(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の微細凹凸構造の局部山頂の平均間隔S(JIS B0601(1994))が前記第1の微細凹凸構造の最大高さRy(JIS B0601(1994))の5.5倍以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による光学フィルタの模式的断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の光学フィルタ100は、光学フィルタ本体(以下、単に「フィルタ本体」ともいう)10と、遮光膜20と、を備える。遮光膜20は、フィルタ本体10の一方の主面の外周部に一体に備えられる。
【0017】
フィルタ本体10は、透明基板11を含む。透明基板11は、後述する入射光に対して透過性を有する材料からなる。なお、透明基板11は、透明基板11そのものが、特定の波長の光を透過し、それ以外の波長の光を遮断するフィルタ機能も併せ持ってもよい。
また、遮光膜20は、入射光に対して遮光性を有する膜である。この遮光膜20は、カーボンブラック、チタンブラック等の無機または有機着色剤を含有する遮光性の樹脂が例示でき、透明基板11の一方の主面に備えられる。図示を省略したが、遮光膜20は、透明基板11の両主面に備えられてもよい。また、樹脂の種類は特に限定されず、紫外波長領域等の光の照射によって硬化する光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用可能である。なお、ここで、「遮光性」とは、主に光吸収により光の透過を遮断する性質をいう。このような遮光性樹脂を有する遮光膜20は、本実施形態の光学フィルタ100を、後述する撮像素子を内蔵した撮像装置に使用した際に、撮像素子が受光する光の量を調節したり、迷光をカットしたりする、いわゆる絞りとして機能する。
【0018】
そして、この光学フィルタ100においては、透明基板11と遮光膜20の界面に、光の反射抑制機能を発現する第1の微細凹凸構造22を有する。
【0019】
第1の微細凹凸構造22は、良好な反射抑制効果を得るために、その表面粗さが、JIS B0601(1994)に準拠して原子間力顕微鏡(AFM)により測定される算術平均粗さ(Ra)で0.03μm以上となる構造が好ましい。算術平均粗さ(Ra)のより好ましい範囲は0.05〜10μmであり、0.1〜2μmがより一層好ましく、0.2〜0.5μmがさらに好ましい。
【0020】
また、第1の微細凹凸構造22は、良好な反射抑制効果を得るために、JIS B0601(1994)に準拠して測定される最大高さ(Ry)は、0.1μm以上が好ましい。最大高さ(Ry)のより好ましい範囲は3〜9μmであり、4〜6μmであるとより一層好ましい。さらに、JIS B0601(1994)に準拠して超深度形状測定顕微鏡で測定される局部山頂の平均間隔(S)は、最大高さ(Ry)の5.5倍以下が好ましい。局部山頂の平均間隔(S)のより好ましい範囲は最大高さ(Ry)の3.8倍以下であり、最大高さ(Ry)の2.4倍以下が好ましく、最大高さ(Ry)の1.2倍以下がより一層好ましい。
【0021】
また、第1の微細凹凸構造22は、高さ100nm超の凸部を有し、その凸部の立ち上がり角は、20°以上が好ましく、40°以上がより好ましく、60°以上がより一層好ましい。高さ100nm超の凸部の立ち上がり角が20°未満であると、拡散反射性能が落ちてしまい、正反射に近い成分が増加する。ここで、「凸部の立ち上がり角」とは、最小二乗平面において、底点から隣り合う頂点に向かうまでの角度の平均値をいう。すなわち、複数の底点と複数の頂点により複数の角度が得られるが、それらの角度を平均した値をいう。
【0022】
なお、第1の微細凹凸構造22は、後述するように、例えば、透明基板11等の表面にサンドブラスト処理により形成できるが、その際に使用する研磨材や処理条件を適宜選択して、上記の形状を有する凹凸構造が得られる。
【0023】
さらに、第1の微細凹凸構造22が形成された界面を形成する材料の屈折率差(Δn)(
図1の例では、遮光膜20と透明基板11の屈折率差(Δn))は、0.60以下が好ましい。屈折率差(Δn)が0.60を超えると、第1の微細凹凸構造22の凹凸の大きさや形状等によっては、正反射または拡散反射が増加して、十分な反射抑制効果が得られないおそれがある。屈折率差(Δn)は0.30以下がより好ましく、0.10以下がより一層好ましい。
【0024】
本実施形態の光学フィルタ100は、透明基板11を含むフィルタ本体10と、フィルタ本体10に備えられた絞り機能を有する遮光膜20と、その界面に、光の反射を抑制する第1の微細凹凸構造22を有する。したがって、従来の遮光膜の露出する表面、すなわち遮光膜のフィルタ本体10側とは反対側の主面にのみ微細凹凸構造を有する光学フィルタに比べ、撮像装置に実装した際の、微細凹凸構造の位置の自由度を増大できる。また、従来の光学フィルタでは微細凹凸構造と接する媒質が空気(屈折率≒1)であるため、遮光膜材料と空気との屈折率差(Δn)の自由度は限られ、屈折率差に基づく、反射抑制に必要とされる微細凹凸構造の仕様も制限される。しかし、本実施形態の光学フィルタは、微細凹凸構造を透明基板と遮光膜の界面に有するため、屈折率差(Δn)の自由度が増大し、微細凹凸構造の仕様の自由度も増大できる。これにより、迷光をより大きく、かつ確実に低減できる。
【0025】
なお、本実施形態において、フィルタ本体10は、透明基板11の少なくとも一方の主面に、少なくとも一層の光学的機能層を有していてもよい。光学的機能層としては、可視波長領域の光(以下「可視光」という)を透過し、紫外波長領域及び/または赤外波長領域の光(以下、それぞれ「紫外光」、「赤外光」という)を反射する誘電体多層膜からなる紫外/赤外光反射膜や、特定の波長領域の光を吸収する吸収剤を含む透明樹脂からなる光吸収膜(例えば、紫外光及び/または赤外光を吸収する紫外/赤外線吸収剤を含む透明樹脂からなる紫外/赤外光吸収膜等)、反射防止膜等が挙げられる。また、前述のとおり、透明基板11そのものが、特定の波長の光を透過し、それ以外の波長の光を遮断するフィルタ機能も併せ持ってもよい。その場合、例えば、上記に示すような吸収剤を含有させた樹脂製の透明基板や、近赤外線吸収ガラス等を使用できる。
【0026】
図2〜4は上記の態様の例を示した模式的断面図である。
図2の光学フィルタ110は、透明基板11の一方の面に反射防止膜12を有する例である。
図3の光学フィルタ120は、透明基板11の一方の面に反射防止膜12を有し、他方の面に、可視光を透過し、紫外光及び赤外光を反射する誘電体多層膜からなる紫外・赤外光反射膜13を有する例である。本例では、遮光膜20は、反射防止膜12の表面に有するとともに、これらの遮光膜20及び反射防止膜12の界面に第1の微細凹凸構造22を有する。なお、遮光膜20は、紫外・赤外光反射膜13の表面に有してもよく、反射防止膜12及び紫外・赤外光反射膜13の両表面に有してもよい。
【0027】
図4の光学フィルタ130は、
図3の例と同様、透明基板11の一方の面の一部、すなわち、外周部を除く部分(中心部)に、外周部内側の端面と接するように反射防止膜12を有し、他方の面に、紫外・赤外光反射膜13を有する例である。また、遮光膜20は、反射防止膜12側の透明基板11の表面に有し、遮光膜20と透明基板11の界面に第1の微細凹凸構造22を有する。なお、この例でも、遮光膜20は、紫外・赤外光反射膜13側の透明基板11の表面に有してもよく、紫外・赤外光反射膜13側の透明基板11の表面と反射防止膜12側の透明基板11の表面の両表面に有してもよい。
【0028】
図5の光学フィルタ140は、透明基板11の一方の面の外周部を除く中心部に、外周部内側の端面と接するように、特定の波長を吸収する吸収剤を含む透明樹脂からなる光吸収膜14と、反射防止膜12とを有し、他方の面に、紫外・赤外光反射膜13を有する例である。そして、遮光膜20は、光吸収膜14及び反射防止膜12側の透明基板11の表面に有し、遮光膜20と透明基板11の界面に第1の微細凹凸構造22を有する。なお、光吸収膜14は、例えば、紫外光及び/または赤外光を吸収する紫外/赤外線吸収剤を含む透明樹脂で構成されてもよいが、それ以外の波長を吸収する吸収剤を含む透明樹脂で構成されてもよい。この例でも、遮光膜20は、紫外・赤外光反射膜13側の透明基板11の表面に有してもよく、紫外・赤外光反射膜13側の透明基板11の表面と、光吸収膜14及び反射防止膜12側の透明基板11の表面の両表面に有してもよい。
【0029】
また、図示は省略したが、フィルタ本体10が、透明基板11の少なくとも一方の主面に、少なくとも一層の光学的機能層を有する場合、第1の微細凹凸構造22は、透明基板11と遮光膜20の間の少なくとも1界面に有していればよい。したがって、例えば、
図3の光学フィルタ120のように、透明基板11の一方の面に反射防止膜12を有し、他方の面に、紫外・赤外光反射膜13を有する場合、第1の微細凹凸構造22は、遮光膜20と反射防止膜12の界面、反射防止膜12と透明基板11の界面、遮光膜20と紫外・赤外光反射膜13の界面の少なくとも1界面に有していればよい。
【0030】
これらのいずれの例においても、従来の遮光膜の露出する表面に微細凹凸構造を有する光学フィルタに比べ、撮像装置に実装する位置による微細凹凸構造の位置の自由度を増大できるとともに、反射防止に必要とされる微細凹凸構造の仕様の自由度も増大でき、従来の光学フィルタに比べ、迷光のさらなる低減を図ることができる。
加えて、微細凹凸構造が表面に露出しないため微細凹凸構造の耐こすり性(耐摩耗性)も向上する。
【0031】
次に、本実施形態の光学フィルタの製造方法(例)を説明する。
図6は、フィルタ本体を構成する透明基板11の一方の主面の外周部に遮光膜20が備えられ、かつ透明基板11と遮光膜20の界面に第1の微細凹凸構造22が形成された光学フィルタ100の製造工程を示す模式的断面図である。
【0032】
まず、透明基板11となる、例えばガラス板51を準備し(
図6(a))、その一方の表面に、フォトリソグラフィ法により、遮光膜形成部分を開口させた、レジスト層52を形成する(
図6(b))。レジスト層52は、次のサンドブラスト処理の際にマスクとして機能すればよく、例えば、ポジ型またはネガ型の液状レジスト、フィルム状のレジスト(いわゆるドライフィルム)等が使用できる。次に、レジスト層52をマスクとしてガラス板51表面にサンドブラスト処理を行い、微細凹凸構造53を形成する(
図6(c))。
【0033】
レジスト層52を除去した後、遮光膜20に対応する位置を開口させたスクリーンマスク(図示なし)を介してスクリーン印刷により、遮光性を有する樹脂を塗布し硬化させて遮光膜20を形成する(
図6(d))。
その後、ダイシング装置54を使用して、ダイシングラインLに沿って、ガラス板51を厚さ方向に切断し個片化する(
図6(e))。これにより、
図1に示す、透明基板11の一方の主面の外周部に遮光膜20が一体化され、かつ透明基板11と遮光膜20の界面に第1の微細凹凸構造22を有する光学フィルタ100が得られる。
【0034】
なお、
図2、
図3に例示した光学フィルタ110、120は、
図6において、ガラス板51に代えて、透明基板11の一方の面に反射防止膜12が形成された構成(
図2の例)、または透明基板11の一方の面に反射防止膜12が形成され、他方の面に紫外・赤外光反射膜13が形成された構成(
図3の例)、を用いることにより、上記と同様の工程を経て作製できる。
【0035】
また、
図4に例示した光学フィルタ130は、
図7に示す工程を経て作製できる。
図7は、
図4に示す光学フィルタ130の製造工程を示す断面図である。
本例では、まず、一方の面に反射防止膜12が形成され、他方の面に紫外・赤外光反射膜13が形成された透明基板11、例えばガラス板51を準備する(
図7(a))。次に、反射防止膜12の表面に、フォトリソグラフィ法により、遮光膜形成部分を開口させたレジスト層52を形成する(
図7(b))。次に、レジスト層52をマスクとして反射防止膜12及びガラス板51表面にサンドブラスト処理を行い、微細凹凸構造53を形成する(
図7(c))。
【0036】
レジスト層52を除去した後、遮光膜20に対応する位置を開口させたスクリーンマスク(図示なし)を介してスクリーン印刷により、遮光性を有する樹脂を塗布し硬化させて遮光膜20を形成する(
図7(d))。
【0037】
その後、ダイシング装置54を使用して、ダイシングラインLに沿って、反射防止膜12、ガラス板51及び紫外・赤外光反射膜13を厚さ方向に切断し個片化する(
図7(e))。これにより、
図4に示す光学フィルタ130が作製できる。
【0038】
なお、
図5に例示した光学フィルタ140は、
図7において、ガラス板51に代えて、透明基板11の一方の面に光吸収膜14が形成された構成、を用いることにより、上記と同様の工程を経て作製できる。
【0039】
遮光膜20の形成方法は、上述したスクリーン印刷法に限定されず、フレキソ印刷法等、スクリーン印刷法以外の印刷法も使用できる。また、予め所定のパターン形状に成形した遮光性の半硬化樹脂フィルムまたは硬化樹脂フィルムを接着剤で、レジスト層52を除去した透明基板11等の表面に接着して形成してもよい。さらに、樹脂として光硬化性樹脂を使用した場合には、次のような方法も使用できる。
【0040】
すなわち、レジスト層52を除去した透明基板11等の表面全体に、遮光性を有する光硬化性樹脂を塗布し乾燥させて光硬化性樹脂塗布層を形成する。光硬化性樹脂の塗布方法としては、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、キャスト法、スプレーコート法、ビードコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、スリットリバースコート法、マイクログラビア法、コンマコート法等を使用できる。塗布は、複数回に分けて実施してもよい。また、塗布に先立って、透明基板11等に対する密着性を高めるために、塗布面にヘキサメチルジシラザン(HMDS)等によるカップリング処理を行ってもよい。
【0041】
次いで、この光硬化性樹脂塗布層に、遮光膜に対応する位置を開口させたフォトマスクを介して光を照射する。照射する光は、例えば、光硬化性樹脂が紫外光によって硬化するものであれば、少なくともそのような紫外光を含む光を照射する。これにより、光が照射された部分の光硬化性樹脂が硬化する。
【0042】
次に、未照射部の光硬化性樹脂を現像により選択的に除去し、遮光膜を形成する。現像は、ウエット現像、ドライ現像等が用いられる。ウエット現像の場合、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等、光硬化性樹脂の種類に対応した現像液を用いて、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等を適用できる。
【0043】
なお、このような方法で形成される遮光膜の厚さは、撮像装置の小型化と遮光性の観点から、1〜30μmの範囲が好ましく、1〜20μmの範囲がより好ましく、1〜10μmの範囲がさらに好ましく、3〜10μmの範囲がより一層好ましい。遮光膜の厚さが1μm未満であると、十分な遮光性が得られないおそれがあり、一方、遮光膜の厚さが30μm超であると、撮像装置の小型化ができなくなるおそれがある。
【0044】
次に、第1の微細凹凸構造の具体的な断面形状について説明する。
図8及び
図9は、遮光膜の十分な遮光性が得られる厚さにおける、第1の微細凹凸構造の凹凸形状(深さ(d)及びピッチ(p))による反射抑制効果を調べたシミュレーション結果である。シミュレーションでは、透明基板11と遮光膜20の界面に、
図10に示す、sin2乗カーブ状の凹凸が形成されていると仮定し、透明基板11内から入射した光(波長300〜900nm)の透明基板/遮光膜界面における分光透過率及び正反射率を算出した。
図8は、隣り合う頂点間の幅に相当するピッチ(p)を1μmと固定し、深さ(d)を0μm(凹凸なし)〜10μmの間で変化させたときの分光透過率(
図8(a))及び正反射率(
図8(b))である。また、
図9(a)は深さ(d)を1μmと固定し、ピッチ(p)を0μm(凹凸なし)〜10μmの間で変化させたときの正反射率、
図9(b)は深さ(d)を0.01μmと固定し、ピッチ(p)を0μm(凹凸なし)〜10μmの間で変化させたときの正反射率である。
【0045】
図8(a)より、凹凸の有無にかかわらず、波長300〜870nmの光の透過率は略0%であった。また、
図8(b)より、ピッチ(p)1μmでは、深さ(d)が0.05μm以上であれば、凹凸による反射抑制効果が認められ、深さ(d)が0.1μm以上であれば、波長400〜800nmの光の正反射率が0.30%以下であり、さらに、深さ(d)が0.25μm以上であれば、波長300〜900nmの略全波長領域の光の反射率が0.10%以下であった。
【0046】
図9(a)のグラフより、深さ(d)が1μmであれば、ピッチ(p)を有する場合(すなわち、ピッチ(p)=0を除く場合)、波長350〜900nmの全波長領域の光の反射率が略0%であった。また、
図9(b)より、深さ(d)が0.01μmでは、ピッチ(p)に関わらず、凹凸による反射抑制効果が認められなかった。
【0047】
以上のシミュレーション結果より、反射抑制効果は深さ(d)による影響が大きく、良好な反射防止効果を得るためには、深さ(d)は0.1μm(算術平均粗さ(Ra)31.85nmに相当)以上が好ましく、0.25μm(算術平均粗さ(Ra)79.6nmに相当)以上がより好ましいことを示している。
【0048】
図11は、本実施形態の光学フィルタ100を遮光膜20側より視た平面図である。
図11に示すように、本実施形態では、フィルタ本体10の平面形状は円形状であり、遮光樹脂膜20はその外周に沿って環状に設けられている。なお、フィルタ本体10の平面形状は、例えば、
図12に示すように、矩形状であってもよく、特に限定されない。
【0049】
以下、本実施形態及びその変形例の光学フィルタを構成する透明基板、紫外・赤外光反射膜、反射防止膜、及び紫外/赤外光吸収膜について詳述する。
【0050】
透明基板は、可視光を透過するものであれば、その形状は特に限定されず、例えば、板状、フィルム状、ブロック状、レンズ状等が挙げられる。また、上述のように、透明基板は、赤外線吸収ガラスや赤外線吸収剤を含有した樹脂でもよい。
【0051】
透明基板は、ガラス、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイア等の結晶、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これらの材料は、紫外波長領域及び赤外波長領域の少なくとも一方に対して吸収特性を有してもよい。
【0052】
ガラスは、可視光に対し透明な材料から適宜選択できる。例えば、ホウケイ酸ガラスは、加工が容易で、光学面における傷や異物等の発生を抑制できるために好ましく、アルカリ成分を含まないガラスは、接着性、耐候性等が良好なために好ましい。
【0053】
また、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラスにCuO等を添加した赤外波長領域に吸収を有する光吸収型のガラスも使用できる。特に、CuOを添加したフツリン酸塩系ガラスもしくはリン酸塩系ガラスは、可視光に対し高い透過率を有するとともに、近赤外光を十分に吸収し、さらに光の入射角による透過率の変動が抑制できるため、良好な近赤外線カット機能を付与できる。
【0054】
CuOを含有するフツリン酸塩系ガラスの例としては、質量%で、P
2O
5 46〜70%、MgF
2 0〜25%、CaF
2 0〜25%、SrF
2 0〜25%、LiF 0〜20%、NaF 0〜10%、KF 0〜10%、ただし、LiF、NaF、KFの合量が1〜30%、AlF
3 0.2〜20%、ZnF
2 2〜15%(ただし、フッ化物総合計量の50%までを酸化物に置換可能)からなるフツリン酸塩系ガラス100質量部に対し、CuOを0.1〜5質量部、好適には0.3〜2質量部含有するものが挙げられる。市販品は、NF−50(旭硝子社製 商品名)等が例示できる。
【0055】
CuOを含有するリン酸塩系ガラスの例としては、質量%で、P
2O
5 70〜85%、Al
2O
3 8〜17%、B
2O
3 1〜10%、Li
2O 0〜3%、Na
2O 0〜5%、K
2O 0〜5%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0.1〜5%、SiO
2 0〜3%からなるリン酸塩系ガラス100質量部に対して、CuOを0.1〜5質量部、好適には0.3〜2質量部含有するものが挙げられる。
【0056】
透明基板の厚さは、限定されないが、小型化、軽量化を図る点から、0.1〜3mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましい。
【0057】
紫外・赤外光反射膜13は、紫外線及び近赤外線カットフィルタ機能を付与、もしくは高める効果を有する。紫外・赤外光反射膜13は、低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層とをスパッタリング法や真空蒸着法等により交互に積層した誘電体多層膜から構成される。
【0058】
誘電体多層膜は、イオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法等でも形成できる。スパッタリング法やイオンプレーティング法は、いわゆるプラズマ雰囲気処理であることから、透明基板に対する密着性を向上できる。
【0059】
反射防止膜12は、光学フィルタに入射した光の反射を抑制して透過率を向上させ、効率良く入射光を利用するもので、公知の材料及び方法により形成できる。具体的には、反射防止膜12は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法等により形成したシリカ、チタニア、五酸化タンタル、フッ化マグネシウム、ジルコニア、アルミナ等の1層以上の膜や、ゾルゲル法、塗布法等により形成したシリカケート系、シリコーン系、フッ化メタクリレート系等の膜、から構成される。反射防止膜12の厚さは、通常、100〜600nmである。
【0060】
紫外/赤外光吸収膜は、紫外光及び/または赤外光を吸収する紫外/赤外線吸収剤を含む透明樹脂から構成される。紫外/赤外光吸収膜は、例えば、光学フィルタ110、120、130及び後述する光学フィルタ160において、透明基板11と反射防止膜12との間に備えられてもよい。前述した光学フィルタ140は、光学フィルタ130において、光吸収膜14を透明基板11と反射防止膜12との間に備えた例である。また、この他に、光学フィルタ120、130及び後述する光学フィルタ160において、透明基板11と紫外・赤外光反射膜13との間に備えられてもよい。なお、紫外/赤外光吸収膜は、1つの光吸収構造体として紫外光及び赤外光の両方を吸収する機能を有してもよい。さらに、紫外/赤外光吸収膜は、2つの光吸収構造体として、紫外光を吸収する機能と赤外光を吸収する機能を別々に備える構造でもよい。紫外/赤外光吸収膜が、2つの光吸収構造体として構成される場合は、それぞれの吸収構造体の配置は任意に設定できる。
【0061】
透明樹脂は、可視光を透過するものであればよく、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドエーテル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等が挙げられる。
【0062】
また、紫外光及び/または赤外光を吸収する紫外/赤外線吸収剤としては、例えば、有機または無機顔料、有機色素等が挙げられる。紫外/赤外線吸収剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
透明樹脂は、紫外/赤外線吸収剤の他に、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等を含有してもよい。
【0064】
紫外/赤外光吸収膜は、例えば、透明樹脂、紫外/赤外線吸収剤、及び必要に応じて配合される他の添加剤を、分散媒または溶媒に分散または溶解させて塗工液を調製し、塗工し、乾燥させて得られる。塗工、乾燥は、複数回に分けて実施でき、その際、含有成分の異なる複数の塗工液を調製し、これらを順に塗工、乾燥させてもよい。
【0065】
分散媒または溶媒としては、水、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、アルデヒド、アミン、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。塗工液には、必要に応じて分散剤を配合できる。
【0066】
塗工液の調製には、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、超音波ホモジナイザ等の撹拌装置を使用できる。高い透明性を確保するためには、撹拌を十分に行うことが好ましい。撹拌は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0067】
また、塗工液の塗工には、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、キャスト法、スプレーコート法、ビードコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、スリットリバースコート法、マイクログラビア法、コンマコート法等を使用できる。
【0068】
紫外/赤外光吸収膜の厚さは、0.01〜200μmの範囲が好ましく、0.1〜50μmの範囲がより好ましい。紫外/赤外光吸収膜の厚さが0.01μm未満では、所定の吸収能が得られないおそれがあり、また、200μmを超えると、乾燥時に乾燥ムラが生じ、所望の光学特性が得られなくなるおそれがある。
【0069】
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態による光学フィルタ150の模式的断面図である。なお、本実施形態以降、重複する説明を避けるため、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施形態の光学フィルタ150は、
図13に示すように、第1の実施形態において遮光膜20の露出する面、すなわち、遮光膜20の透明基板11側とは反対側の表面に、光の反射抑制機能を有する第2の微細凹凸構造24を形成した構造を有する。
【0071】
第2の微細凹凸構造24は、その表面粗さが、JIS B0601(1994)に準拠して原子間力顕微鏡(AFM)により測定される算術平均粗さ(Ra)で0.1μm以上となる構造が好ましい。算術平均粗さ(Ra)は、0.15〜10μmが好ましく、0.2〜2μmがより一層好ましく、0.2〜0.5μmがさらに好ましい。
【0072】
また、第2の微細凹凸構造24は、JIS B0601(1994)に準拠して超深度形状測定顕微鏡で測定される局部山頂の平均間隔(S)が、1〜100μmが好ましく、さらに、JIS B0601(1994)に準拠して測定される最大高さ(Ry)は、2μm以上が好ましい。局部山頂の平均間隔(S)は、2〜50μmがより好ましく、5〜20μmであるとより一層好ましい。また、最大高さ(Ry)は、3〜9μmがより好ましく、4〜6μmがより一層好ましい。
【0073】
第2の微細凹凸構造24を備えた光学フィルタ150は、第1の実施形態で説明した方法で遮光膜を形成した後、この遮光膜に放射線を照射してその表層部分のみをさらに硬化させ、次いで加熱して、放射線の照射によって生じた応力を緩和することで得られる。加熱温度は、硬化した遮光膜の表層部分以外が軟化する温度であればよく、通常、50〜300℃程度であり、好ましくは150〜220℃程度である。
【0074】
また、第2の微細凹凸構造24は、遮光膜表面にドライエッチング処理を施すことでも形成できる。ドライエッチング処理の方法は限定されないが、反射抑制効果、処理の容易さ、制御の容易さ、エッチングガス入手の容易さ等の点から、酸素ガス(O
2)、四フッ化炭素ガス(CF
4)、トリフルオロメタン(CHF
3)、これらの混合ガスをエッチングガスとして用いる反応性イオンエッチング方法が好ましい。
【0075】
さらに、遮光膜の形成材料として、シリカ微粒子等のマット剤を含有する遮光性樹脂を用いても形成できる。
すなわち、第1の実施形態で説明した製造方法において、レジスト層を除去したガラス板等の表面に、カーボンブラック、チタンブラック等の無機または有機着色剤とともにマット剤を含有させ、さらに必要に応じて溶媒または分散媒を混合した遮光性を有する光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を、スクリーン印刷やフレキソ印刷等の印刷法等により、遮光膜に対応するパターン形状に塗布し、次いで乾燥させて遮光性樹脂塗布層を形成した後、遮光性樹脂塗布層を光照射または加熱により硬化させる。これにより、第2の微細凹凸構造24を有する遮光膜20が得られる。
【0076】
なお、マット剤の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機微粒子が挙げられる。また、ジビニルベンゼン架橋重合体等の樹脂からなる微粒子も使用できる。マット剤の遮光性樹脂中の含有量は、固形分基準で、マット剤の種類やその粒径等にもよるが、通常2〜10質量%、好ましくは2.5〜8質量%の範囲である。遮光性樹脂には、マット剤、着色剤の他、密着性を高めるための添加剤、例えばシランカップリング剤等が配合されていてもよい。
【0077】
本実施形態は、第1の実施形態と同様の効果に加え、遮光膜の表面、裏面両方への入射光に対し、遮光膜界面での正反射を抑制でき、迷光を低減する効果が得られる。
【0078】
(第3の実施形態)
図14は、本発明の第3の実施形態の光学フィルタ160の模式的断面図である。
【0079】
本実施形態の光学フィルタ160は、第1の実施形態において、遮光膜20を、酸化物誘電体膜と金属膜とが交互に積層された多層膜構造を有する。なお、
図14は、第1の実施形態の変形例とした光学フィルタ130(
図4)の遮光膜20を、酸化物誘電体膜と金属膜とが交互に積層された多層膜とする構成の例を示している。
【0080】
多層膜を構成する酸化物誘電体膜としては、SiO
2、Al
2O
3等からなる膜が挙げられる。また、金属膜としては、Ni、Ti、Nb、Ta、Cr等の金属からなる単体膜や、それらの金属を主成分とする合金等が挙げられる。具体的に、金属膜にCrを用い、酸化物誘電体膜にSiO
2を用いて構成した多層膜等が挙げられる。
【0081】
図15は、
図14に示す光学フィルタ160の製造工程を示す断面図である。
この例では、まず、一方の面に反射防止膜12が形成され、他方の面に紫外・赤外光反射膜13が形成された透明基板材料、例えばガラス板51を準備する(
図15(a))。次に、反射防止膜12の表面に、フォトリソグラフィ法により、遮光膜形成部分を開口させたレジスト層52を形成する(
図15(b))。次に、レジスト層52をマスクとして反射防止膜12及びガラス板51表面にサンドブラスト処理を行い、微細凹凸構造53を形成する(
図15(c))。
【0082】
次に、それらの表面にスパッタリング法、真空蒸着法等により、酸化物誘電体膜及び金属膜を交互に積層して多層膜20Aを形成する(
図15(d))。多層膜20Aは、スパッタリング法や真空蒸着法の他、イオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法等も使用できる。その後、レジスト層を、レジスト層上に形成された多層膜20Aとともに除去した後、ダイシング装置54を使用して、ダイシングラインLに沿って、反射防止膜12、ガラス板51及び紫外・赤外光反射膜13を厚さ方向に切断し個片化する(
図15(e))。これにより、
図14に示す、透明基板11の一方の面に反射防止膜12が形成され、他方の面に紫外・赤外光反射膜13が形成され、そして、多層膜からなる遮光膜20が、反射防止膜12側の透明基板11の表面に形成されるとともに、遮光膜20と透明基板11の界面に第1の微細凹凸構造22が形成された光学フィルタ160が得られる。
【0083】
本実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の効果が得られるうえ、遮光膜20が酸化物誘電体膜と金属膜とが交互に積層された多層膜で構成されるため、遮光膜が樹脂で構成される第1及び第2の実施形態に比べ、耐熱性を向上できる。
【0084】
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態による撮像装置60の模式的断面図である。
図16に示すように、本実施形態の撮像装置60は、固体撮像素子61、光学フィルタ62、レンズ63、及びこれらを保持固定する筺体64を有する。
【0085】
固体撮像素子61、光学フィルタ62、及びレンズ63は、光軸xに沿って配置され、固体撮像素子61とレンズ63の間に光学フィルタ62が配置される。固体撮像素子61は、レンズ63及び光学フィルタ62を通過して入射してきた光を電気信号に変換するCCDやCMOS等の電子部品である。そして、本実施形態では、光学フィルタ62として、
図1に示した光学フィルタ100が使用され、その遮光膜20がレンズ63側に位置するように配置される。なお、光学フィルタ100は、遮光膜20が固体撮像素子61側に位置するように配置してもよい。また、本実施形態では、光学フィルタ62として、
図1の光学フィルタ100を使用するが、
図2〜
図5、
図13、
図14等に示した各光学フィルタも使用できる。
【0086】
撮像装置60において、被写体側より入射した光は、レンズ63、及び光学フィルタ62(100)を通って固体撮像素子61に受光される。この受光された光は固体撮像素子61により電気信号に変換され、画像信号として出力される。入射光は、遮光膜20を備えた光学フィルタ100を通過することで、適正な光量に調節された光として固体撮像素子61で受光される。
【0087】
この撮像装置60において、光学フィルタ100の透明基板11と遮光膜20の間の界面に光の反射を抑制する第1の微細凹凸構造22が形成されている。そのため、従来の、遮光膜の露出する表面のみに微細凹凸構造が形成され、微細凹凸構造と接する媒質が空気に限られていた光学フィルタに比べ、反射抑制に必要とされる微細凹凸構造の仕様の自由度が増大する。このため、迷光を従来に比べより大きく、かつ確実に低減できる。すなわち、遮光膜との界面が空気であった場合、空気と遮光膜の屈折率差を小さくするため、遮光膜材料の屈折率を低く(1に近く)する必要がある。しかし、遮光膜材料として使用できる樹脂等では、屈折率が最低でも1.3程度であり、十分な反射抑制機能を持たせることが困難な場合がある。これに対し、基板と遮光膜の界面では、基板、遮光膜に使用できる一般的な材料においても、屈折率差を低く抑えられるため、該界面での正反射を低く抑えられる。
【0088】
なお、第4の実施形態による撮像装置60には、1つのレンズが配置されているが、複数のレンズを備えてもよく、また、固体撮像素子61を保護するカバーガラス等が配置されてもよい。さらに、光学フィルタ100の位置も、レンズと固体撮像素子との間に限らず、例えば、
図17のように、レンズ63より被写体側に配置されてもよく、また、レンズが複数配置される場合に、レンズとレンズの間に配置されてもよい。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
50mm×50mm×0.3mmの角板状の白板ガラスを準備し、該白板ガラスの一方の表面に、120秒間サンドブラスト処理を行い、微細凹凸構造を形成した。
【0090】
遮光性樹脂インクを、スピンコート法により微細凹凸構造上に塗布し、80℃で10分間、次いで120℃で60分間加熱して、厚さ20μmの遮光膜を形成した。なお、白板ガラスと遮光膜との屈折率差Δnは、400〜700nmにおける可視波長領域において、0.1未満であることを確認した。
【0091】
得られた光学フィルタの透明基板と遮光膜の界面に形成された微細凹凸構造の算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、局部山頂の平均間隔(S)及び平均山頂傾きを、KLA−Tencor社製触針式段差計Alpha−Step IQにて測定した結果を表1に示す。「平均山頂傾き」は、前述の「凸部の立ち上がり角」に相当する指標である。なお、算出はJIS B0601(1994)及びJIS B0031(1994)に基づいて行った。表1中、比較例として示したのは、サンドブラスト処理を行わなかった以外は実施例と同様に作製した光学フィルタの例である。
【0092】
【表1】
【0093】
(実施例2)
実施例1と同サイズの白板ガラスを準備し、該白板ガラスの一方の表面に反射防止膜、他方の表面に紫外・赤外光反射膜を形成した。これらは、真空蒸着法による誘電体多層膜によって得た。
【0094】
次に、反射防止膜上にポジ型のフォトレジストを4μm厚で塗工後、遮光膜を形成する周辺部を除く部分(中心部)のみに該フォトレジストが残るパターンを形成した。そして、フォトレジストパターンを有する面に、120秒間サンドブラスト処理を行うことで、周辺部に露出した反射防止膜の除去とともに白板ガラス(周辺部の)表面に微細凹凸構造を形成した。その後、レジスト剥離液により(中心部に)残ったフォトレジストを除去した。
【0095】
次いで、微細凹凸構造を形成した部分に、スクリーンマスクを介して選択的に遮光性樹脂インクを塗布し、90℃で10分間、次いで150℃で60分間加熱して、厚さ5μmの遮光膜を形成した。なお、白板ガラスと遮光膜との屈折率差Δnは、400〜700nmにおける可視波長領域において、0.1未満であることを確認した。
【0096】
上記実施例1及び比較例で得られた各光学フィルタを評価するため、分光光度計(日立ハイテクフィールディング社製UH4150)を用いて正反射率を測定した。結果を
図18に示す。
図18より、微細構造の付与で、波長500nmの測定値で、0.63%(比較例)の正反射率が0.18%(実施例1)、0.20%(実施例2)まで低下した。なお、
図18は、代表的に実施例1の結果を示すが、実施例2においても実施例1と同様の結果が得られる。