【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位と、下記化学式1で表される繰り返し単位とを含む第1液晶配向剤用重合体、および下記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体を含む液晶配向剤組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階と、
前記塗膜を乾燥する段階と、
前記乾燥段階直後の塗膜に光を照射して配向処理する段階と、
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階と、を含む液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記液晶配向膜の製造方法により製造された液晶配向膜を提供する。
【0014】
なお、本発明は、前記液晶配向膜を含む液晶表示素子を提供する。
【0015】
以下、発明の具体的な実現例による液晶配向剤組成物、液晶配向膜の製造方法、液晶配向膜および液晶表示素子に関してより詳細に説明する。
【0016】
発明の一実現例によれば、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位と、下記化学式1で表される繰り返し単位とを含む第1液晶配向剤用重合体、および下記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体を含む液晶配向剤組成物が提供できる:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
前記化学式1〜4において、
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜10のアルキル基でかつ、R
1およびR
2がすべて水素でなく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜10のアルキル基であり、
X
1は、下記化学式5で表される4価の有機基であり、
[化学式5]
【化5】
前記R
5〜R
8は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、
X
2〜X
4は、それぞれ独立に、炭素数4〜20の炭化水素に由来する4価の有機基であるか、あるいは前記4価の有機基のうち1つ以上のHがハロゲンに置換されたり、または1つ以上の−CH
2−が酸素または硫黄原子が直接連結されないように−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO
2−、または−CONH−に代替された4価の有機基であり、
Y
1〜Y
4は、それぞれ独立に、2価の有機基である。
【0017】
既存のポリイミドを液晶配向膜として用いる場合、溶解性に優れたポリイミド前駆体、ポリアミック酸、またはポリアミック酸エステルを塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、高温の熱処理工程を経てポリイミドに変換させ、これに光照射を実行して配向処理をした。しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射をして十分な液晶配向性を得るためには多くの光照射エネルギーが必要になるだけでなく、光照射後の配向安定性を確保するために追加の熱処理工程も経るようになる。このような多くの光照射エネルギーと追加の高温熱処理工程は、工程費用と、工程時間の側面から非常に不利であるので、実際の大量生産工程に適用するには限界があった。
【0018】
そこで、本発明者らは、実験を通して、前記化学式1で表される繰り返し単位を必須に含み、化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位を追加的に含む第1液晶配向剤用重合体と、前記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体とを混合して用いると、前記第1重合体がすでにイミド化されたイミド繰り返し単位を一定の含有量含むため、塗膜形成後、高温の熱処理工程なしに直ちに光を照射して異方性を生成させ、この後、熱処理を進行させて配向膜を完成できることから、光照射エネルギーを大きく低減できるだけでなく、1回の熱処理工程を含む単純な工程でも配向性と安定性に優れるだけでなく、電圧維持保全率と電気的特性にも優れた液晶配向膜を製造できることを確認して、発明を完成した。
【0019】
本明細書において、特別な制限がない限り、以下の用語は下記のように定義される。
【0020】
炭素数4〜20の炭化水素は、炭素数4〜20のアルカン(alkane)、炭素数4〜20のアルケン(alkene)、炭素数4〜20のアルキン(alkyne)、炭素数4〜20のシクロアルカン(cycloalkane)、炭素数4〜20のシクロアルケン(cycloalkene)、炭素数6〜20のアレーン(arene)であるか、あるいはこれらのうち1種以上の環状炭化水素が2以上の原子を共有する縮合環(fused ring)であるか、あるいはこれらのうち1種以上の炭化水素が化学的に結合された炭化水素であってもよい。具体的には、炭素数4〜20の炭化水素としては、n−ブタン、シクロブタン、1−メチルシクロブタン、1,3−ジメチルシクロブタン、1,2,3,4−テトラメチルシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロヘキセン、1−メチル−3−エチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシル、ベンゼン、ビフェニル、ジフェニルメタン、2,2−ジフェニルプロパン、1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、または1,6−ジフェニルヘキサンなどを例示することができる。
【0021】
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル基であってもよい。具体的には、炭素数1〜10のアルキル基は、炭素数1〜10の直鎖アルキル基;炭素数1〜5の直鎖アルキル基;炭素数3〜10の分枝鎖もしくは環状アルキル基;または炭素数3〜6の分枝鎖もしくは環状アルキル基であってもよい。より具体的には、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、またはシクロヘキシル基などを例示することができる。
【0022】
炭素数1〜10のアルコキシ基は、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルコキシ基であってもよい。具体的には、炭素数1〜10のアルコキシ基は、炭素数1〜10の直鎖アルコキシ基;炭素数1〜5の直鎖アルコキシ基;炭素数3〜10の分枝鎖もしくは環状アルコキシ基;または炭素数3〜6の分枝鎖もしくは環状アルコキシ基であってもよい。より具体的には、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、neo−ペントキシ基、またはシクロヘキトキシ基などを例示することができる。
【0023】
炭素数1〜10のフルオロアルキル基は、前記炭素数1〜10のアルキル基の1つ以上の水素がフッ素に置換されたものであってもよく、炭素数1〜10のフルオロアルコキシ基は、前記炭素数1〜10のアルコキシ基の1つ以上の水素がフッ素に置換されたものであってもよい。
【0024】
炭素数2〜10のアルケニル基は、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルケニル基であってもよい。具体的には、炭素数2〜10のアルケニル基は、炭素数2〜10の直鎖アルケニル基、炭素数2〜5の直鎖アルケニル基、炭素数3〜10の分枝鎖アルケニル基、炭素数3〜6の分枝鎖アルケニル基、炭素数5〜10の環状アルケニル基、または炭素数6〜8の環状アルケニル基であってもよい。より具体的には、炭素数2〜10のアルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、またはシクロヘキセニル基などを例示することができる。
【0025】
ハロゲン(halogen)は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)であってもよい。
【0026】
任意の化合物に由来する多価有機基(multivalent organic group)は、任意の化合物に結合された複数の水素原子が除去された形態の残基を意味する。一例として、シクロブタンに由来する4価の有機基は、シクロブタンに結合された任意の水素原子4つが除去された形態の残基を意味する。
【0027】
本明細書において、化学式中、
【化6】
は、当該部位の水素が除去された形態の残基を意味する。例えば、
【化7】
は、シクロブタンの1、2、3および4番目の炭素に結合された水素原子4つが除去された形態の残基、つまり、シクロブタンに由来する4価の有機基のうちいずれか1つを意味する。
【0028】
より具体的には、前記化学式1〜4において、Y
1〜Y
4は、それぞれ独立に、下記化学式6で表される2価の有機基であってもよい:
[化学式6]
【化8】
前記化学式6において、
R
9およびR
10は、それぞれ独立に、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2〜3のアルケニル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のフルオロアルキル基、または炭素数1〜3のフルオロアルコキシ基であり、
pおよびqは、それぞれ独立に、0〜4の間の整数であり、
L
1は、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)
z−、−O(CH
2)
zO−、−O(CH
2)
z−、−NH−、−NH(CH
2)
z−NH−、−NH(CH
2)
zO−、−OCH
2−C(CH
3)
2−CH
2O−、−COO−(CH
2)
z−OCO−、または−OCO−(CH
2)
z−COO−であり、
前記zは、1〜10の間の整数であり、
kおよびmは、それぞれ独立に、1〜3の間の整数であり、
nは、0〜3の間の整数である。
【0029】
前記化学式6において、R
9またはR
10で置換されていない炭素には水素が結合されており、pまたはqが2〜4の間の整数の時、複数のR
9またはR
10は、同一または互いに異なる置換基であってもよい。そして、前記化学式6において、nは、0〜3の間の整数、あるいは0または1の整数であってもよい。
【0030】
そして、前記化学式1〜4の繰り返し単位において、X
1は、前記化学式5で表される4価の有機基であり、X
2〜X
4は、それぞれ独立に、炭素数4〜20の炭化水素に由来する4価の有機基であるか、あるいは前記4価の有機基のうち1つ以上のHがハロゲンに置換されたり、または1つ以上の−CH
2−が酸素または硫黄原子が直接連結されないように−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO
2−、または−CONH−に代替された4価の有機基であってもよい。
【0031】
一例として、前記X
2〜X
4は、それぞれ独立に、下記化学式7に記載された4価の有機基であってもよい。
[化学式7]
【化9】
前記化学式7において、
R
5〜R
8は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、
L
2は、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CR
11R
12−、−CONH−、−COO−、−(CH
2)
z−、−O(CH
2)
zO−、−COO−(CH
2)
z−OCO−、フェニレン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか1つであり、
前記R
11およびR
12は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフルオロアルキル基であり、zは、1〜10の間の整数である。
【0032】
そして、前記一実現例の液晶配向膜の製造方法で用いられる第1液晶配向剤用重合体は、前記化学式1、化学式2および化学式3で表される繰り返し単位中において、イミド繰り返し単位である化学式1で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して10モル%〜74モル%、好ましくは20モル%〜60モル%含むことができる。
【0033】
上述のように、前記化学式1で表されるイミド繰り返し単位を特定の含有量含む第1液晶配向剤用重合体を用いると、前記重合体がすでにイミド化されたイミド繰り返し単位を一定の含有量含むため、高温の熱処理工程を省略し、直ちに光を照射しても配向性と安定性に優れ、電圧維持保全率と電気的特性にも優れた液晶配向膜を製造することができる。
【0034】
万一、化学式1で表される繰り返し単位が前記含有量範囲より少なく含まれると、十分な配向特性を示すことができず、配向安定性が低下することがあり、前記化学式1で表される繰り返し単位の含有量が前記範囲を超えると、溶解度が低くなってコーティング可能な安定した配向液を製造しにくい問題が現れることがある。これにより、前記化学式1で表される繰り返し単位を上述した含有量範囲で含むのが、保管安定性、電気的特性、配向特性および配向安定性がすべて優れている液晶配向剤用重合体を提供できて、好ましい。
【0035】
また、前記第1液晶配向剤用重合体は、化学式2で表される繰り返し単位または化学式3で表される繰り返し単位を目的の特性に応じて適切な含有量で含むことができる。
【0036】
具体的には、前記化学式2で表される繰り返し単位は、前記化学式1〜3で表される全繰り返し単位に対して0モル%〜40モル%、好ましくは0モル%〜30モル%含まれる。前記化学式2で表される繰り返し単位は、光照射後、高温熱処理工程中においてイミドに変換される比率が低いため、前記範囲を超える場合、全体的なイミド化率が不足して配向安定性が低下することがある。したがって、前記化学式2で表される繰り返し単位は、上述した範囲内で適切な溶解度を示して工程特性に優れていながらも、高いイミド化率を実現可能な液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0037】
そして、前記化学式3で表される繰り返し単位は、前記化学式1〜3で表される全繰り返し単位に対して0モル%〜95モル%、好ましくは10モル%〜90モル%含まれる。この範囲内で優れたコーティング性を示して工程特性に優れていながらも、高いイミド化率を実現可能な液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0038】
一方、前記一実現例の液晶配向膜の製造方法で使用される第2液晶配向剤用重合体は、部分イミド化された重合体の前記第1液晶配向剤用重合体と混合して液晶配向剤として用いることによって、第1液晶配向剤用重合体のみを用いる場合に比べて、電圧維持保全率(Voltage Holding Ratio)のような配向膜の電気的特性を大きく改善することができる。
【0039】
このような効果を奏するために、前記化学式4で表される繰り返し単位において、X
4は、芳香族構造に由来するものが、電圧維持保全率を改善する側面で好ましい。
【0040】
また、前記化学式4で表される繰り返し単位において、Y
4は、前記化学式6で表される2価の有機基であることが好ましく、この時、R
9およびR
10は、それぞれ独立に、炭素数3以下の短い官能基であるか、側鎖構造のR
9およびR
10を含まないもの(pおよびqが0)がさらに好ましい。
【0041】
そして、前記第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体は、約15:85〜85:15、好ましくは約20:80〜80:20の重量比で混合することができる。上述のように、前記第1液晶配向剤は、すでにイミド化されたイミド繰り返し単位を一定の含有量含むため、塗膜形成後、高温の熱処理工程なしに直ちに光を照射して異方性を生成させ、この後、熱処理を進行させて配向膜を完成できる特徴があり、第2液晶配向剤用重合体は、電圧維持保存率のような電気的特性を向上させる特徴がある。このような特徴を有する前記第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体を前記重量比範囲で混合して用いる場合、第1液晶配向剤用重合体が有する優れた光反応特性および液晶配向特性に第2液晶配向剤用重合体が有する優れた電気的特性を相互補完できるので、より優れた配向性と電気的特性を同時に有する液晶配向膜を製造することができる。
【0042】
発明の他の実現例によれば、前記一実現例の液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階と、
前記塗膜を乾燥する段階と、
前記乾燥段階直後の塗膜に光を照射して配向処理する段階と、
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階と、を含む液晶配向膜の製造方法が提供できる。
【0043】
前記液晶配向膜の製造方法は、まず、前記一実現例の化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位と、化学式1で表される繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体、および化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体を含む液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する。前記液晶配向剤組成物を基板に塗布する方法は特に制限されず、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法が利用可能である。
【0044】
そして、前記液晶配向剤組成物は、前記第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体を有機溶媒に溶解または分散させたものであってもよい。
【0045】
前記有機溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグリム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、混合して使用されてもよい。
【0046】
また、前記液晶配向剤組成物は、液晶配向剤用重合体および有機溶媒のほか、他の成分を追加的に含んでもよい。非制限的な例として、液晶配向剤組成物が塗布された時、膜厚さの均一性や表面平滑性を向上させたり、あるいは光配向膜と基板との密着性を向上させたり、あるいは光配向膜の誘電率や導電性を変化させたり、あるいは光配向膜の緻密性を増加させることができる添加剤が追加的に含まれる。このような添加剤としては、各種溶媒、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体、または架橋性化合物などが例示される。
【0047】
次に、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して形成された塗膜を乾燥する。前記塗膜を乾燥する段階は、塗膜の加熱、真空蒸発などの方法を利用することができ、50℃〜150℃、または60℃〜140℃で行われることが好ましい。
【0048】
次に、前記一実現例の液晶配向膜の製造方法は、前記乾燥段階直後の塗膜に光を照射して配向処理する。本明細書において、前記「乾燥段階直後の塗膜」は、乾燥段階の後、乾燥段階以上の温度で熱処理する段階の進行なしに直ちに光照射することを意味し、熱処理以外の別の段階は付加が可能である。
【0049】
より具体的には、従来ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤を用いて液晶配向膜を製造する場合には、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルのイミド化のために必須に高温の熱処理を進行させた後、光を照射する段階を含むが、上述した一実現例の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を製造する場合には、前記熱処理段階を含まず、直ちに光を照射して配向処理した後、配向処理された塗膜を熱処理して硬化することによって、小さい光照射エネルギーの下でも十分な配向性と安定性が強化された液晶配向膜を製造することができる。
【0050】
そして、前記配向処理する段階において、光照射は、150nm〜450nmの波長の偏光された紫外線を照射するものであってもよい。この時、露光の強さは、重合体の種類に応じて異なり、10mJ/cm
2〜10J/cm
2のエネルギー、好ましくは30mJ/cm
2〜2J/cm
2のエネルギーを照射することができる。
【0051】
前記紫外線としては、(1)石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムフリーガラスなどの透明基板の表面に誘電異方性の物質がコーティングされた基板を用いた偏光装置、(2)微細にアルミニウムまたは金属ワイヤが蒸着された偏光板、または(3)石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射する方法で偏光処理された紫外線の中から選択された偏光紫外線を照射して配向処理をする。この時、偏光された紫外線は、基板面に垂直に照射することもでき、特定の角で入射角を傾斜して照射することもできる。このような方法によって液晶分子の配向能力が塗膜に与えられる。
【0052】
次に、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階を含む。前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階は、従来ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤用重合体を用いて液晶配向膜を製造する方法でも光照射後に実施する段階で、液晶配向剤組成物を基板に塗布し、光を照射する前に、または光を照射しながら液晶配向剤組成物をイミド化させるために実施する熱処理段階とは区分される。
【0053】
この時、前記熱処理は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施され、150℃〜300℃、または200℃〜250℃で行われることが好ましい。
【0054】
そして、発明のさらに他の実現例によれば、前記一実現例の液晶配向膜の製造方法により製造された液晶配向膜が提供できる。
【0055】
上述のように、前記化学式1で表される繰り返し単位を必須に含み、化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体と、前記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体とを混合して用いると、配向性と安定性が強化された液晶配向膜を製造することができる。
【0056】
また、発明のさらに他の実現例によれば、上述した液晶配向膜を含む液晶表示素子が提供できる。
【0057】
前記液晶配向膜は、公知の方法によって液晶セルに導入され、前記液晶セルは同じく公知の方法によって液晶表示素子に導入される。前記液晶配向膜は、前記化学式1で表される繰り返し単位を必須に含む重合体と、化学式4で表される繰り返し単位を含む重合体とを混合して製造され、優れた諸物性と共に優れた安定性を実現することができる。これにより、高い信頼度を示すことができる液晶表示素子を提供する。