を使用したディップ成形品と対比して同等以上の物性、特に、架橋化と直接係る耐久性及び耐化学性を確保することができるし、酸溶液で0.1ppm未満の多価金属陽イオンの湧出分を有する。
【0091】
本発明のディップ成形品を得るためのディップ成形方法として通常の方法を使用してもよく、例えば、直接浸漬法、正極(anode)凝着浸漬法、ティーグ(Teague)凝着浸漬法などを挙げることができる。これらの中で、均一な厚さのディップ成形品を容易に得られるという点から見て、正極凝着浸漬法が好ましい。
【0092】
本発明の組成物を利用してディップ成形品を製造する方法は、
(a)モールド表面に凝固剤溶液をコーティングする段階;
(b)凝固剤がコーティングされたモールドにディップ成形用ラテックス組成物をコーティングしてディップ成形層を形成する段階;
(c)前記ディップ成形層を架橋する段階;及び
(d)架橋されたディップ成形層をモールドからはがしてディップ成形品を収得する段階;を含む。
【0093】
以下、本発明のラテックス組成物を利用してディップ成形品を製造する方法について詳しく説明する。
【0094】
(a)モールド表面に凝固剤をコーティングする段階
本段階(a)では、モールドとして手模様のディップ成形枠を使用し、このモールドを凝固剤溶液にコーティングした後、乾燥して前記モールド表面に凝固剤を塗布する工程を行う。
【0095】
凝固剤は、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛などのような金属ハロゲン化物(halide);バリウムナイトレート、カルシウムナイトレート及びジンクナイトレートのような窒酸塩;バリウムアセテート、カルシウムアセテート及びジンクアセテートのようなアセット酸塩;カルシウム硫酸塩、マグネシウム硫酸塩みたいな硫酸塩などがある。これらの中で、塩化カルシウムとカルシウムナイトレートが好ましい。凝固剤溶液は、前記のような凝固剤を水、アルコールあるいはその混合物に溶かした溶液である。凝固剤溶液内の凝固剤の濃度は、普通5ないし50重量%、好ましくは、10ないし40重量%である。
【0096】
(b)モールド内にディップ成形層を形成する段階
前記段階(a)に次いで、本段階(b)では、凝固剤が付着されたモールドを本発明のディップ成形用ラテックス組成物に浸漬してディップ成形層を形成させる段階を行う。
【0097】
凝固剤を付着させたモールドを本発明のゴム手袋用ラテックス組成物に浸漬し、それからモールドを取り出して前記モールドにディップ成形層を形成させる。
【0098】
(c)ディップ成形層を架橋する段階
次に、本段階(c)では、モールドに形成されたディップ成形層を加熱処理してラテックス樹脂を架橋させる段階を行う。
【0099】
前記架橋は加熱処理によって行い、この時、加熱処理の時には、水の成分が先に蒸発し、架橋を通じる硬化が行われる。
【0100】
(d)ディップ成形品の収得及び物性を測定する段階
次いで、本段階(d)では、モールドからディップ成形品を収得し、得られたディップ成形品の物理的性質を測定する。
【0101】
得られたディップ成形品からASTM D−412に即して、ダンベル形象の試片を製作した。その後、この試験片をUTM(Universal Testing Machine)を利用して伸び速度500mm/分で引っ張って、破断時の引張強度及び伸び率を測定し、伸び率が300%及び500%である時の応力で触感を測定する。
【0102】
本発明による方法は、公知のディップ成形法によって製造することができる如何なるラテックス物品に対しても使用することができる。具体的には、手術用手袋、検査用手袋、コンドーム、カテーテル、または様々な種類の産業用及び家庭用手袋のような健康管理用品から選択されるディップ成形ラテックス物品に適用することができる。
【0103】
最も好ましくは、家庭用または産業用手袋が使用可能であり、特に食品産業で使用する手袋として好ましい。前記手袋は、酸性溶液に露出する時、金属陽イオンの湧出が0.1ppm以下であるため、安全に使用できるだけでなく、柔らかい肌触りと共に硫黄及び加硫促進剤を使わないので、これによって引き起こされるアレルギーが元々発生しない。また、汗に対する耐久性に優れ、各種有機溶媒に対する耐化学性が高いという利点がある。
【0104】
以下、本発明の理解を助けるための好ましい実施例を示すが、下記実施例は本発明を例示するだけであって、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正ができることは当業者に自明なことであり、このような変更及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0105】
[実施例]
<実施例1>
(1)ゴム手袋用共重合体ラテックスの製造
重合反応器にアクリロニトリル32重量%、1,3−ブタジエン61.5重量%、及びメタクリル酸4.5重量%、イタコン酸1重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物99重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.7重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、36℃の温度で重合を開始した。
【0106】
重合転化率が30%である時点でメタクリル酸1.0重量%を添加した。
【0107】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。
【0108】
(2)ディップ成形品の製造
前記ラテックス100重量部に水酸化カリウム溶液2.0重量部、アルミニウムアセチルアセトネート1.0重量部、チタンオキシド1.0重量部(BOSTEX 497D)及び2次蒸溜水を足して、固形分濃度20%、pH10のディップ成形用組成物を得た。
【0109】
これとは別に、15重量部のカルシウムナイトレート、84.5重量部の水、0.5重量部の湿潤剤(wetting agent、Teric 320 produced by Huntsman Corporation、Australia)を混合して凝固剤溶液を作った。この溶液に手模様のセラミックスモールドを20秒間漬けて、取り出した後70℃で3分間乾燥し、凝固剤を手模様のモールドに塗布した。
【0110】
次に、凝固剤が塗布されたモールドを前記のディップ成形用組成物に20秒間漬けて、取り出した後、70℃で2分間乾燥した後、水または温水に3分間漬けて溶出(leaching)した。モールドを再び70℃で3分間乾燥した後、130℃で20分間架橋させた。架橋されたディップ成形層を手模様のモールドからはがして手袋形態のディップ成形品を得た。
【0111】
<実施例2>
重合反応器にアクリロニトリル32重量%、1,3−ブタジエン61.5重量%及びメタクリル酸5.0重量%、フマル酸0.5重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物99重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.7重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、36℃の温度で重合を開始した。
【0112】
重合転化率が20%の時点でアリル硫酸ナトリウム塩1.0重量%を添加した。
【0113】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。このように得たラテックスを利用して実施例1と同様の方法でディップ成形品を製造した。
【0114】
<実施例3>
重合反応器にアクリロニトリル34重量%、1,3−ブタジエン60重量%及びメタクリル酸4.0重量%、フマル酸0.5重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物98.5重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.7重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、36℃の温度で重合を開始した。
【0115】
重合転化率が20%の時点でメタクリル酸1.5重量%を添加した。
【0116】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。このように得たラテックスを利用して実施例1と同様の方法でディップ成形品を製造した。
【0117】
<実施例4>
重合反応器にアクリロニトリル33重量%、1,3−ブタジエン61重量%及びメタクリル酸4.0重量%、イタコン酸0.5重量%、アリル硫酸ナトリウム塩0.5重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物99重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.7重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、36℃の温度で重合を開始した。
【0118】
重合転化率が40%の時点でメタクリル酸1.0重量%を添加した。
【0119】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。このように得たラテックスを利用して実施例1と同様の方法でディップ成形品を製造した。
【0120】
<実施例5>
重合反応器にアクリロニトリル33重量%、1,3−ブタジエン60.5重量%及びメタクリル酸5重量%、アリル硫酸ナトリウム塩0.5重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物99重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.7重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、36℃の温度で重合を開始した。
【0121】
重合転化率が30%の時点でイタコン酸1.0重量%を添加した。
【0122】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。このように得たラテックスを利用して実施例1と同様の方法でディップ成形品を製造した。
【0123】
<実施例6>
重合反応器にアクリロニトリル33重量%、1,3−ブタジエン60.5重量%及びメタクリル酸5重量%、アリル硫酸ナトリウム塩0.5重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物99重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.7重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、36℃の温度で重合を開始した。
【0124】
重合転化率が40%の時点でフマル酸1.0重量%を添加した。
【0125】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。このように得たラテックスを利用して実施例1と同様の方法でディップ成形品を製造した。
【0126】
<比較例1>
重合反応器にアクリロニトリル24.5重量%、1,3−ブタジエン72重量%及びメタクリル酸3.5重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物100重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.5重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、40℃の温度で重合を開始した。
【0127】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。このように得たラテックスを利用して実施例1と同様の方法でディップ成形品を製造した。
【0128】
<比較例2>
重合反応器にアクリロニトリル30重量%、1,3−ブタジエン65重量%及びメタクリル酸4.0重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物99重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.5重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、40℃の温度で重合を開始した。
【0129】
重合転化率が60%の時点でメタクリル酸1.0重量%を添加した。
【0130】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。このように得たラテックスを利用して実施例1と同様の方法でディップ成形品を製造した。
【0131】
<比較例3>
重合反応器にアクリロニトリル32重量%、1,3−ブタジエン62重量%及びメタクリル酸6.0重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物100重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.5重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、40℃の温度で重合を開始した。
【0132】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。
【0133】
前記ラテックス100重量部に水酸化カリウム溶液1.8重量部、硫黄1.5重量部(BOSTEX378、Akron dispersions)酸化亜鉛1.5重量部(BOSTEX422)、加硫促進剤0.7重量部(BOSTEX 497B)、チタンオキシド1.0重量部(BOSTEX 497D)及び2次蒸溜水を加え、固形分濃度20%、pH10のディップ成形用組成物を得た。この組成物を利用して実施例1と同様の方法でディップ成形品を製造した。
【0134】
<比較例4>
重合反応器にアクリロニトリル24重量%、1,3−ブタジエン72重量%及びメタクリル酸4.0重量%で構成される単量体混合物と前記単量体混合物100重量部に対してt−ドデシルメルカプタン0.5重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、水140重量部を入れた後、40℃の温度で重合を開始した。
【0135】
重合転化率が94%に達した時、水酸化アンモニウム0.3重量部を添加して重合を停止させた。その後、奪臭工程を介して未反応物を取り除いて、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤を添加し、固形分濃度45%、pH8.5のゴム手袋用共重合体ラテックスを収得した。
【0136】
前記ラテックス100重量部に水酸化カリウム溶液1.8重量部、酸化亜鉛2.0重量部(BOSTEX422)、チタンオキシド1.0重量部(BOSTEX 497D)及び2次蒸溜水を加え、固形分濃度20%、pH10のディップ成形用組成物を得た。この組成物を利用して実施例1と同様の方法でディップ成形品を製造した。
【0137】
[実験例1: ラテックス物性及びディップ成形品物性測定]
1.共重合体ラテックスの物性測定
前記実施例及び比較例で製造された共重合体ラテックスの物性を下記のように測定し、その結果を下記表1ないし表2に示す。
【0138】
(共重合体内のカルボン酸の分布)
共重合体粒子の表面に存在する陰イオンの分布可否を確認するために、代表的な陰イオンであるカルボン酸を定量した。
【0139】
重合して得たラテックスを10%に希釈した後、3%水酸化カリウム水溶液を利用してpHを12まで上げた後、2時間90℃で撹拌した。次いで、水溶液中のアンモニアを取り除いて、得られた希釈液を常温まで冷やした後、2%に希釈した塩酸水溶液を利用してpHを2以下に下げた後、2時間90℃の温度で撹拌した。次に、水溶液中の二酸化炭素を取り除いて、得られた希釈液を常温まで冷やした後、濃度が正確な3%水酸化カリウム水溶液を利用して滴定し、粒子表面に結合されたカルボン酸の量を計算した。
【0140】
図1は、KOHの投入量によるpH変化を示すグラフで、
図1の1次変曲点と2次変曲点の間のKOH投入量で計算したカルボン酸の量が表面に存在する酸の量である。
【0141】
この時、下記表1ないし表2で、表面存在含量は陰イオン化合物の含量を意味する。前記陰イオン化合物の含量は、硫黄酸素陰イオンは全て表面に存在すると仮定して(pHが低い時も硫黄酸素陰イオンは低いpKaで解離されたため、表面に存在)、滴定法で計算した表面カルボン酸/全体カルボン酸投入量から表面に存在する陰イオンの含量を計算した。
【0142】
(ラテックスのセラムに残っているカルボン酸量の分析)
共重合体粒子の表面に存在せずにラテックスセラムに存在する陰イオンの含量を定量するために、代表的な陰イオンであるカルボン酸を定量した。
【0143】
試料1gにアセトニトリル4mlを入れて沈澱させた後、遠心分離して上青液を取ってGC/FIDで分析して、共重合体に結合されずに未反応状態でセラムに残っているカルボン酸の量を定量した。
【0144】
図2は、GC/FID(ガスクロマトグラフィー(GC)/炎イオン化検出器(FID))で分析スペクトルで、セラムに残っているカルボン酸の量を測定することができる。
【0145】
2.ディップ成形品の物性測定
前記実施例及び比較例で製造されたディップ成形品の物性を下記のように測定し、その結果を下記表1ないし表2に示す。
【0146】
(厚さ)
デジタル厚さ測定機を利用して厚さを測定した。
【0147】
(引張強度、伸び率、モジュラス)
ディップ成形品からASTM D−412に準じて、ダンベル形象の試験片を製作した。その後、この試験片を伸び速度500mm/分で引っ張って、伸び率が300%である時のモジュラス(応力)、破断時の引張強度及び伸び率を測定した。
【0148】
(酸溶液で抽出される金属陽イオンの量分析)
ディップ成形品を100cm
2の大きさで切って、4%のアセット酸溶液200gに入れ、60℃で30分間抽出した。湧出液をICP−OES(誘導結合プラズマ発光分析機、inductively coupled plasma optical emission spectrometry)で分析して、溶液に存在する金属陽イオンの量を定量した。
【0149】
(耐久性の測定方法)
手袋模様のディップ成形品を製作し、手にはめて何時間破れないかを測定した。
【0150】
(耐化学性の測定方法)
ディップ成形品から耐化学性を測定することは、EN374−3:2003の規定に準じて行う。EN374−3:2003に準じて試験片を製作し、この試験片を粒径が51mmで、深さが35mmの実験容器に盛られている、測定しようとする化学物質のヘキサン(hexane)と触れ合うようにして、ヘキサンが1μg/cm
2/minの速度で試験片を透過するためにかかる時間を測定することで、耐化学性を測定することができる。
【0153】
前記表1を参照すれば、実施例1ないし実施例6のディップ成形品の場合、表面カルボン酸の含量が5.25ないし6.02重量%の高い含量を持つので、耐久性及び耐化学性に優れて、陰イオン性化合物と多価陽イオン性化合物のイオン結合による架橋化を行っても、望む水準の物性を達成できることが分かる。また、酸性溶液内で抽出されたアルミニウムの陽イオンが0.1ppm未満と示され、前記アルミニウム陽イオンが強くイオン結合を維持していることが分かる。
【0154】
前記表2を参照すれば、比較例1の場合、陰イオン性化合物をさらに分割投与をしない場合、表面に存在するカルボン酸の含量が約50%水準に低くなっているし、これは耐久性及び耐化学性が大きく低下する結果を引き起こした。
【0155】
ここで、比較例2のように、重合転化率を60%水準で分割投与した場合、カルボン酸の含量がやや増加し、これによって耐久性及び耐化学性が少し増加した。
【0156】
また、比較例3及び4のように、架橋剤として酸化亜鉛を使用した場合、物性が実施例1ないし4と一部類似であったが、前記酸化亜鉛から湧出される亜鉛陽イオンが100ppmまで増加するなど、深刻な問題が発生した。