(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一方のダンパ室のノズル配列方向における端部壁面と前記他方のダンパ室のノズル配列方向における端部壁面とは、ノズル配列方向において異なる位置に配置されている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出ヘッド。
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化した
ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの一例について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同ヘッドの外観斜視説明図、
図2は
図1のX−X線に沿うノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、
図3は
図2のA−A線に沿う断面説明図である。
【0012】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板2と、流路部材である流路板3と、壁面部材を兼ねる振動板部材4と、第2共通液室部材5と、フィルタ部材6と、第1共通液室部材7と積層を接合している。
【0013】
ノズル板2には、液滴を吐出する複数のノズル20が千鳥状に2列配列されている。このノズル板2は、例えば、ステンレス(ここでは、SUS316)を用いてプレス加工でノズル20を形成している。
【0014】
流路板3は、ノズル20に通じる個別液室である個別液室21と、個別液室21に通じる流体抵抗部27と、流体抵抗部27が通じる液導入部28とを形成している。この流路板3は、例えばステンレス(ここではSUS316)を用いてプレス加工で形成し、プレスによる変形、バリは両面研磨によりほぼ平らとなるように後処理をした。
【0015】
振動板部材4は、個別液室21の一部の壁面を変位可能な振動領域4aとして形成する。また、振動板部材4には、フィルタ下共通液室25に臨み、フィルタ下共通液室25と各個別液室21の液導入部28とを通じる液体供給路22が形成されている。この振動板部材4は、Ni電鋳で形成している。
【0016】
そして、振動板部材4の個別液室21と反対側には第2共通液室部材5、フィルタ部材6、このヘッドのフレームを兼ねる第1共通液室部材7を順次積層して接着剤で接合している。
【0017】
第1共通液室部材7と第2共通液室部材5とによって各個別液室21に通じる共通液室10を形成する共通液室部材を構成している。共通液室10は、フィルタ部材6の上流側のフィルタ上共通液室26と、下流側のフィルタ下共通液室25とで形成されている。
【0018】
フィルタ部材6には、多数のフィルタ孔を形成したフィルタ領域29が設けられ、フィルタ上共通液室26からフィルタ下共通液室25に流れる液体から異物を捕集する。
【0019】
第1共通液室部材7は、フィルタ上共通液室26を形成し、外部から液体を供給するための図示しない液体供給口部が設けられている。液体供給口部は、フィルタ上共通液室26の長手方向の両端にそれぞれ配置されている。
【0020】
振動板部材4の振動領域4aの個別液室21とは反対側に圧電アクチュエータ8を配置している。
【0021】
圧電アクチュエータ8は、2列のノズル列に合わせて1つのベース部材33に例えばノズルピッチの半分のピッチで柱状の圧電素子(圧電柱)32Aを形成した2つの圧電部材32を接合している。圧電部材32の各圧電柱は振動板部材4の振動領域4aに形成された凸部4bと接合されて、フレキシブル配線部材34に備えられる駆動IC81からフレキシブル配線部材34を介して駆動信号が与えられる。
【0022】
また、流路板3と共通液室部材(第2共通液室部材5)とは壁面部材である振動板部材4を挟んで積層されている。
【0023】
そして、フィルタ下共通液室25の壁面を形成する振動板部材4の部分の一部は変形可能な領域(ダンパ)24とし、流路板3にはダンパ24を挟んでフィルタ下共通液室25に対向するダンパ室35を形成している。
【0024】
このダンパ室35は、流路板3に形成した大気開放路42、振動板部材4に形成したか大気開放穴43及び圧電部材32に形成した大気開放路44を通じて、大気に開放されている。
【0025】
この液体吐出ヘッドでは、圧電アクチュエータ8を駆動することで振動板部材4の振動領域4aが変位して、個別液室21の液体が加圧されて、ノズル20から液滴が吐出される。
【0026】
次に、本発明の第1実施形態について
図4及び
図5も参照して説明する。
図4は同実施形態の説明に供する流路板を振動板部材側から見た平面説明図、
図5は同じく振動板部材を第2共通液室部材側から見た平面説明図である。
【0027】
流路板3のノズル配列方向と直交する方向の端部側に、ノズル配列方向に沿って、振動板部材4のダンパ24に対応する凹状のダンパ室35を形成している。ダンパ室35は、ダンパ24を挟んでフィルタ下共通液室25に対向する。
【0028】
このダンパ室35のノズル配列方向両端部には、ダンパ室35を大気に開放する(大気に通じる)大気開放路42をそれぞれ設けている。大気開放路42は、前述したように、振動板部材4の大気開放穴43及び圧電部材32の大気開放路44を通じて大気に通じ、ダンパ室35が大気に開放されている。
【0029】
そして、ダンパ室35の凹状の底部35aには支柱部である壁部51が設けられている。壁部51は、ノズル配列方向と直交する方向の壁面35b、35b間に部分的に(通路52となる隙間を残して)設けられることで、空気が通じる通路52が形成されている。なお、壁部51は壁面35bと一体に形成されているが、平面図では見やすくするために壁面35bとは区別して図示している。
【0030】
壁部51は、ノズル配列方向で複数設けられ、隣り合う壁部51の通路52は、ノズル配列方向と直交する方向では異なる位置に設けられている。
【0031】
また、ダンパ24には、ノズル配列方向に並ぶ複数のリブ53が設けられて、複数の領域24aに区画されている。1つの領域24aは2以上の個別液室21に対応している。
【0032】
なお、本実施形態では、リブ53はダンパ24と一体に形成しているが、リブ53が形成された部材をダンパ24に貼り付けて形成しても良い。
【0033】
そして、ダンパ室35は、ノズル配列方向において、複数の個別液室21の内のノズル配列方向端部に位置する個別液室21、21よりも外側まで延びている。
【0034】
つまり、ダンパ室35のノズル配列方向の最も短い幅(長さ)L1は、ノズル配列方向において並ぶ複数の個別液室21の列の両端の最大幅L2よりも広く(L1>L2)形成されている。そして、ダンパ室35の幅L1内に複数の個別液室21がすべて配置されている。
【0035】
このように、ダンパ室35が、ノズル配列方向において、複数の個別液室21の内のノズル配列方向端部に位置する個別液室21、21よりも外側まで延びていることで、ノズル配列方向に沿う方向おける剛性のばらつきを低減することができる。これにより、ノズル配列方向における吐出特性のばらつきを低減できる。
【0036】
すなわち、流路板3にノズル配列方向に沿って凹部からなるダンパ室35を形成した場合、ヘッドのノズル配列方向の中央部にダンパ室35による剛性の低い部分が生じる。そして、ノズル配列方向のダンパ室35の端部外側では剛性が相対的に高くなる。
【0037】
その結果、圧電アクチュエータ8によって同じ圧力を与えたとしても、剛性の低いノズル配列方向の中央部の領域では変形によって圧力が吸収されるためにノズルから吐出される液体の吐出速度が、ノズル配列方向の端部の領域のノズルから吐出される液体の吐出速度よりも低下する。
【0038】
そこで、複数の個別液室21が配置されている領域を含んでダンパ室35を配置することで、複数の個別液室21が配置されている領域での剛性のばらつきを低減することができる。
【0039】
これにより、ノズル配列方向の端部の領域の個別液室21を加圧したとき、中央部の領域の個別液室21と同様に圧力が吸収されるため、中央部の領域のノズルから吐出される液体の吐出速度と端部の領域のノズルから吐出される液体の吐出速度とほぼ同じになり、ばらつきが低減する。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態について上記
図4とともに
図6を参照して説明する。
図6は同実施形態の説明に供する振動板部材を第2共通液室部材側から見た平面説明図である。
【0041】
本実施形態では、ダンパ24のノズル配列方向における幅L4は、ダンパ室35の幅L1以上とし、ここでは、
図4の幅L3と同じにしている。
【0042】
これにより、ノズル配列方向における剛性のばらつきをより低減することができる。
【0043】
次に、本発明の第3実施形態について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は同実施形態の説明に供する平面説明図、
図8は同じく要部断面説明図である。
【0044】
本実施形態では、ダンパ24のリブ53とダンパ室35内の壁部51は対向する位置に設けられている。
【0045】
これにより、流路板3と振動板部材4を接合するときにダンパ室35の領域でも確実に加圧することができ、振動板部材4と流路板3との接合強度を確保できる。これにより、流路板3の剛性を十分に確保できる。
【0046】
次に、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドについて
図9ないし
図11を参照して説明する。
図9は同ヘッドの分解斜視説明図、
図10は
図12のA−A線に相当する断面説明図、
図11は
図10のB−B線に沿う断面説明図、
図12は同ヘッドの各部材をノズル側から見た平面説明図、
図13は同ヘッドの各部材を圧電アクチュエータ側からみた平面説明図である。
【0047】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板101と、流路板102と、振動板部材103と、圧電アクチュエータ111と、フレーム部材を兼ねる共通液室部材120とを備えている。
【0048】
10
ノズル板101には、液滴を吐出する複数のノズル104が配列された2つのノズル列104A、104Bを有している。
【0049】
流路板102は、ノズル104が通じる個別液室106、個別液室106に液体を供給する液体供給路となる流体抵抗部107、流体抵抗部107の上流側の液導入部108を形成している。この流路板102は、例えばステンレス(SUS304など)を用いてプレス加工で形成している。
【0050】
振動板部材103は、個別液室106の一部の壁面を変位可能な振動領域103aを有する。また、振動板部材103には、共通液室110に臨み、共通液室110と各個別液室106の入口側である液導入部108とを通じる開口部109が形成されている。この振動板部材103は、二層構造をなし、Ni電鋳で形成している。
【0051】
そして、振動板部材103の個別液室106と反対側には、共通液室部材120を接合している。
【0052】
また、振動板部材103の振動領域103aの個別液室106とは反対側に圧電アクチュエータ111を配置している。
【0053】
圧電アクチュエータ111は、2列のノズル列に合わせて1つのベース部材113に例えばノズルピッチの半分のピッチで柱状の圧電素子112を2列並べて接合している。圧電素子112は振動板部材103の振動領域103aに形成された凸部と接合され、フレキシブル配線部材119を介して駆動信号が与えられる。
【0054】
この圧電アクチュエータ111は、共通液室部材120に設けたアクチュエータ挿入穴121内に挿入されて配置されている。
【0055】
共通液室部材120には、各個別液室106に液体を供給する共通液室110が形成されている。そして、共通液室110に外部から液体を供給する液体供給口部122が形成されている。
【0056】
この液体吐出ヘッドでは、例えば圧電素子112に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子112が収縮し、振動板部材103の振動領域103aが変形して個別液室106の容積が膨張することで、個別液室106内に液体が流入する。その後、圧電素子112に印加する電圧を上げて圧電素子112を積層方向に伸長させ、振動領域103aをノズル104方向に変形させて個別液室106内の液体を加圧することで、ノズル104から液体が吐出される。
【0057】
そして、圧電素子112に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動領域103aが初期位置に復元し、個別液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から個別液室106内に液体が充填される。そこで、次の吐出のための動作に移行する。
【0058】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0059】
次に、本実施形態におけるダンパに係わる構成について
図14も参照して説明する。
図14は流路板のダンパ室形状の説明に供する振動板側から見た平面説明図である。
【0060】
本実施形態では、ノズル列104A,104B毎に、ノズル104が通じる個別液室106に対して液体を供給する共通液室110と、ノズル配列方向に沿って共通液室110の壁面を形成するダンパ131と、ダンパ131を挟んで共通液室110と反対側に配置されたダンパ室132とを備えている。
【0061】
ダンパ131は振動板部材103の一部の層で構成している。また、ダンパ室132は流路板102に設けた凹部で構成している。ノズル列4A側をダンパ室132A、ノズル列4B側をダンパ室132Bとする。
【0062】
ダンパ室132A、32Bには、ダンパ131を支持する支柱部133A、133Bが配置されている。支柱部133A、133Bはダンパ131と接合されている。
【0063】
一方のダンパ室132Aの支柱部133Aと他方のダンパ室132Bの支柱部133Bとは、ノズル配列方向において異なる位置に配置されている。ここでは、ダンパ室132Aの支柱部133Aとダンパ室132Bの支柱部133Bとは、ノズル配列方向において、互い違いになるように配置されている。
【0064】
このように構成することで、複数のノズル列104A、104Bを有する場合にノズル配列方向において吐出特性が異なるノズル104を分散することができる。
【0065】
つまり、支柱部133が配置されている部分と支柱部133がない部分とではダンパとして機能の差異が生じ、支柱部133に対応する(ノズル配列方向で同じ位置又は隣の位置)個別液室106と支柱部133に対応しない個別液室106とでは、共通液室110から再伝搬する圧力波が異なってくる。そのため、ノズル104の吐出特性、特に吐出速度が異なり、着弾位置が目標着弾位置からずれることになる。
【0066】
ここで、2つのノズル列104A、104Bに対応するダンパ室132Aの支柱部133Aとダンパ室132Bの支柱部133Bとがノズル配列方向において同じであると、2つのノズル列104A、104Bで1列分の吐出を行うとき、支柱部133が配置されるノズル104が集中し、着弾位置ずれによる濃度ムラが目立ち易くなる。
【0067】
そこで、2つのノズル列104A、104Bに対応するダンパ室132Aの支柱部133Aとダンパ室132Bの支柱部133Bとを千鳥状配置とすることで、着弾位置がずれるノズル104が離間し、濃度ムラの発生が目立ち難くなる。これにより、画像品質が向上する。
【0068】
また、本実施形態では、ノズル配列方向において、2つのノズル列104A、104B相互間で隣り合う一方のダンパ室132Aの支柱部133Aと他方のダンパ室132Bの支柱部133Bとの間隔L11は、2.5mm以上としている。
【0069】
これにより、濃度ムラを目立ち難くしながら、ダンパ性能を確保することができる。
【0070】
すなわち、流路板102にダンパ室132となる凹部を形成した場合、振動板部材103との接合強度を確保するためには、上述した支柱部133が必要になるが、支柱部133を設けることによる濃度ムラが発生する。そこで、この濃度ムラに起因するVTF特性(視覚の空間周波数特性)を下げることで濃度ムラを目立ちにくくし、かつ、十分なコンプラアンスを確保する必要がある。
【0071】
ここで、
図15に示すVTF特性(VTF1)において、感度(Normalized sensitivity)が0.5以下となるように、空間周波数(spatial frequency)を2.5mm以上とする。つまり、2.5mm毎の頻度で繰り返されるようにする。
【0072】
この
図15に示すVTF特性からは、空間周波数を0.2mm、0.1mm、0.05mmと小さくすることで濃度ムラの特性を抑えることができる可能性があるが、一方で、ダンパ131のコンプラアンスを確保しなければならない。
【0073】
一般的に、ダンパ性能はコンプライアンスの大きさで決定する。ダンパのコンプラインスCは、ダンパ長手寸法L、ダンパ短手寸法W、ヤング率E、ダンパ厚さt、とするとき、C=8LW
5/(15×35×Et
3)、で求められる。複数Xのダンパがある場合はC=C1+C2+・・・・・CXで求めることができる。
【0074】
したがって、ダンパのコンプライアンスCは、ダンパ長手寸法Lの1乗、ダンパ短手寸法Wの5乗、ンパ厚さtの3乗であり、最もコンプライス性能に影響を及ぼす性能はダンパの短手寸法Wになる。
【0075】
そのために、VTF特性を確保しつつ、コンプライアンスCを満足するためには、L=2.5mm以上の間隔が必要になってくる。
【0076】
次に、本発明の第5実施形態について
図16を参照して説明する。
図16は同実施形態における流路板のダンパ室形状の説明に供する振動板側から見た平面説明図である。
【0077】
本実施形態では、一方のダンパ室132Aのノズル配列方向における端部壁面132Aaと他方のダンパ室132Bのノズル配列方向における端部壁面132Baとは、ノズル配列方向において異なる位置に配置されている。
【0078】
ここでは、一方のダンパ室132Aの端部壁面132Aa、132Aa間の距離Laを他方のダンパ室132Bの端部壁面132ba、132Ba間の距離Lbよりも長くすることで、ダンパ室132Aの端部壁面132Aaとダンパ室132Bの端部壁面132Baとのノズル配列方向における位置を異ならせている。
【0079】
すなわち、ダンパ室132A、132Bのノズル配列方向における端部壁面132Aa、132Baはダンパ131の固定端となるので、支柱部133A、133Bが配置された箇所と同様に、圧力波の減衰ないし吸収特性に影響が生じる。
【0080】
そこで、ダンパ室132Aの端部壁面132Aaとダンパ室132Bの端部壁面132Baとのノズル配列方向における位置を異ならせることで、着弾位置ずれの集中を分散することができる。
【0081】
この場合、ダンパ室132の端部壁面132Aaとダンパ室132Bの端部壁面132Baとのノズル配列方向における間隔L12も2、5mm以上にすることが好ましい。
【0082】
また、本実施形態では、一方のダンパ室132Aの端部壁面132Aa、132Aa間の距離Laを他方のダンパ室132Bの端部壁面132Ba、132Ba間の距離Lbよりも長くすることで、ダンパ室132Aの端部壁面132Aaとダンパ室132Bの端部壁面132Baとのノズル配列方向における位置を異ならせている。
【0083】
これにより、支柱部133から端部壁面132Aa、132Baまでの距離Lca、Lcbを同じにすることができる。
【0084】
次に、本発明の第6実施形態について
図17を参照して説明する。
図17は同実施形態における流路板のダンパ室形状の説明に供する振動板側から見た平面説明図である。
【0085】
本実施形態では、ダンパ室132Aの端部壁面132Aa、132Aa間の距離Laと他方のダンパ室132Bの端部壁面132Ba、132Ba間の距離Lbを同じにし、ノズル配列方向において反対側の端部壁面132Aa1と端部壁面132Ba1を中央部側に寄せることで、ダンパ室132Aの端部壁面132Aaとダンパ室132Bの端部壁面312Baとのノズル配列方向における位置を異ならせている。
【0086】
このようにすれば、2つのダンパ室132A、132Bの形状を対称形状とすることができる。
【0087】
なお、上記実施形態では、ノズル列が2列である例で説明しているが、3列以上のノズル列を有する場合にも同様に適用することができる。
【0088】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図18及び
図19を参照して説明する。
図18は同装置の要部平面説明図、
図19は同装置の要部側面説明図である。
【0089】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0090】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0091】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0092】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0093】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0094】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0095】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0096】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0097】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0098】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0099】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0100】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
【0101】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0102】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図20を参照して説明する。
図20は同ユニットの要部平面説明図である。
【0103】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0104】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0105】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図21を参照して説明する。
図21は同ユニットの正面説明図である。
【0106】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0107】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0108】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の例について
図22及び
図23を参照して説明する。
図22は同装置の概略説明図、
図23は同装置のヘッドユニットの平面説明図である。
【0109】
この装置は、連続媒体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続媒体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続媒体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続媒体510を乾燥する乾燥手段507と、連続媒体510を排出する排出手段509などを備えている。
【0110】
連続媒体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、排出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、排出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0111】
この連続媒体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット555から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0112】
ここで、ヘッドユニット550には、例えば、媒体搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイ551K、551C、551M、551Y(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ551」という。)が配置されている。
【0113】
各ヘッドアレイ551は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される媒体510に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0114】
ヘッドアレイ551は、例えば、
図23に示すように、本発明に係る複数の液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)1000をベース部材552上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。また、ヘッドアレイ551は、液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに液体供給するヘッドタンクとで構成しているが、これに限るものではなく、液体吐出ヘッド単独の構成でもよい。
【0115】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0116】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0117】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0118】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0119】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0120】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0121】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0122】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0123】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0124】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0125】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0126】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0127】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0128】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0129】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0130】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0131】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0132】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0133】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。