(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、および、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0009】
実施形態1.
図1A〜
図5を参照しながら、実施形態1に係る光透過部材の製造方法について説明する。
【0010】
実施形態1の光透過部材の製造方法は、内側面が略平坦な面である孔を複数有する上面を備えた保持部材を準備する工程と、蛍光体と透光性部材とを含む波長変換部材を、前記複数の孔の内側面と接するように充填する工程と、前記波長変換部材を成形した後に、前記保持部材から前記波長変換部材を取り外す工程と、を含む。
以下、各工程について詳説する。
【0011】
<光透過部材の作製>
工程1−1.保持部材10の準備
図1Bに示すように、内側面101が略平坦な面である孔を複数有する上面を備えた保持部材10を準備する。換言すると、保持部材10は上面に開口を備える複数の孔を備え、複数の孔の内側面101は略平坦な面である。実施形態1に係る孔は貫通孔11であり、保持部材10の上面102と下面103とを貫通している。本明細書で、略平坦な面とは凹凸がない又はほとんど凹凸がないことを意味し、10μm以下の凹凸は許容されることを意図する。また、
図1Aに示すように、上面視における貫通孔の形状は、直線から構成される四角形、五角形、六角形等の多角形だけでなく、
図2に示すように曲線から構成される円形状でもよい。また、上面視における貫通孔の形状は、直線と曲線との両方を備えた形状でもよい。上面視における貫通孔の角が角丸めをした曲線から構成されることで、貫通孔内の隅々まで後述する波長変換部材を充填しやすくなる。
【0012】
保持部材10に貫通孔11を形成する方法としては、当該分野で公知の方法のいずれを利用してもよい。例えば、レーザー光の照射、パンチング、エッチング、ブラスト等が挙げられる。また、貫通孔11を有する保持部材10を、金型を使った圧縮成形やトランスファー成形、射出成形で形成してもよい。金型を使って保持部材10を形成することで、貫通孔11の形状のばらつきを抑制できる。更に、孔の内側面を略平坦にするために研磨等の公知の方法を用いてもよい。
【0013】
工程1−2.保持部材10を支持部材20上に載置
図1Bに示すように、耐熱性シート等からなる支持部材20上に、保持部材10の下面103を貼り付けて、貫通孔11を閉塞する。
【0014】
工程1−3.波長変換部材を、複数の孔に充填
図3Aに示すように、蛍光体31と透光性部材32とを含む波長変換部材30を、複数の孔の内側面と接するように充填する。波長変換部材30を充填する方法としては、当該分野で公知の方法のいずれを利用してもよい。例えば、印刷、ポッティング等が挙げられる。また、波長変換部材30が光拡散材を含んでいてもよい。波長変換部材が光拡散材を含むことで、後述する発光素子からの光が波長変換部材30内で拡散されるので、波長変換部材30内での色ムラや輝度ムラが抑制できる。蛍光体31の粒径は特に限定されず、適宜調整することができる。例えば、蛍光体31の粒径は1μmから50μm程度が挙げられる。
【0015】
波長変換部材30を充填する工程において、
図3Bに示すように、波長変換部材30内で蛍光体31を支持部材20側に偏在させてもよい。例えば、自然沈降または遠心力による強制沈降により、蛍光体31を保持部材10の下面103側に偏在させることができる。
【0016】
工程1−4.波長変換部材の成形
貫通孔内に充填された波長変換部材を硬化し成形する。尚、本明細書での硬化とは、完全硬化だけでなく、半硬化でも波長変換部材の形状を保つことができれば硬化とする。
【0017】
工程1−5.保持部材から波長変換部材の取り外し
保持部材から波長変換部材を取り外す。保持部材から波長変換部材を取り外す方法としては、保持部材を溶解させること、波長変換部材を押すこと、又は、波長変換部材に遠心力を加えること等が考えられる。特に、
図4に示すように、波長変換部材30と接する押出部材40を用いて、波長変換部材30を押し出して保持部材10から取り外すことが好ましい。波長変換部材30を直接押し出すことで、容易に保持部材10から波長変換部材を取り外すことができる。波長変換部材を押して保持部材から取り外す場合は、保持部材10を固定した後に押出部材40で波長変換部材30を下方向に押して保持部材から波長変換部材を取り外してもよいし、押出部材40で波長変換部材30を押して波長変換部材30を固定した後に保持部材10を上方向に移動させて保持部材10から波長変換部材30を取り外してもよい。
【0018】
押出部材40と波長変換部材30との接触面積は、押出部材40に押される波長変換部材30の面の面積の0.5倍以上1未満以下が好ましい。押出部材40に押される波長変換部材30の面の面積に対して、押出部材40と波長変換部材30との接触面積が0.5倍よりも大きいことで、波長変換部材30に押し出し時に押出部材40の跡が付きにくくなる。また、孔の内側面が略平坦な面であることで、孔の内側面に凹凸がある場合よりも、波長変換部材と保持部材との接触面積を小さくできるので、保持部材から波長変換部材を取り外しやすくなる。波長変換部材30を押して保持部材10から波長変換部材30を取り外す場合には、複数の波長変換部材を同時に押し出すことが好ましい。このようにすることで、波長変換部材を1つずつ押し出す場合よりも作業時間を短縮できる。
【0019】
蛍光体31に力がかかると蛍光体31が破損して蛍光体31の粒径が小さくなるおそれがある。蛍光体31の粒径が小さくなると後述する発光素子からの光を散乱しやすくなり、発光装置の輝度が低下するおそれがある。
図4に示すように、蛍光体31が偏在している場合には、波長変換部材30の蛍光体31を偏在させた側の面33とは反対側の面34を押して保持部材10から取り外すことが好ましい。このようにすることで、押し出し時に蛍光体31にかかる力を低減できる。これによって、蛍光体31の破損を抑制できるので、発光装置の輝度が低下することを抑制できる。
【0020】
以上の工程を経て、
図5に示すように、蛍光体31と透光性部材32とを含む複数の光透過部材50を得ることができる。尚、本明細書では保持部材10から取り出した後の波長変換部材30を光透過部材50とする。光透過部材は、保護部材の孔内で成形するため、切断工程を有していない。これにより、光透過部材の一面から
蛍光体が突き出ることを抑制することができる。
【0021】
また、水分等から保護することを目的に蛍光体粒子の表面に保護層を形成している場合がある。従来のように蛍光体シートを切断して個片化する場合は、切断工程の時に、蛍光体の保護層を除去してしまうおそれがある。本実施形態では、光透過部材の製造時に切断工程を有していないので蛍光体粒子の表面にある保護層が意図せずに除去されてしまうことを抑制できる。光透過部材の大きさは特に限定されず、適宜調整することができる。例えば、光透過部材の大きさは0.2mm×0.2mmから3m×3mm程度が挙げられる。
【0022】
実施形態2
図5〜
図8Bを参照しながら、実施形態2に係る光透過部材の製造工程について説明する。実施形態2に係る光透過部材の製造工程は、実施形態1に係る光透過部材の製造工程と比較して孔の形状が相違する。
【0023】
工程2−1.保持部材10の準備
実施形態2に係る保持部材の孔は、
図6Bに示すように、内側面101及び底面104を備える凹部12である点で実施形態1にある貫通孔と相違する。尚、凹部12の内側面101も実施形態1に係る貫通孔の内側面と同様に略平坦な面である。また、凹部12の上面視形状は、
図6Aに示すような、上面視において凹部12が直線から構成される四角形状だけでなく、曲線から構成される円形状や、直線と曲線との両方を備えた形状でもよい。
【0024】
保持部材10に凹部12を形成する方法としては、当該分野で公知の方法のいずれを利用してもよい。例えば、レーザー光の照射、エッチング、ブラスト等が挙げられる。また、凹部を有する保持部材10を、金型を使った圧縮成形やトランスファー成形、射出成形で形成してもよい。金型を使って保持部材10を形成することで、凹部の形状のばらつきを抑制できる。
【0025】
工程2−2.波長変換部材を、複数の孔に充填
図7Aに示すように、蛍光体31と透光性部材32とを含む波長変換部材30を、複数の凹部12内に充填する。波長変換部材30を充填する方法としては、実施形態1と同様の方法を用いることができる。
【0026】
波長変換部材を充填する工程において、
図7Bに示すように、波長変換部材30内で蛍光体31を偏在させてもよい。蛍光体31を偏在させる方法としては、実施形態1と同様の方法を用いることができる。
【0027】
工程2−3.波長変換部材の成形
凹部内に充填された波長変換部材を硬化し成形する。
【0028】
工程2−4.保持部材から波長変換部材の取り外し
保持部材から波長変換部材を取り外す。保持部材から波長変換部材を取り外す方法としては、保持部材10を溶解させること、波長変換部材に遠心力を加えること等が考えられる。また、
図8Aに示すように、Ct1−Ct1線より上側に位置する保持部材10の一部を除去して、波長変換部材の上面及び下面を保持部材から露出させてもよい。このようにすると、
図8Bに示すように、保持部材の貫通孔内に形成された波長変換部材を得ることができるので、実施形態1と同様に、押出部材40で波長変換部材30を押して保持部材10から取り外すことができる。尚、各工程において支持部材20上における保持部材及び波長変換部材の上下方向の向きは適宜変更してもよい。
【0029】
以上の工程を経て、
図5に示すように、蛍光体31と透光性部材32とを含む複数の光透過部材50を得ることができる。光透過部材は保護部材の孔内で成形するため、切断工程を有していない。これにより、光透過部材の一面から
蛍光体が突き出ることを抑制することができる。
【0030】
<発光装置の作製>
工程A−1.光透過部材と発光素子の接着
図9に示すように、上述の方法で製造した光透過部材50と、発光素子60と、を透光性の接合部材70を用いて接着する。光透過部材50上に、複数の発光素子60を接着してもよい。発光素子60は、サファイア基板等の透光性基板61上に、半導体積層体62と、半導体積層体の上面に一対の電極63、64と、を備える。一対の電極を構成する2つの電極63、64の各々は、任意の形状にすることができる。尚、本明細書において、発光素子60の「電極形成面」は、電極63、64を含まない状態における発光素子60の面を指している。また、発光素子60は一対の電極を備える電極形成面601と、電極形成面に対して反対側にある面である光取り出し面602と、電極形成面601と光取り出し面602との間に位置する側面603と、を備える。本実施の形態では、電極形成面601は、半導体積層体62の上面と一致し、光取り出し面602は、透光性基板61の下面と一致する。
【0031】
接合部材70は、発光素子の光取り出し面602と光透過部材50とを接着する。接合部材70は、発光素子の光取り出し面602から発光素子の側面603まで被覆してもよい。接合部材70が発光素子の側面603まで被覆することで、発光素子と光透過部材の接着力が向上するので好ましい。接合部材70は、後述する反射部材よりも発光素子からの光の透過率が高い。このため、接合部材70が透光性基板61及び半導体積層体62の側面まで被覆することが好ましい。このようにすることで、発光素子60からの光を接合部材70を通して発光素子60の外側に取り出しやすくなる。
【0032】
透光性部材32内で蛍光体31が偏在している場合には、蛍光体が偏在された側の光透過部材50の面と、発光素子の光取り出し面602と、を接着することが好ましい。これにより、例えば蛍光体31として水分に弱いものを使用しても、透光性部材32が保護層としての機能を果たすので、蛍光体31が劣化することを抑制し、良好な色度を保つことができる。例えば、水分に弱い蛍光体31としてはフッ化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、塩化物系蛍光体、ケイ酸塩系蛍光体、リン酸塩系蛍光体等がある。
【0033】
工程A−2.反射部材の形成
図10に示すように、発光素子60の側面603と、光透過部材50の側面501と、接合部材70と、を被覆する反射部材80を形成する。また、発光素子60が複数ある場合は、隣接する発光素子60の間を埋めるように反射部材80を形成してもよい。更に、発光素子60の電極形成面601のうち、電極63、64が形成されていない部分も、反射部材80で覆ってもよい。このとき、電極63、64の一部が反射部材80から露出するように、反射部材80の厚さ(z方向の寸法)を調節してもよい。
【0034】
また、電極63、64を埋設する厚みの反射部材80を形成した後に、反射部材80の一部を除去し、電極63、64を露出させるようにしてもよい。反射部材80を除去する際は、当該分野で公知の方法のいずれを利用してもよい。例えば、エッチング、切削、研削、研磨、ブラスト等が挙げられる。
【0035】
工程A−3.光透過部材の一部の除去
図11Aに示すように、透光性部材32内で蛍光体31が偏在している場合には、Ct2−Ct2線より上側に位置する透光性部材32を除去してもよい。つまり、光透過部材の蛍光体が偏在された側と反対側の一部を除去してもよい。蛍光体が偏在された側と反対側の透光性部材を除去する場合は、実質的に蛍光体31が含まれない部分の透光性部材を除去することが好ましい。換言すると、透光性部材を除去する場合は透光性部材32のみを除去することが好ましい。これにより、透光性部材32内に含まれる蛍光体31の含有量を実質的に変化させることなく、
図11Bに示すように、光透過部材50を薄くすることができるので発光装置も薄くすることができる。また、実質的に蛍光体31が含まれない部分を除去するので、光透過部材の透光性部材を除去した面から蛍光体が突き出にくくなる。尚、光透過部材50を除去する時に、反射部材80の一部も除去してもよい。
【0036】
更に、上述したように波長変換部材の蛍光体を偏在させた側の面に対して反対側にある面を押して保持部材から取り外した場合には、蛍光体が偏在された側の面に対して反対側の透光性部材を除去することが好ましい。光透過部材の波長変換部材の蛍光体を偏在させた側の面とは反対の面に押し出した跡が付くおそれがあるが、蛍光体が偏在された側の面とは反対側の透光性部材を除去することで仮に光透過部材に跡がついたとしても跡を除去することができる。透光性部材及び/又は反射部材を除去する際は、当該分野で公知の方法のいずれを利用してもよい。例えば、エッチング、切削、研削、研磨、ブラスト等が挙げられる。
【0037】
工程A−4.発光装置の個片化
隣接する発光素子60の間を埋めるように反射部材80を形成した場合は、発光素子間において、反射部材80を切断することにより個々の発光装置に分割する。
図12Aに示すように、隣接する発光素子60の中間を通る破線X1、破線X2、破線X3および破線X4に沿って、反射部材80と、支持部材20とを、例えば、ダイサー等で切断し個片化する。最後に、支持部材20を除去することにより、発光装置を得る。また、反射部材80と、支持部材20と、を切断する時に支持部材20は完全に切断しない方が好ましい。つまり、
図12Bに示すように、切断部800により反射部材80は切り離され、支持部材20は切り離されていないことが好ましい。このようにすることで支持部材20が複数に分割されないので、支持部材20を一度に除去することができる。尚、切断前に支持部材20を除去し、その後に、反射部材80を切断してもよい。また、複数の発光素子60を含む位置で反射部材80を切断してもよい。
【0038】
以上の発光装置の製造方法では、光透過部材の側面を被覆する反射部材から光抜けを抑制できる。光透過部材は切断工程がない製造方法で製造するので光透過部材の一面から蛍光体が突き出ることを抑制できる。これにより、突き出た蛍光体が、光透過部材の側面を被覆する反射部材を貫通することや、蛍光体が突き出た分だけ反射部材の横方向の厚みが薄くなることを抑制できるので反射部材から発光素子の光が漏れることを抑制できる。
【0039】
以下に、実施形態1、2の光透過部材ならびに実施形態3の発光装置の各構成部材に適した材料等について説明する。
【0040】
(保持部材10)
保持部材10は、内側面が略平坦な面である孔を複数有する上面を備え、孔内に波長変換部材を充填することで光透過部材を成形する型である。保持部材10の材料としては、金属、樹脂等を用いることができる。波長変換部材を取り外す工程等で保持部材10を加工しない場合は、保持部材10の材料として金属を用いることが好ましい。金属を用いると、樹脂と比較して劣化しにくいので繰り返し使用できる。波長変換部材を取り外す工程等で保持部材10の加工をする場合は、保持部材10の材料として樹脂を用いることが好ましい。保持部材10の材料として樹脂を用いると、金属と比較して加工が容易になる。
【0041】
(波長変換部材30)
波長変換部材30は、照射された第一ピーク波長の光を、この第一ピーク波長とは波長の異なる第二ピーク波長の光に波長変換する部材である。波長変換部材30は、蛍光体31と透光性部材32とを含む。
【0042】
(蛍光体31)
蛍光体31としては、発光素子からの発光で励起可能な粒子が使用される。例えば、青色発光素子又は紫外線発光素子で励起可能な蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG:Ce)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG:Ce)、ユウロピウムおよび/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(CaO−Al
2O
3−SiO
2:Eu,Cr)、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体((Sr,Ba)
2SiO
4:Eu)、βサイアロン蛍光体、CASN系蛍光体、SCASN系蛍光体等の室化物系蛍光体;KSF系蛍光体等のフッ化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、塩化物系蛍光体、ケイ酸塩系蛍光体、リン酸塩系蛍光体などが挙げられる。これらの蛍光体と、青色発光素子又は紫外線発光素子と組み合わせることにより、様々な波長の発光装置を製造することができる。
【0043】
本実施形態1、2に係る製造方法では、光透過部材の製造時に切断工程がないので、硬度が高い蛍光体でも光透過部材の一面から蛍光体が突き出ることを抑制できる。硬度が高い蛍光体としては、βサイアロン蛍光体、CASN系蛍光体、SCASN系蛍光体が挙げられる。
【0044】
蛍光体として、水分に弱い蛍光体を用いてもよい。水分に弱い蛍光体としては、例えば、フッ化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、塩化物系蛍光体、ケイ酸塩系蛍光体、リン酸塩系蛍光体等がある。特にフッ化物系蛍光体であるK
2SiF
6:Mnが好ましい。例えば、従来のように大判蛍光体シートを切断して、蛍光体シートを個片化する場合には、切断時の熱を下げたり、切断時に発生する切断カスを洗い流したりする目的で水が用いられることが多い。しかし、水を用いた切断では水分に弱い蛍光体が劣化するおそれがあった。本実施形態1、2に係る製造方法では、光透過部材を個片化する場合に水を用いなくてもよいので水分に弱い蛍光体を用いることもできる。
【0045】
また、アスペクト比が1.5以上ある蛍光体を用いてもよい。尚、本明細書において、アスペクト比とは、日本工業規格(JIS Z 8900−1:2008)に則り、走査型電子顕微鏡を用いて100個以上の粒子を撮影した粒子群の画像から粒子の最大長径と最大長径に直交する幅を測定し、平均の長径と幅を求め、その比をアスペクト比とする。従来のように、大判蛍光体シートを切断して蛍光体シートを個片化する場合に、蛍光体のアスペクト比が高いほど光透過部材の一面から蛍光体が突き出やすい。アスペクト比が高い楕円形状は、アスペクト比が小さい円形状と比較して、同じ粒径でも切断面と垂直方向における蛍光体の幅がバラつくためである。本実施形態1、2に係る製造方法では、光透過部材の製造時に切断工程がないので、アスペクト比が1.5以上ある蛍光体でも光透過部材の一面から蛍光体が突き出ることを抑制できる。アスペクト比が高い蛍光体としては、例えば、βサイアロン蛍光体が挙げられる。
【0046】
(透光性部材32)
透光性部材の材料としては、透光性を有する樹脂材料又はガラス材料等を用いることができる。透光性部材の樹脂材料としては、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。特に、耐光性、耐熱性に優れるシリコーン樹脂が好適である。尚、透光性樹脂は、光の透過率が高いことが好ましい。
【0047】
(光拡散材)
輝度ムラや色ムラの改善のために波長変換部材に光拡散材を含有させてもよい。光拡散材の材料として、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などを用いることができる。特に、酸化チタンは、水分などに対して比較的安定でかつ高屈折率であるため好ましい。
【0048】
(発光素子60)
発光素子60は、窒化物半導体等から構成される既知の半導体素子を適用できる。発光素子の発光波長は、可視域(380〜780nm)を含め、紫外域も選択することができる。例えば、ピーク波長430〜490nmの発光素子としては、窒化物半導体を用いることができる。その窒化物半導体としては、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等を用いることができる。発光素子は、透光性基板61と、その上に形成された半導体積層体62と、電極63、64と、を含む。
【0049】
(透光性基板61)
発光素子の透光性基板には、例えば、サファイア(Al
2O
3)等の透光性の絶縁性材料や、半導体積層体からの発光を透過する半導体材料(例えば、窒化物系半導体材料)を用いることができる。
【0050】
(接合部材70)
接合部材は、透光性樹脂により構成することができる。透光性樹脂としては、特に、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性の透光性樹脂であるのが好ましい。接合部材は発光素子と接触しているので、点灯時に発光素子で発生する熱の影響を受けやすい。熱硬化性樹脂は、耐熱性に優れているので、接合部材に適している。なお、接合部材は、発光素子からの光の透過率が高いことが好ましい。
【0051】
(反射部材80)
反射部材は、光反射性樹脂により構成することができる。光反射性樹脂とは、発光素子からの光に対する反射率が高く、例えば、反射率が70%以上の樹脂を意味する。光反射性樹脂としては、例えば透光性樹脂に、光反射性物質を分散させたものを使用できる。光反射性物質としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどを用いることができる。光反射性物質は、粒状、繊維状、薄板片状などを用いることができる。特に、繊維状の光反射性物質のものは反射部材の熱膨張率を低くして、例えば、発光素子との間の熱膨張率差を小さくできるので、好ましい。光反射性樹脂に含まれる樹脂材料としては、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性の透光性樹脂であるのが好ましい。特に、耐光性、耐熱性に優れるシリコーン樹脂が好適である。
【0052】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。