(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記置換基を有していてもよいシクロペンテンと式(2)で表されるアルコール化合物との反応を、流通式で行う、請求項1〜3のいずれかに記載のシクロペンチルアルキルエーテル化合物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、シリカ/アルミナ比が80以上の酸性ゼオライトの存在下に、置換基を有していてもよいシクロペンテン(以下、「シクロペンテン類」ということがある。)と、式(2):R
1OHで表されるアルコール化合物(以下、「アルコール化合物(2)」ということがある。)を反応させる、式(1):R
1−O−R
2で表されるシクロペンチルアルキルエーテル化合物の製造方法である。本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換又は置換基を有する」という意味である。
【0012】
〔シクロペンテン類〕
本発明に用いる、置換基を有していてもよいシクロペンテンの置換基としては、反応条件下において不活性な基であれば、特に限定されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基等の炭素数1〜4のアルキルチオ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいアリール基;等が挙げられる。
【0013】
シクロペンテン類の具体例としては、シクロペンテン、1−メチルシクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、3−エチルシクロペンテン、3−sec−ブチルシクロペンテン、2−t−ブチルシクロペンテン、1,3−ジメチルシクロペンテン、3−メトキシシクロペンテン、3−エトキシシクロペンテン、2−sec−ブトキシシクロペンテン、3−t−ブトキシシクロペンテン、3−メチルチオシクロペンテン、3−エチルチオシクロペンテン、2−sec−ブチルチオシクロペンテン、3−t−ブチルチオシクロペンテン、1−フルオロシクロペンテン、2−クロロシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、2−ブロモシクロペンテン、3−ブロモシクロペンテン、2−クロロ−3−メチルシクロペンテン、1−フェニルシクロペンテン等が挙げられる。
これらの中でも、入手容易性等の観点から、シクロペンテンが特に好ましい。
【0014】
〔アルコール化合物(2)〕
本発明に用いるアルコール化合物(2)は、式(2):R
1OHで表される化合物である。式(2)中、R
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基を表す。
【0015】
置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0016】
置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基の置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜10のアルキルチオ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
【0017】
置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基の炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0018】
置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜10のアルキルチオ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
【0019】
アルコール化合物(2)の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール等の、前記式(2)において、R
1が炭素数1〜10のアルキル基であるアルコール化合物;
メトキシメチルアルコール、1−メトキシエチルアルコール、2−メトキシエチルアルコール、2−エトキシ−tert−ブチルアルコール、2−エトキシ−n−ヘキシルアルコール等のアルコキシアルキルアルコール;メチルチオメチルアルコール、1−メチルチオエチルアルコール、2−メチルチオ−tert−ブチルアルコール、3−メチルチオ−n−ブチルアルコール、4−メチルチオ−n−ヘキシルアルコール等のアルキルチオアルキルアルコール;クロロメチルアルコール、ブロモメチルアルコール、1−クロロエチルアルコール、2−クロロ−n−プロピルアルコール、2−ブロモ−tert−ブチルアルコール、2−ブロモ−n−ブチルアルコール、2−クロロ−n−ヘキシルアルコール等のハロゲン化アルキルアルコール;等の、前記式(2)において、R
1が置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基であるアルコール化合物;
シクロプロピルアルコール、シクロブチルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等の、前記式(2)において、R
1が炭素数3〜8のシクロアルキル基であるアルコール化合物;
2−クロロシクロペンチルアルコール、4−メトキシシクロヘキシルアルコール、3−メチルチオシクロヘプチルアルコール等の、前記式(2)において、R
1が置換基を有する炭素数3〜8のシクロアルキル基であるアルコール化合物;等が挙げられる。
【0020】
これらの中でも、本発明においては、本発明の効果がより得られやすいことから、前記式(2)においてR
1が炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜8のシクロアルキル基であるアルコール化合物を用いるのが好ましく、R
1が炭素数1〜10のアルキル基であるアルコール化合物を用いるのがより好ましい。
【0021】
〔酸性ゼオライト〕
本発明においては、反応触媒(固体酸触媒)として、シリカ/アルミナ比が80以上の酸性ゼオライト(以下、単に「酸性ゼオライト」ということがある。)を用いる。
シリカ/アルミナ比は、良好な触媒活性が得られる観点から、80〜300であるのが好ましく、80〜180であるのがより好ましい。
このような酸性ゼオライトは、触媒活性の経時的な低下が少なく、触媒寿命が長いため、高い反応効率で、長期間安定して、工業的に有利に目的物を得ることができる。
【0022】
ゼオライトは、SiO
4四面体およびAlO
4四面体から構成され、各四面体の結合様式の相違等により多くの種類が知られている。また、ゼオライトは、3次元骨格構造を有しており、格子中に空洞(細孔)を形成している。この細孔の大きさ、形状はゼオライトの種類によって異なり、3〜12オングストロームの細孔径を持ち、1次元〜3次元の細孔形状を持つものがある。
【0023】
ゼオライトは、例えば、シリカ源(水ガラス、ケイ酸ナトリウム等)、アルミナ源(水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム)を混合し、必要によりテンプレート剤(ゼオライトの種結晶等)を加えて、pHを調整した後、水熱合成により製造することができる。この場合に、シリカ源とアルミナ源のモル比を調整することにより、シリカ/アルミナ比が80以上のゼオライトを得ることができる。
【0024】
ゼオライトはイオン交換能を有しており、通常はその骨格内にNa、K等のアルカリ金属イオンを有しているが、種々の陽イオンと接触させることにより、容易にイオンを交換することが可能なものである。
【0025】
酸性ゼオライトは、H
+基またはルイス酸サイトをその表面上に有するゼオライトである。
本発明で用いる酸性ゼオライトとしては、ベータ型、フォージャサイト型、モルデナイト型、L型、Y型、オメガ型、ZSM−5型、フェリエライト型等のゼオライトを、下記方法等により、H型ゼオライトとしたものが好ましく、ZSM−5型のゼオライトをH型としたもの(H−ZSM−5型)であるのがより好ましい。
【0026】
H型の酸性ゼオライトは、例えば、ゼオライトを、アンモニウムイオン水溶液(NH
4Cl、NH
4NO
3等の水溶液)と接触させ、アンモニウムイオン型ゼオライトとした後、これを300℃以上の温度で焼成してアンモニアを除去することにより得ることができる。また、ゼオライトを、塩酸等の強酸と接触させ、直接Hイオンとイオン交換することによっても得ることができる。
また、H型の酸性ゼオライトとして市販されているものをそのまま使用することもできる。
【0027】
本発明に用いる酸性ゼオライトは、粉末であっても、成形されたものであってもよいが、取扱い性の観点から、成形された酸性ゼオライト(ゼオライトの成形物)が好ましい。特に流通式の反応においては、成形された酸性ゼオライト(ゼオライトの成形物)を用いるのが圧力損失等の観点から望ましい。
【0028】
本発明に用いる酸性ゼオライトの成形物は、水熱合成品、乾燥品、焼成品、イオン交換品のいずれを成形したものであってもよい。ゼオライトを成形するにあたっては、押出、圧縮、打錠、流動、転動、噴霧等の、公知の方法を採用することができる。このような成形方法により、所望の形状、例えば、球状(粒状)、円筒状(ペレット状)、板状、リング状、クローバー状、ハニカム状等に成形することができる。例えば、ペレット状のものが必要な場合は、押出、打錠等の方法を採用することにより、また流動床用の触媒などのように微粒子状のものが必要な場合は、噴霧乾燥等の方法を採用することができる。
【0029】
また、成形に供するゼオライトとしては、通常、1次粒子径が5μm以下、好ましくは1μm以下のものが使用される。
【0030】
成形物の大きさは、特に限定されない。例えば、ペレット状物の場合、直径0.5〜5mm、高さ0.5〜5mmの円筒状ペレット、直径0.5〜5mmの扁平円盤型ペレット等が挙げられる。
【0031】
ゼオライトの成形物としては、ゼオライト粉末とバインダとを混合して成形されたもの(以後、「ゼオライト−バインダ成形体」ということがある。)や、結合剤成分を用いずに成形されたもの(以後、「バインダレスゼオライト成形体」ということがある)が挙げられる。
【0032】
前者のゼオライト−バインダ成形体の製造に用いられるバインダとしては、アルミナ・シリカ・粘土のような無機酸化物が挙げられる。また、必要に応じて、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ワックス類等を添加して成形することもできる。
ゼオライト−バインダ成形体を用いる場合には、成形物の形状や大きさ、メソおよびマクロ細孔容積とその分布などの形態的特性をある程度制御して、圧力損失を低減させると同時に、成形体内部における物質移動速度を向上させて、高い触媒利用効率を実現することができる。
【0033】
後者のバインダレスゼオライト成形体を得る方法としては、前駆体のドライゲル粉体をディスク上に圧縮成型した後に結晶化させる方法、水酸化ナトリウム水溶液や水熱処理などにポストシンセシス処理法により、予め合成されたゼオライト粒子から脱ケイ素、脱アルミニウムする方法、カーボンブラックやポリスチレン粒子共存下で水熱合成して得られたゼオライト粒子から共存粒子を焼成除去する方法、ケイ素源であるシリカ成形体にアルカリ金属と有機構造規定剤(SDA)とを含浸担持し、加圧水蒸気雰囲気下で結晶化する方法等が挙げられる(表面化学、19,558(1998)、Adv.Mater.,8,759(1996)、Chem.Lett.,25,403(1996),ゼオライト、29巻、2号、55−61、特開2001−58817号公報、Bull.Chem.Soc.Jpn.,80,1075(2007),Surv.Asia,14,116(2010)など参照)。
バインダレスゼオライト成形体を用いる場合には、前記ゼオライト−バインダ成形体を用いる場合に得られる効果に加えて、ゼオライトのバインダ成分への埋没、希釈効果による効率の低下、無機バインダとの副反応という問題の発生を回避できるという効果も得られる。
【0034】
また、本発明においては、酸性ゼオライトの成形品として市販されているものを、そのまま使用することもできる。
【0035】
本発明に用いる酸性ゼオライトは、触媒活性が長期にわたり低下することがない。具体的には、反応初期の反応液中の目的物の濃度を100とすると、反応液中の目的物の濃度をその80%以上に保持できる期間が、反応方法、反応規模等にもよるが、通常500時間以上である。すなわち、通常500時間以上、触媒を取替え等することなく、連続して使用することができる。
なお、使用後の触媒は、従来公知の方法により活性化して、再利用が可能である。
【0036】
〔製造方法〕
本発明は、酸性ゼオライトの存在下に、シクロペンテン類と、アルコール化合物(2)とを接触させて反応を行うことにより、シクロペンチルアルキルエーテル化合物を製造する方法である。
【0037】
反応方法としては特に制限されない。例えば、密閉された反応器内に、シクロペンテン類とアルコール化合物(2)との混合物(以下、「混合物」ともいう。)を入れ、さらに酸性ゼオライトを添加して全容を撹拌する方法(バッチ式)や、酸性ゼオライトをカラム内に充填し、該カラム(以下、「反応カラム」という。)中に混合物を流通させる方法(流通式)等を用いることができる。
これらの中でも、作業効率及び長期にわたり連続的に目的物を製造することができる観点から、流通式を採用するのが好ましい。
【0038】
前記混合物を調製するには、シクロペンテン類とアルコール化合物(2)とを所定割合で混合すればよい。この場合、シクロペンテン類とアルコール化合物(2)との混合液を予め調製しておき、それをタンクに貯蔵し、該タンクから反応カラムに送り込むこともできるし、シクロペンテン類とアルコール化合物(2)とをそれぞれ別のタンクに貯蔵しておき、そこからシクロペンテン類とアルコール化合物(2)とを別々に送液し、反応カラム内を流通させる直前に両者を混合して送り込むこともできる。
【0039】
バッチ式を採用する場合には、反応器に、酸性ゼオライト、シクロペンテン類及びアルコール化合物(2)の所定量を添加して、所定温度、所定圧力で、反応混合物を撹拌する。この場合の酸性ゼオライトの使用量は、通常、シクロペンテン類100質量部に対し、0.01〜200質量部、好ましくは0.1〜150質量部、より好ましくは1〜100質量部の範囲である。
【0040】
反応温度は、通常50〜250℃、好ましくは80〜200℃であり、反応圧力は、反応温度等にもよるが、通常、常圧(1013hPa、以下にて同じ。)から10MPa、好ましくは常圧から5MPaの範囲である。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常0.5〜24時間、好ましくは1〜10時間である。
反応は、窒素等の不活性雰囲気下で行うのが好ましい。
【0041】
流通式を採用する場合には、酸性ゼオライトがカラム内に充填された反応カラム中に、混合物を流通させる。この場合、用いるカラムは加熱装置を有するものを使用し、所定温度(反応温度)に加熱した反応カラム中に混合物を流通させるのが好ましい。
この方法によれば、触媒活性の経時的な低下が少ないため、頻繁に触媒を交換したり、活性化を施したりすることなく、長期間にわたって安定して連続的に反応を行うことができる。
【0042】
流通式により実施するより具体的な方法の一例を
図1に示す。
図1中、1は、原料(シクロペンテン類とアルコール化合物(2)の混合物)タンク、2は送液ポンプ、3は予熱器、4は反応カラム、5は冷却管、6は圧力計、7は背圧弁、8は反応液タンクである。
なお、反応カラム4は、一つでもよいが、複数の反応カラムを組み合わせれば、シクロペンテン類〔又はアルコール化合物(2)〕の転化率をさらに向上させることができる。
【0043】
用いるカラムの大きさは特に限定されず、反応規模に応じて種々の大きさのものを選択することができる。複数の反応カラムを組み合わせて用いる場合には、それぞれのカラムに充填する酸性ゼオライトの種類は、同じであっても、異なるものであってもよい。
【0044】
また、混合物を、酸性ゼオライトが充填された反応カラム中を流通させる方法としては、反応カラムの上部から混合物を流通させるダウンフロー式であっても、反応カラムの下部から混合物を流通させるアップフロー式であってもよい。より高い転化率及び選択率で目的物が得られる観点から、ダウンフロー方式が好ましい。また、混合物を、酸性ゼオライトが充填された反応カラム中を流通させる場合、混合物は気体状態であっても、液体状態であっても、気体状態と液体状態の混合状態であってもよい。
【0045】
混合物が反応カラム中を通過するときの圧力は、反応カラムの入口部分において、通常、常圧から10MPa、好ましくは常圧から5MPa、より好ましくは常圧から3MPaの範囲である。触媒として、前記ゼオライトの成形物を用いると、粉末の触媒を用いる場合に比して、低い圧力で操作を行うことができる。
反応温度(反応カラム内の温度)は、通常50〜200℃、好ましくは80〜180℃である。
【0046】
シクロペンテン類とアルコール化合物(2)との使用割合は特に制約されない。流通式の場合は、混合物が加熱されている時間が短いので、シクロペンテン類が重合することがない一方で、アルコール化合物(2)をあまりに過剰に用いると、ジアルキルエーテルの副生量が増大するおそれがあり好ましくない。具体的には、(シクロペンテン類)/(アルコール化合物(2))のモル比で、通常1/5〜20/1、好ましくは1/4〜10/1、より好ましくは1/3〜5/1、さらに好ましくは1/3〜3/1である。
【0047】
シクロペンテン類とアルコール化合物(2)が反応カラム中を通過するときの空間速度〔単位時間あたりに触媒体積の何倍相当分の容積を処理しているかを表す値(hr
−1)〕は、通常、0.01〜100hr
−1の範囲、好ましくは、0.1〜30hr
−1である。
また、複数の反応カラムを使用する場合には、反応温度、流通速度等を反応カラムごとに変化させることができる。
【0048】
いずれの方法においても、反応は、無溶媒で行うこともできるし、原料のシクロペンテン類を溶解し、水と混合しない不活性な溶媒中で行うこともできる。
【0049】
用いる溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族飽和炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、アニソール、クメン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、アルキル置換シクロペンタン類、アルコキシ置換シクロペンタン類、ニトロ置換シクロペンタン類、シクロヘキサン、アルキル置換シクロヘキサン類、アルコキシ置換シクロヘキサン類、ニトロ置換シクロヘキサン類、シクロヘプタン、アルキル置換シクロヘプタン類、アルコキシ置換シクロヘプタン類、ニトロ置換シクロヘプタン類、シクロオクタン、アルキル置換シクロオクタン類、アルコキシ置換シクロオクタン類、ニトロ置換シクロオクタン類等の脂環式飽和炭化水素類;窒素、アルゴン、空気、ヘリウム等が挙げられる。
溶媒の使用量は特に制限されず、反応を阻害しない範囲で任意の量を選択できる。溶媒を使用する場合の溶媒の使用量は、通常、全反応液量の10〜90容量%、好ましくは20〜80容量%である。
【0050】
いずれの方法においても、反応終了後は、反応液を溶媒抽出、蒸留等の通常の分離・精製方法によって、目的とするシクロペンチルアルキルエーテル化合物を単離することができる。蒸留は複数回行ってもよい。
【0051】
蒸留装置としては、例えば、精留塔を有する連続精留装置等の公知の蒸留装置を使用することができる。
また、酸性ゼオライトを充填した反応カラム中に混合液を流通させた後、得られた反応液を、再度反応カラム中を通過させ、その後、例えばラシヒリングを充填した蒸留装置により連続的に蒸留することもできる。この方法によれば、未反応のシクロペンテン類及びアルコール化合物(2)を、反応カラムに戻し、再度反応に供することができ、より高い転化率で目的物を得ることができる。
【0052】
本発明によれば、固体酸触媒として、シリカ/アルミナ比が80以上の酸性ゼオライトを用いることにより、原料供給を大きくした場合であっても、高い反応効率で、長期間安定して、工業的に有利に、連続して、目的とする式(1):R
1−O−R
2で表されるシクロペンチルアルキルエーテル化合物を製造することができる。
【0053】
本発明の製造方法により得られるシクロペンチルアルキルエーテル化合物としては、用いる原料に対応するが、具体的には、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、シクロペンチルn−プロピルエーテル、シクロペンチルイソプロピルエーテル、シクロペンチルn−ブチルエーテル、シクロペンチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルn−ペンチルエーテル、シクロペンチルn−ヘキシルエーテル、シクロペンチルメトキシメチルエーテル、シクロペンチル2−メトキシエチルエーテル、シクロペンチルメチルチオメチルエーテル、シクロペンチルクロロメチルエーテル、シクロペンチルシクロヘキシルエーテル、シクロペンチル2−クロロシクロヘキシルエーテル;
1−メチルシクロペンチルメチルエーテル、3−メチルシクロペンチルメチルエーテル、3−エチルシクロペンチルメチルエーテル、1,3−ジメチルシクロペンチルメチルエーテル、3−メトキシシクロペンチルエチルエーテル、3−メチルチオシクロペンチルエチルエーテル、1−フルオロシクロペンチルメチルエーテル、2−クロロシクロペンチルn−ペンチルエーテル、3−ブロモシクロペンチルn−ヘキシルエーテル、3−クロロシクロペンチル2−メトキシエチルエーテル、1−フェニルシクロペンチルメチルエーテル;等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例により何ら制限されるものではない。
【0055】
各化合物の含有量の測定は、以下の機器、条件にて行った。
・機器 :Shimadzu社製、GC−2010
・カラム:DB−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)
・カラム温度:40℃で10分保持後、毎分10℃で昇温して230℃とし、同温度で1分保持
・注入口温度:200℃
・キャリアーガス:窒素(毎分流量0.7ml)
・検出器: FID
・検出器温度:250℃
【0056】
以下の実施例、比較例においては、固体酸触媒(触媒)として、シリカ/アルミナ比を所定の値で調製したH−ZSM−5型ゼオライトの粉末を、アルミナを結合剤として、直径2.2mm、高さ5mmの円筒状に成形して焼成した成形物(日揮触媒化成社製)を用いた。
【0057】
(実施例1)
図1に示す反応装置を使用して、以下の実験を行った。
反応カラム4に、シリカ/アルミナ比が80の触媒を、バルク体積にして100ml詰めた。シクロペンテンとメタノールの混合物(重量比68:32(モル比1:1))を原料タンク1に充填した。
原料タンク1を窒素で0.2MPaに加圧して原料混合液を送液し、送液ポンプ2、予熱器3、反応カラム4、及び冷却管5の内部のガスを原料混合液で置換した後、背圧弁7の設定圧力を上げて液の流れを一旦止めた。
送液ポンプ2を5ml/分の流量で稼働させ、圧力計6の指示値が2.8MPaとなるよう背圧弁7を調整した。その後予熱器3と反応カラム4を145℃に加熱し、反応カラム4から流出する反応液を冷却管5で0℃に冷却して反応液タンク8に回収した。
予熱器3及び反応カラム4の温度が所定の145℃に達した時点を反応開始時とし、背圧弁7の出口の液をサンプリングして、生成した目的物のシクロペンチルメチルエーテル(CPME)の、反応液中の濃度(初期の濃度)をガスクロマトグラフで測定した。さらに、適宜、経過時間ごとのCPMEの濃度を測定し、初期の濃度との比(初期比)を算出した。初期比が75%となった621時間経過後に反応を停止させた。
【0058】
各経過時間後の、反応液中のCPMEの濃度(%)と、初期の濃度に対する、CPMEの濃度(重量%)の割合(%)を下記表1に示す。さらに、これらの結果を、
図2、3のグラフに示す。
図2のグラフにおいて、縦軸はCPMEの濃度(重量%)を示し、横軸は経過時間(時間)を示す。
図3のグラフにおいて、縦軸は、初期の濃度に対する、CPMEの濃度の割合(%)を示し、横軸は経過時間(時間)を示す。
【0059】
(実施例2)
実施例1において、固体酸触媒を、シリカ/アルミナ比が80のものからシリカ/アルミナ比が180のものに変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。初期比が80%となった816.5時間経過後に反応を停止させた。結果を下記表1及び
図2、3のグラフに示す。
【0060】
(比較例1)
実施例1において、固体酸触媒を、シリカ/アルミナ比が80のものからシリカ/アルミナ比が30のものに変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。初期比が38%となった119時間経過後に反応を停止させた。結果を下記表1及び
図2、3のグラフに示す。
【0061】
(比較例2)
実施例1において、固体酸触媒を、シリカ/アルミナ比が80のものからシリカ/アルミナ比が50のものに変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。初期比が80%となった209時間経過後に反応を停止させた。結果を表1及び
図2、3のグラフに示す。
【0062】
(比較例3)
実施例1において、固体酸触媒を、シリカ/アルミナ比が80のものからシリカ/アルミナ比が30のものに変更し、シクロペンテンとメタノールの混合物の重量比を、68:32(モル比1:1))から41:59(モル比1:3)に変更し、予熱器3及び反応管4の設定温度を145℃から150℃に変更し、圧力計6の指示値が2.8MPaから2.5MPaとなるようにした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。初期比が81%となった311時間経過後に反応を停止させた。結果を表1及び
図2、3のグラフに示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1及び
図2、3から、固体酸触媒として、シリカ/アルミナ比が80以上の酸性ゼオライトを用いた場合(実施例1、2)は、シリカ/アルミナ比が80以下の酸性ゼオライトを用いた場合(比較例1〜3)に比して、得られる反応液中のCPMEの濃度の経時的低下が小さいことがわかる。
実施例1では、525時間経過後においても、反応開始時の80%の割合で目的物が得られ、621時間経過後においても、42質量%(wt%)で目的物が得られている。
実施例2では、575時間経過後においても、反応開始時とほぼ同等の割合で目的物が得られ、800時間経過後においても、反応開始時の80%の割合で目的物が得られている。
一方、比較例1では、反応開始時は、実施例と同等の割合で目的物が得られているが、119時間経過後には、目的物の濃度は、初期の濃度の38%に低下している。
比較例2でも、209時間後には、目的物の濃度は、初期の濃度の80%に低下している。
比較例3では、初期の濃度が38wt%と低い上、311時間経過後には、目的物の濃度は、初期の濃度の81%に低下している。
これらのことから、実施例の場合には、比較例の場合に比して、用いる触媒の活性低下が少ない(触媒寿命が長い)ため、長期に渡り、目的物を安定して得られることがわかる。