(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記3価のカチオン鉄(Fe)及び2価のカチオン金属(A)は、独立して、硝酸塩(nitrate)、アンモニウム塩(ammonium salt)、硫酸塩(sulfate)及び塩化物(chloride)からなる群から選択された1種以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の酸化的脱水素化反応用触媒の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本記載の酸化的脱水素化反応用触媒の製造方法を詳細に説明する。
【0015】
本発明者らは、共沈法を用いてフェライト系触媒を合成する場合、酸化的脱水素化反応の活性に影響を及ぼす非活性の
Fe2O3結晶構造が観察されることを確認し、非活性の
Fe2O3結晶構造が一定レベル以上存在する状態でも反応活性を増加させることができる方案、及び非活性の結晶構造自体を減少させることができる方案を模索し、触媒の合成時に特定の時点で共沈溶液に窒素(
N2)ガス又はエアー(air)を供給する工程を行い、選択的に、共沈ステップで共沈槽の下部を介して金属前駆体水溶液を供給する場合、フェライト系触媒前駆体に該当する共沈物の分散の程度が極大化され、フェライト系触媒の結晶構造に有利な影響を及ぼすことによって、前述した問題点が解消されることを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0016】
本記載の酸化的脱水素化反応用触媒の製造方法は、一例として、3価のカチオン鉄(Fe)前駆体及び2価のカチオン金属(A)前駆体を水に添加して金属前駆体水溶液を製造するステップ;前記金属前駆体水溶液と塩基性水溶液を、pHが6以上に調節された水溶液又は水が準備された共沈槽に添加して、鉄とA金属を共沈させるステップ;及び前記共沈された共沈物を焼成するステップ;を含み、前記共沈時;共沈後;または共沈時から共沈後まで;非活性ガス又はエアー(air)を前記共沈槽に供給する工程を行うことを特徴とする。
【0017】
前記共沈槽に非活性ガス又はエアーを供給する工程は、一例として、インペラなどのような攪拌手段を用いて共沈槽内の溶液を攪拌しながら、共沈槽内に非活性ガス又はエアーを供給する工程であるか、または共沈槽の下部に配管を連結し、該配管を介して非活性ガス又はエアーを共沈槽内に供給する工程であるか、または管、一例として、テフロン(登録商標)管を共沈槽内に設置し、該管を介して溶液に非活性ガス又はエアー(air)を供給する工程であってもよい。また、前記配管及び管は、内径が、一例として、1/8″〜1/2″、または1/6″〜1/2″であってもよく、その位置は、共沈槽の下部、すなわち、共沈槽内の溶液の水面の下であれば、特に制限されないが、一例として、共沈槽の下端、具体的には、共沈槽の底面から水面までの距離の1/2以内である地点に位置することができる。
【0018】
以下、前記酸化的脱水素化反応用触媒の製造方法を各ステップ別に詳述する。
【0019】
前記金属前駆体水溶液の製造ステップにおいて、3価のカチオン鉄(Fe)前駆体及び2価のカチオン金属(A)前駆体は、一例として、硝酸塩(nitrate)、アンモニウム塩(ammonium salt)、硫酸塩(sulfate)及び塩化物(chloride)からなる群から独立に選択された1種以上であってもよい。好ましくは、安価であり、購入が容易であることから、大量生産のための触媒の製造コストを考慮して、硝酸塩や塩化物から選択することができる。
【0020】
前記2価のカチオン金属(A)は、一例として、銅(Cu)、ラジウム(Ra)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)及びコバルト(Co)からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ブテンの酸化的脱水素化反応に特に高い活性を示す亜鉛(Zn)やマンガン(Mn)から選択することができ、ブタジエンの収率や選択度の面で、亜鉛(Zn)を含むことが最も好ましい。
【0021】
前記3価のカチオン鉄(Fe)前駆体と2価のカチオン金属(A)前駆体は、水に混合されて水溶液として製造され、このように、金属前駆体が水に溶解されて液状で存在する場合、鉄と2価のカチオン金属のイオン交換が容易であるので、目的とする共沈物を容易に製造することができる。
【0022】
前記水は、一例として、蒸留水であってもよい。
【0023】
一般的に金属前駆体水溶液中の3価のカチオン鉄(Fe)前駆体と2価のカチオン金属(A)前駆体の適切な混合比率は、前記2価のカチオン金属(A)前駆体1モルに対して、前記3価のカチオン鉄(Fe)前駆体が1.5〜10モル、1.5〜4モル、または1.5〜2.5モルであるものであり、この範囲内で、酸化的脱水素化反応に活性である結晶構造の形成が容易であるので、触媒活性に優れるという効果がある。
【0024】
また、前記金属前駆体水溶液は、pHが、一例として、0〜4、1〜3、または1〜2であってもよく、この範囲内で、目的とする活性成分が安定に形成されるという効果がある。
【0025】
前記金属前駆体水溶液が準備された後は、鉄及びA金属の共沈のために、pHが6以上に調節された水溶液又は水が準備された共沈槽を設け、この共沈槽に前記金属前駆体水溶液を添加して鉄とA金属を共沈させる。
【0026】
前記共沈させるステップにおいて、pHが6以上に調節された水溶液は、一例として、水酸化ナトリウム水溶液及びアンモニア水から選択された1種以上であってもよく、前記金属前駆体水溶液を滴加する前に、共沈槽のpHを6以上、6〜10、または7〜8に予め調節する場合、金属前駆体水溶液の投入による初期のpHの変化幅を減少させ、均一な組成の触媒が安定に形成されるようにすることができる。
【0027】
本記載の触媒の製造方法は、一例として、前記共沈させるステップ中に非活性ガス又はエアー(air)を共沈槽に投入する工程を行うことができ、このような工程を行うことによって、酸素と金属前駆体が均一に結合できるようにし、ミキシング(mixing)効果が増大し、究極的には、酸化的脱水素化反応の活性を向上させる効果を提供することができる。一例として、本記載によって製造された触媒をブテンの酸化的脱水素化反応に適用する場合に、ブテンの転化率、ブタジエンの選択度、収率などを向上させ、副反応物質の生成は減少させる効果を提供する。また、相対的に低いホットスポット(hot spot)温度で優れた反応活性を示すという利点がある。
【0028】
本記載においてホットスポット(hot spot)は、反応器内に充填された触媒層において反応時に温度が最も高い部分を意味する。
【0029】
前記非活性ガス又はエアーの共沈槽への投入条件は、特に制限されないが、一例として、非活性気体又はエアーを、共沈槽内の溶液1L当たり0.1〜2L/min、または0.5〜1L/minで、1〜300分、10〜200分、30〜100分または40〜90分間供給することができ、この範囲内で、触媒の小さくかつ均一な粒度分布及び活性結晶構造に有利であるという利点がある。
【0030】
前記共沈させるステップにおいて、共沈溶液は、pHが、一例として7〜10、または7〜8に維持されることが好ましく、この範囲内で、触媒の活性や安定性に優れるという効果がある。そこで、共沈させるステップでは、pHを7〜10に維持するための目的で、塩基性水溶液を金属前駆体水溶液と同時に添加することが好ましい。
【0031】
一例として、前記共沈させるステップにおいて、共沈槽に前記金属前駆体水溶液と塩基性水溶液を共に点滴して鉄とA金属を共沈させることができ、前記塩基性水溶液は、一例として、水酸化ナトリウム水溶液及びアンモニア水から選択された1種以上であってもよい。
【0032】
本記載において点滴は、一例として、2種又はそれ以上の溶液を同じ地点又は容器などにドロッピング(dropping)することを意味し、前記「同じ地点」は、ドロッピングされる溶液が水面上で弾ける地点以内の範囲、または水面の下で完全に混ざらずにその性質を維持する地点以内の範囲を含む。
【0033】
他の一例として、前記共沈させるステップにおいて、金属前駆体水溶液は共沈槽の下部を介して供給し、塩基性水溶液は共沈槽にドロッピングして、鉄とA金属を共沈させることができる。このように、金属前駆体水溶液を、塩基性水溶液とは別途に共沈槽の内部に直接供給する場合、共沈槽に設けられた溶液中に金属前駆体が拡散する速度を増加させることによって、均一な結晶構造を形成させ、非活性である結晶構造が減少して、高い活性を示す触媒を提供することができる。
【0034】
本記載において、金属前駆体水溶液の共沈槽の下部投入方法は、金属前駆体水溶液が共沈槽内の溶液の水面を通過せず、水面の下に直接投入される方法であれば、特に制限されず、一例として、共沈槽の下部に配管を連結し、該配管を介して金属前駆体水溶液を供給するか、または共沈槽内の溶液に一端が浸かるように設置された管を介して金属前駆体水溶液を供給することができ、この場合に、共沈槽の下部を介して金属前駆体水溶液を供給することによって、溶液中に金属前駆体が拡散する速度を増加させることができる。
【0035】
前記共沈物は、共沈槽内でスラリー状態で存在し、このようなスラリー粒子は、一例として、メジアン径(median size)が7μm以下または1〜7μmであり、粒子のモード径(mode size)が7μm以下または1〜7μmであってもよく、この範囲内で、既存の亜鉛フェライト触媒に比べて高い収率のブタジエンを確保するという効果がある。
【0036】
本記載において、スラリー粒子のメジアン径及びモード径は、Horiba社のLaser Particle Size Analyzer−960で測定し、このときに必要な屈折率は、スラリー(slurry)状態で最も多く存在するFeを基準として設定する。
【0037】
前記共沈が完了した共沈溶液から収得された共沈物を焼成するに先立ち、共沈溶液を攪拌;熟成;または攪拌及び熟成;させるステップをさらに含むことができ、この場合に、十分な共沈が行われるようにする効果を提供する。
【0038】
本記載の触媒の製造方法は、一例として、前記共沈が完了した後、共沈溶液を攪拌する中に非活性ガス又はエアー(air)を供給する工程を行うことができ、このように製造された触媒は、酸化的脱水素化反応の活性がさらに優れるという効果があり、一例として、ブテンの酸化的脱水素化反応に適用する場合に、ブテンの転化率、ブタジエンの選択度などを向上させ、副反応物質の生成は減少させる効果を提供する。また、相対的に低いホットスポット(hot spot)温度で優れた反応活性を示すという利点がある。
【0039】
他の一例として、本記載の触媒の製造方法は、前記金属前駆体水溶液と塩基性水溶液を添加して共沈させるステップ中に、非活性ガス又はエアー(air)を共沈槽内に供給する工程を行い、共沈が完了した後、共沈溶液を攪拌しながら、追加的に非活性ガス又はエアー(air)を共沈槽内に供給する工程を行うことができ、この場合に、触媒の酸化的脱水素化反応の活性がさらに向上する効果を提供することができる。
【0040】
更に他の一例として、本記載の触媒の製造方法は、前記金属前駆体水溶液と塩基性水溶液を共沈槽内に添加して共沈させるステップから、前記共沈が完了した後に共沈溶液を攪拌するステップにわたって連続的に、すなわち、共沈時から共沈後まで非活性ガス又はエアー(air)を共沈槽内に供給する工程を行うことができ、この場合に、触媒の酸化的脱水素化反応の活性が向上するという効果がある。
【0041】
前記非活性気体は、一例として、窒素(
N2)であってもよい。
【0042】
前記攪拌及び熟成は、一例として、それぞれ30分〜3時間、または30分〜2時間行うことができるが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0043】
前記共沈溶液を乾燥;濾過;または乾燥及び濾過;させて共沈物を収得することができ、これを焼成することで、A
Fe2O4結晶構造を含む触媒を収得することができる。
【0044】
前記乾燥及び濾過は、それぞれ当業界で通常行われている方法であれば特に制限されず、前記濾過は、一例として、減圧濾過であってもよく、必要に応じて、濾過後に洗浄する工程をさらに含むことができる。
【0045】
前記乾燥は、通常の乾燥機を使用して行うことができ、一例として、60〜100℃、70〜100℃、あるいは80〜100℃で12〜20時間、14〜20時間、あるいは14〜18時間乾燥することができる。
【0046】
前記焼成は、通常の焼成炉を使用することができ、一例として、400〜800℃、500〜800℃、あるいは550〜750℃で1〜10時間、3〜8時間、あるいは5〜7時間行うことができるが、これに制限されるものではないことを明示する。
【0047】
前記焼成を通じて収得される触媒はA
Fe2O4結晶構造を含むことができ、具体的な一例として、A
Fe2O4結晶構造及びα−
Fe2O3結晶構造を含む混合相であり得る。
【0048】
本発明の一実施例によって収得される触媒は、一例として、AFe2O4結晶構造93.7重量%以上、94.0重量%以上、94.5重量%以上、94.8重量%以上、または94.8〜96.0重量%;及びα−Fe2O3結晶構造6.3重量%以下、6.0重量%以下、5.5重量%以下、5.2重量%以下、または4.0〜5.2重量%を含むことができる。
【0049】
本記載において、A
Fe2O4とα−
Fe2O3の重量比は、XRD回折分析のA
Fe2O4のピーク(2theta:29.5〜30.5°、34.5〜35.5°、42〜43°、52.5〜53.5°、56.5〜57.5°、62〜63°)及びα−
Fe2O3のピーク(2theta:33〜34°)の大きさから測定することができる。
【0050】
また、XRD回折分析において、それぞれのピークが存在する面による回折ピークとして、A
Fe2O4は、(220)、(311)、(222)、(400)、(422)、(511)、(440)の位置に存在し、α−
Fe2O3は(104)の位置に存在する。
【0051】
より具体的な一例として、本記載の触媒の製造方法は、1)3価のカチオン鉄(Fe)前駆体及び2価のカチオン金属(A)前駆体を水に添加して金属前駆体水溶液を製造するステップ;2)前記金属前駆体水溶液を、pHが6〜10に調節された水溶液又は水が準備された共沈槽に塩基性水溶液と共に点滴して、鉄とA金属を共沈させるステップ;及び3)前記共沈が完了した共沈溶液を攪拌;または攪拌及び熟成;させた後、共沈された共沈物を焼成するステップ;を含み、前記共沈させるステップ及び前記攪拌時に窒素又はエアーを共沈槽内に投入する工程を行うことを特徴とすることができる。
【0052】
具体的な他の一例として、本記載の触媒の製造方法は、1)3価のカチオン鉄(Fe)前駆体及び2価のカチオン金属(A)前駆体を水に添加して金属前駆体水溶液を製造するステップ;2)前記金属前駆体水溶液を、pHが6〜10に調節された水溶液又は水が準備された共沈槽の下部を介して供給し、塩基性水溶液は前記共沈槽にドロッピングして、鉄とA金属を共沈させるステップ;及び3)前記共沈が完了した共沈溶液を攪拌;または攪拌及び熟成;させた後、共沈された共沈物を焼成するステップ;を含み、前記共沈させるステップ及び前記攪拌時に窒素又はエアーを共沈槽内に供給する工程を行うことを特徴とすることができる。
【0053】
また、前記本記載の製造方法による触媒は、一例として、下記の数式1を満たすことを特徴とすることができる。
[数式1]
0≦T2/T1≦0.80
(前記数式1において、T2は、金属前駆体水溶液を共沈槽の下部に供給し、非活性ガス又はエアーの投入工程を含む本記載の触媒の製造方法によって製造された触媒の総100重量%中に含まれたα−
Fe2O3結晶構造の含量であり、T1は、前記触媒の製造方法において、金属前駆体水溶液を共沈槽の下部に供給する代わりに、塩基性水溶液と共に点滴して共沈させ、非活性ガス又はエアーの投入工程を省略して製造された触媒100重量%中に含まれたα−
Fe2O3結晶構造の含量であり、α−
Fe2O3結晶構造の含量は、触媒のXRD回折分析のα−
Fe2O3結晶構造のピーク(2theta:33〜34°)の大きさから測定される。)
【0054】
より好ましくは、前記T2/T1は、0〜0.75、0〜0.70、または0〜0.68であってもよく、この範囲内で、触媒の活性に優れ、これを酸化的脱水素化反応に適用する際に、ブタジエンの収率や選択度などが改善されて、高品質のブタジエンを生産性高く提供し、低いホットスポット(hot spot)温度で高い活性を示すという効果がある。
【0055】
本記載によって製造された酸化的脱水素化反応用触媒は、ブテンの酸化的脱水素化反応からブタジエンを形成する反応に用いることができ、以下、本記載の酸化的脱水素化方法を説明する。
【0056】
本記載の酸化的脱水素化方法は、一例として、前記製造方法による酸化的脱水素化反応用触媒が充填された反応器に、ノルマルブテンを含有するC4混合物及び酸素を含む反応物を通過させながら酸化的脱水素化反応を行うステップを含むことを特徴とすることができる。
【0057】
前記酸化的脱水素化方法は、一例として、ブタジエンの製造方法であってもよい。
【0058】
具体的な一例として、本記載のブタジエンの製造方法は、i)酸化的脱水素化反応用触媒を反応器に充填させるステップ;及びii)ノルマルブテンを含有するC4混合物及び酸素を含む反応物を、前記触媒が充填された反応器の触媒層に連続して通過させながら酸化的脱水素化反応を行うステップ;を含むことができる。
【0059】
前記C4混合物は、一例として、2−ブテン(trans−2−Butene、cis−2−Butene)、及び1−ブテン(1−Butene)から選択された1種以上のノルマルブテンを含み、選択的に、ノルマルブタンやC4ラフィネート−3をさらに含むことができる。
【0060】
前記反応物は、空気、窒素、スチーム及び二酸化炭素から選択された1種以上をさらに含むことができる。
【0061】
具体的な一例として、前記反応物は、C4混合物、酸素、スチーム及び窒素を、1:0.01〜1.5:1〜15:1〜10、または1:0.5〜1.2:5〜15:1〜10のモル比で含むことができ、この範囲内で、反応熱の制御が容易であり、ブタジエンの収率に優れるという効果がある。
【0062】
前記酸化的脱水素化反応は、一例として、250〜430℃、300〜425℃、または350〜425℃の反応温度で行うことができ、この範囲内で、エネルギー費用を大きく増加させないと共に、反応効率に優れるので、ブタジエンを生産性高く提供することができながらも、触媒活性及び安定性が高く維持され得る。
【0063】
前記酸化的脱水素化反応は、一例として、ノルマルブテンを基準として、50〜2000
h−1、50〜1500
h−1、または50〜1000
h−1の空間速度(GHSV:Gas Hourly Space Velocity)で行うことができ、この範囲内で、反応効率に優れるので、転化率、選択度、収率などに優れるという効果がある。
【0064】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0066】
実施例1
塩化亜鉛(
ZnCl2)0.122モル及び塩化第二鉄(
FeCl36H2O)0.243モルを水12.778モルに溶解させて金属前駆体水溶液を製造した。このとき、前記金属前駆体水溶液中に含まれた金属成分のモル比は、Fe:Zn=2:1であった。
【0067】
次に、蒸留水が準備された共沈槽に、前記金属前駆体水溶液を濃度9〜10重量%のアンモニア水と共に点滴して、鉄と亜鉛を共沈させ、窒素を供給する工程を行った。このとき、窒素は、前記蒸留水1L当たり1L/minの量で80〜90分間注入された。共沈が完了した後、十分な共沈が行われるように、共沈溶液を1時間攪拌する工程を行い、このとき、窒素は、前記蒸留水1L当たり0.5L/minの量で注入された。その後、攪拌を止めた後、沈殿物が全て沈殿するように常温で1時間放置して共沈物を熟成させた。
【0068】
攪拌及び熟成が完了した共沈溶液を、減圧濾過器を使用して減圧濾過して共沈物を収得し、これを洗浄した後、90℃で24時間乾燥させた後、乾燥された共沈物を焼成炉に入れ、650℃で5時間熱処理して、亜鉛フェライト触媒を製造した。
【0069】
比較例1
前記実施例1において、共沈槽内に窒素を供給する工程を全て省略した以外は、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0070】
[試験例]
前記実施例1及び比較例1で製造された亜鉛フェライト触媒を使用して、次のような試験分析を行った。
【0071】
試験例1:XRD分析
前記実施例1及び比較例1で製造された触媒の結晶構造及び比率を確認するためにXRD分析を行い、XRD分析結果を、
図1及び下記の表1に示す。
【表1】
【0072】
図1及び表1を参照すると、実施例1及び比較例1で製造された亜鉛フェライト触媒は、Zn
Fe2O4結晶構造とα−
Fe2O3結晶構造との混合相であることを確認することができ、実施例1による触媒のα−
Fe2O3結晶構造の比率が非常に低くなったことを確認した。これから、共沈槽内への窒素ガスの供給は、フェライト系触媒の結晶構造に有利な影響を及ぼすことがわかった。
【0073】
試験例2:酸化的脱水素化反応
前記実施例1及び比較例1で合成された亜鉛フェライト触媒を使用して、下記の酸化的脱水素化反応を経てブタジエンを生成し、その結果を、下記の表2にそれぞれ実施例1a〜1c及び比較例1a〜1dとして示した。
【0074】
反応器として直径1.8cmの金属管型反応器に、実施例1あるいは比較例1で製造された触媒を触媒層体積30ccに固定し、反応物として、シス−2−ブテン40重量%とトランス−2−ブテン60重量%との2−ブテン混合物及び酸素を使用し、窒素とスチームを流入させた。前記反応物の比は、酸素/ブテン1、スチーム/ブテン8及び窒素/ブテン1のモル比でセットし、スチームは、水を340℃の気化器で気化させて反応物と共に反応器に流入させた。
【0075】
ブテン混合物の量は、液体用質量流速調節器を用いて0.625cc/minに制御し、酸素及び窒素は、気体用質量流速調節器を用いて制御し、スチームの量は、液体ポンプを用いて注入速度を制御した。前記反応器の気体空間速度(GHSV、gas hourly space velocity)は66
h−1に設定し、常圧(圧力ゲージ0)で、下記の表2に記載された温度条件下で反応させた。
【0076】
反応後、生成物をガスクロマトグラフィー(GC)で分析し、混合物中の各ブテンの転化率(BE_Conv.)、1,3−ブタジエンの選択度(S_BD)、1,3−ブタジエンの収率(Y)、COxの選択度(S_COx)、ヘビー(heavy)成分の選択度(S_heavy)及び
O2の転化率(
O2_Conv.)を、下記の数式2〜4によって計算し、ホットスポット温度は、熱電対(Thermo−Couple;TC)を移送装置に連結した後、反応器の上端から下端まで等速で移動させながら走査(scan)して測定した。
[数式2]
転化率(%)=(反応したブテン又は酸素のモル数/供給されたブテン又は酸素のモル数)×100
[数式3]
選択度(%)=(生成された1,3−ブタジエン又はCOx又はヘビー成分のモル数/反応したブテンのモル数)×100
[数式4]
ブタジエンの収率(%)=(生成された1,3−ブタジエンのモル数/供給されたブテンのモル数)×100
【表2】
【0077】
前記表2を参照すると、実施例1及び比較例1はいずれも、酸素を多く消耗する条件で最も高い活性を示し、特定の時点で窒素供給工程を行って合成された実施例1の触媒は、そうでない比較例1の触媒と比較して、ブテンの転化率とブタジエンの選択度及び収率が増加し、副反応物質であるCOxの選択度が減少することが確認できた。また、実施例1の触媒は、酸化的脱水素化反応時に、比較例1の触媒と比較して低いホットスポット温度で優れた反応活性を示すことを確認した。すなわち、亜鉛フェライト触媒の合成時に行った窒素投入工程は、非活性であるα−
Fe2O3結晶構造の減少及び反応活性の増大の両方に寄与することがわかった。
【0078】
実施例2
前記実施例1と同じ条件で金属前駆体水溶液を製造し、これを共沈槽の下部を介して供給し、アンモニア水はドロッピングして鉄と亜鉛を共沈させた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0079】
実施例3
前記実施例2において、窒素(
N2)の代わりにエアー(air)を供給した以外は、実施例2と同様の方法で行った。
【0080】
試験例3:XRD分析
前記実施例1〜3で製造された触媒の結晶構造及びその比率を確認するためにXRD分析を行い、XRD分析結果を、前記比較例1のXRD分析結果と共に
図2及び下記の表3に示す。
【表3】
【0081】
図2及び表3を参照すると、実施例2及び3で製造された亜鉛フェライト触媒は、
ZnFe2O4結晶構造とα−
Fe2O3結晶構造との混合相であることを確認でき、金属前駆体水溶液を共沈槽の下部を介して供給し、窒素又は酸素を共沈槽内に供給する工程を含んで製造された触媒(実施例2又は3)は、そうでない比較例1の触媒と比較して、非活性結晶構造であるα−
Fe2O3結晶構造が減少することが確認できた。すなわち、共沈法を通じた亜鉛フェライト触媒の合成時に、金属前駆体水溶液を共沈槽の下部を介して供給し、窒素ガス又はエアーの供給工程を行う場合、亜鉛フェライト触媒の結晶構造に有利な影響を与えることがわかった。
【0082】
試験例4:粒度分析
前記実施例1〜3及び比較例1で製造されたフェライト系触媒前駆体スラリーの粒度分析の結果を、下記の表4及び
図3に示す。ここで、スラリーの粒度分析は、Horiba社のLaser Particle Size Analyzer−960で測定し、このときに必要な屈折率は、スラリーでの主成分であるFeを基準として設定した。
【表4】
*Median size:中間に分布する粒子径 *Mode size:最も多く分布する粒子径
【0083】
前記表4及び
図3に示したように、実施例1〜3は、比較例1と比較して、スラリー粒子が相対的に小さくかつ均一な粒度を有することが確認でき、また、実施例2及び3は、実施例1と比較して、スラリー粒子が相対的に小さくかつ均一な粒度を有することが確認できた。このような結果から、窒素の投入は、触媒前駆体が小さくかつ均一な粒度を有するのに効果的であり、また、空気の投入及び金属前駆体水溶液の投入位置の変更は、さらに小さくかつ均一な粒度を有するのに効果的であることが確認できた。
【0084】
試験例5:酸化的脱水素化反応
前記と同じ方法及び条件で実施例2及び3によって合成された亜鉛フェライト触媒を使用して、酸化的脱水素化反応を経てブタジエンを生成し、その結果を、下記の表5にそれぞれ実施例2a〜2d及び実施例3a〜3cとして示し、比較のために比較例1a〜1dを再び記載した。
【表5】
【0085】
前記表5を参照すると、実施例2、3及び比較例1による触媒を使用した酸化的脱水素化反応はいずれも、酸素を多く消耗する条件で高い活性を示すことを確認することができ、金属前駆体水溶液を共沈槽の下部を介して供給し、特定の時点で窒素又はエアーを供給して製造された亜鉛フェライト触媒(実施例2及び3)は、そうでない比較例1の触媒を使用して反応させる場合と比較して、ブテンの転化率とブタジエンの選択度及び収率が高い反面、副反応物質であるCOxの選択度は低いことを確認することができる。また、本発明に係る実施例2及び3の亜鉛フェライト触媒を使用する場合には、比較例1と比較して低いホットスポット温度でも反応活性に優れることが確認できた。
【0086】
すなわち、共沈法を通じた亜鉛フェライト触媒の合成時に、金属前駆体水溶液を共沈槽の下部を介して供給し、特定の時点で行った窒素又はエアーの投入工程は、亜鉛フェライト触媒の非活性結晶構造を減少させることは勿論、触媒の反応活性の増大にも寄与することがわかった。