(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分級脚の排出口より下の部分には母液の上昇流によって上昇しない比較的粒径が大きい結晶が堆積する。そうすると、分級脚の底部から導入される母液の流速が遅くなり、排出口から所望の粒径の結晶が排出されなくなる。また、堆積した結晶により分級脚の底部が閉塞すると、結晶を分級できなくなり、操業を停止する必要が生じる。
【0005】
そこで、結晶の堆積状況の確認も兼ねて、分級脚の下部に堆積した結晶を母液とともに抜き取る作業が定期的に頻繁に行われる。従来、分級脚の下部から抜き取られたスラリー(結晶を含む母液)は、晶析装置が設置された床面に直接撒かれていた。そして、床面に広がったスラリーを洗浄するために、また、床面に散らばった結晶を溶解するために、大量の洗浄水で床面を洗浄していた。
【0006】
スラリーには有価物が含まれるため製造プロセスの系内に戻すことが好ましい。スラリーは床面に存在する異物や異液などの汚染物質によって汚染されるため、そのままでは晶析装置に戻すことがでず、上流工程に戻していた。上流工程では処理液を繰り返し処理することになるため、プロセス全体の処理効率が低下し、処理コストが増加した。しかも、大量の洗浄水も上流工程に供給され、プロセス全体の処理液量が増加するため、プロセス全体の処理効率が低下し、処理コストが増加した。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、晶析装置の分級脚から抜き取られたスラリーに含まれる結晶を少ない洗浄水で溶解できる受け器を提供することを目的とする。
また、晶析装置の分級脚から抜き取られたスラリーを晶析装置に戻すことができる晶析設備、および晶析設備の操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の受け器は、晶析装置の分級脚の
スラリー排出口より下の部分から抜き取られた、結晶と母液とを含むスラリーを受ける受け器であって、
前記分級脚の前記スラリー排出口より下の部分の容積と同じかそれより大きい容積を有する容器と、前記容器を上部空間と下部空間とに区分けするよう配置され
、前記スラリー中の結晶のうち大径の結晶をその上面に残留させるスクリーンと、前記上部空間に設けられ、前記スラリーが供給される供給口と、前記下部空間に設けられ、前記母液を排出する排出口と、を備えることを特徴とする。
第2発明の受け器は、第1発明において、前記スクリーンは水平面に対して傾斜して設けられていることを特徴とする。
第3発明の受け器は、第2発明において、前記容器は、その上面のうち前記スクリーンの傾斜下側に相当する部分に開口部を有することを特徴とする。
第4発明の受け器は、第3発明において、前記容器の上面のうち前記スクリーンの傾斜上側に相当する部分を閉塞する天板と、前記天板の前記開口部側の縁部と前記スクリーンとの間の一部を閉塞する邪魔板と、を備え、前記供給口は前記天板に設けられていることを特徴とする。
第5発明の受け器は、第1、第2、第3または第4発明において、前記スクリーンはウェッジワイヤースクリーンであることを特徴とする。
第6発明の受け器は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記スクリーンの目開きが1〜3mmであることを特徴とする。
第7発明の晶析設備は、
結晶と母液とを含むスラリーを受ける受け器であって、容器と、前記容器を上部空間と下部空間とに区分けするよう配置されたスクリーンと、前記上部空間に設けられ、前記スラリーが供給される供給口と、前記下部空間に設けられ、前記母液を排出する排出口と、を備える受け器と、分級脚を有する晶析装置と、前記供給口に接続され、前記分級脚の
スラリー排出口より下の部分から抜き取った前記スラリーを前記受け器に送液する抜取流路と、前記排出口に接続され、前記受け器から排出された前記母液を前記晶析装置に送液する戻り流路と、を備えることを特徴とする。
第8発明の晶析設備は、第7発明において、前記排出口から排出された前記母液を前記受け器に送液する循環流路を備えることを特徴とする。
第9発明の晶析設備の操業方法は、請求項7または8記載の晶析設備の操業方法であって、前記分級脚から前記スラリーを抜き取って前記受け器に供給し、
洗浄水を掛けること、および/または、前記母液に浸漬することにより、前記スクリーンの上面に残留した結晶を溶解し、前記受け器から排出された前記母液を前記晶析装置に送液することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、晶析装置の分級脚から抜き取られたスラリーに含まれる結晶がスクリーンの上面にまとまって残留するので、少ない洗浄水で結晶を溶解できる。
第2発明によれば、スクリーンが傾斜しているので、スクリーンの上面に残留した結晶は傾斜下側に溜まる。溜まった結晶に洗浄水を掛けたり、母液に浸漬したりすることで結晶を溶解できる。そのため、結晶を溶解する作業が容易である。
第3発明によれば、容器上面の開口部から結晶に向けて洗浄水を掛けることで、結晶を溶解できる。
第4発明によれば、供給口と開口部との間に邪魔板が設けられているので、供給口から落下したスラリーがスクリーンに当って跳ねても、開口部から受け器の外側に飛び散ることを抑制できる。
第5発明によれば、スクリーンがウェッジワイヤースクリーンであるので、結晶により目詰まりしにくい。
第6発明によれば、スクリーンの目開きが3mm以下であるので、受け器から排出された母液に含まれる結晶が大きすぎず、配管の閉塞が発生しにくい。スクリーンの目開きが1mm以上であるので、スクリーンが結晶により目詰りしにくい。
第7発明によれば、晶析装置の分級脚から抜き取られたスラリーを受け器で受け取るので、母液が汚染されず、母液を晶析装置に戻すことができる。
第8発明によれば、母液を受け器に循環させることで、スクリーンの上面に残留した結晶を母液に浸漬して溶解できる。そのため、洗浄水の使用量を低減できる。
第9発明によれば、スクリーンの上面に残留した結晶を溶解するので、分級脚から抜き取られたスラリーに含まれる結晶も、母液として、または小径の結晶として晶析装置に戻すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(硫酸ニッケル結晶製造プロセス)
本実施形態の晶析設備1は、硫酸ニッケル結晶の製造プロセスの晶析工程に好適に用いられる。まず、
図5に基づき、硫酸ニッケル結晶の製造プロセスを説明する。
【0012】
原料としてニッケル・コバルト混合硫化物(MS:Mixed Sulfide)が用いられる。低品位ラテライト鉱などのニッケル酸化鉱石を加圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leaching)し、浸出液から鉄などの不純物を除去した後、硫化水素ガスを浸出液に吹き込み硫化反応を生じさせることで、ニッケル・コバルト混合硫化物が得られる。
【0013】
ニッケル・コバルト混合硫化物の化学組成は、Niが45〜50重量%、Coが4〜6重量%、Sが35〜39重量%(いずれも乾燥量基準)である。ニッケル・コバルト混合硫化物には、鉄、銅、亜鉛などの不純物が含まれている。
【0014】
加圧浸出工程では、ニッケル・コバルト混合硫化物を含むスラリーを、オートクレーブで加圧浸出する。浸出条件は、例えば圧力1.8〜2.0MPaG、温度140〜180℃である。加圧浸出により、ニッケル・コバルト混合硫化物に含まれるニッケル、コバルト、その他の不純物が浸出され、粗硫酸ニッケル水溶液が得られる。
【0015】
加圧浸出反応は、以下の式1および式2で表される。
NiS+2O
2→Ni
2++SO
42-・・・(式1)
CoS+2O
2→Co
2++SO
42-・・・(式2)
【0016】
脱鉄工程では、粗硫酸ニッケル水溶液に中和剤を添加して中和することで、粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる不純物、主に鉄を中和澱物として除去する。中和剤としては、例えば消石灰が用いられる。
【0017】
脱鉄反応は、以下の式3で表される。
4FeSO
4+4Ca(OH)
2+O
2+2H
2O→4Fe(OH)
3+4CaSO
4・・・(式3)
【0018】
溶媒抽出工程では、溶媒抽出により粗硫酸ニッケル水溶液からコバルトおよび不純物を除去して高純度硫酸ニッケル水溶液を得る。溶媒抽出工程は、抽出段、洗浄段、交換段、ニッケル回収段、コバルト回収段、逆抽出段からなる。抽出段では高純度硫酸ニッケル水溶液中のニッケルを有機相に抽出し、ニッケル保持有機相を得る。洗浄段ではニッケル保持有機相を、ニッケルを含有する洗浄液で洗浄する。交換段では洗浄後のニッケル保持有機相と粗硫酸ニッケル水溶液とを接触させて、ニッケル保持有機相中のニッケルと粗硫酸ニッケル水溶液中の不純物とを置換し、高純度硫酸ニッケル水溶液を得る。交換段で得られた有機相をニッケル回収段、コバルト回収段、逆抽出段に送ることで、有機相に担持されたニッケルの回収、コバルトの回収、不純物の除去を行う。清浄化された有機相は抽出段に供給される。
【0019】
晶析工程では、晶析設備を用いて高純度硫酸ニッケル水溶液を濃縮し、硫酸ニッケル結晶を回収する。
【0020】
高純度硫酸ニッケル水溶液の化学組成は、例えば、Niが110〜130g/L、Coが6mg/L以下、Caが15mg/L以下、Mgが6mg/L以下、その他重金属成分が1mg/L以下である。また、70mg/L以下のNa、63mg/L以下のClが含まれる。
【0021】
硫酸ニッケル結晶の化学組成は、例えば、Niが22〜23重量%、Coが10重量ppm以下、Cuが1重量ppm以下、Feが1重量ppm以下、Mnが1重量ppm以下、Pbが1重量ppm以下、Znが1重量ppm以下、Mgが100重量ppm以下、Siが50重量ppm以下、Clが30重量ppm以下、Naが20重量ppm以下、Caが30重量ppm以下、Kが10重量ppm以下、NH
4が10重量ppm以下である。
【0022】
(晶析設備)
つぎに、本実施形態の晶析設備1を説明する。
図1に示すように、晶析設備1は晶析装置10を備えている。
図2に示す晶析装置10は、DTB(Draft Tube Baffle)型連続晶析装置である。
【0023】
晶析装置10は晶析缶11を有している。晶析缶11の内部には、その中心部にドラフトチューブ12が配置されている。ドラフトチューブ12内の下部には撹拌翼13が配置されている。撹拌翼13はシャフト14を介してモータ15に接続されており、モータ15の駆動により回転する。モータ15は晶析缶11の頂部に設けられている。
【0024】
晶析缶11の液面より上方には蒸気排出口16が設けられている。蒸気排出口16は配管を介して真空ポンプ17に接続されている。真空ポンプ17の駆動により、晶析缶11の内部が所定の圧力に調整されている。
【0025】
晶析缶11の周囲には、円筒状のバッフル18と、その外側の外筒19とが設けられている。バッフル18と外筒19とにより、下方が開口したドーナツ形の分級部20が形成されている。また、晶析缶11の下部には分級脚21が設けられている。
【0026】
晶析缶11の下部には少なくとも2つの給液口22a、22bが設けられている。分級部20の上部には少なくとも2つの母液排出口23a、23bが設けられている。分級脚21の底部には母液供給口24が設けられ、中腹部にはスラリー排出口25が設けられている。
【0027】
一方の給液口22bには原液が供給される。給液口22bから晶析缶11内に供給された原液は、撹拌翼13の作用によりドラフトチューブ12の内部を上昇し、外部を下降する。その過程で原液に含まれる水分が蒸発し、結晶化が行われる。晶析缶11内には結晶と母液とを含むスラリーが循環している。
【0028】
一方の母液排出口23aと他方の給液口22aとは配管26により接続されている。配管26にはポンプ27と熱交換器28とが介装されている。ポンプ27は母液排出口23aから給液口22aに向かって母液を送液する。母液排出口23aから排出された母液は熱交換器28で加熱された後、給液口22aから晶析缶11内に供給される。
【0029】
晶析缶11内のスラリーは、水分が蒸発することにより熱が奪われるため液温が低下する。熱交換器28で母液を加熱することによりスラリーの液温が一定に保たれる。また、母液排出口23aから排出された母液には微細な結晶が含まれる。熱交換器28で母液を加熱することにより、微細な結晶が溶解する。
【0030】
他方の母液排出口23bと母液供給口24とは、ポンプ29が介装された配管30により接続されている。ポンプ29は母液排出口23bから母液供給口24に向かって母液を送液する。母液供給口24から供給される母液により、分級脚21の内部には上昇流が発生する。上昇流により結晶は、粒径が小さいものほど分級脚21の上部に上昇し、粒径が大きいものほど分級脚21の下部に下降する。すなわち、分級脚21の内部で結晶の分級が行われる。
【0031】
分級脚21の中腹部に設けられたスラリー排出口25からスラリーを排出することで、所望の粒径の結晶を取り出すことができる。スラリー排出口25から取り出される結晶の粒径は、分級脚21内の上昇流の流速、すなわちポンプ29の吐出流量により調整できる。
【0032】
晶析装置10における晶析条件は、例えば、温度が32〜53℃、圧力が4〜12kPaに調整される。また、製品として回収される結晶の粒径は、0.4〜2.0mmが90重量%を超えるように調整される。
【0033】
図1に示すように、スラリー排出口25から排出されたスラリーは遠心分離機40に供給され、結晶と脱水母液とに分離される。脱水された結晶は、乾燥した後に、紙袋やフレキシブルコンテナなどに収容される。
【0034】
脱水母液は母液槽41に一時貯留される。母液槽41にはポンプ42が介装された配管43が接続されている。ポンプ42の駆動により母液槽41から母液が排出される。配管43は配管44と排出配管45とに分岐している。
【0035】
配管44は原液槽46に接続している。母液槽41から排出された母液は配管44を介して原液槽46に供給される。原液槽46には原液として溶媒抽出工程で得られた高純度硫酸ニッケル水溶液が供給されている。原液槽46において原液に母液が混合される。原液槽46と晶析装置10の給液口22bとは配管47で接続されている。配管47に介装されたポンプ48の駆動により、原液槽46から晶析装置10に原液が送液される。
【0036】
このように、結晶を脱水して得られた脱水母液は、晶析装置10に繰り返し供給している。そのため、晶析装置10の運転を継続するにしたがい、母液の不純物濃度が上昇する。
【0037】
そこで、母液槽41から排出された母液の一部を、排出配管45を介して晶析設備1から排出する。これにより、晶析設備1から不純物を排出し、結晶の不純物含有率を抑えることができる。晶析設備1から排出された母液は溶媒抽出工程の抽出段などの上流工程に供給される。これにより、ニッケルロスを低減できる。
【0038】
(受け器)
晶析装置10の分級脚21には、スラリー排出口25より下の部分に母液の上昇流によって上昇しない比較的粒径が大きい結晶が堆積する。そこで、結晶の堆積状況の確認も兼ねて、分級脚21の下部に堆積した結晶を母液とともに抜き取る作業が定期的に頻繁に行われる。この作業を「レグ抜き」と称する。本実施形態の晶析設備1は、レグ抜きにより抜き取られたスラリーを受ける受け器50を備えるところに特徴を有する。
【0039】
前述のごとく、分級脚21の底部に設けられた母液供給口24には配管30が接続されている。その配管30から抜取配管61が分岐している。抜取配管61は受け器50の供給口51に接続されている。配管30における抜取配管61の分岐部分より上流側には弁31が設けられている。抜取配管61には弁62が設けられている。弁31を開状態、弁62を閉状態とすれば、配管30に導入された母液を母液供給口24に送液できる。弁31を閉状態、弁62を開状態とすれば、分級脚21の下部からスラリーを抜き取り、受け器50に供給できる。このスラリーには比較的粒径が大きい結晶と母液とが含まれる。
【0040】
なお、レグ抜きによる晶析缶11内部の圧力変化を抑制するための手段を設けることが好ましい。例えば、レグ抜き1回分のスラリーを収容できるチャンバーと、その供給側および排出側のそれぞれに設けられた弁とからなる装置が用いられる。この装置を弁62に代えて設ければよい。
【0041】
なお、抜取配管61は特許請求の範囲に記載の「抜取流路」に相当する。抜取流路は分級脚21の下部から抜き取ったスラリーを送液できる流路であればよく、その構成は配管に限定されない。
【0042】
受け器50は、抜取配管61から供給されたスラリーを処理し、排出口52から母液を排出する。受け器50の構成は後に詳述する。
【0043】
受け器50の排出口52と母液槽41とは戻り配管63で接続されている。戻り配管63にはポンプ64が介装されており、ポンプ64の駆動により母液を母液槽41に送液できる。受け器50から排出された母液は、母液槽41、原液槽46を介して、晶析装置10に送液される。受け器50から排出された母液を上流工程に送液することもできる。
【0044】
なお、母液槽41、原液槽46、それらを接続する配管63、43、44、47が、特許請求の範囲に記載の「戻り流路」に相当する。戻り流路は受け器50から排出された母液を晶析装置10に送液できる流路であればよく、その構成は本実施形態に限定されない。
【0045】
戻り配管63のポンプ64より下流側から循環配管65が分岐している。循環配管65は受け器50の循環液供給口53に接続されている。戻り配管63における循環配管65の分岐部分より下流側には弁66が設けられている。循環配管65には弁67が設けられている。弁66を開状態、弁67を閉状態とすれば、排出口52から排出された母液を母液槽41に送液できる。弁66を閉状態、弁67を開状態とすれば、排出口52から排出された母液を受け器50に送液できる。
【0046】
なお、循環配管65は特許請求の範囲に記載の「循環流路」に相当する。循環流路は排出口52から排出された母液を受け器50に送液できる流路であればよく、その構成は配管に限定されない。
【0047】
つぎに、受け器50の詳細な構成を説明する。
図3および
図4に示すように、受け器50はスラリーを収容する容器54を備えている。容器54の容積は、分級脚21の下部、すなわちスラリー排出口25より下の部分の容積と同じかそれより大きいことが好ましい。そうすれば、分級脚21から抜き取ったスラリーの全量を収容できるからである。容器54の形状は特に限定されず、本実施形態の様に直方体でもよいし、円柱形でもよい。
【0048】
容器54の上下略中央にはスクリーン55が配置されている。スクリーン55は容器54の横断面全体を塞ぐ形状、寸法を有しており、スクリーン55により容器54の内部空間が上部空間56と下部空間57とに区分けされている。また、スクリーン55は水平面に対して傾斜して設けられている。
【0049】
容器54の上面は一部が天板58で閉塞されており、その他の部分が開口部59となっている。天板58は容器54の上面のうちスクリーン55の傾斜上側(
図3における左側)に相当する部分に配置されている。開口部59は容器54の上面のうちスクリーン55の傾斜下側(
図3における右側)に相当する部分に配置されている。なお、開口部59を開閉する蓋を設けてもよい。
【0050】
天板58の開口部59側の縁部とスクリーン55との間には、その一部を閉塞する邪魔板60が設けられている。容器54の幅方向中央(
図4における上下中央)であって、スクリーン55の傾斜方向に沿う線を中心線Oと定義すると、邪魔板60は中心線Oの近傍には設けられておらず、中心線Oを挟んで容器54の両側部に設けられている。
【0051】
供給口51および循環液供給口53は天板58に設けられている。すなわち、供給口51および循環液供給口53は上部空間56に設けられている。また、供給口51および循環液供給口53は、スクリーン55の傾斜上側であって、中心線O上に配置されている。排出口52は容器54の側壁であってスクリーン55より下側、すなわち下部空間57に設けられている。
【0052】
分級脚21の下部から抜き取られたスラリーは、供給口51からスクリーン55の上面に放出される。スクリーン55は、スラリー中の母液を通すとともに、スラリー中の結晶のうち大径の結晶をその上面に残留させる機能を有する。より詳細には、スクリーン55の開目を通る小径の結晶は下方に通り、スクリーン55の開目を通らない大径の結晶が上面に残留する。スクリーン55が傾斜しているので、スクリーン55の上面に残留した結晶Cは傾斜下側に移動し、スクリーン55の下側端部に溜まる。
【0053】
スクリーン55は上記機能を有すれば、その種類は特に限定されない。ただし、スクリーン55としてウェッジワイヤースクリーンを用いることが好ましい。ウェッジワイヤースクリーンとは、逆三角形の断面を有するワイヤーを等間隔に並べてスリットを形成したものである。ワイヤーの断面が逆三角形であるため、結晶とワイヤーとの接触点が少なく、結晶により目詰まりしにくい。なお、ウェッジワイヤースクリーンを用いる場合には、ワイヤー方向に沿って傾斜させて配置する。
【0054】
スクリーン55の目開き(スリット幅)は回収対象の結晶の粒径によって調整することが好ましい。回収対象の結晶の粒径が0.4〜2.0mmの場合には、スクリーン55の目開きを1〜3mmとすることが好ましい。スクリーン55の目開きが3mm以下であれば、受け器50から排出された母液に含まれる結晶が大きすぎず、配管の閉塞が発生しにくい。スクリーン55の目開きが1mm以上であれば、スクリーン55が結晶により目詰りしにくい。
【0055】
(操業方法)
つぎに、晶析設備1の操業方法のうち、特にレグ抜きを説明する。
まず、分級脚21の下部からスラリーを抜き取って、供給口51から受け器50に供給する。この際、供給口51から落下したスラリーがスクリーン55に当って跳ねる。しかし、供給口51と開口部59との間に邪魔板60が設けられているので、スラリーが跳ねても、開口部59から受け器50の外側に飛び散ることを抑制できる。
【0056】
スラリーが供給されると、スラリー中の母液と小径の結晶とはスクリーン55を通って、下部空間57に貯留される。スラリー中の大径の結晶Cはスクリーン55の上面に残留し、スクリーン55の傾斜に沿って移動し、スクリーン55の下側端部に溜まる。供給口51は中心線O上に配置されており、邪魔板60は中心線Oの近傍には設けられていない。そのため、結晶Cは邪魔板60の間を通って、スクリーン55の下側端部まで移動できる。
【0057】
つぎに、スクリーン55の上面に残留した結晶Cを溶解する。結晶Cを溶解する方法として、以下の2つの方法がある。
【0058】
(溶解方法1)
ホースなどを用いて容器54上面の開口部59から結晶Cに向けて洗浄水を掛けることで、結晶Cを溶解する。結晶Cはスクリーン55の下側端部に溜まっており、洗浄水の水勢によって移動する範囲も限られるので、結晶Cに効率よく洗浄水を掛けることができる。そのため、比較的少ない洗浄水で結晶Cを溶解できる。洗浄水として温水を用いれば、より効率よく結晶Cを溶解できる。
【0059】
(溶解方法2)
排出口52から母液を排出し、その母液を循環配管65を介して循環液供給口53に供給する。これにより、母液を受け器50に循環させる。ここで、容器54内の液位をスクリーン55の上面に残留した結晶Cが浸かる程度に維持する。結晶Cがスクリーン55の下側端部に溜まっているので、比較的低い液位でも結晶Cを浸漬できる。母液を受け器50に循環させることで、スクリーン55の上面に残留した結晶Cを母液に浸漬して溶解できる。また、母液を循環させることで、母液に流れが生じ、結晶Cが溶解されやすくなる。
【0060】
溶解方法1と2とを組み合わせて行ってもよい。溶解方法2を行えば、溶解方法1を単独で行う場合に比べて洗浄水の使用量を低減できる。
【0061】
以上のように、スラリーに含まれる結晶がスクリーン55の上面にまとまって残留するので、少ない洗浄水で結晶を溶解できる。また、スクリーン55の下側端部に溜まった結晶Cに洗浄水を掛けたり、母液に浸漬したりすることで結晶Cを溶解できる。そのため、結晶Cを溶解する作業が容易である。溶解した結晶Cは母液として下部空間57に貯留される。また、溶解して粒径が小さくなった結晶Cも下部空間57に貯留される。
【0062】
最後に、受け器50の排出口52から母液を排出し、その母液を母液槽41、原液槽46を介して晶析装置10に送液する。スクリーン55の上面に残留した結晶Cを溶解するので、分級脚21から抜き取られたスラリーに含まれる結晶も、母液として、または小径の結晶として晶析装置10に戻すことができる。
【0063】
分級脚21から抜き取られたスラリーを受け器50で受け取るので、母液が汚染されず、母液を晶析装置10に戻すことができる。上流工程に戻す母液の量を低減できるため、プロセス全体の処理効率が向上し、処理コストを削減できる。
【0064】
〔その他の実施形態〕
前記実施形態の受け器50において、スクリーン55を水平に設けてもよい。この場合でも、スクリーン55の上面に残留した結晶Cに洗浄水を掛けたり、母液に浸漬したりすることで結晶Cを溶解できる。
【0065】
循環液供給口53を容器54の下部空間57に設けてもよい。この場合でも、液位をスクリーン55の上面に残留した結晶Cが浸かる程度に維持しつつ、母液に流れを生じさせることができる。
【0066】
晶析装置10は分級脚を有するタイプであればよい。例えば、晶析装置10としてDP(Double Propeller)型晶析装置を用いてもよい。
【0067】
晶析設備1の処理対象は硫酸ニッケルに限定されない。晶析設備1は種々の結晶の製造に用いることができる。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
硫酸ニッケル結晶の生産能力が1日当り60tである晶析設備を用いて、約1ヶ月間操業を行った。晶析装置としてDTB型連続晶析装置を用い、1日当り6回(4時間に1回)の頻度で、レグ抜きを行った。
【0069】
レグ抜きにより分級脚から抜き取られたスラリーを
図3に示す受け器50に供給した。容器54の容積は150Lである。スクリーン55はウェッジワイヤースクリーンであり、ワイヤー幅が2mm、スリット幅が1mmである。
【0070】
その結果、レグ抜きに要した時間は1回当り5〜15分であった。また、1回当りに使用した洗浄水の量は200〜600Lであった。
【0071】
(比較例1)
実施例1と同様の条件で晶析設備の操業を行った。レグ抜きにより分級脚から抜き取られたスラリーを床面に直接撒いた。床面に撒かれたスラリーを、洗浄水を掛けて洗浄した。
【0072】
その結果、レグ抜きに要した時間は1回当り20〜30分であった。また、1回当りに使用した洗浄水の量は800〜1,200Lであった。
【0073】
以上より、実施例1は比較例1に比べて、レグ抜きに要する時間を短縮でき、また、洗浄水の使用量を低減できることが確認できた。