特許第6790336号(P6790336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6790336液晶配向剤組成物、液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790336
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】液晶配向剤組成物、液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20201116BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20201116BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   C08L79/08 A
   C08G73/10
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-519849(P2018-519849)
(86)(22)【出願日】2017年4月21日
(65)【公表番号】特表2018-538563(P2018-538563A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】KR2017004301
(87)【国際公開番号】WO2017196001
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2018年5月1日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0058934
(32)【優先日】2016年5月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ハン ア
(72)【発明者】
【氏名】クォン、スン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、ジュン ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヒョン ソク
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/136371(WO,A1)
【文献】 特開2015−135393(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047693(WO,A1)
【文献】 特開2015−135464(JP,A)
【文献】 特開2016−033638(JP,A)
【文献】 特開2010−250307(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/152174(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/147083(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
C08L 79/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記の化学式1で表される繰り返し単位と、下記の化学式2で表される繰り返し単位および下記の化学式3で表される繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体、および
下記の化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体を含み、
第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体は、20:80〜70:30の重量比で混合される、
液晶配向剤組成物:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
前記化学式1〜4において、
およびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜10のアルキル基でかつ、RおよびRがすべて水素でなく、
およびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜10のアルキル基であり、
は、下記の化学式5で表される4価の有機基であり、
[化学式5]
【化5】
前記R〜Rは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、
〜Xは、それぞれ独立に、炭素数4〜20の炭化水素に由来する4価の有機基であるか、あるいは前記4価の有機基のうち1つ以上のHがハロゲンに置換されたり、または1つ以上の−CH−が酸素または硫黄原子が直接連結されないように−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、または−CONH−に代替された4価の有機基であり、
〜Yは、それぞれ独立に、下記の化学式6で表される2価の有機基である。
[化学式6]
【化6】
前記化学式6において、
およびR10は、それぞれ独立に、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2〜3のアルケニル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のフルオロアルキル基、または炭素数1〜3のフルオロアルコキシ基であり、
pおよびqは、それぞれ独立に、0〜4の間の整数であり、
は、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH−、−C(CF−、−CONH−、−COO−、−(CH−、−O(CHO−、−O(CH−、−NH−、−NH(CH−NH−、−NH(CHO−、−OCH−C(CH−CHO−、−COO−(CH−OCO−、または−OCO−(CH−COO−であり、
前記zは、1〜10の間の整数であり、
kおよびmは、それぞれ独立に、1〜3の間の整数であり、
nは、0〜3の間の整数であり、
ただし、Y〜Yの、nは0である。
【請求項2】
前記X〜Xは、それぞれ独立に、下記の化学式7に記載された4価の有機基である、
請求項1に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式7]
【化7】
前記化学式7において、
〜Rは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、
は、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−CR1112−、−CONH−、−COO−、−(CH−、−O(CHO−、−COO−(CH−OCO−、フェニレン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか1つであり、
前記R11およびR12は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフルオロアルキル基であり、
zは、1〜10の間の整数である。
【請求項3】
前記第1液晶配向剤用重合体は、前記化学式1〜3で表される全繰り返し単位に対して、前記化学式1で表される繰り返し単位を10モル%〜74モル%含む、
請求項1または2に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階と、
前記塗膜を乾燥する段階と、
前記乾燥する段階の直後の塗膜に光を照射して配向処理する段階と、
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階と、
を含む
液晶配向膜の製造方法。
【請求項5】
前記液晶配向剤組成物は、第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体を有機溶媒に溶解または分散させたものである、
請求項4に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項6】
前記塗膜を乾燥する段階は、50℃〜150℃で行われる、
請求項4または5に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項7】
前記配向処理する段階において、光照射は、150nm〜450nmの波長の偏光された紫外線を照射するものである、
請求項4から6のいずれか1項に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項8】
前記塗膜を硬化する段階において、熱処理温度は、150℃〜300℃である、
請求項4から7のいずれか1項に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶配向剤組成物により製造された
液晶配向膜。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶配向膜を含む
液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
【0002】
本出願は、2016年5月13日付の韓国特許出願第10−2016−0058934号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0003】
本発明は、配向性と安定性に優れているだけでなく、電圧維持保全率のような電気的特性も強化された液晶配向剤組成物、液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0004】
液晶表示素子において、液晶配向膜は、液晶を一定の方向に配向させる役割を担っている。具体的には、液晶配向膜は、液晶分子の配列に方向子(director)の役割を果たし、電場(electric field)によって液晶が動いて画像を形成する時、適当な方向決めをする。一般に、液晶表示素子において、均一な輝度(brightness)と高い明暗比(contrast ratio)を得るためには、液晶を均一に配向することが必須である。
【0005】
液晶を配向させる通常の方法として、ガラスなどの基板にポリイミドのような高分子膜を塗布し、該表面をナイロンやポリエステルのような繊維を用いて一定の方向に擦るラビング(rubbing)方法が利用された。しかし、ラビング方法は、繊維質と高分子膜とが摩擦する時、微細な埃や静電気(electrical discharge:ESD)が生じ得て、液晶パネルの製造時に深刻な問題点を引き起こすことがある。
【0006】
前記ラビング方法の問題点を解決するために、最近は、摩擦でない光照射によって高分子膜に異方性(非等方性、anisotropy)を誘導し、これを利用して液晶を配列する光配向法が研究されている。
【0007】
前記光配向法に用いられる材料としては多様な材料が紹介されており、なかでも、液晶配向膜の良好な諸性能のためにポリイミドが主に使用されている。しかし、通常、ポリイミドは、溶媒溶解性が低下し、溶液状態でコーティングして配向膜を形成させる製造工程上に直ちに適用するには困難があった。したがって、溶解性に優れたポリアミック酸またはポリアミック酸エステルのような前駆体形態でコーティングした後、高温の熱処理工程を経てポリイミドを形成させ、これに光照射を実行して配向処理をする。しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射をして十分な液晶配向性を得るためには多くのエネルギーが必要になり、実際の生産性確保に困難が生じるだけでなく、光照射後の配向安定性を確保するために追加の熱処理工程も必要になる限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、配向性と安定性に優れているだけでなく、電圧維持保全率のような電気的特性も強化された液晶配向剤組成物を提供する。
【0009】
そして、本発明は、前記液晶配向剤組成物を用いた液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、前記液晶配向膜の製造方法により製造された液晶配向膜および前記液晶配向膜を含む液晶表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位と、下記化学式1で表される繰り返し単位とを含む第1液晶配向剤用重合体、および下記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体を含む液晶配向剤組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階と、
前記塗膜を乾燥する段階と、
前記乾燥段階直後の塗膜に光を照射して配向処理する段階と、
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階と、を含む液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記液晶配向膜の製造方法により製造された液晶配向膜を提供する。
【0014】
なお、本発明は、前記液晶配向膜を含む液晶表示素子を提供する。
【0015】
以下、発明の具体的な実現例による液晶配向剤組成物、液晶配向膜の製造方法、液晶配向膜および液晶表示素子に関してより詳細に説明する。
【0016】
発明の一実現例によれば、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位と、下記化学式1で表される繰り返し単位とを含む第1液晶配向剤用重合体、および下記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体を含む液晶配向剤組成物が提供できる:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
前記化学式1〜4において、
およびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜10のアルキル基でかつ、RおよびRがすべて水素でなく、
およびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜10のアルキル基であり、
は、下記化学式5で表される4価の有機基であり、
[化学式5]
【化5】
前記R〜Rは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、
〜Xは、それぞれ独立に、炭素数4〜20の炭化水素に由来する4価の有機基であるか、あるいは前記4価の有機基のうち1つ以上のHがハロゲンに置換されたり、または1つ以上の−CH−が酸素または硫黄原子が直接連結されないように−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、または−CONH−に代替された4価の有機基であり、
〜Yは、それぞれ独立に、2価の有機基である。
【0017】
既存のポリイミドを液晶配向膜として用いる場合、溶解性に優れたポリイミド前駆体、ポリアミック酸、またはポリアミック酸エステルを塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、高温の熱処理工程を経てポリイミドに変換させ、これに光照射を実行して配向処理をした。しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射をして十分な液晶配向性を得るためには多くの光照射エネルギーが必要になるだけでなく、光照射後の配向安定性を確保するために追加の熱処理工程も経るようになる。このような多くの光照射エネルギーと追加の高温熱処理工程は、工程費用と、工程時間の側面から非常に不利であるので、実際の大量生産工程に適用するには限界があった。
【0018】
そこで、本発明者らは、実験を通して、前記化学式1で表される繰り返し単位を必須に含み、化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位を追加的に含む第1液晶配向剤用重合体と、前記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体とを混合して用いると、前記第1重合体がすでにイミド化されたイミド繰り返し単位を一定の含有量含むため、塗膜形成後、高温の熱処理工程なしに直ちに光を照射して異方性を生成させ、この後、熱処理を進行させて配向膜を完成できることから、光照射エネルギーを大きく低減できるだけでなく、1回の熱処理工程を含む単純な工程でも配向性と安定性に優れるだけでなく、電圧維持保全率と電気的特性にも優れた液晶配向膜を製造できることを確認して、発明を完成した。
【0019】
本明細書において、特別な制限がない限り、以下の用語は下記のように定義される。
【0020】
炭素数4〜20の炭化水素は、炭素数4〜20のアルカン(alkane)、炭素数4〜20のアルケン(alkene)、炭素数4〜20のアルキン(alkyne)、炭素数4〜20のシクロアルカン(cycloalkane)、炭素数4〜20のシクロアルケン(cycloalkene)、炭素数6〜20のアレーン(arene)であるか、あるいはこれらのうち1種以上の環状炭化水素が2以上の原子を共有する縮合環(fused ring)であるか、あるいはこれらのうち1種以上の炭化水素が化学的に結合された炭化水素であってもよい。具体的には、炭素数4〜20の炭化水素としては、n−ブタン、シクロブタン、1−メチルシクロブタン、1,3−ジメチルシクロブタン、1,2,3,4−テトラメチルシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロヘキセン、1−メチル−3−エチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシル、ベンゼン、ビフェニル、ジフェニルメタン、2,2−ジフェニルプロパン、1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、または1,6−ジフェニルヘキサンなどを例示することができる。
【0021】
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル基であってもよい。具体的には、炭素数1〜10のアルキル基は、炭素数1〜10の直鎖アルキル基;炭素数1〜5の直鎖アルキル基;炭素数3〜10の分枝鎖もしくは環状アルキル基;または炭素数3〜6の分枝鎖もしくは環状アルキル基であってもよい。より具体的には、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、またはシクロヘキシル基などを例示することができる。
【0022】
炭素数1〜10のアルコキシ基は、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルコキシ基であってもよい。具体的には、炭素数1〜10のアルコキシ基は、炭素数1〜10の直鎖アルコキシ基;炭素数1〜5の直鎖アルコキシ基;炭素数3〜10の分枝鎖もしくは環状アルコキシ基;または炭素数3〜6の分枝鎖もしくは環状アルコキシ基であってもよい。より具体的には、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、neo−ペントキシ基、またはシクロヘキトキシ基などを例示することができる。
【0023】
炭素数1〜10のフルオロアルキル基は、前記炭素数1〜10のアルキル基の1つ以上の水素がフッ素に置換されたものであってもよく、炭素数1〜10のフルオロアルコキシ基は、前記炭素数1〜10のアルコキシ基の1つ以上の水素がフッ素に置換されたものであってもよい。
【0024】
炭素数2〜10のアルケニル基は、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルケニル基であってもよい。具体的には、炭素数2〜10のアルケニル基は、炭素数2〜10の直鎖アルケニル基、炭素数2〜5の直鎖アルケニル基、炭素数3〜10の分枝鎖アルケニル基、炭素数3〜6の分枝鎖アルケニル基、炭素数5〜10の環状アルケニル基、または炭素数6〜8の環状アルケニル基であってもよい。より具体的には、炭素数2〜10のアルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、またはシクロヘキセニル基などを例示することができる。
【0025】
ハロゲン(halogen)は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)であってもよい。
【0026】
任意の化合物に由来する多価有機基(multivalent organic group)は、任意の化合物に結合された複数の水素原子が除去された形態の残基を意味する。一例として、シクロブタンに由来する4価の有機基は、シクロブタンに結合された任意の水素原子4つが除去された形態の残基を意味する。
【0027】
本明細書において、化学式中、
【化6】
は、当該部位の水素が除去された形態の残基を意味する。例えば、
【化7】
は、シクロブタンの1、2、3および4番目の炭素に結合された水素原子4つが除去された形態の残基、つまり、シクロブタンに由来する4価の有機基のうちいずれか1つを意味する。
【0028】
より具体的には、前記化学式1〜4において、Y〜Yは、それぞれ独立に、下記化学式6で表される2価の有機基であってもよい:
[化学式6]
【化8】
前記化学式6において、
およびR10は、それぞれ独立に、ハロゲン、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2〜3のアルケニル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のフルオロアルキル基、または炭素数1〜3のフルオロアルコキシ基であり、
pおよびqは、それぞれ独立に、0〜4の間の整数であり、
は、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH−、−C(CF−、−CONH−、−COO−、−(CH−、−O(CHO−、−O(CH−、−NH−、−NH(CH−NH−、−NH(CHO−、−OCH−C(CH−CHO−、−COO−(CH−OCO−、または−OCO−(CH−COO−であり、
前記zは、1〜10の間の整数であり、
kおよびmは、それぞれ独立に、1〜3の間の整数であり、
nは、0〜3の間の整数である。
【0029】
前記化学式6において、RまたはR10で置換されていない炭素には水素が結合されており、pまたはqが2〜4の間の整数の時、複数のRまたはR10は、同一または互いに異なる置換基であってもよい。そして、前記化学式6において、nは、0〜3の間の整数、あるいは0または1の整数であってもよい。
【0030】
そして、前記化学式1〜4の繰り返し単位において、Xは、前記化学式5で表される4価の有機基であり、X〜Xは、それぞれ独立に、炭素数4〜20の炭化水素に由来する4価の有機基であるか、あるいは前記4価の有機基のうち1つ以上のHがハロゲンに置換されたり、または1つ以上の−CH−が酸素または硫黄原子が直接連結されないように−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、または−CONH−に代替された4価の有機基であってもよい。
【0031】
一例として、前記X〜Xは、それぞれ独立に、下記化学式7に記載された4価の有機基であってもよい。
[化学式7]
【化9】
前記化学式7において、
〜Rは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、
は、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−CR1112−、−CONH−、−COO−、−(CH−、−O(CHO−、−COO−(CH−OCO−、フェニレン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか1つであり、
前記R11およびR12は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフルオロアルキル基であり、zは、1〜10の間の整数である。
【0032】
そして、前記一実現例の液晶配向膜の製造方法で用いられる第1液晶配向剤用重合体は、前記化学式1、化学式2および化学式3で表される繰り返し単位中において、イミド繰り返し単位である化学式1で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して10モル%〜74モル%、好ましくは20モル%〜60モル%含むことができる。
【0033】
上述のように、前記化学式1で表されるイミド繰り返し単位を特定の含有量含む第1液晶配向剤用重合体を用いると、前記重合体がすでにイミド化されたイミド繰り返し単位を一定の含有量含むため、高温の熱処理工程を省略し、直ちに光を照射しても配向性と安定性に優れ、電圧維持保全率と電気的特性にも優れた液晶配向膜を製造することができる。
【0034】
万一、化学式1で表される繰り返し単位が前記含有量範囲より少なく含まれると、十分な配向特性を示すことができず、配向安定性が低下することがあり、前記化学式1で表される繰り返し単位の含有量が前記範囲を超えると、溶解度が低くなってコーティング可能な安定した配向液を製造しにくい問題が現れることがある。これにより、前記化学式1で表される繰り返し単位を上述した含有量範囲で含むのが、保管安定性、電気的特性、配向特性および配向安定性がすべて優れている液晶配向剤用重合体を提供できて、好ましい。
【0035】
また、前記第1液晶配向剤用重合体は、化学式2で表される繰り返し単位または化学式3で表される繰り返し単位を目的の特性に応じて適切な含有量で含むことができる。
【0036】
具体的には、前記化学式2で表される繰り返し単位は、前記化学式1〜3で表される全繰り返し単位に対して0モル%〜40モル%、好ましくは0モル%〜30モル%含まれる。前記化学式2で表される繰り返し単位は、光照射後、高温熱処理工程中においてイミドに変換される比率が低いため、前記範囲を超える場合、全体的なイミド化率が不足して配向安定性が低下することがある。したがって、前記化学式2で表される繰り返し単位は、上述した範囲内で適切な溶解度を示して工程特性に優れていながらも、高いイミド化率を実現可能な液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0037】
そして、前記化学式3で表される繰り返し単位は、前記化学式1〜3で表される全繰り返し単位に対して0モル%〜95モル%、好ましくは10モル%〜90モル%含まれる。この範囲内で優れたコーティング性を示して工程特性に優れていながらも、高いイミド化率を実現可能な液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0038】
一方、前記一実現例の液晶配向膜の製造方法で使用される第2液晶配向剤用重合体は、部分イミド化された重合体の前記第1液晶配向剤用重合体と混合して液晶配向剤として用いることによって、第1液晶配向剤用重合体のみを用いる場合に比べて、電圧維持保全率(Voltage Holding Ratio)のような配向膜の電気的特性を大きく改善することができる。
【0039】
このような効果を奏するために、前記化学式4で表される繰り返し単位において、Xは、芳香族構造に由来するものが、電圧維持保全率を改善する側面で好ましい。
【0040】
また、前記化学式4で表される繰り返し単位において、Yは、前記化学式6で表される2価の有機基であることが好ましく、この時、RおよびR10は、それぞれ独立に、炭素数3以下の短い官能基であるか、側鎖構造のRおよびR10を含まないもの(pおよびqが0)がさらに好ましい。
【0041】
そして、前記第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体は、約15:85〜85:15、好ましくは約20:80〜80:20の重量比で混合することができる。上述のように、前記第1液晶配向剤は、すでにイミド化されたイミド繰り返し単位を一定の含有量含むため、塗膜形成後、高温の熱処理工程なしに直ちに光を照射して異方性を生成させ、この後、熱処理を進行させて配向膜を完成できる特徴があり、第2液晶配向剤用重合体は、電圧維持保存率のような電気的特性を向上させる特徴がある。このような特徴を有する前記第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体を前記重量比範囲で混合して用いる場合、第1液晶配向剤用重合体が有する優れた光反応特性および液晶配向特性に第2液晶配向剤用重合体が有する優れた電気的特性を相互補完できるので、より優れた配向性と電気的特性を同時に有する液晶配向膜を製造することができる。
【0042】
発明の他の実現例によれば、前記一実現例の液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階と、
前記塗膜を乾燥する段階と、
前記乾燥段階直後の塗膜に光を照射して配向処理する段階と、
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階と、を含む液晶配向膜の製造方法が提供できる。
【0043】
前記液晶配向膜の製造方法は、まず、前記一実現例の化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位と、化学式1で表される繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体、および化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体を含む液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する。前記液晶配向剤組成物を基板に塗布する方法は特に制限されず、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法が利用可能である。
【0044】
そして、前記液晶配向剤組成物は、前記第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体を有機溶媒に溶解または分散させたものであってもよい。
【0045】
前記有機溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグリム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、混合して使用されてもよい。
【0046】
また、前記液晶配向剤組成物は、液晶配向剤用重合体および有機溶媒のほか、他の成分を追加的に含んでもよい。非制限的な例として、液晶配向剤組成物が塗布された時、膜厚さの均一性や表面平滑性を向上させたり、あるいは光配向膜と基板との密着性を向上させたり、あるいは光配向膜の誘電率や導電性を変化させたり、あるいは光配向膜の緻密性を増加させることができる添加剤が追加的に含まれる。このような添加剤としては、各種溶媒、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体、または架橋性化合物などが例示される。
【0047】
次に、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して形成された塗膜を乾燥する。前記塗膜を乾燥する段階は、塗膜の加熱、真空蒸発などの方法を利用することができ、50℃〜150℃、または60℃〜140℃で行われることが好ましい。
【0048】
次に、前記一実現例の液晶配向膜の製造方法は、前記乾燥段階直後の塗膜に光を照射して配向処理する。本明細書において、前記「乾燥段階直後の塗膜」は、乾燥段階の後、乾燥段階以上の温度で熱処理する段階の進行なしに直ちに光照射することを意味し、熱処理以外の別の段階は付加が可能である。
【0049】
より具体的には、従来ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤を用いて液晶配向膜を製造する場合には、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルのイミド化のために必須に高温の熱処理を進行させた後、光を照射する段階を含むが、上述した一実現例の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を製造する場合には、前記熱処理段階を含まず、直ちに光を照射して配向処理した後、配向処理された塗膜を熱処理して硬化することによって、小さい光照射エネルギーの下でも十分な配向性と安定性が強化された液晶配向膜を製造することができる。
【0050】
そして、前記配向処理する段階において、光照射は、150nm〜450nmの波長の偏光された紫外線を照射するものであってもよい。この時、露光の強さは、重合体の種類に応じて異なり、10mJ/cm〜10J/cmのエネルギー、好ましくは30mJ/cm〜2J/cmのエネルギーを照射することができる。
【0051】
前記紫外線としては、(1)石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムフリーガラスなどの透明基板の表面に誘電異方性の物質がコーティングされた基板を用いた偏光装置、(2)微細にアルミニウムまたは金属ワイヤが蒸着された偏光板、または(3)石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射する方法で偏光処理された紫外線の中から選択された偏光紫外線を照射して配向処理をする。この時、偏光された紫外線は、基板面に垂直に照射することもでき、特定の角で入射角を傾斜して照射することもできる。このような方法によって液晶分子の配向能力が塗膜に与えられる。
【0052】
次に、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階を含む。前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階は、従来ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤用重合体を用いて液晶配向膜を製造する方法でも光照射後に実施する段階で、液晶配向剤組成物を基板に塗布し、光を照射する前に、または光を照射しながら液晶配向剤組成物をイミド化させるために実施する熱処理段階とは区分される。
【0053】
この時、前記熱処理は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施され、150℃〜300℃、または200℃〜250℃で行われることが好ましい。
【0054】
そして、発明のさらに他の実現例によれば、前記一実現例の液晶配向膜の製造方法により製造された液晶配向膜が提供できる。
【0055】
上述のように、前記化学式1で表される繰り返し単位を必須に含み、化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体と、前記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体とを混合して用いると、配向性と安定性が強化された液晶配向膜を製造することができる。
【0056】
また、発明のさらに他の実現例によれば、上述した液晶配向膜を含む液晶表示素子が提供できる。
【0057】
前記液晶配向膜は、公知の方法によって液晶セルに導入され、前記液晶セルは同じく公知の方法によって液晶表示素子に導入される。前記液晶配向膜は、前記化学式1で表される繰り返し単位を必須に含む重合体と、化学式4で表される繰り返し単位を含む重合体とを混合して製造され、優れた諸物性と共に優れた安定性を実現することができる。これにより、高い信頼度を示すことができる液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、液晶配向剤組成物を基板に塗布および乾燥した後、高温の熱処理工程を省略し、直ちに光を照射して配向処理した後、これを熱処理して硬化することによって、光照射エネルギーを低減できるだけでなく、単純な工程により配向性と安定性に優れ、電圧維持保全率と電気的特性にも優れた液晶配向膜を提供できる液晶配向剤組成物と液晶配向膜の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0059】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0060】
製造例1:ジアミンDA−1の合成
【0061】
ジアミンDA−1は、下記反応式1により合成された。
[反応式1]
【化10】
【0062】
1,3−ジメチルシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物(1,3−dimethylcyclobutane−1,2,3,4−tetracarboxylic dianhydride、DMCBDA)と4−ニトロアニリン(4−nitroaniline)をDMF(Dimethylformamide)に溶解して混合物を製造した。次に、前記混合物を約80℃で約12時間反応させてアミック酸を製造した。この後、前記アミック酸をDMFに溶解し、酢酸無水物および酢酸ナトリウムを添加して混合物を製造した。次に、前記混合物に含まれているアミック酸を、約90℃で約4時間イミド化させた。このように得られたイミドをDMAc(Dimethylacetamide)に溶解した後、Pd/Cを添加し、混合物を製造した。これを45℃および6barの水素圧力下、20分間還元させて、ジアミンDA−1を製造した。
【0063】
製造例2:ジアミンDA−2の合成
【化11】
【0064】
1,3−ジメチルシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物の代わりにシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物(cyclobutane−1,2,3,4−tetracarboxylic dianhydride、CBDA)を用いたことを除けば、前記製造例1と同様の方法で前記構造を有するDA−2を製造した。
【0065】
製造例3:ジアミンDA−3の合成
【化12】
【0066】
1,3−ジメチルシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物の代わりにピロメリット酸ジ無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)を用いたことを除けば、前記製造例1と同様の方法で前記構造を有するDA−3を製造した。
【0067】
製造例4:ジアミンDA−4の合成
【化13】
【0068】
ジアミンDA−4は、下記反応式2により合成された。
[反応式2]
【化14】
【0069】
ピロメリット酸ジ無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)25gを250mLのメタノールに入れて、1〜2滴の塩酸を添加した後、75℃で5時間加熱還流した。溶媒を減圧して除去した後、エチルアセテートとノルマルヘキサンを300mL添加して固形化した。生成された固体を減圧フィルタし、40℃で減圧乾燥した後、M1 32gを得た。
【0070】
得られたM1 34gに100mLのトルエンを添加し、常温でオキサリルクロライド(oxalyl chloride)35gを滴下した。2〜3滴のジメチルホルムアミド(DMF)を滴加し、50℃で16時間撹拌した。常温に冷却した後、溶媒と残留オキサリルクロライドを減圧して除去した。黄色の固体生成物にノルマルヘキサン300mLを添加した後、80℃で加熱還流した。加熱された反応溶液をろ過して、ノルマルヘキサンに溶けないimpurityを除去し、ゆっくり常温まで冷却して、生成された白色の結晶をろ過した後、40℃の減圧オーブンで乾燥して、M2 32.6gを得た。
【0071】
4−ニトロアニリン(4−nitroaniline)29.6gとトリエタノールアミン(TEA)21.7gを400mLのテトラヒドロフラン(THF)に入れて、常温でM2 32.6gを添加した。常温で16時間撹拌した後、生成された沈殿物をろ過した。ろ液にジクロロメタン(Dichloro methane)400mLを入れて、0.1N塩酸水溶液で洗浄した後、再度飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液で洗浄した。洗浄された有機溶液を減圧ろ過して固体生成物を得て、再度ジクロロメタンで再結晶して、固体状のジニトロ化合物M3 43gを得た。
【0072】
得られたジニトロ化合物M3 43gを高圧反応器に入れた後、THF500mLに溶かし、10wt%のPd−C2.2gを添加した後、3気圧の水素気体(H)下、16時間常温撹拌した。反応後、celiteフィルタろ過を利用してPd−Cを除去し、ろ過した後、ろ液を減圧濃縮して、エステル化されたジアミンDA−4 37gを得た。
【0073】
製造例5:ジアミンDA−5の合成
【化15】
【0074】
ピロメリット酸ジ無水物の代わりにシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物(CBDA)を用いたことを除けば、前記製造例4と同様の方法で前記構造を有するDA−5を製造した。
【0075】
[第1液晶配向剤用重合体の製造]
【0076】
合成例1:液晶配向剤用重合体P−1の製造
【0077】
前記製造例2で製造されたDA−2 5.0g(13.3mmol)を無水N−メチルピロリドン(anhydrous N−methyl pyrrolidone:NMP)71.27gに完全に溶かした。そして、ice bath下、1,3−ジメチル−シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物(DMCBDA)2.92g(13.03mmol)を前記溶液に添加して、16時間常温で撹拌した。そして、得られた溶液を過剰の蒸留水に投入して沈殿物を生成させた。次に、生成された沈殿物をろ過して蒸留水で2回洗浄し、再度メタノールで3回洗浄した。このように得られた固体生成物を40℃の減圧オーブンで24時間乾燥して、液晶配向剤用重合体P−1 6.9gを得た。
【0078】
GPCにより前記P−1の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が15,500g/molであり、重量平均分子量(Mw)が31,000g/molであった。そして、重合体P−1のモノマー構造は、使用したモノマーの当量比によって定められるもので、分子内のイミド構造の比率が50.5%、アミック酸構造の比率が49.5%であった。
【0079】
合成例2:液晶配向剤用重合体P−2の製造
【0080】
前記合成例1において、DA−1 5.0g、p−フェニレンジアミン(p−phenylenediamine、PDA)1.07gをNMP103.8gに先に溶かした後、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物(CBDA)2.12gと4,4'−オキシジフタル酸ジ無水物(OPDA)3.35gを添加することを除き、合成例1と同様の方法を用いて重合体P−2を製造した。GPCにより前記P−2の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が18,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が35,000g/molであった。そして、重合体P−2は、分子内のイミド構造の比率は36.4%、アミック酸構造の比率は63.6%であった。
【0081】
合成例3:液晶配向剤用重合体P−3の製造
【0082】
前記合成例1において、DA−2 6.0g、4,4'−オキシジアニリン(4,4'−oxydianiline、ODA)1.37gをNMP110.5gに先に溶かした後、DMCBDA3.47gとピロメリット酸ジ無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)1.44gを添加することを除き、合成例1と同様の方法を用いて重合体P−3を製造した。GPCにより前記P−3の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が14,500g/molであり、重量平均分子量(Mw)が29,000g/molであった。そして、重合体P−3は、分子内のイミド構造の比率は41.9%、アミック酸構造の比率は58.1%であった。
【0083】
合成例4:液晶配向剤用重合体P−4の製造
【0084】
前記合成例1において、DA−1 5.0gとDA−5 2.8gをNMP115.9gに先に溶かした後、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物(CBDA)4.08gを添加することを除き、合成例1と同様の方法を用いて重合体P−4を製造した。GPCにより前記P−4の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が17,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が35,000g/molであった。そして、重合体P−4は、分子内のイミド構造の比率は35.3%、アミック酸エステル構造の比率が15.1%、アミック酸構造の比率は49.5%であった。
【0085】
合成例5:液晶配向剤用重合体P−5の製造
【0086】
前記合成例1において、DA−1 5.0gと4,4'−(1,3−プロピルジイル)ジオキシジアニリン(4,4'−1,3−propyldiyl)dioxydianiline)1.89g、およびDA−4 2.29gをNMP131.00gに先に溶かした後、DMCBDA5.43gを添加することを除き、合成例1と同様の方法を用いて重合体P−5を製造した。GPCにより前記P−5の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が19,500g/molであり、重量平均分子量(Mw)が36,000g/molであった。そして、重合体P−5は、分子内のイミド構造の比率は29.8%、アミック酸エステル構造の比率が11.9%、アミック酸構造の比率は49.5%であった。
【0087】
合成例6:液晶配向剤用重合体P−6の製造
【0088】
4,4'−オキシジアニリン(4,4'−oxydianiline、ODA)3.7gとp−フェニレンジアミン(p−phenylene diamine:PDA)2.0gを無水N−メチルピロリドン(anhydrous N−methyl pyrrolidone:NMP)124.5gに完全に溶かした。そして、ice bath下、前記混合物に1,3−ジメチル−シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物(DMCBDA)8.13gを添加して、16時間常温で撹拌して、100%ポリアミック酸重合体溶液PA−6を製造した。
【0089】
このように製造されたPA−6溶液に酢酸無水物(acetic anhydride)7.4gとピリジン5.7gを添加した後、50℃で3時間撹拌して化学的イミド化を進行させた。そして、得られた生成物を過剰の蒸留水に投入して沈殿物を生成させた。次に、生成された沈殿物をろ過して蒸留水で2回洗浄し、再度メタノールで3回洗浄した。このように得られた固体生成物を40℃の減圧オーブンで24時間乾燥して、液晶配向剤用重合体P−6を得た。GPCにより前記P−6の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が14,500g/molであり、重量平均分子量(Mw)が28,000g/molであった。
【0090】
一方、P−6の組成は、次のように定量分析された。
【0091】
化学的イミド化を進行させる前に得られたPA−6溶液をガラス基板にコーティングした後、300℃のオーブンで2時間熱処理してイミド化を進行させた。この工程により得られた物質のイミド化率を100%と定義し、これを化学的イミド化工程により得られたP−6とIR分光器で現れるイミドのC−N peak(1380cm−1)を比較することにより分析した。具体的には、1520cm−1台のaromatic peakをノーマライズ(normalize)のための基準に定め、PA−6とP−6の1380cm−1台に現れるC−N peakの大きさ(I)を積分して、以下の式1に代入することによりイミド化率を定量した。
[式1]
イミド化率(%)=[(I1380,P−6−I1520,P−6)/(I1380,PA−6@300−I1520,PA−6@300)]×100
【0092】
上記式1中、I1380,P−6は、P−6の1380cm−1台に現れるC−N peakの大きさであり、I1520,P−6は、P−6の1520cm−1台に現れるaromatic peakの大きさであり、I1380,PA−6@300は、PA−6を300℃で熱処理した物質の1380cm−1台に現れるC−N peakの大きさであり、I1520,PA−6@300は、PA−6を300℃で熱処理した物質の1520cm−1台に現れるaromatic peakの大きさである。
【0093】
前記のような方法によりP−6の組成を分析した結果、アミック酸構造の比率は35%、イミド構造の比率は65%であった。
【0094】
合成例7:液晶配向剤用重合体P−7の製造
【0095】
前記合成例6と同様の方法でPA−6を製造し、これに酢酸無水物13.0g、ピリジン11.5gを使用した。
【0096】
しかし、5時間の反応過程中に反応溶液のゲル化が進行した。ゲル化が進行した反応物は、過剰の蒸留水で撹拌して固形分を得て、得られた固形分を過剰の蒸留水で2回、メタノールで3回洗浄した後、40℃の減圧オーブンで24時間乾燥して、重合体P−7を製造した。しかし、製造されたP−7は、溶解性が低下して分子量は測定できず、合成例6の分析方法により組成を分析した結果、イミド構造の比率は75.0%、アミック酸構造の比率は25.0%であった。
【0097】
合成例8:液晶配向剤用重合体P−8の製造
【0098】
前記合成例1において、DA−3 10.0gをNMP140.0gに先に溶かした後、DMCBDA5.52gを添加することを除き、合成例1と同様の方法を用いて重合体P−8を製造した。GPCにより前記P−8の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が22,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が39,000g/molであった。そして、P−8のモノマー構造を分析した結果、分子内のイミド構造の比率は50.5%、アミック酸構造の比率は49.5%であった。
【0099】
合成例9:液晶配向剤用重合体P−9の製造
【0100】
前記合成例1において、DA−2 2.0g、p−フェニレンジアミン(PDA)5.2gをNMP170.0gに先に溶かした後、1,3−ジメチル−シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸ジ無水物(DMCBDA)11.68gを添加することを除き、合成例1と同様の方法を用いて重合体P−9を製造した。GPCにより前記P−9の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が16,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が28,000g/molであった。そして、P−9のモノマー構造を分析した結果、分子内のイミド構造の比率は9.3%、アミック酸構造の比率は90.2%であった。
【0101】
[第2液晶配向剤用重合体の製造]
【0102】
合成例10:液晶配向剤用重合体Q−1の製造
【0103】
前記合成例1において、4,4'−メチレンジアニリン(4,4'−methylenedianiline)5.00gと4,4'−オキシジアニリン(4,4'−oxydianiline)5.05gをNMP221.4gに先に溶かした後、4,4'−ビフタル酸無水物(4,4'−biphthalic anhydride)14.55gを添加することを除き、合成例1と同様の方法を用いて重合体Q−1を製造した。GPCにより前記Q−1の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が25,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が40,000g/molであった。
【0104】
合成例11:液晶配向剤用重合体Q−2の製造
【0105】
前記合成例1において、4,4'−(1,4−ブタンジイル)ジオキシジアニリン(4,4'−(1,4−butanediyl)dioxydianiline)7.0gと4,4'−イミノジアニリン(4,4'−iminodianiline)2.19gをNMP178.1gに先に溶かした後、4,4'−ビフタル酸無水物(4,4'−biphthalic anhydride)10.59gを添加することを除き、合成例1と同様の方法を用いて重合体Q−2を製造した。GPCにより前記Q−2の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が28,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が45,000g/molであった。
【0106】
合成例12:液晶配向剤用重合体Q−3の製造
【0107】
前記合成例1において、4,4'−(1,3−プロピルジイル)ジオキシジアニリン(4,4'−(1,3−propyldiyl)dioxydianiline)10.0gをNMP180.7gに先に溶かした後、ピロメリット酸ジ無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)4.16gと4,4'−オキシジフタル酸無水物(4,4'−oxydiphthalic anhydride)5.92gを添加することを除き、合成例1と同様の方法を用いて重合体Q−3を製造した。GPCにより前記Q−3の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が26,500g/molであり、重量平均分子量(Mw)が43,000g/molであった。
【0108】
試験例:液晶配向膜の特性評価
【0109】
<液晶配向剤および液晶セルの製造>
【0110】
(1)液晶配向剤の製造
【0111】
実施例1
【0112】
前記合成例1で得られた重合体P−1 1.0gと前記合成例10で得られた重合体Q−1 1.0gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤A−1を製造した。
【0113】
実施例2
【0114】
前記合成例1で得られた重合体P−1 1.0gと前記合成例11で得られた重合体Q−2 1.0gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤A−2を製造した。
【0115】
実施例3
【0116】
前記合成例2で得られた重合体P−2 1.0gと前記合成例11で得られた重合体Q−2 1.0gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤A−3を製造した。
【0117】
実施例4
【0118】
前記合成例3で得られた重合体P−3 1.2gと前記合成例10で得られた重合体Q−1 0.8gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤A−4を製造した。
【0119】
実施例5
【0120】
前記合成例4で得られた重合体P−4 1.4gと前記合成例12で得られた重合体Q−3 0.6gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤A−5を製造した。
【0121】
実施例6
【0122】
前記合成例5で得られた重合体P−5 1.0gと前記合成例12で得られた重合体Q−3 1.0gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤A−6を製造した。
【0123】
実施例7
【0124】
前記合成例6で得られた重合体P−6 0.4gと前記合成例11で得られた重合体Q−2 1.6gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤A−7を製造した。
【0125】
比較例1
【0126】
前記合成例8で得られた重合体P−8 1.0gと前記合成例10で得られた重合体Q−1 1.0gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤B−1を製造した。
【0127】
比較例2
【0128】
前記合成例2で得られた重合体P−2 2.0gだけを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤B−2を製造した。
【0129】
比較例3
【0130】
前記合成例10で得られた重合体Q−1 2.0gだけを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤B−3を製造した。
【0131】
参考例1
【0132】
前記合成例7で得られた重合体P−7 1.0gと前記合成例10で得られた重合体Q−1 1.0gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かそうとしたものの、P−7が溶けず、完全溶解した配向剤を得ることができなかった。
【0133】
参考例2
【0134】
前記合成例2で得られた重合体P−2 1.8gと前記合成例12で得られた重合体Q−3 0.2gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤C−2を製造した。
【0135】
参考例3
【0136】
前記合成例1で得られた重合体P−1 0.2gと前記合成例11で得られた重合体Q−2 1.8gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤C−3を製造した。
【0137】
参考例4
【0138】
前記合成例9で得られた重合体P−9 1.0gと前記合成例12で得られた重合体Q−3 1.0gを、NMP30gとn−ブトキシエタノール8gの混合溶媒に溶かして、5wt%溶液を得た。そして、得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmのフィルタで加圧ろ過して、液晶配向剤C−4を製造した。
【0139】
(2)液晶セルの製造
【0140】
前記実施例1〜7、比較例1〜3、参考例1〜4により、液晶配向剤を用いて下記のような方法で液晶セルを製造した。
【0141】
2.5cm×2.7cmの大きさを有する四角形のガラス基板上に、厚さ60nm、電極幅3μm、そして、電極間の間隔が6μmのクシ状のIPS(in−plane switching)モード型ITO電極パターンが形成されている基板(下板)と、電極パターンのないガラス基板(上板)に、それぞれスピンコーティング方式を利用して液晶配向剤を塗布した。
【0142】
次に、液晶配向剤が塗布された基板を約70℃のホットプレート上に置き、3分間乾燥して溶媒を蒸発させた。このように得られた塗膜を配向処理するために、上/下板それぞれの塗膜に、線偏光子付き露光器を用いて254nmの紫外線を1.0J/cmの露光量で照射した。
【0143】
この後、配向処理された上/下板を、約230℃のオーブンで30分間焼成(硬化)して、膜厚さ0.1μmの塗膜を得た。この後、3μmの大きさのボールスペーサが含浸されたシーリング剤(sealing agent)を、液晶注入口を除いた上板の周縁に塗布した。そして、上板および下板に形成された配向膜が互いに対向して配向方向が互いに並ぶように整列させた後、上下板を貼り合わせ、シーリング剤を硬化することによって、空きセルを製造した。そして、前記空きセルに液晶を注入して、IPSモードの液晶セルを製造した。
【0144】
<液晶配向膜の特性評価>
【0145】
(1)液晶配向特性評価
【0146】
前記のように製造された液晶セルの上板および下板に、偏光板を互いに垂直となるように付着させた。この時、下板に付着した偏光板の偏光軸は、液晶セルの配向軸と平行にした。そして、偏光板の付着した液晶セルを明るさ7,000cd/mのバックライト上に置き、肉眼で光漏れを観察した。この時、液晶配向膜の配向特性に優れて液晶をよく配列させれば、互いに垂直に付着した上下の偏光板によって光が通過せず、不良なしに暗く観察される。この場合の配向特性を「良好」、液晶の流れ跡や輝点のような光漏れが観察されると「不良」と表1に表示した。
【0147】
(2)液晶配向安定性評価
【0148】
前記(1)液晶配向特性評価のために製造した偏光板の付着した液晶セルを用いて液晶配向安定性を評価した。
【0149】
具体的には、前記偏光板の付着した液晶セルを7,000cd/mのバックライト上に付着させ、ブラック状態の輝度を輝度明るさ測定装備のPR−880装備を用いて測定した。そして、前記液晶セルを、常温、交流電圧5Vで24時間駆動した。この後、液晶セルの電圧を切った状態で、上述したものと同一にブラック状態の輝度を測定した。
【0150】
液晶セルの駆動前に測定された初期輝度(L0)と駆動後に測定された後の輝度(L1)との間の差を初期輝度(L0)値で割り、100をかけて輝度変動率を計算した。このように計算された輝度変動率は、0%に近いほど配向安定性に優れていることを意味する。輝度変動率が10%未満であれば「優秀」、10%以上20%未満であれば「普通」、20%以上であれば「不良」と表1に表示した。
【0151】
(3)電圧維持保全率(Voltage Holding Ratio、VHR)評価
【0152】
前記実施例1〜7、比較例1〜3、参考例1〜4で製造した液晶配向剤を用いて、下記のような方法で電圧維持保全率用液晶セルを製造した。
【0153】
2.5cm×2.7cmの大きさを有する四角形のガラス基板上に、厚さ60nm、面積1×1cmのITO電極がパターン化された電圧維持比率(VHR)用の上下基板それぞれに、スピンコーティング方式を利用して液晶配向剤を塗布した。
【0154】
次に、液晶配向剤が塗布された基板を約70℃のホットプレート上に置き、3分間乾燥して溶媒を蒸発させた。このように得られた塗膜を配向処理するために、上下板のそれぞれの塗膜に、線偏光子の付着した露光器を用いて254nmの紫外線を1J/cmの露光量で照射した。この後、配向処理された上下基板を230℃のオーブンで30分間焼成硬化して、膜厚さ0.1μmの塗膜を得た。この後、4.5μmのボールスペーサが含浸されたシーリング剤を、液晶注入口を除いた上下板の周縁に塗布した。そして、上板および下板に、配向処理方向が対向して並ぶように整列させた後、上下板を貼り合わせ、シーリング剤をUVおよび熱硬化することによって、空きセルを製造した。そして、前記空きセルに液晶を注入し、注入口をシーリング剤で密封して液晶セルを製造した。
【0155】
前記のような方法で製造された液晶セルの電気的特性である電圧維持保全率(VHR)を、TOYO6254装備を用いて測定した。電圧維持保全率は5V、60Hz、60℃の苛酷条件で測定された。電圧維持保全率は100%が理想的な値であり、測定結果、85%以上であれば「良好」、85%未満であれば「不良」と表1に評価した。
【表1】
【0156】
前記表1に示されているように、本発明の第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体とをすべて含む液晶配向剤組成物を用いた実施例1〜7の液晶配向膜は、液晶配向特性と、安定性および電圧維持保全率とも良好な結果を示したが、第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体のうち1種のみを用いたり、第1液晶配向剤用重合体と異なる形態の重合体を用いた場合の比較例1〜3の液晶配向膜は、前記評価項目の一部または全部で不良な結果を示した。